説明

固体レーザー装置およびこれを用いた画像表示装置

【課題】反射ミラーを設定した角度だけ傾けることにより横モードのマルチビームを実現し、固体レーザー結晶や波長変換素子中のレーザー光の透過領域を拡大して発熱を抑制して安定な固体レーザー装置およびこれを用いた画像表示装置を提供する。
【解決手段】ポンプ用のレーザー光19を出射する半導体レーザー光源10と、レーザー光19の入射により励起され基本波レーザー光20を発振する固体レーザー結晶15およびこの固体レーザー結晶15を挟む位置にそれぞれ配置されたミラー16、17を含み構成される光共振器14と、光共振器14の内部に配置され、基本波レーザー光20の波長を変換するSHG素子18とを備え、それぞれのミラー16、17のうちの1つがレーザー光19の光軸に対して設定した傾斜角度を設けて配置されている構成からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体レーザー結晶と波長変換素子とを用いた固体レーザー装置に関し、特に熱的安定性に優れ、高出力を安定して得られる固体レーザー装置およびこれを用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザー励起固体レーザー装置は、半導体レーザー光源からのレーザー光により固体レーザー結晶を励起してレーザー発振を行わせるものであり、小型軽量、長寿命、電気光変換効率が高い、動作が安定等の特徴を有し、種々の産業分野において利用されている。このような固体レーザー装置は、半導体レーザー光源からのレーザー光を結合レンズ系により固体レーザー結晶に入射させ、ミラーに挟まれた固体レーザー結晶を励起して基本波レーザー光を発振させ、この基本波レーザー光を非線形光学媒質の波長変換素子に入射させることにより、入射光の第2次高調波成分を発生させ、出力側のミラーを通して外部に発射させる構成が一般的である。
【0003】
このような固体レーザー装置を用いれば、高出力の緑色光(G光)を得ることができる。具体的構成例としては、例えば半導体レーザー光源を用い、Nd:YVO等からなる固体レーザー結晶を励起させ、反射ミラーと出力ミラーとの間で固体レーザー結晶のレーザー発振を起こさせる。このレーザー発振により波長1064nmの基本波レーザー光が得られる。この基本波レーザー光を波長変換素子に入射することにより、波長532nmの第2高調波が得られる。このような構成とすることで高出力のG光が得られるので、レーザーディスプレイや投射型液晶ディスプレイ等への応用が可能となることから開発が活発に行われている。
【0004】
例えば、高出力、高効率であって、スペックルノイズ低減を可能とする固体レーザー装置とそれを用いた画像表示装置が示されている(例えば、特許文献1参照)。この固体レーザー装置は、レーザー光源として1次元横マルチモードレーザーを用いる構成であり、励起用光源、光共振器内の固体レーザー結晶および波長変換素子を備え、楕円状の横モードパターンで固体レーザー結晶を励起して線状ビームを得るとともに、この線状ビームを波長変換素子に入射させることにより線状光を出力する構成としている。これにより、楕円状の横モードパターンを利用して高出力および高効率の固体レーザー装置を実現できる。また、横マルチモードでの励起により干渉性が低下することでスペックルノイズを低減できる。さらに、光共振器中に波長変換素子が配置されているので光共振器内部に閉じ込められた発振光のパワー密度を大きくでき、高効率での波長変換が可能となることが示されている。
【0005】
しかしながら、固体レーザー結晶や波長変換素子は高密度のレーザー光の照射を受けると損傷してしまい、長時間安定して高調波レーザー光を発振させることが困難であるという課題を有している。
【0006】
これに対して、光共振器内における波長変換素子のレーザー光の入射側にレーザー光の光路シフト用の透過板を配置して、この透過板を振動させる構成が示されている(例えば、特許文献2参照)。光共振器内の波長変換素子にレーザー光を透過させて高調波を発生させて波長変換する際に、上記の透過板を振動させることによりレーザー光の光路をシフトさせることで、波長変換素子におけるレーザー光の通過領域が拡大する結果、温度上昇を緩和させることができるとしている。
【0007】
さらに、反射ミラーと出力ミラーで構成される光共振器内に固体レーザー結晶と波長変換素子とを配置し、波長変換素子の位置をレーザー光の光軸と垂直方向に移動させる移動機構とを備えた構成において、この移動機構をレーザー光の照射に連動して移動させる構成とした固体レーザー装置も示されている(例えば、特許文献3参照)。このような構成により、波長変換素子の全面を有効に使用することができるようになり、波長変換素子の寿命を長くすることができ、結果として固体レーザー装置の寿命を延ばすことができるとしている。
【0008】
このような高出力のG光を出力できる固体レーザー装置と半導体レーザー装置とを組み合わせて、液晶パネルの裏面からレーザー光を照射して投射型液晶表示装置や薄型テレビ等の液晶表示装置に用いることも検討されている。しかしながら、薄型テレビ等のバックライトユニットにレーザー光源を用いるためには、比較的広い面積にわたり均一な輝度分布を有する構成を実現しなければならない。また、スペックルノイズの抑制も重要である。
【特許文献1】特開2006−100772号公報
【特許文献2】特開平7−22686号公報
【特許文献3】特開2004−22946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記第1の例においては、固体レーザー装置は1次元横マルチモードレーザーを用いて線状のレーザー光を出力して、投射型液晶表示装置に用いた例が示されている。しかし、この例においては、固体レーザー装置の固体レーザー結晶や波長変換素子の過熱による損傷についての対策は開示されていないし、また示唆もされていない。
【0010】
また、第2の例においては、位相整合に必要なレーザー光の偏向方向と結晶方位とを保持した状態で透過板を振動させることによりレーザー光の通過領域を拡大させて過熱を防ぐようにしているが、この方式によれば固体レーザー装置を作動させている間は、常に透過板を振動させておくことが必要であり、装置構成が複雑になり低コスト化が困難である。
【0011】
また、第3の例においては、波長変換素子を電気的に移動させるようにすることで、波長変換素子の損傷を防止するとともに全面を有効に利用可能としているが、この方式においても上記と同様に機械的な移動機構を設けなければならず装置構成が複雑となり、低コスト化が困難である。
【0012】
