説明

回転電機および風力発電システム

【課題】ロータの耐久性を高め、かつ、簡易な方法でロータの組み立てを行うことが可能な回転電機を提供する。
【解決手段】この発電機1(回転電機)は、シャフト21と、シャフト21を取り囲むロータヨーク23と、ロータヨーク23の外周面上に配置され、複数の永久磁石30(31)が間隔を隔てて周状に埋め込まれるロータコア24(ロータコア24aおよび24b)とを含むロータ20と、ロータ20の外周面に対向するように配置されるステータ10とを備え、ロータヨーク23とロータコア24の内周部とがナット41およびボルト42により締結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転電機および風力発電システムに関し、特に、複数の永久磁石が間隔を隔てて周状に埋め込まれるロータコアを含むロータを備える回転電機および風力発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の永久磁石が間隔を隔てて周状に埋め込まれるロータコアを含むロータを備える回転電機が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、複数の希土類磁石(永久磁石)が間隔を隔てて周状に埋め込まれる鉄心(ロータコア)を含むロータを備えるIPMモータ(回転電機)が開示されている。このIPMモータのロータの組み立てでは、鉄心の内周部に回転軸が焼き嵌めされることにより、回転軸が鉄心に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−324738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたIPMモータでは、ロータの組み立ての際に鉄心と回転軸との焼き嵌めを行っているため、組み立て後にロータに焼き嵌めの熱による残留応力(焼き嵌め応力)が発生してしまうという不都合がある。このように、ロータの組み立ての際に焼き嵌めを行う場合では、ロータ残留応力が発生する分、ロータの耐久性が低下するという問題点がある。また、ロータの組み立ての際に焼き嵌めを行う場合では、焼き嵌めのための加熱設備が必要になるという問題点もある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、ロータの耐久性を高め、かつ、簡易な方法でロータの組み立てを行うことが可能な回転電機を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における回転電機は、回転軸部と、回転軸部を取り囲むロータヨークと、ロータヨークの外周面上に配置され、複数の永久磁石が間隔を隔てて周状に埋め込まれるロータコアとを含むロータと、ロータの外周面に対向するように配置されるステータとを備え、ロータコアは、永久磁石を有する複数の第1磁極部と、永久磁石を有さない複数の第2磁極部とが1つずつ交互に周状に配置されることにより構成され、ロータコアの第2磁極部に対応する部分に配置されている締結部材により、ロータヨークとロータコアの内周部とが締結されている。
【0008】
この発明の第1の局面による回転電機では、上記のように、ロータヨークとロータコアの内周部とを締結部材により締結する。これにより、ロータの組み立てを行う際に、ロータコアとロータヨークとを焼き嵌めにより固定する場合と異なり、組み立て後のロータに焼き嵌めの熱による残留応力が発生することがないので、ロータの耐久性を高めることができる。また、焼き嵌めを行うための加熱設備が必要ないので、簡易な方法でロータの組み立てを行うことができる。
【0009】
この発明の第2の局面における風力発電システムは、ロータと、ロータの外周面に対向するように配置されるステータとを含む発電機と、発電機のロータの回転軸部に接続されるブレードとを備え、ロータは、回転軸部と、回転軸部を取り囲むロータヨークと、ロータヨークの外周面上に配置され、複数の永久磁石が間隔を隔てて周状に埋め込まれるロータコアとを含み、ロータコアは、永久磁石を有する複数の第1磁極部と、永久磁石を有さない複数の第2磁極部とが1つずつ交互に周状に配置されることにより構成され、ロータコアの第2磁極部に対応する部分に配置されている締結部材により、ロータヨークとロータコアの内周部とが締結されている。
【0010】
