説明

因子VII融合ポリペプチド

本発明は、活性化しうるか、または活性化形態にある、半減期を延長させた因子VII (FVII)融合ポリペプチドに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性化しうるか、または活性化形態にある、半減期を延長させた因子VII (FVII)融合ポリペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
FVIIは、肝臓が生成させる糖タンパク質である。FVIIaとして知られるFVIIの活性化形態は、血液凝固において中心的な役割を果たす。血液凝固は、多数のトリプシン様セリンプロテアーゼ間で相互作用がカスケードする結果として達成される。これらの酵素の多くは、それらの活性化形態を生成させる限定的なタンパク質分解において切断される、不活性の前駆体ザイモゲンとして合成される。
【0003】
特に、FVIIは、FVIIaへと活性化され、これが、特定の細胞の膜上で構成的に発現するリポタンパク質である組織因子に結合する。FXaおよびFIXaを含めた特定のプロテアーゼが、FVIIのFVIIaへの活性化を引き起こすことが知られている。FVIIの活性化は、タンパク質分解によるArg (152)とIle (153)との間のペプチド結合の切断を介する、単鎖FVIIの、活性化二本鎖形態(FVIIa)への転換を伴う。Ile (153)とAsp (343)との間の塩架橋の形成により、FVIIaのザイモゲン様形態から、活性形態への転換が駆動される。
【0004】
血管が損傷すると、組織因子が、血液および循環するFVIIaに曝露される。次いで、結合した組織因子およびFVIIaが、因子IX (FIX)および因子X (FX)を活性化して、それぞれ、FIXaおよびFXaを形成する。
【0005】
血友病患者は、機能的な凝血因子VIIIまたは因子IXをほとんどまたはまったく有しておらず、患者によっては、投与された因子に対する中和抗体を発生させ、因子VIIaなどのバイパス剤による治療を必要とする。
【0006】
因子FVIIaによる予防法は、現在のところ、半減期が短いために煩雑かつ高価であるが、血友病の治療は、予防的であることが最も望ましい。因子VIIaの血漿濃度を、必要とされる時間にわたり閾値レベルを越えて維持するためには、反復投与が必要とされる。
【0007】
半減期が短いという問題に対処しようと試みる目的で、修飾FVIIポリペプチドが開発されている。例えば、WO2006/018204は、FVIIポリペプチド配列のアミノ酸140〜152に、FXまたはFIXに由来する活性化ペプチドを挿入することにより修飾されたFVIIポリペプチドについて説明している。しかし、WO2006/018204において説明されている修飾ポリペプチドを、FVIIaへと活性化することは不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2006/018204
【特許文献2】US2006/0166915
【特許文献3】WO02/077218
【特許文献4】US2003/0100075
【特許文献5】WO2004/029090
【特許文献6】US2003/0130191
【特許文献7】米国特許第3,773,919号
【特許文献8】EP-A-0058481
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Saikiら、Science 239: 487頁(1988)
【非特許文献2】「Recombinant DNA Methodology」、Wuら編、Academic Press, Inc.、San Diego (1989)、189〜196頁
【非特許文献3】「PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications」、Innisら編、Academic Press, Inc. (1990)
【非特許文献4】Pouwelsら、「Cloning Vectors: A Laboratory Manual」、Elsevier、New York (1986) (ISBN 0444904018)
【非特許文献5】Kaufman, R. J.、「Large Scale Mammalian Cell Culture」、1990、15〜69頁
【非特許文献6】Feignerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 7413〜7417頁、1987
【非特許文献7】Sambrookら(「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」、2版、1〜3巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989)
【非特許文献8】Kaufmanら、Meth. in Enzymology 185:487〜511頁、1990
【非特許文献9】Morrisら、「Animal Cell Technology」、1997、529〜534頁
【非特許文献10】Hitzemanら、J. Biol. Chem. 255: 2073頁、1980
【非特許文献11】Hessら、J. Adv. Enzyme Reg. 7: 149頁、1968
【非特許文献12】Hollandら、Biochem. 17: 4900頁、1978
【非特許文献13】Kurjanら、Cell 30: 933頁、1982
【非特許文献14】Bitterら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 5330頁、1984
【非特許文献15】Hinnenら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75: 1929頁、1978
【非特許文献16】Hiatt、Nature 344: 469〜479頁(1990)
【非特許文献17】Sidmanら、Biopolymers 22(1): 547〜556頁、1985
【非特許文献18】Langerら、J. Biomed. Mater. Res. 15: 167〜277頁、1981
【非特許文献19】Langer、Chem. Tech. 12: 98〜105頁、1982
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、FVIIがFVIIaへと活性化する能力を保持しながら、FVIIおよびFVIIaの半減期を延長する手法が必要とされつつある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、FXまたはFIXに由来する活性化ペプチド配列を、FVIIポリペプチドの特定の位置に付加することにより、FVIIaへと活性化されうる融合FVIIポリペプチドがもたらされ、非活性化FVIIポリペプチドおよび活性化FVII (FVIIa)ポリペプチドいずれの半減期も延長されることを同定した。
【0012】
本発明の第1の態様は、FVIIポリペプチドもしくはFVIIaポリペプチドまたはこれらの相同体と、FX活性化ペプチドもしくはFIX活性化ペプチドまたはこれらの相同体とを含むポリペプチドであって、前記FX活性化ペプチドまたはFIX活性化ペプチドが、前記FVIIポリペプチドまたはFVIIaポリペプチドのC末端に融合しているポリペプチドに関する。
【0013】
FVII/FVIIaポリペプチドおよびFX/FIX活性化ペプチドの相同体は、生物学的に活性な相同体である。FVII/FVIIaポリペプチド相同体および活性化ペプチド相同体の「生物学的活性」については、以下で定義する。
【0014】
本明細書で用いられる「FVIIポリペプチド」という用語は、成熟非活性化FVIIポリペプチドを指す。
【0015】
本明細書で用いられる「FVIIaポリペプチド」という用語は、FVIIポリペプチドの活性化形態、すなわち、Arg152-Ile153における単一のペプチド結合で切断され、その結果として、ジスルフィド架橋により一体に保持される2つのポリペプチド鎖の形成をもたらす、FVIIポリペプチドを指す。したがって、FVIIaポリペプチドは、FVIIポリペプチドと同じ配列を有するが、1つではなく、2つのポリペプチド鎖から形成されている。
【0016】
本発明のFVIIポリペプチドまたはFVIIaポリペプチドは、切断することが可能であり、次いで、切断されたポリペプチドのC末端に、FX活性化ペプチドまたはFIX活性化ペプチドを融合させる。
【0017】
本明細書で用いられる「切断FVIIポリペプチドまたは切断FVIIaポリペプチド」は、野生型または相同体のFVIIポリペプチドまたはFVIIaポリペプチドのC末端における、最初の1、2、3、4、5、6、7、8、9または10アミノ酸残基を含まないFVIIポリペプチドまたはFVIIaポリペプチドを包含する。本発明による切断FVIIポリペプチドまたは切断FVIIaポリペプチドは、生物学的に活性である。
【0018】
本発明のFVIIポリペプチドまたはFVIIaポリペプチドはまた、伸長させることも可能であり、次いで、伸長させたポリペプチドのC末端に、FX活性化ペプチドまたはFIX活性化ペプチドを融合させる。本明細書で用いられる「伸長FVIIポリペプチドまたは伸長FVIIaポリペプチド」は、野生型または相同体のFVIIポリペプチドまたはFVIIaポリペプチドのC末端において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上のアミノ酸残基をさらに含むFVIIポリペプチドまたはFVIIaポリペプチドを包含する。本発明による伸長FVIIポリペプチドまたは伸長FVIIaポリペプチドは、生物学的に活性である。
【0019】
本発明のFVII融合ポリペプチドまたはFVIIa融合ポリペプチドは、野生型FVIIポリペプチドおよび/または野生型FVIIaポリペプチドのそれぞれと比較して、半減期が延長されている。
【0020】
「FIX活性化ペプチド」または「FX活性化ペプチド」とは、成熟FIXポリペプチドまたは成熟FXポリペプチドのそれぞれが、その不活性(ザイモゲン)形態から、その活性化形態へと転換される際に、成熟ペプチドから放出されるペプチドを指す。
【0021】
FIX活性化ペプチドおよびFX活性化ペプチドは、切断することが可能である。「切断FIXペプチド」および「切断FXペプチド」という用語は、野生型または相同体のFIX活性化ペプチドまたはFX活性化ペプチドのC末端および/またはN末端に存在する、最初の1、2、3、4、5、または6アミノ酸残基を含まない、FIXペプチドまたはFXペプチドのそれぞれを包含する。切断FIX活性化ペプチドまたは切断FX活性化ペプチドは、生物学的に活性である。
【0022】
本発明のFX活性化ペプチドまたはFIX活性化ペプチドはまた、伸長させることも可能である。本明細書で用いられる「伸長FX活性化ペプチドまたは伸長FIX活性化ペプチド」という用語は、野生型または相同体の活性化ペプチドのN末端および/またはC末端において、さらなる1、2、3、4、5、6以上のアミノ酸残基を含む、FX活性化ペプチドまたはFIX活性化ペプチドを包含する。伸長FXペプチドまたは伸長FIXペプチドは、生物学的に活性である。
【0023】
野生型FVIIポリペプチドおよび野生型FVIIaポリペプチドは、配列番号1に示される通りである。この配列は、リーダー配列を伴わない、成熟FVIIポリペプチドまたは成熟FVIIaポリペプチドを表わす。
【0024】
配列番号1における3文字表示である「GLA」とは、4-カルボキシグルタミン酸(γ-カルボキシグルタミン酸)を意味する。
【0025】
FIXの野生型活性化ペプチドの配列を、配列番号2に示す。FXの野生型活性化ペプチドの配列は、配列番号3に示す。
【0026】
本発明の一実施形態では、本発明が、配列番号1に示されるアミノ酸配列の残基1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10から397、398、399、400、401、402、403、404、405もしくは406まで、またはこれらの相同体を含むポリペプチドに関し、活性化ペプチドが、配列番号2に示されるアミノ酸配列の残基1、2、3、4、5もしくは6から30、31、32、33、34もしくは35まで、またはこれらの相同体、あるいは配列番号3に示されるアミノ酸配列の残基1、2、3、4、5もしくは6から47、48、49、50、51もしくは52まで、またはこれらの相同体を含む。
【0027】
したがって、本発明は、そのC末端で、配列番号2の残基1、2、3、4、5もしくは6のうちのいずれか1つで始まり、配列番号2の残基30、31、32、33、34もしくは35のうちのいずれか1つで終わるか、または配列番号3の残基1、2、3、4、5もしくは6のうちのいずれか1つで始まり、配列番号3の残基47、48、49、50、51もしくは52のうちのいずれか1つで終わる活性化ペプチドに融合させた、配列番号1の残基1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10のうちのいずれか1つで始まり、配列番号1の残基397、398、399、400、401、402、403、404もしくは405のうちのいずれか1つで終わるポリペプチド配列を包含する。
【0028】
本明細書における「ポリペプチド」という用語は一般に、ペプチド結合により一体に接合された複数のアミノ酸残基を意味する。ポリペプチドは、ペプチド、オリゴペプチド、オリゴマー、またはタンパク質と互換的に用いられ、これらと同じものを意味し、糖タンパク質およびそれらの誘導体を包含する。「ポリペプチド」という用語はまた、基準タンパク質と同じ(またはこれより高度な)生物学的活性を保持する相同体も包含することを意図する。
【0029】
本発明では、FVIIポリペプチドまたはFVIIaポリペプチドの相同体が、配列番号1に示される野生型FVIIポリペプチドまたは野生型FVIIaポリペプチドと同じであるか、またはこれより高度な生物学的活性を有する。本明細書では、相同体という用語が、変異体を包含する。
【0030】
野生型FVIIaの生物学的活性とは、該ポリペプチドが、その基質であるFXを、活性FXaへと転換する能力である。本発明のポリペプチドを、FVIIポリペプチドとする場合は、その生物学的活性を決定しうる前にまず、該ポリペプチドを、FVIIaへと活性化しなければならない。
【0031】
FVIIaポリペプチドの生物学的活性は、「in vitroにおけるタンパク質分解アッセイ」を用いて、以下の通りに定義することができる。
【0032】
0.1MのNaCl、5mMのCaCl2、および1mg/mlのウシ血清アルブミンを含有する50mM Hepes 100マイクロリットル中の因子VIIa (10nM)および因子X (0.8マイクロモル)を、マイクロ滴定プレート内で15分間にわたりインキュベートする。次いで、0.1MのNaCl、20mMのEDTA、および1mg/mlのウシ血清アルブミンを含有するpH7.4の50mM Hepes 50マイクロリットルを添加することにより、FXの切断を停止させる。FXaの生成量は、比色基質であるZ-D-Arg-Gly-Arg-p-ニトロアリニド(S-2765、Chromogenix、Sweden)を添加して、最終濃度を0.5mMとすることにより測定する。SpectraMax (商標) 340プレートリーダー(Molecular Devices、USA)により、405nmにおける吸光度を持続的に測定する。10分間にわたり推移させた吸光度を、FVIIaを含有しないブランクウェルにおける吸光度を減じた後で、相同体FVIIaのタンパク質分解活性と、野生型因子VIIa (配列番号1に示される)のタンパク質分解活性との比を計算するのに用いる。
