説明

固体インクリザーバの浸漬式高表面積ヒータ

【課題】固体インクのインクの溶融に要する時間を短縮する。
【解決手段】相変化インクを貯蔵するための容器は、主として断熱材料で構成され、内部に一定量の空間を有するハウジング204と、ハウジング内に位置合わせされる加熱エレメント212とを含む。加熱エレメントは空間量の高さ及び幅によって画定される面積より大きい表面積を有し、印刷装置と流体で連通する出口224に近接する加熱エレメントの少なくとも一部が、出口に近接する固体インクを空間量の残りの部分における固体インクより固体インクを急速に溶融して印刷動作を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下に記述する装置及び方法は相変化インクを加熱するためのデバイスに関し、より具体的には、凝固したインクを溶融するためにインクリザーバ内で浸漬ヒータを用いることに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタは、インクジェットエジェクタからの液体インクの液滴を射出して、中間転写表面等の画像受容表面上、または用紙等の媒体基材上へ画像を形成する。フルカラーインクジェットプリンタは、幾つかの異なる色の印刷用インクを貯蔵するために複数のインクリザーバを用いる。ある周知のフルカラープリンタは、4つのインクリザーバを有する。各リザーバは、フルカラー画像を生成するために異なるカラーインク、即ちシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックインクを貯蔵する。
【0003】
相変化インクジェットプリンタは、室温で、多くの場合蝋様粘稠度で固相に留まるインクを利用する。インクがプリンタに装填されると、固体インクは溶融デバイスへ移送され、溶融デバイスは固体インクを溶融して液体インクを生成する。液体インクは、印刷ヘッドの内部または外部の何れかにあってもよいリザーバに貯蔵される。液体インクは、必要に応じて印刷ヘッドのインクジェットエジェクタへ供給される。エネルギーの節約またはプリンタの保全のためにプリンタから電力が取り除かれれば、溶融されているインクは冷却され始め、最終的に固体形式に戻る場合がある。この場合、固体インクは、印刷ヘッドによってインクを再度射出できる前に溶融される必要がある。結果的に、インクの溶融に要する時間は、印刷オペレーションに対する固体インクプリンタの可用性に影響を与える。従って、溶融インクを加熱しかつ貯蔵するプリンタ内のデバイスを改良することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
これまでに、固体インクジェットプリンタ内にインクを貯蔵するための容積測定容器が開発されている。この容器は、ハウジング内部に一定量の空間を有する断熱材料から成るハウジングであって、この空間量は高さ、幅及び深さを有するハウジングと、ハウジングのこの空間量内に位置合わせされる、空間量の幅に渡ってインクを均一に溶融するための加熱エレメントとを含む。加熱エレメントは、空間量の高さ及び幅によって画定される領域より大きい表面積を有するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】間接インクジェット印刷システムの略図である。
【図2】加熱エレメントを含むインクリザーバを示す略図である。
【図3】印刷ヘッドリザーバ内部にある加熱エレメントを描いた印刷ヘッドインクリザーバの正面図である。
【図4】図3の線302に沿った印刷ヘッドインクリザーバの側面断面図である。
【図5A】固体インクリザーバ内に置かれ得るPTC加熱エレメントを示す平面図である。
【図5B】図5Aの線524に沿った加熱エレメントの断面図である。
【図6A】固体インクリザーバ内に置かれ得る穴の開いた加熱エレメントを示す平面図である。
【図6B】固体インクリザーバ内に置かれ得る別の穴の開いたエレメントを示す平面図である。
【図7】固体インクリザーバ内に置かれ得る折り畳み式ストリップ加熱エレメントを示す切欠き図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下の説明及び添付の図面は、本明細書に記述されるシステム及び方法の環境及び上記システム及び方法の詳細の一般的理解をもたらす。諸図を通じて、類似の参照数字は類似のエレメントを指して用いられる。本明細書における「プリンタ」という用語は、任意の目的で印刷出力機能を実行する、デジタルコピー機、製本機械、ファックス機、多機能機械、他等の任意の装置を包含する。本明細書は、固体インクリザーバ内の固体インクの溶融を制御するシステムに焦点を当てているが、リザーバ内のインクを溶融するための装置は、固相を有する相変化流体を用いる任意のデバイスによって用いられてもよい。