この発明の第2の局面による風力発電システムでは、上記のように、発電機のロータのロータヨークとロータコアの内周部とを締結部材により締結する。これにより、ロータの組み立てを行う際に、ロータコアとロータヨークとを焼き嵌めにより固定する場合と異なり、組み立て後のロータに焼き嵌めの熱による残留応力が発生することがないので、ロータの耐久性を高めることができる。また、焼き嵌めを行うための加熱設備が必要ないので、簡易な方法でロータの組み立てを行うことができる。ここで、一般に、風力発電システムは、長期間に渡って使用されるため、高い耐久性が求められる。また、一般に、風力発電システムの発電機に使用されるロータは、サイズが大きいため、ロータの組み立てが困難である。この場合に、本発明では、ロータの耐久性を高め、かつ、簡易な方法でロータの組み立てを行うことができるので、風力発電システムに適した発電機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態による風力発電システムの構成を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態による発電機のステータおよびロータを図1のA方向側から見た図である。
【図3】図2の拡大図である。
【図4】図3を図1のB方向側から見た拡大図である。
【図5】図3および図4の50−50線に沿った断面図である。
【図6】図3および図4の150−150線に沿った断面図である。
【図7】本発明の一実施形態による発電機のロータコアを構成するコア部を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態による発電機のロータコアをロータヨークに取り付ける際に用いるナット部材を示す斜視図である。
【図9】本発明の一実施形態による発電機のロータコアとロータヨークとを締結する手順を説明するための断面図である。
【図10】本発明の一実施形態による発電機のロータコアとロータヨークとをキー部材により固定する手順を説明するための断面図である。
【図11】本発明の一実施形態の変形例による風力発電システムの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態による発電機1を含む風力発電システム100の構成について説明する。なお、発電機1は、本発明の「回転電機」の一例である。
【0014】
図1に示すように、風力発電システム100は、発電機1と、ナセル2と、ロータハブ3と、ブレード4と、タワー(支持柱)5とにより構成されている。発電機1は、ナセル2の内部に収容されている。また、ロータハブ3は、発電機1の後述するシャフト21に接続されている。また、ロータハブ3には、複数のブレード4が取り付けられている。また、ナセル2は、タワー5に取り付けられている。
【0015】
次に、図2〜図8を参照して、本発明の一実施形態による発電機1の構成について説明する。
【0016】
図2に示すように、発電機1は、ステータ10と、ロータ20とを備えている。ステータ10は、ロータ20の外周面に対向するように所定の空間(ギャップ)を隔てて配置されている。また、ステータ10は、ロータ20を取り囲む円筒形状を有している。なお、ステータ10は、複数のスロット11aが形成されたステータコア11と、巻線12とにより構成されている。これら複数のスロット11aは、ステータコア11の内周に沿って略等角度間隔で配置されている。巻線12は、スロット11a間に、集中巻または分布巻によって巻回されている。
【0017】
図2に示すように、ロータ20は、シャフト21と、ロータホイール22と、ロータヨーク23と、ロータコア24とにより構成されている。なお、シャフト20は、本発明の「回転軸部」の一例である。また、ロータホイール22は、本発明の「支持部材」の一例である。
【0018】
シャフト21は、ロータホイール22の中央部近傍に設けられるシャフト挿入穴22aに挿入されることにより、ロータ20の中心を貫通してX方向(図1参照)(以下、軸方向と呼ぶ)に延びるように設けられている。また、ロータホイール22は、シャフト21を取り囲むとともに、ロータヨーク23の内周面に接する円板状に形成されている。このロータホイール22には、軸方向に貫通する複数の開口部22bが設けられている。また、ロータヨーク23は、シャフト21を取り囲むとともに、円板状のロータホイール22の外周部に接する内周面を有する円筒形状に形成されている。なお、図5および図6に示すように、円筒形状のロータヨーク23の軸方向の長さLは、円板状のロータホイール22の厚みtよりも大きくなるように構成されている。
【0019】
ロータコア24は、ロータヨーク23の外周面上に配置される内周面を有する円筒形状を有している。また、ロータコア24は、図5および図6に示すように、軸方向に重なるように積層された複数の電磁鋼板により構成されている。本実施形態では、ロータコア24は、軸方向の中央部において2つに分割されている。すなわち、ロータコア24は、軸方向に重なるように配置されたロータコア24a(A方向(図1参照)側のロータコア24)と、ロータコア24b(B方向(図1参照)側のロータコア24)とにより構成されている。
