説明

回転駆動されるマルチベベルステップ工具

本発明は、回転駆動されるマルチベベルステップ工具、特に硬質材料にドリルするステップドリルに関しており、切削及び前進方向に互い違いに配置されて各々がエッジの数に対応する数の縦溝を有する複数の単エッジ付き又は多エッジ付き切削ステップを備えている。周方向にお互いに隣接する縦溝(23、33)は、ウエブ(24)によってお互いに分けられている。本発明によれば、切削及び前進方向に2つの連続する切削ステップ(20、30)の周方向にお互いに隣接する縦溝(23、33)が、周方向の側面に開いていて且つその間に挟まれたウエブ(24)を遮る金属切削窓(25)によってお互いに接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転駆動されるマルチベベルステップ工具、特に、硬質材料にドリルするステップドリルに関しており、これは、請求項1の前提部に従って切削及び前進方向に互い違いに配置された複数の単エッジ付き又は多エッジ付き切削ステップを備える。
【背景技術】
【0002】
製造技術において、多段階加工がしばしば見出される。例えば、異なる直径の軸方向に互い違いになったドリル孔が形成されるが、皿穴を有するドリル孔、又は異なるドリル孔及び皿穴の組み合わせもまた、普通に形成される。加工時間を最小に維持するために、組み合わせ工具が、一つの製造ステップで前述の異なる加工操作を行うために開発されてきた。そのような組み合わせ工具の中には、ステップドリルビット、皿穴カッター、ステップ皿穴、ステップリーマーなどがあり、これらは以下では、適当であれば、一般的にステップ工具と呼ばれる。
【0003】
そのようなステップ工具の例は、特許文献1から6に記載されている。特許文献1〜3に記載されたステップ工具は、組み合わされたチップ縦溝を有するいくつかの切削ステップで製造されたチップを輸送する。特許文献4に記載されたステップ工具は2つの切削ステップを有しており、各々がそれ自身のチップ縦溝を有する。特許文献6に記載されたステップドリルは、いわば前述のステップ工具の両方の組み合わせであり、第1、第3及び第5の切削ステップ、ならびに第2及び第4の切削ステップを有して、各々の場合に3つのチップ縦溝が割り当てられている。特許文献5は、異なる加工直径の2つの切削ステップを有するマルチベベルステップドリルの形態の一般的な種類のマルチベベルステップ工具を示し且つ記述しており、各切削ステップにはそれら自身のチップ縦溝が割り当てられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】DE29901414U1
【特許文献2】DE3610016A1
【特許文献3】DE2001555OU1
【特許文献4】DE202007015595U1
【特許文献5】DE1785012U
【特許文献6】DE1041324A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のマルチベベルステップ工具は欠点を有しており、すなわち、比較的加工直径が小さい切削ステップのエリアで、縦溝毎のチップ輸送に利用可能な体積が通常はタイトに計算されているために、好ましくない条件下では、チップ詰まりが容易に起こりやすい。チップ詰まりのリスクは、例えば、小さな加工直径を有する切削ステップの軸方向長さとともに増加する。
【0006】
特許文献5で確立されたようなマルチベベルステップ工具に基づいて、特に比較的小さい加工直径を有する切削ステップのエリアで、チップの信頼性のある輸送が確実にされるように、マルチベベルステップ工具をさらに開発することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この問題は、請求項1の特徴を有するマルチベベルステップ工具によって解決される。
【0008】
本発明に従った回転駆動されるマルチベベルステップ工具は複数の単エッジ付き又は多エッジ付き切削ステップを備えており、それらは、(周方向又は回転方向又は)切削及び(軸方向又は)前進方向に互い違いに配置されて、且つ各々が切削エッジの数に対応する数の縦溝を有している。単エッジ付き切削ステップの場合、切削ステップは各々、正確に一つの切削エッジ、ならびにその切削エッジに対応する一つの縦溝を有しており、2つ、3つなどのエッジ付き切削ステップの場合には、切削ステップは、対応する数の切削エッジ、ならびに切削エッジの数に対応し且つ各々が切削エッジに割り当てられた数の縦溝を有している。これより、各切削ステップは、それぞれの切削エッジの数に対応する数の縦溝を有している。周方向にお互いに隣り合っている縦溝は、ランドによってお互いに分けられている。縦溝、及びそれらと共にそれらの間に位置するランドは、マルチベベルステップ工具の回転軸に関して、らせん状の形状を有するか又は直線状であることができる。
