説明

固体亜リン酸アルキルアリール組成物及びこれらの製造方法

本発明は、ポリマーにおける2次酸化防止剤として用いられるのに理想的に適する様々な亜リン酸アルキルアリール組成物を対象とする。一態様において、亜リン酸エステル組成物は、20から93重量パーセントの量の亜リン酸トリス(ジアルキルアリール);並びに亜リン酸ビス(ジアルキルアリール)モノアルキルアリール;亜リン酸ビス(モノアルキルアリール)ジアルキルアリール;及び亜リン酸トリス(モノアルキルアリール)の少なくとも1種を含む。本発明の亜リン酸エステル組成物は、大気条件で固体である。本発明は、また、アルキレート組成物、並びにこのようなアルキレート組成物及びこのような亜リン酸エステル組成物を生成する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年7月31日に出願された米国特許仮出願第61/230,661号による優先権を主張し、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、新規な亜リン酸エステル(phosphite)酸化防止剤に関し、これらは、例えば、ポリマーを安定化するのに有用である。特に、本発明は、新規な固体亜リン酸アルキルアリール組成物、このような組成物の製造方法、及びこれらの亜リン酸エステル組成物を含む安定化されたポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
固体有機亜リン酸エステル安定剤は、ポリマー組成物における2次酸化防止剤として広く用いられている。市販酸化防止剤の1つは、下に示される亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)であり、Alkanox(商標)240、Irgafos(商標)168及びDoverphos(商標)S−480として一般に知られている固体酸化防止剤である。米国特許第5,254,709号(この全体が、参照により本明細書に組み込まれる)は、触媒の存在下で、2,4−ジ−t−ブチルフェノールと三塩化リンを反応させることによる、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)の合成を記載している。単離された亜リン酸エステルは、180〜185℃の間で融解する白色結晶固体として記載されている。
【化1】

【0004】
亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)は、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ABS及びポリエステルを含め、多くのポリマーで、過酸化物に誘発される酸化分解を効果的に減らすことが示されている。亜リン酸トリアルキルアリールは、熱可塑性ポリマーの加工に一般に必要とされる高温で、それを用いることができる低揮発性を有する。しかし、その固体の状態と付随する加工上の制約のために、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)は、全てのポリマーの安定化には十分に適切でなく、いくつかのプラスチック、特に低融点プラスチックの加工の間にプレートアウト(plateout)し、加工機表面上に付着堆積物を生成することが示されている。
【0005】
米国特許第5,254,709号は、また、固体の亜リン酸トリ(2,4−ジ−t−アミルフェニル)、並びに2,4−ジ−t−アミルフェノール及び2,4−ジ−t−ブチルフェノールから誘導される固体混合物を記載している。
【0006】
ロシア特許第2 140 938号は、3種の(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)亜リン酸エステルと、他の亜リン酸エステルの組合せとを含む相乗作用組成物を開示している。この組合せは、亜リン酸トリ(2−t−ブチルフェニル)、亜リン酸トリ(4−t−ブチルフェニル)、亜リン酸ジ(4−t−ブチルフェニル)(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)及び亜リン酸ジ(3−t−ブチルフェニル)(2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル)を含む。
【0007】
ポリマーの効果的な2次酸化防止剤である新規な固体亜リン酸エステル組成物、特に、良好な加工特性を有する効果的な固体亜リン酸エステル組成物が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、大気条件(ambient conditions)で固体であり、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)より低い融解範囲を有し、またポリマー組成物を安定化するための2次酸化防止剤として非常に有用である、容易に加工できる亜リン酸エステル組成物を提供する。
【0009】
亜リン酸エステル組成物は、通常、(a)20から93重量パーセント、例えば、25重量パーセントから80重量パーセントの量の亜リン酸トリス(ジアルキルアリール)(例えば、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)又は亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−アミルフェニル));並びに(b)亜リン酸ビス(ジアルキルアリール)モノアルキルアリール;(c)亜リン酸ビス(モノアルキルアリール)ジアルキルアリール;及び(d)亜リン酸トリス(モノアルキルアリール)の少なくとも1種を含み、この組成物は、成分(b)、(c)及び(d)を、合わせて該組成物中の全ての亜リン酸エステルの全重量に対して、7から80重量パーセント、例えば、20重量及びパーセントから75重量パーセントの量で含み、かつ、この組成物は、大気条件で固体である。通常、前記組成物は、成分(a)及び(b)を、合わせて組成物中の全ての亜リン酸エステルの全重量に対して、51重量パーセントを超える、例えば、74重量パーセントを超える量で含む。特定の実施形態において、亜リン酸エステル組成物におけるアルキル基は、ブチル及びアミル、例えば、t−ブチル及びt−アミルから選択される。
【0010】
ある実施形態において、亜リン酸エステル組成物は、10重量パーセントから50重量パーセント、又は15から50重量パーセント、例えば、20重量パーセントから45重量パーセントの量の亜リン酸ビス(ジアルキルアリール)モノアルキルアリール、3重量パーセントから25重量パーセント、例えば、6重量パーセントから24重量パーセントの量の亜リン酸ビス(モノアルキルアリール)ジアルキルアリール、また6重量パーセント以下、例えば、0.1重量パーセントから6重量パーセントの量、多くの場合、4重量パーセント未満、例えば2重量パーセント未満の量の亜リン酸トリス(モノアルキルアリール)を含む。
【0011】
通常、亜リン酸エステル組成物は、ジ置換アリール部分(moiety)に富んでいる。例えば、あるアリール部分はジ置換されており、あるアリール部分はモノ置換されていて、ジ置換アリール部分とモノ置換アリール部分の重量比は、1.2:1から49:1、例えば、1.2:1から9:1、1.5:1から8:1、又は1.8:1から7:1である。例えば、少なくとも55重量パーセント、例えば、少なくとも60又は少なくとも65重量パーセントのアリール部分が、アルキル基により、オルト位及びパラ位でジ置換されていてもよく、また、45重量パーセント未満、例えば、40未満又は35重量パーセント未満のアリール部分が、パラ位で、アルキル基によりモノ置換されていてもよい。
【0012】
こうして、固体亜リン酸エステル組成物は、別のやり方として、ジアルキル基とモノアルキル基の重量比によって、特徴付けられ得る。この態様において、固体亜リン酸エステル組成物は、2種以上の亜リン酸エステル化合物を含み、それぞれの亜リン酸エステル化合物がアルキルアリール基を含み、ここで、アルキルアリール基の第1部分(portion)がモノアルキルアリール基であり、アルキルアリール基の第2部分がジアルキルアリール基であり、また、ジアルキルアリール基とモノアルキルアリール基の重量比は、1.2:1から49:1、例えば、1.2:1から9:1、1.5:1から8:1、又は1.8:1から7:1である。第1部分及び第2部分は、同一及び/又は別の亜リン酸エステル上にあり得る。通常、アルキルアリール基の第1部分及びアルキルアリール基の第2部分は、アルキルアリール基の全体の少なくとも95wt%を占める。この実施形態では、上のように、2種以上の亜リン酸エステル化合物は、(a)亜リン酸トリス(ジアルキルアリール)、例えば、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)又は亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−アミルフェニル)、及び(b)亜リン酸ビス(ジアルキルアリール)モノアルキルアリールを含み、組成物は、成分(a)及び(b)を、合わせて組成物中の全ての亜リン酸エステルの全重量に対して、51重量パーセントを超える量で、例えば74重量パーセントを超える量で含む。亜リン酸トリス(ジアルキルアリール)は、通常、20重量パーセントから80重量パーセントの範囲の量で存在する。亜リン酸エステル組成物は、さらに、(c)亜リン酸ビス(モノアルキルアリール)ジアルキルアリール;及び/若しくは(d)亜リン酸トリス(モノアルキルアリール)のいずれか、又は両方を含み得る。通常、ジアルキル基及びモノアルキル基は、ブチル及びアミルの少なくとも一方である。
【0013】
上の実施形態のそれぞれで、亜リン酸エステル組成物は、大気条件で固体であるが、加工を容易にし、また安定化されるポリマーへの溶解性を向上させるために、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)より低い融解範囲を有する。好ましくは、組成物は、30℃を超える、50℃を超える、又は60℃を超える下限を有する範囲で融解する。
【0014】
亜リン酸エステル組成物は、また、低レベルの「遊離フェノール類」を、すなわち、亜リン酸エステルの合成からの未反応フェノール類を、例えば、組成物の全重量に対して、多くの場合、0.5重量パーセント未満の遊離フェノール類を、又は0.1重量パーセント未満の遊離フェノール類を含む。
【0015】
本発明は、また、ポリマーと、上の固体亜リン酸エステル組成物のいずれかとを含む安定化されたポリマー組成物、及び上の固体亜リン酸エステル組成物の効果のある量をポリマーに添加することによって、ポリマー組成物を安定化するためのプロセスも提供する。一実施形態において、ポリマー組成物は、食品関連用途における使用に適している。
【0016】
別の実施形態において、本発明は、ハロゲン化リンと、所望の組合せの亜リン酸エステルを生ずるのに必要なアルキル化フェノール混合物を含むアルキル化フェノール組成物とを反応させることを含む、固体亜リン酸エステル組成物の生成プロセスを対象とし、ここで、アルキル化フェノール組成物とハロゲン化リンのモル比は、好ましくは、3.1:1から3.7:1である。
【0017】
アルキル化フェノール組成物は、モノアルキルフェノール及びジアルキルフェノールを含み、例えば、ジアルキルアリールは、該アルキル化フェノール組成物中の全てのアルキル化フェノールの全重量に対して、55から98重量パーセント、例えば、60から95重量パーセント、又は70から90重量パーセントの範囲の量で、また、モノアルキルアリールは、2から45重量パーセント、例えば、5から40重量パーセント、又は10から30重量パーセントの範囲の量で存在する。本発明は、また、亜リン酸エステル組成物を生成するための中間体として用いられるこれらのアルキル化ヒドロキシアリール組成物(本明細書では、アルキレート(alkylate)組成物と呼ぶ)も対象とする。モノアルキルフェノール及びジアルキルフェノールにおけるアルキル部分は、通常、ブチル及びアミルから、例えば、t−ブチル及びt−アミルから選択される。例えば、任意選択で、アルキレート組成物におけるアルキル部分の少なくとも50パーセント又は少なくとも80重量パーセントが、t−ブチル又はtert−アミルである。一実施形態において、モノアルキルフェノールは、4−tert−アルキルフェノールであり、ジアルキルフェノールは、2,4−ジ−tert−アルキルフェノールである。
【0018】
前記プロセスは、固体亜リン酸エステルを生成するために、未反応アルキル化フェノール(遊離フェノール類)を、粗亜リン酸エステル組成物から除去することを任意選択でさらに含む。
【0019】
別の実施形態において、本発明は、前記亜リン酸エステル組成物を生成するための中間体として適切なアルキル化ヒドロキシアリール組成物(本明細書では、アルキレート組成物と呼ぶ)を対象とする。一態様において、アルキレート組成物は、ジアルキルフェノールを、60から90重量パーセント、例えば、65から75重量パーセントの範囲の量で;また、モノアルキルフェノールを、10から40重量パーセント、例えば、25から35重量パーセントの範囲の量で含む(重量パーセントは、アルキレート組成物中の全てのアルキル化フェノールの全重量に対するものである)。モノアルキルフェノール及びジアルキルフェノールのアルキル部分は、好ましくは、ブチル及びアミルの様々な異性体から、例えば、sec−ブチル、t−ブチル、sec−アミル、t−アミルなどから選択される。例えば、任意選択で、アルキレート組成物におけるアルキル部分の少なくとも50パーセント又は少なくとも80重量パーセントが、t−ブチル又はtert−アミルである。一実施形態において、モノアルキルフェノールは、4−tert−アルキルフェノールであり、ジアルキルフェノールは、2,4−ジ−tert−アルキルフェノールである。多くの実施形態において、他の異性体、例えば、sec−アルキル、イソアルキルなどの存在は有益であり、少量のこれらの構成要素は、多くの場合、アルキレート及び得られる亜リン酸エステル組成物の両方に存在する。
【0020】
本発明は、また、このようなアルキレート組成物の生成プロセスも対象とする。例えば、1種又は複数のオレフィンを、触媒の存在下で、また望みのアルキレート組成物を生成するのに効果的な条件下で、フェノールに接触させることによる。多くの実施形態において、アルキレート組成物は、ジアルキルフェノール、モノアルキルフェノールなどに加えて、0〜3%の無置換フェノールを、例えば、0.01から3%のフェノールを含み、これは、例えば蒸留によって、除去されてもよいし、又は、ハロゲン化リンとの亜リン酸エステル生成反応に持ち込まれてもよい。
【0021】
本発明は、添付の非限定的な図1を考慮すると、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ジアルキルアリール部分含有量とモノアルキルアリール部分含有量の関数としての、亜リン酸アルキルアリール組成物の粘度の概略的プロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、大気条件で固体である亜リン酸エステル組成物を対象とする。亜リン酸エステル組成物は、アルキル化アリール部分を含む亜リン酸エステル化合物を2種以上含み、これらのアルキル化アリール部分の大部分はジアルキル化されている。通常、ジアルキルアリール基とモノアルキルアリール基の重量比は、1.2:1から9:1、例えば、1.5:1から8:1、又は1.8:1から7:1の範囲にある。本発明は、また、前記組成物の生成プロセス、このような組成物を製造するためのアルキル化ヒドロキシアリール中間体及びこのようなアルキル化ヒドロキシアリール中間体の生成プロセスも対象とする。