さらに、固体インクは、本明細書ではインク、インクスティックまたはスティックと呼ばれる、または称されることもある。「パラメトリックな容積」という用語は、間隙及び空胴を含み得る加熱エレメント等の物体の形の周囲の包絡線によって画定される容積を指す。従って、物体のパラメトリックな容積は、物体内部のオープンスペース、並びに物体を形成する材料の容積も含む。本文書で用いられるパラメトリックな容積は、加熱器が嵌め込まれるぴったりとした多面ボックスの内部容積を意味する。同様に、「パラメトリックな厚さ」という用語は、開口または間隙を含み得る加熱エレメント等の物体の厚さを指す。例えば、波形の物体は、1つの波の頂部から別の波の底部まで広がるパラメトリックな厚さを有する。
【0007】
図1は、溶融相変化インクを用いる間接またはオフセット印刷用に構成される相変化インク画像デバイスの実施形態を示す略側面図である。図1のデバイス10は、インク処理システム12と、印刷システム26と、媒体供給及び処理システム48と、制御システム68とを含む。インク処理システム12は、固体インクを受け入れ、かつ液体インクを生成するためにこれを溶融デバイスへ送り出す。印刷システム26は溶融インクを受け入れ、かつシステム68の制御下で液体インクを画像受容表面へ射出する。媒体供給及び処理システム48は、デバイス10内の1つまたは複数の供給装置から媒体を抽出し、媒体の送出しを転写定着ニップに同期させて画像受容表面から媒体へインク画像を転写し、次に印刷された媒体を出力エリアへ送り出す。
【0008】
さらに詳しく言えば、インクローダとも称されるインク処理システム12は、一般にインクスティックと呼ばれるインクブロック14等の固体形式の相変化インクを受け入れるように構成される。インクローダ12は、インクスティック14が挿入されるフィードチャネル18を含む。図1には単一のフィードチャネル18が示されているが、インクローダ12は、デバイス10において使用されるインクスティック14の各カラーまたは色気毎に別々のフィードチャネルを含む。フィードチャネル18は、インクスティック14をチャネル18の一方の端における溶融アッセンブリ20へ向けて案内し、溶融アッセンブリ20においてスティックは、固体インクを溶融して液体インクを形成するために相変化インク溶融温度まで加熱される。溶融温度は、相変化インクの配合に依存して適切な任意のものが用いられてもよい。ある実施形態において、相変化インク溶融温度は約100゜Cから140゜Cまでである。溶融インクは、一定量の溶融インクをデバイス10の印刷システム26へ送出するための溶融形式で保持するように構成されるリザーバ24に受け入れられる。代替実施形態では、単一のリザーバ24が印刷ヘッド28等の複数の印刷ヘッドへインクを供給してもよい。単純化を期して、1つの中間リザーバ24が図示されているが、画像デバイス10は、デバイス内で用いられる例えばシアン、マゼンタ、イエロー及びブラック(CMYK)等のインクカラー毎に溶融インクを1つのリザーバで保持するために複数のリザーバを含んでもよい。後に詳述するように、加熱エレメントはリザーバ24内に位置合わせされる。
【0009】
印刷システム26は少なくとも1つの印刷ヘッド28を含み、印刷ヘッド28は、溶融インクの液滴を中間面30上へ射出するように配列されたインクジェットを有する印刷ヘッドリザーバ27を含む。印刷ヘッドリザーバ27は、リザーバ24から導管25を介して溶融インクを受け入れる。印刷ヘッドリザーバ27は、後にさらに詳しく示すように、加熱エレメントを含む。図1には、1つの印刷ヘッドが示されているが、任意の適切な数の印刷ヘッド28が用いられてもよい。印刷ヘッドは、中間面30へインクを射出するために制御システム68によって生成されるファイアリング信号に従って動作される。
【0010】
中間面30は、ドラム保全ユニット(DMU)としても知られる離型剤塗布アッセンブリ38によって回転部材34へ塗布される離型剤の層または膜を備える。図1において回転部材34はドラムとして示されているが、代替実施形態において、回転部材34は、可動または回転式のベルト、バンドまたは他の類似タイプの構造体を含んでもよい。ニップローラ40は、ニップ44を形成するように回転部材34上の中間面30に当てて装填され、記録媒体52のシートは、ニップ44を介して印刷ヘッド28のインクジェットによって中間面30上へ溶着されるインク液滴と見当を合わせたタイミングで供給される。ニップ44内には圧力が(及び場合によって熱も)発生され、これは、中間面30を形成する離型剤と共に、実質的にインクが回転部材34へ粘着しないように防止しながら表面30からのインク液滴の記録媒体52への転写を促進する。
