説明

団粒土の生成方法および団粒土の利用方法

【課題】 種々の好適な効果が得られる団粒土の生成方法を提供する。
【解決手段】 団粒土の主成分である土を準備する工程と、固化剤および微粒子状にした炭素粉に水を添加した結合材を準備する工程と、土と結合材とを混合して攪拌する工程とを含む団粒土の生成方法が提供される。好ましくは、結合材中における固化剤の比率は0.1重量%〜0.7重量%であり、炭素粉の比率は0.01重量%〜0.1重量%である。また、好ましくは、結合材中における水の添加量は、生成される団粒土の含水率が30%〜50%になるように選定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、団粒土の生成方法および団粒土の利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土の構造として、単粒土と団粒土が知られている。前者の単粒土では、土粒子間の隙間が少なく、水、空気、養分、植物の根等が通りにくいのに対して、後者の団粒土では、土粒子が団粒を作り、十分な隙間が形成されているとともに、団粒自体が堅固に構成されているため、壊れにくいという特質を有している。団粒土は、自然界において存在し、植物の生育に適した土構造として知られているが、団粒土を人工的に生成するのは容易ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、このような状況に鑑みて開発されたものであって、団粒土を人工的に生成する方法、及び、このようにして生成された団粒土の利用方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願請求項1に記載の団粒土の生成方法は、団粒土の主成分である土を準備する工程と、固化剤および微粒子状にした炭素粉に水を添加した結合材を準備する工程と、前記土と前記結合材とを混合して攪拌する工程とを含むことを特徴とするものである。
【0005】
本願請求項2に記載の団粒土の生成方法は、前記請求項1の方法において、前記土に所定量の有機廃棄物を混合する工程をさらに含むことを特徴とするものである。
【0006】
本願請求項3に記載の団粒土の生成方法は、前記請求項1又は2の方法において、前記結合材中における前記固化剤の比率が0.1重量%〜0.7重量%であり、前記炭素粉の比率が0.01重量%〜0.1重量%であることを特徴とするものである。
【0007】
本願請求項4に記載の団粒土の生成方法は、前記請求項1から請求項3までのいずれか1項の方法において、前記結合材中における水の添加量が、生成される団粒土の含水率が30%〜50%になるように選定されることを特徴とするものである。
【0008】
本願請求項5に記載の団粒土の利用方法は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された方法によって生成された団粒土を地面の表層に付着させ又は吹き付けることによって、地面の表層に前記団粒土の層を形成することを特徴とするものである。
【0009】
本願請求項6に記載の団粒土の利用方法は、固化剤および微粒子状にした炭素粉に水を添加した結合材を準備する工程と、塩分を含有した土に前記結合材を透過させることにより、前記土から塩分を除去する工程とを含むことを特徴とするものである。
【0010】
本願請求項7に記載の団粒土の利用方法は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された方法において前記土が放射能汚染土であることを特徴とするものである。
【0011】
本願請求項8に記載の団粒土の利用方法は、固化剤および微粒子状にした炭素粉に水を添加した結合材を準備する工程と、リンを含有した下水汚泥に前記結合材を混合し攪拌することにより下水汚泥中からリンを除去する工程とを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の団粒土の生成方法によれば、きわめて容易に団粒土を人工的に生成することができる。本発明の方法によって生成された団粒土は、詳細には後述するように、保肥性、保水性、通気性、通水性、及び堅牢性に優れ、根張りも良好であり、各種の用途に使用することができる。
【0013】
本発明の利用方法のうち一般植生に利用する方法によれば、保肥性、保水性、通気性、通水性に優れた土壌が提供されるので、植物の生育環境に適した環境が得られる。団粒土を塩害対策に利用する方法については、大きな除塩効果が得られるのみならず、保肥性、保水性、通気性、通水性に優れた環境が得られるという土壌改良効果も併せて得ることができる。団粒土を放射能汚染土の処理に利用する方法については、比較的簡単な方法で放射能汚染土の処理を実施することができる。団粒土をリンの除去に利用する方法については、乾燥させた下水汚泥を焼却し、焼却灰に薬品を添加してリンを抽出する従来の方法と比較して、リンの抽出を容易に実施できるため、初期費用・運転費用とも廉価に抑えることができるとともに、焼却工程が不要になるため、二酸化炭素削減にも貢献するという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】団粒土を示した模式図である。
