説明

固体ー液体濾過用布及び濾過装置

【課題】固体ー液体濾過用布及び濾過装置
【解決手段】本発明は、固体ー液体濾過用布を作成する方法、固体ー液体濾過用布、及び固体ー液体濾過用布が内設されたフィルタに関する。濾過用布(7)には、織成中に長さが大幅に変化し、自由な長さでかかる糸(13b)が設けられている。糸(13b)の長さを大幅に短縮できる場合には、布の表面(14)の側の濾過部分(15)が波形形状になり、布に大きな濾過面積を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体ー液体濾過用布の作成方法に関し、この方法は、第1の表面と第2の表面を備えた固体ー液体濾過用布を織成することと、上記織成において、複数の縦方向ポリマ糸と複数の横方向ポリマ糸を採用することと、固体ー液体濾過用布に、混合物中の液体の、布透過による固体ー液体濾過を可能にする透過性を提供する一方で、上記混合物からの固体が布を通過することを防止することとを備える。
【0002】
本発明はさらに固体ー液体濾過用布に関し、この固体ー液体濾過用布は、第1の表面及び第2の表面と、複数の縦方向ポリマ糸及び複数の横方向ポリマ糸と、さらに、混合物中の液体を上記布を透過して固体ー液体濾過させる透過性を有し、その一方で上記混合物からの固体が上記布を通過することを防止する固体ー液体濾過用布と、を備えている。
【0003】
本発明は、またさらに固体ー液体濾過装置に関し、上記固体ー液体濾過装置は、複数の開口部を有する少なくとも1つのフィルタ面と、上記濾過の最中に、上記フィルタ面を回転方向に移動させる手段と、さらに、各フィルタ面に対して配置した固体ー液体濾過用布とを備え、上記固体ー液体濾過用布は、固体ー液体濾過する混合物中の液体を通し、また、上記混合物からの固体が上記布を通過してしまうことを防止するように構成された、透過性を有している。
【0004】
例えば採鉱業、金属の精製、森林業、化学産業、また食品/薬剤の製造プロセスでは、固体と液体の混合物とから液体と固体粒子とを分離する固体ー液体濾過が必要である。固体ー液体濾過を行うための、異なる動作原理及び性質を有する様々な機械的濾過装置が開発されてきた。公知の装置には、垂直及び水平に配置されたチャンバフィルタ、ベルトフィルタ、二重布プレス、水平フィルタ、ディスク及びドラムフィルタが含まれる。これら全ての装置において、圧力差を用いることによって、液相と固相とを少なくとも部分的に分離するという濾過の原理が用いられている。さらに、機械的固液フィルタでは、濾過装置のフィルタ表面に、濾過層として機能する濾過用布が設けられている。いくつかの濾過装置では、濾過の最中に濾過用布が移動され、適切なローラにより、連続して、又は周期的に制御される。さらに、例えばディスクフィルタ及びドラムフィルタでは、被処理混合物を収容した容器内において、濾過用布を設けたフィルタ表面が移動され、布の表面上に固体を捕獲する。フィルタ表面は、濾過用布の外面上に堆積した固体を濾過用布から取り除くように誘導するためのドクターブレード等に対して移動される。
【0005】
固液フィルタの容量に影響を与える要因は、フィルタの濾過面積の大きさである。例えば、ディスク又はドラムフィルタでは、直径を増加することで濾過面積を拡大することができる。しかしこの場合、フィルタの大きさが増加すると同時に、このために必要なスペースも都合の悪いことに増加してしまい、フロア範囲毎の生産スペースの効率が低下しかねないという問題が生じる。この問題を解決するために、波形セクタ要素側、つまりフィルタ表面を有するドラムフィルタが開発された。波形のフィルタ表面により、ディスクフィルタに従来よりも広い濾過面積を設けることが可能になる。こうすることで、フィルタの外径を大幅に変更しなくても、ディスクフィルタの濾過容量が増加する。しかし、この解決法の問題は、ディスクフィルタのフィルタセクタを、波形フィルタ表面を設けたセクタと交換する必要がある点である。セクタの交換によって、多額の余分な経費が生じる。これに加え、セクタが代わることで、通常、濾過装置の他の構成部品及び制御パラメータにも変化が生じるため、経費及び問題が発生する。したがって、問題は、既存の濾過装置の容量をどのように増加するかである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、新規かつ改善された固体ー液体濾過用布、この濾過用布を作成する方法、またさらに、新規タイプの固体ー液体濾過用布を設けた濾過装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の方法は、濾過用布の少なくとも第1の表面を波形にして、上記布が、上記布から離れて開放した波形を設けた少なくとも1つの最外接触面を有するようにすることを特徴とする。