【0009】
2つの切削ステップの場合、異なる加工直径を有する切削ステップが切削及び前進方向に互い違いであることは、切削及び前進方向に最初の又は先行する切削ステップがより小さい加工直径を有し、切削及び前進方向に第2の又は後続の切削ステップがより大きな加工直径を有することを提供する。2つより多くの切削ステップの場合、切削及び前進方向の連続する2つの切削ステップが、切削及び前進方向の先行する切削ステップ、ならびに切削及び前進方向の後続の切削ステップ、例えば第1の切削ステップ及び第2の切削ステップ、又は第2の切削ステップ及び第3の切削ステップ、などを構成する。先行する切削ステップは、後続の切削ステップよりも常に小さい直径を有する。
【0010】
上述のように、本発明にしたがったマルチベベルステップ工具では、切削及び前進方向に連続する2つの切削ステップの周方向に隣り合った2つの縦溝が、ランドによってお互いに分けられている。異なる切削ステップの相関に関わらず、これらの縦溝は好ましくは、それぞれの切削ステップのはじまりから工具の柄の終わりまで連続して形成されていて、先行する切削ステップの縦溝が後続の切削ステップの縦溝よりも長くなって、縦溝の端が軸方向に同じ場所にある。
【0011】
本発明によれば、切削及び前進方向に連続する2つの切削ステップ、すなわち、より小さい加工直径を有する先行する切削ステップとより大きい加工直径を有する後続の切削ステップとの周方向に隣り合った縦溝が、それらの間のランドを遮るチップ窓によって接続されている。先行する切削ステップとの関係では、チップ窓はそれゆえ、先行する切削エッジの対応するレーキ面に位置するか、又は、切削インサートにフィットした工具本体として形成されているマルチベベルステップ工具の場合には、対応するレーキ面を延在している先行する切削ステップの縦溝の面に、位置している。
【0012】
その周方向に隣り合った縦溝がチップ窓によってお互いに接続されている切削及び前進方向に連続した2つの切削ステップは、好ましくは、第1及び第2の切削ステップを構成する。なぜなら、チップ輸送に関連した問題が、最小の加工直径を有する第1の切削ステップで起こりやすいからである。第1及び第2の切削ステップの代わりに、又はそれらに加えて、第2及び第3の、第3及び第4の、などの、すなわち、切削及び前進方向に連続した任意の2つの切削ステップの周方向に隣り合った2つの縦溝が、それらの間のランドにおけるチップ窓によって、接続されることができる。
【0013】
いずれの場合も、より小さな加工直径を有する切削及び前進方向の先行する切削ステップの縦溝で輸送されるチップの少なくとも一部が、より大きな加工直径を有する切削及び前進方向の後続の切削ステップの周方向に隣り合った縦溝まで、例えば平削り(ミリング)又は研削(グラインディング)によって製造されるチップ窓を通過することができる。先行する切削エッジにて製造されたチップの輸送は、したがって、チップがチップ窓に到達するまでは、先行する切削エッジの各々の縦溝によって、縦溝の長手方向のみに達成されて、チップがチップ窓に到達した後は、先行する切削ステップの各々の縦溝、ならびに後続の切削の周方向に隣り合った縦溝で、達成される。したがって、トータルとしては、より大きな体積が、先行する切削エッジで製造されたチップの輸送のために利用可能であり、このことは、よりよいチップ輸送が、特に非常に小さい加工直径を有する第1の切削ステップに対して達成されることができることを意味している。より良いチップ輸送のおかげで、第1の切削ステップの縦溝の放射方向の深さは、例えば大きなコア直径を維持するために、必要であればタイトな寸法を有することができる。
【0014】
本発明に従ったマルチベベルステップ工具は、特に、シリンダヘッドに燃料注入器のための孔を形成するためのマルチベベルステップドリルの形態に適用され得る。個々の切削ステップ、例えば3つの切削ステップは、各々好ましくは、周方向に等距離に位置した面と周方向の切削エッジとを有する多エッジ付き、特に、ある点に対して対称なエッジを有する二重エッジ付きである。
【0015】
付加的な有用な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0016】
ある好適な実施形態では、チップ窓が、後続する切削ステップの周方向に隣り合った縦溝の底まで、本質的に放射方向に延在している。それゆえ、チップ窓は十分な放射方向の深さを有し、先行する切削ステップで製造されたチップが、後続する切削ステップの周方向に隣り合った縦溝を通過して、工具の柄に向かって通過されることを可能にする。
【0017】