【図2】団粒土を斜面に吹き付ける状態を示した図である。
【図3】団粒土を脱塩に利用する原理を説明するための模式図である。
【図4】団粒土を放射能汚染土の処理に利用する原理を説明するための模式図である。
【図5】放射能汚染土の処理効果を検証するために実施された試験の結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の好ましい実施の形態に係る団粒土の生成方法について説明する。まず最初に、団粒土の主成分である土を準備する。土のみでもよいが、土に有機廃棄物を混合してもよい。有機廃棄物としては、例えば、食物残滓、下水汚泥、湖沼等のヘドロ、家畜等の排泄物があげられる。有機廃棄物を混合することよって、資源の有効活用を図ることができるとともに、有機廃棄物により発生する悪臭を取り除くという二次的効果を得ることができる。なお、有機廃棄物を混合する場合の割合は、土が30重量%〜50重量%に対して有機廃棄物が70重量%〜50重量%であるのが好ましい。
【0016】
次いで、固化剤および微粒子状にした炭素粉(以下「炭素微粒子粉」という)を準備し、これらに所定量の水を添加し攪拌することによって、結合材を形成する。なお、固化剤としては、通常の結着剤を使用してもよい。結着剤は、例えば、加温(25°C〜40°C)した植物を酵素化させることによって形成される。固化剤を添加するのは、生成しようとする団粒土を安定的に固化させるとともに、水に溶解しずらくするためである。
【0017】
炭素微粒子粉は、例えば、強制的に圧縮した植物体を、空気を抜きながら、400°C〜1200°Cで燃焼させることによって炭化させ、それを粉砕して微粒子状にすることによって形成される。炭素微粒子粉を添加するのは、炭素微粒子粉が帯びている陰電子イオンに有機廃棄物の陽電子イオンを引きつけさせ、団粒土の安定的な固化を促進させるためである。
【0018】
なお、結合材に水を混合するのは、後述する結合材(従って、固化剤)と土を混合する際に、土と固化剤とを反応させ、イオン化結合させるためである。
【0019】
結合材中における各成分の好ましい比率は、固化剤が0.1重量%〜0.7重量%、炭素微粒子粉が0.01重量%〜0.1重量%、残りが水である。
【0020】
次いで、土と結合材を所定割合で混合して攪拌することによって、団粒土が生成される。土と結合材の割合は、生成される団粒土の含水率が30%〜50%になるように選定するのが好ましい。
【0021】
図1は、上述のような方法で生成された団粒土を示した模式図である。団粒土は、成分的には一般の土壌と比較して炭素の含有量が多い。また、団粒土は、土粒子間に大小多数の空隙が形成されており、空隙には、空気および水が満たされている。
【0022】
団粒土によって形成される団粒土構造は、肥料を保持する土壌環境を提供するため、保肥性が高く、吸水した水分を土粒子間の隙間に保持するため、保水性が高い。また、土粒子間に適当な隙間が形成されるため、通気性および通水性が良好であるとともに、土粒子同士が堅固に噛み合っているため、壊れにくく堅牢性が高い。
【0023】
(団粒土を一般植生に利用する方法)
図2は、団粒土を一般植生に利用する場合の一例を示している。図2では、トラックの荷台に団粒土生成装置が搭載されている。団粒土生成装置は大別して、3つの部分、すなわち土投入部、結合材生成部、団粒土生成部からなる。土投入部は、団粒土の主成分である土が投入される部分である。結合材生成部は、固化剤、炭素微粒子粉および水を混合して結合材を生成する部分である。団粒土生成部は、土と結合材を混合・攪拌し、団粒土を生成する部分である。図2では、斜面に団粒土を吹き付けている状態が示されており、団粒土生成部から延びたホースの先端のノズルから団粒土を斜面に噴射することにより、斜面の表層に所定厚の団粒土の層が形成されることとなる。或いは、団粒土を地面の表層に付着させることによって団粒土の層を形成してもよい。
【0024】
(団粒土を塩害対策に利用する方法)
団粒土の生成過程を塩害対策に利用することができる。図3は、その原理を説明するための図である。図3において、最上部には、塩害を受けた土が示されている。図示されるように、土粒子は陽電子イオンを帯びており、土粒子間の隙間に塩分(電気的に中性)が表面張力により付着している。塩害を受けた土に、上述の団粒土の生成方法において使用された結合材を透過させる。結合材中には炭素微粒子粉が混入しているが、この炭素微粒子粉は陰電子イオンを帯びている。したがって、塩害を受けた土に結合材を透過させると、炭素微粒子粉が土粒子間の隙間に入り込み、土粒子の陽電子イオンと結合するので、電気的に中性である塩分は、土粒子から容易に分離する。この過程で、土粒子は、水はけの良好な団粒土構造を形成することとなり、結合材中の水分により、土粒子から分離した塩分が洗い流される。
【0025】
(団粒土を放射能汚染土の処理に利用する方法)