【0008】
本発明の固体ー液体濾過用布は、濾過用布の上記少なくとも第1の表面に、上記布から離れて開放した複数の波形を有する波形形状の最外接触面が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明の濾過装置は、フィルタ面に対して配置された上記固体ー液体濾過用布の少なくとも外面が波形であり、少なくとも被濾過混合物に対して配置した接触面が、上記濾過用布から離れて開放している複数の波形を備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明の本質的概念は、機械的固体ー液体濾過装置のフィルタ表面に対して固体ー液体濾過用布を配置することであり、この布は少なくとも1つの波形外面を備える。これによりこの布は、この布から離れて開放した複数の波形を設けた少なくとも1つの最外接触面を備える。
【0011】
本発明の利点は、濾過装置の容量を単純かつ安価な方法で増加できる点である。本発明による固体濾過用布を、通常の濾過装置のフィルタ表面に対して配置して、フィルタの外面に波形表面を設けることができる。一般に、ディスクフィルタ及びドラムフィルタのフィルタ表面は実質的に平坦である。本発明によれば、このような平坦なフィルタ表面の面積を単純な方法で増加することができる。波形表面のために、布の面積が従来の平坦な表面と比べ20%以上広くなる。本発明の解決法では、濾過装置の構造自体を変更する必要は全くない。さらに、濾過用布の波形は外方へ開放しているため、濾過サイクルの除去工程における固体ケークの除去が簡単である。
【0012】
本発明の実施形態の本質的概念は、固体ー液体濾過用布が複数の糸を備えており、濾過用布の織成段階後にこれら糸の長さが大幅に縮小され、この長さの変化によって布の表面上の濾過部分が波形形状化する。これにより、長さが変化する糸が、波形の底部において濾過部分と結合する。
【0013】
本発明の実施形態の本質的概念は、固体ー液体濾過用布が複数の熱収縮性の高い糸を備え、これらの糸は自由な長さでかかる、つまり、収縮可能な糸とこれに対する断面方向へ向かう糸との間の距離が比較的長いというものである。したがって、結合点どうしの間に複数の糸が存在する。熱収縮可能な糸は初期長さを有し、熱処理を経験する際に縦方向へ大幅に縮小するように配置されている。このような糸の材料は、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、又はフッ化ポリビニリデン(PVDF)であってよい。熱処理作用の下で、熱収縮可能性の高い糸が結合点を相互に向かって引くと、布の濾過部分の、結合点間の部分が波形形状になる。熱収縮可能性の高い糸は、実質的に、巻き付いたり、布内に薄い底部及び中間層を構成することなく、布の底部に通っている。この実施形態の利点は、特に、布に比較的硬質な波形表面を達成できる点である。底部を通っている熱収縮性の高い糸によって、布に向かう力に関係なく、布の表面が波形に維持される。さらにこの波形構造のために、濾過用布を、濾過中にフィルタに向かう力の一部分を受容できるほど硬質にすることができる。この場合、フィルタのフレームとフィルタ表面を通常のように固くする必要はなく、さらに、より軽量の材料で製造する、あるいはより軽量の構造を使用することができる。これにより濾過装置の製造コストを低減できる。
【0014】