【0024】
本発明の亜リン酸アルキルアリール組成物を、ポリマー組成物に組み入れることによって、得られるポリマー組成物の特性及び/又は性質が向上する。例として、ポリマー組成物のメルトフローインデックス及び/又は架橋誘導時間が、さらには、黄色度(yellowness index、YI)によって評価した色が、かなり向上し得る。本発明の亜リン酸エステル組成物中の複数の亜リン酸エステル化合物の存在は、結果的に、中心のリン原子の回りの様々な立体環境を生じ、多様なヒドロペルオキシドの捕捉を許し、このことが、理想的に、一層効果的な安定化をもたらす。
【0025】
それらの安定化特性に加えて、本発明の亜リン酸エステル組成物は、非常に望ましい加工特性を有し、様々なポリマーに容易に組み入れられる。例えば、固体亜リン酸エステル組成物は、比較的低い融点範囲を有し、低い温度で液化され得る。それらの組成上の多様性のために、固体亜リン酸エステル組成物は、また、様々なポリマーに高い溶解性を有し、この高い溶解性は、純粋な亜リン酸トリス(2,4−ジ−アルキルアリール)(例えば、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェノール))と比べた場合、特に、プレートアウトを減らす。本発明の固体亜リン酸エステル組成物は、また、多くの純粋な亜リン酸アルキルアリール化合物より容易に、様々な形態及びブレンドに加工される。
【0026】
亜リン酸アルキルアリール組成物
本発明の亜リン酸アルキルアリール組成物は、大気条件で固体である。大気条件によって、25℃、1気圧を意味する。
【0027】
一実施形態において、本発明は、(a)20から93重量パーセント、例えば、30から70重量パーセントの量の亜リン酸トリス(ジアルキルアリール);並びに(b)亜リン酸ビス(ジアルキルアリール)モノアルキルアリール;(c)亜リン酸ビス(モノアルキルアリール)ジアルキルアリール;及び(d)亜リン酸トリス(モノアルキルアリール)の少なくとも1種を含む、亜リン酸エステル組成物を対象とする。組成物は、成分(b)、(c)及び(d)を、合わせて組成物中の全ての亜リン酸エステルの全重量に対して、7から80重量パーセント、例えば、30から70重量パーセントの量で含む。さらに、好ましくは、組成物は、成分(a)及び(b)を、合わせて組成物中の全ての亜リン酸エステルの全重量に対して、51重量パーセントを超える、例えば、74重量パーセントを超える量で含む。
【0028】
上で示されたように、亜リン酸エステル組成物中の亜リン酸エステル化合物のアリール部分の大部分は、1種又は複数のアルキル基、例えば、C〜C18(例えば、C〜C10、又はC〜C)アルキル基により置換されている。この態様において、アリール部分のアルキル置換基(単数又は複数)は、直鎖状又は分岐状C〜C18アルキル、例えば、C〜C10アルキル、C〜Cアルキル、C〜C10アルキル、C〜Cアルキル、C〜Cアルキル、Cアルキル、又はCアルキルから選択され得る。1種又は複数のアルキル置換基には、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル(あまり好ましくないが)、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル及びこれらの異性体が含まれる。例えば、アルキル置換基は、C基、すなわち、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル及び/若しくはt−ブチル、並びに/又は、C基、すなわち、n−アミル、sec−アミル、イソアミル、ネオアミル、tert−アミル、1−メチルブチル及び/若しくは1,2−ジメチルプロピルである。特定の実施形態において、アルキル基は、分岐状である、又は高度に分岐状であり、例えば、t−ブチル及びtert−アミルである。
【0029】
一実施形態において、亜リン酸エステル組成物は、ジ置換されたアリール部分を有する亜リン酸エステルを主に含む。この実施形態では、亜リン酸エステル組成物は、(a)亜リン酸トリス(ジアルキルアリール)を、20から90重量パーセント、例えば、20から80重量パーセント、又は30から70重量パーセントの量で;また、(b)亜リン酸ビス(ジアルキルアリール)モノアルキルアリールを含み、この組成物は、成分(a)及び(b)を、合わせて組成物中の全ての亜リン酸エステルの全重量に対して、51重量パーセントを超える、例えば、74重量パーセントを超える量で含み、また任意選択で、(c)亜リン酸ビス(モノアルキルアリール)ジアルキルアリール及び/又は(d)亜リン酸トリス(モノアルキルアリール)を、少量ではあるが含む。
【0030】
本発明の亜リン酸エステル組成物中に含まれる亜リン酸エステル化合物の関連する種類及び量は、亜リン酸エステル組成物が大気条件で固体である限り、いくらか変わり得る。範囲に関しては、例えば、亜リン酸エステル組成物は、
(a)亜リン酸トリス(ジアルキルアリール)(任意選択で、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)又は亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−アミルフェノール))を、17から96重量パーセント、例えば、20から90重量パーセント、25から88重量パーセント、又は30から70重量パーセントの量で;
(b)亜リン酸ビス(ジアルキルアリール)モノアルキルアリール(任意選択で、亜リン酸ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4−t−ブチルフェニル又は亜リン酸ビス(2,4−ジ−t−アミルフェニル)−4−t−アミルフェニル)を、4から73重量パーセント、例えば、40から60重量パーセント、24から50重量パーセント、又は32から42重量パーセントの量で;
(c)任意選択で、亜リン酸ビス(モノアルキルアリール)ジアルキルアリール(任意選択で、亜リン酸ビス(4−t−ブチルフェニル)−2,4−ジ−t−ブチルフェニル又は亜リン酸ビス(4−t−アミルフェニル)−2,4−ジ−t−アミルフェニル)を、好ましくは、33重量パーセント未満、例えば、3から25重量パーセント、又は6から24重量パーセントの量で;及び
(d)任意選択で、亜リン酸トリス(モノアルキルアリール)(任意選択で、亜リン酸トリス(4−t−ブチルフェニル)又は亜リン酸トリス(4−t−アミルフェニル))を、好ましくは、9重量パーセント未満、例えば、6重量パーセント以下、例えば、0.1重量パーセントから6重量パーセントの量、多くの場合、4重量パーセント未満、又は2重量パーセント未満の量で
含む。
【0031】
特に断らなければ、これらの成分の重量パーセントは、固体亜リン酸エステル組成物中の全ての亜リン酸アルキルアリール化合物の全重量に基づいて決められている。
【0032】
上で示されたように、本発明の固体亜リン酸エステル組成物は、また、ジ置換(例えば、2,4−ジ置換)されたアリール部分のパーセントに関しても特徴付けられ得る。例えば、好ましくは、少なくとも55重量パーセント、例えば、少なくとも60重量パーセント、又は少なくとも65重量パーセントのアリール部分が、アリール部分がフェニルである場合、好ましくはオルト及びパラ位で、ジ置換されている。範囲に関しては、好ましくは、55から98重量パーセント、例えば、60から80重量パーセント、又は65から75重量パーセントのアリール部分が、ジ置換(例えば、アリール部分がフェノール系である場合、2,4−ジ置換)されている。逆に、好ましくは、45重量パーセント未満、任意選択で、40重量パーセント未満、又は35重量パーセント未満のアリール部分は、モノ置換(例えば、アリール部分がフェノール系である場合、2−(オルト)及び/又は4−(パラ)位でモノ置換)されている。範囲に関しては、任意選択で、2から45重量パーセント、例えば、5から40重量パーセント、又は10から35重量パーセントのアリール部分が、モノ置換(例えば、アリール部分がフェノール系である場合、2−及び/又は4位でモノ置換)されている。比に関しては、あるアリール部分はジ置換されており、あるアリール部分はモノ置換されていて、ジ置換アリール部分とモノ置換アリール部分の重量比は、好ましくは、1.2:1から49:1、例えば、1.2:1から9:1、1.5:1から8:1、又は1.8:1から7:1である。
【0033】
本明細書に記載されている、ジアルキルアリール部分の高い含有量で、非常に加工性のよい固体亜リン酸エステル組成物が生成され得ることが今般見出された。図1は、ジアルキルアリール部分含有量とモノアルキルアリール部分含有量の関数(例えば、ジアルキルアリール部分とモノアルキルアリール部分の比)としての、亜リン酸アルキルアリール組成物の粘度の概略的なプロットを示す。示されるように、様々な亜リン酸アルキルアリール組成物の粘度及び物理的状態は、ジアルキルアリール部分含有量及びモノアルキルアリール部分含有量に大きく依存する。図1の左側では、非常に低いジアルキルアリール部分含有量及び高いモノアルキルアリール部分含有量において、亜リン酸エステル組成物は、「固体ゾーンA」によって示されるように、大気条件で固体であることが分かる。ジアルキルアリール部分含有量が、モノアルキルアリール部分含有量に対して増加するにつれて、亜リン酸エステル組成物は、「液体ゾーン」によって示されているように、液体状態になる。液体ゾーンの右側の部分は、非常に粘性のある準安定液体を生成する傾向にあるので、液体ゾーンの狭い範囲だけが、凍結/解凍の繰返しサイクルに耐えることができる流動性のある安定な液体組成物であることが指摘されるべきである。ジアルキルアリール部分含有量が、モノアルキルアリール部分含有量に対して増加し続けるにつれて、「固体ゾーンB」によって示されるように、固体亜リン酸エステル組成物が生成し得る。固体ゾーンBが、本発明の亜リン酸エステル組成物を示す部分である。
【0034】
通常、このような亜リン酸エステル組成物における主な化学種は、亜リン酸ビス(モノアルキルアリール)ジアルキルアリール及び亜リン酸トリス(モノアルキルアリール)化合物よりもむしろ、亜リン酸トリス(ジアルキルアリール)及び亜リン酸ビス(ジアルキルアリール)モノアルキルアリール化合物であり得るが、理由は、前者の化合物はモノアルキル化されたアリール部分を主に含むためである。こうして、亜リン酸エステル組成物は、通常、亜リン酸トリス(ジアルキルアリール)、例えば、亜リン酸トリス(ジ−t−ブチルフェニル)又は亜リン酸トリス(ジ−t−アミルフェニル)、及び亜リン酸ビス(ジアルキルアリール)モノアルキルアリール、例えば、亜リン酸ビス(ジ−t−ブチルフェニル)モノ−t−ブチルフェニル又は亜リン酸ビス(ジ−t−アミルフェニル)モノ−t−アミルフェニルを、組成物中の全ての亜リン酸エステルの全重量に対して、51重量パーセントを超える、例えば、74重量パーセントを超える量で含む。一態様において、亜リン酸エステル組成物における主な成分は、亜リン酸トリス(ジアルキルアリール)(例えば、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)又は亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−アミルフェニル))である。別の態様において、亜リン酸エステル組成物における主な成分は、亜リン酸ビス(ジアルキルアリール)モノアルキルアリール(例えば、亜リン酸ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4−t−ブチルフェニル又は亜リン酸ビス(2,4−ジ−t−アミルフェニル)−4−t−アミルフェニルである。
【0035】
好ましい態様において、アリール部分はフェニルであり、アリール部分の少なくとも55重量パーセント、例えば、少なくとも60重量パーセント、又は少なくとも65重量パーセントは、好ましくは、ブチル基、例えば、t−ブチル、又はアミル基、例えばt−アミルにより、2−及び4位でジ置換されている。さらに、好ましくは、アリール部分の少なくとも10重量パーセント、少なくとも20重量パーセント、又は少なくとも25重量パーセントは、多くの場合、ブチル基、例えば、t−ブチル、又はアミル基、例えばt−アミルにより、4位でモノ置換されているが、他のアルキル基及び存在する他の異性体、例えば、sec−ブチル、n−ブチル、イソブチル、n−アミル、sec−アミル、ネオアミルなどが存在し得る。
【0036】
さらに、亜リン酸エステル組成物における複数の亜リン酸エステル化合物の存在は、純粋な亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−アルキルフェニル)、例えば、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)又は亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−アミルフェニル)に比べた場合に、相溶性/溶解性の向上に導き得る。亜リン酸エステル組成物の向上した溶解性は、得られるポリマー製品の表面への亜リン酸エステル組成物の移動を少なくして、より安定なポリマー製品をもたらす。向上した溶解性は、また、(i)プレートアウト(又は、ポリマー加工装置における固体物質の堆積)を減らす、(ii)ポリマーフィルム表面の光沢を高める、(iii)ポリマーフィルム及び物品上への印刷で、インクの接着性を向上させる、及び(iv)プラスチックフィルム及び物品のシール性を向上させる。
【0037】
本発明の亜リン酸エステル組成物は、その融点によって特徴付けられ得る。上で示されたように、本発明の亜リン酸エステル組成物は、大気条件で固体である。「固体」によって、亜リン酸エステル組成物が、25℃を超える、例えば、30℃を超える、40℃を超える、50℃を超える、60℃を超える、又は70℃を超える融点を有することを意味する。実際には、組成物は混合物であるので、この点で「融点」は、例えば、30℃を超える、一定の下限で始まる融解範囲である。亜リン酸エステル組成物は、安定化されるポリマー中にそれが組み入れられ得るように、加工の間に融解する。
【0038】
通常、亜リン酸エステル組成物は、亜リン酸トリス(2,4−ジ−T−ブチルフェニル)が融解する温度、すなわち、約180〜185℃より低い温度領域で融解する。例えば、本発明の亜リン酸エステル組成物は、180℃未満、例えば、175℃未満、170℃未満、又は165℃未満の温度で溶融状態になり得る。例えば、亜リン酸エステル組成物は、40℃から180℃、例えば、60℃から175℃、60℃から120℃の融点範囲を、又は、100℃から180℃、若しくは140℃から180℃などのより高い範囲を有し得る。亜リン酸エステル組成物が、加工の間に容易に液化し、安定化されるポリマーに、より均一に分散され得るように、多くの場合、より低い融点が好ましい。こうして、亜リン酸エステル組成物は、多くの場合、安定化されるポリマーに非常によく溶け、理想的には、安定化されるポリマーに、純粋な亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)よりもよく溶け、結果的に、プレートアウト及びブルーミング(blooming)に関連する問題を軽減する。
【0039】
一実施形態において、亜リン酸エステル組成物は、次の構造:
【化2】


を有し、式中、R、R及びRは、独立に選択されるアルキル化アリール基である。一実施形態において、本発明の亜リン酸エステルに、例えば、R、R又はRに存在するアリール部分は、6から18個の炭素原子の芳香族部分、例えば、フェニル、ナフチル、フェナントリル、アントラシル、ビフェニル、ターフェニル、o−クレジル、m−クレジル、p−クレジル、キシレノール(単数又は複数)などであり、通常フェニルである。