団粒土の生成過程を放射能汚染土の処理に利用することができる。すなわち、上述の団粒土の生成方法において用いられた土の代わりに放射能汚染土を用い、放射能汚染土と結合材を混合し攪拌することにより、放射能汚染土の処理を行うことができる。図4は、放射能汚染土を用いて生成された団粒土において、土粒子Aから放出されたβ線粒子が土粒子Bに到達する過程で減衰する状態を示した模式図である。減衰するのは、土粒子の他、土粒子間に存在する炭素粉、空気、水等を透過することによってβ線粒子が徐々に遮断されることによるものと推測される。また、このような減衰は、X線やγ線についても同様に見られる。
【0026】
図5は、放射能汚染土の処理効果を検証するために実施された試験の結果を示した表である。この試験では、放射能汚染土として東京電力福島第1原子力発電所から約67kmの箇所で採取した土を用いて団粒土を生成し、時間の経過とともに放射線量を測定した。その結果、図5に示されるように、29日目には、放射線量の減衰が86.8%に達したことが分かった。
【0027】
(団粒土をリンの除去に利用する方法)
団粒土の生成過程を下水汚泥中のリンの除去に利用することができる。下水汚泥中の土粒子は陽電子イオンを帯びており、土粒子間の隙間にリンが付着している。このような下水汚泥に、上述の団粒土の生成方法において使用された結合材を透過させる。結合材中には炭素微粒子粉が混入しているが、この炭素微粒子粉は陰電子イオンを帯びている。したがって、下水汚泥に結合材を混合し攪拌すると、イオン化現象により、下水汚泥中のリン以外の重金属(陽電子分)が炭素微粒子粉に引きつけられることを利用することにより、下水汚泥中からリンを除去する。結合材の混合は、混合した後の下水汚泥の含水率が40%〜60%になるまで、攪拌しつつ実施するのが好ましい。なお、下水汚泥の代わりに、
リンを含有した土からリンを除去しようとする場合も、本発明を適用することができる。
【0028】
本発明は、以上の発明の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0029】
たとえば、図2に示される団粒土生成装置は例示的なものにすぎず、他の構成の装置を用いて団粒土を生成してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
団粒土の生成方法であって、
団粒土の主成分である土を準備する工程と、
固化剤および微粒子状にした炭素粉に水を添加した結合材を準備する工程と、
前記土と前記結合材とを混合して攪拌する工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記土に所定量の有機廃棄物を混合する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載された方法。
【請求項3】
前記結合材中における前記固化剤の比率が0.1重量%〜0.7重量%であり、前記炭素粉の比率が0.01重量%〜0.1重量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載された方法。
【請求項4】
前記結合材中における水の添加量が、生成される団粒土の含水率が30%〜50%になるように選定されることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された方法。
【請求項5】
団粒土の利用方法であって、
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された方法によって生成された団粒土を地面の表層に付着させ又は吹き付けることによって、地面の表層に前記団粒土の層を形成することを特徴とする方法。
【請求項6】
団粒土の利用方法であって、
固化剤および微粒子状にした炭素粉に水を添加した結合材を準備する工程と、
塩分を含有した土に前記結合材を透過させることにより、前記土から塩分を除去する工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
団粒土の利用方法であって、
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された方法において前記土が放射能汚染土であることを特徴とする方法。
【請求項8】
団粒土の利用方法であって、
固化剤および微粒子状にした炭素粉に水を添加した結合材を準備する工程と、
リンを含有した下水汚泥に前記結合材を混合し攪拌することにより、下水汚泥中からリンを除去する工程とを含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−34409(P2013−34409A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171466(P2011−171466)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(597133293)
【出願人】(599025031)
【出願人】(505114352)
【出願人】(511192034)
【Fターム(参考)】