【0011】
デバイス10の媒体供給及び処理システム48は、ニップ44を介して媒体を案内するデバイス10内に画定された媒体経路50に沿って記録媒体を移送するように構成され、ニップ44においてインクは中間面30から記録媒体52へ転写される。媒体供給及び処理システム48は、デバイス10用に異なるタイプ及びサイズの記録媒体を貯蔵しかつ供給するための供給トレイ58等の少なくとも1つの媒体ソース58を含む。媒体供給及び処理システムは、媒体経路50に沿って媒体を移送するための、駆動され得るローラ60またはアイドルローラ並びにバフル、偏向板及びこれらに類似するもの等の適切な機構を含む。
【0012】
媒体経路50は、媒体がニップ44へ中間面30からのインクを受け入れることに適する温度で到達するように、記録媒体の温度を制御しかつ調整するための1つまたは複数の媒体調整デバイスを含んでもよい。例えば、図1の実施形態では、媒体経路50に沿って、記録媒体をニップ44への到着前に予め決められた初期温度に至らせるための予備加熱アッセンブリ64が設けられている。予備加熱アッセンブリ64は、媒体を、ある実際的な実施形態では約30゜Cから約70゜Cまでの範囲内である目標の予備加熱温度にするために、放射熱、伝導熱または対流熱もしくはこれらの熱形態の任意の組合せに依存してしてもよい。代替実施形態では、媒体経路に沿ってインクが媒体上へ溶着される前、間及び後に他の温度調整デバイスを用いて媒体(またはインク)温度が制御される場合もある。
【0013】
制御システム68は、画像デバイス10の様々なサブシステム、コンポーネント及び機能の動作及び制御を助ける。制御システム68は、スキャナシステムまたはワークステーション接続等の1つまたは複数の画像ソース72へ機能的に接続されてこれらのソースからの画像データを受信しかつ管理し、かつプリンタのコンポーネント及びサブシステムへ送出される制御信号を発生する。制御信号の中には、ファイアリング信号等の画像データを基礎とするものがあり、これらのファイアリング信号は先に述べたように印刷ヘッドを動作させる。他の制御信号は、プリンタのコンポーネント及びサブシステムに、中間面30を準備し、媒体を転写定着ニップへ送出しかつ画像デバイス10によって出力される媒体上へインク画像を転写するための様々な手順及び動作を実行させる。
【0014】
制御システム68は、コントローラ70と、電子記憶装置またはメモリ74と、ユーザインタフェース(UI)78とを含む。コントローラ70は、中央処理装置(CPU)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)デバイスまたはマイクロコントローラ等の処理デバイスを備える。他のタスクの中でも、この処理デバイスは画像ソース72によって供給される画像を処理する。コントローラ70を構成する1つまたは複数の処理デバイスは、メモリ74に記憶されるプログラムされた命令で構成される。コントローラ70は、これらの命令を実行してプリンタのコンポーネント及びサブシステムを動作させる。メモリまたは電子記憶装置は、任意の適切なタイプが使用されてもよい。例えば、メモリ74は、読取り専用メモリ(ROM)等の不揮発性メモリであっても、EEPROMまたはフラッシュメモリ等のプログラム可能な不揮発性メモリであってもよい。
【0015】
ユーザインタフェース(UI)78は、オペレータと制御システム68との相互作用を有効化する、画像デバイス10上へ位置決めされる適切な入力/出力デバイスを備える。例えば、UI78はキーパッド及びディスプレイ(不図示)を含んでもよい。コントローラ70は、デバイスのユーザまたはオペレータによってユーザインタフェース78へ入力される選択または他の情報を示す信号を受信するために、ユーザインタフェース78へ機能的に接続される。コントローラ70は、選択可能なオプション、マシン状態、消耗品状態及びこれらに類似するものを含む情報をユーザまたはオペレータへ表示するためにユーザインタフェース78へ機能的に結合される。またコントローラ70は、リモートロケーションから画像データ及びユーザインタラクションデータを受信するために、コンピュータネットワーク等の通信リンク84へも結合されてもよい。
【0016】
コントローラ70は、インク処理システム12、印刷システム26、媒体処理システム48、離型剤塗布アッセンブリ38、媒体経路50またはコントローラ70へ機能的に結合される画像デバイス10の他のデバイス及び機構等の画像デバイス10の様々なシステム及びコンポーネントへ出力される制御信号を発生する。コントローラ70は、メモリ74に記憶されるプログラムされた命令及びデータに従って制御信号を発生する。制御信号は、例えばシステムコンポーネントの動作速度、電力レベル、タイミング、作動及び他のパラメータを制御して、画像デバイス10を、本明細書では集合的に動作モードとして表される動作の様々な状態、モードまたはレベルで動作させる。これらの動作モードには、例えば起動または暖機運転モード、運転停止モード、様々な印刷モード、保全モード及び節電モードが含まれる。