【0040】
芳香族部分は、オルト−、メタ−及び/又はパラ位の1つ又は複数で、通常はオルト−及び/又はパラ位の1つ又は複数で、アルキル基により、モノ、ジ又はトリ置換されていてよいが、但し、芳香族部分の数の上での大多数、又は重量の上での大部分は、ジ置換されており、芳香族部分がフェノール系である場合、好ましくは、2−及び4位でジ置換されている。上で示されたように、亜リン酸エステル組成物は、亜リン酸トリス(ジアルキルアリール)及び/又は亜リン酸ビス(ジアルキルアリール)モノアルキルアリールのいずれか又は両方を含むべきである。通常、亜リン酸エステル組成物は、亜リン酸ビス(モノアルキルアリール)ジアルキルアリール及び/又は亜リン酸トリス(モノアルキルアリール)のいずれか又は両方をさらに含むが、このような化合物は、存在するとしても、理想的には、少量で(50wt%未満)で存在する。
【0041】
ある実施形態では、亜リン酸エステル組成物は、C及び/又はC置換基によりアルキル化された亜リン酸エステル化合物を含み、ある特定の実施形態では、他の置換基により置換されたアリール部分を含む亜リン酸エステルを含まない。ある実施形態では、亜リン酸エステル組成物は、成分a、b、c及びd以外の亜リン酸エステル化合物を含むが、少量で含み、例えば、亜リン酸エステル組成物は、トリアルキルアリール部分を含む亜リン酸エステル及び無置換アリール部分を含む亜リン酸エステルからなる群から選択される他の亜リン酸エステルを、0.1から5重量パーセント含んでいてもよく、例えば、亜リン酸エステルに含まれる全てのアリール部分の0.1から4重量パーセントは、トリアルキルアリール部分であり得る。
【0042】
好ましい実施形態において、亜リン酸エステル組成物は、C〜C10アルキル置換基を実質的に含まない。多くの場合、亜リン酸エステル組成物は、亜リン酸ノニルアリール化合物を実質的に含まず、これは、亜リン酸エステル組成物が、(たとえ含むとしても)100wppm未満、例えば、50wppm未満、又は20wppm未満の亜リン酸ノニルアリール化合物(本明細書では、少なくとも1つのノニルアリール部分を有する亜リン酸エステル化合物と定義される)を含むことを意味する。用語「wppm」は、亜リン酸エステル組成物の全重量に対する100万分の1を表す。
【0043】
一実施形態において、亜リン酸エステル組成物中の実質的に全ての亜リン酸エステル化合物、例えば、亜リン酸エステル組成物中の少なくとも90wt%、少なくとも95wt%、又は少なくとも99wt%の亜リン酸エステル化合物は、亜リン酸アルキルアリール化合物である。このため、亜リン酸エステル(単数又は複数)のアリール部分は、アルキル置換されたアリール基、例えば、C〜C−アルキルアリール基である。好ましい実施形態において、少なくとも95重量パーセント、少なくとも98重量パーセント、又は少なくとも99重量パーセントのアリール部分が、1種又は複数のt−ブチル又はtert−アミル基により置換されている。同様に、好ましい実施形態において、少なくとも95重量パーセント、例えば、少なくとも98重量パーセント、又は少なくとも99重量パーセントのアルキル置換基は、t−ブチル又はtert−アミル置換基である。別の実施形態において、(存在するとしても)少数の亜リン酸エステル化合物がアルキル置換されており、例えば、10%未満、5%未満、2%未満、又は1%未満がアルキル置換されている。亜リン酸アルキルは、亜リン酸トリアルキルなどの、酸素原子に直接結合したアルキル基、例えばプロピル基を有する亜リン酸エステルを表す。
【0044】
構造(II)の亜リン酸エステルを参照すると、一実施形態において、アルキルアリール部分、例えば、R、R及びRは、構造(III):
【化3】


の独立に選択されるアルキル化フェニル基であり、式中、R、R及びRは、水素、及びC〜Cアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル及びこれらの異性体)からなる群から独立に選択され、例えば、基は、少なくとも、ブチル又はアミル、例えば、t−ブチル又はt−アミルである。亜リン酸エステル組成物におけるアリール基の数の上での大多数は又は重量の上での大部分は、ジ置換され、好ましくは、オルト及びパラ位の両方にアルキル基を含み、例えば、R及びRはアルキル基であり、Rは水素である。好ましい実施形態において、亜リン酸エステル組成物におけるアリール基の少なくともいくらか(しかし、好ましくは少量)で、R及びRは水素であり、Rはアルキル基である。ある実施形態では、アルキル基はα−水素原子を有さず、例えば、アルキル基はtert−アルキル基である。
【0045】
別の実施形態において、構造(II)のR、R及びRは、次の構造:
【化4】


の独立に選択されたアルキル化アリール基であり、式中、R、R及びRは、上で定義されており、Rは水素又はメチルであるが、但し、R、R、R及びRの1つはメチルであり、また、R、R、R及びRの少なくとも2つは水素ではない。上で示されたように、好ましくは、アルキルアリール基の大部分、好ましくは重量の上での大部分は、ジ置換されている。例えば、亜リン酸エステルは、例えば1種又は複数のアルキル化(例えば、アミル化又はブチル化)クレゾール化合物とPClとの反応によって、生成され得る。この実施形態では、ジアルキル及びジ置換という用語は、クレゾールのメチル基以外のアルキル基を表す。
【0046】
上で示されたように、本発明の亜リン酸エステル組成物は、同一の又は異なる分子上にあるかどうかにかかわらず、ジアルキル化及びモノアルキル化されたアリール部分を有する亜リン酸エステル化合物を含む。ある実施形態では、あるとしても少数のアリール部分がトリ置換されている。例えば、ある実施形態では、3wt%より少数の、例えば、2wt%より少数、又は1wt%より少数のアリール部分が、トリ置換されている。別の実施形態において、亜リン酸エステル組成物は、トリ置換されたアリール部分を全く含んでおらず、これは、トリ置換アリール部分が全く検出できないことを意味する。
【0047】
同様に、あるとしても少数のアリール部分が、オルト位でモノ置換されている。好ましくは、アリール部分は、オルト位で、3wt%未満、例えば、2wt%未満、又は1wt%未満の量でモノ置換されている。
【0048】
アルキル化されているかアルキル化されていないかにかかわらず、亜リン酸エステル組成物に含まれている場合に本明細書において「遊離フェノール類」と呼ばれるフェノール類(例えば、フェノール、クレゾール又はキシレノール)を、亜リン酸エステル組成物は、好ましくは、低レベルで含み、又は実質的に含まない(すなわち、全亜リン酸エステル組成物に対して0から5重量パーセント)。通常、本発明でのこれらの遊離フェノール類は、亜リン酸エステル化合物を生成するための、三ハロゲン化リンとの反応からの未反応フェノール類であり、亜リン酸エステルのアルキル化アリール基の構造を反映している。量に関しては、亜リン酸エステル組成物は、好ましくは、亜リン酸エステル組成物の全重量に対して、5wt%未満、例えば、3wt%未満、又は1wt%未満の遊離フェノール類を含む。望まれていない遊離フェノール類は、例えば蒸留によって、除去され得る。
【0049】
極めて低レベルの遊離フェノール類が、例えば、ワイプトフィルム(wiped−film)分子(短路)蒸留器、ワイプトフィルム蒸発装置(WFE)、薄膜蒸発装置、又は類似の装置を用いることによって実現され得る。こうして、亜リン酸エステル組成物は、亜リン酸エステル組成物の全重量に対して、0.5wt%未満、例えば、0.2wt%未満、又は0.1wt%未満の遊離フェノール類を含み得る。このような低遊離フェノール類レベルは、揮発性の有機物損失又は発煙(fuming)を減らすために、例えば、ポリプロピレンの加工に通常求められるような、高温における加工に用いられるのに特に望ましいことであり得る。例えば、米国特許第5,531,401号(この全体が、参照により本明細書に組み込まれる)を参照。
【0050】
亜リン酸エステルは、多くの場合、特定のヒンダードフェノール1次酸化防止剤と組み合わせて用いられ、本発明の亜リン酸エステル組成物もまた、このような1次酸化防止剤と組み合わせて用いられ得る。
【0051】
さらに、亜リン酸エステル組成物は、好ましくは、無置換アリール部分を有する亜リン酸エステル化合物を、例えば、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸ビス(フェニル)アルキルフェニル、又は亜リン酸ビス(アルキルフェニル)フェニルを実質的に含まない。量に関しては、亜リン酸エステル組成物は、好ましくは、亜リン酸エステル組成物の全重量に対して、3wt%未満の、例えば、2wt%未満、又は1wt%未満の、少なくとも1つの無置換アリール部分を有する亜リン酸エステル化合物を含む。
【0052】
別の実施形態において、亜リン酸エステル組成物は、α位に水素原子を有するアルキル基により置換されたアリール基を有する亜リン酸エステル化合物を実質的に含まない。すなわち、好ましい実施形態において、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%のアリール部分は、第3級α炭素を有するアルキル基、最も好ましくは、t−ブチル及びtert−アミルにより置換されている。
【0053】
ある実施形態では、亜リン酸エステル組成物は、少なくとも4.0モル%、例えば、少なくとも4.2モル%、少なくとも4.5モル%、少なくとも4.8モル%、又は少なくとも5.0モル%であるリン含有量を有する。例えば、亜リン酸エステル組成物の全リン含有量は、通常、亜リン酸エステル組成物中の全てのリン含有化合物の4.0から5.5モル%、例えば、4.2から5.4モル%、又は4.5から5.2の範囲であり得る。亜リン酸ブチルアリール化合物では、亜リン酸エステル組成物は、好ましくは、4.8から5.4モル%の範囲の全亜リン酸エステル含有量を有し、亜リン酸アミルアリール化合物では、亜リン酸エステル組成物は、好ましくは、4.2から4.9モル%の範囲の全亜リン酸エステル含有量を有する。
【0054】
ある好ましい実施形態において、亜リン酸エステル組成物は、1種又は複数の加水分解安定剤(hydrolytic stabilizer)を含む。好ましい安定剤には、次の構造:
【化5】


のアミンが含まれ、式中、xは1、2又は3、好ましくは1又は2であり;Rは、水素、及び直鎖状若しくは分岐状C〜Cアルキルからなる群から選択され、またRは、直鎖状若しくは分岐状C〜C30アルキルからなる群から選択される。好ましくは、Rは、直鎖状若しくは分岐状C〜Cアルキル(例えば、メチル又はエチル)からなる群から選択される。好ましくは、Rは、直鎖状若しくは分岐状C〜C20アルキル、例えば、直鎖状若しくは分岐状C10〜C20アルキル、又は直鎖状若しくは分岐状C12〜C18アルキルからなる群から選択される。一実施形態において、xは1であり、Rは、直鎖状若しくは分岐状C〜C20アルキル、例えば、C12〜C18アルキルである。一実施形態では、xは2であり、Rは、直鎖状若しくは分岐状C10〜C20アルキル、例えば、C12〜C18アルキルである。
【0055】
一態様において、前記アミンは、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン及びテトライソプロパノールエチレンジアミンからなる群から選択される。
【0056】
別の態様において、前記アミンは、オクチル−ビス(2−エタノール)アミン、ノニル−ビス(2−エタノール)アミン、デシル−ビス(2−エタノール)アミン、ウンデシル−ビス(2−エタノール)アミン、ドデシル−ビス(2−エタノール)アミン、トリデシル−ビス(2−エタノール)アミン、テトラデシル−ビス(2−エタノール)アミン、ペンタデシル−ビス(2−エタノール)アミン、ヘキサデシル−ビス(2−エタノール)アミン、ヘプタデシル−ビス(2−エタノール)アミン、オクタデシル−ビス(2−エタノール)アミン、オクチル−ビス(2−プロパノール)アミン、ノニル−ビス(2−プロパノール)アミン、デシル−ビス(2−プロパノール)アミン、ウンデシル−ビス(2−プロパノール)アミン、ドデシル−ビス(2−プロパノール)アミン、トリデシル−ビス(2−プロパノール)アミン、テトラデシル−ビス(2−プロパノール)アミン、ペンタデシル−ビス(2−プロパノール)アミン、ヘキサデシル−ビス(2−プロパノール)アミン、ヘプタデシル−ビス(2−プロパノール)アミン、オクタデシル−ビス(2−プロパノール)アミン、及びこれらの異性体からなる群から選択される。市販のアミンには、Armostat(商標)300、及びArmostat 1800が含まれる。
【0057】
アミンは、亜リン酸エステル組成物の全重量に対して、0.01から5wt%、例えば、0.1から1.5wt%、又は0.2から0.8wt%の量で存在し得る。
【0058】
さらなる加水分解安定剤には、Drapex(商標)39、Drapex 392、Drapex 4.4及びDrapex 6.8として市販されているエポキシ化大豆油(ESBO)などのエポキシ、又はStabaxol(商標)Pとして市販されているポリカルボジイミドが含まれる。
【0059】
亜リン酸エステル組成物の製造プロセス
本発明は、また、前記の固体亜リン酸エステル組成物の製造プロセス、及びこのようなプロセスに用いられ、少なくとも2種の異なるアルキル化ヒドロキシアリール化合物を含む新規なアルキレート組成物にも関する。例えば、固体亜リン酸エステル組成物は、三ハロゲン化リン、例えば、三塩化リンと、2種以上のアルキル化ヒドロキシアリール化合物、例えば、「アルキレート組成物」との直接反応で製造され得る。ヒドロキシアリール化合物は、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール及びこれらの混合物を含め、少なくとも1種のヒドロキシル基を有する芳香族化合物のいずれかであり得る。
【0060】
通常、アルキレート組成物は、ジアルキルフェノール、例えば、2,4−ジアルキルフェノール(例えば、2,4−ジ−t−ブチルフェノール又は2,4−ジ−t−アミルフェノール)及びモノアルキルフェノール、例えば、4−アルキルフェノール(例えば、4−t−ブチルフェノール又は4−t−アミルフェノール)を含む。ジアルキルフェノール、例えば、2,4−ジ−tert−アルキルフェノールは、通常、アルキレート組成物の全重量に対して、55から98wt%、例えば、55から95wt%、60から95wt%、又は70から90wt%の範囲の量で存在する。ジアルキルフェノール、例えば、2,4−ジ−tert−アルキルフェノールは、55wt%を超える、例えば、60wt%を超える、65wt%を超える、又は70wt%を超える量で存在し得る。モノアルキルフェノール、例えば、4−アルキルフェノールは、好ましくは、アルキレート組成物の全重量に対して、2から45wt%、例えば、5から40wt%、10から30wt%の範囲の量で存在する。アルキレート組成物は、好ましくは、1.2:1から49:1、例えば、1.5:1から9:1、又は1.8:1から8:1のジアルキルフェノールとモノアルキルフェノールの重量比を有する。アルキレート組成物は、少量の他のアルキルフェノール、例えば、これらに限らないが、2−アルキルフェノール及び/又はアルキル化されていないフェノールを、任意選択で含み得る。
【0061】