比= (因子VIIaの相同体のA405nm)/(配列番号1に示される因子VIIaポリペプチドのA405nm)
【0033】
この試験では、0.8を超える比(場合によって、約1、1.25、および1.5以上の比を含めた)により、本発明に従う生物学的に活性なポリペプチドを定義する。
【0034】
一実施形態では、本発明のFVIIポリペプチドまたはFVIIaポリペプチドを、配列番号1で定義される野生型FVIIポリペプチドまたは野生型FVIIaポリペプチドと、少なくとも80%相同であるアミノ酸配列へと伸長させる。さらなる実施形態では、このような配列が、配列番号1における野生型FVIIポリペプチドまたは野生型FVIIaポリペプチドのアミノ酸配列と、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.4%、または99.5%相同/同一でありうる。
【0035】
十分に理解される通り、アミノ酸レベルにおける相同性とは一般に、アミノ酸の類似性または同一性に関連する。
【0036】
百分率による配列の相同性は、目視および数学的計算により決定することができる。百分率によるアミノ酸配列の同一性を決定することを目的とする配列決定は、BLASTまたはALIGNなど、公開されているコンピュータソフトウェアを用いる各種の方法により達成することができる。例えば、本発明のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得るには、XBLASTプログラムによりタンパク質検索を実施することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたる最大の配列決定を達成するのに必要とされる任意のアルゴリズムを含め、配列決定を施すのに適切なパラメータを決定することができる。
【0037】
本発明のFVIIaポリペプチドの相同体は、配列番号1の野生型FVIIaポリペプチドと同じであるかまたはこれより高度な生物学的活性を有する。本発明のFVIIポリペプチドの相同体は、それがFVIIaポリペプチドへと活性化されると、配列番号1の野生型FVIIaポリペプチドと同じであるかまたはこれより高度な生物学的活性を有する。本発明の変異体ポリペプチドは、US2006/0166915、WO02/077218、US2003/0100075、US2003/0130191、およびWO2004/029090において開示される、すべての変異体ポリペプチド配列を包含し、これらの開示は、参照により、全体において本明細書に組み込まれる。
【0038】
一実施形態では、本発明のFIX活性化ペプチドまたはFX活性化ペプチドを、配列番号2または3における野生型FIX活性化ペプチドまたは野生型FX活性化ペプチドのそれぞれと、少なくとも80%相同であるアミノ酸配列へと伸長させる。さらなる実施形態では、このような配列が、このような野生型FIX活性化ペプチドまたは野生型FX活性化ペプチドのアミノ酸配列と、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.4%、または99.5%相同/同一でありうる。
【0039】
本発明の文脈におけるFIX活性化ペプチドまたはFX活性化ペプチドの生物学的活性とは、本発明の融合ポリペプチドの血漿半減期を、該活性化ペプチドを添加する前の、FVIIポリペプチドまたはFVIIaポリペプチドの血漿半減期を超えて延長する能力である。融合ポリペプチドの半減期は、活性化ペプチドを添加する前のFVIIポリペプチドまたはFVIIaポリペプチドの半減期より約5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、100%、または200%以上長くなりうる。
【0040】
血漿「半減期」という用語は、特定のタンパク質について、初期のタンパク質プールのうちで50%だけが残存するまでにかかる時間を意味する。半減期は、ELISAにより測定することができる。
【0041】
本発明のFVIIポリペプチドもしくはFVIIaポリペプチド、またはFXペプチドもしくはFIXペプチドの相同体は、(i)アミノ酸残基のうちの1もしくは複数が、保存的アミノ酸残基もしくは非保存的アミノ酸残基(保存的アミノ酸残基が好ましい)で置換され、このような置換アミノ酸残基が、遺伝子コードによりコードされる場合もあり、コードされない場合もある相同体;または(ii)アミノ酸残基のうちの1もしくは複数が、置換基を包含する相同体でありうる。
【0042】
複数、例えば、5〜10、1〜5、1〜3、2、1のアミノ酸残基が、任意の組合せで置換、欠失、もしくは付加されているか、または置換も欠失も付加もされていない、上記で定義したポリペプチドのアミノ酸配列を有する相同体が好ましい。これらのうちで、本発明のタンパク質の特性および活性を変化させない、サイレントの置換、付加、および欠失が、とりわけ好ましい。この点ではまた、保存的置換もとりわけ好ましい。
【0043】
したがって、アミノ酸であるグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンは、互いに置換されうることが多い(脂肪族側鎖を有するアミノ酸)。これらの可能な置換のうちでは、グリシンとアラニンとを用いて互いを置換することが好ましく(グリシンおよびアラニンは、側鎖が比較的短いので)、バリンと、ロイシンと、イソロイシンとを用いて互いを置換することが好ましい(バリン、ロイシン、およびイソロイシンは、疎水性である脂肪族側鎖が大型であるので)。互いに置換しうることが多い他のアミノ酸には、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン(芳香族側鎖を有する);リシン、アルギニン、およびヒスチジン(塩基性側鎖を有するアミノ酸);アスパラギン酸およびグルタミン酸(酸性側鎖を有するアミノ酸);アスパラギンおよびグルタミン(アミド側鎖を有するアミノ酸);ならびにシステインおよびメチオニン(硫黄含有側鎖を有するアミノ酸)が含まれる。
【0044】
この性質の置換を、「保存的」アミノ酸置換、または「半保存的」アミノ酸置換と称することが多い。
【0045】
上記で言及した融合ポリペプチドのアミノ酸配列と比べてはまた、アミノ酸を欠失させることもできる。したがって、例えば、該ポリペプチドの活性に対して実質的な影響を及ぼさないアミノ酸、または、このような活性を少なくとも消失させないアミノ酸は、欠失させることができる。活性はなおも保持しながら、ポリペプチド全体の長さおよび分子量を短縮および低減しうるので、このような欠失は有利でありうる。これにより、特定の目的に必要とされるポリペプチドの量の低減を可能としうる(例えば、用量レベルを低減することができる)。
【0046】
上記の融合ポリペプチドの配列と比べてはまた、アミノ酸を挿入することもできる。本発明の物質の特性を変化させる目的で(例えば、融合ポリペプチドに関して上記で説明した通り、同定、精製、または発現を補助する目的で)挿入することもできる。
【0047】
任意の適切な技法を用いて、例えば、部位指向突然変異誘発を用いることにより、上記で示した配列と比べてアミノ酸を変化させることができる。
【0048】
天然のアミノ酸を用いて本発明の範囲内にあるアミノ酸を置換または挿入することもでき、非天然のアミノ酸を用いて本発明の範囲内にあるアミノ酸を置換または挿入することもできることを認識されたい。用いるのが天然のアミノ酸であれ、合成のアミノ酸であれ、L-アミノ酸だけを存在させることが好ましい。
【0049】
本発明のさらなる実施形態では、本発明のFVIIポリペプチドまたはFVIIaポリペプチドを、配列番号1のアミノ酸配列と比べて1または複数の置換を含む相同体へと伸長させ、前記置換を、配列番号1のアミノ酸位置に対応する172、173、175、176、177、196、197、198、199、200、203、235、237、238、239、240、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、297、299、319、320、321、327、341、363、364、365、366、367、370、または373から選択される位置における、任意の1または複数のアミノ酸による置換とする。
【0050】
本明細書で用いられる「任意の1または複数のアミノ酸」という用語は、配列番号1のアミノ酸とは異なる1または複数のアミノ酸を意味する。これには、ポリヌクレオチドによりコードされうるアミノ酸が含まれるがこれらに限定されない。一実施形態では、該異なるアミノ酸が、天然のL形態にあり、ポリヌクレオチドによりコードされる可能性があり、具体例をL-システイン(Cys)とする。
【0051】
以下の実施形態では、「少なくとも」という表現が、指定されたアミノ酸だけが置換されること、または置換される特定のアミノ酸が、分子内の1または複数の他のアミノ酸変化に加えてなされることを意味する。
【0052】
以下の実施形態では、アミノ酸置換が、以下の通りに、配列番号1に言及する:文字は、配列番号1のある位置に天然で存在するアミノ酸を表わし、後続の番号は、配列番号1における位置を表わす。
【0053】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともG237が、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Met、Trp、Tyr、Asp、Asn、Glu、Gln、His、Lys、Arg、Cys、Thr、またはSerから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0054】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともT238が、Ala、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Met、Trp、Tyr、Asp、Asn、Glu、Gln、His、Lys、Arg、Cys、またはSerから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0055】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともT239が、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Met、Trp、Tyr、Asp、Asn、Glu、Gln、His、Lys、Arg、Cys、またはSerから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0056】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともQ286が、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Met、Trp、Tyr、Asp、Asn、Glu、His、Lys、Arg、Cys、Thr、またはSerから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0057】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともL287が、Gly、Ala、Val、Ile、Phe、Met、Trp、Tyr、Asp、Asn、Glu、Gln、His、Lys、Arg、Cys、Thr、またはSerから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0058】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともL288が、Gly、Ala、Val、Ile、Phe、Met、Trp、Tyr、Asp、Asn、Glu、Gln、His、Lys、Arg、Cys、Thr、またはSerから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0059】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともD289が、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Met、Trp、Tyr、Asn、Glu、Gln、His、Lys、Arg、Cys、Ser、またはThrから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0060】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドがポリペプチドであり、少なくともR290が、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Met、Trp、Tyr、Asp、Asn、Glu、Gln、His、Lys、Cys、Thr、またはSerから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0061】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともA292が、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Met、Trp、Tyr、Asp、Asn、Glu、Gln、His、Lys、Arg、Cys、Thr、またはSerから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0062】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともT293が、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Met、Trp、Tyr、Asp、Asn、Glu、Gln、His、Lys、Arg、Cys、またはSerから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0063】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともA294が、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Met、Trp、Tyr、Asp、Asn、Glu、Gln、His、Lys、Arg、Cys、Thr、またはSerから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0064】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともL295が、Gly、Ala、Val、Ile、Phe、Met、Trp、Tyr、Asp、Asn、Glu、Gln、His、Lys、Arg、Cys、Thr、またはSerから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0065】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともL297が、Gly、Ala、Val、Ile、Phe、Met、Trp、Tyr、Asp、Asn、Glu、Gln、His、Lys、Arg、Cys、Thr、またはSerから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0066】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともV299が、Gly、Ala、Leu、Ile、Phe、Met、Trp、Tyr、Asp、Asn、Glu、Gln、His、Lys、Arg、Cys、Thr、またはSerから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0067】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともM327が、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Trp、Tyr、Asp、Asn、Glu、Gln、His、Lys、Arg、Cys、Ser、またはThrから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0068】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともK341が、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Met、Trp、Tyr、Asp、Asn、Glu、Gln、His、Arg、Cys、Ser、またはThrから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0069】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともS363が、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Met、Trp、Tyr、Asp、Asn、Glu、Gln、His、Lys、Arg、Cys、またはThrから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0070】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともW364が、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Met、Tyr、Asp、Asn、Glu、Gln、His、Lys、Arg、Cys、Thr、またはSerから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0071】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともG365が、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Met、Trp、Tyr、Asp、Asn、Glu、Gln、His、Lys、Arg、Cys、Thr、またはSerから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0072】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともQ366が、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Met、Trp、Tyr、Asp、Asn、Glu、His、Lys、Arg、Cys、Thr、またはSerから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0073】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともQ366が、Val、Leu、Ile、Phe、Met、Trp、Tyr、Asp、Asn、His、Lys、Arg、Cys、Thr、またはSerから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0074】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともV172が、Gly、Ala、Leu、Ile、Phe、Met、Trp、Tyr、Asp、Asn、Glu、Gln、His、Lys、Arg、Cys、Ser、またはThrから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0075】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともN173が、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Met、Trp、Tyr、Asp、Glu、Gln、His、Lys、Arg、Cys、Ser、またはThrから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0076】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともA175が、Gly、Leu、Ile、Phe、Met、Trp、Tyr、Asp、Asn、Glu、Gln、His、Lys、Arg、Cys、Ser、Val、またはThrから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0077】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともQ176が、Gly、Ala、Leu、Ile、Phe、Met、Trp、Tyr、Asp、Asn、Glu、His、Lys、Arg、Cys、Ser、Val、またはThrから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0078】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともL177が、Gly、Ala、Ile、Phe、Met、Trp、Tyr、Asp、Asn、Glu、Gln、His、Lys、Arg、Cys、Ser、Val、またはThrから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0079】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともD196が、Gly、Ala、Leu、Ile、Phe、Met、Trp、Tyr、Asn、Glu、Gln、His、Lys、Arg、Cys、Ser、Val、またはThrから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0080】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともK197が、Gly、Ala、Leu、Ile、Phe、Met、Trp、Tyr、Asp、Asn、Glu、Gln、His、Arg、Cys、Ser、Val、またはThrから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0081】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともI198が、Gly、Ala、Leu、Phe、Met、Trp、Tyr、Asp、Asn、Glu、Gln、His、Lys、Arg、Cys、Ser、Val、またはThrから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0082】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともK199が、Gly、Ala、Leu、Ile、Phe、Met、Trp、Tyr、Asp、Asn、Glu、Gln、His、Arg、Cys、Ser、Val、またはThrから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0083】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともN200が、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Met、Trp、Tyr、Asp、Glu、Gln、His、Lys、Arg、Cys、Ser、またはThrから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0084】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともN203が、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Met、Trp、Tyr、Asp、Glu、Gln、His、Lys、Arg、Cys、Ser、またはThrから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0085】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともV235が、Gly、Ala、Leu、Ile、Phe、Met、Trp、Tyr、Asp、Asn、Glu、Gln、His、Lys、Arg、Cys、Ser、またはThrから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0086】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともN240が、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Met、Trp、Tyr、Asp、Glu、Gln、His、Lys、Arg、Cys、Ser、またはThrから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0087】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともD319が、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Met、Trp、Tyr、Asn、Glu、Gln、His、Lys、Arg、Cys、Ser、またはThrから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0088】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともS320が、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Met、Trp、Tyr、Asp、Asn、Glu、Gln、His、Lys、Arg、Cys、またはThrから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0089】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともP321が、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Met、Trp、Tyr、Asp、Asn、Glu、Gln、His、Lys、Arg、Cys、Ser、またはThrから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0090】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともG367が、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Met、Trp、Tyr、Asp、Asn、Glu、Gln、His、Lys、Arg、Cys、Ser、またはThrから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0091】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともT370が、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Met、Trp、Tyr、Asp、Asn、Glu、Gln、His、Lys、Arg、Cys、またはSerから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0092】
さらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともH373が、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Met、Trp、Tyr、Asp、Asn、Glu、Gln、Lys、Arg、Cys、Ser、またはThrから選択される任意の1または複数のアミノ酸で置換される。
【0093】
本発明のさらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともi) L287が、ThrまたはSerから選択されるアミノ酸で置換され、ii) A294が、ThrまたはSerから選択されるアミノ酸で置換され、iii) M298が、Lysで置換される。
【0094】
本発明のさらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともi) L287が、ThrまたはSerから選択されるアミノ酸で置換され、ii) A294が、ThrまたはSerから選択されるアミノ酸で置換され、iii) M298が、Lysで置換され、iv) E296が、Ile、Leu、Thr、またはValからなる群から選択されるアミノ酸で置換される。
【0095】
本発明のさらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともi) L287が、ThrまたはSerから選択されるアミノ酸で置換され、ii) A294が、ThrまたはSerから選択されるアミノ酸で置換され、iii) M298が、Lysで置換され、iv) V158が、AspまたはGluからなる群から選択されるアミノ酸で置換される。
【0096】
本発明のさらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともi) L287が、ThrまたはSerから選択されるアミノ酸で置換され、ii) A294 が、ThrまたはSerから選択されるアミノ酸で置換され、iii) M298が、Lysで置換され、iv) E296が、Ile、Leu、Thr、またはValからなる群から選択されるアミノ酸で置換され、v) V158が、AspまたはGluからなる群から選択されるアミノ酸で置換される。
【0097】
配列番号1に言及して、以下で説明されるアミノ酸置換についての用語法は、以下の通りである。
【0098】
第1の文字は、配列番号1のある位置に天然で存在するアミノ酸を表わす。後続の番号は、配列番号1における位置を表わす。第2の文字は、天然のアミノ酸を置換する、異なるアミノ酸を表わす。例は、K197A-FVIIであり、この場合、配列番号1の197位におけるリシンが、アラニンで置換される。
【0099】
本発明のさらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが、
V158D/L287T/A294S/E296I/M298K-FVIIA;V158D/L287T/A294S/E296V/M298K-FVIIA;V158D/L287T/A294S/E296L/M298K-FVIIA;V158D/L287T/A294S/E296T/M298K-FVIIA;