チップ窓は好ましくは、後続する切削ステップの少なくともはじめを覆うように、特に、後続する切削ステップの対応する面の切削ステップが本質的にチップ窓に中心を有するように、前進方向に位置されている。この位置は、後続する切削エッジの縦溝の最大長が、先行する切削ステップで製造されたチップのさらなる輸送のために利用可能であることを確実にする。チップ窓を通って後続の切削ステップの周方向に隣り合った縦溝まで、先行する切削ステップの縦溝を通過しているチップは、したがって、後続の切削ステップのはじめから、後続の切削ステップで製造されたチップと共に、工具の柄に向かって運ばれる。
【0018】
放射方向の深さならびに軸方向の長さ、すなわちチップ窓のサイズは、加工されるべき材料、及び先行する切削ステップで期待されるチップの平均サイズ(長さ、厚さ、幅)に依存して構成されることができる。実際には、このことは、比較的長いチップに対してはかなり深く且つ長いチップ窓が選ばれることができ、比較的短いチップに対しては、より浅く且つより短いチップ窓が十分であることができることを意味する。先行する切削ステップの縦溝から、後続の切削エッジの周方向に隣り合った縦溝までのチップの輸送は、製造要件に従ってチップ窓を設計することによって、改良されることができる。
【0019】
チップ窓は好ましくは、工具の先端から工具の柄まで軸方向に、放射状に深さが増すチップ窓の入口と、チップ窓の入口に接続されて且つ好ましくは軸方向に平行なチップ窓の底と、チップ窓の底に接続されて放射状に深さが減るチップ窓の端とに分けられる。好ましくは軸方向に平行なチップ窓の底の長さは、それぞれの要件にしたがって構成されることができる。例えば、チップ窓の底は非常に短くなることができて、チップ窓は、横から見ると凹状の開口の形状を有する。チップ窓の底をより長く設計することによって、チップ窓は細長い形状を示すことができる。チップ窓の入口及びチップ窓の端は、各々好ましくは凹面状に湾曲した表面として具現化される。チップ窓の底は好ましくは、特定の軸方向長さを有する平面、又は例えば特定の軸方向長さを有する凹面状の湾曲面からなる。
【0020】
チップ窓の底は好ましくは、レーキ面に対して、又は周方向に隣り合っていて後続の切削ステップのレーキ面に延在する縦溝に関して、所定の角度で傾斜している。チップ窓の底をレーキ面又は周方向に隣り合っていてレーキ面に延在する縦溝面に対して傾けることによって、先行する切削ステップの縦溝と後続の切削ステップの縦溝との間の深さの差が、次第に減少されることができ、これは、先行する切削ステップの縦溝から後続の切削ステップの周方向に隣り合った縦溝へのチップの移送を改良する。
【0021】
加えて、チップ窓は、周方向に隣り合う縦溝の間のランドにおける開口の方向に関して、本質的にはマルチベベルステップ工具の回転軸及び2つの縦溝の長手方向に対して放射方向に、又は、マルチベベルステップ工具の回転軸及び後続の切削ステップの縦溝の長手方向に対して90°より小さい角度で、向けられることができる。本質的に放射方向の向きに比べて、回転軸又は縦溝の長手方向に対して90°より小さい角度でのチップ窓の向きは、先行する切削ステップの縦溝から後続の切削ステップの周方向に隣り合った縦溝までのチップ窓を通した偏向が少ないという利点を有し、これはチップの輸送全体を改良する。
【0022】
一つの好適な実施形態では、本発明に従ったマルチベベルステップ工具は、硬いセメントカーバイドで形成された単一部品工具本体、及びその工具本体に位置するPCD(多結晶ダイアモンド)切削インサートを有する。この実施形態では、先行する切削ステップのチップ窓は、軸方向長さ及び軸方向位置に関して、後続の切削ステップの対応する切削インサートの軸方向長さ及び軸方向位置に適合される。
【0023】
縦溝はらせん状の形状を有することができるが、好ましくは、それらは直線状に具現化される。
【0024】
加えて、本発明に従ったマルチベベルステップ工具は、一つ又はいくつかの切削ステップに切削流体を供給するための最小量潤滑に適したチャネルの内部システムを有する。切削流体の供給は、好ましくは出口を介して提供され、これは各々、先行する切削ステップの正面に向いた側面のエリアに、すなわち切削方向に対応するレーキ面の後ろに、位置する。複数の切削ステップを有するマルチベベルステップ工具の場合は、そのチップが工具の柄に向かって長い距離を輸送されなければならない専用の切削ステップのみに、例えば3つの切削ステップの場合には第1及び第2の切削ステップのみに、潤滑剤を供給すれば十分である。いずれの場合も、正面の側面で漏れ出す潤滑剤は、切削方向に後続する切削ステップの周方向に隣り合った縦溝を通って流れ出ることができて、それによって、後続の切削ステップにおけるチップ輸送を手助けすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
以下では、図面の助けをかりて、本発明に従ったマルチベベルステップ工具の一つの例示的な実施形態が記述される。図面には以下のものがある。