アルキレート組成物は、触媒の存在下で、またアルキレート組成物を生成するのに効果的な条件下で、1種又は複数のヒドロキシアリール化合物、例えば、フェノール又はクレゾールと、1種又は複数のオレフィン、例えば、ブテン及び/又はアミレン(例えば、イソブチレン若しくはイソアミレン)とを接触させることによって、都合よく生成される。1種又は複数のオレフィンは、好ましくは、2から18個の炭素、例えば、2から8個の炭素、又は4から6個の炭素を含む。オレフィンアルキル化剤を用いる代わりとして、1種又は複数のハロゲン化アルキル、アルコール、MTBE、又はTAMEが用いられてもよい。用いられるアルキル化剤は、アルカン及びアルケンを含む炭化水素流、例えば、C若しくはC留分からの石油化学ラフィネート流、又は、アルカン、例えば、イソブタン又はイソペンタンの脱水素反応生成物を含み得る、或いはそれから誘導され得る。この態様において、アルカンは、変わらずに、アルキル化プロセスを通過し、生成物のアルキレート組成物から容易に分離され得る。
【0062】
ヒドロキシアリール化合物とオレフィンの比は、得られるアルキレート組成物が、望みの亜リン酸エステル組成物に変換されるのに適するようなものである。ある例示的な実施形態において、1種又は複数のオレフィン(例えば、イソブチレン又はイソアミル)と、ヒドロキシアリール化合物(例えば、フェノール又はクレゾール)とのモル比は、1.5:1から6:1、例えば、1.5:1から5:1、又は1.75:1から3:1の範囲にあるが、これらの比は、例えば、オレフィンの選択、アルキル化プロセスにおいて用いられる触媒、並びにアルキレート組成物から生成される、最終的に生成される亜リン酸エステル組成物に望まれる組成及び粘度に応じて、いくらか変わり得る。
【0063】
アルキル化プロセスの条件は、広く変わり得るが、ある好ましい実施形態では、フェノールとオレフィンとの反応は、不活性雰囲気中で(例えば、窒素の下で)、60から160℃、例えば、70から145℃、又は80から140℃の温度で、0.2から10atm、例えば、0.2から5atm、又は0.2から4atmの圧力で行われる。バッチ反応では、反応時間は、1から12時間、例えば、2から10時間、又は3から5時間、続き得る。連続反応では、滞留時間は、0.1から5時間、例えば、0.2から4時間、又は0.5から1時間であり得る。
【0064】
通常、アルキル化は、ジアルキル化ヒドロキシアリール化合物、例えば、2,4−ジアルキルフェノール(例えば、2,4−ジ−t−ブチルフェノール又は2,4−ジ−t−アミルフェノール)に富むアルキレート組成物を生成するのに適する触媒の存在下で実施される。触媒は、例えば、酸性クレー触媒、陽イオン交換樹脂、ブレーンステッド酸、例えば、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸(トリフル酸)及びリンタングステン酸、又はルイス酸、例えば、BFからなる群から選択され得る。適切な市販の酸性クレー触媒には、Fulcat(商標)22Bが含まれる。本発明において有用なスルホン酸型陽イオン交換樹脂触媒は、例えば、スルホン化スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー、スルホン化架橋スチレンポリマー、フェノールホルムアルデヒド−スルホン酸樹脂、又はベンゼンホルムアルデヒド−スルホン酸樹脂であり得るが、これらには、市販の陽イオン交換樹脂、例えば、スチレン−ジビニルベンゼン型の強酸性イオン交換樹脂、例えば、Dowex(商標)50WX4、Dowex 50WX2、Dowex M−31、Dowex Monosphere M−31、Dowex DR−2030及びDowex Monosphere DR−2030触媒が含まれる。他の適切な市販樹脂には、Amberlyst(商標)15、Amberlyst 131、Amberlyst 35、Amberlyst 36及びA21;Diaion(商標)WA30、Diaion SK104、Diaion SK1B、Diaion PK208、Diaion PK212及びDiaion PK216;Tulsion(商標)T−38、Tulsion T−62、Tulsion T−66、Tulsion T−3825及びTulsion T−3830;Lewatit(商標)K1131、Lewatit K1221、Lewatit K1261及びLewatit SC 104;Indion(商標)180及びIndion 225;並びにPurolite(商標)CT−175、Purolite(商標)CT−169及びPurolite(商標)CT−275が含まれる。
【0065】
一実施形態において、アルキレートのバッチ合成は、ポット型反応器において行われる。別の実施形態において、アルキレートの合成は、連続型反応器において、連続ベースで実施される。代わりとなる実施形態において、反応は、固定床反応器において実施される。
【0066】
前記プロセスの一態様において、オレフィンと反応しない如何なる遊離フェノール化合物も、例えば、70から160℃の温度、1から10mbarの圧力での蒸留により、反応生成物の混合物から除去され得る。
【0067】
ある実施形態では、混合オレフィン(例えば、C及びC)及び/又は混合フェノール供給原料が、多様なアルキレート組成物を生成するために使用され得るが、これは、一層多様な亜リン酸エステル組成物を最終的に生成するために、望ましいことであり得る。このように、低級アルケンの混合物(例えば、2種以上のC〜Cオレフィン、例えば、ブチレン類の混合物、アミレン類の混合物、ブチレン及びアミレン、プロピレン及びアミレン、又はプロピレン及びブチレンの混合物)が、並行して(オレフィンA及びBの同時フィード)、又は逐次的に(すなわち、最初にオレフィンAが、その後で、オレフィンBが反応させられる)のいずれかで、フェノール化合物と反応させられ得る。
【0068】
一実施形態において、前記のアルキレート組成物合成プロセスから生成されるアルキレート組成物は、固体亜リン酸エステル組成物を生成するために、触媒を用いて又は用いないで、三ハロゲン化リンと、例えば、三塩化リン又は三臭化リンと、さらに反応させられる。ジアルキル化ヒドロキシアリール化合物は、モノアルキル化ヒドロキシアリール化合物よりも嵩高いので、ジアルキル化ヒドロキシアリール化合物とPClとの間の反応を容易にする触媒が、好ましくは、用いられる。有用な触媒には、これらに限らないが、ピリジン、N,N−ジメチルドデシルアミン、ジラウリルメチルアミン、トリアルキルアミン及びこれらの塩酸塩が含まれる。アルキレート組成物(すなわち、アルキル化フェノール化合物)と三ハロゲン化リンのモル比は、好ましくは、3:1から5:1、例えば、3:1から4:1、又は3:1から3.7:1である。
【0069】
アルキレート組成物と三ハロゲン化リンとの反応は、不活性雰囲気(例えば、窒素)下で、5から70℃、例えば、40から70℃、又は50から70℃の温度で実施され得る。三ハロゲン化リンが反応器に投入され、それにアルキレート組成物が添加され得る。この場合、好ましくは、温度は、三ハロゲン化リンの還流を避けるために、アルキレート組成物への三ハロゲン化リンの添加の間、70℃以下に保たれる。三ハロゲン化リンの添加の後、その温度が、10分から12時間、例えば、30分から10時間、又は1時間から3時間、任意選択で保たれる。反応は、好ましくは、0.8から4atm、例えば、0.9から3atm、又は1から2atmの圧力で実施される。任意選択で、アルキレート組成物が反応器に投入され、それに三ハロゲン化リンが添加されてもよい。次に、温度は、70℃から200℃、例えば、80℃から150℃、又は90℃から120℃の範囲の高い温度に上げられ得る。好ましくは、反応は、この高い温度に、10分から12時間、例えば、30分から10時間、又は1時間から3時間保たれる。反応は、好ましくは、0.01から0.5atm、例えば、0.03から0.4atm、又は0.04から0.1atmの低い圧力で実施される。反応時間の間、塩化水素又は臭化水素ガスが発生し、約0.05atmに圧力を下げることによって、又は反応混合物の上を窒素などの不活性ガスでスイーピングすることによって、除去され得る。一態様において、このようなガスの除去は、反応混合物中の全ハロゲン化物含有量が50wppm未満、例えば、25wppm未満、又は10wppm未満になるまで、実施され得る。
【0070】
前記プロセスの一態様において、三ハロゲン化リンと反応しなかった如何なる遊離フェノール類も、0.0001から0.1atmの圧力の真空で、275℃まで、例えば250℃まで、又は225℃まで、反応温度を上げることによって放出され得る。一実施形態において、ワイプトフィルム分子(短路)蒸留器、ワイプトフィルム蒸発装置(WFE)、薄膜蒸発装置、又は類似の装置が、遊離フェノール類を、上で示された非常に低レベルまでさらに除去するために使用され得る。
【0071】
一実施形態において、亜リン酸エステル組成物は、一種又は複数の中性溶媒中で生成される。用いられ得る典型的な溶媒には、トルエン、キシレン、塩化メチレン、ヘプタン、クロロホルム及びベンゼンが含まれる。
【0072】
一実施形態において、本発明の固体亜リン酸エステル組成物は、直接の化学反応で得られ、この反応では、様々なアルキル化ヒドロキシアリール化合物のモル比が、大気条件で固体である亜リン酸エステル組成物を生じるように調節される。このような亜リン酸エステル組成物を生成するために用いられ得る1つの反応方法の概略は、次の通りである。
【化6】


式中、Rは、独立に、上で定義されたR、R及びRである。好ましくは、アルキレート組成物は、主に、ジ置換ヒドロキシアリール化合物、例えば、2,4−ジ−t−ブチルフェノール又は2,4−ジ−t−アミルフェノールからなるので、得られる亜リン酸エステル組成物中に生成する主な成分は、亜リン酸トリス(ジアルキルアリール)及び亜リン酸ビス(ジアルキルアリール)モノアルキルアリール、例えば、亜リン酸(2,4−ジアルキルフェニル)及び亜リン酸ビス(2,4−ジアルキルフェニル)−4−アルキルフェニルである。少量の他のアルキル化ヒドロキシアリール化合物、例えば、オルト−置換モノアルキル化フェノール類が、上の反応スキームにおいて、さらなる反応物として含まれ得る、そして、さらなる誘導体亜リン酸エステルを生成し得るが、これらのさらなる反応物及び生成物は、簡潔さのために、反応(VI)から省かれていることに留意されたい。
【0073】
本発明の組成物は、知られている様々な方法によって、様々な製品形態に、例えば、粉末、顆粒、ペレットなどに、さらに加工され得る。これらの製品形態又は他の多成分添加剤パッケージの製造において、組成物はまた、1種又は複数のさらなる添加剤、フィラー、1次酸化防止剤などと、例えば、下で詳細に記載されるもののいずれかと、一緒にされ得る。
【0074】
安定化亜リン酸エステル組成物
上記に記載されたように、安定化する量又は効果のある量の本発明の亜リン酸エステル組成物が、様々な種類のポリマーに対する2次酸化防止剤として使用され得る。本明細書で用いられる場合、「安定化する量」及び「効果のある量」によって、本発明の亜リン酸エステル組成物を含むポリマー組成物が、その物理的特性又は色の特性のいずれかにおいて、本発明の亜リン酸エステル組成物を含まない類似のポリマー組成物と比較して、改善された安定性を示す場合を意味する。改善される安定性の例には、例えば、溶融加工、耐候(weathering)、並びに/或いは、空気熱、光、及び/又は他の要素への長期屋外暴露による、例えば、分子量の低下、色の劣化などに対する安定化の改善が含まれる。一例として、改善された安定性は、安定剤添加剤を含まない組成物と比べた場合、黄変度(yellowing index)と溶融ポリマーのメルトフローレートによって評価される、より低い初期の色と、又は、例えば、初期黄色度(YI)によって、若しくは黄変及び変色に対する耐性によって評価される、風化に対するさらなる耐性との一方又は両方の形で得られる。
【0075】
本明細書に記載されている添加剤及び安定剤は、好ましくは、組成物の安定性を改善するのに効果のある量で存在する。前記亜リン酸エステル組成物の1つが用いられる場合、その組成物は、亜リン酸エステル組成物及び任意の他の安定剤又は添加剤の重量を含め、ポリマーの全重量に対して、通常、約0.001から約5wt%、例えば、約0.0025から約2wt%、又は約0.005から約1wt%の量で存在する。本発明の亜リン酸エステル組成物は、樹脂を、特に高温加工の間、安定化させ、メルトインデックス及び/又は色の変化が、複数回の押出の後でさえ、比較的少ない。
【0076】
本発明は、さらに、ベースポリマー(例えばポリマー樹脂)及び本発明の上記の亜リン酸エステル組成物のいずれかを含む、安定化された熱可塑性樹脂に関する。ポリマーは、ポリオレフィンであってよく、固体亜リン酸エステル組成物は、共安定剤、例えば、ヒンダードフェノール類、芳香族アミン、ヒドロキシルアミン、ラクトン及びチオエーテルと共に用いられ得る。したがって、本発明の亜リン酸エステル組成物によって安定化される熱可塑性樹脂は、フェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、紫外線吸収剤、亜リン酸エステル、亜ホスホン酸エステル、脂肪酸のアルカリ金属塩、ハイドロタルサイト、金属酸化物、エポキシ化大豆油、ヒドロキシルアミン、第3級アミンオキシド、ラクトン、第3級アミンオキシドの熱反応生成物及び硫黄含有相乗剤(thiosynergist)からなる群から選択される1種又は複数のさらなる安定剤又は安定剤混合物を任意選択で含み得る。
【0077】
一実施形態において、安定化組成物中の各成分の量が、ポリマー又はポリマー樹脂の全重量パーセントに対して、表1に示される。
【表1】

【0078】
1次酸化防止剤は含む。例えば、
【0079】
(i)アルキル化モノフェノール、例えば:2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−n−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−イソブチルフェノール、2,6−ジシクロペンチル−4−メチルフェノール、2,6−ビス(α−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(α−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジオクタデシル−4−メチルフェノール、2,4,6,−トリシクロヘキシフェノール、及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシメチルフェノール。市販のアルキル化モノフェノールには、Lowinox(商標)624及びNaugard(商標)431が含まれる。別のフェノールが、BHEBとして市販されている。
【0080】
(ii)アルキル化ヒドロキノン、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、2,5−ジ−tert−ブチル−ヒドロキノン、2,5−ジ−tert−アミル−ヒドロキノン及び2,6−ジフェニル−4−オクタデシルオキシフェノール。市販のアルキル化ヒドロキノンには、Lowinox AH25が含まれる。
【0081】
(iii)ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル、例えば、2,2’−チオ−ビス−(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、2,2’−チオ−ビス−(4−オクチルフェノール)、4,4’−チオ−ビス−(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)及び4,4’−チオ−ビス−(6−tert−ブチル−2−メチルフェノール)。市販のヒドロキシル化チオジフェニルエーテルには、Lowinox TBM6、及びLowinox TBP6が含まれる。
【0082】