【0020】
図2〜図4に示すように、ロータコア24aおよび24bには、それぞれ、複数の永久磁石30および31が回転方向(以下、周方向と呼ぶ)に沿って間隔を隔てて周状に埋め込まれている。具体的には、図2および図3に示すように、ロータコア24aは、永久磁石30を有する第1磁極部241aと、永久磁石30を有さない第2磁極部242aとが1つずつ交互に周状に配置されることにより構成されている。同様に、図4に示すように、ロータコア24bは、永久磁石31を有する第1磁極部241bと、永久磁石31を有さない第2磁極部242bとが1つずつ交互に周状に配置されることにより構成されている。
【0021】
なお、後述するように、複数の永久磁石30は、共に、半径方向の着磁方向が同一となるように着磁されている。また、複数の永久磁石31は、共に、半径方向の着磁方向が同一(永久磁石30とは反対の着磁方向)となるように着磁されている。一般に、このような半径方向の着磁方向が同一となるように周状に複数の永久磁石30(31)が配置されたロータコア24a(24b)の構造は、コンシクエントポール構造と呼ばれている。
【0022】
ここで、本実施形態では、図3および図4に示すように、第1磁極部241a(241b)は、永久磁石30の外周側を覆う磁石被覆部243と、永久磁石30の両側端面を露出する2つの空隙244と、2つの空隙244のそれぞれに対応するように設けられる2つの連結部245とを含むように構成されている。
【0023】
磁石被覆部243の外周側の表面は、軸方向から見て、永久磁石30の中央部に対応する部分を頂部とする凸形状を有するように形成されている。また、空隙244の連結部245に対応する部分の第2磁極部242側の角部244aは、円弧状の断面形状を有するように形成されている。また、連結部245は、磁石被覆部243と、第1磁極部部241a(241b)に隣接する2つの第2磁極部部242a(242b)とをロータコア24a(24b)の外周に沿って連結する薄肉状に形成されている。なお、本実施形態では、連結部245の半径方向の厚みt1は、磁石被覆部243の半径方向の厚みt2よりも小さくなるように構成されている。たとえば、連結部245の半径方向の厚みt1は、約1mm以上約1.5mm以下であるとともに、磁石被覆部243の中央部の半径方向の厚みt2は、約3mm以上約4mm以下である。
【0024】
また、本実施形態では、図3および図4に示すように、第1磁極部部241a(241b)には、空隙244に連続するように、永久磁石30(31)を取り付けるための孔部246a(264b)が設けられている。この孔部246a(264b)には、永久磁石30(31)の後述する傾斜部30a(31a)と当接することにより係合する一対の係合部247が設けられている。これら一対の係合部247の間の周方向の幅は、ロータコア24a(24b)の内周側から外周側に向かうにしたがって徐々に小さくなるように構成されている。ここで、永久磁石30(31)は、略台形形状の断面を有するように形成されている。具体的には、永久磁石30(31)の両側端面には、永久磁石30(31)の周方向の幅がロータコア24a(24b)の内周側から外周側に向かうにしたがって徐々に小さくなるように傾斜部30a(31a)が設けられている。
【0025】
なお、本実施形態では、ロータコア24aおよび24bは、回転方向に所定の角度(電気角で180°)ずれた状態で軸方向に重なるように配置されている。すなわち、図5および図6に示すように、ロータコア24aおよび24bは、ロータコア24aの第1磁極部241aとロータコア24bの第2磁極部242bとが対応するとともに、ロータコア24aの第2磁極部242aとロータコア24bの第1磁極部241bとが対応するように配置されている。なお、ロータコア24aおよび24bの軸方向の長さは、それぞれ、ロータヨーク23の軸方向の長さLの半分(L/2)である。
【0026】
また、本実施形態では、ロータコア24aの第1磁極部241aに埋め込まれる永久磁石30と、ロータコア24bの第1磁極部241bに埋め込まれる永久磁石31とは、外周側において互いに異なる極性を有するように着磁されている。具体的には、永久磁石30は、ロータコア24aの外周側においてN極となるように着磁されており、永久磁石31は、ロータコア24bの外周側においてS極となるように着磁されている。
【0027】