本発明の一実施形態の本質的な概念は、固体ー液体濾過用布が、自由な長さでかかる複数の伸張可能な糸を備える、つまり、伸張可能糸と、これに対して横方向に向かう糸との間の結合点どうしの間の距離が、比較的長いというものである。したがって、結合点どうしの間には複数の横方向糸が存在する。伸張可能な糸は静止長さを有し、これを縦方向に伸張させて元の長さよりも長くすることができる。この糸は、伸長可能な糸に向かう力が停止した際に、実質的に元の長さに復元される。このような糸の材料には、例えばポリアミド(PA)、ポリウレタン(PU)、又は、例えば米国特許公報6,030,905号による弾性の高い糸が含まれる。固体ー液体濾過用布の織成中に、伸張可能な糸が第1長さに伸張される。やはり織成中に、布がこれに作用する織成力から解放されると、伸張可能な糸は静止長さに戻る傾向にある。これにより伸張可能な糸の長さが減少し、その結果、濾過用布の表面が波形化する。外面が波形のため、このような濾過用布は広い濾過面積を有する。さらに、濾過用布の構造は可撓性であるため、濾過用布が濾過装置のフィルタ表面に対して締着することができる。可撓性のある布は、フィルタ表面に対する定位置に上手く維持される。この実施形態のさらなる利点は、採鉱業のディスクフィルタにおいて、伸張可能な糸がフィルタバッグを拡張させ、固体ケークの除去に貢献することにより、スナブブローを用いた固体ケークの除去が可能な点である。
【0015】
本発明の一実施形態の本質的な概念は、固体ー液体濾過用布の表面及び底部の両方の側の表面が波形であるというものである。これにより、長さが大幅に変化する糸が、波形層の中間に希薄な構造の中間部分を構成する。濾過用布の表面上及び底部における波形部分は、左右対称又は対角的に配置することができる。さらに、表面側の濾過部分が実際の濾過層として機能でき、また、底部側の濾過部分が支持構造として機能できる。表面及び底部の濾過部分に、類似の、あるいは異なる糸及び結合部を使用することができる。長さが変化する糸を濾過用布の構造の内部における残り部分に結合させれば、上方に開放した波形形状を通過することはない。
【0016】
本発明の一実施形態の本質的な概念は、固体ー液体濾過用布の波形表面の面積が、均等な表面と比べ10〜30%広いというものである。
【0017】
本発明の一実施形態の本質的な概念は、波形表面の面積が波形頂点を備え、また、上記頂点どうしの間の側方距離が10〜40mmであるというものである。
【0018】
本発明の一実施形態の本質的な概念は、固体ー液体濾過装置がドラムフィルタであり、固体ー液体濾過用布が、溝と頂点がドラムフィルタの軸方向に向かう形で配置されているというものである。したがって、溝と頂点は機械方向に対して斜めに位置している。これにより、長さが大きく変化する糸が、固体ー液体濾過用布をドラムフィルタの外周周囲に緊締させることができる。
【0019】
本発明の一実施形態の本質的な概念は、固体ー液体濾過装置がドラムフィルタであり、固体ー液体濾過用布が、この内部の溝と頂点がドラムフィルタの円周方向に向かう形で配置されているというものである。したがって、溝と頂点は機械方向に対して実質的に平行である。この解決法は、例えば、固体ケークを機械的なドクターブレードによって除去する場合に適用できる。
【0020】
本発明の一実施形態の本質的な概念は、固体ー液体濾過装置がディスクフィルタであり、また、固体ー液体濾過用布が、この内部の溝と頂点がドラムフィルタの半径方向に向かう形で配置されているというものである。したがって、溝と頂点は機械方向に対して横方向に向いている。これにより、長さが大きく変化する糸が、固体ー液体濾過用布をディスクフィルタのセクタ要素の周囲に緊締させることができる。
【0021】
本発明の一実施形態の本質的な概念は、固体ー液体濾過装置がディスクフィルタであり、また、固体ー液体濾過用布が、この内部の溝及び頂点の回転方向がディスクフィルタの半径方向から1°〜30°の角度で逸脱するように配置されているというものである。これにより、特定の装置組み立て品内での固体ケークの除去が改善される。
【0022】
本発明の一実施形態の本質的な概念は、濾過用布が、固液フィルタのフィルタ表面に対して別個の部品であるフィルタ要素を構成しており、また、フィルタのフィルタ表面に対して緊締して配置することができる。濾過用布は、フィルタ表面が支持層として機能する状態で、組み立て品内の実際の濾過層として機能する。
【0023】
次に、本発明を添付の図面を参照してより詳細に記述する。
【0024】