(iv)アルキリデン−ビスフェノール、例えば、2,2’−メチレン−ビス−(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(6−tert−ブチル−4−エチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−(α−メチルシクロヘキシル)フェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(6−ノニル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(6−ノニル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(6−(α−メチルベンジル)−4−ノニルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(6−(α,α−ジメチルベンジル)−4−ノニル−フェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデン−ビス−(6−tert−ブチル−4−イソブチルフェノール)、4,4’−メチレン−ビス−(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレン−ビス−(6−tert−ブチル−2−メチルフェノール)、1,1−ビス−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェノール)ブタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、2,2’−イソブチリデン−ビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,6−ジ−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェノール、1,1,3−トリス−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−3−ドデシル−メルカプトブタン、エチレングリコール−ビス−(3,3,−ビス−(3’−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−ブチレート)−ジ−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−ジシクロペンタジエン、及びジ−(2−(3’−tert−ブチル−2’ヒドロキシ−5’メチル−ベンジル)−6−tert−ブチル−4−メチルフェニル)テレフタレート。市販のアルキリデン−ビスフェノールには、Lowinox 22M46、Lowinox WSP、Lowinox 44B25、Naugard 536、Naugawhite(商標)、及びLowinox 22IB46が含まれる。
【0083】
(v)ベンジル化合物、例えば、1,3,5−トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、ビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、イソオクチル3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル−メルカプト−アセテート、ビス−(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)ジチオール−テレフタレート、1,3,5−トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス−(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、ジオクタデシル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル−ホスホネート、モノエチル3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートのカルシウム塩、1,3,5−トリス−(3,5−ジシクロヘキシル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート。市販のベンジル化合物には、Anox(商標)IC−14、Anox330及びLowinox 1790が含まれる。
【0084】
(vi)アシルアミノフェノール、例えば、4−ヒドロキシラウリン酸アニリド、4−ヒドロキシ−ステアリン酸アニリド、2,4−ビス−オクチルメルカプト−6−(3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニリノ)−s−トリアジン及びオクチル−N−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−カルバメート。
【0085】
(vii)β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオン酸と、1価又は多価アルコール(例えば、メタノール、ジエチレングリコール、オクタデカノール、トリエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ペンタエリトリトール、ネオペンチルグリコール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレート、チオジエチレングリコール、ジ−ヒドロキシエチルシュウ酸ジアミド)とのエステル。このようなフェノールには、また、テトラキス[メチレン{3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシシンナメート}]メタンも含まれる。市販のエステルには、Anox 20、Anox 1315、Lowinox GP45、Naugalube 38、Naugalube 531、Anox PP18、Naugard PS48及びNaugard XL−1が含まれる。
【0086】
(viii)β−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−プロピオン酸と、1価又は多価アルコール(例えば、メタノール、ジエチレングリコール、オクタデカノール、トリエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ペンタエリトリトール、ネオペンチルグリコール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレート、チオジエチレングリコール、ジヒドロキシエチルシュウ酸ジアミド)とのチオエステル。市販のチオエステルには、Naugalube(商標)15及びAnox 70が含まれる。
【0087】
(ix)β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオン酸のアミド、例えば、N,N’−ジ−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)−ヘキサメチレン−ジアミン、N,N’−ジ−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)トリメチレンジアミン、N,N’−ジ−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)−ヒドラジン、N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド、及び1,2−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジン。市販のアミドには、Lowinox HD98及びLowinox MD24が含まれる。
【0088】
(x)他のフェノール系酸化防止剤には、以下のフェノールが含まれる。ポリマーフェノール、例えば、Lowinox CPLとして市販されている、4−メチルフェノールとジシクロペンタジエン及びイソブチレンとの反応生成物。アルキリデン−ポリフェノール、例えば、1,3トリス(3−メチル−4−ヒドロキシル−5−t−ブチル−フェニル)−ブタン(Lowinox CA22)。チオフェノール、例えば2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール(Irganox(商標)565)、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール(Irganox 1520);4,6−ビス(ドデシルチオメチル)−o−クレゾール(Irganox 1726)。エステルフェノールには、ビス[3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルフェニル)ブタン酸]グリコールエステル(Hostanox(商標)O3)が含まれる。さらに他のフェノールには、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート(Sumilizer GS)が含まれる。
【0089】
(xi)ヒドロキシルアミン、例えば、ビス(オクタデシル)ヒドロキシルアミン(Irgastab(商標)FS 042)。
【0090】
一実施形態において、安定化組成物は、テトラキスメチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシルヒドロシンナメート)メタン(Anox 20)、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート(Anox IC−14)、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン(Lowinox 1790)、オクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(Anox PP18)、ビス(オクタデシル)ヒドロキシルアミン(Irgastab FS−042)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(Anox 330)、2,6−ビス(α−メチルベンジル)−4−メチルフェノール(Naugalube 431)、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−ベンゼンプロパン酸(Anox 1315)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチル−フェノール(BHEB)、及びこれらの混合物からなる群から選択される1種の1次酸化防止剤、並びに本明細書において定義される亜リン酸エステル組成物を含む。
【0091】
亜リン酸エステル組成物及び/又は得られる安定化されたポリマー組成物は、また、以下のものなどの1種又は複数のUV吸収剤及び/又は光安定剤も任意選択で含む。
【0092】
(i)2−(2’−ヒドロキシフェニル)−ベンゾトリアゾール、例えば、その5’−メチル−、3’5’−ジ−tert−ブチル−、3’5’−ジ−tert−アミル−、5’−tert−ブチル−、5’−tert−アミル−、5’(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−、5−クロロ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−、5−クロロ−3’−tert−ブチル−5’メチル−、3’−sec−ブチル−5’tert−ブチル−、4’−オクトキシ、3’,5’−ditert−アミル−3’,5’−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)誘導体。市販の2−(2’−ヒドロキシフェニル)−ベンゾトリアゾールには、Lowilite(商標)26、Lowilite 27、Lowilite 28、Lowilite 29、Lowilite 35、Lowilite 55、及びLowilite 234が含まれる。
【0093】
(ii)2−ヒドロキシ−ベンゾフェノン、例えば、その4−ヒドロキシ、4−メトキシ−、4−オクトキシ、4−デシルオキシ−、4−ドデシルオキシ−、4−ベンジルオキシ−、2,4−ジヒドロキシ−、4,2’,4’−トリヒドロキシ−及び2’−ヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ誘導体。例示的な2−ヒドロキシ−ベンゾフェノンには2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−エトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、及び2−ヒドロキシ−4−プロポキシベンゾフェノンが挙げられる。市販の2−(2’−ヒドロキシフェニル)−ベンゾトリアゾールには、Lowilite 20、Lowilite 22、Lowilite 20S、及びLowilite 24が含まれる。
【0094】
(iii)置換及び無置換安息香酸のエステル、例えば、フェニルサリチレート、4−tert−ブチルフェニル−サリチレート、オクチルフェニルサリチレート、ジベンゾイルレソルシノール、ビス−(4−tert−ブチルベンゾイル)−レソルシノール、ベンゾイルレソルシノール、2,4−ジ−tert−ブチル−フェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート及びヘキサデシル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート。
【0095】
(iv)UV吸収剤及び光安定剤には、アクリレート、例えば、α−シアノ−β、β−ジフェニルアクリル酸−エチルエステル又はイソオクチルエステル、α−カルボメトキシ−桂皮酸メチルエステル、α−シアノ−β−メチル−p−メトキシ−桂皮酸メチルエステル又はブチルエステル、α−カルボメトキシ−p−メトキシ−桂皮酸メチルエステル、N−(β−カルボメトキシ−β−シアノ−ビニル)−2−メチル−インドリンもまた含まれ得る。
【0096】
(v)ニッケル化合物もまた、適切なUV吸収剤及び光安定剤である。例示的なニッケル化合物には、2,2’−チオ−ビス(4−(1,1,1,3−テトラメチルブチル)−フェノール)のニッケル錯体、例えば、1:1、又は1:2錯体(n−ブチルアミン、トリエタノールアミン、又はN−シクロヘキシル−ジエタノールアミンなどのさらなる配位子を任意選択で有する)、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル、4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルベンジルホスホン酸モノアルキルエステルのニッケル塩、例えば、メチル、エチル、又はブチルエステル、ケトキシム(例えば、2−ヒドロキシ−4−メチル−フェニルウンデシルケトキシム)のニッケル錯体、1−フェニル−4−ラウロイル−5−ヒドロキシ−ピラゾールのニッケル錯体(さらなる配位子を任意選択で有する)が含まれる。市販のニッケル化合物には、Lowilite Q84(2,2’−チオビス(4−tert−オクチル−フェノラート))−N−ブチルアミン−ニッケル(ll)が含まれる。
【0097】