また、本実施形態では、図2〜図4に示すように、ロータコア24a(24b)は、それぞれ、複数のコア部25を含むように周方向に分割可能に構成されている。これら複数のコア部25の各々は、コア部25の外周に沿って隣接する3つの第1磁極部241a(241b)を含むように構成されている。また、これら複数のコア部25は、それぞれ、円筒形状のロータコア24a(24b)を略等角度間隔に分割した略同一の形状を有するように形成されている。具体的には、これら複数のコア部25は、それぞれ、軸方向から見て略円弧形状を有するように形成されている。
【0028】
また、本実施形態では、図2〜図6に示すように、ロータコア24a(24b)の内周部とロータヨーク23とは、ナット41と、ナット41に螺合するボルト42とにより締結されている。ナット41およびボルト42は、ロータコア24a(24b)の内周部の第2磁極部242a(242b)に対応する部分に配置されているとともに、ロータコア24a(24b)を構成する複数のコア部25の境界部分に配置されている。なお、ナット41およびボルト42は、本発明の「締結部材」の一例である。
【0029】
ナット41は、図5および図6に示すように、ロータコア24a(24b)の内周部の後述するナット挿入穴25aに挿入され、ロータコア24a(24b)側に軸方向に延びるように配置されている。このナット41は、長さL/2を有する直方体形状(図8参照)に形成されている。また、このナット41には、内面に雌ねじが形成されたねじ孔41aがナット41の延びる方向(軸方向)に沿って複数(本実施形態では、2つ)設けられている。ボルト42は、ロータヨーク23の内周面の後述するボルト挿入穴23aに挿入されるとともに、ロータコア24a(24b)を構成するコア部25の後述する溝部25bを介してナット41のねじ孔41aに螺合するように構成されている。なお、ねじ孔41aは、本発明の「螺合部分」の一例である。
【0030】
ナット挿入穴25aは、図3、図4および図7に示すように、ロータコア24a(24b)を構成するコア部25の内周部に複数設けられている。これら複数のナット挿入穴25aの各々は、軸方向から見てナット41と略同じ大きさを有する矩形形状に形成されている。また、溝部25bは、複数のナット挿入穴25aの各々に対応するように複数設けられている。これら複数の溝部25bの各々は、ナット挿入穴25aとロータコア24a(24b)のコア部25の内周面とを接続する溝状に形成されている。なお、本実施形態では、溝部25bの溝幅W1は、ナット挿入穴25aの穴幅W2よりも小さくなるように構成されている。また、複数のナット挿入穴25aおよび溝部25bは、ロータコア24a(24b)の周方向に沿って略等角度間隔で配置されている。また、図5および図6に示すように、複数のナット挿入穴25aおよび溝部25bは、軸方向に沿って延びるように設けられている。
【0031】
図5および図6に示すように、ボルト挿入穴23aは、円筒形状のロータヨーク23の内周面のうちのロータホイール22からはみ出した部分(ロータホイール22とロータヨーク23とが接している部分以外の部分)に、ロータヨーク23の内周面と外周面とを貫通するように設けられている。このボルト挿入穴23aは、ナット挿入穴25aにナット41が挿入された状態でナット41とボルト42とが螺合可能なように、ナット41の延びる方向(軸方向)に沿って複数(本実施形態では、2つ)設けられている。
【0032】
なお、本実施形態では、図3、図4および図6に示すように、ロータコア24a(24b)を構成するコア部25の内周面には、軸方向に延びる第1キー挿入溝25cが形成されている。また、ロータヨーク23の外周面には、第1キー挿入溝25cに対応するように第2キー挿入溝23bが形成されている。これら第1キー挿入溝25cおよび第2キー挿入溝23bからなるキー挿入穴60には、平行キーなどからなるキー部材43が挿入されている。このキー挿入穴60は、ロータコア24a(24b)の内周部とロータヨーク23の外周部とが接する部分において、周方向に沿って略等角度間隔(図2参照)で複数配置されている。具体的には、キー挿入穴60は、ロータコア24a(24b)を構成するコア部25の内周部の周方向に沿った方向の中央部近傍に配置されている。
【0033】
次に、図2〜図10を参照して、本発明の一実施形態による発電機1のロータ20の組み立て手順について説明する。
【0034】
まず、図2に示すように、シャフト21を円板状のロータホイール22のシャフト挿入穴22aに挿入するとともに、ロータホイール22の外周部に円筒形状のロータヨーク23を取り付ける。
【0035】
次に、ロータヨーク23の外周面上に、複数のコア部25からなるロータコア24(ロータコア24aおよび24b)を取り付ける。具体的には、略円弧形状の複数のコア部25を、円筒形状のロータヨーク23の外周面上に周状に組み合わせて配置する。これにより、ロータヨーク23の外周面に接する内周面を有する円筒形状の2つのロータコア24aおよび24bを構成する。
【0036】