図面では、本発明は明瞭性の目的から簡略化した形で示されている。図中で、同様の部品は同一の参照符号で示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、代表的なディスクフィルタの原理を示す。ディスクフィルタは、容器1を備え、供給チャネル2からこの容器1内に、固体と液体からなる溶液が供給される。ディスクフィルタは、水平シャフトを中心として回転される管状フレーム部分3と、複数の実質的に三角形をしたセクタ要素4とを備えており、これらセクタ要素4は、円盤状構造を構成する形で、フレーム部分の周囲上に相互に近接して配置されている。セクタ要素4の三角形をした側面には複数の開口部5が設けられており、これら側面は、濾過用布7を取り付けるフィルタ面6として機能する。明瞭性の目的から、図1は、セクタ要素4のうちの1つだけの上に濾過用布を描いて示し、さらに、開口部5を1つだけ誇張した大きさで示している。一般に、袋状のフィルタ要素は濾過用布7で作られ、セクタ要素4の上から被せて緊密に配置することができる。濾過用布7は、フィルタ内で実際の濾過層として機能する。ディスクフィルタが容器1内の混合物8中でA方向に回転されると、同時に、セクタ要素4内にアンダープレッシャーが発生する。これにより、液体が濾過用布7を通過し、さらにフィルタ面6に設けた開口部5を通過して、セクタ要素4内へ流れることができる。固体は濾過用布7の表面上に残り、次の濾過サイクルの開始前に、ここからドクターブレード9、圧力媒体噴射等によって、排出穴10へと除去される。
【0026】
図2は、ドラムフィルタの原理を示す。ドラムフィルタは、フレーム部分3の周囲に中空の縦空間11が設けられ、この空間の外周部がフィルタ面6として機能する点において、上述のディスクフィルタと異なっている。図2では、明瞭性の目的で、このような空間11の1つだけの構造をより詳細に示している。同図に示すように、フィルタ面6には複数の開口部5が設けられている。ドラムフィルタの周囲に濾過用布7が被せられている。濾過用布7は、交換可能なフィルタ要素を形成する1つ以上の部品によって構成することができる。明瞭性の目的で、図2では濾過用布7を破線で示している。ドラムフィルタは、被処理混合物8の入った容器1内の自身の縦方向軸を中心としてA方向へ回転される。次の濾過サイクルが開始される前に、濾過用布7の表面上に生成された固体ケークは、ドクターブレード等を用いて取り除き、排出穴10へ排出されることができる。
【0027】
図3は、織成され、まだ熱処理していない状態にある固液用濾過用布の、非常に簡素化した断面図を示す。固体ー液体濾過用布7は、複数の縦方向糸12を複数の横方向糸13と結合させて織成することができる。織機内で、縦方向糸12は経方向にあり、横方向糸13は緯方向にあってよい。横方向糸13は2層になっている。濾過用布7の表面14の側を通る横方向糸13aが、縦方向糸12と共に、濾過用布7の表面14の側に濾過部分15を構成している。これらの糸と濾過部分15の織成構造は、液体は通すが、固体粒子は布7の表面14の側に残すことができる密度を有するように設計されている。異なる織成及び別の構造を濾過部分15の織成に適用してもよい。
【0028】
これに対し、濾過用布7の底部16の側には、縦方向糸12と結合している複数の熱収縮可能性の高い横方向糸13bが設けられ、濾過用布7の底部16の側に、非常にまばらな、つまり透過性の高い底部層17を構成している。さらに、高収縮性糸13bは自由な長さである、つまり、結合点18間の距離L1が長い。実際に、結合点18間の距離L1は、15本以上の縦方向糸12の長さにわたる長さであってよい。場合によっては、距離L1は、最大で55本の縦方向糸12の長さにわたっていてよい。さらに、高収縮糸13bは、濾過用布7の底部16側に、縦方向糸12が巻き付くことなく、可能な限り直線的に通っている。
【0029】