(vi)立体障害(sterically hindered)アミンは、UV吸収剤及び光安定剤として使用され得る。立体障害アミン、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)−セバケート、ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)−セバケート、n−ブチル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)エステル、1−ヒドロキシエチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシ−ピペリジン及びコハク酸の縮合生成物、N,N’−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)−ヘキサメチレンジアミン及び4−tert−オクチルアミノ−2,6−ジクロロ−1,3,5−s−トリアジンの縮合生成物、トリス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)−ニトリロトリアセテート、テトラキス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタン−テトラ−カルボン酸、1,1’(1,2−エタンジイル)−ビス−(3,3,5,5−テトラメチルピペラジノン)。このようなアミンには、ジ(1−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート:1−ヒドロキシ2,2,6,6−テトラメチル−4−ベンゾキシピペリジン;1−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナモイルオキシ)−ピペルジン;及びN−(1−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−4−イル)−エプシロンカプロラクタムなどのヒンダードアミン由来のヒドロキシルアミンが挙げられる。市販の立体障害アミンには、Lowilite 19、Lowilite 62、Lowilite 77、Lowilite 92及びLowilite 94が含まれる。
【0098】
(vii)シュウ酸ジアミド、例えば、4,4’−ジオクチルオキシ−オキサニリド、2,2’−ジ−オクチルオキシ−5’,5’−ジ−tert−ブチルオキサニリド、2,2’−ジ−ドデシルオキシ−5’,5’ジ−tert−ブチル−オキサニリド、2−エトキシ−2’−エチル−オキサニリド、N,N’−ビス(3−ジメチルアミノプロピル)−オキサルアミド、2−エトキシ−5−tert−ブチル−2’−エチルオキサニリド及び2−エトキシ−2’エチル−5,4−ジ−tert−ブチルオキサニリドとのその混合物、並びにo−及びp−メトキシ−、さらにはo−及びp−エトキシ−ジ置換オキサニリドの混合物。
【0099】
本発明のポリマー樹脂及び亜リン酸エステル組成物は、また、例えば1種又は複数の以下のものを含め、1種又は複数のさらなる添加剤を含み得る。
【0100】
(i)金属不活性化剤、例えば、N,N’−ジフェニルシュウ酸ジアミド、N−サリチラル−N’−サリチロイルヒドラジン、N,N’−ビス−サリチロイルヒドラジン、N,N’−ビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロフェニルプロピオニル)−ヒドラジン、サリチロイルアミノ−1,2,4−トリアゾール、ビス−ベンジリデン−シュウ酸ジヒドラジド。
【0101】
(ii)さらなる2次酸化防止剤、例えば、さらなる亜リン酸エステル及び/又は亜ホスホン酸エステル(phosphonite)、例えば、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸ジフェニルアルキル、亜リン酸フェニルジアルキル、亜リン酸トリス(ノニル−フェニル)、亜リン酸トリラウリル、亜リン酸トリオクタデシル、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト(diphosphite)、亜リン酸トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリステアリルソルビトールトリホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト及びテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンジホスホナイト(diphosphonite)。市販の2次酸化防止剤には、Naugalube TPP、Alkanox(商標)240、Ultranox(商標)626、Naugard P、Weston(商標)399、Weston TNPP、Weston 430、Weston 618F、Weston 619F、Weston DPDP、Weston DPP、Weston PDDP、Weston PTP、Weston TDP、Weston TLP、Weston TPP及びWeston TLTTP(トリチオ亜リン酸トリラウリル);Doverphos(商標)4、Doverphos 4−HR、Doverphos 4−HR Plus、Doverphos HiPure 4及びDoverphos S−9228;並びにHostanox PEPQが含まれる。
【0102】
(iii)過酸化物捕捉剤、例えば、βチオジプロピオン酸のエステル、例えば、ラウリル、ステアリル、ミリスチル又はトリデシルエステル、メルカプトベンゾイミダゾール、又は2−メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジオクタデシルジスルフィド、ペンタエリトリトールテトラキス−(β−ドデシルメルカプト)−プロピオネート。
【0103】
(iv)ポリアミド安定剤、例えば、ヨウ化物及び/又はリン化合物及び2価マンガンの塩と組み合わせた銅塩が、また、ポリマー樹脂及び/又は亜リン酸エステル組成物に含められ得る。
【0104】
(v)塩基性共安定剤、例えば、メラミン、ポリビニルピロリドン、ジシアンジアミド、シアヌル酸トリアリル、尿素誘導体、ヒドラジン誘導体、アミン、ポリアミド、ポリウレタン、ハイドロタルサイト、高級脂肪酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、例えば、ステアリン酸Ca、ステアロイル乳酸カルシウム、乳酸カルシウム、ステアリン酸Zn、オクタン酸Zn、ステアリン酸Mg、リシノール酸Na及びパルミチン酸K、ピロカテコール酸アンチモン、又はピロカテコール酸亜鉛。市販の共安定剤には、Chemturaによって製造されるMark(商標)6045、Mark 6045ACM、Mark 6055、Mark 6055ACM、Mark 6087ACM、Mark 6102、Mark CE 345、Mark CE 350及びMark CE 387;並びにDHT−4A(商標)が含まれる。
【0105】
(vi)造核剤及び清澄剤、例えば、4−tertブチル安息香酸、アジピン酸、ジフェニル酢酸の金属塩、ソルビトール及びその誘導体、安息香酸ナトリウム及び安息香酸。
【0106】
(vii)アミノオキシプロピオネート誘導体、例えば、メチル−3−(N,N−ジベンジルアミノキシ)プロパノエート;エチル−3−(N,N−ジベンジルアミノキシ)プロパノエート;1,6−ヘキサメチレン−ビス(3−N,N−ジベンジルアミノキシ)プロパノエート);メチル−(2−(メチル)−3(N,N−ジベンジルアミノキシ)プロパノエート);オクタデシル−3−(N,N−ジベンジルアミノキシ)プロパン酸;テトラキス(N,N−ジベンジルアミノキシ)エチルカルボニルオキシメチ)メタン;オクタデシル−3−(N,N−ジエチルアミノキシ)−プロパノエート;3−(N,N−ジベンジルアミノキシ)プロパン酸カリウム塩;及び1,6−ヘキサメチレンビス(3−(N−アリル−N−ドデシルアミノキシ)プロパノエート)。
【0107】
(viii)他の添加剤、例えば、可塑剤、滑剤、乳化剤、顔料、染料、蛍光発光剤、防炎剤、静電防止剤、発泡剤及び硫黄含有相乗剤(例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、又はチオジプロピオン酸ジステアリル)。
【0108】
任意選択で、ポリマー又はポリマー樹脂は、5〜50wt%、例えば、10〜40wt%、又は15〜30wt%のフィラー及び強化材を、例えば、炭酸カルシウム、シリケート、ガラス繊維、アスベスト、タルク、カオリン、マイカ、硫酸バリウム、金属酸化物及び水酸化物、カーボンブラック、並びにグラファイトを含み得る。
【0109】
本発明は、さらに、1つの成分が、本発明の固体亜リン酸エステル組成物を含み、他の成分がポリマー、例えば、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニルなど、又はポリマー樹脂を含む、安定化されたポリマーに関する。
【0110】
このような液体亜リン酸エステル組成物によって安定化されたポリマーは、当技術分野において知られているどのようなポリマーであってもよく、例えば、ポリオレフィンホモポリマー及びコポリマー、熱可塑性樹脂、ゴム、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアルキレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、スチレン系ポリマー及びコポリマー、ポリカーボネート、アクリルポリマー、ポリアミド、ポリアセタール、ハロゲン化物含有ポリマー、並びに生分解性ポリマーであり得る。異なるポリマーの混合物、例えば、ポリフェニレンエーテル/スチレン系樹脂のブレンド、ポリ塩化ビニル/ABS若しくは他の耐衝撃性改良ポリマー(例えば、メタクリロニトリル及びα−メチルスチレン含有ABS)、ポリエステル/ABS、又はポリカーボネート/ABS、並びにポリエステル+他の何らかの耐衝撃性改良剤もまた用いられ得る。このようなポリマーは、市販されている、又は、当技術分野においてよく知られている手段によって製造され得る。しかし、本発明の安定剤組成物は、熱可塑性ポリマーが加工及び/又は使用されることが多い極端な温度のために、熱可塑性ポリマー、例えば、ポリオレフィン、ポリカーボナート、ポリエステル、ポリフェニレンエーテル及びスチレン系ポリマーにおいて特に有用である。
【0111】
本発明の液体亜リン酸エステル組成物と組み合わせて用いられるポリマーは、溶液、高圧、スラリー及び気相を含め、様々な重合プロセスを用い、チーグラー−ナッタ、シングルサイト、メタロセン又はフィリップス型触媒を含め、様々な触媒を用いて製造される。液体亜リン酸エステル組成物が有用な非限定的ポリマーには、エチレン系ポリマー、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、エラストマー、プラストマー、高密度ポリエチレン、実質的に直鎖状の長鎖分岐ポリマー及び低密度ポリエチレン;並びにプロピレン系ポリマー、例えば、アタクチック、アイソタクチック及びシンジオタクチックポリプロピレンポリマーを含め、ポリプロピレンポリマー及びプロピレンコポリマー、例えば、プロピレンランダム、ブロック又はインパクトコポリマーが含まれる。
【0112】
ポリマー(通常、エチレン系ポリマー)は、0.86g/ccから0.97g/ccの範囲の、好ましくは0.88g/ccから0.965g/ccの範囲の、より好ましくは0.900g/ccから0.96g/ccの範囲の、より一層好ましくは0.905g/ccから0.95g/ccの範囲の、なお一層好ましくは0.910g/ccから0.940g/ccの範囲の、最も好ましくは0.915g/ccを超える、好ましくは0.920g/ccを超える、最も好ましくは0.925g/ccを超える密度を有する。通常、本発明に関連するプロセスによって製造されるポリマーは、1.5を超え約15まで、特に2を超え約10まで、より好ましくは約2.2を超え約8未満、より一層好ましくは約2.2から5未満、最も好ましくは2.5から4の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn))を有する。Mw/Mnの比は、当技術分野においてよく知られているゲル浸透クロマトグラフィー法によって求めることができる。一実施形態における本発明でのポリマーは、ASTM−D−1238−Eによって求めて、0.01dg/minから1000dg/min、より好ましくは約0.01dg/minから約100dg/min、より一層好ましくは約0.1dg/minから約50dg/min、最も好ましくは約0.1dg/minから約10dg/minの範囲のメルトインデックス(MI)又は(I2)を有する。一実施形態における本発明でのポリマーは、10から25未満、より好ましくは約15から25未満のメルトインデックス比(I21/I2)(I21は、ASTM−D−1238−Fによって求められる)を有する。好ましい実施形態における本発明でのポリマーは、好ましくは25を超える、より好ましくは30を超える、より一層好ましくは40を超える、なお一層好ましくは50を超える、最も好ましくは65を超えるメルトインデックス比(I21/I2)(I21は、ASTM−D−1238−Fによって求められる)を有する。
【0113】
本発明の固体亜リン酸エステル組成物と共に使用されるポリマーは、フィルム、シート及び繊維の押出及び共押出、さらには、ブロー成形、射出成形及び回転成形のような成形操作において有用である。フィルムには、食品接触及び非食品接触用途において、収縮フィルム、ラップ(cling)フィルム、ストレッチフィルム、シーリングフィルム、配向フィルム、スナック包材、丈夫な(heavy duty)袋、食料雑貨用袋、焼き食品及び冷凍食品包材、医療品包材、工業用ライナー、膜などとして有用で、共押出によって、又はラミネーションによって成形されるインフレーション(blown)又はキャストフィルムが含まれる。繊維には、フィルター、おむつ用生地、医療用衣類、ジオテキスタイルなどを製造するために、織られた又は織られていない状態で用いられる溶融紡糸、溶液紡糸及びメルトブロー繊維操作が含まれる。押出物品には、医療用チューブ、ワイヤ及びケーブルの被覆、ジオメンブレン及び池のライナーが含まれる。成形物品には、ボトル、タンク、大きな中空物品、硬質食品容器及び玩具などの形の単層及び多層構造物が含まれる。上記に加えて、液体亜リン酸エステル組成物は、タイヤ、バリヤ(barrier)などの様々なゴム系製品に用いられる。
【0114】
一実施形態において、固体亜リン酸エステル組成物は、飲料、食品及び他の人間の消耗品と接触した状態で用いられるポリマーに、好ましくはポリオレフィンに使用されるのに適切である及び/又は認められている。
【0115】
モノオレフィン及びジオレフィンのポリマー、例えば、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブテン−1、ポリメチルペンテン−1、ポリイソプレン、又はポリブタジエン、さらには、シクロオレフィンの、例えば、シクロペンテン又はノルボルネンのポリマー、ポリエチレン(これは、任意選択で、架橋されてもよい)、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が使用され得る。これらのポリマーの混合物、例えば、ポリプロピレンとポリイソブチレン、ポリプロピレンとポリエチレン(例えば、PP/HDPE、PP/LDPE)及び異なる種類のポリエチレンの混合物(例えば、LDPE/HDPE)もまた使用され得る。同じく有用であるのは、モノオレフィン及びジオレフィンと、互いとの、又は他のビニルモノマーとのコポリマー、例えば、エチレン/プロピレン、LLDPE及びLDPEとのその混合物、プロピレン/ブテン−1、エチレン/ヘキセン、エチレン/エチルペンテン、エチレン/ヘプテン、エチレン/オクテン、プロピレン/イソブチレン、エチレン/ブテン−1、プロピレン/ブタジエン、イソブチレン、イソプレン、エチレン/アクリル酸アルキル、エチレン/メタクリル酸アルキル、エチレン/酢酸ビニル(EVA)、又はエチレン/アクリル酸コポリマー(EAA)及びこれらの塩(イオノマー)、エチレンとプロピレン及びジエン(例えば、ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン又はエチリデン−ノルボルネン)とのターポリマー;さらには、このようなコポリマーの混合物、及び前記ポリマーとのこれらの混合物、例えば、ポリプロピレン/エチレンプロピレンコポリマー、LDPE/EVA、LDPE/EAA、LLDPE/EVA及びLLDPE/EAAである。
