説明

固体リン酸触媒およびそれを用いたオレフィンの二量化反応方法

【課題】オレフィンの二量化反応において、高い反応活性および二量体選択性が得られる固体リン酸触媒および効率的なオレフィンの二量化反応方法を提供することにある。
【解決手段】担体にリン酸を担持して成り、250℃で20分加熱した場合に加熱減量としての水分が、リン酸由来の五酸化二リン(P)に対して50質量%以上である固体リン酸触媒。前記触媒に、水を10〜1000質量ppm含有するオレフィン含有原料を接触させることにより反応を開始するオレフィン二量化反応方法。前記触媒に、水を10〜1000質量ppm含有し、オレフィンを実質的に含まない炭化水素を接触させる工程1、圧力および温度を反応開始条件に調節する工程2、水を10〜1000質量ppm含有するオレフィン含有原料で前記炭化水素を置換し、オレフィンを前記固体リン酸触媒に接触させることにより反応を開始する工程3を順次行うオレフィン二量化反応方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、担体にリン酸を担持して成る固体リン酸触媒およびそれを用いたオレフィンの選択的二量化反応方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィンのオリゴマーは各種用途に用いられており、特に低分子量オレフィン(例えば、プロピレン、n−ブテン、イソブテン、ペンテン類)の二量体は、ガソリンの高オクタン価基材や化学中間原料として重要である。オレフィンの二量化を含むオリゴマー化は、酸触媒を用いて行われ、これまで数多くの研究がなされている。酸触媒としては、硫酸、フッ化水素、リン酸、塩化アルミニウム及びフッ化ホウ素や、非晶質または結晶質アルミノシリケート、粘土、イオン交換樹脂、混合酸化物、担体付き酸などの固体酸が慣用的な例として挙げられ、安価で簡便な製造プロセスが可能である固体リン酸触媒についても種々検討されている。
【0003】
例えば、100℃以上のカ焼条件で調製された固体リン酸触媒を用いてプロピレンをオリゴマー化する方法(特許文献1)や、リン酸と珪酸質原料の無定形混合物を250〜450℃、水蒸気濃度3〜50モル%の条件で結晶化して調製した触媒(シリコンオルトホスフェートおよびシリコンピロホスフェートからなる触媒)を用いてプロピレンをオリゴマー化する方法(特許文献2)が開示されている。
また、固体リン酸触媒のリン酸の縮合度がオレフィンのオリゴマー化反応の活性に影響をおよぼすことは従来から知られており、例えば、固体リン酸触媒を水に浸漬して溶出する遊離リン酸成分(オルトリン酸、ピロリン酸などの非縮合または低縮合のリン酸)の触媒に対する質量比が小さい触媒(リン酸組成としてはHO/Pが31質量%以下に対応する。)を用いて、C3およびC4等のオレフィンをオリゴマー化する例が開示されている(特許文献3、非特許文献1)。また、特許文献3では固体リン酸触媒が過度に水和されると触媒の物理的性能を悪化させることから、実質的に水を含まない炭化水素による触媒の乾燥を行った後、適量の水分を含有する原料をフィードすることによって、触媒の水和が所定のレベル(前記のリン酸組成)となるように調節している。
【0004】
しかしながら、上記の従来の固体リン酸触媒を用いるオレフィンのオリゴマー化は、いずれもオレフィンの二量化を主目的としたものではないうえに、従来の固体リン酸触媒ではオレフィンの高重合物の副生が避けられず、オレフィンの二量体を選択的に得ることは困難であった。また、従来の固体リン酸触媒はリン酸組成としてHO/Pが小さい状態で反応に供する必要があり、触媒の調製時および保存時に水分が一定レベル以下となるように(余剰の水分が少なくなるように)水分コントロールを厳密に行うことや、反応前に触媒の乾燥工程を行うことが必要となり、種々の不都合があった。
【特許文献1】特公平8−29251号公報
【特許文献2】特公平7−59301号公報
【特許文献3】特開2001−199907号公報
【非特許文献1】“Applied Catalysis A : General”, 1993, 97, p.177-196
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