【0017】
図2は、絶縁されたハウジング204と、インク210の入ったリザーバ容積208と、加熱エレメント212と、出口224とを含むインクリザーバ200を描いている。導管248は、リザーバ容積208の出口224を印刷ヘッド250へ接続する。導線206は、加熱エレメント212を電源244へ接続する。コントローラ236は、電源244へ機能的に接続される。インクリザーバ200は溶融アッセンブリ228から受け入れる単色の液体インクを保持し、かつカラー画像デバイスでは複数のインクリザーバが用いられてもよい。
【0018】
ハウジング204は、主として固相及び溶融相の双方の様々な相変化インクとの適合性がある断熱材料から成る容積測定容器である。ハウジング204における使用には、熱可塑性物質を含む様々なプラスチック及びエラストマ系材料が適する。さらに、ハウジング204は、断熱材料及び熱伝導材料双方の1つまたは複数の層を備えてもよい。ハウジング204の材料は、リザーバ容積208内に少なくとも適度の保温性を与えるように構成される。リザーバ容積208は、内のり高さ252と、幅256(管を介する広がり)と、深さ260とを有する。リザーバ内のインク液量の上限はリザーバの閉じ込め量の上限より遙かに低くてもよい。このような構成は、製品がある程度の角度で傾斜してもインクを保持できるようにする。リザーバは、頂部の通気によって部分的に、または完全に開放されてもよい。
【0019】
例示的な加熱エレメント212は、リザーバ容積208の幅256を略横断して広がる、ベーン状の加熱部材220等の複数の加熱部材を含む。加熱エレメント212の形状は、インク210へ暴露される、リザーバ容積208の高さ252及び幅256によって画定される表面積より大きい表面積を与える。加熱エレメント212は、リザーバ容積208において、導管近くでのインクの溶融を促進させるために導管248に近接する位置を占有し、かつ加熱エレメントはリザーバ容積208の底部からリザーバ容積208の頂部へと延びる。加熱エレメント212のパラメトリックな容積は、液量上部レベル268までのリザーバ容積208の全容積の50%より大きい。液量上部レベルは、動作中にリザーバ容積208の一部を満たされていない状態に留め得るように、リザーバ200内のインク量を制限する。加熱エレメント212は、破線264が示す液体下限レベルより下に延びる。本明細書において、「液体下限レベル」という用語は、動作中に液体リザーバ内に保持されるインク等の流体の最低レベルを指す。リザーバ内の流体レベルがこの液体下限レベルに達するにつれて、プリンタは、リザーバ容積208内の流体レベルが液体下限レベルを超えていることを保証するために動作を中断しても、他の措置を講じてもよい。
【0020】
ある実施形態において、加熱エレメント212は正温度係数(PTC)材料から形成され、かつ修正形状のPTCサーミスタであってもよい。PTC材料は、材料の温度上昇に反応して電流の流れに対して増大される抵抗を示す。セラミック状物質であってもよいPTC材料は加熱器へと製造され、かつ適宜、または必要に応じて、加熱されるインクまたは他の材料との化学的適合性のためにコーティングされてもよい。導線206は、加熱エレメント212からハウジング204の頂部を介して延びる。図2の実施形態において、リザーバが取外し可能な、または移動可能な頂部またはカバー(不図示)を備えて構成されていれば、加熱エレメント212はインクリザーバ200から取り外されてもよい。また導線206は、リザーバ容積208内のインク210より上のレベルでハウジング204の側壁の上側部分を介して延びてもよい。導線206は、加熱エレメント212の取外し及び交換を容易にするために、グロメットまたはねじ切りされたキャップを介して延びてもよい。
【0021】
図5A及び図5Bは、加熱エレメント212を分離して描いている。加熱エレメント212は、複数の傾斜したベーン状部材220と、エンドプレート508A及び508Bとを含む。加熱エレメント212は、リザーバ容積208の幅に類似する幅520を有する。加熱エレメント212におけるベーン220間の間隙216は、加熱エレメント212の表面上のインク接触を促進するために、インクが加熱エレメント212内へ、かつ加熱エレメント212を介して流れることを可能にする。図5Bに示されているように、間隙216は各ベーン状部材220間で延びる。エンドプレート508A及び508Bはベーン部材220を所定位置に保持し、かつ導線206等の導線のための接点を提供する。起動されると、加熱エレメント212は幅520に渡って均一に加熱する。従って、加熱エレメント212を含むリザーバ内のインクは、加熱エレメントの幅に沿って均一に溶融する。