V158D/L287T/A294T/E296I/M298K-FVIIA;V158D/L287T/A294T/E296V/M298K-FVIIA;
V158D/L287T/A294T/E296L/M298K-FVIIA;V158D/L287T/A294T/E296T/M298K-FVIIA;
V158D/L287S/A294S/E296I/M298K-FVIIA;V158D/L287S/A294S/E296V/M298K-FVIIA;
V158D/L287S/A294S/E296L/M298K-FVIIA;V158D/L287S/A294S/E296T/M298K-FVIIA;V158D/L287S/A294T/E296I/M298K-FVIIA;V158D/L287S/A294T/E296V/M298K-FVIIA;
V158D/L287S/A294T/E296L/M298K-FVIIA;V158D/L287S/A294T/E296T/M298K-FVIIA;
V158E/L287T/A294S/E296I/M298K-FVIIA;V158E/L287T/A294S/E296V/M298K-FVIIA;V158E/L287T/A294S/E296L/M298K-FVIIA;V158E/L287T/A294S/E296T/M298K-FVIIA;V158E/L287T/A294T/E296I/M298K-FVIIA;V158E/L287T/A294T/E296V/M298K-FVIIA;V158E/L287T/A294T/E296L/M298K-FVIIA;V158E/L287T/A294T/E296T/M298K-FVIIA;V158E/L287S/A294S/E296I/M298K-FVIIA;V158E/L287S/A294S/E296V/M298K-FVIIA;V158E/L287S/A294S/E296L/M298K-FVIIA;V158E/L287S/A294S/E296T/M298K-FVIIA;V158E/L287S/A294T/E296I/M298K-FVIIA;V158E/L287S/A294T/E296V/M298K-FVIIA;V158E/L287S/A294T/E296L/M298K-FVIIA、V158E/L287S/A294T/E296T/M298K-FVIIA、Q176A-FVII、Q176L-FVII L177S-FVII、D196A-FVII、K197A-FVII、K199A-FVII、T238A-FVII、T239I-FVII、T239Y-FVII、Q286A-FVII、D289E-FVII、D289R-FVII、R290Q-FVII、
M327Q-FVII、M327N-FVII、K341A-FVII、K341E-FVII、K341Q-FVII、S363M-FVII、S363A-FVII、W364H-FVIIまたはQ366E-FVII
からなる群から選択されるポリペプチドである。
【0100】
本発明のFVIIaポリペプチドにおけるさらなる置換の例には、限定なしに述べると、
L305V、L305V/M306D/D309S、L305I、L305T、F374P、F374Y、V158T/M298Q、V158D/E296V/M298Q、K337A、M298Q、V158D/M298Q、L305V/K337A、V158D/E296V/M298Q/L305V、V158D/E296V/M298Q/K337A、V158D/E296V/M298N、M298N、V158D/E296V/M298Q/L305V/K337A、K157A、E296V、E296V/M298Q、V158D/E296V、V158D/M298K、およびS336G、L305V/K337A、L305V/V158D、L305V/E296V、L305V/M298Q、L305V/V158T、
L305V/K337A/V158T、L305V/K337A/M298Q、L305V/K337A/E296V、
L305V/K337A/V158D、L305V/V158D/M298Q、M298Q/K337A、
L305V/V158D/E296V、L305V/V158T/M298Q、L305V/V158T/E296V、
L305V/E296V/M298Q、L305V/V158D/E296V/M298Q、
L305V/V158T/E296V/M298Q、L305V/V158T/K337A/M298Q、
L305V/V158T/E296V/K337A、L305V/V158D/K337A/M298Q、
L305V/V158D/E296V/K337A、L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A、
L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A、L305V/S314E/F374Y、L305V/K337A、L305V/K337A/F374Y、L305V/S314E/K337A/F374Y、S314E、V317N、
S314E/K316H、S314E/K316Q、S314E/L305V、S314E/K337A、S314E/V158D、S314E/E296V、S314E/M298Q、S314E/V158T、K316H/L305V、K316H/K337A、
K316H/V158D、K316H/E296V、K316H/M298Q、K316H/V158T、K316Q/L305V、K316Q/K337A、K316Q/V158D、K316Q/E296V、K316Q/M298Q、K316Q/V158T、S314E/L305V/K337A、S314E/L305V/V158D、S314E/L305V/E296V、
S314E/L305V/M298Q、S314E/L305V/V158T、S314E/L305V/K337A/V158T、S314E/L305V/K337A/M298Q、S314E/L305V/K337A/E296V、
S314E/L305V/K337A/V158D、S314E/L305V/V158D/M298Q、
S314E/L305V/V158D/E296V、S314E/L305V/V158T/M298Q、
S314E/L305V/V158T/E296V、S314E/L305V/E296V/M298Q、
S314E/L305V/V158D/E296V/M298Q、S314E/L305V/V158T/E296V/M298Q、S314E/L305V/V158T/K337A/M298Q、S314E/L305V/V158T/E296V/K337A、S314E/L305V/V158D/K337A/M298Q、S314E/L305V/V158D/E296V/K337A、S314E/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A、
S314E/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A、K316H/L305V/K337A、
K316H/L305V/V158D、K316H/L305V/E296V、K316H/L305V/M298Q、
K316H/L305V/V158T、K316H/L305V/K337A/V158T、
K316H/L305V/K337A/M298Q、K316H/L305V/K337A/E296V、
K316H/L305V/K337A/V158D、K316H/L305V/V158D/M298Q、
K316H/L305V/V158D/E296V、K316H/L305V/V158T/M298Q、
K316H/L305V/V158T/E296V、K316H/L305V/E296V/M298Q、
K316H/L305V/V158D/E296V/M298Q、K316H/L305V/V158T/E296V/M298Q、
K316H/L305V/V158T/K337A/M298Q、K316H/L305V/V158T/E296V/K337A、
K316H/L305V/V158D/K337A/M298Q、K316H/L305V/V158D/E296V/K337A、
K316H/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A、
K316H/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A、K316Q/L305V/K337A、
K316Q/L305V/V158D、K316Q/L305V/E296V、K316Q/L305V/M298Q、
K316Q/L305V/V158T、K316Q/L305V/K337A/V158T、
K316Q/L305V/K337A/M298Q、K316Q/L305V/K337A/E296V、
K316Q/L305V/K337A/V158D、K316Q/L305V/V158D/M298Q、D212N、
K316Q/L305V/V158D/E296V、K316Q/L305V/V158T/M298Q、
K316Q/L305V/V158T/E296V、K316Q/L305V/E296V/M298Q、
K316Q/L305V/V158D/E296V/M298Q、K316Q/L305V/V158T/E296V/M298Q、Κ316Q/L305V/V158T/K337A/M298Q、Κ316Q/L305V/V158T/E296V/K337A、Κ316Q/L305V/V158D/K337A/M298Q、Κ316Q/L305V/V158D/E296V/K337A、K316Q/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A、
K316Q/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A、F374Y/K337A、F374Y/V158D、F374Y/E296V、F374Y/M298Q、F374Y/V158T、F374Y/S314E、F374Y/L305V、F374Y/L305V/K337A、F374Y/L305V/V158D、F374Y/L305V/E296V、
F374Y/L305V/M298Q、F374Y/L305V/V158T、F374Y/L305V/S314E、
F374Y/K337A/S314E、F374Y/K337A/V158T、F374Y/K337A/M298Q、
F374Y/K337A/E296V、F374Y/K337A/V158D、F374Y/V158D/S314E、
F374Y/V158D/M298Q、F374Y/V158D/E296V、F374Y/V158T/S314E、
F374Y/V158T/M298Q、F374Y/V158T/E296V、F374Y/E296V/S314E、
F374Y/S314E/M298Q、F374Y/E296V/M298Q、F374Y/L305V/K337A/V158D、F374Y/L305V/K337A/E296V、F374Y/L305V/K337A/M298Q、
F374Y/L305V/K337A/V158T、F374Y/L305V/K337A/S314E、
F374Y/L305V/V158D/E296V、F374Y/L305V/V158D/M298Q、
F374Y/L305V/V158D/S314E、F374Y/L305V/E296V/M298Q、
F374Y/L305V/E296V/V158T、F374Y/L305V/E296V/S314E、
F374Y/L305V/M298Q/V158T、F374Y/L305V/M298Q/S314E、
F374Y/L305V/V158T/S314E、F374Y/K337A/S314E/V158T、
F374Y/K337A/S314E/M298Q、F374Y/K337A/S314E/E296V、
F374Y/K337A/S314E/V158D、F374Y/K337A/V158T/M298Q、
F374Y/K337A/V158T/E296V、F374Y/K337A/M298Q/E296V、
F374Y/K337A/M298Q/V158D、F374Y/K337A/E296V/V158D、
F374Y/V158D/S314E/M298Q、F374Y/V158D/S314E/E296V、
F374 Y/V 158D/M298Q/E296 V、F374 Y/V 158T/S314E/E296 V、
F374Y/V158T/S314E/M298Q、F374Y/V158T/M298Q/E296V、
F374Y/E296V/S314E/M298Q、F374Y/L305V/M298Q/K337A/S314E、
F374Y/L305V/E296V/K337A/S314E、F374Y/E296V/M298Q/K337A/S314E、F374Y/L305V/E296V/M298Q/K337A、F374Y/L305V/E296V/M298Q/S314E、F374Y/V158D/E296V/M298Q/K337A、F374Y/V158D/E296V/M298Q/S314E、F374Y/L305V/V158D/K337A/S314E、F374Y/V158D/M298Q/K337A/S314E、F374Y/V158D/E296V/K337A/S314E、F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q、F374Y/L305V/V158D/M298Q/K337A、F374Y/L305V/V158D/E296V/K337A、F374Y/L305V/V158D/M298Q/S314E、F374Y/L305V/V158D/E296V/S314E、F374Y/V158T/E296V/M298Q/K337A、F374Y/V158T/E296V/M298Q/S314E、F374Y/L305V/V158T/K337A/S314E、F374Y/V158T/M298Q/K337A/S314E、F374Y/V158T/E296V/K337A/S314E、F374Y/L305V/V158T/E296V/M298Q、F374Y/L305V/V158T/M298Q/K337A、F374Y/L305V/V158T/E296V/K337A、F374Y/L305V/V158T/M298Q/S314E、F374Y/L305V/V158T/E296V/S314E、F374Y/E296V/M298Q/K337A/V158T/S314E、
F374Y/V158D/E296V/M298Q/K337A/S314E、
F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q/S314E、
F374Y/L305V/E296V/M298Q/V158T/S314E、
F374Y/L305V/E296V/M298Q/K337A/V158T、
F374Y/L305V/E296V/K337A/V158T/S314E、
F374Y/L305V/M298Q/K337A/V158T/S314E、
F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A、
F374Y/L305V/V158D/E296V/K337A/S314E、
F374Y/L305V/V158D/M298Q/K337A/S314E、
F374Y/L305V/E296V/M298Q/K337A/V158T/S314E、
F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A/S314E、S52A、S60A;R152E、S344A、T106N、K143N/N145T、V253N、R290N/A292T、G291N、R315N/V317T、
K143N/N145T/R315N/V317T;ならびに233Thr〜240Asnのアミノ酸配列における置換、付加、または欠失; 304Arg〜329Cysのアミノ酸配列における置換、付加、または欠失;および153Ile〜223Argのアミノ酸配列における置換、付加、または欠失が含まれる。
