説明

因子VIIIおよび因子VIII様タンパク質に対する小型ペプチドおよびペプチド模倣物の親和性リガンド

本発明は、因子VIIIおよび因子VIII様タンパク質に対して高親和性を示す化合物およびそれらの使用に関する。本化合物は、一般式B−Q−Xを特徴とし、式中、Bは、ジペプチド、トリペプチド、またはペプチド模倣物を表し;Qは、スペーサーを表し、Xは、アンカー分子を表し;QおよびXは任意選択である。これらの化合物は、固体支持体材料をコーティングするために使用できる。得られた固体支持体材料は、親和性クロマトグラフィ法により因子VIIIを精製するために使用できる。さらに、本発明の化合物は、因子VIIIを安定化させ、その活性を増強させるために使用できる。したがって、本発明はまた、活性増大の医薬品を含有する安定化因子VIIIを製造するための方法に関する。本発明の化合物はさらに、診断用キットおよび研究用ツールとして使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、小分子組成物及びタンパク質の単離および精製の分野におけるそれらの使用に関する。
【0002】
特に、本発明は、凝固因子VIIIおよび/または因子VIII様ポリペプチドに対する親和性を有する小型ペプチドおよびペプチド模倣物を備える化合物の合成および最適化に関する。これらの化合物は、それらを含んでなる生理的および非生理的溶液からの因子VIIIおよび因子VIII様ポリペプチドの標識、検出、同定、単離、好ましくは精製に有用である。さらにこれらの化合物は、本発明の方法において因子VIIIおよび因子VIII様ポリペプチドを結合するリガンドとして使用できる。
【0003】
本発明の目的のために、本明細書に引用される全ての参照文献は、それらの全体が参照として組込まれている。
【背景技術】
【0004】
背景
因子VIII(FVIII)は、血液凝固の内因性経路の必須成分である(Bolton-Maggs, P. H. B; K. J. Pasi Lancet 2002, 361, 1801)。この血漿タンパク質は、それを保護し、安定化するvon Willebrand因子(vWf)との複合して血中に循環している。FVIII機能の遺伝子欠損は、最もよく見られる出血性疾患の1つである血友病Aとして知られている生命を危うくする出血疾患をもたらし、これは、FVIIIの反復注入により処置される。血友病Aは、因子VIIIの内因的欠損の結果である。医療処置に関しては、患者は、血液血漿または組換え細胞由来の因子VIIIを投与される。
【0005】
血友病A、すなわち凝固因子VIII(FVIII)の欠損または構造的欠陥により引き起こされる遺伝性X染色体関連出血疾患には、5000人の男性中、凡そ1人が罹患している。血友病Aの臨床的重症度は、因子欠損の程度と相関し、1%未満のFVIIIレベルでの重度の疾患、中等度疾患(1〜5%のFVIIIレベル)および軽度疾患(5〜25%FVIIIレベル)として分類される。この疾患は、自然発生的出血、ならびに外傷または手術の場合、制御不能な出血により特徴付けられる。血友病Aの他の臨床的特徴は、急性再発性疼痛性の関節血症であり、これは、軟骨および隣接骨の進行的破壊、筋血腫、脳内出血および血尿を特徴とする慢性関節症に進行し得る(Klinge, J.; Ananyeva, N. M.; Hauser, C. A.; Saenko, E. L. Semin. Thromb. Hemost. 2002, 28, 309-322)。
【0006】
血友病Aは、FVIIIを発現するヒト血液血漿または組換え細胞に由来するFVIIIの反復注入により処置される。
【0007】
FVIII分子(約300kDa、2332のアミノ酸残基)は、A1−A2−B−A3−C1−C2の順序で配列される3つの相同性Aドメイン、2つの相同性Cドメインおよび独特なBドメインからなる。血漿中への分泌前に、FVIIIは、細胞内でB−A3接合部での開裂により生じるMe2+−結合ヘテロ二量体に処理される。この開裂により、A1(1−372)、A2(373−740)およびBドメイン(741−1648)からなる重鎖(HCh)ならびにA3(1690−2019)、C1(2020−2172)およびC2(2173−2332)ドメインからなる軽鎖(LCh)が生じる。生じたタンパク質は、Bドメイン内での多くのさらなる開裂のためにサイズが非相同的であり、異なる長さのB−ドメインを有する分子を与える。A1(アミノ酸337〜372)およびA2(アミノ酸711〜740)のC−末端部分およびLCh(アミノ酸1649〜1689)のN−末端部分は、多数の負電荷残基を含有し、酸性領域(それぞれ、AR1、AR2およびAR3)と呼ばれる。
【0008】
FVIIIのより良好な供給に対する既存の要求に対処するため、ならびにウィルスおよびプリオン汚染の危険性を軽減するために、最近数年間、組換えFVIIIの使用が大いに増加している(Ananyeva N., Khrenov A., Darr F., Summers R., Sarafanov A., Saenko E. Expert Opin. Pharmacother/ 2004; 1061-1070)。1984年に因子VIII遺伝子が単離されて以来(Vehar, G. A.; Keyt, B.; Eaton, D.; Rodriguez, H.; O'Brien, D. P.; Rotblat, F.; Oppermann, H.; Keck, R.; Wood, W. I.; Harkins, R. N.; Nature 1984, 312, 337-342; Toole, J. J.; Knopf, J. L.; Wozney, J. M.; Sultzman, L. A.; Buecker, J. L.; Pittman, D. D.; Kaufman, R. J.; Brown, E.; Shoemaker, C.; Orr, E. C. Nature 1984, 312, 342-347)、新規な組換えVIII分子の製剤が大いに改善されている。さらに、因子VIIIの構造−機能関係のより深い洞察ならびに分子生物学におけるより精巧な技術により、組換え因子VIIIの生成において新たな可能性が開かれている。
【0009】
幾つかの治療用組換えFVIII産物が、凍結乾燥濃縮物として現在利用できる。
【0010】
(1)RECOMBINATE(Baxter)およびBIOCLATE(Centeon)の合成のために、FVIIIおよびvWfに関する遺伝子が、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)に挿入されている。vWFは、細胞培養においてFVIIIに対する安定化剤として作用する。マウスモノクローナル抗体を用いる単一の免疫親和性クロマトグラフィに次いで、精製処理を完了させるために2つのイオン交換クロマトグラフィステップにより組換えタンパク質が精製される。最後に精製組換えFVIIIを、低温殺菌されたヒトアルブミンの添加により安定化させる。この精製処理は、別個のウィルス不活化ステップを含まない(Kaufman, R. J.; Wasley, L. C.; Furie, B. C.; Furie, B.; Shoemaker, C. B. J. Biol. Chem. 1986, 261, 9622-9628)。
【0011】
(2)KOGENATE(Bayer)およびHELIXATE(Centeon)の場合、因子VIIIに関する遺伝子が、新生児ハムスター腎(BHK)から確立された細胞に挿入されている。分泌された組換えFVIIIは、2つのイオン交換クロマトグラフィゲルろ過およびサイズ排除クロマトグラフィ、ならびにマウスモノクローナル抗体を用いる二重の免疫親和性クロマトグラフィなど、多数の精製ステップにより処理される。次に精製タンパク質を、低温殺菌されたヒトアルブミンにより安定化させる。ウィルス不活化は、加熱処理により達成される(Addiego, J. E. Jr.; Gomperts, E.; Liu, S. L.; Bailey, P.; Courter, S. G.; Lee, M. L.; Neslund, G. G.; Kingdon, H. S.; Griffith, M. J. Thrombosis and haemostasis 1992, 67, 19-27)。
【0012】
(3)KOGENATE FS(Bayer)は、第二世代製品として開発された。KOGENATEとは異なり、KOGENATE FSは、組換えインスリンおよびヒト血漿タンパク質液(HPPS)を含有するが、動物源に由来するタンパク質を含有しない細胞培養培地中で培養される。
【0013】
(4)REFACTO(Wyeth-Ayerst Pharmacia and Upjohn)は、最初に認可されたBドメイン削除組換えFVIII分子(BDDrFVIII)である。単鎖170 kDaポリペプチドをコードするr−FVIII SQ遺伝子は、B−ドメインをコードする領域の大部分を除くことにより完全長cDNAから得られた。r−FVIII SQベクター系をCHO細胞に導入し、ヒトアルブミンおよび組換えインスリンを添加した無血清培地中で培養した。この精製は、FVIIIの重鎖に特異的なモノクローナル抗体を用いる免疫親和性を含む5つの異なるクロマトグラフィステップおよび化学的な溶媒/界面活性剤ウィルス不活化ステップを含む(Eriksson, R. K.; Fenge, C.; Lindner-Olsson, E.; Ljungqvist, C.; Rosenquist, J.; Smeds, A. L.; Ostlin, A.; Charlebois, T.; Leonard, M.; Kelley, B. D.; Ljungqvist, A. Sem. Hematol. 2001, 38, 24-31)。
【0014】
安全性を向上するために、動物またはヒトタンパク質のいずれの使用を避けることが、FVIII産物の開発において重要である。現在認可されている組換えFVIII製剤とは対照的に、次世代のFVIII産物は、ヒトまたは動物起源のいずれの成分をも含有しない培養培地にFVIIIの産生方法を適応させることになろう。したがって、最終目標は、動物またはヒトの原材料に由来する成分との接触を完全に回避するところまでFVIIIの産生を改善することである。また、FVIIIに関する精製法を改善する必要性もある。精製ステップ数、および関連コストを減少させる、血液または細胞培養上澄液などの種々の溶液から直接得られた高純度で活性のFVIIIを提供する方法が、望まれ続けている。FVIIIをより迅速に、より効率的でコスト効率の良い方法で得るための新しい方法は、現在の技術においてはまだ実現されていない。
【0015】
因子VIIIは通常、リガンドとしてモノクローナル抗体を使用して親和性クロマトグラフィにより濃縮される(Amatschek, K.; Necina, R.; Hahn, R.; Schallaun, E.; Schwinn, H.; Josic, D.; Jungbauer, A. J. High Resol. Chromatogr. 2000, 23, 47-58)。全米血友病協会および世界血友病連盟の医療審議会の最近の報告書によれば、組換え産物の製造工程からヒトおよびウシタンパク質を排除するためにあらゆる努力が成されるべきである(Medical and Scientific Advisory Council(MASAC)文書#151《MASAC RECOMMENDATIONS CONCERNING THE TREATMENT OF HEMOPHILIA AND OTHER BLEEDING DISORDERS》、National Hemophilia Foundationのウェブサイトから入手できる)。
【0016】
親和性リガンドポリペプチド類のパートナーとしてのオリゴペプチドおよびポリペプチドの使用が示唆されている(各々が参照としてそれらの全体が本明細書に組み込まれている国際公開第9914232号明細書;または米国特許出願公開第2003165822号明細書を参照)。それにもかかわらず、この方法には依然として不利な点がある。第一に、オリゴペプチド類の大規模な合成および精製は、大変なことであり、極めてコスト集約的である。さらに、血液または細胞培養に由来する原材料が、アフィニティーカラムに適用される場合、オリゴペプチド類は、タンパク質分解に影響されやすい上に、プロテアーゼの存在を完全に避けることはできない。このため、急速に非能率的となり、アフィニティー精製ステップの選択性が減少することとなり、さらに溶出された因子サンプルの純度および半減期ならびに高価なカラム材料の半減期が減少することとなる。
【0017】
このように、現在市販されている組換えFVIII製剤とは異なり、本発明は、ヒトまたは動物起源のいずれの成分も無い培養倍地中で次世代の製品を調製するための化合物および方法に関するものである。さらに、本発明はまた、血漿由来のFVIII製剤の精製にも関する。
【0018】
我々の発明は、モノクローナル抗体に代わることができ、上記の既知のオリゴペプチド類と比較してタンパク質分解安定性を改善させた、化学的に合成された独特な高親和性ペプチド類およびペプチド模倣物を含んでなる化合物を含む。さらに、我々の化合物は、大規模な溶液合成に好適であり、したがって製造コストを最少にするであろう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0019】
発明の概要
本発明は、ペプチド類および/またはペプチド模倣物を含む特定の化合物に関する。これらの化合物は、FVIIIまたはFVIII関連ポリペプチド類を結合し、および/または遊離させる特定の性質を示し、FVIIIまたはFVIII関連ポリペプチド類のアフィニティー分離のためのリガンドとして役立ち得る。
【0020】
特定の実施形態において、ペプチド類および/またはペプチド模倣物を含む本発明の化合物は、FVIIIのクロマトグラフィ精製に十分な親和性を有するFVIIIおよび/またはFVIII関連タンパク質を結合するジペプチド類、トリペプチド類またはペプチド模倣物である。
【0021】
一定の実施形態において、本化合物は、標的因子VIIIポリペプチド類の結合について顕著な特徴、ならびに標的ポリペプチド類の遊離(溶出)のための特定の特徴(すなわち、特定の組成および適用pHならびに溶出用緩衝液)を示す結合分子である。緩和な条件下での産物の溶出を促進するために、既存の化学的方法により化合物を容易に修飾できる。このような修飾は、従来から使用される抗体に対しては技術的に実行可能ではない。
【0022】
さらなる実施形態は、固定化化合物、好ましくはペプチドおよび/またはペプチド模倣物を含む支持体材料としての不活性マトリックスに関する。特定の実施形態において、支持体材料は、ポリマー材料である。さらに特定の実施形態において、化合物を、支持体マトリックスに化学的に結合させる。別の特定の実施形態において、化合物は、アンカー分子を介して支持体マトリックスに化学的に結合させる。さらに特定の実施形態において、化合物は、スペーサー分子を介して支持体マトリックスに化学的に結合させる。化合物は、アンカー分子ならびにさらなるスペーサー分子を介して支持体マトリックスに化学的に結合させることもまた考慮されている。
【0023】