【0022】
図6A及び図6Bから分かるように、加熱エレメントの代替設計としてPTC材料の穴開けされたブロックを採用してもよい。穴開けは、インクがベーン部材220内の間隙216を通過するインクと同様の方法でブロックを通過できるように、ブロック全体に広がる。本明細書における穴開けという用語は、貫通穴以外にも、凝固する材料が呈し得る例えば成形可能な形態である中断表面を有する任意の形状にまで広がる。図6Aでは、複数の貫通穴604がブロック600に穴を開けている。図6Bでは、ブロック650は、ブロックを介して複数のチャネル654を形成する蛇行形状を有する。穴開けされたブロック600及び650は共に、液体インクがこれらのブロックを介して流れることを可能にする構造を有する。ブロック内の穴開けの周囲または内部で凝固するインクは、ブロックが加熱されるとすぐに溶融する。
【0023】
再度図2を参照すると、動作において、溶融アッセンブリ228は固体である相変化インクを溶融温度にまで加熱し、溶融インク222がインク210を保持するリザーバ容積208へ流れ込めるようにする。コントローラ236は、電源244を起動して加熱エレメント212へ電流を流させる。加熱器212は、インクを液体状態に固定し、次いでプリンタの様々な動作モードの間にこの液体状態を保持する。インクは、出口224及び導管248を介して印刷ヘッド250へ流れてもよい。
【0024】
別の動作モードでは、インク210はリザーバ容積208を固相で占有する。コントローラ236は、技術上既知である様々なエネルギー節約プログラム及び技術に従って、インク210を冷却して凝固させるべく電源244を停止してもよい。コントローラ236は、典型的には電子制御システムであり、かつ先に述べたコントローラ70によって具現されてもよい。またインク210は、印刷デバイスが、インクを凝固点まで、または凝固点より下まで冷却するに足る時間に渡って電源から外されると凝固する場合もある。電源244が加熱エレメント212を起動すると、加熱エレメント212に近接する領域におけるインク210がまず溶融し始める。溶融インクは、加熱エレメント212の個々のエレメント間に設けられる間隙216等の間隙を介して流れ、出口224から導管248へ入る。出口224の近接位置であるという加熱エレメント212のロケーションによって、溶融インクは、加熱エレメント212の加熱開始後に迅速に導管248を介して流れることができる。インクはリザーバ容積208の幅256に沿って均一に溶融する一方で、ハウジング204の導管248とは反対側の壁の近くに位置決めされるインクは加熱エレメント212から遠位に位置合わせされ、よって加熱エレメント212の方に近いインクよりもゆっくりと溶融し得る。従って、溶融されたインクは、リザーバ容積内のインク210の他の部分が固体または上昇した動作温度より低い温度のままであっても、導管248を介して印刷ヘッド250へ流れることができる。
【0025】
上述の両動作モードの間、図2において部分214として示されている加熱エレメント212の一部は、リザーバ容積208におけるインク210のレベルより上で延びてもよい。インク210は、加熱エレメントのインク210内に浸漬される部分から熱を奪い、かつ露出された部分214を囲む空気はインク210より低い速度で熱を奪う。加熱エレメント212の製造に使用されるPTC材料は、露出された部分214が、インクリザーバ200内のインク、加熱エレメント212または他のコンポーネントを損傷させ得る温度に達することを防止する。露出部分214の温度が上昇するにつれて、露出部分における電流に対する抵抗も温度の上昇に対応して大きくなる。抵抗の増大は電流の流れを減らし、温度と電流とは、インク210に浸漬されながら、または空気に露出された場合に加熱エレメント212の動作を可能にする温度で均衡する。また加熱エレメント212の浸漬された部分も、インク210を動作温度範囲を超える温度まで加熱することなく溶融相に保持する平衡温度に達する。PTC材料から製造される加熱器は、温度センサを使用する閉ループシステムを必要としないが、より低い温度で発生するスタンバイまたは他の低エネルギー状態等の幾つかのプリンタ状態においては、完全に凝固していないインクの温度を監視することによってエネルギーを節約できる場合がある。
【0026】