【図1a】マルチベベルステップ工具の一つの実施形態の側面図である。
【図1b】図1aのステップドリルの正面図である。
【図2a】図1aの図に対して回転軸の周りに−40°回転されたステップドリルの側面図である。
【図2b】図1bの図に対して回転軸の周りに−40°回転されたステップドリルの正面図である。
【図3a】図1aの図に対して回転軸の周りに−70°回転されたステップドリルの側面図である。
【図3b】図1bの図に対して回転軸の周りに−70°回転されたステップドリルの正面図である。
【図3c】図3aに示されたステップドリルの工具先端の拡大図である。
【図4】図1a〜図3cに示されたステップドリルの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図面において、参照番号10は、ステップドリルとして具現化された多エッジ付きで回転方向に駆動されるマルチベベルステップ工具を示す。ステップドリル10は、自動車製造においてシリンダヘッドに燃料注入器を収容するために必要とされるもののような互い違いのドリル孔を製造するために使用される。図面に含まれる測定値及び製造指示がマルチベベルステップ工具の一つの例示的な実施形態のみを示していることに留意されたい。
【0027】
ステップドリル10は、チャック(図示せず)にそれを搭載するための工具の柄12と切削部14とを有している。ステップドリル10は例えば長さ191.5mmであり、工具の柄は直径約25mmである。示されている例示的な実施形態では、ステップドリル10は3つの切削ステップ20、30及び40を有し、第1の切削ステップは公称直径D20を有し、第2の切削ステップ30はわずかに大きい公称直径D30を有し、第3の切削ステップ40は再びより大きな公称直径D40を有する。
【0028】
測定値D20は例えば約7.7mmであり、測定値D30は約18mm、測定値D40は約23.7mmである。全ての公称直径は、非常に厳しい公差を有している。第1、第2、及び第3の切削ステップ20、30、40は、図面に見ることができるように、切削及び前進方向に、第1及び第2の切削ステップの間の角度方向の距離が約−40°であり且つ第1及び第3の切削ステップの間の角度方向の距離が約−70°であるように、互い違いに配置されている。図1a、2aにおいて、第2及び第3の切削ステップのはじめは、点線によって示されている。
【0029】
図示された例示的な実施形態では、第1、第2、及び第3の切削ステップ20、30、40は、各々二重エッジ付きであり、すなわち、各々が2面の切削エッジ21、31、41及び2つの周方向の切削エッジ22、32、42、ならびに各々が切削エッジの数に対応している2つの縦溝23、33、43(図1b、図2bを参照)を有している。縦溝23、33、43は、図面に見ることができるように、各々の切削ステップ20、30、40のはじめから工具の柄12の直前のそれらの端まで、連続した直線に構成されている。周方向に隣り合った縦溝23、33、及び33、43は、お互いにランド24、34、44によって分けられている。第1、第2、及び第3の切削ステップ20、30、40を図面に示されているように切削及び前進方向に互い違いにすることによって、第1の切削ステップ20は切削及び前進方向で第2の切削ステップ30に対して先行する切削ステップを構成し、第2の切削ステップ30は切削及び前進方向で第1の切削ステップに対して後続の切削ステップを構成し、且つまた、第3の切削ステップ40に対して先行する切削ステップを構成する。第3の切削ステップ40は、今度は切削及び前進方向で第2の切削ステップ30に対して後続の切削ステップを構成する。
【0030】
図示された例示的な実施形態では、ステップドリル10は、硬いセメントカーバイドで形成された単一部品工具本体、ならびにその工具本体に位置して各々が面と周方向の切削エッジ21、22、31、32、及び41、42とをそれぞれ有するPCD(多結晶ダイアモンド)切削インサート14を有する(図3c参照)。
【0031】
図面に示されている例示的な実施形態では、第1及び第2の切削エッジ20、30の周方向に隣り合った縦溝22、33はお互いにチップ窓25によって接続されており、これは、周方向の側に開いていて、それらの間のランド24を遮る。図示されている例示的な実施形態では、それらの間のランド24を遮っているチップ窓25は、後続の第2の切削ステップ30の周方向に隣り合った縦溝33の底まで、本質的に放射方向に延在している。チップ窓25は、前進方向に第2の切削ステップ30のはじめまで延在しており、実際のところは特に、第2の切削ステップ30の最も近い面の切削エッジ31が、本質的にチップ窓25に中心を有している(図2a参照)。
【0032】