本発明は、FVIIIまたはFVIII関連タンパク質に特異的に結合する、マトリックス上に固定化された本発明の化合物を含む診断用デバイスまたはキットに関する。一定の実施形態において、化合物は直接的、または例えば、樹脂などのポリマー材料であり得るマトリックス上に固定化された係留化合物および/またはスペーサー分子を介するものである。
【0024】
さらに別の実施形態において、化合物は、FVIIIまたはFVIII関連タンパク質の標識として方法に使用される。
【0025】
本発明の実施形態において、化合物は、FVIIIまたはFVIII関連タンパク質の同定および/または精製の方法に使用される。
【0026】
本発明は、さらに疾患の治療における本発明の化合物の医療使用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
発明の詳細な説明
親和性クロマトグラフィは、タンパク質などの複雑な分子の精製に用いられる最先端のの手法であり、十分に確立された強力な技法である(Jack, G. W.; Beer, D. J. Methods Mol. Biol. 1996, 59, 187-196)。親和性クロマトグラフィは、樹脂に固定されたリガンドと標的分子との間の強い相互作用により、夾雑タンパク質から優れた選択性により標的タンパク質を単離する独特の可能性を提供する。通常、リガンド類は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれかである。モノクローナル抗体は、単一特異的であり、精度よく作製できることからモノクローナル抗体が好ましい(Scopes, R. K. Protein purification: Principles and Practice. Springer, New York, 1994)。小型の化学リガンドは、アフィニティー分離において今まで限定された適用のみであった。しかしながら、組み合わせライブラリーの使用により、ペプチドリガンド類に関する免疫親和性クロマトグラフィ法のレパートリーは拡大している(Lowe, C. R. Curr. Opin. Chem. Biol. 2001, 5, 248-256)。生物学的または化学的系に基づく組み合わせ方法の使用により、標的タンパク質を捕捉し、緩和な条件下で溶出させるために適度な、またはさらに高い結合親和性を提供する独特なペプチド類が生成されている。
【0028】
Huang, Ping Y.らは、例えば、「Bioorganic & Medicinal Chemistry」, Vol. 4, No. 5. pp. 699-708, 1996にフォン・ヴィレブランド因子(vWF)の免疫親和性クロマトグラフィ精製に関する固定化ペプチド類の使用を記載している。分子量が、50万から1千万ダルトンの巨大なサイズの間の範囲にあることから、多量体vWFの精製は大きな課題となる。フォン・ヴィレブランド因子は、血液凝固カスケードに直接関与する多機能血漿タンパク質である。これは、出血の正常な制止に導く事象において顕著な役割を有する。vWFとFVIIIとの間の相互作用により、FVIIIが安定化され、輸送される。2つの高親和性結合部位により、効率的な捕捉が確保される(Sadler, J. E.; Mannucci, P. M.; Berntorp, E.; Bochkov, N.; Boulyjenkov, V.; Ginsburg, D.; Meyer, D.; Peake, I.; Rodeghiero, F.; Srivastava, A. Thromb. Haemost., 2000,84,160-174)。
【0029】
FVIIIは、血液凝固カスケードにおいて重要な機能を果たし、大きな治療的重要性を有する大型で複雑なタンパク質である。遺伝子変異により引き起こされたインビボFVIII産生の欠失により、ヒトFVIIIの精製製剤の注入により治療される血友病をもたらし得る(Lee, C. Thromb. Haemost. 1999, 82, 516-524)。血友病患者の治療のためのヒトFVIIIの現供給源は、血漿由来のFVIIIおよび組換えFVIIIであり、後者はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Kaufman, R. J.; Wasley, L. C.; Dorner, A. J. J. Biol. Chem. 1988, 263, 6352-6362)およびベビーハムスター腎(BHK)細胞(Boedeker, B. D. G. Sem. Thromb. Hemost. 2001, 27, 385-394)において合成される。高純度判定基準に加えて、免疫学的およびウィルス安全性を確保することは重要である。
【0030】
クロマトグラフィ技法を用いるヒトFVIIIの精製に関して幾つかの公知の方法がある。免疫親和性クロマトグラフィ樹脂の使用は、全ての組換えFVIIIおよび多くの血漿由来のFVIII製品に関する通常の製造法である。親和性クロマトグラフィを含む現在の製造法は、FVIIIに特異的であるモノクローナル抗体(mAb)を使用する(Lee, C., Recombinant clotting factors in the treatment of hemophilia, Thromb. Haemost. 1999, 82, 516-524)。製造目的のために、FVIIIに対する抗体は、マウスハイブリドーマ細胞系により製造され、次いでクロマトグラフィ用樹脂に固定化される。現在の産業用FVIIIの精製には、DNAおよび宿主細胞などの工程関連不純物の優れた除去を提供するmAb免疫アフィニティーステップが利用される。
【0031】
しかしながら、固定されたモノクローナル抗体を用いる免疫親和性クロマトグラフィの現在の工程に関連した、種々の懸念と限界がある。不利な点の1つは、分子サイズが巨大な少数の抗体分子が、樹脂表面のかなりの部分を覆うことから、樹脂の容量に限界がある。さらに、抗体の調製は、長時間かかる高価な方法であり、抗体の純度および活性は、各反復調製に依って変動する。抗体は、ウィルス、特にレトロウィルスが、標的タンパク質の製造工程に導入され得るという、低いがゼロではない危険性に抗体が影響されやすくする、製造宿主としてのハイブリドーマ培養により製造される。最後に、支持体マトリックス、すなわち樹脂からの抗体の漏出が、産物の重大な汚染をもたらし、結果として免疫原性による産物の損失をもたらす可能性がある。したがって、現在の工程を、より正確でコスト効率の良い工程により置き換えるのに十分な動機が存在する。本発明は、免疫親和性クロマトグラフィ精製法において、化学的に合成された小型ペプチドまたはペプチド模倣誘導体である化合物を提供することによりこの必要性を満たし、記載された困難の幾つかの減少または除去を提供する。
【0032】
Pflegertら(J. Peptide Res. 2002, 59, 174-182)は、FVIIIに対する高親和性を有する種々のオクタペプチドの開発を報告している。必須アミノ酸配列は、ペプチド類のC−末端側に配置されるWEYであることが判明している。
【0033】
小型ペプチドまたはペプチド模倣誘導体を含む本発明の化合物は、生成物へ漏出した場合に免疫応答を刺激する可能性が低いことから、リガンドとしての利点を有している。小型ペプチドまたはペプチド模倣誘導体はまた、抗体と比較してはるかに安定である。別の利点としては、優良医薬品製造基準(GMP)下、それらを、無菌的に大量に容易に製造できることから、製造コストがかなりより低いことである。小型ペプチドまたはペプチド模倣誘導体および本発明の方法の使用により、動物由来またはヒト由来でない原材料を用いる精製産物を得られる。最後に大切なことであるが、本明細書に記載された精巧な化学合成により工程が洗練され、標的タンパク質に対する小型ペプチドまたはペプチド模倣誘導体の親和性を改善する。
【0034】
したがって、本発明は、当該技術分野の通常の技術者に、一般的に採用されているFVIIIの精製方法を改善する化合物および方法を提供する。
【0035】
本明細書に記載されるように、本発明は、FVIIIの免疫アフィニティー精製のためのマウスモノクローナル抗体の使用が避けられるFVIII精製法を提供する。本発明は、モノクローナル抗体に取って代わることができ、上記の既知のオリゴペプチド類と比較してタンパク質分解の安定性を改善した、化学的に合成された独特な高親和性ペプチドおよびペプチド模倣物を含む。このことにより、生物学的安全性に関する最新の要件が満たされるであろう。さらに、我々の化合物は、大規模な溶液合成に好適であり、したがって親和性リガンドの製造コストを最小にする。
【0036】
本発明は、このようなタンパク質を含有する溶液から活性な因子VIIIおよび因子VIII様タンパク質を検出、同定、単離および精製ならびに標識するためのリガンドとしての新規な化合物、好ましくはジペプチド類、トリペプチド類およびペプチド模倣物を含んでなる。本発明の因子VIII結合分子は、顕著な安定性ならびに因子VIIIおよび因子VIII様タンパク質に対する高い親和性を示す。
【0037】
他に明記または指定されない限り、本明細書に用いられる用語の「因子VIIIおよび因子VIII様タンパク質」は、任意の動物由来の任意の因子VIIIタンパク質分子、任意の組換えまたはハイブリッドの因子VIIIまたは任意の修飾因子VIIIを包含する。好ましい実施形態において、このような「因子VIIIおよび因子VIII様タンパク質」は、因子VIIIの天然ヒト形態の活性の少なくとも10%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも80%の活性(例えば、Bowie, E. J. W., and C. A. Owen, in Disorders of Hemostasis (Ratnoff and Forbesら) pp. 43-72, Grunn & Stratton, Inc. Orlando, Fla. (1984)に記載される標準的な1段階凝固アッセイにより測定される)を特徴とする。
【0038】
因子VIII様タンパク質はまた、任意の供給源の因子VIIIタンパク質のドメイン、断片およびエピトープ、ならびにそれらのハイブリッド組み合わせを包含する。用語「因子VIII様タンパク質」は、研究目的のためのプローブとして、または診断用試薬として使用できる因子VIIIの断片をさらに含むが、このような断片は血液凝固活性を殆ど示さないか、全く示さない場合もある。このようなタンパク質またはポリペプチド類は、好ましくは少なくとも50のアミノ酸、より好ましくは少なくとも100のアミノ酸を備える。因子VIIIおよび因子VIII様タンパク質の好ましいドメイン、エピトープおよび断片は、その軽鎖、ドメインA3〜C1、C1〜C2、A3、C1、またはC2および個々のドメインA3、C1ならびにC2を含有する軽鎖の一部を含む。本発明により精製できる因子VIIIおよび因子VIII様タンパク質としてはまた、米国特許第7,122,634号明細書、米国特許第7,041,635号明細書、米国特許第7,012,132号明細書、および米国特許第6,866,848号明細書に記載された全ての組換えタンパク質、ハイブリッド、誘導体、変異体、ドメイン、断片、およびエピトープが挙げられ、これらの全ては、参照としてその全体が本明細書に組み込まれている。本明細書の他に明記されない限り、用語「アミノ酸」は、少なくとも1つのアミノ基および少なくとも1つの酸性基を含む任意の有機化合物を包含する。アミノ酸は、天然化合物であり得るか、または合成起源であり得る。アミノ酸は、少なくとも1つの第一級アミノ基および/または少なくとも1つのカルボン酸基を含有することが好ましい。また、用語「アミノ酸」とは、このようなアミノ酸化合物から誘導され、ペプチド結合またはペプチド模倣結合により隣接残基に結合されるペプチドおよびタンパク質などのより大きな分子に含まれる残基のことである。
【0039】
本発明は、血友病Aの治療および研究に有用なタンパク質および関連物質の商業的量の迅速分離および精製を確保する、コスト効率の良い手段を提供する。
【0040】
本発明は、式I
(I) B−Q−X
のペプチドおよび/またはペプチド模倣物を含んでなる化合物であって、
式中
Bは、FVIIIおよび/またはFVIII様タンパク質に対する親和性を提供するジペプチド、トリペプチドまたはペプチド模倣物であり、
Qは、欠落しているか、または有機スペーサー分子であり
Xは、欠落しているか、または有機アンカー分子である、
化合物ならびにそれらの塩類に関する。さらに、本発明に係る化合物は、互いに同じであっても異なっていてもよい2つ以上のB基を含む。これらのB基は、同じスペーサーQに結合でき、それによって2から4の範囲にあるrを有する一般式(B)r−Q−Xにより表される化合物を形成できる。あるいは、それらは、さらなるスペーサーQ(個々のスペーサーQは、互いに同じであっても異なっていてもよい)によって互いに結合でき、それによって2から4の範囲にあるsを有する一般式(B−Q)s−X型のオリゴマー化合物を形成できる。
【0041】
本発明の別の実施形態によれば、そのようなもののB基、またはB基およびQ基が一緒になって、またはB基およびX基が一緒になって、またはB基およびQ基およびX基が一緒になって、サイクルを形成できる。このサイクルは、任意に置換されたアルキレン基、アミノ酸、ジ−またはトリペプチド、およびそれらの組み合わせなどの有機二価基から任意に選択されるさらなる環形成成分を、任意に含みうる。
【0042】
用語「ペプチド模倣物」は、親ペプチドの生物学的作用を模倣できるかまたは拮抗できる非ペプチド構造成分を含有する化合物を含む。このような化合物は、選択的に、わずかな(または皆無の)のペプチド結合を含む。本発明の好ましい実施形態は、Rが一般式(II)に関して下記に定義される−CO−NR−、−NR−CO−、−CH−NR−または−NR−CH−、−CO−CHR−、−CHR−CO−、−CR=CR−および−CR=CR−からなる群から選択される1つ以上の官能基により1つ以上のペプチド結合を置換することによって本発明のジペプチド類およびトリペプチド類から誘導されるペプチド模倣物に関する。−NR−基を含有する選択肢において、置換基Rは、それぞれのアミノ酸(ペプトイドアミノ酸)の側鎖であり得ることを理解されたい。この場合、隣接Cαは、側鎖を有しない。一方、他の置換基Rは、Cαに結合された側鎖に付加して存在する。さらに、2つ以上のRが存在する場合、個々のRは、互いに同じであっても異なっていてもよいことを理解されたい。
【0043】
ペプチド模倣物の特に好ましい基は、(下記に定義される)残基Z1−Z2−Z3を含有するこれらの化合物を含んでなり、(少なくとも)Z2とZ3との間のペプチド結合は、−CH−NR−または−NR−CH−、−CR=CR−および−CR=CR−からなる群から選択される。
【0044】
「親和性(アフィニティー)」は、原子間または分子間引力であり、それらの組み合わせを維持するのを補助する。このことは、親和性クロマトグラフィに関する基本である。本発明の文脈において、FVIIIに対する結合が、少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、最も好ましくは少なくとも40%である下記の試験プロトコルに従って測定された場合、ペプチドまたはペプチド模倣物はFVIIIまたはFVIII様タンパク質に対する親和性を示すように考慮されている。この結合程度は、125I標識FVIIIを用いた下記の実施例1に記載された実験を再現することにより測定される。