さらに、液晶表示装置のバックライトユニットの光源として用いる場合には、薄型で、かつ大面積にわたり均一な輝度の照明光源を低コストで実現することが要求される。このようなバックライトユニットに固体レーザー装置を用いるためには、固体レーザー装置から出力されるレーザー光をマルチモードにするほうが好ましい。しかしながら、特にG光を発光するレーザー光源(G光源)では、マルチモード構成については未だ実現されていない。
【0013】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、移動機構や振動機構を有さずに反射ミラーを設定した角度だけ傾けることにより横モードのマルチビームを実現し、固体レーザー結晶や波長変換素子中のレーザー光の透過領域を拡大して過熱を抑制して安定な固体レーザー装置を提供することを目的とする。さらに、マルチビームの固体レーザー装置を用いることにより、高輝度で、かつ大画面化が可能な画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明の面状照明装置は、ポンプ用のレーザー光を出射する半導体レーザー光源と、レーザー光の入射により励起され基本波レーザー光を発振する固体レーザー結晶およびこの固体レーザー結晶を挟む位置にそれぞれ配置されたミラーを含み構成される光共振器と、光共振器の内部に配置され、基本波レーザー光の波長を変換する擬似位相整合型波長変換素子(以下、SHG素子とよぶ)とを備え、それぞれのミラーのうちの1つがレーザー光の光軸に対して設定した傾斜角度を設けて配置されている構成からなる。
【0015】
このような構成とすることにより、G光の横モードがマルチモードとなり、固体レーザー結晶や波長変換素子内のレーザー光の通過領域が拡がり、これに伴い発熱する領域が拡がるので局部的に高温になる領域を防止することができ、高出力で、かつ安定に高調波レーザー光を出射させることができる。
【0016】
また、上記構成において、SHG素子により変換された高調波レーザー光を出射する側に設けたミラーが凹面型ミラーであり、この凹面型ミラーをレーザー光の光軸に対して設定した傾斜角度としてもよい。この場合に、凹面型ミラーの曲率半径を50mm以下としてもよい。さらに、凹面型ミラーの傾斜角度を0.1°〜0.5°の範囲に設定してもよい。このような構成とすることにより、半導体レーザー光源、固体レーザー結晶およびSHG素子等の構成についてはほとんど変更せずに、凹面型ミラーのみを傾斜させることにより横モードをマルチモード化することができる。
【0017】
また、上記構成において、半導体レーザー光源はレーザー光の発振波長を固定する手段を有するものであってもよい。このような構成とすることにより、温度変化が生じても半導体レーザー光源の発振波長はほぼ一定に保持されるので、半導体レーザー光源に対する高精度の温度制御を行う必要がない。なお、発振波長を固定する手段としては、例えば透過型の回折格子であるVBG(Volume Bragg Grating)がある。半導体レーザー光源から出射したレーザー光を、このVBGに入射させるが、その一部が反射されて半導体レーザー光源にフィードバックされ、半導体レーザー光源の発振波長がVBGにより選択された波長に固定されるものである。さらに、このように半導体レーザー光源に波長選択性を有する構造としては、後述するようなDFBレーザーやDBRレーザーがあり、このようなレーザー光源を用いてもよい。
【0018】
さらに、本発明の画像表示装置は、画像変換デバイスとこの画像変換デバイスを照射するための照明光源とを備えた装置であって、照明光源は少なくとも赤色光(R光)、緑色光(G光)および青色光(B光)を発光するレーザー光源からなり、これらのレーザー光源のうちの少なくとも1つが上記記載の固体レーザー装置からなる構成からなる。この場合に、G光を発光するレーザー光源として上記固体レーザー装置を用い、R光とB光とを発光するレーザー光源として半導体レーザー光源を用いる構成としてもよい。さらに、R光とB光とを発光する半導体レーザー光源は、複数の活性層を有し複数のビームを出射する構成からなるものを用いてもよい。
【0019】
このような構成とすることにより、R光、G光およびB光ともに高出力のレーザー光源を用いることができ、色再現範囲が広く、画質が良好で、かつ明るい画像表示装置を実現することができる。なお、画像表示装置としては、画像変換デバイスとして2次元空間変調素子、例えばMEMS技術により形成したマイクロミラーを多数配置した構成の素子を用いた投射型構成の画像表示装置、液晶表示パネルを2次元空間変調素子として用いた投射型構成の画像表示装置あるいはバックライトユニットと液晶表示パネルとを用いた薄型テレビ構成の画像表示装置等がある。
【0020】
特に、薄型テレビ等の画像表示装置に対しては、画像変換デバイスが液晶表示パネルからなり、照明光源はR光源、G光源およびB光源から出射したレーザー光を液晶表示パネルの全面にわたり照射するバックライトユニットからなる構成としてもよい。このような構成とすることにより、液晶表示パネルを用いた画像表示装置の色再現範囲を拡大でき、画質を大幅に改善できる。また、全体として低消費電力化を実現することもできる。
【0021】
また、上記バックライトユニットは、四隅のうちの少なくとも1つの角部が曲面形状に加工された第1の導光板とこの第1の導光板に密接して配置された第2の導光板からなる角部端面入射型導光板と、第1の導光板の上記角部に形成された曲面形状に沿って配置された光路変換部と、光路変換部にレーザー光を入射させる赤色光源、緑色光源および青色光源とを備えた構成からものであってもよい。
【0022】
このような構成とすることにより、赤色光源、緑色光源および青色光源を第1の導光板の表面に配置することができるので、画像表示装置としての全体的な形状を小型化することができる。
【0023】
また、上記バックライトユニットは、四隅のうちの少なくとも1つの角部が凹面形状からなる曲面部を有する第1の導光板とこの第1の導光板に密接して配置された第2の導光板とからなる角部端面入射型導光板と、第1の導光板の上記曲面部に対向する位置に配置され、この曲面部を介して第1の導光板にレーザー光を入射させる赤色光源、緑色光源および青色光源とを備えた構成からなるものであってもよい。
【0024】