図4は、図3の濾過用布7に、織成後に熱処理を施した状態を示す、非常に簡素化した図である。糸13の長さが熱の作用によって大幅に短縮され、結合点18どうしが接近する、つまり、距離L2が元の距離L1よりも明らかに短くなる。表面14側を通る横方向糸13aは、実質的に非熱収縮性であるか、又は底部層糸13bよりもかなり収縮度が低いため、熱処理の作用によって濾過部分15の長さに大きな変化が生じることはない。底部層17の糸13bの長さが大幅に変化すると、この収縮によって生成された力により、糸13aが、かくして濾過部分15全体が波形化する。これにより、結合点18が波形の底部に位置するようになる。波形形状の寸法、つまり、波形の頂上の高さHと、波形の頂上どうしの間の距離Mは、特に収縮の大きさと、結合点18どうしの間の距離L1とに依存する。頂上の高さHは、2〜12mmであってよく、頂上どうしの間の距離Mは、10〜40mmであってよい。頂上のところにおいて、糸13aと糸13bの間の最大距離Pは、1.5〜11.5mmであってよい。さらに、波形は、高収縮糸13bと他の横方向糸13aとの間の収縮差の大きさによって影響される。糸13bの収縮は、糸13aの収縮よりも数倍大きい。この収縮は、例えば規格SFS−EN13844に従って決定することができる。
【0030】
場合によっては、濾過用布は、横糸である糸12と、これに関連した、織成中に長さが縦方向に大きく変化する糸13bとで織成することもできる。また、収縮性の高い縦方向糸12を濾過用布中に配することも可能である。このような糸12は、収縮性の高い横方向の糸13bよりも低い温度で収縮するように選択されてよい。これにより、例えば、収縮可能な縦方向糸12がドラムフィルタの軸方向に延び、横方向糸13bがドラムの円周方向に延びているドラムフィルタ要素を、濾過用布7で作成することが可能となる。この場合、フィルタ要素に低温の第1熱処理を施して、フィルタ要素をドラムフィルタの外周に軸方向にて正確に定着させることができる。次に、より高温の熱処理を実施して、横方向糸13bを大幅に収縮させ、フィルタ要素をドラムフィルタの外周にしっかりと緊締させることができる。こうすることで、ドラムフィルタの軸方向に溝と頂上が形成される。
【0031】
図1、図2は、波形の固体ー液体濾過用布の溝と頂点がフィルタ面で通る様子を破線30で示している。
【0032】
濾過用布7の底部層17に他のタイプの高収縮糸を採用することも可能である。糸13bは必ずしも熱収縮可能である必要はなく、別の物理又は化学処置を布に施すことで縦方向収縮する糸を採用することもできる。
【0033】
図3は、結合点18が布7の波形接触面の反対側に在る状態をさらに示す。即ち、結合点18は、波形の底部に位置している。この結果、長さが大幅に変化する糸13bは、接触面上の波形を通過しないが、波形は布7から離れる方向に開放している。これにより、固体ケークが布7の接触面に取着されることが回避されるため、取り除く段階において問題が全く生じなくなる。
【0034】
明瞭性の目的から、図5から図9には横方向糸を全く示していない。さらに、明瞭性を高めるために、同図をあるいは簡略化し、本発明の特徴特性を強調することもできる。
【0035】
図5は、まだ織機内でその全長にわたってB方向に伸張した状態にある、別の固体ー液体濾過用布7の原理を示す。この場合、複数の伸張可能な糸13bが底部16の側に設けられており、これらの糸に縦方向の力を向けることでその長さを延ばしたり、B方向に作用する力を停止することで実質的に元の長さに戻したりすることができる。織成の最中、布の縁が織機に固定されているため、縦方向への力が伸張可能な糸13bに向けられる。布7は、織機から解放されると、図6に示す静止位置に関連した形態をとる。伸張可能糸13b内部に蓄積された縦方向の力がこの糸の長さを短くする傾向にある場合に、結合点18どうしの間の初期距離L1が距離L2に変化する。その結果、布7の表面14上の濾過部分15が波形形状となる。図7は、開口部5を設けたフィルタ面6に、濾過用布7を被せて配した状況をさらに示す。セクタの頂上、フィルタに属する同様のフレーム部分の外周に配置されたフィルタ要素は、濾過用布7からなっていてよい。フィルタ要素は、静止位置にてフィルタのフレーム部分よりも例えば10〜20%小さく、したがって適所への設置時にはフィルタ要素をいくらか伸張させる必要があるような寸法であってよい。この場合、伸張可能糸13bの長さが延び、フィルタ要素をフィルタ面6に対して緊密に維持する力が糸13b内部に蓄積される。図7に示すように、距離L3は結合点18どうしの間の距離であり、距離L1とL2の中間の長さを有する。このような伸張可能な濾過用布7の利点は、適所への設置が比較的容易であり、さらに、濾過の最中に適所に上手く留まる点である。伸張可能糸13bの材料には、例えば米国特許公報6,030,905号によれば、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PU)、又は高弾性糸が挙げられる。
【0036】
図8は、第3の固体ー液体濾過用布7の原理をさらに示す。図8では熱処理前の布7を示し、図9では、熱処理後に、布内の熱収縮糸13bの長さが大幅に収縮した状態の布7を示している。前出の図に示されている解決法では底部の側に設けられていた濾過部分19が、ここでは対照的に固体ー液体濾過用布7の底部16の側に設けられているため、熱収縮可能性の高い糸13bから構成される薄い中間部分20が濾過部分15と19の間に設けられ、中間部分が実際の濾過に関わることがない。図9に示すように、熱処理後に、布7の表面14の側の濾過部分15の断面形状は波形となる。これにより、濾過用布7の濾過面積は、従来の濾過用布のものよりも実質的に大きくなる。この面積は、平坦な表面を持った布の10%、さらには30%大きくなる。さらに、濾過用布7の底部16の側の第2濾過部分19の断面形状も波形である。この場合、布7の底部16と頂上間の部分のフィルタ面6との間にはオープン空間が維持される。これらの空間内では、濾過用布7を通過した液体がフィルタ面6の開口部5へと流れることができる。第2濾過部分19は、外部濾過部分15よりも薄く作ることができる。
【0037】
図9では、結合点18は布7内部の波形接触面どうしの間に位置している。つまり、結合点18は布7内部の波形の底部に位置する。その結果、長さが大幅に変化する糸13bが接触面上の波形を通過せず、しかし、各接触面上の波形は布7から離れて自由に開放する。
【0038】
図3から図9による固体ー液体濾過用布7において、伸張可能糸、熱収縮可能性の高い糸、又は目的に適した他の糸のいずれかを採用することができ、その長さは所望の方法により大幅に変更することができる。図5から図9に示すように、伸張可能糸、熱収縮可能性の高い糸、又は類似の糸13bの断面の寸法は、他の平行糸13a、13cの断面寸法よりも大きくすることができる。糸13bの寸法は、波形形状を達成するのに十分な力を生成するように選択できる。これに対し、糸13a、13cを、布内で所望の濾過特性が達成される寸法にすることができる。
【0039】
布7は、図4から図9に例として示したものとは別の波形形状を有することもできることを述べる。例えば、図8、図9の解決法において、表面側の濾過部分15の頂点を、底部16側の濾過部分19の頂点とは別の点に配置することができる。これにより、この構造は対角的になる。
【0040】
さらに、図8、図9に示すような2重波形構造では、結合点18どうしの間の距離L1を、布の底部16の側と表面14の側とで、必要に応じて異なる距離にすることができる。
【0041】
上述ではディスクフィルタとドラムフィルタを例として説明したが、本発明は他タイプの機械的な固液フィルタに関連して適用される。
【0042】
図面及びこれに関連する説明は、本発明の概念を実証することのみを目的としている。本発明の詳細は、特許請求の範囲内で変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】固体ー液体濾過に適用できる濾過装置、つまりディスクフィルタを概略的に示す図である。
【図2】固体ー液体濾過に適した別の濾過装置、つまりドラムフィルタを概略的に示す図である。
【図3】織成後の、本発明の固体ー液体濾過用布の断面を概略的に示す図である。
【図4】熱処理後の、図1の固体ー液体濾過用布の断面を概略的に示す図である。
【図5】布が織機内にあり伸張された状態にある、第2固体ー液体濾過用布の原理を概略的に示す図である。
【図6】布が静止位置へ解放された状態にある、図5の固体ー液体濾過用布を概略的に示す図である。
【図7】フィルタのフィルタ表面に対して取り付けられている、図5、図6の固体ー液体濾過用布を概略的に示す図である。
【図8】長さが大きく変化する糸の長さが最長である状況にある、さらに別の固体液体濾過用布の原理を概略的に示す図である。