【0045】
本発明のペプチドまたはペプチド模倣誘導体B(本明細書に用いられる用語の「ペプチド模倣物」および「ペプチド模倣誘導体」は、交互に使用される)は、好ましくは、支持体マトリックスの表面に化学的に結合でき、それによってペプチドで覆われた支持体マトリックスを形成できる。これは、アンカー分子Xおよび/またはスペーサー分子Qの補助により、またはQおよびXを欠く場合、好ましくは、化合物BのSH、N、NH−NH、O−NH、NH、−CH−L、C≡CH、カルボニルまたはカルボキシル基により遂行されることが好ましい。ここでLは、Cl、Br、Iのような遊離基を含む。
【0046】
本発明はまた、ペプチドで覆われた支持体マトリックスに関する。
【0047】
用語「化学結合」は、2個(またはそれ以上)の原子間、または1個(またはそれ以上)の原子(またはそれ以上)と1つ(またはそれ以上)の化合物(またはそれ以上)との間、または2つ(またはそれ以上)の化合物間の共有結合性、イオン性、疎水性および/または他の複雑な相互作用、ならびにそれらの混合および組み合わせを含む。
【0048】
支持体材料は、無機または有機、特にポリマー材料を含む。したがって、生体高分子のクロマトグラフィに通常使用される同じポリマー材料(すなわち、線状多糖類)を利用できる。特に、親水性表面を用いるポリマー類は、クロマトグラフィ支持体材料、すなわち樹脂として好適である。例えば、Toyoperral AF-Epoxy-650M樹脂が使用される。
【0049】
このような支持体材料はまた、例えば、式Iに従ったペプチドまたはペプチド模倣物のような化合物の固定化のためのSH、N、NH−NH、O−NH、NH、−CH−L、C≡CH、エポキシ、カルボニルまたはカルボキシル基のような、さらなるアンカー分子の提供と共に供されることが可能である。
【0050】
本発明の好ましい化合物は、FVIIIおよび/またはFVIII様タンパク質と相互作用するという事実により、ペプチドまたはペプチド模倣誘導体を含む好ましい化合物は、診断用デバイスおよびキットに好適である。好ましい診断用デバイスまたはキットは、FVIIIまたはFVIII関連タンパク質に対して高親和性を有する少なくとも1つの化合物、少なくとも1つの化合物が任意に化学的に結合できる支持体マトリックス、および必要ならば、他の試薬を備える。
【0051】
本発明の化合物、好ましくは、ペプチドまたはペプチド模倣誘導体とFVIIIまたはFVIII様タンパク質との反応結果を追跡するために、化合物は標識される。例えば、放射性マーカーの使用、蛍光リガンドの使用、アビジン/ストレプトアビジン系の使用、またはELISA技法に一般的である、着色反応を引き起こす酵素の使用など、化合物を標識するための幾つかの選択肢がある。
【0052】
本発明は、FVIIIまたはFVIII様タンパク質の標識、検出、同定、単離および/または精製に好適であるペプチドおよびペプチド模倣誘導体を含む化合物に関する。
【0053】
上記および下記に示されたアミノ酸の略字は、以下のアミノ酸残基の略である:
Abu 4−アミノ酪酸
Aha 6−アミノヘキサン酸
Ala アラニン
Asn アスパラギン
Asp アスパラギン酸
Arg アルギニン
Bpa p−ベンゾイルフェニルアラニン
Cys システイン
Dab 2,4−ジアミノ酪酸
Dap 2,3−ジアミノプロピオン酸
Gln グルタミン
Glp ピログルタミン酸
Gly グリシン
His ヒスチジン
ホモ−Cys ホモ−システイン
ホモ−Phe ホモ−フェニルアラニン
IAA 2−(インドール−3−イル)酢酸
IBA 4−(インドール−3−イル)酪酸
IPA 3−(インドール−3−イル)プロピオン酸
Ile イソロイシン
Leu ロイシン
Lys リシン
Met メチオニン
1−Nal 1−ナフチルアラニン
2−Nal 2−ナフチルアラニン
Nle ノルロイシン
Orn オルニチン
Phe フェニルアラニン
Phg フェニルグリシン
4−Hal−Phe 4−ハロゲン−フェニルアラニン
Pro プロリン
Ser セリン
Thr トレオニン
Trp トリプトファン
Tyr チロシン
Val バリン
【0054】
さらに以下の略字が、下記に使用される:
Ac アセチル
BOC t−ブトキシカルボニル
tBu t−ブチル
CBZまたはZ ベンジルオキシカルボニル
DCCI ジシクロヘキシルカルボジイミド
DIPEA N−エチルジイソプロピルエチルアミン
DMF ジメチルホルムアミド
EDCI N−エチル−N,N−(ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド
Et エチル
Fmoc 9−フルオレニルメトキシカルボニル
HOBt 1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
Me メチル
MBHA 4−メチル−ベンズヒドリルアミン
Mtr 4−メトキシ−2,3,6−トリメチルフェニル−スルホニル
HATU O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム−ヘキサフルオロホスフェート
HONSu N−ヒドロキシスクシンイミド
OtBu t−ブチルエステル
Oct オクタノイル
OMe メチルエステル
OEt エチルエステル
POA フェノキシアセチル
Pbf ペンタメチルベンゾフラニル
Pmc 2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル
Sal サリシロイル
Su スクシニル
TIPS トリイソプロピルシラン
TFA トリフルオロ酢酸
TFE トリメチルシリルブロミド
Trt トリチル(トリフェニルメチル)
【0055】
式Iの化合物の構成単位(すなわち、上記のアミノ酸)が、複数の鏡像異性体の形態で生じ得る場合、これら全ての形態およびそれらの混合物(例えば、DL体)もまた含まれる。
【0056】
さらに、アミノ酸は、例えば、式Iの化合物の構成成分として、それ自体が知られている対応する保護基を伴って提供できる。好ましい基は、AspおよびGluの誘導体、特に側鎖のメチル−、エチル−、プロピル−、ブチル−、t−ブチル−、ネオペンチル−またはベンジルエステルまたはTyrの誘導体、特に側鎖のメチル−、エチル−、プロピル−、ブチル−、t−ブチル−、ネオペンチル−またはベンジルエステルである。さらにこの化合物は、本発明の化合物の調製に関連して下記の1つ以上のさらなる保護基を有することができる。
【0057】
さらに、N−末端修飾またはカルボキシ末端修飾誘導体などの構造成分も、本発明の一部である。好ましい基は、アミノ末端メチル−、エチル−、プロピル−、ブチル−、t−ブチル−、ネオペンチル−、フェニル−またはベンジル基、BOC、Mtr、CBZ、Fmocのようなアミノ末端基、特にアセチル、ベンゾイルまたは(インドール−3−イル)カルボン酸基、さらにカルボキシ末端メチル−、エチル−、プロピル−、ブチル−、t−ブチル−、ネオペンチル−またはベンジルエステル、メチル−、エチル−、プロピル−、ブチル−、t−ブチル−、ネオペンチル−またはベンジルアミド、特にカルボキサミド類である。
【0058】
アルファアミノ基は、アリルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル(Z)およびp−クロロベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、p−ブロモベンジルオキシカルボニル、p−ビフェニル−イソプロピルオキシカルボニル、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)およびp−メトキシベンジルオキシカルボニル(Moz)などの置換ベンジルオキシカルボニルなど、芳香族ウレタンタイプ保護基;t−ブトキシカルボニル(Boc)、ジイソプロピルメチルオキシカルボニル、およびイソプロピルオキシカルボニルなどの脂肪族ウレタンタイプ保護基から選択される適切な保護基により保護できる。本明細書において、Fmocが、アルファアミノ保護のために最も好ましい。
【0059】
本発明に係るペプチドおよびペプチド模倣物の形成に使用できるアミノ酸は、天然および非タンパク質起源のアミノ酸双方に属することができる。アミノ酸およびアミノ酸残基を誘導でき、N−メチル−、N−エチル−、N−プロピル−またはN−ベンジル誘導体が好ましい。例えば、メチルが使用される場合、アミド結合のN−アルキル化は、対応する化合物の活性に対して強い影響を及ぼすことができる(Levian-Teitelbaum, D.; Kolodny, N.; Chorev, M.; Selinger, Z.; Gilon, C. Biopolymers 1989, 28, 51-64、これは参照としてその全体が本明細書に組み込まれている)。さらに使用できるアミノ酸の構造的代替物としては、側鎖修飾のアミノ酸、β−アミノ酸、アザアミノ酸(α−CH−基がN−原子により置換されるα−アミノ酸の誘導体)および/またはペプトイド−アミノ酸(アミノ酸側鎖がα−C−原子の代わりにアミノ基に結合されるα−アミノ酸の誘導体)または上記修飾からの環化誘導体が挙げられる。
【0060】
本発明の一実施形態によれば、構成単位として天然アミノ酸のホモ−誘導体を使用することも可能である。これらは、メチレン基がCαに即隣接した側鎖に挿入される天然アミノ酸の誘導体である。同様に、本発明に係る天然アミノ酸のα−メチル化誘導体を使用することが可能である。
【0061】
上記および下記において、残基B、QおよびXは、他に明白に述べられない限り、式Iに定義されるとおりである。
【0062】
本発明の一実施形態において、式Iの化合物は、添付の請求項2〜17のいずれか一項に定義されるとおりである。
【0063】
別の実施形態において、Bは、一般式
Z1−Z2−Z3
により表されることが好ましく、
式中Q、Xまたは支持体が残基Z1、Z2およびZ3のいずれか1つに結合できる。この結合は、残基Z1またはZ3を介すること好ましく、残基Z3を介することがより好ましい。
【0064】
この実施形態において、Z1は、大きな側鎖を有する天然または非タンパク質起源アミノ酸残基またはその誘導体である。このことは、この側鎖が少なくとも3個の炭素原子、好ましくは少なくとも5個の炭素原子、より好ましくは少なくとも6個から25個までの炭素原子を含むことを意味する。1個以上のこれらの炭素原子は、N、OおよびSから選択されるヘテロ原子により置換できる。Z1の側鎖は、単環式、二環式または三環式であってもよい環式基を含有することが好ましい。さらに、この環式基は、飽和、不飽和または芳香族であってもよい。芳香族基は、二環式基と同様により好ましい。芳香族二環式基が特に好ましい。他の実施形態に関して添付の請求項4から17までに指定された形態はまた、この実施形態のさらに好ましい化合物を特徴付ける。
【0065】
この実施形態において、Z1は、好ましくは式
Ar−(CH−(CHR−(CH−A (II)
の残基であり得、
式中
は、NR、CO、OCO、CHR、OまたはSから選択される基を表し、
は、C1〜4アルキル、フェニル、ベンジル、およびN(Rから選択される基を表し、アルキル、フェニルまたはベンジル基が、AおよびN(Rから独立して選択される1つ以上の置換基を有することができ、2つ以上のAおよび/または2つ以上のRが、互いに同じであっても異なってもよく、
Arは、6個から14個の炭素原子を持つ単環式、二環式または三環式芳香族環系、飽和または部分的に不飽和C5〜14の単環式または二環式アルキル基を有する芳香族基であり、その各々は、非置換であっても、A、Ar、O−Ar、C(O)−Ar、CH−Ar、OH、OA、CF、OCF、CN、NO、Halから独立して選択される1つから3つの置換基を有していてもよく;またはArはHetであってもよく;
Halは、F、Cl、BrまたはIから選択され、
Arは、6個から14個の炭素原子を持つ単環式、二環式または三環式芳香族環系を有する芳香族基、好ましくはフェニル基またはナフチル基、より好ましくはフェニル基であり、Arは、非置換であっても、A、OH、OA、CF、OCF、CN、NO、およびHalから独立して選択される1つから3つの置換基を有していてもよく;
Hetは、1個から3個のN原子および/または1個のS原子またはO原子を含み、5員環から12員環を有する飽和、部分的または完全不飽和単環式または二環式へテロ環式残基を表す。
【0066】
ヘテロアリール基または単環式または二環式5員乃至12員へテロ環式環基が基礎となり得るへテロ環の例は、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、テトラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、インドール、イソインドール、インダゾール、フタラジン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、β−カルボリンまたはこれらのへテロ環のベンゾ融合、シクロペンタ融合、シクロヘキサ融合またはシクロヘプタ融合誘導体である。
【0067】
窒素へテロ環は、N−オキシド類としても存在し得る。
【0068】
ヘテロアリールであり得る基または単環式または二環式5員から12員へテロ環式環の基は、例えば、2−または3−ピロリル、フェニルピロリル、例えば、4−または5−フェニル−2−ピロリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、4−イミダゾリル、メチルイミダゾリル、例えば、1−メチル−2−、−4−または−5−イミダゾリル、1,3−チアゾリル−2−イル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、N−オキシド−2−、−3−または−4−ピリジル、2−ピラジニル、2−、4−または5−ピリミジニル、2−、3−または5−インドリル、置換2−インドリル、例えば、1−メチル−、5−メチル−、5−メトキシ−、5−ベンジルオキシ、5−クロロ−または4,5−ジメチル−2−インドリル、1−ベンジル−2−または−3−インドリル、4,5,6,7−テトラヒドロ−2−インドリル、シクロヘプタ[b]−5−ピロリル、2−、3−または4−キノリル、1−、3−または4−イソキノリル、1−オキソ−1,2−ジヒドロ−3−イソキノリル、2−キノキサリニル、2−ベンゾフラニル、2−ベンゾチエニル、2−ベンゾオキサゾリルまたは2−ベンゾチアゾリルまたは部分水素化または完全水素化へテロ環式環の基として、例えば、またジヒドロピリジニル、ピロリジニル、例えば、2−または3−(N−メチルピロリジニル)、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、テトラヒドロチエニル、ベンゾジオキソラニルである。
【0069】