このような構成とすることにより、光路変換部を設けずに直接第1の導光板の曲面部から第1の導光板にレーザー光を入射させることができるので照明光源の構成を簡略化しながら、大画面化にも対応可能とすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、固体レーザー結晶や波長変換素子の損傷を防止でき、長寿命で、かつ高出力の固体レーザー装置を実現できるという大きな効果を奏する。また、この固体レーザー装置は横モードがマルチモードとなっているので、液晶表示装置のバックライトユニットの光源とした場合に、構造が簡単で、かつ製造コストを安価にできる画像表示装置を実現できるという大きな効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同じ要素には同じ符号を付しており、説明を省略する場合がある。
【0027】
図1は、本発明の実施の形態にかかる固体レーザー装置1の構成図である。本実施の形態の固体レーザー装置1は、ポンプ用のレーザー光19を出射する半導体レーザー光源10と、レーザー光19の入射により励起され基本波レーザー光20を発振する固体レーザー結晶15および固体レーザー結晶15を挟む位置にそれぞれ配置されたミラー16、17を含み構成される光共振器14と、光共振器14の内部に配置され、基本波レーザー光20の波長を変換するSHG素子18とを備えている。そして、上記ミラー16、17のうちの1つがレーザー光19の光軸22に対して設定した傾斜角度θを設けて配置されている。本実施の形態では、SHG素子18により変換された高調波レーザー光21を出射する側に設けたミラー17が凹面型ミラーであり、この凹面型ミラーをレーザー光19の光軸22に対して設定した傾斜角度θとしている。以下では、このミラー17を凹面型ミラー17とよぶ。さらに、半導体レーザー光源10はレーザー光19の発振波長を固定する手段を有している。
【0028】
なお、本実施の形態では、レーザー光19として発信波長808nmのポンプ光を入射し、1064nmの基本はレーザー光20を発生させ、これをSHG素子18により532nmの高調波レーザー光21として出射する固体レーザー装置1の構成を例として説明する。したがって、高調波レーザー光21がG光である。
【0029】
本実施の形態の固体レーザー装置1では、レーザー光19は半導体レーザー光源10から出射してロッドレンズ11、VBG12およびボールレンズ13を介して光共振器14に入射する。半導体レーザー光源10から出射した波長808nm近傍のレーザー光19はロッドレンズ11により垂直方向の成分がコリメートされた後にVBG12に入射する。VBG12に入射したレーザー光19は、一部が反射されて半導体レーザー光源10にフィードバックされる。これにより、半導体レーザー光源10の発振波長はVBG12により選択された波長(808nm)にロックされる。このように、VBG12を用いることで、温度変化が生じても半導体レーザー光源10の発振波長をほぼ一定に保持でき、半導体レーザー光源10の高精度の温度制御を不要にすることができる。
【0030】
なお、本実施の形態では、半導体レーザー光源10の発振波長のロックにVBG12を用いた場合について説明したが、誘電体多層膜により構成されるバンドパスフィルターを用いてもよい。あるいは、半導体レーザー光源10自体が波長ロック機能を備えたDFB(Distributed FeedBack)レーザーやDBR(Distributed Bragg Reflector)レーザーであってもよい。
【0031】
VBG12により波長がロックされたレーザー光19は、ボールレンズ13により固体レーザー結晶15へ集光される。このレーザー光19がポンプ光となり、固体レーザー結晶15が励起され、波長1064nmの基本波レーザー光20が発生する。基本波レーザー光20は、固体レーザー結晶15を挟むように設けられたミラー16と凹面型ミラー17により形成される光共振器14内で共振する。そして、光共振器14内に配置されたSHG素子18により、基本波レーザー光20の一部が波長変換され、高調波レーザー光21である波長532nmのG光が外部に出力される。
【0032】
なお、本実施の形態では、固体レーザー結晶15として、Ndが3%ドーピングされたYVO結晶を用いた。また、SHG素子18としては、MgをドーピングしたLiNbO基板に周期的に分極反転領域を形成した擬似位相整合型のものを用いた。MgをドーピングしたLiNbO基板は非線形定数が大きく、SHG素子の厚みを小さくできる。また、上記したように、光共振器14にはポンプ光であるレーザー光19が入射し、発生した基本波レーザー光20を光共振器14内に閉じ込め、凹面型ミラー17からは高調波レーザー光21が出射するように、固体レーザー結晶15の表面に形成したミラー16、SHG素子18および凹面型ミラー17には、それぞれの端面に誘電体多層膜が形成されている。
【0033】
そして、本実施の形態の固体レーザー装置1では、凹面型ミラー17がレーザー光19の光軸22に対して設定した傾斜角度θを設けて配置されている。すなわち、図1に示すように凹面型ミラー17の凹面の底部に垂直な垂線23とレーザー光19の光軸22とのなす角度をθとして、この傾斜角度θをあらかじめ設定した角度としている。このように設定した傾斜角度を設けて配置することで、基本波レーザー光20等が固体レーザー結晶15およびSHG素子18内を透過する場合に、通過領域の幅が広がる。これにより、局部的に過熱される領域がなくなり、熱分布の急峻性が改善され、比較的緩やかな熱分布とすることができる。したがって、固体レーザー結晶15やSHG素子18の損傷の発生を抑制でき、長期的に安定して高出力を保持することができる。また、高調波レーザー光21が横モードでマルチモードになるので、液晶表示装置のバックライトユニットの光源等に用いる場合に薄型で、かつ大面積化を容易に実現できる。
【0034】
図2から図4は、本実施の形態の固体レーザー装置1と従来構成の固体レーザー装置とのG光出力の比較データを示す図である。図2(a)は傾斜角度θ=0°の場合、すなわち従来構成の固体レーザー装置のG光出力のビーム形状を示す図で、図2(b)はポンプ光であるレーザー光(以下では、ポンプ光とよぶ場合もある)19の光量とG光出力との関係を示す図である。また、図3(a)は本実施の形態の固体レーザー装置1において、傾斜角度θ=0.2°とした場合のビーム形状を示す図で、図3(b)はポンプ光19の光量とG光出力との関係を示す図である。さらに、図4(a)は本実施の形態の固体レーザー装置1において、傾斜角度θ=0.3°とした場合のビーム形状を示す図で、図3(b)はポンプ光19の光量とG光出力との関係を示す図である。なお、図2から図4における測定においては、光共振器14の共振器長Lを10mmとし、凹面型ミラー17の曲率半径Rを20mmとした場合について説明する。
【0035】