図3及び図4は、ハウジング304と、内部リザーバ容積308と、導線306と、加熱エレメント312と、インク吸込口346と、温度センサ324とを有する印刷ヘッドリザーバ300を描いている。加熱エレメント312は、例えば産業上周知であるように、加熱フィルムまたはトレースを封入するシリコーンまたはポリアミド膜ラミネート等の任意の適切な構造であってもよい非PTC抵抗加熱器である。スイッチ340は、電源344を導線306へ機能的に接続する。コントローラ336は、温度センサ324及びスイッチ340へ機能的に接続される。図4は、図3の線302に沿って描いた印刷ヘッドリザーバ300である。図4はさらに、インクリザーバ402と、バルブ408と、ソレノイド412と、複数のインクジェットエジェクタ416と、導管448とを描いている。印刷ヘッドリザーバ300のインク310は、インクリザーバ402から供給される単一のカラーを貯蔵する。
【0027】
ハウジング304は、主として固相及び溶融相の双方の様々な相変化インクとの適合性がある断熱材料から成る。ハウジング304は、高さ352と、幅356と、深さ360とを有する、図ではリザーバ容積308と分かる内部容積を有する容積測定容器である。リザーバ容積308は、インクリザーバ402から導管448及び吸込口346を介して受け入れるインクを保持する。ハウジング304における使用には、リザーバの動作温度との適合性がある熱硬化プラスチック、熱可塑性物質及びエラストマ系材料を含む様々なプラスチックが適し、伝統的に使用されるアルミニウム製ハウジングの少なくとも20倍の断熱をもたらす材料等、これらの材料のうちのどれも、少なくとも適度な度合いの断熱を提供する。さらに、ハウジング304は、断熱材料製の1つまたは複数の内部ボイドまたは層を備えてもよい。図4に示されているように、バルブ408はハウジング304の頂部を介して延び、コントローラ336によって発生される信号に応答して動作するソレノイド412に反応して選択的に開く。バルブは、既存の印刷システムにおいて既知であるように、リザーバ容積308と外気との間の気圧の等化を有効化するように開く。バルブ408は、場合により、バルブ408の閉止時にバルブ408を介する放熱を最小限に抑えるための断熱ストッパを含む。或いは、開放されたポートまたは通気道によって通気が行われてもよい。
【0028】
図3に示されているように、加熱エレメント312はハウジング304の底部に近接しかつインクジェットエジェクタ416に近接して位置合わせされる。加熱エレメント312は、複数の波形にされたベンド316及び320を含む。加熱エレメント312の折り畳み形状はパラメトリックな厚さを増大し、かつハウジング304の幅356に沿って占められる加熱エレメント312の全体長さを減らす。折り畳み式の選択は、加熱エレメント312の長さを、折り畳まれない構造に比べて少なくとも4分の1だけ減らす。加熱エレメント312は波形にされた形状を有するが、他の様々な折り畳み形状が用いられてもよい。波形にされたベンドのリザーバに対する方向性は、図3に示されているように水平であるが、垂直またはある程度傾斜させることも容易である。図面は、如何なる場合も、加熱器の帯がどのように形成されるか、または使用に際して方向づけられるかを限定するためのものではない。加熱エレメント312はほぼリザーバ容積308の幅356を略横断して延び、加熱エレメント312がリザーバ容積308の幅に渡って熱を均一に与えることを有効化する。図3及び図4に示されているように、加熱エレメント312のパラメトリックな容積は、リザーバ容積308に保持される(流体レベル上限における)最大流体容積の50%より大きい。導線306は、電流が電源344から加熱エレメント312へ流れ込むことを可能にする。導線306は、ハウジング304の頂部を介して延びる。加熱エレメント312は、ハウジング304の頂部を介して導線306及び加熱エレメント312を引っ張ることによって取外しが可能である。
【0029】
図7は、加熱エレメント312をより詳細に描いている。加熱エレメントはストリップヒータであって、電気絶縁層716と、熱硬化性粘着層712A及び712Bと、金属オーバーレイ708A及び708Bと、電気抵抗ヒータトレース720とを含む。ストリップヒータ312は、導線306から受け入れる電気を伝達するように構成される少なくとも1つのヒータトレースを含む。図7は、ヒータトレース720を切欠き図で示している。第2のヒータトレース(不図示)は、層716の下面上を延びる。ヒータトレース720は蛇行パターンを有し、ヒータトレース720へ印加される電流に応答して発熱する。本明細書において、「蛇行」という用語は、加熱エレメントの形成に使用され得る線形または曲がった経路、円及び方向変化の組合せによる任意の連なりを含む形状またはパターンを指す。熱硬化性粘着層712A及び712Bは、ヒータトレースを有する電気絶縁層716を各々金属オーバーレイ708A及び708Bへ接着する。