オレフィン二量化反応において高い反応活性および二量体選択性を示す固体リン酸触媒を提供し、効率的なオレフィンの二量化反応方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の第1は、担体にリン酸(加水分解によりリン酸となるものを含む。)を担持して成り、250℃で20分加熱した場合に加熱減量としての水分が、リン酸由来の五酸化二リン(P)に対して50質量%以上である固体リン酸触媒である。
本発明の第2は、本発明の第1の固体リン酸触媒に、水を10〜1000質量ppm含有するオレフィン含有原料を接触させることにより反応を開始することを特徴とするオレフィン二量化反応方法である。
【0007】
本発明の第3は、以下の工程すなわち、
工程1:本発明の第1に記載の固体リン酸触媒に、水を10〜1000質量ppm含有し、オレフィンを実質的に含まない炭化水素を接触させる工程、
工程2:圧力および温度をオレフィン二量化の反応開始条件に調節する工程、
工程3:水を10〜1000質量ppm含有するオレフィン含有原料で前記炭化水素を置換し、オレフィンを前記固体リン酸触媒に接触させることにより反応を開始する工程、
を順次行うことを特徴とするオレフィン二量化反応方法である。
【0008】
本発明の第4は、本発明の第3において、工程2の反応開始条件の温度が、工程3の後の定常状態におけるオレフィン二量化の反応温度より5〜50℃高いことを特徴とするオレフィンの二量化反応方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の固体リン酸触媒は、特にオレフィンの二量化反応に適しており、触媒の調製が簡便で、活性および二量体選択性が高く、触媒寿命が長いため、効率的にオレフィン二量体を製造することができる。また、本発明の触媒を用いれば、確実かつ安定に反応を開始させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明をさらに詳しく説明する。
本発明の固体リン酸触媒に用いる担体としては、リン酸を担持できるものであれば特に制限はないが、好ましくは、珪藻土、滴虫土、繊毛虫土、キーゼルグール、カオリン、フラー土、人工多孔質シリカなどの珪酸質担体およびその混合物の成形品を挙げることができる。担体を成形する場合、十分な強度、細孔容積、比表面積を与える目的でいかなる温度条件でもカ焼を行うことができる。成形の方法および成形品の形状については特に制限が無く、例えば打錠成形、押出し成形、スプレードライ、転動造粒,油中造粒等の方法で、粒状、板状、ペレット状の各種成形体とすることができ、粒径は0.5〜5mm程度とすることができる。
【0011】
リン酸としては、具体的には、オルトリン酸およびその縮合物(ピロリン酸、ポリリン酸等)が挙げられるが、加水分解によりリン酸となるもの(リン酸前駆体)、例えば、炭素数1〜8のアルコールのリン酸エステル等も使用することができる。また、それらの混合物でもよい。
【0012】
触媒中の担体に対するリン酸の割合(リン酸はオルトリン酸として計算し、オルトリン酸以外のリン酸については、完全に加水分解したときに生成するオルトリン酸に換算する。以下、リン酸担持量という。)は、10〜200質量%、好ましくは30〜120質量%である。少ない場合はオレフィンの二量化反応の活性が低いので好ましくない。また、リン酸をこれ以上担持することは難しい。
【0013】
本発明の固体リン酸触媒は、リン酸の担体への担持により調製されるが、触媒を250℃で20分加熱した場合に加熱減量としての水分が、リン酸由来の五酸化二リン(P)に対して50質量%以上(0.5質量倍以上)となるようにすることが重要である。加熱減量としての水分が50質量%より小さい場合は、オレフィンの二量化反応の活性および選択性が低くなるので好ましくない。また、加熱減量としての水分の上限は、担持するリン酸水溶液の濃度および担体の種類等によって異なり、特に限定されるものではないが、あまり大きすぎるとリン酸担持量が小さくなるので、通常は1300質量%以下(13質量倍以下)、好ましくは600質量%以下(6質量倍)、さらに好ましくは400質量%以下(4質量倍以下)が好ましい。
なお、触媒中のPの量は、触媒質量から上記の加熱減量を差し引いた残量(担体とPの合計量)と、触媒を水洗・乾燥して得られる担体の量との差から計算により求めることができる。加熱減量の測定は、一般的な熱重量分析により行うことができ、通常はN等の不活性ガス雰囲気下で行われる。