【0101】
本発明のさらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、プロテアーゼドメイン内の保存位置における少なくとも1つのアミノ酸が、他の任意のアミノ酸で置換されている。「保存位置」とは、配列番号1のプロテアーゼドメイン内の任意の位置であって、そこにおけるアミノ酸が、いまだ異なるアミノ酸に置換されていない位置を意味する。
【0102】
本発明のさらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、プロテアーゼドメイン内の保存位置における最大で20のさらなるアミノ酸が、他の任意のアミノ酸で置換されている。
【0103】
本発明のさらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、配列番号1の157〜170から選択される位置におけるアミノ酸に対応する少なくとも1つのアミノ酸が、他の任意のアミノ酸で置換されている。
【0104】
本発明のさらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、配列番号1の290〜305から選択される位置におけるアミノ酸に対応する少なくとも1つのアミノ酸が、他の任意のアミノ酸で置換されている。
【0105】
本発明のさらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともR304が、Tyr、Phe、Leu、またはMetからなる群から選択されるアミノ酸で置換されている。
【0106】
本発明のさらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、配列番号1の306〜312から選択される位置におけるアミノ酸に対応する少なくとも1つのアミノ酸が、他の任意のアミノ酸で置換されている。
【0107】
本発明のさらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともM306が、Asp、またはAsnからなる群から選択されるアミノ酸で置換されている。
【0108】
本発明のさらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともD309が、Ser、またはThrからなる群から選択されるアミノ酸で置換されている。
【0109】
本発明のさらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、配列番号1の330〜339から選択される位置におけるアミノ酸に対応する少なくとも1つのアミノ酸が、他の任意のアミノ酸で置換されている。
【0110】
本発明のさらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともA274が、他の任意のアミノ酸で置換されている。
【0111】
本発明のさらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともA274が、Met、Leu、Lys、またはArgからなる群から選択されるアミノ酸で置換されている。
【0112】
本発明のさらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともK157が、Gly、Val、Ser、Thr、Asn、Gln、Asp、またはGluからなる群から選択されるアミノ酸で置換されている。
【0113】
本発明のさらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともK337が、Ala、Gly、Val、Ser、Thr、Asn、Gln、Asp、またはGluからなる群から選択されるアミノ酸で置換されている。
【0114】
本発明のさらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともD334が、Gly、またはGluからなる群から選択されるアミノ酸で置換されている。
【0115】
本発明のさらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともS336が、Gly、またはGluからなる群から選択されるアミノ酸で置換されている。
【0116】
本発明のさらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともV158が、Ser、Thr、Asn、Gln、Asp、またはGluからなる群から選択されるアミノ酸で置換されている。
【0117】
本発明のさらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともE296が、Arg、Lys、Ile、Leu、Thr、またはValからなる群から選択されるアミノ酸で置換されている。
【0118】
本発明のさらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともM298が、Lys、Arg、Gln、またはAsnからなる群から選択されるアミノ酸で置換されている。
【0119】
本発明のさらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともL305が、Val、Tyr、またはIleからなる群から選択されるアミノ酸で置換されている。
【0120】
本発明のさらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともS314が、Gly、Lys、Gln、またはGluからなる群から選択されるアミノ酸で置換されている。
【0121】
本発明のさらなる実施形態では、因子VIIポリペプチドまたは因子VIIaポリペプチドが相同体であり、少なくともF374が、Pro、またはTyrからなる群から選択されるアミノ酸で置換されている。
【0122】
本発明のさらなる実施形態では、相同体が、N末端のGlaドメイン(配列番号1の1〜37に対応する位置におけるアミノ酸)における1または複数のアミノ酸の置換をさらに含み、これにより、因子VIIaポリペプチドの、組織因子保有細胞または血小板の膜内リン脂質などの膜内リン脂質に対するアフィニティーを実質的に高め、これにより、凝血促進効果が改善された因子VIIポリペプチド相同体を生成させる。したがって、上記で直接言及した因子VIIaポリペプチド相同体もまた、任意のアミノ酸変化に加えて、N末端のGLAドメイン内で、少なくとも1つのアミノ酸が置換される可能性がある。一実施形態では、4、8、10、11、28、32、33、34、または35 (配列番号1を指す)から選択される位置における1または複数のアミノ酸を、異なるアミノ酸で置換する。一実施形態では、10または32 (配列番号1を指す)から選択される位置における1または複数のアミノ酸を、異なるアミノ酸で置換する。上記の位置へと組み込むのに好ましいアミノ酸の例は、以下の通りである。10位におけるアミノ酸ProをGln、Arg、His、Gln、Asn、またはLysで置換し;かつ/または32位におけるアミノ酸Lysを、Glu、Gln、またはAsnで置換する。
【0123】
異なるリン脂質アフィニティー、およびビタミンK依存性血漿タンパク質の配列に基づき、GLAドメイン内の他のアミノ酸もまた置換することができる。
【0124】
「N末端のGLAドメイン」という用語は、因子VIIのアミノ酸配列1〜37を意味する。
【0125】
3文字表示である「GLA」とは、4-カルボキシグルタミン酸(γ-カルボキシグルタミン酸)を意味する。
【0126】
「プロテアーゼドメイン」という用語は、因子VIIのアミノ酸配列153〜406 (因子VIIaの重鎖)を意味する。
【0127】
本発明のポリペプチドは、翻訳後修飾、特に、以下の修飾: N末端に位置するグルタミン酸残基の10ガンマ-カルボキシル化、アスパラギン酸残基の1ベータ-ヒドロキシル化、およびアスパラギン残基の2N-グリコシル化を含みうる。
【0128】
一実施形態では、本発明のポリペプチドが、単離ポリペプチドである。
【0129】
本明細書で開示される多様なポリペプチドを説明するのに本明細書で用いられる「単離」という用語は、その天然環境の構成要素から同定され、分離および/または回収されたポリペプチドを意味する。
【0130】
さらなる実施形態では、本発明のポリペプチドが、組換えポリペプチドである。
【0131】
本明細書における「融合ポリペプチド」という用語は一般に、化学的手段により、もしくはタンパク質合成を介するペプチド結合により、またはこれらの両方により一体に接合された1または複数のポリペプチド配列を意味する。
【0132】
本発明の第2の態様は、本発明のポリペプチドをコードする核酸配列、例えば、RNA配列またはDNA配列に関する。
【0133】
本発明の核酸配列は、本発明のポリペプチドを生成させるのに有用である。
【0134】
本発明の核酸配列は、該核酸の発現を制御するプロモーター配列または他の制御配列をさらに含みうる。当技術分野では、核酸の発現を制御するプロモーター配列または他の制御配列が同定されており、知られている。プロモーター配列または他の制御配列の全体を用いる必要はない場合がある。最小限の不可欠な制御エレメントだけが必要とされる場合があり、実際、このようなエレメントを用いて、キメラ配列または他のプロモーターを構築することができる。当然ながら、不可欠の要件は、組織および/または時間についての特異性を保持することである。プロモーターは、例えば、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、CMV即初期プロモーター、HSVチミジンキナーゼ、初期SV40プロモーターおよび後期SV40プロモーター、またはラウス肉腫ウイルス(RSV)のプロモーターなどのレトロウイルスLTRのプロモーター、ならびにマウスメタロチオネインIプロモーターなどのメタロチオネインプロモーターなど、任意の適切な既知のプロモーターでありうる。プロモーターは、プロモーター活性のために含まれる最小限(エンハンサーエレメントを伴わない、TATAエレメントなど)、例えば、CMVプロモーターの最小限の配列を含みうる。
【0135】
制御配列が、DNA配列に機能的に関連する場合に、ヌクレオチド配列は作動可能に連結される。したがって、プロモーターのヌクレオチド配列が、DNA配列の転写を制御する場合に、該プロモーターのヌクレオチド配列は、該DNA配列に作動可能に連結される。
【0136】
所望のタンパク質配列をコードするDNA配列を単離および増幅するには、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)手順を用いることができる。DNA配列の所望の末端を規定するオリゴヌクレオチドを、5'プライマーおよび3'プライマーとして用いる。増幅されたDNA配列の発現ベクターへの挿入を容易とするために、オリゴヌクレオチドは、制限エンドヌクレアーゼの認識部位をさらに含有しうる。PCR法は、Saikiら、Science 239: 487頁(1988); 「Recombinant DNA Methodology」、Wuら編、Academic Press, Inc.、San Diego (1989)、189〜196頁;および「PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications」、Innisら編、Academic Press, Inc. (1990)において説明されている。
【0137】
本発明の第3の態様は、本発明の第2の態様による核酸配列を含むベクターに関する。
【0138】
本発明はまた、本発明のポリペプチドをコードするDNAを含有する、組換えクローニングベクターおよび組換え発現ベクターも提供する。
【0139】
本発明の第4の態様は、本発明の第2の態様による核酸配列または本発明の第3の態様によるベクターを含む宿主細胞に関する。
【0140】
本発明の核酸配列を含むベクターおよび宿主細胞を用いて、該核酸配列によりコードされる、本発明のポリペプチドを調製することができる。
【0141】
本発明のベクターには、とりわけ、染色体ベクター、エピソームベクター、およびウイルス由来のベクター、例えば、細菌プラスミドに由来するベクター、バクテリオファージに由来するベクター、トランスポゾンに由来するベクター、酵母エピソームに由来するベクター、挿入エレメントに由来するベクター、酵母染色体エレメントに由来するベクター、バキュロウイルス、SV40、牛痘ウイルスなどのパポバウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス、およびレトロウイルスなどのウイルスに由来するベクター、ならびに、プラスミド、ならびにコスミドおよびファージミドなどのバクテリオファージの遺伝子エレメントに由来するベクターなど、これらの組合せに由来するベクターが含まれうる。一般に、宿主においてポリペプチドを発現する核酸を維持するか、増殖させるか、または発現させるのに適する任意のベクターを、この点における発現に用いることができる。
【0142】
本発明の第5の態様は、FVII融合ポリペプチドを生成させる方法であって、本発明の第4の態様による宿主細胞を、該ポリペプチドの発現を促進する条件下で培養する工程と、発現させたポリペプチドを培養物から回収する工程とを含む方法を対象とする。
【0143】
さらなる実施形態では、本発明によるFVII融合ポリペプチドを生成させる方法が、発現させたポリペプチドを精製する工程をさらに包含する。またさらなる実施形態では、精製する工程が、該ポリペプチドの残基152と残基153との間におけるペプチド結合を切断し、ジスルフィド架橋により一体に保持される2つのポリペプチド鎖を形成する工程、すなわち、該ポリペプチドを活性化して、FVIIaポリペプチドを形成する工程を包含する。この工程は、1または複数のプロテアーゼを用いて、タンパク質分解により、FVIIポリペプチドを、活性の二本鎖形態へと転換することにより達成することができる。
【0144】
好ましい実施形態では、組換えFVIIが、その単鎖形態で培養培地中に分泌され、次いで、クロマトグラフィーによる精製工程において、自己触媒反応を介するタンパク質分解により、活性の二本鎖形態、FVIIaへと転換される。
【0145】
FVIIおよびFVIIaはまた、天然の細胞から精製し、FIX活性化ペプチド配列またはFX活性化ペプチド配列に融合させることもできる。
【0146】
本発明のポリペプチドの発現、単離、および精製は、以下が含まれるがこれらに限定されない、任意の適切な技法により達成することができる。
【0147】
任意の適切な発現系を用いることができる。所望の宿主細胞における複製能力を賦与する複製起点、および形質転換細胞を同定するための選択遺伝子を、発現ベクター内に組み込んで、本発明のポリペプチドを生成させることができる。加えて、適切なシグナルペプチド(天然のシグナルペプチドまたは異種のシグナルペプチド)をコードする配列も、発現ベクター内に組み込むことができる。例えば、FVII、FIX、プロトロンビン、プロテインC、またはプロテインSのプレプロリーダー配列をコードする配列を組み込むことができる。まず、DNAが転写され、mRNAが、シグナルペプチドを含む融合ポリペプチドへと翻訳されるように、シグナルペプチド(分泌リーダー)のDNA配列を、本発明の核酸配列に対してインフレームで融合させることができる。意図される宿主細胞内で機能的なシグナルペプチドは、ポリペプチドの細胞外分泌を促進する。シグナルペプチドは、翻訳時にポリペプチドから切断されるが、細胞からのポリペプチドの分泌を可能とする。