金属オーバーレイ708A及び708Bは、ヒータトレース720によって発生される熱がインクをより急速かつ均一に加熱して溶融させることを有効化する熱導体として作用する。金属外層として適切な材料はステンレス鋼及びアルミニウムの2種であるが、他の材料が用いられてもよい。図7は、ストリップヒータ312の両側面に金属外層を描いているが、代替加熱エレメントは単一の金属層または金属基材を用いてもよい。接着材料及び金属オーバーレイは、ヒータトレースとの化学的相互作用を排除する隔絶機能を与える。また金属オーバーレイは、リザーバの容積内で流体に沈んでいない加熱エレメントの部分が過熱する可能性も最小限に抑える。ストリップヒータエレメント312の任意の適切な構成及び材料構成並びに層の種類は、記述されている用途の適切性に影響することなく上記記述と異なってもよい。
【0030】
再度図3及び図4を参照すると、温度センサ324は、インクリザーバにおける用途に適するサーミスタまたは他の温度検出デバイスであってもよい。温度センサ324はハウジング304の頂部からインク310内へ延びるが、様々な実施形態はインクリザーバ200内の異なる位置における1つまたは複数の温度センサを用いてもよい。
【0031】
コントローラ336は、図1に示すコントローラ70等の電子制御デバイスであってもよく、またはサーモスタットとして具現されてもよい。コントローラ336は温度センサ324からの温度情報を受信し、かつ導線306を介する電源344から加熱エレメント312への電流の流れを制御するためにスイッチ340を選択的に開閉する。スイッチ340は電気機械的スイッチであっても、半導体スイッチであってもよい。
【0032】
インク310が溶融状態で保持される動作モードにおいて、コントローラ336は、温度センサ340によって検出されるリザーバ温度に応答してスイッチ340を選択的に開閉する。温度センサ340によって発生される信号が、インクの温度が予め決められた下限しきい値温度より低いことを示すと、コントローラ336はスイッチ340を閉じて、電源344からの電流を加熱エレメント312を介して流させる。加熱エレメント312の温度はこの電流に応答して上昇し、リザーバ容積308内のインクを加熱する。インク310の温度が下限しきい値温度より高い上限しきい値温度に達すると、コントローラ336はスイッチ340を開いて、加熱エレメント312から電流を除去する。或いは、より正確な制御方法は、上下温度設定ポイントからの温度変化率または上記設定ポイントからの偏りに接近する予め決められた温度を用いて、加熱器へ送出される電流及び/またはオン/オフサイクリング周波数の変更を開始する。このタイプの「スイッチ」の一形式は、PIDコントローラである。相変化インクの幾つかの実施形態では、使用され得る下限及び上限しきい値温度は各々110゜C及び125゜Cである。
【0033】
別の動作モードでは、インク310は固相でリザーバ容積308を占有する。コントローラ336は、技術上既知である様々なエネルギー節約プログラム及び技術に従って、インク310を冷却して凝固させるべくスイッチ340を開いてもよい。またインク310は、印刷デバイスが、インクを凝固点まで冷却するに足る時間に渡って電源から外されると凝固する場合もある。凝固したインクを溶融する場合、コントローラ336はスイッチ340を閉じて、電源344からの電流を導線306及び加熱エレメント312を介して流させる。加熱エレメント312は、リザーバ容積308の幅356に渡って熱を均一に加える。加熱エレメント312がインクジェットエジェクタ416に近接していることから、インクジェットエジェクタ416に近いインク310は、リザーバ容積308におけるインクジェットエジェクタ416から遠い方の部分のインクより急速に溶融する。従って、エジェクタ416は印刷ヘッドの幅に渡って溶融インクを均一に受け入れ、よって溶融インクは、インク310の一部が固体のままであっても、複数のエジェクタを介する射出に利用できる。
【0034】
これまでに述べた実施形態は単なる例示であり、代替実施形態を限定するものではない。例えば、図2、図5、図6A及び図6BのPTC加熱エレメント及び図3、図4及び図7の折り畳みストリップ式加熱エレメントは、1つまたは複数の印刷ヘッドへインクを供給するために使用されるより大型のインクリザーバにおいて使用されてもよく、または印刷ヘッドリザーバにおいて使用されてもよい。ストリップヒータまたはPTCヒータの何れに関連して、様々な実装が記述されている。何れの場合も、印刷ヘッド、リザーバ及び様々な非加熱器コンポーネントは何れの加熱技術に対しても適合性がある。例えば、ハウジング材料、通気、温度フィードバック制御、リザーバ容積及び流体レベル容積限度は、どちらのタイプの加熱器で用いられてもよい。