図2に示すように、傾斜角度θ=0°(従来構成の固体レーザー装置)の場合には、ビーム形状は円形状で、シングルモードとなる。また、G光出力はポンプ光19の光量が2.5W付近で飽和して、その最大値が0.65Wとなった。さらに、ポンプ光19の光量が飽和するまでの光量範囲において、ポンプ光19の光量の増加にもかかわらずG光出力が減少する点Pが発生する現象も生じた。G光出力の飽和は、ポンプ光19の光量が2.5W付近になると固体レーザー結晶15の発熱が大きくなり、熱的飽和が発生するために発振の効率が低下して基本波レーザー光20の光量が飽和することによる。また、点Pでの出力の低下は、光共振器14の内部で高調波レーザー光21であるG光が干渉するために発生するものである。
【0036】
これに対して、本実施の形態の固体レーザー装置1では傾斜角度θを設けているので上記のような現象を抑制できる。
【0037】
例えば、凹面型ミラー17の傾斜角度θ=0.1°とすると、光共振器14内の電界分布に変化が生じて横モードがマルチ化する。
【0038】
さらに、凹面型ミラー17の傾斜角度θ=0.2°にすると、図3に示すように3個のビームを有する横モードとなる。このとき、G光出力の出力飽和が起こるポンプ光19の光量は2.8Wとなり、G光出力の最大値も0.7Wが得られた。さらに、光共振器14の内部での高調波レーザー光21であるG光の干渉による出力変動も抑制できた。これは、横モードがマルチ化することにより、固体レーザー結晶15の内部での熱分布が図2に示すシングルモードの場合に比べて広がり、局部的に過熱を生じる領域をなくすことができ、この結果、全体として緩やかな熱分布が得られることによる。そして、横モードがマルチ化すると、光共振器14の内部でのG光の干渉も生じ難くなるため、図2の点Pに示すようなG光出力の変動も発生し難くできる。なお、θ=0.2°とした場合でも、ポンプ光19の光量に対するG光出力の発生効率(スロープ効率)は図2に示すようなシングルモードの場合とほとんど変わらなかった。
【0039】
さらに、傾斜角度θ=0.5°とした場合には、図4に示すように5つのビームを有する横モードとなった。この場合、G光出力の出力飽和の生じるポンプ光19の光量は3Wまで大きくできたが、G光出力の最大値は0.7Wであり、θ=0.2°の場合と同じであった。また、スロープ効率はθ=0.2°の場合に比べてやや低下した。これは、SHG素子18を透過する際の基本波レーザー光18の断面積が拡がるためにSHG素子18の変換効率がやや低下することによる。なお、この傾斜角度の場合にも、G光出力の変動も観測されなかった。
【0040】
以上の結果からわかるように、G光出力の最大値はシングルモードを出力する従来構成の固体レーザー装置での0.65Wに対して、本実施の形態の固体レーザー装置1では0.7Wに大きくすることができた。なお、傾斜角度を種々変化させてビーム形状とG光出力とを測定した結果、傾斜角度θ=0.5°よりも大きくしても発振状態は維持されるが、発振効率が低下し、この結果G光出力が低下することが見出された。したがって、傾斜角度θの最適範囲としては、θ=0.1°〜0.5°が望ましいことが見出された。さらに、θ=0.2°〜0.4°の範囲とすることで、マルチビームのそれぞれのビーム形状が比較的そろい、かつG光出力の最大値も安定して得られることから、より好ましい範囲であることがわかった。
【0041】
また、凹面型ミラー17の曲率半径Rについても種々の形状について検討した結果、50mmより大きくするとマルチモード化し難くなることが見出された。したがって、曲率半径Rは50mm以下とすることが望ましい。また、曲率半径Rの下限値については、光共振器14の構成、すなわち共振器長L等の設計により最適な値を設定すればよい。
【0042】
図5は、本実施の形態にかかる固体レーザー装置1を用いた第1の例の画像表示装置30を示す図で、(a)は構成の概要を示す斜視図、(b)は画像変換デバイス31側から見た平面図、(c)は5A−5A線に沿って切断した断面の概略図である。なお、図5においては、それぞれの構成を理解しやすくするために分離して配置しているが、実際の構成においては図示しないベースプレート等に設置して全体を一体的に固定している。
【0043】
図5に示すように、この第1の例の画像表示装置30は基本的な構成として、画像変換デバイス31とこの画像変換デバイス31を照射するための照明光源40とを備えている。そして、画像変換デバイス31は液晶表示パネルからなり、照明光源40はR光源、G光源およびB光源から出射した照明用レーザー光44、45を液晶表示パネルの全面にわたり照射するバックライトユニットからなる。以下、照明光源40をバックライトユニット40とし、画像変換デバイス31を液晶表示パネル31として説明する。なお、図5に示す第1の例の画像表示装置30では、G光源に本実施の形態の固体レーザー装置1を用いており、R光源とB光源とは半導体レーザー光源41を用いている。
【0044】
最初に、照明光源であるバックライトユニット40の構成について説明する。バックライトユニット40は、R光源とB光源とを一体化して構成してなる半導体レーザー光源41と、この半導体レーザー光源41から出射したR光とB光とが合波された照明用レーザー光44を一方の主面部43aから出射する導光板43を備えている。R光とB光については、半導体レーザー光源41内に設けられているビームエキスパンダー(図示せず)を用いて端面導光板42の端面部の大きさとほぼ同じ程度に拡げられた後、端面導光板42の端面部から端面導光板42に照明用レーザー光44が入射される。なお、本実施の形態の半導体レーザー光源41は、R光とB光とをそれぞれ発光する半導体レーザー光源を一体化し、R光とB光とが合波されて照明用レーザー光44として出射するように構成されている。
【0045】
端面導光板42には、一定のピッチで半透過ミラー42aが設けられており、一定の拡がりを有して入射した照明用レーザー光44は半透過ミラー42aにより一部が反射して導光板42の端面部43cに入射し、残りは次の半透過ミラー42aに入射する。そして、この半透過ミラー42aでも同様に一部が反射して導光板43の端面部43cに入射する。以下、これを順次繰り返すことで、端面導光板42から導光板43の端面部43cの全面にわたり照明用レーザー光44を入射させることができる。導光板43に入射した照明用レーザー光44は、導光板43の側面部や他方の主面部43bで反射および散乱し、一方の主面部43aに向かう照明用レーザー光44が最終的に一方の主面部43aから出射する。
【0046】