【0116】
オレフィンポリマーは、例えば、チーグラー−ナッタ触媒(例えば、MgCl、クロム20塩及びこれらの錯体、シリカ、シリカ−アルミナなどに任意選択で担持されている)の存在下で、オレフィンの重合によって製造され得る。オレフィンポリマーは、また、クロム触媒、又はシングルサイト触媒(例えば、Ti及びZrなどの金属のシクロペンタジエン錯体などのメタロセン触媒)を用いて製造され得る。当業者が容易に理解し得るように、本明細書において用いられているポリエチレンポリマー、例えばLLDPEは、例えば、1−ブテン、1−ヘキセン及び1−オクテンコモノマーなどの様々なコモノマーを含み得る。
【0117】
ポリマーには、また、スチレン系ポリマー、例えば、ポリスチレン、ポリ−(p−メチルスチレン)、ポリ−(α−メチルスチレン)、スチレン若しくはα−メチルスチレンとジエン若しくはアクリル誘導体とのコポリマー、例えば、スチレン/ブタジエン(SBR)、スチレン/アクリロニトリル、スチレン/メタクリル酸アルキル、スチレン/無水マレイン酸、スチレン/マレイミド、スチレン/ブタジエン/アクリル酸エチル、スチレン/アクリロニトリル/アクリル酸メチル、スチレンコポリマーと他のポリマー、例えば、ポリアクリレート、ジエンポリマー、又はエチレン/プロピレン/ジエンターポリマーとによる高衝撃強度混合物;並びにスチレンのブロックコポリマー、例えば、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン、又はスチレン/エチレン/プロピレン/スチレンも含まれ得る。
【0118】
スチレン系ポリマーには、加えて、又は別のものとして、スチレン若しくはα−メチルスチレンのグラフトコポリマー、例えば、ポリブタジエンへのスチレン、ポリブタジエン−スチレン若しくはポリブタジエン−アクリロニトリルへのスチレン;ポリブタジエン及びそのコポリマーへのスチレン及びアクリロニトリル(若しくはメタクリロニトリル);ポリブタジエンへのスチレン及び無水マレイン酸若しくはマレイミド;ポリブタジエンへのスチレン、アクリロニトリル及び無水マレイン酸若しくはマレイミド;ポリブタジエンへのスチレン、アクリロニトリル及びメタクリル酸メチル、ポリブタジエンへのスチレン及びアクリル酸アルキル若しくはメタクリル酸アルキル、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマーへのスチレン及びアクリロニトリル、ポリアクリレート若しくはポリメタクリレートへのスチレン及びアクリロニトリル、アクリレート/ブタジエンコポリマーへのスチレン及びアクリロニトリルのグラフト、さらには、上で示されたスチレン系コポリマーとのこれらとの混合物が含まれ得る。
【0119】
適切なゴムには、天然ゴム及び合成ゴムの両方、並びにこれらの組合せが含まれる。合成ゴムには、これらに限らないが、例えば、熱可塑性ゴム、エチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン(EPDM)ゴム、エチレン/α−オレフィン(EPR)ゴム、スチレン/ブタジエンゴム、アクリルゴム、ニトリルゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、アクリロニトリル/ブタジエン(NBR)ゴム、ポリクロロプレンゴム、ポリブタジエンゴム、イソブチレン−イソプレンコポリマーなどが含まれる。熱可塑性ゴムには、SIS、溶液及びエマルジョンSBSなどが含まれる。
【0120】
ニトリルポリマーもまた、本発明のポリマー組成物において有用である。これらには、アクリロニトリル及びその類似体のホモポリマー及びコポリマー、例えば、ポリメタクリロニトリル、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル/ブタジエンポリマー、アクリロニトリル/アクリル酸アルキルポリマー、アクリロニトリル/メタクリル酸アルキル/ブタジエンポリマー及びスチレン系樹脂に関連して上で挙げられた様々なABS組成物が含まれる。
【0121】
アクリル酸、メタクリル酸、メチルメタクリル酸及びエタクリル酸、並びにこれらのエステルなどのアクリル酸系のポリマーもまた、用いられ得る。このようなポリマーには、ポリメタクリル酸メチル、及びアクリロニトリル型モノマーの全て又は一部がアクリル酸エステル又はアクリル酸アミドによって置き換えられたABS型グラフトコポリマーが含まれる。他のアクリル型モノマー、例えば、アクロレイン、メタクロレイン、アクリルアミド及びメタクリルアミドを含むポリマーもまた用いられ得る。
【0122】
ハロゲン含有ポリマーもまた、本発明の亜リン酸エステル混合物により安定化され得る。これらには、ポリクロロプレン、エピクロロヒドリンのホモ−及びコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリ臭化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、フッ化ポリビニリデン、臭素化ポリエチレン、塩素化ゴム、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、塩化ビニル−エチレンコポリマー、塩化ビニル−プロピレンコポリマー、塩化ビニル−スチレンコポリマー、塩化ビニル−イソブチレンコポリマー、塩化ビニル−塩化ビニリデンコポリマー、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸ターポリマー、塩化ビニル−スチレン−アクリロニトリルコポリマー、塩化ビニル−ブタジエンコポリマー、塩化ビニルイソプレンコポリマー、塩化ビニル−塩素化プロピレンコポリマー、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニルターポリマー、塩化ビニル−アクリル酸エステルコポリマー、塩化ビニル−マレイン酸エステルコポリマー、塩化ビニル−メタクリル酸エステルコポリマー、塩化ビニル−アクリロニトリルコポリマー及び内部可塑化ポリ塩化ビニルなどのポリマーが含まれる。
【0123】
他の有用なポリマーには、環状エーテルのホモポリマー及びコポリマー、例えば、ポリアルキレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、又はビスグリシジルエーテルとのこれらのコポリマー;ポリアセタール、例えば、ポリオキシメチレン及びコモノマーとしてエチレンオキシドを含むポリオキシメチレン;熱可塑性ポリウレタン、アクリレート、若しくはメタクリロニトリル含有ABSにより改質されたポリアセタール;ポリフェニレンオキシド及びポリフェニレンスルフィド、並びにポリフェニレンオキシドとポリスチレン若しくはポリアミドとの混合物;ポリカーボネート及びポリエステルカーボネート;ポリスルホン、ポリエーテルスルホン及びポリエーテルケトン;ジカルボン酸とジオールから、及び/又は、ヒドロキシカルボン酸若しくは対応するラクトンから誘導されるポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−ジメチロール−シクロヘキサンテレフタレート、ポリ−2−(2,2,4(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン)テレフタレート及びポリヒドロキシベンゾエート、さらには、ヒドロキシル末端基を有するポリエーテルから誘導されるブロックコポリエーテルエステルが含まれる。
【0124】
ビスアミン及びジカルボン酸から、及び/又はアミノカルボン酸若しくは対応するラクタムから誘導されるポリアミド及びコポリアミド、例えば、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド6/6、6/10、6/9、6/12及び4/6、ポリアミド11、ポリアミド12、m−キシレンビスアミンとアジピン酸の縮合によって得られる芳香族ポリアミド;ヘキサメチレンビスアミンとイソフタル酸又は/及びテレフタル酸から、また任意選択で改質剤としてのエラストマーから製造されるポリアミド、例えば、ポリ−2,4,4−トリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド、又はポリ−m−フェニレンイソフタルアミドが有用であり得る。さらに、前記ポリアミドと、ポリオレフィン、オレフィンコポリマー、イオノマー又は化学的に結合されたか若しくはグラフトされたエラストマーとの;或いは、ポリエーテルとの、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール若しくはポリテトラメチレングリコールとのコポリマー、並びにEPDM若しくはABSにより改質されたポリアミド又はコポリアミドが用いられ得る。
【0125】
別の実施形態において、ポリマーは、生分解性ポリマー又は堆肥化可能(compostable)ポリマーを含む。生分解性ポリマーは、分解が、自然に見出される微生物、例えば、細菌、菌類及び藻類の作用により生じるポリマーである。堆肥化可能ポリマーは、堆肥にしている間に、生物学過程によって分解を受けて、他の堆肥化可能物質と調和した速度で、CO、水、無機化合物及びバイオマスを生じる。通常、生分解性又は堆肥化可能ポリマーは、植物原料から誘導される、また合成して製造される。生分解性又は堆肥化可能ポリマーの例には、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸)(PLA)及びこれらのコポリマーが含まれる。生分解性又は堆肥化可能ポリマーは、また、植物デンプンと通常の石油系ポリマーとのブレンドにより誘導され得る。例えば、生分解性ポリマーは、ポリオレフィンとブレンドされ得る。
【0126】
ポリオレフィン、ポリアルキレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル及びスチレン系ポリマー、並びにこれらの混合物がより好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテルのホモポリマー及びコポリマー、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、ポリカーボネート及びABS型グラフトコポリマー、並びにこれらの混合物が特に好ましい。
【0127】
一実施形態において、固体亜リン酸エステル組成物は、天然及び合成ワックス、例えば、n−パラフィンワックス、クロロパラフィン、α−オレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、アミドワックス及びフィッシャー−トロプシュワックスを安定化するために添加される。これらのワックスは、蝋燭を製造するのに適切であり得る。
【0128】
本発明の安定剤は、ポリマーに、それによる成形物品の製造の前の都合のよい任意の段階で、通常の技術によって、容易に組み入れられ得る。例えば、安定剤は、乾燥粉末状態でポリマーと混合されても、又は、安定剤の懸濁液又はエマルジョンが、ポリマーの溶液、懸濁液、若しくはエマルジョンと混合されてもよい。本発明の安定化された組成物は、また、約0.001から約5wt%、例えば、約0.0025から約2wt%、又は約0.05から約0.25wt%の様々な通常の添加剤、例えば、先に記載されたもの、又はそれらの混合物を任意選択で含み得る。
【0129】
本発明の安定剤は、たとえポリマーがかなりの回数の押出を受け得るとしても、特に高温加工において、メルトインデックス及び/又は色の変化に対して、ポリマー組成物の安定化を有利に補助する。本発明の安定剤は、ポリマー組成物に、それによる成形物品を製造する前の都合のよい任意の段階で、通常の技術によって、容易に組み入れられ得る。例えば、安定剤は、乾燥粉末状態でポリマーと混合され得る、或いは、安定剤の懸濁液又はエマルジョンが、ポリマーの溶液、懸濁液、又はエマルジョンと混合され得る。
【0130】
本発明の組成物は、様々な方法によって、例えば、成分を、配合物に望まれる任意のさらなる材料とよく混合することを含む方法によって製造できる。適切な方法には、溶液ブレンド及び溶融ブレンドが含まれる。工業的なポリマー加工施設では溶融ブレンド装置が利用できるので、溶融ブレンドの方法が一般に好ましい。このような溶融混練(melt compounding)方法において用いられる装置の例には、同方向回転及び異方向回転押出機、1軸押出機、ディスクパック(disc−pack)プロセッサ、並びに様々な他の種類の押出装置が含まれる。ある事例では、混練された材料が、ダイの小さな出口孔を通って押出機を出て、得られる溶融樹脂ストランドが、水浴にストランドを通すことによって冷却される。冷却されたストランドは、梱包及びさらなる取扱いのために、小さなペレットに切断され得る。
【0131】
成分の全てが、最初に加工装置に加えられ得る、さもなければ、特定の添加剤が、互いに、又はポリマー若しくはポリマー樹脂の一部と共に、予め混ぜ合わせられて、安定剤コンセントレートが製造される。さらに、溶融物の脱気(大気中又は真空のいずれか)ができるように、少なくとも1つのベントポートを用いることもまた、時には、利点がある。当業者は、ブレンド時間及び温度を、さらには、成分の添加位置及び順序を、過度の追加実験作業なしに、調整することが可能であろう。
【0132】
本発明の安定剤は、ポリマーに、それらを成形物品に製造する前に、通常の技術によって都合よく組み入れることができ、また、本発明の安定剤を、完成された物品に局所適用することによって、適用することも可能である。物品は、本発明の安定剤化合物及びポリマーを含むことができ、例えば、ヘッドランプカバー、ルーフィングシート、電話機カバー、航空機インテリア、建築物インテリア、コンピュータ及び事務機ハウジング、自動車パーツ、並びに家庭用器具に製造され得る。物品は、押出、射出成形、回転成形、圧縮成形(compaction)及び他の方法によって製造され得る。これは、繊維用途で特に有用であり、この場合、本発明の安定剤が、例えば、溶融紡糸プロセスの間に紡糸仕上げ剤として、繊維に局所適用される。
【0133】
他の用途
別の実施形態において、亜リン酸エステル組成物を反応させて、さらなる用途を有し得る新しい誘導体製品を生成することが望ましいことであり得る。例えば、Hechenbleikner他の米国特許第3,056,823号(これは、参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているものなどのエステル交換プロセスもまた、用いられ得る。特に、Hechenbleikner他によって記載されたプロセスは、亜リン酸トリアリールとモノヒドロキシ炭化水素を、少量だが、触媒として効果のある量の金属アルコラート又は金属フェノラートの存在下で、エステル交換することを含む。汚染を避けるために、エステル交換される特定のアルコールのアルコラートが用いられる。予め生成したアルコラートを用いる代わりに、アルコラートは、アルコールに、亜リン酸トリアリールを添加する前に、金属、例えば、ナトリウム、カリウム又はリチウムを添加することによって、その場で(in situ)生成されてもよい。モノアルコール及び亜リン酸トリアリールは、1モルの亜リン酸トリアリールに対して3モルのアルコールのモル比で反応させる。
【0134】