加熱エレメントは、リザーバに対して任意に方向づけられてもよい。傾斜した折り畳み、曲り、穴、ボイド及びこれらに類似するものを組み入れる構造は、重力によって液体インクがリザーバ出口へと推進されることを可能にする。図1は、間接的な相変化画像デバイスを描いているが、これまでに述べた加熱エレメント及びリザーバは、直接的なマーキングデバイスを含む相変化インク画像デバイスの他の実施形態における使用にも等しく適する。さらに、記述された特徴は、1つまたは複数のインクリザーバを用いる画像デバイスによる使用、及び1つまたは複数のインクカラーを用いる画像デバイスによる使用に適する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体インクジェットプリンタにおいてインクを貯蔵するための容積測定容器であって、
断熱材料から成るハウジングであって、前記ハウジング内部に一定量の空間を有し、前記空間の量は高さ、幅及び深さを有するハウジングと、
前記ハウジングの前記空間量内に位置合わせされる、前記空間量の幅に渡ってインクを均一に溶融するための加熱エレメントとを備え、前記加熱エレメントは、前記空間量の前記高さ及び幅によって画定される面積より大きい表面積を有するように構成される容積測定容器。
【請求項2】
前記ハウジングはさらに、
前記空間量へ流体で接続される、印刷装置から射出するための前記空間量からの溶融インクを受け入れるための印刷装置を備える、請求項1に記載の容積測定容器。
【請求項3】
前記加熱エレメントは、前記空間量における全ての固体インクが動作温度に達する前に前記印刷装置による印刷を可能にするために、前記印刷装置と流体で連通する出口に近接する前記加熱エレメントの少なくとも一部が、前記出口に近接する固体インクを前記空間量の残りの部分における固体インクより急速に溶融することを有効化するように位置合わせされる、請求項2に記載の容積測定容器。
【請求項4】
前記加熱エレメントの起動を有効化すべく外部電源からの電力に結合するために前記加熱エレメントへ機能的に接続される導線をさらに備え、前記導線は、前記加熱エレメントの交換を容易にするために前記ハウジングの上側部分において前記ハウジングを出る、請求項1に記載の容積測定容器。
【請求項5】
前記加熱エレメントは、さらに、
波形の加熱エレメント上に蛇行パターンで形成される電気トレースと、
前記波形の加熱エレメントに隣接して位置合わせされる金属製基材と、
前記ハウジング内の前記空間量において前記加熱エレメントをインクとの物理的接触から隔絶するために、前記金属積基材を前記加熱エレメントへ付着させる熱硬化性接着剤とを備える、請求項1に記載の容積測定容器。
【請求項6】
温度センサが前記ハウジング内の前記空間量に貯蔵されるインクの温度を検出できるように前記空間量内に位置合わせされる温度センサと、
コントローラが、前記温度センサによって発生される、前記ハウジング内の前記空間量内に貯蔵されるインクの温度に対応する信号を受信できるように、前記温度センサへ機能的に接続されるコントローラであって、前記温度センサから受信される前記信号を予め決められたしきい値と比較するように構成されるコントローラと、
前記コントローラ及び前記電源へ機能的に接続されるスイッチとをさらに備え、前記スイッチは、前記温度センサから受信される前記信号を前記予め決められたしきい値より低いとする前記コントローラの識別に応答して前記加熱エレメントを起動すべく前記電源を前記導線へ接続し、かつ前記温度センサから受信される前記信号を前記予め決められたしきい値以上であるとする前記コントローラの識別に応答して前記波形の加熱エレメントを停止すべく前記電源を前記導線から切断するように構成される、請求項4に記載の容積測定容器。
【請求項7】
前記加熱エレメントは正温度係数(PTC)を有する材料を含む、請求項1に記載の容積測定容器。
【請求項8】
前記加熱エレメントはPTC材料の穴開けされたブロックである、請求項7に記載の容積測定容器。
【請求項9】
前記加熱エレメントは、PTC材料で構成される複数の渦巻形の部分による連続形式である、請求項7に記載の容積測定容器。
【請求項10】
前記PTC材料は前記空間量における上側の流体レベル位置から前記空間量における底部まで延びる、請求項7に記載の容積測定容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−101533(P2012−101533A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238033(P2011−238033)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】