【0148】
本発明のポリペプチドを発現するのに適する宿主細胞には、翻訳後においてポリペプチドを生成させることが可能な任意の細胞が含まれ、酵母細胞、真菌細胞、昆虫細胞、および高等真核細胞が含まれる。哺乳動物細胞、および特に、ヒト胎児由来腎臓(HEK)細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、またはベビーハムスター腎臓(BHK)細胞が、宿主細胞として用いるのに特に好ましい。哺乳動物宿主および酵母宿主と共に用いるのに適切なクローニングベクターおよび発現ベクターは、例えば、Pouwelsら、「Cloning Vectors: A Laboratory Manual」、Elsevier、New York (1986) (ISBN 0444904018)において説明されている。
【0149】
例えば、CHO (例えば、ATCC CCL61)細胞系、COS-1 (例えば、ATCC CRL 1650)細胞系、およびHEK293 (例えば、ATCC CRL 1573)細胞系など、哺乳動物由来の確立された細胞系もまた用いることができる。好ましい実施形態では、HEK-293F細胞系を用いる。
【0150】
DNAを哺乳動物細胞へと導入するための確立された方法は、説明されている(Kaufman, R. J.、「Large Scale Mammalian Cell Culture」、1990、15〜69頁)。LipofectamineもしくはLipofectamine 2000 (Gibco/BRL)またはLipofectamine-Plus脂質試薬など、市販の試薬を用いるさらなるプロトコールを、細胞にトランスフェクトするのに用いることもできる(Feignerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 7413〜7417頁、1987)。加えて、Sambrookら(「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」、2版、1〜3巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989)における手順など、従来の手順を用いる電気穿孔を、哺乳動物細胞にトランスフェクトするのに用いることもできる。例えば、細胞傷害性薬に対する耐性など、当技術分野で知られる方法を用いて、安定的な形質転換細胞の選択を実施することができる。Kaufmanら、Meth. in Enzymology 185: 487〜511頁、1990は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)耐性など、複数の選択スキームについて説明している。発現ベクター内に組み込みうる選択マーカーの他の例には、G418 (Geneticin)およびハイグロマイシンBなどの抗生剤に対する耐性を賦与するcDNAが含まれる。これらの化合物に対する耐性に基づき、ベクターを保有する細胞を選択することができる。
【0151】
哺乳動物による発現ベクターからの異種遺伝子の発現を改善することが示されているさらなる制御配列を用いることができる。例えば、CHO細胞に由来する発現増強配列エレメント(EASE)を用いることができる(Morrisら、「Animal Cell Technology」、1997、529〜534頁)。
【0152】
サッカロミセス(Saccharomyces)属(例えば、出芽酵母(S. cerevisiae))に由来することが好ましい、酵母による宿主細胞もまた用いることができる。ピキア(Pichia)属(メタノール資化酵母(Pichia pastoris))またはクルイベロミセス(Kluyveromyces)属など、他の属の酵母もまた用いることができる。酵母によるベクターは、2μm酵母プラスミドに由来する複製起点配列、自己複製配列(ARS)、プロモーター領域、ポリアデニル化配列、転写終結配列、および選択マーカー遺伝子を含有することが多い。
【0153】
酵母によるベクターに適するプロモーター配列には、とりわけ、メタロチオネイン、3-ホスホグリセリン酸キナーゼ(Hitzemanら、J. Biol. Chem. 255:2073頁、1980)、または、エノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースホスフェートイソメラーゼ、ホスホ-グルコースイソメラーゼ、およびグルコキナーゼなど、他の糖分解酵素(Hessら、J. Adv. Enzyme Reg. 7: 149頁、1968;およびHollandら、Biochem. 17:4900頁、1978)のプロモーターが含まれる。
【0154】
酵母によるα因子リーダー配列を用いて、ポリペプチドの分泌を誘導することができる。α因子リーダー配列は、プロモーター配列と構造遺伝子配列との間に挿入されることが多い。例えば、Kurjanら、Cell 30: 933頁、1982;およびBitterら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 5330頁、1984を参照されたい。当業者には、酵母宿主からの組換えポリペプチドの分泌を促進するのに適する他のリーダー配列が知られている。リーダー配列は、1または複数の制限部位を含有するように、その3'端付近で修飾することができる。これにより、リーダー配列の構造遺伝子への融合が促進される。
【0155】
当業者には、酵母による形質転換プロトコールが知られている。このようなプロトコールの1つは、Hinnenら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75: 1929頁、1978により説明されている。
【0156】
本発明によるFVIIポリペプチドおよび/またはFVIIaポリペプチドは、トランスジェニック動物法またはトランスジェニック植物法を用いて調製することができる。
【0157】
例えば、本発明のポリペプチドは、宿主である雌の哺乳動物の乳腺内で生成させることができる。これは、その内容が本明細書に組み込まれる、US2006/0166915においてさらに論じられている。
【0158】
トランスジェニック植物における生成もまた、用いることができる。発現は、一般化することもでき、塊茎など、特定の器官に方向づけることもできる(Hiatt、Nature 344: 469〜479頁(1990)を参照されたい)。
【0159】
当業者に知られている任意の種類の宿主細胞について、組換えポリペプチドを精製するための手順は、用いられる宿主細胞の種類、および組換えポリペプチドが、培養培地中に分泌されるかどうかなどの因子により変化する。
【0160】
一般に、組換えポリペプチドは、分泌されない場合にこれを宿主細胞から単離することもでき、可溶性であり分泌される場合にこれを培地または上清から単離した後で、1または複数の濃縮工程、塩析工程、イオン交換工程、疎水性相互作用クロマトグラフィー工程、アフィニティー精製工程、またはサイズ除外クロマトグラフィー工程にかけることもできる。
【0161】
これらの工程を達成するための特定の方法について述べると、例えば、Millipore Pellicon限外濾過ユニットなど、市販のタンパク質濃縮フィルターを用いて、まず培養培地を濃縮することができる。濃縮ステップの後、濃縮物を、ゲル濾過媒体などの精製マトリックスへと適用することができる。
【0162】
代替的に、例えば、ペンダントジエチルアミノエチル(DEAE)基を有するマトリックスまたは基質などのアニオン交換樹脂も用いることができる。マトリックスは、アクリルアミド、アガロース、デキストラン、セルロース、またはタンパク質の精製で一般に用いられる他の種類のマトリックスでありうる。代替的に、カチオン交換工程も用いることができる。加えて、等電点電気泳動工程も用いることができる。代替的に、疎水性相互作用クロマトグラフィー工程も用いることができる。適切なマトリックスは、樹脂に結合させたフェニル部分の場合もあり、オクチル部分の場合もある。加えて、組換えタンパク質に選択的に結合するマトリックスによるアフィニティークロマトグラフィーも用いることができる。用いられるこのような樹脂の例は、レクチンカラム、色素カラム、および金属キレート化カラムである。最後に、非極性のRP-HPLC媒体(例えば、ペンダントメチル基、ペンダントオクチル基、または他のペンダント脂肪族基を有するシリカゲルまたはポリマー樹脂)を用いる、1または複数の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)工程を、ポリペプチドをさらに精製するのに用いることもできる。前出の精製工程のうちの一部または全部は、各種の組合せでよく知られており、単離および精製された組換えタンパク質をもたらすのに用いることができる。
【0163】
精製を簡略化するために、形質転換された哺乳動物の宿主細胞を用いて、変異体のVIIポリペプチドを、分泌ポリペプチドとして発現させることが好ましい。哺乳動物の宿主細胞における発酵により分泌された組換えポリペプチドは、当業者によく知られた方法により精製することができる。
【0164】
FVIIポリペプチドに対して生成させたモノクローナル抗体、例えば、F1A2抗体などのFVIIポリペプチド結合タンパク質を含むアフィニティーカラムを用いて、発現させたポリペプチドをアフィニティー精製することも可能である。例えば、高濃度の塩による溶出緩衝液中で従来の技法を用いて、アフィニティーカラムからこれらのポリペプチドを除去し、次いで、使用のための低濃度の塩による緩衝液へと透析することもでき、用いられるアフィニティーマトリックスに応じて、pHまたは他の構成要素を変化させることにより、これらのポリペプチドを除去することもでき、本発明に由来するポリペプチドなど、アフィニティー部分に対する天然の基質を用いて、これらのポリペプチドを競合的に除去することもできる。
【0165】
SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により解析した際に単一のタンパク質バンドにより示唆される通り、本発明のFVII融合ポリペプチドおよびFVIIa融合ポリペプチドは、実質的に(実質的な均一性まで)精製することができる。実質的な純度までの精製とは、95%を超えて均一となることを含め、90%を超えて均一となるまでの精製を意味する。タンパク質バンドは、銀染色、クーマシーブルー染色、または(タンパク質を放射性標識する場合)オートラジオグラフィーにより画像化することができる。
【0166】
当業者は、発現させたポリペプチドを精製する手順が、用いられる宿主細胞の種類、およびポリペプチドが、細胞内形態、膜結合形態、または宿主細胞から分泌される可溶性形態のいずれであるかなどの因子により変化することを認めるであろう。
【0167】
本発明の第6の態様は、本発明のFVIIポリペプチドおよび/またはFVIIaポリペプチドを含む医薬組成物に関する。
【0168】
本発明による医薬組成物は、本発明による融合FVIIポリペプチドを含みうる。この実施形態では、投与後、すなわち、体内で、通常FVIIがFVIIaへと活性化する原因となる過程に従い、例えば、FXa、FXIIa、FIXa、FVIIa、FVII活性化プロテアーゼ(FSAP)、およびトロンビンによる過程に従い、FVIIが、FVIIaへと活性化する。加えて、または代替的に、本発明による医薬組成物は、本発明による融合FVIIaポリペプチドを含むことも可能であり、この場合は、ポリペプチドを対象に投与する前に活性化が既に生じている。
【0169】
本発明により用いられる医薬組成物は、有効成分(すなわち、FVIIまたはFVIIa)に加えて、薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝液安定化剤、または当業者によく知られる他の物質を含みうる。このような物質は非毒性であるものとし、有効成分の効能には干渉しないものとする。担体または他の物質の正確な性質は、投与経路に依存する。好ましい実施形態では、組成物が、注射用組成物である。
【0170】
製剤は、液体、例えば、pH6.8〜7.6のリン酸以外の緩衝液を含有する生理学的塩溶液の場合もあり、凍結乾燥(lyophilisedまたはfreeze dried)粉末の場合もある。
【0171】
静脈内注射の場合、有効成分は、発熱物質を含まず、pH、等張性、および安定性が適切である、非経口投与に許容される水溶液の形態である。当業者は、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、乳酸加リンゲル注射液などの等張性媒体を用いて、適切な溶液を調製することができる。必要に応じて、防腐剤、安定化剤、緩衝剤、抗酸化剤、および/または他の添加剤も組み入れることができる。液体の医薬組成物は一般に、水、石油、動物油もしくは植物油、鉱油、または合成油などの液体担体を含む。生理的食塩液、デキストロース、もしくは他の糖溶液、またはエチレングリコール、プロピレングリコール、もしくはポリエチレングリコールなどのグリコールも組み入れることができる。
【0172】
組成物はまた、マイクロスフェア、リポソーム、他のマイクロ粒子送達系、または血液を含めた特定の組織に投与するための徐放製剤でもありうる。徐放担体の適切な例には、球状粒子の形態にある半透性ポリマーマトリックス、例えば坐剤またはマイクロカプセルが含まれる。植込み式徐放マトリックスまたはマイクロカプセルによる徐放マトリックスには、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号; EP-A-0058481)、L-グルタミン酸およびガンマエチル-L-グルタミン酸によるコポリマー(Sidmanら、Biopolymers 22(1): 547〜556頁、1985)、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)またはエチレンビニル酢酸(Langerら、J. Biomed. Mater. Res. 15: 167〜277頁、1981;およびLanger、Chem. Tech. 12: 98〜105頁、1982)が含まれる。
【0173】
組成物/ポリペプチドは、「治療有効量」(これは、個体に対する有益性を示すのに十分な量である)で個体に投与することが好ましい。
【0174】
本発明の第7の態様は、医療において使用される、本発明のFVIIポリペプチドおよび/またはFVIIaポリペプチドに関する。医療における使用は、出血を症状とする、細胞または分子に由来する、先天性、後天性、または誘導性の任意の欠損として反映される、任意の出血障害を包含する。一実施形態では、本発明のFVIIポリペプチドおよび/またはFVIIaポリペプチドを、血友病A、血友病B、FXI欠損症、またはFVII欠損症などの血液凝固異常症を治療する場合のほか、手術もしくは他の組織損傷における出血、または血小板機能不全、血小板減少症、もしくはフォンウィレブランド病に起因する出血を含めた、過剰な出血もしくは望ましくない出血を治療する場合にも用いる。
【0175】
本発明の第8の態様は、すべてを本発明の第7の態様に関して上記で説明した、血液凝固異常症を治療するのに使用されるか、または過剰な出血もしくは望ましくない出血を治療するのに使用される医薬を製造するための、本発明のFVIIポリペプチドおよび/またはFVIIaポリペプチドの使用に関する。
【0176】
本発明の第9の態様は、すべてを本発明の第7の態様に関して上記で説明した、血液凝固異常症と関連する状態を治療するか、または過剰な出血もしくは望ましくない出血を治療する方法であって、本発明のFVIIポリペプチドおよび/またはFVIIaポリペプチドを対象に投与する工程を含む方法に関する。