Het基を表すへテロ環式基は、炭素原子および/または環窒素原子上の非置換であるか、またはモノ置換またはポリ置換、例えば、同一かまたは異なる置換基によるジ置換、トリ置換、テトラ置換またはペンタ置換であり得る。炭素原子は、例えば、(C〜C)−アルキル、特に(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルコキシ、特に(C〜C)−アルコキシ(前述の置換基のアルキル部分は、それ自体非置換であっても、COORまたはN(Rで置換されていてもよい)、ハロゲン、ニトロ、N(R、トリフルオロメチル、OCF、ヒドロキシル、オキソ、シアノ、COOR、アミノカルボニル、(C〜C)−アルコキシカルボニル、フェニル、フェノキシ、ベンジル、ベンジルオキシ、テトラゾリルにより、特に(C〜C)−アルキル、例えば、メチル、エチルまたはt−ブチル、(C〜C)−アルコキシ、例えば、メトキシ、ヒドロキシル、オキソ、フェニル、フェノキシ、ベンジル、ベンジルオキシにより置換できる。硫黄原子は、スルホキシドまたはスルホンに酸化できる。Het基の例は、1−ピロリジニル、1−ピペリジニル、1−ピペラジニル、4−置換1−ピペラジニル、4−モルホリニル、4−チオモルホリニル、1−オキソ−4−チオモルホリニル、1,1−ジオキソ−4−チオモルホリニル、ペルヒドロアゼピン−1−イル、2,6−ジメチル−1−ピペリジニル、3,3−ジメチル−4−モルホリニル、4−イソプロピル−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペラジニル、4−アセチル−1−ピペラジニル、および4−エトキシカルボニル−1−ピペラジニルである。
【0070】
Aは、COOR、N(R、または非置換であっても、COORまたはN(Rで置換されていてもよい1〜6個のC原子を有する線状、分枝状または環式アルキル基を表し、
mおよびoは、0、1、2、3および4から独立して選択され、
nは、0または1であり、および
は、H、C1〜4アルキル、フェニルまたはベンジル、あるいはペプトイド−アミノ酸の場合、アミノ酸側鎖である。
【0071】
より好ましいZ1基としては、タンパク質起源芳香族アミノ酸(Phe、Tyr、Trp、His)およびそれらの誘導体が挙げられ、特にこれらの誘導体は、その側鎖においてR(下記に定義される)から独立して選択される1つから3つの置換基を有する。このような誘導体の典型的な例は、Tyr(OMe)、Tyr(OBn)およびTrp(Me)である。より好ましいZ1基としては、Tyr、Tyr(OMe)およびTyr(OBn)の誘導体が挙げられ、その置換基は、フェニル基のメタ位またはオルト位に結合される。さらにより好ましいZ1基としては、シクロヘキシルアラニン、1−ナフチルアラニン、2−ナフチルアラニン、2−チエニルアラニン、3−チエニルアラニン、ベンゾチエニルアラニン(この二環式環系は、環系の任意の位置、好ましくは、チエニル環の2位または3位において分子の残部に結合できる)、フェニルグリシン、p−ベンゾイルフェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、ホモチロシン、ホモトリプトファン、ホモヒスチジンおよび天然アミノ酸に関して上記のそれらの誘導体が挙げられる。
【0072】
他のより好ましいZ1基は、上記一般式(II)により表される基を含み、これは以下の一般式(III):
Ar−(CH−(CHR−(CH− (III)
により表され、
式中
Arは、フェニル、2−ヒドロキシフェニル、3−ヒドロキシフェニル、4−ヒドロキシフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、p−ベンゾイルフェニル、(オルト−、メタ−、またはパラ−)ビフェニル、2−インドリル、3−インドリル、2−チオフェニル、3−チオフェニル、2−ベンゾチオフェニル、3−ベンゾチオフェニルなどのArにより定義される芳香族基の好ましいサブ基を表し、それらの各々は、AおよびHalから独立して選択される1つから3つの置換基を有することができ、
式(III)の残りの置換基は、式(II)に関して定義されたとおりであり、
は、H、R、−COR、−COORであり、
は、H、C1〜4アルキル、フェニルまたはベンジルを表し、それらの各々は、非置換であっても、A、OH、OA、CF、OCF、CN、NOまたは独立してHalで1重、2重、または3重に置換されてもよい。
【0073】
特に好ましいZ1基は、Ac−Trp、Trp、1−ナフチルアラニン、2−ナフチルアラニン、p−ベンゾイルフェニルアラニン、および上記一般式(III)の基から選択され、Arは、3−インドリル、1−ナフチル、2−ナフチルまたはp−ベンゾイルフェニルを表し、m=0〜3、n=0、o=0を表す。
【0074】
最も好ましいのは一般式(III)によって表されるZ1基であり、Arが、3−インドリルを意味し、m=1、n=0、o=0である。
【0075】
Z2は欠損しているか、天然または非タンパク質起源アミノ酸残基またはその誘導体である。Z2は芳香族でないことが好ましい。
【0076】
Z2は、Ser、Thr、Glu、Asp、Asn、Gln、Arg、Lys、およびこれらの誘導体(例えば、ホモ誘導体およびOrnなどの修飾側鎖長を有するN−アルキル化およびCα−メチル化極性アミノ酸ならびに極性アミノ酸誘導体など)などの極性アミノ酸であることがより好ましい。
【0077】
特に好ましいZ2基は、Glu、Asp、ホモ−Gluおよびホモ−Aspなど、生理的条件下で負電荷を有する上記に定義された極性アミノ酸から選択される。最も好ましいZ2基は、GluまたはAspである。
【0078】
Z3は、Z1に関して上記に定義された残基である。すなわち、Z3は、天然または非タンパク質起源アミノ酸残基またはその誘導体、あるいは一般式(II)により表される基であり、式中
は、NR、CO、CHR、OまたはSを表し、
は、C1〜4アルキル、フェニル、ベンジル、およびN(R)を表し、アルキル、フェニルまたはベンジル基が、少なくとも1つのN(R)基ならびに任意にAおよびN(Rから独立して選択される1つ以上の置換基を有し、2つ以上のAおよび/または2つ以上のRが、互いに同じであっても異なっていてもよく、
Arは、6個から14個の炭素原子を持つ単環式、二環式または三環式芳香族環系、飽和または部分的に不飽和C5〜14の単環式または二環式アルキル基を有する芳香族基であり、それらの各々は、非置換であっても、A、O−Ar、C(O)−Ar、CH−Ar、OH、OA、CF、OCF、CN、NOまたはHalから独立して選択される基で1重、2重、または3重に置換されていてもよく、あるいはHetであってもよく;
Halは、F、Cl、BrまたはIから選択され、
Hetは、Z1に関して上記に定義されたへテロ環式残基であり、
Aは、COOR、N(Rまたは非置換であっても、COORまたはN(Rで置換されてもよい1〜6個のC原子を有する線状、分枝状または環式アルキル基を表し、
mおよびoは、0、1、2、3および4から独立して選択され、
nは、0または1であり、
は、H、C1〜4アルキル、フェニルまたはベンジル、あるいはペプトイド−アミノ酸の場合、アミノ酸側鎖である。
【0079】
より好ましいZ3基としては、タンパク質起源芳香族アミノ酸(Phe、Tyr、Trp、His)およびそれらの誘導体が挙げられ、特にこれらの誘導体は、その側鎖においてC1〜4アルキル基、ハロゲン原子またはベンジル基から独立して選択される1つから3つの置換基を有する。このような誘導体の典型的な例は、Tyr(OMe)、Tyr(OBn)およびTrp(Me)である。さらにより好ましいZ3基としては、シクロヘキシルアラニン、1−ナフチルアラニン、2−ナフチルアラニン、チエニルアラニン、ベンゾチエニルアラニン、フェニルグリシン、p−ベンゾイルフェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、ホモチロシン、ホモトリプトファン、ホモヒスチジンおよび天然アミノ酸に関して上記のそれらの誘導体が挙げられる。
【0080】
他のより好ましいZ3基としては、上記一般式(III)により表される基が挙げられ、Arは、フェニル、2−ヒドロキシフェニル、3−ヒドロキシフェニル、4−ヒドロキシフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、p−ベンゾイルフェニル、ビフェニル、2−インドリル、3−インドリル、チオフェン、ベンゾチオフェンを表し、それらの各々は、AおよびHalから独立して選択される1つから3つの置換基を有することができ、式(III)の残りの置換基は、Z1に関して上記に定義されたとおりである。
【0081】
最も好ましいZ3基は、1−Nal、Phe、TyrおよびTyr(OMe)から選択される。
【0082】
本発明のジペプチドおよびトリペプチド基Bにおける残基Z1およびZ3またはZ1およびZ2ならびにZ2およびZ3は、各々ペプチド結合を介して結合する。
【0083】
本発明の好ましい化合物としては、以下の組み合わせ残基から選択されるこれらのジペプチド基およびトリペプチド基Bが挙げられる:
(i)Z1のより好ましい実施形態とZ2およびZ3の好ましい実施形態との組み合わせ;
(ii)Z1の特に好ましい実施形態とZ2およびZ3の好ましい実施形態との組み合わせ;
(iii)Z1の最も好ましい実施形態とZ2およびZ3の好ましい実施形態との組み合わせ;
(iv)Z2のより好ましい実施形態とZ1およびZ3の好ましい実施形態との組み合わせ;
(v)Z2の特に好ましい実施形態とZ1およびZ3の好ましい実施形態との組み合わせ;
(vi)Z2の最も好ましい実施形態とZ1およびZ3の好ましい実施形態との組み合わせ;
(vii)Z3のより好ましい実施形態とZ1およびZ2の好ましい実施形態との組み合わせ;
(viii)Z3の最も好ましい実施形態とZ1およびZ2の好ましい実施形態との組み合わせ;
(ix)Z1のより好ましい実施形態とZ2およびZ3のより好ましい実施形態との組み合わせ;
(x)Z1の特に好ましい実施形態とZ2およびZ3のより好ましい実施形態との組み合わせ;
(xi)Z1の最も好ましい実施形態とZ2およびZ3のより好ましい実施形態との組み合わせ;
(xii)Z2のより好ましい実施形態とZ1およびZ3のより好ましい実施形態との組み合わせ;
(xiii)Z2の特に好ましい実施形態とZ1およびZ3のより好ましい実施形態との組み合わせ;
(xiv)Z2の最も好ましい実施形態とZ1およびZ3のより好ましい実施形態との組み合わせ;
(xv)Z3のより好ましい実施形態とZ1およびZ2のより好ましい実施形態との組み合わせ;
(xvi)Z3の最も好ましい実施形態とZ1およびZ2のより好ましい実施形態との組み合わせ;
(xvii)Z1のより好ましい実施形態とZ2およびZ3の最も好ましい実施形態との組み合わせ;
(xviii)Z1の特に好ましい実施形態とZ2およびZ3の最も好ましい実施形態との組み合わせ;
(xix)Z1の最も好ましい実施形態とZ2およびZ3の最も好ましい実施形態との組み合わせ;
(xx)Z2のより好ましい実施形態とZ1およびZ3の最も好ましい実施形態との組み合わせ;
(xxi)Z2の特に好ましい実施形態とZ1およびZ3の最も好ましい実施形態との組み合わせ;
(xxii)Z3のより好ましい実施形態とZ1およびZ2の最も好ましい実施形態との組み合わせ。
【0084】
ペプチドおよび/またはペプチド模倣配列の方向は反転されることができる(「レトロペプチド」と呼ばれる)。
【0085】
Qとは、任意の有機スペーサー分子のことである。
【0086】
有機スペーサー分子は、それ自体が知られている。「有機」とは、炭化物およびカーボネート化合物を除いた全ての炭素化合物のことであり、またBeilstein's Handbook of Organic Chemistryを参照されたい。通常、有機スペーサー分子は、一末端または両末端において官能基を有する線状炭化水素である。この炭化水素鎖は修飾されうる。好ましい有機スペーサー分子としては、アミノ酸または[−NH−(CH−CO]、[−NH−(CHCH−O−)CH−CO]、[CO−(CH−CO−]、[−NH−(CH−NH−]、[CO−CH−(OCHCH−O−CH−CO−]、または[NH−CHCH−(OCHCH−NH−]残基ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。指標w、x、yおよびzは、それぞれ1〜8;1〜5;1〜6;および1〜6である。さらにペプチド類、糖類および他のポリエーテル類は、有機スペーサー分子として作用できる。
【0087】
Xとは、任意の有機アンカー分子のことである。
【0088】
有機アンカー分子は、断片(すなわち、化合物および樹脂)を結合させるために適用されうる分子または分子群である。このような有機アンカー分子は、それ自体知られている。通常、有機アンカー分子は、化学結合を形成できる2つ以上の官能基を含んでいる。
【0089】
好ましい有機アンカー分子としては、天然または非タンパク質起源のアミノ酸、あるいは−A−(CH−A、−A−CH−(OCHCH−O−CH−A、−A−CHCH−(OCHCH−A、=CR−(CH−A、−A−CH(NHR)−(CH−A、=CR−CH(NHR)−(CH−A、−A−CH(COR)−(CH−Aまたは=CR−CH(COR)−(CH−A残基が挙げられる。
【0090】
は、NHが好ましいが、CO、CHR、OまたはSでもよく、そしてAはSHであることが好ましいが、N、C≡CH、NH−NH、O−NH、NH、Hal、CRO、またはカルボキシルでもよく、
は、上記に定義されたとおりであり、
は、Z1に関して上記に定義されたとおりであり、
は、ORまたは−NHRであり、
は、H、C1〜4アルキルまたは非置換であるか、あるいはA、OH、OA、CF、OCF、CN、NOまたはHalにより1重、2重、または3重に置換されたフェニルもしくはベンジルであり、
は、Z1に関して上記に定義されたとおりであり、
pは、1〜20であり、
qは、1〜20であり、
yは、1〜6であり、
zは、1〜6であり、
Halは、上記に定義されたとおりであり、
Halは、Cl、BrまたはIである。
【0091】
本発明の好ましい実施形態において、−Q−X基は、−ホモ−Cys−OH、−Gly−Cys−OH、−Aha−Cys−OH、−Gly−Aha−Cys−OHおよびそれらの誘導体から選択される残基の1つを特徴とする。好ましい誘導体は、隣接残基(好ましくはZ3)とのペプチド結合の形成に関与するチオール基ならびに窒素原子を含有する部分であり、前記窒素原子とチオール基の硫黄原子とは、C、NおよびOから独立して選択される2個から14個の原子の直鎖により結合される。このような誘導体は、好ましくは非置換であるか、またはZ1に関して上記に定義されたRから選択される1つから3つの置換基を有する。
【0092】
さらに本発明は、式Iの化合物およびそれらの塩類の調製工程に関する。N−末端修飾またはカルボキシ末端修飾誘導体のような構造成分は、本発明の一部であると意図される。
【0093】
式Iの化合物は、1つ以上のキラリティー中心を有することができ、したがって種々の立体異性体で生じ得る。全てこのような立体異性体は、本発明に包含される。
【0094】
したがって、本発明は特に、前記残基の少なくとも1つが好ましく説明される式Iの化合物に関する。
【0095】