さらに詳述しなくても、当業者は、本明細書における説明を用いて、その最大限度まで本発明を利用できると考えられる。以下の実施例は、当業者に、特許請求された本発明を実施する際の追加の手引きを提供するために含められる。記載されている例は、本出願の教示に寄与する成果を単に代表するにすぎない。したがって、これらの例は、添付の特許請求の範囲に定められる本発明を、如何なる仕方においても、限定しようとするものではない。本発明の根底にある原理から逸脱することなく成され得る多くの変更及び修正を考慮すると、本発明によって与えられるべき保護の範囲の理解のためには、添付の特許請求の範囲が参照されるべきである。本発明が、これから、以下の非限定的実施例によって、さらに説明される。
【実施例】
【0135】
(例1)
4−tert−ブチルフェノール及び2,4−ジ−tert−ブチルフェノールの混合物から製造される固体亜リン酸エステル
2,4−ジ−tert−ブチルフェノール(93.3g、0.45mol)、4−tert−ブチルフェノール(17.0g、0.11mol)及びN,N−ジメチル−ドデシルアミン(2.47ml、9mmol)を、オイルジャケット付きフラスコに投入し、窒素下で、90℃に加熱した。PCl(25.0g、0.18mol)を、フェノール類の表面の下に、3時間かけて一定の割合で加えた。添加の間に、温度を150℃に上げた。反応物を、HClの発生が止まるまで、150℃に保ち、次いで、200℃に1時間かけて加熱し、その間に、圧力を1000から50mbarに下げた。全Cl含有量が50ppm未満になるまで、反応物を200℃/50mbarに保った。次に、余分なフェノール類及びアミン触媒を、1mbarの圧力及び225℃の内部温度の下で、蒸留によって除去した。溶融物を取り出し、室温まで放冷した。冷却の間に、混合亜リン酸エステル組成物は固化した。収量=97.6g。
HPLC分析により、固体亜リン酸エステルの組成は以下であることが明らかになった。
【表2】


例1の亜リン酸エステル組成物は、46から48℃で軟化し、流動するようになった。DSC分析により、最後の吸熱現象が152℃で起こることが明らかになった(約19.5J/gの融解熱)。比較として、亜リン酸トリ(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)は、その融解範囲の180〜185℃に達するまで、軟化の徴候を示さなかった。DSC分析により、188℃での吸熱現象が明らかになった(求められた融解熱は約65J/g)。
DSC分析は、窒素下で、10℃/minの加熱速度で実施し、挙げられている温度は、ピークの極大で求めた。
【0136】
(例2)
4−tert−ブチルフェノール及び2,4−ジ−tert−ブチルフェノールの混合物から製造される固体亜リン酸エステル
2,4−ジ−tert−ブチルフェノール(108.25g、0.52mol)、4−tert−ブチルフェノール(8.75g、0.06mol)及びN,N−ジメチル−ドデシルアミン(2.47ml、9mmol)を、オイルジャケット付きフラスコに投入し、窒素下で、90℃に加熱した。PCl(25.0g、0.18mol)を、フェノール類の表面の下に、3時間かけて一定の割合で加えた。添加の間に、温度を150℃に上げた。反応物を、HClの発生が止まるまで、150℃に保ち、次いで、200℃に1時間かけて加熱し、その間に、圧力を1000から50mbarに下げた。全Cl含有量が50ppm未満になるまで、反応物を200℃/50mbarに保った。次に、余分なフェノール類及びアミン触媒を、真空蒸留によって除去した。溶融物を取り出し、室温まで放冷した。冷却の間に、混合亜リン酸エステル組成物は固化した。収量=80.3g。
HPLC分析により、固体亜リン酸エステルの組成は以下であることが明らかになった。
【表3】


例2の亜リン酸エステル組成物は、163℃で流動するようになった。DSC分析により、最後の吸熱現象が165℃で起こることが明らかになった(約40J/gの融解熱)。
DSC分析は、窒素下で、10℃/minの加熱速度で実施し、挙げられている温度は、ピークの極大で求めた。
【0137】
(例3)
4−tert−アミルフェノール及び2,4−ジ−tert−アミルフェノールの混合物から製造される固体亜リン酸エステル
2,4−ジ−tert−アミルフェノール(117.1g、0.50mol)、4−tert−アミルフェノール(9.1g、0.06mol)及びN,N−ジメチル−ドデシルアミン(2.47ml、9mmol)を、オイルジャケット付きフラスコに投入し、窒素下で、90℃に加熱した。PCl(25.0g、0.18mol)を、フェノール類の表面の下に、3時間かけて一定の割合で加えた。添加の間に、温度を150℃に上げた。反応物を、HClの発生が止まるまで、150℃に保ち、次いで、200℃に1時間かけて加熱し、その間に、圧力を1000から50mbarに下げた。全Cl含有量が50ppm未満になるまで、反応物を200℃/50mbarに保った。次に、余分なフェノール類及びアミン触媒を、真空蒸留によって除去した。溶融物を取り出し、室温まで放冷した。冷却の間に、混合亜リン酸エステル組成物は固化した。収量=84.9g。
HPLC分析により、固体亜リン酸エステルの組成は以下であることが明らかになった。
【表4】


混合亜リン酸エステル組成物は、81.4℃で融解することが分かった(DSCによる)。DSC分析は、窒素下で、10℃/minの加熱速度で実施し、挙げられている温度は、ピークの極大で求めた。
【0138】
(例4)
高いジ−tert−ブチルフェノール含有量を有するブチル化フェノールアルキレートの製造
Amberlyst 15(15.0g)を溶融フェノール(4×50g)で洗った。最後の洗いの後、Amberlyst 15/フェノールのスラリーを、窒素下で、予め加熱した(90℃)ジャケット付き容器に投入した。用いるフェノールの全量が150g(1.59mol)となるように、さらなる溶融フェノールを容器に投入し、混合物を撹拌しながら90℃に加熱した。ガラスフリット(frit)焼結体を用いて、フェノールの表面の下に、2−メチルプロペン(189.7g、3.38mol)を3時間かけて一定の割合で加えた。添加が完了すると、アルキル転移反応(transalkylation)が進むように、反応物を90℃に保った。3時間後、放置してAmberlyst 15を沈殿させた。ブチル化フェノールを、デカンテーションによって樹脂から分離し、次いで、濾過して、細粒を除去した。粗ブチル化フェノールの収量=272.0g。
粗ブチル化フェノールを、真空分別蒸留装置に投入した。アルキル化されていないフェノール及び全ての残留水を、蒸留によって除去した。これは、水含有量が50ppm未満になり、フェノール含有量が0.5%未満になった時に完了したと見なした。蒸留を続けて、<0.1wt%のphenol;0.31wt%の2−tert−ブチルフェノール;19.8wt%の4−tert−ブチルフェノール;78.2wt%の2,4−ジ−tert−ブチルフェノール(1.7wt%のブチル化フェノールの副生成物)を含む、ブチル化フェノールアルキレートの主留分(204.3g)を得た。
【0139】
(例5)
高いジ−tert−ブチルフェノール含有量を有するブチル化フェノールアルキレートから製造される固体亜リン酸エステル
例4で製造したブチル化フェノールアルキレート(112.6g、0.58mol)を、窒素下で、予め加熱した(100℃)ジャケット付き容器に投入した。ブチル化フェノールを、撹拌しながら100℃に加熱し、N,N−ジメチル−ドデシルアミン(2.47ml、9mmol)を加えた。三塩化リン(25g、0.18mol)を、ブチル化フェノールの表面の下に、3時間かけて一定の割合で加えた。添加の間に、温度を、100℃から150℃に上げた。全ての三塩化リンを添加したら、反応物を、150℃に1時間保った。次いで、反応物を150℃から200℃に1時間かけて加熱した。反応物が200℃になったら、全塩素含有量が50ppm未満になるまで、真空(60〜80mbarの圧力)によって脱ガスした。余分なブチル化フェノールを、遊離フェノール類含有量が<1000ppmになるまで、1.5mbarの圧力及び250℃までの内部温度(最高蒸気温度は125℃)の下で、蒸留によって除去した。溶融した蒸留残留物を取り出し、白色固体亜リン酸エステルを得た。亜リン酸エステルの収量=88.5g。
HPLC分析により、固体亜リン酸エステルの組成は以下であることが明らかになった。
【表5】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)20から93重量パーセントの量の亜リン酸トリス(ジアルキルアリール);並びに
(b)亜リン酸ビス(ジアルキルアリール)モノアルキルアリール;
(c)亜リン酸ビス(モノアルキルアリール)ジアルキルアリール;及び
(d)亜リン酸トリス(モノアルキルアリール)
の少なくとも1種を含む亜リン酸エステル組成物であって、
成分(b)、(c)及び(d)を、合わせて該組成物中の全ての亜リン酸エステルの全重量に対して、7から80重量パーセントの量で含み、0から5重量パーセントの他の亜リン酸エステルを含み、
かつ、25℃を超える温度で始まる融解範囲を有し、大気条件で固体である上記亜リン酸エステル組成物。
【請求項2】
トリアルキルアリール部分を含む亜リン酸エステル及び無置換アリール部分を含む亜リン酸エステルからなる群から選択される他の亜リン酸エステルを、0.1から5重量パーセント含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
トリアルキルアリール部分を含む亜リン酸エステルを含み、亜リン酸エステルに含まれる全てのアリール部分の0.1から4重量パーセントが、トリアルキルアリール部分である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記亜リン酸エステル組成物の全重量に対して、0から5重量パーセントの遊離フェノール類を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物の全重量に対して、0.5重量パーセント未満の遊離フェノール類を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
成分(a)及び(b)を、合せて前記組成物中の全ての亜リン酸エステルの全重量に対して、51重量パーセントを超える量で含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
成分(a)及び(b)を、合わせて、前記組成物中の全ての亜リン酸エステルの全重量に対して、74重量パーセントを超える量で含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物中の全ての亜リン酸エステルの全重量に対して、
25重量パーセントから80重量パーセントの量の前記亜リン酸トリス(ジアルキルアリール)、
10重量パーセントから50重量パーセントの量の前記亜リン酸ビス(ジアルキルアリール)モノアルキルアリール、
3重量パーセントから25重量パーセントの量の前記亜リン酸ビス(モノアルキルアリール)ジアルキルアリール、
0.1から6重量パーセントの量の前記亜リン酸トリス(モノアルキルアリール)、及び
0から5重量パーセントの他の亜リン酸エステル
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
亜リン酸エステルに含まれるアリール部分の少なくとも55重量パーセントが、アルキル基により、オルト位及びパラ位の両方で置換されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
亜リン酸エステルに含まれるアルキル基が、ブチル及びアミルの異性体から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記亜リン酸トリス(ジアルキルアリール)が、亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)、又は亜リン酸トリス(2,4−ジ−t−アミルフェニル)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
ハロゲン化リンと、アルキル化フェノール組成物中であって、該アルキル化フェノール組成物中の全てのアルキル化フェノールの全重量に対して、モノアルキル化フェノールを2から45重量パーセントの量で、及びジアルキル化フェノールを55から98重量パーセントの量で含む上記アルキル化フェノール組成物とを反応させることによって製造される亜リン酸エステル組成物であって、
(a)20から93重量パーセントの量の亜リン酸トリス(ジアルキルアリール);並びに
(b)亜リン酸ビス(ジアルキルアリール)モノアルキルアリール;
(c)亜リン酸ビス(モノアルキルアリール)ジアルキルアリール;及び
(d)亜リン酸トリス(モノアルキルアリール)
の少なくとも1種を含み、
成分(b)、(c)及び(d)を、合わせて該組成物中の全ての亜リン酸エステルの全重量に対して、7から80重量パーセントの量で含み、0から5重量パーセントの他の亜リン酸エステルを含み、かつ、
25℃を超える温度で始まる融解範囲を有し、大気条件で固体である、
上記亜リン酸エステル組成物。
【請求項13】
前記アルキル化フェノール組成物が、1種又は複数種のオレフィンを、触媒の存在下で、また該アルキレート組成物を生成するのに効果的な条件下で、フェノールと接触させることによって製造され、該1種又は複数種のオレフィンと該フェノールのモル比が、1.25:1から3:1である、請求項12に記載の亜リン酸エステル組成物。
【請求項14】
前記アルキル化フェノール組成物が、該アルキル化フェノール組成物中の全てのアルキル化フェノールの全重量に対して、ジアルキルフェノールを60から95重量パーセントの範囲の量で、またモノアルキルフェノールを5から40重量パーセントの範囲の量で含む、請求項12に記載の亜リン酸エステル組成物。
【請求項15】
前記モノアルキルフェノール及び前記ジアルキルフェノール上に、ブチル及びアミルの異性体から選択されるアルキル部分を生成するように、前記アルケンがブテン又はペンテンである、請求項13に記載の亜リン酸エステル組成物。
【請求項16】
前記アルキル化フェノール組成物中のアルキル部分の少なくとも50重量パーセントが、t−ブチルである、請求項13に記載の亜リン酸エステル組成物。
【請求項17】
前記アルキル化フェノール組成物中のアルキル部分の少なくとも50重量パーセントが、tert−アミルである、請求項13に記載の亜リン酸エステル組成物。
【請求項18】
(a)ポリマー;及び
(b)請求項1に記載の亜リン酸エステル組成物
を含む、安定化されたポリマー組成物。
【請求項19】
亜リン酸エステルに含まれるアリール部分の少なくとも55重量パーセントが、アルキル基により、オルト位及びパラ位の両方で置換されており、少なくとも10重量パーセントがパラ位でモノ置換されており、0.1から3重量パーセントがトリ置換されており、かつ、0.1から3重量パーセントがオルト位でモノ置換されている、請求項1に記載の組成物。


【図1】
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【公表番号】特表2013−501092(P2013−501092A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522987(P2012−522987)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/043465
【国際公開番号】WO2011/014527
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(508201282)ケムチュア コーポレイション (69)
【Fターム(参考)】