これに対して、G光源である固体レーザー装置1は、導光板43の端面部43cに対向する他方の端面部43dに配置されている。本実施の形態では、3つの固体レーザー装置1を他方の端面部43d側に配置しており、これらの固体レーザー装置1により導光板43の他方の端面部43dの全面にわたりG光、すなわち照明用レーザー光45を入射させることができる。そして、導光板43内に入射した照明用レーザー光45は、R光とB光とを合波した照明用レーザー光44と同様に導光板43の側面部や他方の主面部43bで反射および散乱し、一方の主面部43aに向かう照明用レーザー光45が最終的に一方の主面部43aから出射する。これにより、導光板43の一方の主面部43aの全面からR光、B光およびG光からなる照明用レーザー光44、45が均一な輝度を有して出射する。
【0047】
つぎに、液晶表示パネル31の構成について説明する。液晶表示パネル31は、透過型または半透過型構成で、例えばTFTアクティブマトリクス型構成からなり、表示領域には図5に示すように赤色画素部(Rサブピクセル)R、緑色画素部(Gサブピクセル)Gおよび青色画素部(Bサブピクセル)Bを1つの画素35とする多数の画素が設けられており、TFTにより駆動される。そして、2枚のガラス基板32、34の間に液晶33が設けられており、この液晶33を駆動するためのTFTはガラス基板32、34のいずれか一方に形成されているが、図示していない。また、ガラス基板32、34のそれぞれの面には偏光板36、37が設けられている。以上のように、本実施の形態の液晶表示パネル31は、従来から用いられている構成と同じであるので、これ以上の説明を省略する。
【0048】
以上の構成からなる画像表示装置30は、G光源である固体レーザー装置1が横モードで、かつマルチモードであることから、導光板43の他方の端面部43dの長さ方向に容易に拡げることができる。この結果、画像表示装置30の構成、特にバックライトユニット40の構成を簡略化できる。
【0049】
図6は、本実施の形態にかかる固体レーザー装置1を用いた第2の例の画像表示装置50を示す図で、(a)は照明光源51側から見た平面図、(b)は6A−6A線に沿って切断した断面の概略図である。この第2の例の画像表示装置50も基本的な構成として、画像変換デバイス31とこの画像変換デバイス31を照射するための照明光源51とを備えている。そして、画像変換デバイス31は液晶表示パネルからなり、照明光源51はR光源、G光源およびB光源から出射した照明用レーザー光62を液晶表示パネルの全面にわたり照射するバックライトユニットからなる。以下、照明光源51をバックライトユニット51とし、画像変換デバイス31を液晶表示パネル31として説明するが、液晶表示パネル31については第1の例の画像表示装置30と同じであるので説明を省略する。なお、図6に示す第2の画像表示装置50では、G光源に本実施の形態の固体レーザー装置1を用いており、図3に示すような3つのビームを有する横モードのレーザー光を出射するものを用いている。そして、R光源とB光源とは半導体レーザー光源52、53を用いているが、このR光源とB光源である半導体レーザー光源52、53は複数の活性層を設けており、G光源の固体レーザー装置1と同様に3つのビームを出射する構成としている。
【0050】
第2の例の画像表示装置50に用いるバックライトユニット51の構成について説明する。バックライトユニット51は、液晶表示パネル31の背面側に配置されており、その形状は液晶表示パネル31の形状と概略同じである。半導体レーザー光源52、53および固体レーザー装置1からそれぞれ出射したR光、B光およびG光は、ダイクロイックミラー54により合波されて照明用レーザー光62となり反射ミラー55に入射する。反射ミラー55により反射した照明用レーザー光62は、マイクロレンズアレイ56により拡げられて変換部用導光板61に入射する。変換部用導光板61に入射した照明用レーザー光62は、外周面で反射、拡散して光路変換部60に入射し、方向が変換されて端面入射型導光板57の第1の導光板58に入射する。そして、照明用レーザー光62は、この第1の導光板58中で反射、拡散して第2の導光板59に入射する。照明用レーザー光62は、さらに第2の導光板59で拡散して面全体として均一な輝度分布となった後、第2の導光板59から出射して液晶表示パネル31を照明する。これにより、液晶表示パネル31が照明され、画像が表示される。
【0051】
この場合に、半導体レーザー光源52、53および固体レーザー装置1から出射するR光、B光およびG光は、変換部用導光板61の面に平行な方向にそれぞれ3つのビームを有している。したがって、照明用レーザー光62を従来よりも簡単な光学系で拡げて変換部用導光板61の全面にわたり入射させることが可能となり、容易に大画面の画像表示装置を実現できる。さらに、スペックルノイズも有効に低減することができる。
【0052】
図7は、本実施の形態にかかる固体レーザー装置1を用いた第3の例の画像表示装置70を示す図で、(a)は照明光源71側から見た平面図、(b)は7A−7A線に沿って切断した断面の概略図である。この第3の例の画像表示装置70も基本的な構成として、画像変換デバイス31とこの画像変換デバイス31を照射するための照明光源71とを備えている。そして、画像変換デバイス31はこの第3の例においても液晶表示パネルからなり、照明光源71はR光源、G光源およびB光源から出射した照明用レーザー光77を液晶表示パネルの全面にわたり照射するバックライトユニットからなる。以下、照明光源71をバックライトユニット71とし、画像変換デバイス31を液晶表示パネル31として説明するが、液晶表示パネル31については第1の例の画像表示装置30で説明したものと同じであるので説明を省略する。
【0053】
図7に示す第3の画像表示装置70では、G光源に本実施の形態の固体レーザー装置1を用いており、図3に示すような3つのビームを有する横モードのレーザー光を出射するものを用いている。そして、R光源とB光源とは半導体レーザー光源を用いているが、このR光源とB光源である半導体レーザー光源は複数の活性層を設けており、G光源の固体レーザー装置1と同様に3つのビームを出射する構成としている。そして、この第3の画像表示装置70においては、R光源とB光源である半導体レーザー光源およびG光源である固体レーザー装置1とは、1枚の実装基板(図示せず)上に密接して実装し、R光、G光およびB光がともに比較的小さな領域から出射するように配置している。以下では、これを一体化光源72よぶ。
【0054】
一体化光源72から出射するR光、G光およびB光は、角部端面入射型導光板74の四隅にそれぞれ配置されている光路変換部73に導光されて、その光路を変換された後、角部端面入射型導光板74の第1の導光板75に入射される。なお、角部端面入射型導光板74の第1の導光板75は、図7に示すように四隅が曲面形状に加工されており、光路変換部73はこの曲面形状に沿った形状に設定されている。このようにすることにより角部端面入射型導光板74の全体にレーザー光を拡散させて、第2の導光板76から均一な輝度の照明用レーザー光77を射出することができる。