【0014】
触媒の調製、すなわち担体へのリン酸の担持は、担体をリン酸水溶液に浸漬させたのち余剰のリン酸水溶液を除去することにより実施することができる。触媒調製に使用する装置については特に限定は無く、一般的な回分槽を用いることができるが、オレフィンの二量化反応を実施する反応器を用いれば、触媒調製と同時に触媒充填ができる。浸漬に用いるリン酸水溶液の濃度は、特に制限はないが、92質量%以下の場合は、浸漬した状態で加熱減量を所定の値にすることができるので好ましいが、それより高い濃度の場合は、浸漬しただけでは加熱減量が所定の値とならず、水を加えて別途調整しなければならないので好ましくない。通常用いるリン酸水溶液の濃度は約10〜80質量%で、目的とするリン酸担持量により変化させることができる。例えば、リン酸担持量70質量%とするためには、担体の表面積等の性状にもよるが、リン酸水溶液の濃度は通常35〜45質量%程度である。浸漬時間は、通常1時間程度またはそれ以上であれば特に問題ない。浸漬温度は100℃未満、好ましくは50℃以下である。100℃を超える高温条件では、加熱減量が所定の値より小さくなるおそれがあるので好ましくない。また、温度が低すぎると凝固して浸漬できなくなるので、0℃以上、さらには15℃以上が好ましい。浸漬後、ろ過などの一般的方法で余剰のリン酸水溶液を除去することによって触媒調製を完了することができる。水分を除去するための特別な乾燥操作を行う必要はないが、加熱減量が所定の値となる限りにおいては、乾燥操作を適宜行っても差し支えない。
【0015】
オレフィン含有原料のオレフィンとしては、炭素数3〜7のモノオレフィンが好適であり、直鎖状、分岐状および環状のいずれでもよく、目的生成物に応じて単独でも混合物でも用いることができる。具体的にはプロピレン、ブテン類(1−ブテン、シス−2−ブテン、トランス−2−ブテン、イソブチレン)、ノルマルペンテン類、イソペンテン類、シクロペンテン類、ノルマルヘキセン類、イソヘキセン類、シクロヘキセン類、ノルマルヘプテン類、イソヘプテン類、シクロヘプテン類を挙げることができる。なお、オレフィンの二量化とは、原料オレフィン2モルの反応(オレフィン混合原料の場合には、異なる原料オレフィン同士の反応も含む。)によりオレフィン1モルが生成することを意味する。
【0016】
本発明では、オレフィンとして、例えばブテン類が好適に用いられる。ブテン類の二量体のうちイソオクテンは、ガソリンの高オクタン価基材として有用である。また高純度のジイソブチレンは、オクチルフェノールやイソノナン酸などの機能化学製品の原料として有用な化合物である。ブテン類の二量体の製造を行う場合、ブテン類の一種を単独で使用することもできるが、ブテン類の数種が任意の割合で混合された物を使用することもできる。ブテン類の組成は、その二量化物の用途および要求特性(オクタン価指数など)に応じて調整することが好ましい。また、その要求特性を満足する範囲において、他のオレフィン、例えばプロピレンならびに直鎖状、分岐状および環状のペンテン類、ヘキセン類、ヘプテン類等を含んでいても差し支えない。
【0017】
オレフィン含有原料の供給源は、特に制限はないが、例えばFCCプロセスで生産されるオレフィン留分、ナフサクラッカーで生産される留分からジエン成分を抽出や選択的水素化によって除去したオレフィン留分、コーカオフガス留分、脱水素反応生成物などが挙げられ、またこれらを任意の割合で混合したものでも良い。更にそれらに対し蒸留などの公知の方法を用いて、特定の留分の含有量を増減させて調整しても良い。例えば、ナフサクラッカーで生成するC4留分からブタジエンを抽出したラフィネートやFCC−C4留分を蒸留(または反応蒸留)し、ノルマルブテン類およびノルマルブタンを除いたイソブチレンを高濃度に含有するイソブチレン−イソブタン留分を用いることができる。これらの留分をブテン類の二量化反応に用いる場合、反応に影響を及ぼさない程度であれば、ブタジエン等の不純物が微量含まれていても差し支えない。
【0018】