式Iの以下の化合物に対して特に好ましく示される(本明細書に用いられる結合分子Bは、太字で印され、スペーサーQは、イタリックで印される):
【0096】
【表1】

【0097】
【表2】

【0098】
式Iの化合物は、非天然ペプチドまたはペプチド模倣誘導体として理解することができ、例えば、適切なアミノまたはカルボキシ構成単位を適用して、当該技術分野において公知の溶液または固相状態の合成技法を用いて、部分的に、または完全に合成できる(Gysin, B. F.; Merrifield, R. B. J. Am. Chem. Soc. 1972, 94, 3102;またはMerrifield, R. B. Angew. Chemie Int. Ed. 1985, 24 (10), 799-810)。連続合成が考慮されている。他の有機合成法は、Houben-Weyl, Methods of Organic Chemistry, Georg-Thieme-Verlag, Stuttgartに記載された方法など、式Iに従った化合物の合成に使用できる)。
【0099】
所望ならば、出発物質は、反応混合物からそれらを単離することなくインサイチュでも形成できるが、その代わりとして引き続き、式Iの化合物へとさらにそれらを変換できる。
【0100】
好適な不活性溶媒は、例えば、ヘキサン、石油エーテル、ベンゼン、トルエン、またはキシレンなどの炭化水素;トリクロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、テトラクロロメタン、クロロホルムまたはジクロロメタンなどの塩素化炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノールまたはt−ブタノールなどのアルコール類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)またはジオキサンなどのエーテル類;1,2−ジメトキシエタンなどのグリコールエーテル類、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミドまたはジメチルホルムアミド(DMF)などのアセトアミド;アセトニトリルなどのニトリル類、ジメチルスルホキシド(DMSO)などのスルホキシド類;二硫化炭素;ギ酸または酢酸などのカルボン酸類;ニトロメタンまたはニトロベンゼンなどのニトロ化合物;酢酸エチルなどのエステル類、水、または前記溶媒の混合物である。
【0101】
式Iの化合物は、加水分解などの加溶媒分解、または水素化分解により官能性誘導体からの遊離によってもさらに得ることができる。
【0102】
加溶媒分解または水素化分解のために好ましい出発物質は、1つ以上の遊離アミノ基および/またはヒドロキシル基の代わりに対応する保護アミノ基および/またはヒドロキシル基を有するもの、好ましくは、N原子に結合されたH原子の代わりにアミノ保護基を有するもの、例えば、式Iに合致するが、NH基の代わりにNHR’基(R’はアミノ保護基であり、例えば、BOCまたはCBZである)を含有するものである。
【0103】
ヒドロキシ基のH原子の代わりにヒドロキシル保護基を有する出発物質、例えば、式Iに合致するが、ヒドロキシ−フェニル基の代わりにR’’O−フェニル基(R’’が、ヒドロキシル保護基、例えば、t−ブチルまたはベンジルである)を含有するものがさらに好ましい。言い換えれば、芳香族環に共有結合されたヒドロキシル基は、保護基による変換から保護される。
【0104】
カルボキシ基のH原子の代わりにカルボキシル保護基を有する出発物質、例えば、式Iに合致するが、カルボキシ基の代わりにR’’’O−CO基(R’’’が、カルボキシル保護基、例えば、t−ブチルまたはベンジルである)を含有するものがさらに好ましい。言い換えれば、カルボキシル基の酸素原子は、保護基による変換から保護される。
【0105】
1つ以上の−同一または異なる−保護基が分子に存在することも可能である。1つ以上の存在する保護基が互いに異なる場合、このことは、それらが選択的に開裂されうるという利点を提供する。
【0106】
用語の「アミノ保護基」は、一般的な用語で知られており、化学反応に対してアミノ基を保護する(遮断する)のに好適であるが、除去し易い基に関するものである。このような典型的な基は、特に非置換または置換アシル、アリール、アラルコキシメチルまたはアラルキル基である。アミノ保護基は、所望の反応(または反応順序)が生じた後に除去することから、それらのタイプおよびサイズはとりたてて重要ではないが;1〜20個、特に1〜8個の炭素原子を有するものが好ましい。用語の「アシル基」としては、脂肪族、芳香脂肪族、芳香族またはへテロ環式カルボン酸もしくはスルホン酸、特にアルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、特にアラルコキシカルボニル基由来のアシル基を含む。
【0107】
このようなアシル基の例は、アセチル、プロピオニル、ブチリルなどのアルカノイル;フェニルアセチルなどのアラルカノイル;ベンゾイルまたはトルイルなどのアロイル;POAなどのアリールオキシアルカノイル;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル、BOC、2−ヨードエトキシカルボニルなどのアルコキシカルボニル;CBZ(「カルボベンゾキシ」)、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Fmocなどのアラルキルオキシカルボニル;Mtr、PbfまたはPmcなどのアリールスルホニルである。好ましいアミノ保護基は、BOC、Mtr、CBZ、Fmoc、ベンジルおよびアセチル基である。
【0108】
用語の「ヒドロキシル保護基」は、同様に一般的な用語で知られており、化学反応に対してヒドロキシ基を保護するのに好適であるが、所望の化学反応が分子の他の位置で実施された後に除去し易い基に関するものである。このような典型的な基は、上記の非置換または置換アリール、アラルキルまたはアシル基、さらにまたアルキル基である。ヒドロキシル保護基の性質およびサイズは、所望の化学反応または反応配列後にそれらを再び除去することから、とりたてて重要ではないが;1〜20個、特に1〜10個の炭素原子を有する基が好ましい。ヒドロキシル保護基の例は、とりわけ、ベンジル、p−ニトロベンゾイル、t−ブチルおよびアセチルであり、ベンジルおよびt−ブチルが特に好ましい。
【0109】
用語の「カルボキシル保護基」は、同様に一般的な用語で知られており、化学反応に対してカルボキシル基を保護するのに好適であるが、所望の化学反応が分子の他の位置で実施された後に除去し易い基に関するものである。このような典型的な基は、上記の非置換または置換アリール、アラルキルまたはアシル基、さらにまたアルキル基である。ヒドロキシル保護基の性質およびサイズは、所望の化学反応または反応配列後にそれらを再び除去することから、とりたてて重要ではないが;1〜20個、特に1〜10個の炭素原子を有する基が好ましい。カルボキシル保護基の例は、とりわけ、ベンジル、t−ブチルおよびアセチルであり、ベンジルおよびt−ブチルが特に好ましい。
【0110】
式Iの化合物は、例えば、強酸を用いて、有利にはTFAまたは過塩素酸、また塩酸または硫酸などの強無機酸、トリクロロ酢酸などの強有機カルボン酸、またはベンゼンスルホン酸またはp−トルエンスルホン酸などのスルホン酸類を用いて−使用される保護基に依って−それらの官能誘導体から遊離される。さらに不活性溶媒の存在は可能であるが、必ずしも必要ではない。好適な不活性溶媒は、好ましくは有機溶媒であり、例えば、酢酸などのカルボン酸類、テトラヒドロフランまたはジオキサンなどのエーテル類、DMFなどのアミド類、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素、さらにまた、メタノール、エタノールまたはイソプロパノールなどのアルコール類、および水である。上記溶媒の混液は、さらに好適である。TFAは、さらなる溶媒の添加なしで過剰に使用されることが好ましく、過塩素酸は、9:1の比率で酢酸と70%過塩素酸を混合した態様で使用されることが好ましい。開裂に関する反応温度は、有利には約0℃と約50℃との間、好ましくは15℃と30℃(室温)との間である。
【0111】
BOC、OBut、PbfおよびMtr基は、例えば、好ましくはジクロロメタン中TFAを用いるか、または15〜30℃でジオキサン中のおおよそ3Nから5NのHClを用いて開裂でき、Fmoc基は、15〜30℃でDMF中の、ジメチルアミン、ジエチルアミンまたはピペリジンのおおよそ5%から50%の溶液を用いて開裂できる。
【0112】
トリチル基は、アミノ酸のヒスチジン、アスパラギン、グルタミンおよびシステインを保護するために使用される。それらは、前記アミノ酸の全てを開裂されるトリチル基を有し、TFA/10%チオフェノール、TFA/アニソール、TFA/チオアニソール、またはTFA/TIPS/HOを用いて開裂する。
【0113】
Pbf(ペンタメチルベンゾフラニル)基は、Argを保護するために使用される。それは、例えば、ジクロロメタン中TFAを用いて開裂される。
【0114】
水素化分解で除去可能な保護基(例えば、CBZまたはベンジル)は、例えば、触媒存在下(例えば、有利には炭素などの支持体上、パラジウムなどの貴金属触媒)、水素による処理により開裂できる。ここでの好適な溶媒は、上記に示されたもの、例えば、メタノールまたはエタノールなどのアルコール類、DMFなどのアミド類である。水素化分解は、0℃と100℃との間の温度、および1バールと200バールとの間の圧力で、好ましくは10〜30℃および1〜10バールで一般に実施される。CBZ基の水素化分解は、例えば、メタノール中5%から10%Pd/C上で、または10〜30℃でメタノール/DMF中Pd/C上でギ酸アンモニウム(水素の代わりに)を用いて十分に成功する。
【0115】
式Iの塩基は、例えば、エタノールなどの不活性溶媒中当量の塩基と酸との反応、次いで蒸発により、酸を用いる関連酸付加塩に変換できる。したがって、無機酸、例えば、硫酸、硝酸、塩酸または臭化水素酸などのハロゲン化水素酸、オルトリン酸などのリン酸またはスルファミン酸を使用することが可能である。有機酸は、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、芳香族またはヘテロ芳香族一塩基または多塩基カルボン酸、スルホン酸または硫酸、例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、コハク酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、メタン−およびエタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンモノ−および−ジスルホン酸、ならびにラウリル硫酸などが使用できる。塩類、例えば、ピクリン酸塩は、式Iの化合物の単離および/または精製にも使用できる。
【0116】
一方、式Iの酸は、塩基との反応によりアンモニウム塩類の金属の1つに変換できる。ここでの好適な塩類は、特にナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムおよびアンモニウム塩類、さらに置換アンモニウム塩類、例えば、ジメチル−、ジエチル−またはジイソプロピル−塩類、モノエタノール−、ジエタノール−またはジイソプロパノリルアンモニウム塩類、シクロヘキシル−、ジシクロヘキシルアンモニウム塩類、ジベンジルエチレンジアンモニウム塩類、さらに例えば、アルギニンまたはリシンとの塩類である。
【0117】
本発明の一実施形態によれば、Z2とZ3との間の還元ペプチド結合を有する上記のペプチド模倣物を調製するために有利な工程が提供される:
【0118】
このようなペプチドおよびペプチド模倣物をより大量に得るために、一般に固相状態の合成工程を用いることよりも溶液での合成を実施することが好ましいと考えられる。しかしながら、固相状態の合成工程に反して、溶液中の合成は、緩和な酸性条件下の幾つかの反応ステップを含み、これは、トリチル保護基などの酸不安定保護基の偶発的開裂を潜在的にもたらす可能性がある(Zervas, L.; Photaki, I. On Cystein and Cystin Peptides. 1. New S-Protecting Groups for Cystein. Journal of the American Chemical Society 1962, 84, 3887-3897)。
【0119】
この問題は、以下の理由のため本発明の多くの化合物に対して、特に明白である。本発明の多くの化合物は、システインのチオール基がこの化合物を樹脂支持体に結合させるために使用できることから、C−末端にシステイン残基を含有する。しかしながら、溶液状態の合成は、通常にはC−末端からN−末端へと実施されることによって、ラセミ化副反応の問題を抑制する。このことが、本発明の化合物で行われる場合、システイン残基は、多ステップ反応配列の極めて早期の段階で導入される。次にこのことは、システイン残基のトリチル保護基が、比較的多数の反応ステップに耐えなければならないことを意味する。このことは前記トリチル関連の安定性問題を、明らかに悪化させる。
【0120】
本発明のこの実施形態によれば、ラセミ化副反応の危険性を低く維持しながら、前記トリチル関連安定性問題を最少にさせるような合成工程を提供する。すなわち、多ステップ反応配列の終わりにシステイン残基が分子に導入されるように合成方向が反転される場合、トリチル関連安定性問題を効率的に避け得ることが現在判明している。ペプチドの合成に反して、Z2とZ3との間の結合がカルボニル基を含有しない場合、ラセミ化問題は生じないことがさらに判明している。このように、本発明は、残基Z2とZ3との間の結合にカルボニル基が存在しないことを特徴とし、好ましくは、アンカー分子としてシステイン残基を含む、本発明に係るペプチド模倣物を調製する方法を提供し、システイン残基が導入される最後の残基であるように、前記方法は溶液中で実施される。
【0121】
説明目的のために、本発明のこの実施の形態に係るペプチド模倣物P22合成の一般的な説明を下記に示す:
【0122】
(P22の液相合成)
この合成は、文献手法に従ってインドール窒素が、t−ブチルオキシカルボニル(Boc)基で保護される3−インドリル酢酸(35)から出発し(スキーム1):化合物35を、MeOH中SOClで処理することにより、そのメチルエステルに変換し、引き続きインドール窒素は、36を達成するためにアセトニトリル中、t−ブチルジカーボネートとDMAPとを反応させることによってBoc基で保護される。次いでケン化により、所望のインドリル酢酸37を生じる。
【0123】
スキーム1.N−置換グルタモール40の合成
【化1】


試薬および条件:(a)SOCL、MeOH、18時間;(b)BocO、DMAP、アセトニトリル、4時間、(2ステップ);(c)LiOH、THF、MeOH、HO、18時間;(d)ピペリジン、DMF、1時間;(e)HOBt、TBTU、DIPEA、0℃→室温、4時間、(2ステップ)。
【0124】