なお、このとき、ロータコア24aに埋め込まれた永久磁石30と、ロータコア24bに埋め込まれた永久磁石31とが外周側において互いに異なる極性を有するようにロータコア24aおよび24bを構成する。具体的には、ロータコア24aに埋め込む永久磁石30の外周側の極性をN極とするとともに、ロータコア24bに埋め込む永久磁石31の外周側の極性をS極とするようにロータコア24aおよび24bを構成する。
【0037】
また、このとき、ロータコア24aとロータコア24bとを回転方向に所定の角度(電気角で180°)ずらした状態で、ロータヨーク23の外周面上にロータコア24aおよび24bを軸方向に重ねて配置する。具体的には、ロータコア24aの第1磁極部241aとロータコア24bの第2磁極部242bとを対応させるとともに、ロータコア24aの第2磁極部242aとロータコア24bの第1磁極部241bとを対応させるように、ロータヨーク23の外周面上にロータコア24aおよび24bを配置する。
【0038】
次に、ロータコア24a(24b)を構成するコア部25の内周部の溝部25bと、ロータヨーク23の内周面および外周面を貫通するボルト挿入穴23aとの位置を合わせる。また、ロータコア24a(24b)のコア部25の内周部の第1キー挿入溝25cと、ロータヨーク23の外周面の第2キー挿入溝23bとの位置を合わせる。
【0039】
次に、図9に示すように、ロータヨーク23の外周面上に配置したロータコア24a(24b)の内周部とロータヨーク23とを、ナット41およびボルト42により締結する。具体的には、まず、ロータコア24a(24b)の内周部に軸方向に沿って延びるように設けられたナット挿入穴25aに対して、直方体形状のナット41(図8参照)を軸方向に挿入する。そして、ロータヨーク23のボルト挿入穴23aに対してボルト42をロータヨーク23の内側から挿入する。そして、上記のように位置を合わせたロータヨーク23のボルト挿入穴23aとロータコア24a(24b)のコア部の溝部25bとを介してナット41のねじ孔41aにボルト42を螺合する。
【0040】
最後に、図10に示すように、上記のように位置を合わせたロータコア24a(24b)の第1キー挿入溝25cおよびロータヨーク23の第2キー挿入溝23bからなるキー挿入穴60に対して、平行キーなどからなるキー部材43を軸方向に挿入する。このようにして、本発明の一実施形態による発電機1のロータ20の組み立てが行われる。
【0041】
本実施形態では、上記のように、発電機1のロータ20のロータヨーク23とロータコア24の内周部とをナット41およびボルト42により締結する。これにより、ロータ20の組み立てを行う際に、ロータコア24とロータヨーク23とを焼き嵌めにより固定する場合と異なり、組み立て後のロータ20に焼き嵌めの熱による残留応力が発生することがないので、ロータ20の耐久性を高めることができる。なお、ロータ20の耐久性を高めることにより、磁石被覆部243および連結部245の厚みをより薄くすることも可能となる。このように磁石被覆部243および連結部245の厚みを薄くすることにより、ギャップ中の磁束密度が向上するとともに、連結部245を経由する漏れ磁束を低減することができる。また、焼き嵌めを行うための加熱設備が必要ないので、簡易な方法でロータ20の組み立てを行うことができる。ここで、一般に、風力発電システムは、長期間に渡って使用されるため、高い耐久性が求められる。また、一般に、風力発電システムの発電機に使用されるロータは、サイズが大きいため、組み立てが困難である。この場合に、本実施形態では、ロータ20の耐久性を高め、かつ、簡易な方法でロータ20の組み立てを行うことができるので、風力発電システム100に適した発電機1を提供することができる。
【0042】
また、本実施形態では、上記のように、ロータコア24を、複数のコア部25を含むように周方向に分割可能に構成する。このように構成すれば、ロータコア24よりもサイズが小さく、その分不良が生じにくいコア部25によりロータコア24を製造することができるので、歩留まりを向上させることができる。
【0043】
また、本実施形態では、上記のように、ナット41およびボルト42を、複数のコア部25の境界部分に配置する。このように構成すれば、一対のナット41およびボルト42により、隣接する2つのコア部25が固定されるので、複数のコア部25の境界部分においてロータコア24の外周部に段差が生じるのを抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態では、上記のように、ロータコア24を、ロータヨーク23の外周面上に配置される内周面を有する円筒形状に形成する。また、ロータコア24を構成する複数のコア部25を、それぞれ、円筒形状を略等角度間隔に分割した略同一の形状を有するように形成する。このように構成すれば、複数のコア部25の各々の形状を異ならせる場合と異なり、コア部25の製造の歩留まりを向上させることができる。