また、反応熱を除去する目的で、溶媒を含むオレフィン含有原料を使用することができる。溶媒は、二量化反応条件において液体であって、固体リン酸触媒に対して本質的に不活性であれば何でもよい。例えば、n−パラフィン、イソパラフィン、ナフテン類、芳香族などの炭化水素を用いることができる。上記ラフィネートやC4留中のブタン等の飽和炭化水素も溶媒として作用する。溶媒の量としては、オレフィンと溶媒を含むオレフィン含有原料の総量に占めるオレフィンの割合が、1〜70質量%、好ましくは10〜65質量%、より好ましくは15〜60質量%となる量である。溶媒の量が多すぎると生産性が低下し、少なすぎると除熱効率が低くなる。
【0019】
本発明においては、固体リン酸触媒にオレフィン含有原料を液相で接触させることが好ましい。気相では、コーキングの発生により、オレフィン二量化反応の活性および二量体選択性が低下し、触媒寿命が短くなるおそれがあるので好ましくない。
【0020】
オレフィン二量化反応に用いる反応器および反応形式には特に制限はなく、槽型反応器によるバッチ式、セミバッチ式、連続流通式反応や、固定床、流動床、移動床の流通反応器による連続流通式反応などを採用することができる。反応温度は、0〜300℃、好ましくは20〜200℃である。0℃より低温では十分な反応速度が得られず、300℃より高温では副反応が多くなるので好ましくない。反応圧力は、常圧〜20MPaが好ましく、低圧では反応系が液相を維持できなくなるおそれがあり、高圧では設備コストが増大するので好ましくない。WHSV(1時間あたりの担体質量に対する供給原料質量)は、0.1〜300hr−1、好ましくは1〜150hr−1である。WHSVが小さいと製造効率が悪く、大きいと反応が進行しないので好ましくない。
【0021】
本発明においては、固体リン酸触媒に直接、オレフィン含有原料を接触させても良いが、オレフィン含有原料を接触させる前に、オレフィンを実質的に含まない炭化水素(以下、非オレフィン性炭化水素と称する。)を接触させることが好ましい。最初に、非オレフィン性炭化水素で触媒層を満たしておき、そこへオレフィン含有原料をフィードして徐々に置換することにより、オレフィンの二量化の反応熱による急激な温度上昇を抑制することができる。また、非オレフィン性炭化水素を接触させることにより、触媒調製時にろ過で除去できなかった余剰の(非担持の)リン酸水溶液を除去することができる。非オレフィン性炭化水素は、固体リン酸触媒との接触において、本質的に不活性であれば何でもよいが、以下に示すオレフィンの二量化反応の開始条件における温度、圧力において、液相状態が維持されるものであることが好ましい。例えば、n−パラフィン、イソパラフィン、ナフテン類、芳香族などの炭化水素を用いることができる。
【0022】
固体リン酸触媒と非オレフィン性炭化水素とを接触させてから、触媒層へのオレフィン含有原料のフィードを開始するまでの時間(以下、条件設定時間という。)は、通常1〜1,000時間、好ましくは5〜240時間である。その間に、温度および圧力をオレフィン二量化の反応開始条件に調節する。反応開始条件は、前述の反応温度および反応圧力の条件範囲内で、目的とする活性および選択性が得られるように設定する。条件設定時間が短時間では所定の条件に安定化させるのは難しく、長時間では製造効率が悪くなるので好ましくない。反応開始条件を、触媒とオレフィン含有原料の接触後の定常状態における反応条件より高い温度にした場合、オレフィン二量化反応の初期における触媒活性を高め、副反応が起こるのを抑制することが可能であり、速やかにオレフィン二量化反応の定常状態を確立することができる。反応開始条件の設定温度は、反応初期の活性および選択性の目標値によって任意に設定することができるが、好ましくは、定常状態における反応温度に対して5〜50℃高い温度である。これより高い温度では、目的としない副反応や触媒劣化などが起こるので好ましくない。反応開始条件を定常状態における反応条件より高い温度にした場合は、その後オレフィン含有原料を触媒層へフィードした後、反応温度が所定の定常状態となるように調節する。
【0023】
本発明においては、触媒の乾燥(触媒に含有される水分量の低下)が進行するのを防止するために、触媒に接触させるオレフィン含有原料および非オレフィン性炭化水素に水分を共存させることが重要である。水分の供給方法としては特に制限はなく、混合装置によってオレフィン含有原料に所定量の水を溶解させて反応器に供給する方法などが挙げられる。オレフィン含有原料および非オレフィン性炭化水素中の水分量は、10〜1000質量ppm、好ましくは30〜500質量ppm、より好ましくは50〜300質量ppmである。水分量が少なすぎると、触媒に含有される水分の量が減少し、活性および選択性が低下する。一方、水分量が多い場合は、過剰の水分(特にオレフィン含有原料の飽和水分量を超える分の水)が触媒中のリン酸を溶出させて活性が低下するので好ましくない。