【図9】長さが大きく変化する糸の長さが大幅に短縮された状況にある、図8に示した固体ー液体濾過用布の原理を概略的に示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体ー液体濾過用布の作成方法であって、
第1の表面(14)と第2の表面(16)を備えた固体ー液体濾過用布(7)を織成することと、
前記織成において、複数の縦方向ポリマ糸(12)と複数の横方向ポリマ糸(13a、13b、13c)を使用することと、
前記固体ー液体濾過用布(7)に、混合物中の液体の、布透過による固体ー液体濾過を可能にする透過性を与える一方で、前記混合物からの固体が布を通過することを防止することとを具備する方法において、
前記布(7)の少なくとも第1の表面(14)を波形にして、前記布(7)が、前記布(7)から離れる方向に開放した波形を設けた少なくとも1つの最外接触面を有するようにすることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記布(7)の前記第2の表面(16)を実質的に平坦にけることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記布(7)の前記第1の表面(14)と第2の表面(16)を波形にすることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
固体ー液体濾過に適した透過性を有する濾過部分(15)を、前記布(7)の第1の表面(14)の側に織成することと、
前記布(7)の織成中に第1長さ(L1)を有する、熱収縮可能性の高い横方向ポリマ糸(13b)を織成することと、
前記熱収縮可能性の高い糸(13b)を結合点(18)にて前記縦方向糸(12)と結合することと、
結合点(18)どうしの間において、複数の縦方向糸(12)が前記熱収縮可能性の高い糸(13b)上に自由な長さでかかることを採用することと、
織成後の前記布(7)に熱処理を施して、この熱処理後に、高収縮糸が、前記第1長さ(L1)よりも短い第2長さ(L2)を有するようにすることと、さらに、
前記熱収縮可能性の高い糸と(13b)の長さの変化に比例して前記布(7)を大幅に収縮させ、この収縮によって前記布(7)の前記濾過部分(15)を波形形状にすることを特徴とする、前記全ての請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
固体ー液体濾過に適した透過性を有する濾過部分(15)を、少なくとも前記布(7)の第1の表面(14)の側に織成することと、
伸張可能な糸(13b)を前記布(7)に織成し、織成中に前記糸は、前記伸張可能な糸(13b)が前記織成中に第1長さ(L1)を有する形で縦方向の力に晒されることと、
さらに、前記結合点(18)にて、前記伸張可能な糸(13b)を、前記濾過部分(15)の前記縦方向糸(12)と結合することと、
結合点(18)どうしの間において、複数の縦方向糸(12)が前記伸張可能な糸(13b)上に自由な長さでかかることを採用することと、
織成後に前記布(7)を解放して、前記伸張可能な糸(13b)が、前記第1長さ(l1)よりも短い第2長さ(L2)を有するようにすることと、さらに、
前記伸張可能な糸(13b)の長さの変化に比例して前記布(7)を収縮させ、前記布(7)の前記濾過部分(15)を波形形状にさせることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
固体ー液体濾過用布であって、
第1の表面(14)及び第2の表面(16)と、
複数の縦方向ポリマ糸(12)と複数の横方向ポリマ糸(13a、13b、13c)と、
混合物中の液体を、前記布を透過させて固体ー液体濾過させる透過性を有し、その一方で前記混合物からの固体が前記布を通過することを防止する固体ー液体濾過用布(7)とを備え、
前記布(7)の前記少なくとも第1の表面(14)に、前記布(7)から離れる方向に開放した複数の波形を有する波形形状の最外接触面が設けられていることを特徴とする、固体ー液体濾過用布。
【請求項7】
前記布(7)の前記第1の表面(14)と前記第2の表面(16)は波形形状を有することを特徴とする、請求項6に記載の固体ー液体濾過用布。