40への変換は、カップリング試薬としてHOBtおよびTBTUを用いて、37の側鎖保護グルタモール39へのカップリング37によって達成できる。39は、ピペリジンで処理することにより市販のFmoc−グルタモール(OtBu)(37)から容易に入手でき、さらに精製することなく使用できる。39における遊離ヒドロキシル官能基の保護は必要ではなく、この反応は手際よく進行してN−置換グルタモール40を得る。標的化合物P22におけるグルタミン酸残基およびチロシン残基を結合する還元ペプチド結合は、対応するアルデヒド41と市販Tyr(tBu)OMeとの還元的アミノ化により形成される(スキーム2)。
【0125】
スキーム2.ペプチド模倣物P22(化合物33と称される)の合成
【化2】


試薬および条件:(a)デス・マーチン・ペルヨージナン(Dess-Martin periodinane)、DCM、6時間;(b)1)Tyr(tBu)OMeHCl、MgSO、DCM、30分;2)NaB(OAc)H、18時間、(3ステップ);(c)LiOH、THF、ジオキサン、HO、1.5時間;(d)Cys(Trt)OtBuHCl、HOBt、TBTU、2,4,6−コリジン、10℃→室温、18時間、(2ステップ);(e)TIPS、HO、TFA 0→95%、8時間。
【0126】
アルデヒド形成時にラセミ化をもたらし得るので、塩基性反応条件を避けることは重要である。したがって、デス・マーチン・ペルヨージナン酸化の使用および塩基不在下でインサイチュでイミンの短い前形成、次いで迅速な還元剤の添加によりラセミ化を完全に避けることができる。この手法は、3ステップにわたって所望の第二級アミン42を得る。微量の二重のアルキル化副産物だけがHPLC−MSにより観察される。42のメチルエステルは、ケン化により開裂され、生じた遊離酸は、HOBt/TBTUおよび緩和な塩基2,4,6−コリジンの存在下、Cys(Trt)OtBuHClに結合され、43を生じる(2ステップ)。適用されるシステインt−ブチルエステルは、市販で入手できないが、これは容易に合成できるので市販のメチルエステルよりも好ましく、酸性条件下、43のワンステップ脱保護により所望の遊離ペプチド模倣物P22への生成を可能にする。さらに、このことにより、ケン化後の光学純度の大きな喪失を避けることが可能である。
【0127】
最後の脱保護および精製は、P22を経済的に製造するという観点から重要なステップである。これらのステップは、水およびTIPS(1:1)の激しく攪拌された混液中にP22を懸濁し、TFAを8時間に亘って最終濃度が95%となるよう、ゆっくりと加えることによって、副産物を生成しないで実施できる。この手法により、副産物の形成が大いに減少して、エーテル/ペンタン中沈澱後、高収率かつ高純度で最終遊離ペプチド模倣物P22が得られる。
【0128】
本発明の化合物は、下記のとおり使用できる。
【0129】
(診断適用)
血友病Aに関する確定診断は、FVIIIアッセイを実施し、凝固時間を測定することによって評価される。したがって、患者の血漿を、FVIIIを先天的に欠く患者から、または人工的欠失源からのFVIII欠損血漿と混合する。凝固時間を短くする有効性の程度が、正常な血漿の程度と比較される。プールされた新鮮な正常ヒト血漿の希釈液と、血友病の血漿を用い、希釈液に対する凝固時間をプロッティングして、標準曲線が作成される。
【0130】
凝固試験は、術前医療スクリーニングにおいて、治療モニタリングに対して使用される依然として最も頻繁に実施されるアッセイであるが、これらの試験は、全て酵素的ステップに依存する。血漿中の凝固因子は、通常不活性であり、第一のステップとしてタンパク質分解活性化を必要とする。さらに、これらの酵素的ステップは、活性化凝固因子のみならず、活性化補因子、リン脂質およびカルシウムイオンを必要とする。このことは、比較的不安定なタンパク質の極めて複雑な混合物が、実際のFVIIIレベルを過小評価し得るアッセイに関与していることを意味する。この問題を克服するために、患者におけるFVIIIの絶対的レベルをさらに評価することは重要である。これは、不安定な抗FVIII抗体を用いるELISAにより通常実施される。これらの抗体を、本発明のペプチド類およびペプチド模倣物に置き換えられる。この目的のために使用される場合、本発明に係るペプチド類は、ELISA試験に採用される現在用いられる不安定な抗FVIII抗体と比較して、大きな利点を有する。患者の血漿中の総FVIII量を検出するための高感度スクリーニングキットの開発は、それらのより大きな安定性、より高感度およびより低いアッセイコストに見られるペプチド類の利点から利益を得ることを可能にする。
【0131】
(安定化目的のための使用)
FVIIIは、急速な不活化ならびに短い半減期を示す。FVIIIの半減期は、A2サブユニットが、イオン性相互作用を介して、A1およびA3−C1−C2サブユニットと弱く会合している、活性なヘテロ三量体FVIII(A1/A2/A3−C1−C2)からのA2サブユニットの自然発生的な解離速度により規定される。ヘテロ三量体におけるA2の存在は、活性なFVIIIの正常な安定性に必要である。
【0132】
本発明のペプチド類およびペプチド模倣物は、FVIIIに対する高い親和性を示すのみならず、結合時にそれらは、ヘテロ三量体を安定化させるために役立つ。したがって、これらの発明化合物のFVIIIに対する結合は、血友病A療法において有利な様式で使用でき、それによって医療処置時にFVIIIの安定性および半減期を増加させる。補充療法の間のFVIIIのより長い半減期により、FVIII注入頻度を減らすことができるので、患者を楽にするであろう。前記安定化効果は、それらの投与前のFVIII含有医薬品の有効期間を効果的に延長するためにも使用できる。
【0133】
(標識、検出および同定のための使用)
本発明の化合物はまた、着色反応などを受けることができる放射性同位元素または官能基などのマーカー基を有することができる。
【0134】
本発明のこのような化合物とFVIIIとの接触によって、FVIIIにマーカーペプチドまたはペプチド模倣物が結合されるであろう。次にこれを検出することが可能であり、場合によっては、サンプルに存在するFVIIIを定量化することも可能となる。
(療法に使用)
上記の安定化効果に加えて、本発明の化合物は、FVIIIの生物学的活性をさらに増加させ得る。さらに、本発明の化合物は、投与されたFVIIIへの抗体結合を阻止する有利な効果を有し得る。これらの有益な効果は、FVIIIと投与前の本発明の化合物とを接触させることにより、療法に使用できる。本発明の化合物をFVIIIに結合するので、複合体を形成する。純粋なFVIIIの代わりにこの複合体の投与することは、向上した生物学的効果をもたらしうる(あるいは、低い用量のFVIIIを投与してよいことになる)。さらにこの複合体の投与により、抗体の効果を不活性化してしまうことを低減するのに役立ち得る。要約すると、本発明の化合物は、従来のFVIIIと比較してより高い安定性および優れた活性を示すFVIIIベースの医薬品を製造するために使用できる。前記FVIIIベースの医薬品は、前記従来のFVIIIが抗体により不活化される場合に、従来のFVIIIに代えて使用することもできる。さらに、本発明はまた、FVIIIと本発明の化合物との前記複合体の有効量を、それを必要とする対象に投与するステップを含む血友病Aを治療する方法に関する。
(FVIIIベースの医薬品の製造に使用)
本発明の別の実施形態は、未加工のFVIIIおよびFVIII様タンパク質を精製するための本発明の化合物の使用に関する。これは、固体支持体上に本発明の化合物を固定化することを含むことが好ましい。親和性クロマトグラフィは、本発明の化合物で覆われた樹脂を用いて実施されることがさらに好ましい。このような使用は、下記の実施例3から5により詳細に記載されている。
【0135】
(診断用および/または研究用ツールの製造における使用)
本発明はさらに、FVIIIおよびFVIII様タンパク質のドメイン、エピトープおよび断片を精製するための本発明の化合物の使用に関する。このように精製されたドメインなどは、FVIIIと同等の凝固活性を示し得ないが、それにもかかわらず、それらは診断用キットにおいて、研究用ツールとして有用であり得る。
【実施例】
【0136】
クロマトグラフィ法は、以下のパラメータに従って使用された:
RT=以下のシステムにおいてHPLCに対する保持時間(分):
カラム:YMC ODC A RP5C18、250×4.6mm
溶出A:水中0.1%TFA
溶出B:アセトニトリル中0.1%TFA
流速:1mL/分
勾配:10−>50%B/30分。
【0137】
質量分析(MS):ESI(電気スプレー電離)(M+H)
【0138】
SDS−ポリアクリアミドゲル電気泳動(PAGE):FVIII SDS−PAGEを、10% Tris-Glycine Bio-Rad ReadyGelを用いて実施した。サンプルは、2−メルカプトエタノールを含有する添加液で希釈し、ゲルに適用した。電気泳動は、氷上に置かれたBio-Rad Mini-Protean 3装置内で定電流(25mA/ゲル)で実施された。電気泳動後、ゲルを、標準的な銀染色プロトコルを用いて染色した。
【0139】
免疫ブロット法:タンパク質を、Bio-Rad Mini-Protean 3装置内で移動ブロックによりニトロセルロース膜に転写した。転写は、インストールされた凍結クーリングブロックにより70V定電圧(約250mA)で4時間実施された。膜は、pH8.0のTBS中、5%脱脂ドライミルクで一晩ブロックされた。次に膜を、0.1%Tween−20を含有するpH=7.4のTBS中、5%脱脂粉ミルク溶液で1μg/mLに希釈された一次抗体と共に1時間インキュベートした。
【0140】
膜は、0.1%Tween−20を含有するTBS(pH=7.4)中で3回洗浄し、pH=7.4のTBS、0.1%Tween−20中、5%脱脂粉ミルクで1:3000に希釈されたペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウス抗体(Mab C5およびMab413)と共に1時間インキュベートした。TBSによる3回の洗浄後、0.1%Tween−20膜は、ECL化学発光基質(Pharmacia)中で現像され、化学発光をBioMax-XLフィルム(Kodak)を用いて検出した。
【0141】
リンク−アミド樹脂は、例えば、ペプチド、およびC−末端に−CONH2基を有するペプチド模倣誘導体の合成を可能にする4−(2’、4’−ジメトキシフェニル−Fmoc−アミノメチル)−フェノキシ樹脂を表し、TCP樹脂は、トリチルクロリド−ポリスチレン樹脂を示す。
【0142】
化合物P1からP20までは、TCP樹脂上で、化合物P2に関してはリンク−アミド樹脂上でそれぞれFmoc方式を用いて固相ペプチド合成を介して合成された(Fields, G. B.; Nobie, R. L. Int. J. Pept. Protein Res. 1990, 35, 161を参照)。
【0143】
N−末端アセチル化(化合物P2)は、最終開裂および脱保護ステップ前に、対応するN−末端脱保護化合物を、NMP/AcO/DIPEA(91:7:2)混合物で処理することにより、固相上で達成された(下記参照)。
【0144】
化合物P21からP25は、Fmoc方式を用いてTCP樹脂上で連続的に完全合成された。「還元ペプチド結合」は、アミノ酸に対応するアルデヒドを用いてそれ自体知られている固相上で還元的アルキル化を介して形成された(「アミノアルデヒド」、Krchnak, V.; Weichsel, A. S.; Cabel, D.; Flegelova, Z.; Lebl, M. Mol. Diversity 1995, 1, 149を参照)。この反応は、室温でトリメトキシメタンのような水捕捉溶媒中で実施された。中間生成物として形成された対応するイミン化合物の還元は、ジクロロメタンなどの非極性溶媒中室温で実施された。還元剤として、NaBH(OAc)のような錯体水素化ホウ素が使用された。
【0145】
固相からのペプチドまたはペプチド模倣誘導体の開裂およびそれら側鎖保護基の開裂は、90%TFA,5%HOおよび5%TIPSを用いて同時に行われた。
【0146】
全ての化合物は、分取HPLCにより精製された。
【0147】
(実施例1)
FVIIIおよびpd−FVIIIの結合に対する親和性リガンドとして化合物の調製
ペプチドP1からP25を、Jungbauerらにより記載されたトヨパール AF-Epoxy-650M樹脂(Tosoh Biosep)上に固定化した。固定化に関して、2.5mgの各ペプチドを0.25mLの固定化用緩衝液(0.2M重炭酸ナトリウム、pH10.3)中に溶解し、0.036gの乾燥樹脂粉末(0.125mLの膨潤樹脂に相当)を加え、次いで混合物を緩やかに回転させながら48時間インキュベーションを行った。48時間のインキュベーションの際に、樹脂を固定化用緩衝液で1回、1M NaClで1回、次いで結合用緩衝液で3回洗浄し、ペプチドで覆われた樹脂および対照樹脂への125I−標識pd−FVIIIの結合を試験した。報告された各々の実験において各々のペプチドのカップリング濃度は、表1に記載したとおりであった。樹脂の対照0.25mL部分を、ペプチド不在下の平行実験で同様に処理し、引き続き125I−pd−FVIII結合実験において対照(バックグラウンドと称される)として用いた。125I−pd−FVIII結合/バックグラウンド比は、上記のとおり調製された非コーティング対照樹脂に結合されたもので割った固定化ペプチドに結合された125I−pd−FVIIIの量として算出された。ペプチドに結合した125I−pd−FVIIIはシグナル値を表し、ペプチドに覆われていない樹脂に結合した125I−pd−FVIIIはバックグラウンド(ノイズ)値を表すことから、この比は、ミクロビーズアッセイに関するシグナル/ノイズ比を表す。
【0148】
血漿由来(pd−)のヒト因子VIII(FVIII)は、抗FVIIIモノクローナル抗体カラム上の免疫親和性クロマトグラフィにより濃縮物から精製し、次いでResource Q HR5/5カラムを用いるイオン交換クロマトグラフィによりpd−FVIIIを濃縮した。vWfからFVIIIを分離するために、濃縮物を、アフィニティー精製前に0.35M NaCl、0.04M CaCl中でインキュベートした。
【0149】
pd−FVIII製剤に存在しうる微量のvWfは、pd−FVIII製剤を、樹脂1mL当り1.4mgの濃度で固定化された抗vWf高親和性モノクローナル抗体を有するカラムを通過させることにより除去された。
【0150】
10μgの精製pd−FVIIIを、ラクトペルオキシダーゼビーズおよび0.5mCiのNa125Iを用いてヨウ素化した。
【0151】