チップ窓25は、工具の先端11から工具の柄12まで軸方向に、放射状に深さが増すチップ窓の入口25aと、チップ窓の入口25aに接続されて且つ好ましくは軸方向に平行なチップ窓の底25bと、チップ窓の底に接続されて放射状に深さが減るチップ窓の入口25cとに分けられる(図3a、3cを参照)。図示されている例示的な実施形態では、チップ窓の底25bを間に有するチップ窓の入口25aとチップ窓の入口25cとは、チップ窓が、ランド24の開口の方向に、ステップドリルの回転軸11に関して且つ第2の切削ステップ30の縦溝33の長手方向に関して、それぞれ本質的に放射方向に向けられている(図3c参照:α?=90°)ように構成されている。
【0033】
例示的な実施形態では、軸方向に平行なチップ窓の底25bの長さは、PCD切削インサート15の長さに本質的に対応しており、これは第2の切削ステップ30の面及び周方向の切削エッジ31、32を構成する。チップ窓の入口25a及びチップ窓の端25bは、各々凹面状の湾曲面として構成されている。チップ窓の底25bは、この例示的な実施形態では、特定の軸方向長さを有する平面によって形成されている。加えて、チップ窓の底25bは、第2の切削ステップ30のレーキ面35を延在する縦溝33の縦溝面36に向かって特定の角度だけ、図示されている例示的な実施形態では約5°だけ、傾斜している。
【0034】
工具10は第1及び第2の切削ステップ20、30に対する切削流体サプライを有しており、これらは、最少量の潤滑のために適したチャンネル50の内部システムによって達成され、これは図1aでは点線によって示されている。切削流体は出口28、38を介して供給され、これらは各々、正面に向いた側面29、39のエリアに、すなわち、切削方向で第1又は第2の切削ステップ20、30の対応する正面切削エッジ21、31の後ろに、位置する。
【0035】
もちろん、本発明の元々の思想を離れることなく、開示されている例示的な実施形態から離れることが可能である。
【0036】
例えば、例示的な実施形態において、チップ窓は、第1及び第2の切削ステップ20、30の周方向に隣り合った縦溝23、33の間に形成されるだけではなく、第2及び第3の切削ステップ30、40の周方向に隣り合った縦溝の間に形成されることもできる。
【0037】
3つの切削ステップの代わりに、本発明にしたがったマルチベベルステップ工具はまた、2つの切削ステップのみ、あるいは3つより多くの切削ステップを有することもできる。3つより多くの切削ステップが存在する場合には、切削及び前進方向に先行の及び後続の切削ステップの任意の周方向に隣り合った縦溝が、その間のランドを遮るチップ窓によって接続されることができる。
【0038】
チップ窓25が回転軸11及び後続の切削ステップの縦溝の長手方向に関して本質的に放射方向に向いている開示された例示的な実施形態から離れて、チップ窓の底25bがその間にあるチップ窓の入口25a及びチップ窓の端25cはまた、回転軸11及びそれぞれの後続の切削ステップの縦溝の長手方向に関して、チップ窓25がα<90°の角度を向くように、構成されることができる。
【0039】
図示されている例示的な実施形態から離れて、様々な切削ステップは、各々一つの切削エッジのみを有することができ、あるいは、2つより多くの切削エッジを有することができる。
【0040】
加えて、いくつかの指定された切削ステップの代わりに、全ての切削ステップが、同様に切削流体を供給されることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動されるマルチベベルステップ工具、特に硬質材料にドリルするステップドリルであって、複数の単エッジ付き又は多エッジ付き切削ステップ(20、30、40)を備えており、これらは、切削及び前進方向に互い違いに配置されて、各々がエッジ(21、22、31、32、41、42)の数に対応する数の縦溝(23、33、43)を有し、それによって周方向にお互いに隣り合う縦溝(23、33)がランド(24)によってお互いに分けられており、
切削及び前進方向に2つの連続する切削ステップ(20、30)の周方向にお互いに隣り合う縦溝(23、33)が、周方向の側面に開いていて且つそれらの間のランド(24)を遮るチップ窓(25)によって接続されていることを特徴とする、マルチベベルステップ工具。
【請求項2】
前記チップ窓(25)が、後続する切削ステップ(30)の縦溝(33)の底まで、本質的に放射方向に延在していることを特徴とする、請求項1に記載のマルチベベルステップ工具。
【請求項3】
前記チップ窓(25)が、後続する切削ステップ(30)の少なくともはじめまで工具の柄(12)に向かって軸方向に延在していることを特徴とする、請求項1又は2に記載のマルチベベルステップ工具。
【請求項4】