【0045】
また、本実施形態では、上記のように、ロータコア24(ロータコア24aおよび24b)を、永久磁石30(31)を有する複数の第1磁極部241a(241b)と、永久磁石30(31)を有さない複数の第2磁極部242a(242b)とが1つずつ交互に周状に配置することにより構成する。また、ナット41およびボルト42を、ロータコア24a(24b)の内周部の第2磁極部242a(242b)に対応する部分に配置する。このように構成すれば、ナット41およびボルト42が、永久磁石30(31)から発生する磁束の分布が最も疎になる部分に配置されるので、ナット41およびボルト42により発電機1に磁気的な悪影響が生じるのを抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態では、上記のように、ナット41を、ロータコア24側に軸方向に延びるとともに、軸方向に沿って複数のねじ孔41aを含むように構成する。また、ボルト42を、ナット41の延びる方向に沿って複数配置するとともに、ナット41の複数のねじ孔41aに螺合する。このように構成すれば、軸方向に延びるナット41と、そのナット41に軸方向に沿って設けられる複数のねじ孔41aに螺合する複数のボルト42により、ロータコア24とロータヨーク23とを軸方向に沿って容易に締結することができるとともに、ナット41の数(部品点数)を減少させることができる。
【0047】
また、本実施形態では、上記のように、ロータコア24の内周部に、ナット41を挿入するナット挿入穴25aと、ナット挿入穴25aとロータコア24の内周面とを接続する溝部25bとを設ける。また、ナット挿入穴25aおよび溝部25bを、ロータコア24の軸方向に延びるように設けるとともに、溝部25bの溝幅W1を、ナット挿入穴25aの穴幅W2よりも小さくなる(図7参照)ように形成する。また、複数のボルト42を、軸方向に延びる溝部25bを介してナット挿入穴25aに挿入されたナット41の複数のねじ孔41aに螺合する。このように構成すれば、溝部25bの溝幅W1がナット挿入穴25aの穴幅W2よりも小さいので、ナット挿入穴25aに挿入したナット41がロータコア24の内周部側(溝部25b側)に移動(脱落)するのを抑制することができる。また、溝部25bを、ナット挿入穴25bのナット41側にボルト42を挿入する際のガイドとして用いることができるので、ボルト41をナット41のねじ孔41aに容易に螺合することができる。
【0048】
また、本実施形態では、上記のように、ロータ20に、シャフト21を取り囲むとともに、ロータヨーク23の内周面に接する円板状のロータホイール22を設ける。また、ロータヨーク23を、軸方向の長さLが円板状のロータホイール22の厚みtよりも大きい(図5および図6参照)円筒形状に形成するとともに、円筒形状のロータヨーク23の内周面のうちのロータホイール22からはみ出した部分に軸方向に沿って複数のボルト挿入穴23aを形成する。また、複数のボルト42を、複数のボルト挿入穴23aを介してロータコア24側に軸方向に延びるように配置されたナット41の複数のねじ孔41aに螺合する。このように構成すれば、ロータヨーク23の内周面のうちのロータホイール22からはみ出した部分に形成された複数のボルト挿入穴23aを介して、複数のボルト42をロータヨーク23の内側からロータコア24側に容易に挿入することができる。
【0049】
また、本実施形態では、上記のように、ロータヨーク23の外周面に、軸方向に延びる第1キー挿入溝23bを形成するとともに、ロータコア24の内周部に、ロータヨーク23の第1キー挿入溝23bに対応するように第2キー挿入溝25cを形成する。また、第1キー挿入溝23bと第2キー挿入溝25cとからなるキー挿入穴60に、キー部材43を挿入する。このように構成すれば、キー部材43により、ロータヨーク23がロータコア24の内側で空回りするのを抑制することができる。
【0050】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0051】
たとえば、上記実施形態では、本発明を風力発電システムの発電機に適用した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明は、風力発電システム以外の発電システムに用いられる発電機およびモータなどの回転電機全般に適用可能である。
【0052】