固定化ペプチドを有する樹脂を、結合用緩衝液(0.01M Hepes、0.1M NaCl、5mM CaCl、0.01%Tween−80)で洗浄した。引き続き、樹脂を結合用緩衝液中で1:7スラリとして希釈し、エッペンドルフチューブに分配した(1チューブ当り40μl)。125I−pd−FVIII(10μl中100000cpm)をこのチューブに加え、この混合物の容量を、4%BSAを含有する50μlの結合用緩衝液で100μlに調節して最終的に2%濃度のBSAを得た。回転器上、室温で2時間のインキュベーション後、サンプルを結合用緩衝液で4回洗浄した。各洗浄後、チューブをエッペンドルフミクロ遠心分離機において5000rpmで1分間遠心分離し、上澄液を捨てて樹脂を洗浄用緩衝液で再度懸濁し、次いで同じ条件下で遠心分離する。4回洗浄後、上澄液なしのペレットを有するチューブは、放射性に関して計測された。ペプチドなしの樹脂は、チューブおよび樹脂自体に結合する非特異的pd−FVIIIの原因を説明するために同様に処理し、この対照チューブにおける放射性は、バックグラウンド値として考慮された。125I−pd−FVIIIは、放射性標識時に損傷を受けた幾らかのフラクションを含有することから、結合は、抗FVIII Mab8860−コーティング樹脂と共に別個の実験で測定された最大達成可能な結合パーセントとして算出された。
【0152】
全ての測定は、繰り返し実施された。各実験は、2つの独立して調製された固定ペプチドサンプルを用いて実施された。各図に示されたデータは、4つの測定値の平均値である:ペプチドは、異なる日に独立して固定化されたビーズを用いて実施された2つのアッセイにおける重複測定。上記の四通りの測定値の標準偏差値(2つの独立した実験における重複測定値)は、典型的にペプチドに結合する125I−pd−FVIIIの10%未満の測定値であった。
【0153】
【表3】

【0154】
【表4】

【0155】
【表5】

【0156】
(比較例1)
FVIIIおよびpd−FVIII結合のための比較リガンドとしてスクランブル配列を有する比較化合物の調製
実施例1に記載された手法を、任意のスクランブルアミノ酸配列(ECYYEHWS)を有するペプチドを用いて反復した。引き続き、このスクランブルペプチドを担持する樹脂に結合するFVIIIならびに非コーティング樹脂に結合するFVIIIを、実施例1に関して上記と同じ様式で調べた。結果は下表2に示す。
【0157】
【表6】

【0158】
実施例1に報告された結果と比較例1の結果との比較は、本発明の化合物が、スクランブルペプチドと比較してFVIIIに対して有意により高い親和性を提示することを示している。
【0159】
(実施例2)
P15で覆われた樹脂およびP22で覆われた樹脂に対する組換えFVIIIの結合
Kogenate(登録商標)およびReFacto(登録商標)は、それぞれBayerならびにWyeth-Ayerst PharmaciaおよびUpjohnから市販されているFVIIIの組換え体である。
【0160】
Kogenate(登録商標)を、免疫親和性クロマトグラフィに次いで、直線勾配のNaClによりResource Q HR5/5カラムを用いるイオン交換クロマトグラフィにより、全量4000IU(5本のバイアル)から精製した。精製Kogenate(登録商標)は、130μg/mlの濃度、740IU/mLの活性、および5700IU/μgの比活性を有した。ReFacto(登録商標)を、免疫親和性クロマトグラフィに次いで、Resource Q HR5/5カラムを用いるイオン交換クロマトグラフィにより、全量5000IU(5本のバイアル)から精製した。精製ReFacto(登録商標)は、89μg/mlの濃度、864IU/mLの活性、および9707IU/μgの比活性を有した。
【0161】
Kogenate(登録商標)およびReFacto(登録商標)を、pd−FVIIIに関して実施例1に記載されたのと同じ様式でヨウ素化した。タンパク質結合は、上記実施例1に記載されたのと同じ手法を用いて測定した。実験結果は、下表3に要約している。
【0162】
【表7】

【0163】
この実験結果により、本発明の化合物はまた、組換えFVIIIなどのFVIII様タンパク質に関して高親和性を示したことを立証している。
【0164】
(実施例3)
P22で覆われた樹脂を用いる活性pd−FVIIIの精製
ペプチド模倣誘導体P22を、実施例1に記載されたトヨパール樹脂上に固定化した。25mgのペプチドおよび360mgの樹脂を用いた。生じた樹脂(約1ml)を、ガラスカラム(Pharmacia-Biotech)に詰めた。精製手法は、Waters 650E Advanced Protein Purifiction Systemを用いて実施した。緩衝液Aは、0.01M Hepes、0.1M NaCl、5mM CaCl、0.01%Tween−80であり、緩衝液Bは、0.01M Hepes、1M NaCl、5mM CaCl、0.01%Tween−80であった(pH6.8)。溶出は、280nm(OD280)での吸光度により流動液UV検出器(Waters 490 E)によりモニターされた。次に溶出フラクションは、OD280を測定することによってタンパク質含量を分析し、FVIII活性は、MLA Electra−800自動凝固タイマーを用いるワンステージAPTTアッセイにおいて測定した。溶出フラクションからのサンプルを、10%PAGEに次いで、銀染色およびFVIIIに対するモノクローナル抗体を用いるウェスタンブロット法により解析した。
【0165】
上記のとおり免疫親和性およびイオン交換クロマトグラフィにより予め精製したFVIII(0.5mg)を、0.01M Hepes、5mM CaCl、0.01%Tween−80により、0.1M NaClの最終塩濃度に希釈した。この混合物を、P22カラムに適用し、次いでOD280がバックグラウンドに戻るまで緩衝液Aで洗浄した。結合タンパク質を、20%緩衝液A−80%緩衝液Bにより溶出した。溶出プロフィールは図1に示す。
【0166】
FVIIIの精製は、FVIIIが入っている細胞馴化FBS含有SF9培地より実施した。上記のとおり免疫親和性およびイオン交換クロマトグラフィにより予め精製したFVIII(0.5mg)を、0.01M Hepes、5mM CaCl、0.01%Tween−80により、0.1M NaClの最終塩濃度で希釈された細胞馴化FBS含有SF9培地と混合した。この混合物をカラムに適用し、次いでOD280がバックグラウンドに戻るまで緩衝液Aで洗浄した。15%緩衝液A−85%緩衝液Bによる洗浄は、多少の結合不純タンパク質を溶出させるために実施した。この結合タンパク質は、40%緩衝液A−60%緩衝液Bにより溶出された。溶出プロフィールは図2に示す。
【0167】
【表8】

【0168】
双方の精製において、十分に満足すべきカラム保持および好結果の溶出が達成された(図3および図4)。FBS含有培地からFVIIIの精製時に、供給源液中のFVIIIに対して大過剰で存在した不純タンパク質を首尾よく除去した(図3および図4、表4)。
【0169】
ペプチド模倣精製FVIIIサンプルは、市販の純粋FVIII製剤(図3のレーン2、図4のレーン2)を陽性対照としてとった、以下のバンド:B−ドメインの異なるタンパク質分解のため不均一な230〜90kDaの重鎖バンド、および約80kDaの軽鎖二重バンド(異なるグリコシル化のため)から視覚的に識別され、それらは、しばしば、約55kDaの分子量を有する分解できない単一のタンパク質分解バンド、約45kDaの分子量を有する別のタンパク質分解バンドである。いずれの調製物も、45kDa重鎖由来のタンパク質分解バンドの何らかのより深いタンパク質分解の検出可能な量を含有しなかった。SDS−PAGEは、予め精製されたFVIIIからの精製物、およびFVIIIが入っているFBS含有DMEM馴化培地からの精製物からの溶出フラクションは、基本的に同じ数のタンパク質バンドを有し、バンド間の物質分布は、陽性対照FVIIIと本質的に異ならない。これらの結果により、細胞馴化または純粋バックグラウンドのいずれからのペプチドで精製されたFVIII調製物は、市販の免疫アフィニティー精製FVIII対照と同じSDS−PAGEおよびウェスタンブロットパターンを示したことを裏付けている。
【0170】
(実施例4)
P1で覆われた樹脂によるFVIIIの精製
ペプチドP1を、実施例1に記載された樹脂に結合させた。25mgのペプチドおよび360mgの樹脂を用いた。生じた樹脂(約1ml)を、ガラスカラム(Pharmacia-Biotech)に詰めた。FVIII含有サンプルは、実施例3に関して記載されたとおり精製し、2つの実験の間の唯一の相違は、本実験において緩衝液Aによる前溶出ステップを含まないことである。
【0171】
精製の詳細は、下表5に要約している:
【0172】
【表9】

【0173】
双方の精製において、十分に満足すべきカラム保持および好結果の溶出が達成された(図5および図6)。FBS含有培地からFVIIIの精製時に、供給源液中のFVIIIに対して大過剰で存在した不純タンパク質を首尾よく除去した(図6、表5)。
【図面の簡単な説明】
【0174】
図面の説明
【図1】実施例3に記載されるとおり、予め精製されたFVIIIの精製に関する精製プロフィールを示す図である。
【図2】実施例3に記載されるとおり、FVIIIが入っている細胞馴化FBS含有培地からのFVIIIに関する精製プロフィールを示す図である。
【図3】実施例3に記載されるように、純粋FVIIIの吸着および溶出からのフラクション(レーン2〜6)およびFVIIIが入っている細胞馴化FBS含有培地からの精製によるフラクション(レーン7〜12)のSDS−PAGEを示す写真である。レーン1:分子量標品;レーン2:純粋FVIII;レーン3:純粋FVIIIのカラムへの供給源溶液;レーン4:流液;レーン5および6:溶出フラクション;レーン7:培地;レーン8:カラムへのFVIIIを有する培地;レーン9:流液;レーン10および11:0.2M NaClによる前洗浄液からの溶出フラクション;1M NaClによる溶出フラクション。
【図4】実施例3に記載されるように、純粋FVIIIの吸着および溶出からのフラクション(レーン2〜6)およびFVIIIが入っている細胞馴化FBS含有培地からの精製によるフラクション(レーン8〜12)のウェスタンブロットを示す写真である。レーン1:純粋FVIII;レーン2:純粋FVIIIのカラムへの供給源溶液;レーン3:流液;レーン4および5:溶出フラクション;レーン6:カラムへのFVIIIを有する培地;レーン7:流液;レーン8および9:0.2M NaClによる前洗浄液からの溶出フラクション;レーン10:1M NaClによる溶出フラクション。
【図5(a)】実施例4に記載されるように、予め精製されたFVIIIの精製に関する精製プロフィールを示す図である。
【図5(b)】実施例4に記載されるように、予め精製されたFVIIIからの精製によるフラクション(レーン1〜4)のSDS−PAGEを示す写真である。レーン1:純粋FVIII;レーン2:流液;レーン3:洗浄液フラクション;レーン4:1M NaClによる溶出フラクション。
【図5(c)】実施例4に記載されるように、予め精製されたFVIIIからの精製によるフラクションのウェスタンブロット解析を示す写真である。レーン5:純粋FVIII;レーン6:流液;レーン7:1M NaClによる溶出フラクション。
【図6(a)】実施例4に記載されるように、FVIIIが入っているFBS含有DMEM馴化培地からの精製に関する精製プロフィールを示す図である。
【図6(b)】実施例4に記載されるように、FVIIIが入っているFBS含有DMEM馴化培地からの精製によるフラクション(レーン1〜4)のSDS−PAGEを示す写真である。レーン1:粗製培地;レーン2:カラムへの供給源液;レーン3:流液;レーン4:1M NaClによる溶出フラクション。
【図6(c)】実施例4に記載されるように、FVIIIが入っているFBS含有DMEM馴化培地からの精製によるフラクションのウェスタンブロット解析を示す写真である。レーン5:純粋FVIII;レーン6:流液;レーン7:1M NaClによる溶出フラクション。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
B−Q−X (I)
の化合物であって、
式中BはZ1−Z2−Z3を表し、
式中Z1は、炭素原子の1個以上がN、OおよびSから選択されるヘテロ原子により置換されていてもよい6個から25個の炭素原子を持つ単環式、二環式または三環式側鎖を有する天然または非タンパク質起源のアミノ酸残基あるいはその誘導体であるか、または
Z1は、式
Ar−(CH−(CHR−(CH−A (II)
の残基であり、
式中
は、NR、CO、OCO、CHR、OまたはSから選択される基を表し、
は、C1〜4アルキル、フェニル、ベンジル、およびN(Rから選択される基を表し、前記アルキル、フェニルまたはベンジル基が、AおよびN(Rから独立して選択される1つ以上の置換基を有していてもよく、2つ以上のAおよび/または2つ以上のRが、互いに同じであっても異なっていてもよく、
Arは、6個から14個の炭素原子を持つ単環式、二環式または三環式芳香族環系、飽和または部分的に不飽和C5〜14の単環式または二環式アルキル基を有する芳香族基であり、それらの各々は、非置換であるか、又はA、Ar、O−Ar、C(O)−Ar、CH−Ar、OH、OA、CF、OCF、CN、NO、およびHalから独立して選択される1つから3つの置換基を有していてもよく;またはArはHetであってもよく;
Halは、F、Cl、BrまたはIから選択され、
Arは、6個から14個の炭素原子を持つ単環式、二環式または三環式芳香族環系を有する芳香族基、好ましくはフェニル基またはナフチル基、より好ましくはフェニル基であり、Arはそれ自体、非置換であっても、A、OH、OA、CF、OCF、CN、NO、およびHalから独立して選択される1つから3つの置換基を有してもよく;
Hetは、1個から3個のN原子および/または1個のS原子またはO原子を含み、5員環から12員環を有する任意に置換された飽和、部分的または完全不飽和単環式または二環式へテロ環式残基を表し、
Aは、COOR、N(Rまたは非置換であっても、COORまたはN(Rで置換されていてもよい1〜6個のC原子を有する線状、分枝状または環式アルキル基を表し、
mおよびoは、0、1、2、3および4から独立して選択され、
nは、0または1であり、
は、H、C1〜4アルキル、フェニルまたはベンジル、あるいはペプトイド−アミノ酸の場合、アミノ酸側鎖であり;
Z2は、その側鎖に芳香族基を有さない天然または非天然アミノ酸を表し;
Z3は、Z1に関して上記に定義された基を表し、前記化合物内のZ1およびZ3の異なる位置が、それぞれ結合または遊離原子価の位置でさらなる水素原子の非存在または存在によって占められるという条件で、Z1およびZ3は、互いに同じであっても異なっていてもよく;
Qは、存在しないか、または1個から100個の主鎖原子を有する有機スペーサー分子であり;
Xは、存在しないか、またはSH、N、NH−NH、O−NH、NH、Cl、Br、I、C≡CH、CRO、またはカルボキシルから選択される末端基を有する有機アンカー分子であり、
式中、Rは、非置換であってもA、OH、OA、CF、OCF、CN、NOまたはHalにより独立して1重、2重、または3重に置換されていてもよいH、C1〜4アルキルまたはフェニルもしくはベンジル基から選択される、化合物ならびにその塩類。
【請求項2】
式I
B−Q−X (I)
の化合物であって、
FVIIIおよび/またはFVIII様タンパク質に対する親和性を提供するジペプチド、トリペプチドまたはペプチド模倣物であるB、
欠損しているか、または有機スペーサー分子であるQおよび
欠損しているか、または有機アンカー分子であるX、を含んでなる化合物
ならびにその塩類。
【請求項3】
Bが、Z1−Z2−Z3である請求項2に記載の化合物であって、