【0024】
本発明の固体リン酸触媒は、オレフィンの二量化反応における二量体の選択性が高く、二量体と原料オレフィンの反応による三量体以上のオリゴマーの副生が極めて起こりにくいという特徴がある。そのため、反応器出口からの反応液の一部を循環して原料フィードラインに合流させるローカルリサイクルを行うことにより、二量体の選択性を大きく損なうことなく、反応熱の除去をより効率的に行うことができる。原料フィード量に対するリサイクル量の質量比(R/F)は、任意に決めることができるが、例えば40質量%のオレフィンを含む原料を用いて転化率90%のオレフィン二量化反応を行う場合のR/Fは、0〜50、好ましくは1〜10である。
【実施例1】
【0025】
0.8〜1.7mmφの合成シリカの造粒品(富士シリシア化学製キャリアクトQ-50)20.0gを200mlビーカーに入った42質量%リン酸水溶液100mlに浸漬した。1時間浸漬後、メッシュフィルター上で水溶液を除去し、固体リン酸触媒Aを調製した。得られた触媒28mgを250℃、20分の条件で熱重量分析を行ったところ加熱減量(水分)は12.6mg(45.0質量%)であり、触媒中の担体およびP25の合計量の割合は55.0質量%であった。次に触媒2.00gを十分に水洗後乾燥して質量を測定したところ0.71gであり、触媒中の担体量は35.5質量%となった。従って触媒中のP25の割合は19.5質量%となり、P25に対する加熱減量の割合は230.8質量%となる。
固体リン酸触媒Aの2gを管形ステンレス鋼反応器(内径8mm)に充填し、反応器の上部よりオレフィン含有原料(イソブチレン30質量%、n-ブテン5質量%、n-ヘキサン65質量%65質量%、水250質量ppm)を21.3g/h(WHSV=30h-1)でフィードし、下部より抜き出した反応液の一部をリサイクルとしてフィードに合流させた(リサイクル比R/F=4)。圧力を1.0MPa、触媒層の温度を80℃として、二量化反応を30日間連続して実施した。反応結果を表1に示す。
【実施例2】
【0026】
固体リン酸触媒Aの2gを管形ステンレス鋼反応器(内径8mm)に充填し、反応器の上部より水50ppmを含んだn-ヘキサンを21.3g/h(WHSV=30h-1)でフィードし、下部より抜き出した反応液の一部をリサイクルとしてフィードに合流させながら(リサイクル比R/F=4)、圧力および温度を反応開始条件(1.0MPa、80℃)に調節した。フィード開始後約1時間で圧力と温度が反応開始条件で安定したのでフィードをオレフィン含有原料(イソブチレン30質量%、n-ブテン5質量%、n-ヘキサン65質量%、水250質量ppm)に切り替え、二量化反応を30日間連続して実施した。反応結果を表1に示す。
【実施例3】
【0027】
0.8〜1.7mmφの合成シリカの造粒品(富士シリシア化学製キャリアクトQ-30)1.5gを、管形ステンレス鋼反応器(内径8mm)に挿入した。反応器下部より42質量%リン酸水溶液を、全てのシリカが浸漬される量だけ導入し、1時間後に反応器下部よりリン酸水溶液を除去し、固体リン酸触媒Bを調製した。反応器より固体リン酸触媒Bを2.0g抜きだし、実施例1と同様の分析を行った結果、加熱減量(水分)は44.2質量%であり、触媒中の担体は36.6質量%、P25は19.2質量%となり、P25に対する加熱減量の割合は230.2質量%となった。
反応器に残った固体リン酸触媒Bを用い、反応器の上部より水50ppmを含んだn-ヘキサンを23g/h(WHSV=30h-1)でフィードし、下部より抜き出した反応液の一部をリサイクルとしてフィードに合流させながら(リサイクル比R/F=4)、圧力および温度を反応開始条件(1.0MPa、100℃)に調節した。フィード開始後約1時間で圧力と温度が反応開始条件で安定したのでフィードをオレフィン含有原料(イソブチレン30質量%、n-ブテン5質量%、n-ヘキサン65質量%、水250質量ppm)に切り替え、24時間(1日)後に触媒層の温度を80℃に変更してさらに29日間連続して二量化反応を実施した。反応結果を表1に示す。
【実施例4】
【0028】