また、上記実施形態では、永久磁石の断面形状を略台形形状としたが、本発明はこれに限らない。本発明では、たとえば、永久磁石の断面形状を長方形形状としてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、コンシクエントポール構造のロータコアを用いる例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、コンシクエントポール構造以外の構造のロータコアを用いてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、ロータコアが複数のコア部を含むように周方向に分割可能に構成されている例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、ロータコアが一部品として構成されていてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、ナットおよびボルトが複数のコア部の境界部分に配置されている例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、ナットおよびボルトが複数のコア部の境界部分に配置されていなくてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、最後に、ロータコアの第1キー挿入溝およびロータヨークの第2キー挿入溝からなるキー挿入穴に対して、キー部材を軸方向に挿入するとしたが、本発明はこれに限らない。本発明では、まず、ロータヨークの第2キー挿入溝にキー部材を挿入してもよい。この場合、キー部材を第1キー挿入溝に挿入しながら、複数のコア部を、ロータヨークの外周面上に周状に配置する。このとき、コア部の内周部の溝部と、ロータヨークの内周面および外周面を貫通するボルト挿入穴との位置を合わせるように構成する。その後、ロータヨークとロータコアとをナットおよびボルトにより締結する。
【0057】
また、上記実施形態では、ロータヨークとロータコアとをナットおよびボルトを用いて締結する例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、ロータヨークとロータコアとをナットおよびボルト以外のカシメ部材などの締結部材を用いて締結してもよい。また、本発明では、たとえばロータコアにねじ孔を形成することにより、ロータヨークとロータコアとをボルトのみを用いて締結してもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、ロータコアを、回転方向に所定の角度ずらした状態で軸方向に重ねた2つのロータコアにより構成する例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、ロータコアを1つのロータコアにより構成してもよいし、3つ以上のロータコアにより構成してもよい。なお、ロータコアを偶数個のロータコアにより構成すれば、ロータコアとステータコアとの間のギャップにおいて、軸方向から見てバランスよく磁束を発生させることができる。
【0059】
また、上記実施形態では、ロータハブが発電機の回転軸に取り付けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図11に示す変形例による風力発電システム101のように、ロータハブ3と発電機1との間にギアボックス6を設けてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 発電機(回転電機)
4 ブレード
10 ステータ
20 ロータ
21 シャフト(回転軸部)
22 ロータホイール(支持部材)
23 ロータヨーク
23a ボルト挿入穴
23b 第2キー挿入溝
24、24a、24b ロータコア
25 コア部
25a ナット挿入穴
25b 溝部
25c 第1キー挿入溝
30、31 永久磁石
41 ナット(締結部材)
41a ねじ孔(螺合部分)
42 ボルト(締結部材)
43 キー部材
60 キー挿入穴
100、101 風力発電システム
241a、241b 第1磁極部
242a、242b 第2磁極部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸部と、前記回転軸部を取り囲むロータヨークと、前記ロータヨークの外周面上に配置され、複数の永久磁石が間隔を隔てて周状に埋め込まれるロータコアとを含むロータと、
前記ロータの外周面に対向するように配置されるステータとを備え、
前記ロータコアは、前記永久磁石を有する複数の第1磁極部と、前記永久磁石を有さない複数の第2磁極部とが1つずつ交互に周状に配置されることにより構成され、
前記ロータコアの前記第2磁極部に対応する部分に配置されている締結部材により、前記ロータヨークと前記ロータコアの内周部とが締結されている、回転電機。