【0055】
以下、第3の例の画像表示装置70に用いるバックライトユニット71の構成について説明する。バックライトユニット71は、この画像表示装置70においては四隅の角部のすべてが曲面形状に加工された第1の導光板75とこの第1の導光板75に密接して配置された第2の導光板76からなる角部端面入射型導光板74と、第1の導光板75の上記角部に形成された曲面形状に沿って配置された光路変換部73と、光路変換部73にレーザー光を入射させる一体化光源72とを備えた構成からなる。そして、このバックライトユニット71は、液晶表示パネル31の背面側に配置されている。
【0056】
一体化光源72から出射したR光、B光およびG光は、光路変換部73に入射し、方向が変換されて角部端面入射型導光板74の第1の導光板75に入射する。そして、R光、B光およびG光は第1の導光板75中で反射、拡散して第2の導光板76に入射し、第2の導光板76でさらに拡散して面全体として均一な輝度分布となった後、照明用レーザー光77として出射し、液晶表示パネル31を照明する。これにより、液晶表示パネル31が照明され、画像が表示される。
【0057】
この場合に、一体化光源72から出射するR光、B光およびG光は、光路変換部73の曲面の長さ方向に拡がって入射するので、第1の導光板75の広い面積にわたり導光させることができる。しかも、一体化光源72と光路変換部73とを第1の導光板75の四隅にそれぞれ設けているので、これらからのレーザー光が混合することで均一な輝度分布を実現できる。この結果、均一な輝度分布を有する照明用レーザー光77により液晶表示パネル31を照明できるので、明るく、かつ色再現性に優れた画像表示装置70を実現できる。さらに、スペックルノイズも有効に低減することができる。
【0058】
なお、上記第3の画像表示装置70の場合には、第1の導光板75の四隅のそれぞれの角部に、光路変換部73および一体化光源72をそれぞれ配置したが、本発明はこれに限定されない。第1の導光板75の角部の1つのみに光路変換部73と一体化光源72を配置する構成でもよいし、あるいは2つの角部に配置する構成、あるいは3つの角部に配置する構成であってもよい。さらに、一体化光源72ではなく、R光、B光およびG光を発光する半導体レーザー光源と固体レーザー装置とを別々にしてもよい。この場合には、少なくとも3つの角部に光路変換部73を配置し、それぞれの位置にR光およびB光を発光するそれぞれの半導体レーザー光源とG光を発光する固体レーザー装置を配置する構成とすればよい。
【0059】
図8は、本実施の形態にかかる固体レーザー装置1を用いた第4の例の画像表示装置80を示す図で、(a)は照明光源81側から見た平面図、(b)は8A−8A線に沿って切断した断面の概略図である。この第4の例の画像表示装置80も基本的な構成として、画像変換デバイス31とこの画像変換デバイス31を照射するための照明光源81とを備えている。そして、画像変換デバイス31はこの第4の例においても液晶表示パネルからなり、照明光源81はR光源、G光源およびB光源から出射した照明用レーザー光85を液晶表示パネルの全面にわたり照射するバックライトユニットからなる。以下、照明光源81をバックライトユニット81とし、画像変換デバイス31を液晶表示パネル31として説明するが、液晶表示パネル31については第1の例の画像表示装置30で説明したものと同じであるので説明を省略する。
【0060】
図8に示す第4の画像表示装置80では、G光源に本実施の形態の固体レーザー装置1を用いており、図3に示すような3つのビームを有する横モードのレーザー光を出射するものを用いている。そして、R光源とB光源とは半導体レーザー光源を用いているが、このR光源とB光源である半導体レーザー光源は複数の活性層を設けており、G光源の固体レーザー装置1と同様に3つのビームを出射する構成としている。そして、この第4の画像表示装置80においても、第3の画像表示装置70の場合と同様に、R光源とB光源である半導体レーザー光源およびG光源である固体レーザー装置1とは、1枚の実装基板(図示せず)上に密接して実装し、R光、G光およびB光がともに比較的小さな領域から出射するように配置した一体化光源72を用いている。この一体化光源72は、角部端面入射型導光板82を構成する第1の導光板83の四隅に形成された曲面部83aに対向する位置に配置されている。そして、一体化光源72から出射するR光、G光およびB光は、この曲面部83aから第1の導光板83に入射する。第1の導光板83に入射したR光、G光およびB光は、第2の導光板84でさらに拡散して照明用レーザー光85として出射し、液晶表示パネル31を照明する。
【0061】
以下、第4の例の画像表示装置80に用いるバックライトユニット81の構成について説明する。バックライトユニット81は、この第4の例の画像表示装置80では四隅のうちのすべての角部が凹面形状からなる曲面部83aを有する第1の導光板83とこの第1の導光板83に密接して配置された第2の導光板84とからなる角部端面入射型導光板82と、第1の導光板83の上記曲面部83aに対向する位置に配置され、この曲面部83aを介して第1の導光板83にレーザー光を入射させる一体化光源72とを備えた構成からなる。そして、バックライトユニット81は、液晶表示パネル31の背面側に配置されている。
【0062】
一体化光源72から出射したR光、B光およびG光は、第1の導光板83の曲面部83aから第1の導光板83に入射する。この場合に、R光源とB光源とは複数の活性層を設けて3つのビームを出射する半導体レーザー光源を用いており、またG光源の固体レーザー装置1も同様に3つのビームを出射する構成としているので、これらのレーザー光が曲面部83aから入射したときに第1の導光板83中の全面に拡がり、かつ反射、拡散を生じる。そして、さらにこれらのレーザー光が第2の導光板84に入射し、第2の導光板84でさらに拡散して面全体として均一な輝度分布となった後、照明用レーザー光85として出射し、液晶表示パネル31を照明する。これにより、液晶表示パネル31が照明され、画像が表示される。
【0063】
この場合に、一体化光源72から出射するR光、B光およびG光は、第1の導光板83の曲面部83aから入射するので、曲面部83aによる屈折等により光路変化も生じる結果、第1の導光板83の広い面積にわたり導光させることができる。しかも、一体化光源72を第1の導光板83の四隅に設けているので、これらからのレーザー光が混合することでさらに均一な輝度分布の照明用レーザー光85を出射させることができる。この結果、均一な輝度分布を有する照明用レーザー光77により液晶表示パネル31を照明できるので、明るく、かつ色再現性に優れた画像表示装置80を実現できる。さらに、スペックルノイズも有効に低減することができる。