【0177】
本明細書で用いられる「治療」という用語は、ヒトまたはヒト以外の動物に有益でありうる任意のレジメンを指す。一実施形態では、ヒトまたはヒト以外の動物が、このような治療を必要とする。
【0178】
より具体的に述べると、治療は、「治療的」処置および「予防的」処置を包含し、これらの処置の種類は、それらの最も広い文脈で考えるものとする。したがって、治療的処置および予防的処置は、特定の状態の症状の改善、または特定の状態を予防するか、もしくは特定の状態を発症する危険性を別の形で低減することを包含する。「予防的」という用語は、特定の状態の重症度を軽減することとして考えることもでき、特定の状態の発症を防止することとして考えることもできる。「予防的」とはまた、かつてある特定の状態を有すると診断された患者において、該状態の再発を防止することも包含する。「予防的」とは、対象が、最終的に疾患状態に罹患しないことを必ずしも意味しない。
【0179】
「治療的」とはまた、既存の状態の重症度を軽減することの場合もあり、対象が完全な回復まで治療されることを必ずしも含意しない。
【0180】
本発明のFVII生成物およびFVIIa生成物は、単独で投与することもできるが、本発明の第6の態様による医薬組成物の一部として投与することが好ましいであろう。
【0181】
本発明のFVII生成物およびFVIIa生成物は、治療を必要とするか、または任意の適切な経路を介するこのような治療から利益を得る可能性がある患者に投与することができる。好ましい経路は、静脈内経路である。
【0182】
実際の投与量、ならびに投与速度および投与の時間経過は、治療される状態の性質および重症度、ならびに投与されるFVIIおよびFVIIaの形態の正確な性質に依存する。治療の処方、例えば、用量などについての決定は、最終的には一般医療者および他の医師の責任の範囲内にあり、一般医療者および他の医師の指示下にあり、治療される障害、個々の患者の状態、送達部位、投与方法、および医療従事者に知られる他の因子を考慮に入れることが典型的である。
【0183】
例えば、一実施形態では、本発明の因子VIIポリペプチドの適切な用量は、初期用量および維持用量として、70kgの対象で、約0.05mg〜500mg/日、好ましくは約1mg〜200mg/日、およびより好ましくは約10mg〜約175mg/日の範囲であり、対象の体重および状態の重症度に依存する。
【0184】
予防的適用では、本発明の因子VIIポリペプチドを含有する組成物を、疾患状態もしくは傷害を受けやすいか、または別の形でこれらの危険がある対象に投与して、該対象自身の凝血能を増強する。このような量を、「予防有効用量」と定義する。予防的適用の場合もまた、正確な用量は、対象の健康状態および体重に依存するが、用量は一般に、70kgの対象で、1日当たり約0.05mg〜約500mgであり、より一般的には、70kgの対象で、1日当たり約1.0mg〜約200mgの範囲である。
【0185】
治療する医師が用量レベルおよび投与パターンを選択する形で、組成物の単回投与または複数回投与を実施することができる。維持レベルを毎日必要とする外来対象の場合は、例えば、携帯用ポンプシステムを用いる持続的注入により、因子VII変異体を投与することができる。
【0186】
例えば、局所適用など、本発明の因子VIIポリペプチドの局所送達は、例えば、スプレー、灌流、二重バルーン型カテーテル、ステント、血管グラフトもしくはステントへの組込み、バルーン型カテーテルをコーティングするのに用いられるハイドロゲル、または他の十分に確立された方法により実施することができる。いずれにせよ、医薬組成物は、対象を効果的に治療するのに十分な量の因子VIIポリペプチドを提供するものとする。
【0187】
別段に定義しない限り、本明細書で用いられる技術用語および科学用語は、本発明の分野における当業者により一般的に理解される意味を有する。
【0188】
本発明の第2の態様および後続の態様に好ましい特徴は、変更すべき点を変更した上で、第1の態様の場合と同様である。
【0189】
ここで、例示だけを目的として示されるものであり、本発明について限定的であるものとしてはみなされないものとする、以下の実施例および図面に言及することにより、本発明をさらに説明する。以下の番号の図面に言及する。
【図面の簡単な説明】
【0190】
【図1】精製FVIIおよび精製FVII変異体を示す図である。FVII (レーン1)、FVII_C (レーン2)、FVII_IX (レーン3)、FVII_X (レーン4)、FVII_XHC (レーン5)、FVII_XTTAA (レーン6)、FVII_XNNAA (レーン7)、FVII_X30〜52 (レーン8)、およびFVII_X1〜34 (レーン9)を示す、還元SDS-PAGEを示す図である。FVII_XHCは、FX活性化ペプチドをC末端に融合させた、FVII融合ポリペプチドである。
【図2】異なる活性化ペプチドを伴うFVII変異体の薬物動態プロファイルを示す図である。0.5〜1mg/kgのFVII、FVII_C、FVII_IX、およびFVII_Xを静脈内投与した後の時間の関数としてのFVII抗原(平均; n=1〜3)を示す図である。
【図3A】FX活性化ペプチドおよびそれらの変異体が、FVIIの半減期に対して及ぼす効果を示す図である。1mg/kgのFX、FVII_X、FXai、およびFVIIを、マウスに静脈内投与した後の時間の関数としてのFVII抗原またはFX抗原の血漿濃度(平均; n=1〜2)を示す図である。
【図3B】FX活性化ペプチドおよびそれらの変異体が、FVIIの半減期に対して及ぼす効果を示す図である。1mg/kgのFVII_XおよびFVII_XHCを静脈内投与した後の時間の関数としてのFVII抗原の血漿濃度(平均; n=2〜3)を示す図である。
【図3C】FX活性化ペプチドおよびそれらの変異体が、FVIIの半減期に対して及ぼす効果を示す図である。FVII_X、FVII_X1〜34、およびFVII_X30〜52を静脈内投与した後の時間の関数としてのFVII抗原の血漿濃度(平均; n=2〜3)を示す図である。
【図3D】FX活性化ペプチドおよびそれらの変異体が、FVIIの半減期に対して及ぼす効果を示す図である。FVII_X、FVII_XNNAA、およびFVII_XTTAAを静脈内投与した後の時間の関数としてのFVII抗原の血漿濃度(平均; n=2〜3)を示す図である。
【図4】FX活性化ペプチドを残基151と153との間に挿入した変異体が活性化しないことを示す図である。該変異体を、250nMのFIXaと共に20時間にわたりインキュベートしたが、該変異体は、やはり単一のバンドとして泳動している(左側のレーン)ため、活性化は決定されなかった。分子マーカーは右側のレーンに示され、変異体バンドに隣接するバンドは、70kDaの質量を表わす。
【図5】FVII_XHC変異体の活性化および酵素活性を示す図である。FVII_XHCおよびFVIIを、80nMのFIXaと共にインキュベートし、異なる時点(0〜8時間後)において解析した。パネルAおよびパネルBは、それぞれ還元条件下で泳動させたFVIIおよびFVII_XHCの、クーマシー染色したSDS-PAGEを示す。小型の比色基質であるS-2288の代謝回転数を測定することにより、FVII (C)およびFVII_XHC (D)のアミド溶解活性を決定した。FVII (E)およびFVII_XHC (F)のタンパク質分解活性を評価するための基質として、FXを用いた(平均; n=2)。
【図6】FVIIaおよびFVIIa_XHCの薬物動態プロファイルを示す図である。1mg/kgのFVIIaおよびFVIIa_XHCを、マウスに静脈内投与した後の時間の関数としてのFVIIa抗原の平均血漿濃度(平均; n=2〜3)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0191】
材料と方法
試薬
FVII突然変異体をクローニングするための鋳型として、野生型FVIIの発現プラスミドpLN17416を用いた。FX活性化ペプチドをPCR処理するための鋳型としては、プラスミドpKSLN123 (Katrine S. Larsen博士、Novo Nordisk A/Sからの恵与)を用いた。
【0192】
FVII変異体の構築
重複伸長PCRにより、FVIIのGly-151とIle-153との間に、Arg-152を置換するFX活性化ペプチドを組み入れた、FVII変異体であるFVII_Xを構築した。第1のPCR反応では、プライマー対AおよびBを用いてFVII軽鎖を増幅し、プライマーCおよびDを用いて活性化ペプチドを挿入し、プライマーEおよびFを用いてFVII重鎖を増幅した。この研究で用いたすべてのプライマーおよびFVII変異体の配列は、それぞれ、Table 1 (表1)およびTable 2 (表2)に見出される。Expand High Fidelity PCRシステム(Roche)を用いるPCR反応を、以下の通りに実施した: 94℃で4分間にわたる加熱工程の後に、94℃で15秒間、55℃で30秒間、および72℃で2分間の30サイクルを実施した後、72℃で7分間にわたる伸長時間を施した。精製されたPCR産物であるABおよびCDを、第1のPCR反応と同様に実施される第2のPCR反応における鋳型として用い、プライマー対AおよびDにより、FVII軽鎖および挿入配列を増幅させた。続いて、ABCD産物およびEF産物を鋳型として、プライマー対AおよびFと共に、第3のPCRで用いた(ここでは、アニール温度を55℃から65℃に上昇させ、完全な産物を生成させた)。構築物は、NheI制限酵素およびNotI制限酵素により消化し、pCI-neoベクター(Promega、Madison、WI、USA)へとライゲーションした。
【0193】
FVIIのC末端においてFX活性化ペプチドを含有するFVII_XHC変異体の場合、プライマー対AおよびB_XHCを用いてFVIIを増幅し、プライマーC_XHCおよびD_XHCを用いてFX活性化ペプチドを増幅した後、プライマーAおよびD_XHCを用いる第2のPCRを実施して、全構築物を生成させたが、その他の点では上記の通りであった。プライマーについては、Table 1 (表1)を参照されたい。
【0194】
タンパク質の調製
マニュアルに従い、FreeStyle 293 Expression System (Invitrogen)を用いて、HEK-293F細胞において、野生型FVIIを含めたすべてのFVII変異体を一過性発現させた。トランスフェクションの96時間後、遠心分離により細胞を除去し、上清を、使用まで-80℃で保存した。発現させたタンパク質は、Sepharoseに連結したCa2+依存性抗FVIIモノクローナル抗体であるF1A2を用いる、アフィニティークロマトグラフィーにより精製した17。略述すると、上清を350mMのNaCl、10mMのCaCl2、pH7により調製し、50mMのHEPES、100mMのNaCl、10mMのCaCl2、pH7.5で平衡化したカラムへと投入した。カラムを、50mMのHEPES、2MのNaCl、10mMのCaCl2、pH7.5で洗浄した後、50mMのHEPES、100mMのNaCl、10mMのEDTA、pH7.5で溶出させた。溶出後、15mMのCaCl2を添加し、タンパク質溶液を-80℃で保存した。クーマシー染色SDS-PAGE (図1)によりタンパク質の純度を評価し、すべての調製物について、95%を超えて均一であると推定した。
【0195】
薬物動態
体重約25gである雄のNMRIマウス(Taconic M&B、Denmark)を、少なくとも7日間にわたり、Novo Nordisk A/S、Malovの動物飼育施設において、12/12時間の明暗周期、21℃、60%の相対湿度、水分および食餌の自由摂取という標準的な条件下で馴致した。研究は、Danish Animal Experiments Council、Danish Ministry of Justiceによるガイドラインに従い実施した。FVII_C (0.5mg/kg)を例外として、マウスに1mg/kgずつを、尾静脈における単回静脈内ボーラスとして投与し、マウス1匹当たり3例ずつの血液試料、および1時点当たり2または3例のマウスを含め、既に説明した、少量による試料採取デザインに従い採血した。血液試料採取のために、イソフルラン/O2/N2Oによりマウスに麻酔をかけ、FVIIおよびFXaiの投与後であるt=0.08、0.25、0.5、1、2、3、4、5、および7時間後、ならびに被験対象である他のすべてのタンパク質の投与後であるt=0.08、0.25、0.5、1、3、7、17、24、および30時間後において、ガラス細管を用いて、眼窩静脈叢から4滴ずつの血液を試料採取した。血液(45μL)を、0.13Mのクエン酸三ナトリウム溶液5μLへと移し、0.01Mのリン酸ナトリウム緩衝液、0.145MのNaCl、0.05%のTween20、1%のBSA、pH7.6中で5倍に希釈した後、室温、4000gで5分間にわたり遠心分離した。希釈した血漿を表わす上清を回収し、ドライアイス上に置き、FVII ELISAまたはFX ELISAにより解析するまで、-80℃で保存した。略述すると、FVII-ELISA (DakoCytomatio、Dako、Ejby、Denmark)により、FVII抗原濃度を決定した。製造元により説明される通り、マーカー酵素としてのペルオキシダーゼにより、この二部位モノクローナルEIA (immuno-enzymometric assay)アッセイを実施した。FX抗原の濃度は、Haemochrom Diagnostica (Frederiksberg、Denmark)製の市販の改変キットを用いることを介して、FX-ELISAにより決定した。略述すると、希釈血漿試料を、FXに特異的なポリクローナル抗体でコーティングしたマイクロウェル内でインキュベートした。洗浄工程の後、過酸化物に連結したFXポリクローナル抗体を添加した。洗浄工程の後、H2O2の存在下で基質(TMB)を導入し、発色させた。硫酸により反応を停止させたところ、発色量が、被験試料中のFX濃度に正比例した。第1の研究では、ノンコンパートメント法(WinNonlin Pro version 4.1 (Pharsight corporation、Mountain View、CA、USA))により、終末相半減期を推定した21。第2の研究では、1または2コンパートメントによるFOCE法(NON-MEM version VI)を介して、非線形混合効果モデリングを用いる集団法を用いて、薬物動態パラメータを推定した。指数関数誤差モデルにより、個体間のばらつきをモデル化し、比例誤差モデルとして、個体内のばらつきをモデル化した。近似の品質は、観察された濃度に対する予測濃度についてのグラフ解析により、予測濃度に対する重みづけ残存量により、かつ、客観値の比較により評価した。
【0196】
FVII変異体の活性化および活性
FVII変異体を活性化しうるかどうかについての初期評価では、FVII変異体を、周囲温度で50mMのHEPES、100mMのNaCl、10mMのCaCl2、pH7.4中に1μMで、250nMのFIXaと共に20時間にわたり、100nMのFXaと共に2時間にわたり、75nMのFXIaと共に2.5時間にわたり、または75nMの脂質化TFと併せた100nMのFVIIaと共に20時間にわたりインキュベートした。還元条件下で実施するSDS-PAGEにより試料を解析した。野生型のFVIIを陽性対照として用い、説明したすべての条件下で完全に活性化させた。
【0197】