【請求項2】
前記ロータコアは、複数のコア部を含むように周方向に分割可能に構成されており、
前記複数のコア部の各々は、
前記ロータコアの周方向に隣り合う前記第1磁極部と、
前記隣り合う第1磁極部の間に配置される前記第2磁極部と、を含む、請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記締結部材が前記ロータコアの内周部を前記ロータヨークの外周面に押し付けることにより、前記ロータヨークと前記ロータコアの内周部とが締結されている、請求項1または2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記ロータコアは、前記第2磁極部において分割可能に構成されており、
前記締結部材は、前記複数のコア部の境界部分に配置されている、請求項2または3に記載の回転電機。
【請求項5】
前記ロータコアは、前記ロータヨークの外周面上に配置される内周面を有する円筒形状に形成されており、
前記複数のコア部は、それぞれ、円筒形状を略等角度間隔に分割した略同一の形状を有するように形成されている、請求項2〜4のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項6】
前記締結部材は、ナットと、前記ナットに螺合されるボルトとを含み、
前記ナットは、前記ロータコア側に軸方向に延びるとともに、軸方向に沿って複数の螺合部分を含み、
前記ボルトは、前記ナットの延びる方向に沿って複数配置されているとともに、前記ナットの複数の螺合部分に螺合されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項7】
前記ロータコアの内周部には、前記ナットを挿入するナット挿入穴と、前記ナット挿入穴と前記ロータコアの内周面とを接続する溝部とが設けられており、
前記ナット挿入穴および前記溝部は、前記ロータコアの軸方向に延びるように設けられているとともに、前記溝部の溝幅は、前記ナット挿入穴の穴幅よりも小さくなるように形成されており、
複数の前記ボルトは、軸方向に延びる前記溝部を介して前記ナット挿入穴に挿入された前記ナットの複数の螺合部分に螺合されている、請求項6に記載の回転電機。
【請求項8】
前記ロータは、前記回転軸部を取り囲むとともに、前記ロータヨークの内周面に接する円板状の支持部材をさらに含み、
前記ロータヨークは、軸方向の長さが前記円板状の支持部材の厚みよりも大きい円筒形状に形成されているとともに、前記円筒形状のロータヨークの内周面のうちの前記支持部材からはみ出した部分に軸方向に沿って形成された複数のボルト挿入穴を含み、
複数の前記ボルトは、前記複数のボルト挿入穴を介して前記ロータコア側に軸方向に延びるように配置された前記ナットの複数の螺合部分に螺合されている、請求項6または7に記載の回転電機。
【請求項9】
前記ロータコアの内周部には、軸方向に延びる第1キー挿入溝が形成されており、
前記ロータヨークの外周面には、前記ロータコアの前記第1キー挿入溝に対応するように第2キー挿入溝が形成されており、
前記第1キー挿入溝と前記第2キー挿入溝とからなるキー挿入穴には、キー部材が挿入されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項10】
ロータと、前記ロータの外周面に対向するように配置されるステータとを含む発電機と、
前記発電機の前記ロータの前記回転軸部に接続されるブレードとを備え、
前記ロータは、
回転軸部と、
前記回転軸部を取り囲むロータヨークと、
前記ロータヨークの外周面上に配置され、複数の永久磁石が間隔を隔てて周状に埋め込まれるロータコアとを含み、
前記ロータコアは、前記永久磁石を有する複数の第1磁極部と、前記永久磁石を有さない複数の第2磁極部とが1つずつ交互に周状に配置されることにより構成され、
前記ロータコアの前記第2磁極部に対応する部分に配置されている締結部材により、前記ロータヨークと前記ロータコアの内周部とが締結されている、風力発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−152092(P2012−152092A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100541(P2011−100541)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【分割の表示】特願2011−9666(P2011−9666)の分割
【原出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】