【0064】
なお、上記第4の画像表示装置80の場合には、第1の導光板83の四隅のそれぞれの角部に曲面部83aを設け、これに対向する位置に一体化光源72をそれぞれ配置したが、本発明はこれに限定されない。第1の導光板83の角部の1つのみに曲面部83aを設け、この曲面部83aに対向する一に一体化光源72を配置する構成でもよい。あるいは、2つの角部に曲面部83aを設けて、これらに対向する位置に一体化光源72をそれぞれ配置する構成としてもよい。あるいは、3つの角部に曲面部83aを設け、これらに対向する位置に一体化光源72を配置する構成としてもよい。さらに、一体化光源72ではなく、R光、B光およびG光を発光する半導体レーザー光源と固体レーザー装置とを別々にしてもよい。この場合には、少なくとも3つの角部に曲面部83aを設け、これらに対向する位置にR光およびB光を発光する半導体レーザー光源とG光を発光する固体レーザー装置をそれぞれ配置する構成とすればよい。
【0065】
図9は、本実施の形態の固体レーザー装置1を用いた第5の例の画像表示装置90の構成を示す概略図である。この第5の例の画像表示装置90は投射型の画像表示装置の構成からなるので、以下の説明では投射型表示装置90として説明する。この投射型表示装置90は、画像変換デバイス102、103、104と画像変換デバイス102、103、104を照射するための照明光源とを備えており、照明光源はR光源91、G光源92およびB光源93からなり、R光源91、G光源92およびB光源93のうちのG光源92は本実施の形態の固体レーザー装置1からなる。また、R光源91とB光源92とは半導体レーザー光源であり、G光源92の固体レーザー装置1と同様に複数のビームを出射するように複数の活性層を設けた構成からなる。さらに、この投射型表示装置90の場合には、画像変換デバイス102、103、104は2次元空間変調デバイスの1種である透過型液晶表示パネルからなり、照明光源を構成するR光源91、G光源92およびB光源93から出射するレーザー光に対応してそれぞれ配置されており、透過型液晶表示パネルを透過した映像光は合波プリズム105により合波された後に投射されるように構成されている。以下では、画像変換デバイス102、103、104については、透過型液晶表示パネル102、103、104として説明する。
【0066】
さらに具体的な構成について、図9をもとに詳細に説明する。R光源91、G光源92およびB光源93から出力されたレーザー光は、それぞれロッドインテグレータ94、95、96を用いて光量分布が均一化される。そして、R光源91から出射したレーザー光とB光源93から出射したレーザー光は、レンズ97、99を通して反射ミラー100、101に導かれ、反射ミラー100、101により光路が変換され、透過型液晶表示パネル102、104へそれぞれ導かれる。一方、G光源92から出射したレーザー光は、レンズ98を通して透過型液晶表示パネル103へ直接導かれる。透過型液晶表示パネル102、103、104を透過したそれぞれのレーザー光は合波プリズム105により合波され、出射レンズ106を透過して映像光として出力される。
【0067】
なお、光源制御回路107は上記R光源91、G光源92およびB光源93の光出力の制御を行う。そして、表示装置制御回路108は、映像表示信号に基づき3枚の透過型液晶表示パネル102、103、104をそれぞれ駆動する。すなわち、映像表示信号に基づき、R光源91からのレーザー光を受光する透過型液晶表示パネル102については赤色映像信号に対応する駆動、G光源92からのレーザー光を受光する透過型液晶表示パネル103については緑色映像信号に対応する駆動、B光源93からのレーザー光を受光する透過型液晶表示パネル104については青色映像信号に対応する駆動を、表示装置制御回路108により行う。
【0068】
なお、表示装置制御回路108は、必要に応じて光源制御回路107の制御も行ってもよい。例えば、黒表示に対応してR光源91、G光源92およびB光源93のレーザー光の発振を止める等の制御をしてもよい。あるいは、必要に応じて、R光源91、G光源92あるいはB光源93のレーザー光の出力を可変してもよい。このような制御を行うことで、表示画質の改善や消費電力の低減等も実現することができる。なお、透過型液晶表示パネル102、103、104は、従来から透過型液晶表示装置に用いられている構成、例えばポリシリコンTFT駆動回路を設けたパネル構成等を用いることができるので説明を省略する。
【0069】
この投射型表示装置90は、RGBそれぞれの光源の光が単色光で色純度がよいレーザー光源を用いているため、表示可能な色範囲が拡がり、色純度が高く、鮮やかな画像の表示を可能とすることができる。また、光源にランプを用いる場合に比べて低消費電力とすることもできる。さらに、マルチビームの固体レーザー装置1と半導体レーザー光源とを用いているので、光学系を簡略にすることができ、低コストの画像表示装置を実現できる。
【0070】
なお、本実施の形態の画像表示装置においては、R光、G光およびB光を発光するレーザー光源を用いたが、さらに別の色を発光するレーザー光源を加えてもよい。また、本発明の固体レーザー装置は本実施の形態の画像表示装置の構成に限定されることはなく、表示装置の照明用として用いるものであれば特に制約なく適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の固体レーザー装置によれば、簡単な構成により固体レーザー結晶や波長変換素子の損傷を防止でき、長寿命で、かつ高出力とすることができ、大画面の薄型表示装置や投射型表示装置等の画像表示装置分野に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施の形態にかかる固体レーザー装置の構成図
【図2】(a)傾斜角度θ=0°の場合、すなわち従来構成の固体レーザー装置のG光出力のビーム形状を示す図(b)ポンプ光であるレーザー光の光量とG光出力との関係を示す図
【図3】本実施の形態の固体レーザー装置において、(a)傾斜角度θ=0.2°とした場合のビーム形状を示す図(b)ポンプ光の光量とG光出力との関係を示す図
【図4】本実施の形態の固体レーザー装置において、(a)傾斜角度θ=0.3°とした場合のビーム形状を示す図(b)はポンプ光の光量とG光出力との関係を示す図