触媒調製を実施例1と同様にして行った。ただし、温度25℃、湿度50%の室内にて触媒の乾燥を、実施例1と同様の分析を行いながら実施し、P25に対する加熱減量の割合が51.0質量%となる固体リン酸触媒Cを得た。このときの加熱減量(水分)は15.2質量%、触媒中の担体は55.0質量%、P25は29.8質量%であった。
固体リン酸触媒Cを用いた以外は実施例2と同様にして二量化反応を実施した。反応結果を表1に示す。
【実施例5】
【0029】
オレフィン含有原料の組成をイソブチレン8質量%、n-ブテン27質量%、n-ヘキサン65質量%、水250質量ppmとし、圧力を2.0MPa、触媒層の温度を145℃とした以外は、実施例2と同様にして二量化反応を実施した。反応結果を表1に示す。
【実施例6】
【0030】
オレフィン含有原料の組成をイソペンテン20質量%、n-ペンテン20質量%、シクロペンテン10質量%、n-ペンタン50質量%、水250質量ppmとし、圧力を2.0MPa、触媒層の温度を145℃とした以外は、実施例2と同様にして二量化反応を実施した。反応結果を表1に示す。
【実施例7】
【0031】
オレフィン含有原料の組成をイソブチレン20質量%、n-ブテン3質量%、イソペンテン7質量%、n-ペンテン10質量%、n-ヘキサン60質量%、水250質量ppmとし、圧力を1.5MPa、触媒層の温度を120℃とした以外は、実施例2と同様にして二量化反応を実施した。反応結果を表1に示す。
【0032】
[比較例1]
触媒調製を実施例4と同様にして行い、P25に対する加熱減量の割合が31.5質量%となる固体リン酸触媒Dを得た。このときの加熱減量(水分)は10.1質量%、触媒中の担体は57.8質量%、P25は32.1質量%であった。
固体リン酸触媒Dを用いた以外は実施例2と同様にして二量化反応を実施した。反応結果を表2に示す。
【0033】
[比較例2]
水を実質的に含まないオレフィン含有原料(イソブチレン30質量%、n-ブテン5質量%、n-ヘキサン65質量%)を用いた以外は実施例2と同様にして二量化反応を実施した。反応結果を表2に示す。
【0034】
[比較例3]
オレフィン含有原料をイソブチレン30質量%、n-ブテン5質量%、n-ヘキサン65質量%、水1,500質量ppmとした以外は実施例2と同様にして二量化反応を実施した。反応結果を表2に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の固体リン酸触媒は、オレフィンの二量化以外にも、オレフィンの水和反応や芳香族化合物のアルキル化反応等の酸触媒を用いる各種反応においても使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体にリン酸(加水分解によりリン酸となるものを含む。)を担持して成り、250℃で20分加熱した場合に加熱減量としての水分が、リン酸由来の五酸化二リン(P)に対して50質量%以上である固体リン酸触媒。
【請求項2】
請求項1に記載の固体リン酸触媒に、水を10〜1000質量ppm含有するオレフィン含有原料を接触させることにより反応を開始することを特徴とするオレフィン二量化反応方法。
【請求項3】
以下の工程1〜3を順次行うことを特徴とするオレフィンの二量化反応方法。
工程1:請求項1に記載の固体リン酸触媒に、水を10〜1000質量ppm含有し、オレフィンを実質的に含まない炭化水素を接触させる工程、
工程2:圧力および温度をオレフィンの二量化の反応開始条件に調節する工程、
工程3:水を10〜1000質量ppm含有するオレフィン含有原料で前記炭化水素を置換し、オレフィンを前記固体リン酸触媒に接触させることにより反応を開始する工程。
【請求項4】
請求項3において、工程2の反応開始条件の温度が、工程3の後の定常状態におけるオレフィンの二量化の反応温度より5〜50℃高いことを特徴とするオレフィン二量化反応方法。

【公開番号】特開2006−326469(P2006−326469A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−152697(P2005−152697)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000231682)新日本石油化学株式会社 (33)
【Fターム(参考)】