2μMのFVIIまたはFVII_XHCを、周囲温度で50mMのHEPES、100mMのNaCl、10mMのCaCl2、0.01%のTween-80、pH7.4中に80nMのFIXaと共にインキュベートすることにより、FVII_XHCをより詳細に調べた。0、0.25、0.5、1、2、4、および8時間後に試料を採取し、酵素によるアミド分解活性およびタンパク質分解活性について解析したほか、還元条件下のSDS-PAGEにより解析した。速度論用マイクロプレートリーダー(SpectraMax 384Plus、Molecular Devices、Sunnyvale、CA、USA)を用いて、405nmで、比色基質の加水分解をモニタリングした。活性化混合物に由来する12.5nMのFVII/FVII_XHCを、50nMのsTFおよび1mMのS-2288と共にインキュベートすることにより、アミド分解活性を測定した。100nMのFVII/FVII_XHCおよび500nMのsTFを、150nMのFXと共に、10分間にわたりインキュベートすることにより、タンパク質分解活性を測定し、その後、過剰量のEDTAを用いて反応を減衰させ、S-2765 (0.5mMの最終濃度)を添加することにより、FXa活性を測定した。薬物動態解析のためのFVIIa_XHCは、自己活性化により調製した。
【0198】
結果
活性化ペプチド含有FVII変異体の活性化および比活性
FVIIをその活性化形態であるFVIIaへと転換するには、FVII変異体のうちの1つを除く(活性化ペプチドが、FVIIのC末端に位置するFVII_XHCを除く)すべてにおいて活性化ペプチドが終結する位置である、Arg-152とIle-153との間における単一のペプチド結合のタンパク質分解を必要とする。したがって重要な問題は、該変異体が、依然として活性化され、何らかの生物学的機能を果たしうるかどうかである。まず、すべてがFVIIの生理的活性化剤である酵素FVIIa、FIXa、およびFXaと共に、FVII変異体の活性化を調べた。FVII変異体を、FVIIを完全に活性化するのに十分な時間より長い時間にわたり、高濃度の活性化剤と共にインキュベートした(詳細については、材料と方法を参照されたい)。試料を、活性化タンパク質が、重鎖(FVII_XHCにおいて、C末端の活性化ペプチドを保有する)、および軽鎖(他の変異体すべてにおいて、C末端の活性化ペプチドを保有する)を表わす2つのバンドとして現れる、還元SDS-PAGEによりアッセイした。FVIIa、FIXa、およびFXaにより活性化しやすい変異体は、C末端にFX活性化ペプチドを含有するFVII_XHC変異体だけであった。他のすべての場合には、FVII_IXを除き、変異体を、検出可能な程度で活性化することが可能ではなかった。図4は、FVIIポリペプチドの残基151と153との間にFX活性化ペプチドが挿入された(20時間にわたりFIXaと共にインキュベートした後に) FVII変異体を活性化しようと試みたが失敗に終わった結果を例示する。変異体のバンド(図4の左側のレーン)は、図5Bの時点ゼロにおける変異体FVII_XHCの泳動性と同じ泳動性で泳動する、すなわち、変異体のバンドは、切断されていない完全なFVII変異体を表わす。これに対し、FVII_XHC変異体(すなわち、C末端に活性化ペプチドを伴う変異体)は、80nMのFIXaと共にインキュベートした4時間後に完全に活性化される(図5Bを参照されたい)。FVII_IXの活性化はまた、野生型のFVIIと比べても極めて遅く、それも、過剰量のFVIIaにより処理した際に限って認められた。
【0199】
FVII_XHCの活性化について、より詳細に調べた。FVII_XHCは、in vitroにおける活性化の動態が、FIXa (図5A〜B)またはFXa (図示しない)と共にインキュベートした場合の野生型FVIIの動態と識別できないことが分かった。同じ実験で並行して、活性化FVII_XHCの触媒活性の発生を、活性化FVII (図5C〜F)の触媒活性の発生と比較した。比色基質S-2288を用いたところ、活性化FVII_XHCは、ほぼ同一のアミド分解活性を示した(図5C〜D)。加えて、FVIIa_XHCは、FVIIaと比較して、見かけの比活性が低下したにもかかわらず、生理学的な基質であるFXを活性化することが可能であった(図5E〜F)。
【0200】
PKデータもまた、以下の通りに決定した。NMRIマウスに、列挙した化合物1mg/kgずつを投与した。データをTable 3 (表3)に示す。Compは、薬物動態モデルにおけるコンパートメント数を示し、Clは、クリアランスであり、V1は、中枢コンパートメントであり、V2は、末梢コンパートメントであり、t1/2αは、分布相半減期であり、t1/2βは、消失相/終末相半減期であり、MRTは、平均滞留時間である。
【0201】
図6に示したデータから、FVIIa_XHCおよびFVIIaの終末相半減期は、それぞれ、4.2時間および1.6時間と推定され、それぞれ、4.8時間および1.6時間のMRT値を伴った。
【0202】
【表1】

【0203】
【表2】

【0204】
【表3】

【0205】
配列情報
配列番号1:成熟FVII/FVIIaポリペプチドのアミノ酸配列
Ala-Asn-Ala-Phe-Leu-GLA-GLA-Leu-Arg-Pro-Gly-Ser-Leu-GLA-Arg-GLA-Cys-Lys-
5 10 15
GLA-GLA-Gln-Cys-Ser-Phe-GLA-GLA-Ala-Arg-GLA-Ile-Phe-Lys-Asp-Ala-GLA-Arg-
20 25 30 35
Thr-Lys-Leu-Phe-Trp-Ile-Ser-Tyr-Ser-Asp-Gly-Asp-Gln-Cys-Ala-Ser-Ser-Pro-
40 45 50
Cys-Gln-Asn-Gly-Gly-Ser-Cys-Lys-Asp-Gln-Leu-Gln-Ser-Tyr-Ile-Cys-Phe-Cys-
55 60 65 70
Leu-Pro-Ala-Phe-Glu-Gly-Arg-Asn-Cys-Glu-Thr-His-Lys-Asp-Asp-Gln-Leu-Ile-
75 80 85 90
Cys-Val-Asn-Glu-Asn-Gly-Gly-Cys-Glu-Gln-Tyr-Cys-Ser-Asp-His-Thr-Gly-Thr-
95 100 105
Lys-Arg-Ser-Cys-Arg-Cys-His-Glu-Gly-Tyr-Ser-Leu-Leu-Ala-Asp-Gly-Val-Ser-
110 115 120 125
Cys-Thr-Pro-Thr-Val-Glu-Tyr-Pro-Cys-Gly-Lys-Ile-Pro-Ile-Leu-Glu-Lys-Arg-
130 135 140
Asn-Ala-Ser-Lys-Pro-Gln-Gly-Arg-Ile-Val-Gly-Gly-Lys-Val-Cys-Pro-Lys-Gly-
145 150 155 160
Glu-Cys-Pro-Trp-Gln-Val-Leu-Leu-Leu-Val-Asn-Gly-Ala-Gln-Leu-Cys-Gly-Gly-
165 170 175 180
Thr-Leu-Ile-Asn-Thr-Ile-Trp-Val-Val-Ser-Ala-Ala-His-Cys-Phe-Asp-Lys-Ile-
185 190 195
Lys-Asn-Trp-Arg-Asn-Leu-Ile-Ala-Val-Leu-Gly-Glu-His-Asp-Leu-Ser-Glu-His-
200 205 210 215
Asp-Gly-Asp-Glu-Gln-Ser-Arg-Arg-Val-Ala-Gln-Val-Ile-Ile-Pro-Ser-Thr-Tyr-
220 225 230
Val-Pro-Gly-Thr-Thr-Asn-His-Asp-Ile-Ala-Leu-Leu-Arg-Leu-His-Gln-Pro-Val-
235 240 245 250
Val-Leu-Thr-Asp-His-Val-Val-Pro-Leu-Cys-Leu-Pro-Glu-Arg-Thr-Phe-Ser-Glu-
255 260 265 270
Arg-Thr-Leu-Ala-Phe-Val-Arg-Phe-Ser-Leu-Val-Ser-Gly-Trp-Gly-Gln-Leu-Leu-
275 280 285
Asp-Arg-Gly-Ala-Thr-Ala-Leu-Glu-Leu-Met-Val-Leu-Asn-Val-Pro-Arg-Leu-Met-
290 295 300 305 306
Thr-Gln-Asp-Cys-Leu-Gln-Gln-Ser-Arg-Lys-Val-Gly-Asp-Ser-Pro-Asn-Ile-Thr-
310 315 320
Glu-Tyr-Met-Phe-Cys-Ala-Gly-Tyr-Ser-Asp-Gly-Ser-Lys-Asp-Ser-Cys-Lys-Gly-
325 330 335 340
Asp-Ser-Gly-Gly-Pro-His-Ala-Thr-His-Tyr-Arg-Gly-Thr-Trp-Tyr-Leu-Thr-Gly-
345 350 355 360
Ile-Val-Ser-Trp-Gly-Gln-Gly-Cys-Ala-Thr-Val-Gly-His-Phe-Gly-Val-Tyr-Thr-
365 370 375
Arg-Val-Ser-Gln-Tyr-Ile-Glu-Trp-Leu-Gln-Lys-Leu-Met-Arg-Ser-Glu-Pro-Arg-
380 385 390 395
Pro-Gly-Val-Leu-Leu-Arg-Ala-Pro-Phe-Pro
400 405 406
【0206】
配列番号2: FIX活性化ペプチドのアミノ酸配列
Ala-Glu-Ala-Val-Phe-Pro-Asp-Val-Asp-Tyr-Val-Asn-Ser-Thr-Glu-Ala-Glu-Thr-
5 10 15
Ile-Leu-Asp-Asn-Ile-Thr-Gln-Ser-Thr-Gln-Ser-Phe-Asn-Asp-Phe-Thr-Arg
20 25 30 35
【0207】
配列番号3: FX活性化ペプチドのアミノ酸配列
Ser-Val-Ala-Gln-Ala-Thr-Ser-Ser-Ser-Gly-Glu-Ala-Pro-Asp-Ser-Ile-Thr-Trp-
5 10 15
Lys-Pro-Tyr-Asp-Ala-Ala-Asp-Leu-Asp-Pro-Thr-Glu-Asn-Pro-Phe-Asp-Leu-Leu-
20 25 30 35
Asp-Phe-Asn-Gln-Thr-Gln-Pro-Glu-Arg-Gly-Asp-Asn-Asn-Leu-Thr-Arg
40 45 50 52

【特許請求の範囲】
【請求項1】
因子VII (FVII)ポリペプチドもしくは因子VIIa (FVIIa)ポリペプチドまたはこれらの相同体と、因子X (FX)活性化ペプチドもしくは因子IX (FIX)活性化ペプチドまたはこれらの相同体とを含むポリペプチドであって、前記FX活性化ペプチドまたはFIX活性化ペプチドが、前記FVIIポリペプチドまたはFVIIaポリペプチドのC末端に融合しているポリペプチド。
【請求項2】
前記FVIIポリペプチドまたはFVIIaポリペプチドが、配列番号1に示されるアミノ酸配列の残基1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10から397、398、399、400、401、402、403、404、405もしくは406まで、またはこれらの相同体を含み、前記活性化ペプチドが、配列番号2に示されるアミノ酸配列の残基1、2、3、4、5もしくは6から30、31、32、33、34もしくは35まで、またはこれらの相同体、あるいは配列番号3に示されるアミノ酸配列の残基1、2、3、4、5もしくは6から47、48、49、50、51もしくは52まで、またはこれらの相同体を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記FVIIポリペプチドまたはFVIIaポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸配列に対して1または複数の置換を含み、前記置換が、配列番号1のアミノ酸位置に対応する172、173、175、176、177、196、197、198、199、200、203、235、237、238、239、240、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、297、299、319、320、321、327、341、363、364、365、366、367、370、または373から選択される位置における任意の1または複数のアミノ酸による置換である、請求項1または請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
単離ポリペプチドおよび/または組換えポリペプチドである、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする核酸配列。
【請求項6】
請求項5に記載の核酸を含むベクター。
【請求項7】
請求項5に記載の核酸または請求項6に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項8】
FVIIポリペプチドを生成させる方法であって、請求項7に記載の宿主細胞を、前記ポリペプチドの発現を促進する条件下で培養する工程と、発現させたポリペプチドを培養物から回収する工程とを含む方法。
【請求項9】
発現させたポリペプチドを精製する工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
精製する工程が、FVIIポリペプチドを活性化させる工程を包含する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から4のいずれか一項に記載のポリペプチドを含む医薬組成物。
【請求項12】
医療において使用される、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリペプチドまたは請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
血液凝固異常症を治療するための医薬の製造における、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリペプチドの使用。
【請求項14】
血液凝固異常症が、血友病A、血友病B、因子XI欠損症および因子VII欠損症、手術もしくは他の組織損傷における出血、または血小板機能不全、血小板減少症、もしくはフォンウィレブランド病に起因する出血を含めた、過剰な出血もしくは望ましくない出血である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
血液凝固異常症と関連する状態を治療する方法であって、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリペプチドまたは請求項11に記載の医薬組成物を対象に投与する工程を含む方法。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−517782(P2013−517782A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550441(P2012−550441)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051139
【国際公開番号】WO2011/092242
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(511031755)ノヴォ・ノルディスク・ヘルス・ケア・アーゲー (11)
【Fターム(参考)】