【図5】本実施の形態にかかる固体レーザー装置を用いた第1の画像表示装置の(a)構成の概要を示す斜視図(b)導光板の一方の主面部側から見た平面図(c)5A−5A線に沿って切断した断面の概略図
【図6】本実施の形態にかかる固体レーザー装置を用いた第2の画像表示装置の(a)導光板側から見た平面図(b)6A−6A線に沿って切断した断面の概略図
【図7】本実施の形態にかかる固体レーザー装置を用いた第3の例の画像表示装置を(a)照明光源側から見た平面図(b)7A−7A線に沿って切断した断面の概略図
【図8】本実施の形態にかかる固体レーザー装置を用いた第4の例の画像表示装置を(a)照明光源側から見た平面図(b)8A−8A線に沿って切断した断面の概略図
【図9】本実施の形態の固体レーザー装置を用いた第5の画像表示装置の構成を示す概略図
【符号の説明】
【0073】
1 固体レーザー装置
10,41,52,53 半導体レーザー光源
11 ロッドレンズ
12 VBG
13 ボールレンズ
14 光共振器
15 固体レーザー結晶
16 ミラー
17 ミラー(凹面型ミラー)
18 擬似位相変換型波長変換素子(SHG素子)
19 レーザー光(ポンプ光)
20 基本波レーザー光
21 高調波レーザー光(G光)
22 光軸
23 垂線
30,50,70,80 画像表示装置
31 画像変換デバイス(液晶表示パネル)
32,34 ガラス基板
33 液晶層
35 画素
36,37 偏光板
40,51,71,81 照明光源(バックライトユニット)
42 端面導光板
42a 半透過ミラー
43,51 導光板
43a 一方の主面部
43b 他方の主面部
43c 端面部
43d 他方の端面部
44,45,62,77,85 照明用レーザー光
54 ダイクロイックミラー
55 反射ミラー
56 マイクロレンズアレイ
57 端面入射型導光板
58,75,83 第1の導光板
59,76,84 第2の導光板
60,73 光路変換部
61 変換部用導光板
72 一体化光源
74,82 角部端面入射型導光板
83a 曲面部
90 画像表示装置(投射型表示装置)
91 R光源
92 G光源
93 B光源
94,95,96 ロッドインテグレータ
97,98,99 レンズ
100,101 反射ミラー
102,103,104 画像変換デバイス(透過型液晶表示パネル)
105 合波プリズム
106 出射レンズ
107 光源制御回路
108 表示装置制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ用のレーザー光を出射する半導体レーザー光源と、
前記レーザー光の入射により励起され基本波レーザー光を発振する固体レーザー結晶および前記固体レーザー結晶を挟む位置にそれぞれ配置されたミラーを含み構成される光共振器と、
前記光共振器の内部に配置され、前記基本波レーザー光の波長を変換する擬似位相整合型波長変換素子とを備え、
前記ミラーのうちの1つが前記レーザー光の光軸に対して設定した傾斜角度を設けて配置されていることを特徴とする固体レーザー装置。
【請求項2】
前記擬似位相整合型波長変換素子により変換された高調波レーザー光を出射する側に設けた前記ミラーが凹面型ミラーであり、前記凹面型ミラーを前記レーザー光の前記光軸に対して設定した傾斜角度としたことを特徴とする請求項1に記載の固体レーザー装置。
【請求項3】
前記凹面型ミラーの曲率半径が50mm以下であることを特徴とする請求項2に記載の固体レーザー装置。
【請求項4】
前記凹面型ミラーの前記傾斜角度を0.1°〜0.5°の範囲としたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の固体レーザー装置。
【請求項5】
前記半導体レーザー光源は、前記レーザー光の発振波長を固定する手段を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の固体レーザー装置。
【請求項6】
画像変換デバイスと前記画像変換デバイスを照射するための照明光源とを備えた画像表示装置であって、
前記照明光源は少なくとも赤色光、緑色光および青色光を発光するレーザー光源からなり、前記レーザー光源のうちの少なくとも1つが請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の固体レーザー装置からなることを特徴とする画像表示装置。
【請求項7】
前記緑色光を発光するレーザー光源として前記固体レーザー装置を用い、前記赤色光と前記青色光とを発光するレーザー光源として半導体レーザー光源を用いたことを特徴とする請求項6に記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記赤色光と前記青色光とを発光する前記半導体レーザー光源は、複数の活性層を有し複数のビームを出射する構成からなることを特徴とする請求項7に記載の画像表示装置。
【請求項9】
前記画像変換デバイスは液晶表示パネルからなり、前記照明光源は前記赤色光源、前記緑色光源および前記青色光源から出射したレーザー光を前記液晶表示パネルの全面にわたり照射するバックライトユニットからなることを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項10】
前記バックライトユニットは、
四隅のうちの少なくとも1つの角部が曲面形状に加工された第1の導光板と前記第1の導光板に密接して配置された第2の導光板からなる角部端面入射型導光板と、
前記第1の導光板の前記角部に形成された曲面形状に沿って配置された光路変換部と、
前記光路変換部に前記レーザー光を入射させる前記赤色光源、前記緑色光源および前記青色光源とを備えた構成からなることを特徴とする請求項9に記載の画像表示装置。
【請求項11】
前記バックライトユニットは、
四隅のうちの少なくとも1つの角部が凹面形状からなる曲面部を有する第1の導光板と前記第1の導光板に密接して配置された第2の導光板とからなる角部端面入射型導光板と、
前記第1の導光板の前記曲面部に対向する位置に配置され、前記曲面部を介して前記第1の導光板に前記レーザー光を入射させる前記赤色光源、前記緑色光源および前記青色光源とを備えた構成からなることを特徴とする請求項9に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−259854(P2009−259854A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−111275(P2007−111275)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】