前記チップ窓(25)が、前記工具の柄(12)に向かって軸方向に延在して、後続する切削ステップ(30)の最も近い面の切削エッジ(31)が本質的にチップ窓(25)に中心を有していることを特徴とする、請求項3に記載のマルチベベルステップ工具。
【請求項5】
前記チップ窓(25)が所定の軸方向長さを有しており、これが、先行する接触ステップ(20)によって製造されるチップのサイズに依存して構成されていることを特徴とする、請求項3又は4に記載のマルチベベルステップ工具。
【請求項6】
前記チップ窓(25)が、前記工具の柄(12)に向かって軸方向に、放射状に深さが増すチップ窓の入口(25a)と、チップ窓の入口(25a)に接続されて且つ好ましくは軸方向に平行なチップ窓の底(25b)と、チップ窓の底に接続されて且つ放射状に深さが減るチップ窓の端(25c)とに分けられることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載のマルチベベルステップ工具。
【請求項7】
前記チップ窓の底(25b)が平面として形成されていることを特徴とする、請求項6に記載のマルチベベルステップ工具。
【請求項8】
前記チップ窓の底(2b)が、レーキ面(35)に対して、又は周方向に隣り合っていて後続の切削ステップに属して且つレーキ面(35)に延在するチップ縦溝(33)のチップ縦溝面(36)に対して、所定の角度で傾斜していることを特徴とする、請求項6又は7に記載のマルチベベルステップ工具。
【請求項9】
前記チップ窓の入口(25a)及び前記チップ窓の端(25b)が、各々凹状の湾曲面として形成されていることを特徴とする、請求項6〜8のいずれか一つに記載のマルチベベルステップ工具。
【請求項10】
前記チップ窓(25)が、周方向に隣り合うチップ縦溝(23、33)の間のランド(24)における開口の方向に関して、前記マルチベベルステップ工具の回転軸(11)及び前記チップ縦溝(23、33)の長手延長に対してそれぞれ所定の角度(α≦90°)で、位置合わせされていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一つに記載のマルチベベルステップ工具。
【請求項11】
好ましくは硬いセメントカーバイドで形成された単一部品工具本体、及び、前記工具本体に位置するPCD切削インサートとして構成された切削ステップ(20、30、40)の切削エッジ(21、22、31、32、41、42)を特徴とする、請求項1〜10のいずれか一つに記載のマルチベベルステップ工具。
【請求項12】
前記チップ窓(25)が、軸方向長さ及び軸方向位置に関して、後続の切削ステップ(20)の最も近い切削インサート(15)の軸方向長さ及び軸方向位置に対応していることを特徴とする、請求項11に記載のマルチベベルステップ工具。
【請求項13】
チップ縦溝(23、33、43)が直線状に具現化されていることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一つに記載のマルチベベルステップ工具。
【請求項14】
前記マルチベベルステップ工具に切削流体を供給するための最小量の潤滑のために構成されたチャンネル(50)の内部システムを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一つに記載のマルチベベルステップ工具。
【請求項15】
一つ又はいくつかの切削ステップ(20、30)に対する切削流体サプライが、対応する面の切削エッジ(21、31)の後ろの正面向き側面(29、39)に各々位置する出口(28、38)を介して提供されることを特徴とする、請求項14に記載のマルチベベルステップ工具。
【請求項16】
切削ステップ(20、30、40)が、各々周方向に等距離に位置する面と周方向の切削エッジ(21、22、31、32、41、42)とを有する複数の切削エッジ、特にある点に関して対称である面及び周方向切削エッジ(21、22、31、32、41、42)を有する二重エッジを有して構成されていることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一つに記載のマルチベベルステップ工具。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−521897(P2012−521897A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502449(P2012−502449)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【国際出願番号】PCT/DE2010/000366
【国際公開番号】WO2010/115404
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(511118517)
【Fターム(参考)】