【請求項8】
固体ー液体濾過に適し、複数の横方向糸(13a)を備えた濾過部分(15)が、前記布(7)の前記第1の表面(14)の側に設けられており、
前記布(7)は、長さが変化する糸(13b)から構成される部分(17、20)を備え、
前記波形表面は波形の頂点を設けており、さらに、
前記頂点にて、前記横方向糸(13a)と、前記濾過部分(15)の長さが変化する糸(13b)との間の最大距離(P)が、少なくとも1.5mmであることを特徴とする、請求項6又は7に記載の固体ー液体濾過用布。
【請求項9】
前記布の少なくとも前記第1の表面(14)の側に、波形形状で、前記波形の頂点と底部を有する濾過部分(15)が設けられており、
前記布(7)は、織成後の熱処理において長さが収縮する、熱収縮可能性が高い横方向糸(13b)を備え、
前記熱収縮可能性の高い糸(13b)は、結合点(18)にて前記濾過部分(15)と結合しており、さらに、
前記結合点(18)は前記波形の底部に位置していることを特徴とする、請求項6ないし8のいずれか1項に記載の固体ー液体濾過用布。
【請求項10】
前記布の少なくとも前記第1の表面(14)の側に、波形形状で、前記波形の頂点と底部を有する濾過部分(15)が設けられており、
前記布(7)は、織成後に静止長さが織成中における糸の長さよりも短くなる、横方向に伸張可能な糸(13b)を備え、
前記伸張可能な糸(13b)は、前記結合点(18)にて前記濾過部分(15)と結合し、
前記結合点(18)は前記波形の底部に位置することを特徴とする、請求項6ないし8のいずれか1項に記載の固体ー液体濾過用布。
【請求項11】
複数の開口部(5)を有する少なくとも1つのフィルタ面(6)と、
濾過の中に、前記フィルタ面(6)を回転方向(A)に移動させる手段と、
各フィルタ面(6)に対して配置した固体ー液体濾過用布(7)であって、固体ー液体濾過する混合物中の液体を通し、また、前記混合物からの固体が前記布を通過してしまうことを防止するように構成された透過性を有する布とを具備する固体ー液体濾過装置において、
前記フィルタ面(6)に対して配置された前記固体ー液体濾過用布(7)の少なくとも外面(14)が波形であり、少なくとも被濾過混合物に対して配置した接触面が、前記濾過用布(7)から離れる方向に開放している複数の波形を有していることを特徴とする、固体ー液体濾過装置。
【請求項12】
前記固体ー液体濾過装置は、外周がフィルタ表面として機能するように配置され、縦方向軸周囲で方向(A)に回転されるように配置されたドラムフィルタであり、さらに、
前記布(7)の外面(14)上の波形の頂点が、前記フィルタ表面(6)の回転方向(A)と実質的に平行に配置されていることを特徴とする、請求項11に記載の固体ー液体濾過装置。
【請求項13】
前記固体ー液体濾過装置は、外周がフィルタ表面として機能するように配置され、縦方向軸周囲で方向(A)に回転されるように配置されたドラムフィルタであり、さらに、
前記布(7)の外面(14)上の波形の頂点は、前記フィルタ表面(6)の回転方向(A)に対して横方向に配置されていることを特徴とする、請求項11に記載の固体ー液体濾過装置。
【請求項14】
前記固体ー液体濾過装置はディスクフィルタであり、これの外周上の複数のセクタ要素が円盤状の構造を構成し、前記セクタ要素の側面が前記フィルタ表面を構成しており、
前記布(7)の外面(14)上の波形の頂点は、実質的に前記セクタ要素の半径方向に配置されていることを特徴とする、請求項11に記載の固体ー液体濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−530253(P2007−530253A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504432(P2007−504432)
【出願日】平成17年3月21日(2005.3.21)
【国際出願番号】PCT/FI2005/050098
【国際公開番号】WO2005/089900
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(500543487)タムフェルト・オーワイジェイ・エービーピー (6)
【Fターム(参考)】