天然または非タンパク質起源のアミノ酸残基またはその誘導体もしくはAr−(CH−(CHR−(CH−AであるZ1、
欠損しているか、天然あるいは非タンパク質起源のアミノ酸残基またはその誘導体であるZ2、
天然または非タンパク質起源のアミノ酸残基またはその誘導体もしくはAr−(CH−(CHR−(CH−AであるZ3、
NR、CO、OCO、CHR、OまたはSであるA
1〜4アルキル、フェニルまたはベンジルであるR
非置換であるか、または非置換または置換ビフェニルが創製されるような様式で、A、OH、OA、CF、OCF、CN、NOあるいはHalにより1重、2重、または3重で置換できる置換フェニルであり、非置換であるか、またはA、OH、OA、CF、OCF、CN、NOあるいはHalにより1重、2重、または3重に置換されるフェニルであるか、またはHetであるAr、
F、Cl、BrまたはIであるHal、
1個から3個のN原子および/または1個のS原子またはO原子を含み、5員環から12員環を有する飽和、部分的または完全不飽和単環式または二環式へテロ環式残基であり、前記へテロ環式残基が、CN、Hal、OH、NH、COOH、OA、CF、A、NO、ArまたはOCFにより1重または2重で置換できるHet、
COOH、NHまたは非置換もしくはCOOHまたはNHで置換された1〜6個のC原子を有するアルキルであるA、
0、1、2、3または4であるm、o、
0または1であるn、を含んでなり、
これによって、
Z1およびZ3またはZ1およびZ2ならびにZ2およびZ3は、酸−アミド結合−CO−NR−または−NR−CO−を介して、優先的にはいわゆる還元ペプチド結合の−CH−NR−または−NR−CH−を介して、ならびに−CO−CHR−、−CHR−CO−、−CR=CH−または−CH=CR−結合を介して結合でき、
は、H、C1〜4アルキル、フェニルまたはベンジル、あるいはペプトイド−アミノ酸の場合、アミノ酸側鎖である、化合物。
【請求項4】
Qが、以下の群
[−NH−(CH−CO]
[−NH−(CHCH−O−)CH−CO]
[CO−(CH−CO−]、
[−NH−(CH−NH−]、
[CO−CH−(OCHCH−O−CH−CO−]、
[NH−CHCH−(OCHCH−NH−]、
アミノ酸類、ペプチド類、糖類またはポリエーテル類ならびにそれらの組み合わせの1つから選択される有機スペーサー分子であり、
式中
wは、それぞれ独立して1から8までであり、
xは、1〜5であり、
yは、1〜6であり、
zは、1〜6である、請求項2又は3に記載の化合物。
【請求項5】
Xが、以下の群
天然または非タンパク質起源のアミノ酸、
−A−(CH−A
−A−CH−(OCHCH−O−CH−A
−A−CHCH−(OCHCH−A
=CR−(CH−A
−A−CH(NHR)−(CH−A
=CR−CH(NHR)−(CH−A
−A−CH(COR)−(CH−A、または
=CR−CH(COR)−(CH−A
の1つから選択される有機アンカー分子であり、
式中
は、NR、CO、CHR、OまたはSであり、
は、SH、N、NH−NH、O−NH、NH、Hal、C≡CH、CRO、またはカルボキシルであり、
は、請求項2に定義されたとおりであり、
は、H、R、−COR、−COORであり、
は、ORまたは−NHRであり、
は、H、C1〜4アルキルまたは非置換であるか、あるいはA、OH、OA、CF、OCF、CN、NOまたはHalにより1重、2重、または3重で置換されたフェニルもしくはベンジルであり、
は、H、C1〜4アルキルまたは非置換であるか、あるいはA、OH、OA、CF、OCF、CN、NOまたはHalにより1重、2重、または3重で置換されたフェニルもしくはベンジルであり、
pは、1〜20であり、
qは、1〜20であり、
yは、1〜6であり、
zは、1〜6であり、
Halは、請求項3に定義されたとおりであり、
Halは、Cl、BrまたはIである、
請求項2、3、4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
Z1が、Ar−(CH−(CHR−(CH−CO−であり、
それにより
Arは
【化1】


であり、m、nおよびoは請求項3に定義されたとおり
であることをさらに特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
mが1、2または3であり、nが0であり、oが0であることをさらに特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
Z1が、1−Nal、2−Nal、BpaまたはR−Trpであり、
それにより
は、H、R、−COR、−COORであり、式中
は、C1〜4アルキルまたは非置換であるか、あるいはA、OH、OA、CF、OCF、CN、NOまたはHalにより1重、2重、または3重に置換されたフェニルもしくはベンジルであり、
AおよびHalは、請求項3に定義されたとおりであることをさらに特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
がHまたは−CORをであり、
がメチルであることをさらに特徴とする請求項2乃至8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
Z2が、グルタミン酸またはアスパラギン酸側鎖を有するアミノ酸残基であることをさらに特徴とする請求項2乃至9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
Z3が、1−ナフチルアラニン、フェニルアラニン、チロシンまたはO−メチル化チロシン側鎖を有するアミノ酸残基であることをさらに特徴とする請求項2乃至10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
Qが、[−NH−(CH−CO]であり、xおよびwが請求項4に定義されたとおりであることをさらに特徴とする請求項2乃至11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
xが1または5であり、wが0または1であることをさらに特徴とする請求項2乃至12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
Xが、−A−CH(COR)−(CH−Aを示し、
式中
はNHであり、
はOHまたはNHであり、
はSHであり、
qが請求項5に定義されたとおりであることをさらに特徴とする請求項2乃至13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
qが、1または2であることをさらに特徴とする請求項2乃至14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
Xが、−A−CH(NHR)−(CH−Aであり、
式中
はCOであり、
はHであり、
はSHであり、
qは請求項5に定義されたとおりであることをさらに特徴とする請求項2乃至15のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項17】
qが、1を示すことをさらに特徴とする請求項2乃至16のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項18】
前記アミノ酸残基が、α−アミノ炭酸残基、β−アミノ炭酸残基、アザ−アミノ炭酸残基およびペプトイド−アミノ炭酸残基から独立して選択できることをさらに特徴とする請求項1乃至17のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項19】
前記アミノ酸残基が、α−アミノ酸残基から選択されることをさらに特徴とする請求項1乃至18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項20】
残基Z1およびZ3またはZ1およびZ2またはZ2およびZ3が、それぞれ酸−アミド結合−CO−NH−を介して互いに結合していることをさらに特徴とする請求項1乃至19のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項21】
1つ以上のペプチド結合が、請求項2に記載されたとおり独立して修飾できることをさらに特徴とする請求項1乃至20のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項22】
残基Z1およびZ3またはZ1およびZ2またはZ2およびZ3が、−CH−NH−結合を介して互いに結合していることをさらに特徴とする請求項1乃至21のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項23】
ペプチドおよび/またはペプチド模倣物の配列の方向が、反転している(「レトロペプチド」)ことをさらに特徴とする請求項1乃至22のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項24】
疾患治療のための請求項1乃至23のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項25】
請求項1乃至23のいずれか1項に記載の化合物が結合している表面を有する支持体マトリックス。
【請求項26】
無機または有機、特にポリマー材料を含んでなる請求項25に記載の支持体マトリックス。
【請求項27】
請求項25又は26に記載の支持体マトリックスにおいて、前記化合物または請求項1乃至23のいずれか1項に記載の化合物が、支持体マトリックスの表面、例えば樹脂に化学的に結合している支持体マトリックス。
【請求項28】
請求項25又は26に記載の支持体マトリックスにおいて、前記化合物または請求項1乃至23のいずれか一項に記載の化合物が、支持体マトリックスの表面、例えば樹脂に有機スペーサーを介して結合している支持体マトリックス。
【請求項29】
請求項25又は26に記載の支持体マトリックスにおいて、前記化合物または請求項1乃至23のいずれか1項に記載の化合物が、支持体マトリックスの表面、例えば樹脂に有機アンカー分子を介して結合している支持体マトリックス。
【請求項30】
請求項25又は26に記載の支持体マトリックスにおいて、前記化合物または請求項1乃至23のいずれか1項に記載の化合物が、支持体マトリックスの表面、例えば樹脂に有機スペーサーおよび有機アンカー分子を介して結合している支持体マトリックス。
【請求項31】
請求項1乃至23のいずれか1項に記載の化合物、請求項25乃至30のいずれか1項に記載の支持体マトリックスおよび必要ならば、補助的手段ならびに任意に別の手段と共に化合物に関する標識を備える診断用デバイスまたはキット。
【請求項32】
FVIIIまたはFVIII関連タンパク質の標識、検出、同定、単離および精製するための、請求項1乃至23のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項33】
FVIIIまたはFVIII関連タンパク質を含んでなるサンプルと、請求項1乃至22のいずれか1項に記載の固定化化合物を含んでなるマトリックスとを、FVIIIまたはFVIII関連タンパク質と前記化合物との間の結合に好適な条件下で接触させることを含むFVIIIまたはFVIII関連タンパク質を検出、同定、単離および精製する方法。
【請求項34】
請求項1乃至23のいずれか1項に記載の化合物が、支持体上に固定化され、前記支持体が、ポリマー材料である請求項33に記載の方法。
【請求項35】
請求項1乃至23のいずれか1項に記載の化合物が、P1、P2、P3、P4、P5、P6、P7、P8、P9、P10、P11、P12、P13、P14、P15,P16、P17、P18、P19、P20、P21、P22、P23、P24およびP25からなる群から選択される請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
前記ポリマー材料が、樹脂である請求項33又は34に記載の方法。
【請求項37】
前記サンプルが、細胞培養上澄液である請求項33乃至35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記サンプルが、体液である請求項33乃至35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記体液が、血液を含む請求項38に記載の方法。
【請求項40】
(1)請求項1乃至23のいずれか1項に記載の化合物、(2)前記化合物がポリマー材料上に固定化されているポリマー材料、を含むマトリックスを備えるビットまたはウェル。
【請求項41】
前記化合物が、標識をさらに含んでなる請求項40に記載のビットまたはウェル。
【請求項42】
前記化合物が、前記ポリマー材料に対する化学的結合を介してポリマー材料上に固定化される請求項33又は34に記載の方法。
【請求項43】
前記ペプチドまたはペプチド模倣物が、前記ポリマー材料に対して化学的に結合している有機アンカー分子を介してポリマー材料に固定化される請求項33又は34に記載の方法。
【請求項44】
前記有機アンカー分子が、
−A1−(CH2)p−A2、
−A1−CH2−(OCH2CH2)y−O−CH2−A2、
−A1−CH2CH2−(OCH2CH2)y−A2、
=CR2−(CH2)p−A2、
−A1−CH(NHR3)−(CH2)q−A2、
=CR2−CH(NHR3)−(CH2)q−A2、
−A1−CH(COR4)−(CH2)q−A2、
=CR2−CH(COR4)−(CH2)q−A2であり、
式中A1、A2、R2、R3、R4、p、qおよびyは請求項5に定義されるとおりである請求項33又は34に記載の方法。
【請求項45】
前記ペプチドまたはペプチド模倣物が、有機スペーサー分子をさらに含んでなる請求項33、34、44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記有機スペーサー分子が、
以下の群
[−NH−(CH2)x−CO]w、
[−NH−(CH2CH2−O−)yCH2−CO]w、
[CO−(CH2)z−CO−]、
[−NH−(CH2)z−NH−]、
[CO−CH2−(OCH2CH2)y−O−CH2−CO−]、
[NH−CH2CH2−(OCH2CH2)y−NH−]、
またはアミノ酸、ペプチド、糖またはポリエーテルならびにそれらの組み合わせの1つから選択され、
式中w、x、yおよびzは請求項4に定義されるとおりである請求項45に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−518345(P2009−518345A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543737(P2008−543737)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際出願番号】PCT/EP2006/011786
【国際公開番号】WO2007/065691
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(508172328)テフニーシェ ウニヴェルジテート ミュンヘン (1)
【Fターム(参考)】