説明

固体又は溶融材料を処理するための方法

本発明は、固体若しくは溶融材料及び/又は自然発火性材料、特に裁断機からの軽量画分を処理する又は還元するための方法であって、固体又は溶融材料は、黒鉛体に負荷され、少なくとも部分的に誘導的に加熱される上記方法に関する。黒鉛の炭素に由来する種々の還元剤が導入される。還元された及び/又は脱気された溶融物が収集される。還元剤は、固体又は溶融原料と共に導入される。天然ガス、炭化水素、水素、一酸化炭素及び/又はアンモニアが、蒸気、酸素、二酸化炭素及び/又はハロゲン若しくはハロゲン化炭化水素と共に、還元剤として導入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体若しくは溶融材料及び/又は自然発火性材料、特に裁断機からの軽量画分、裁断された使用済みタイヤ、油性ミルスケール、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、汚染された使用済み木材、汚染された掘削材料(ダイオキシン又はフラン)、石油蒸留残渣及び乾燥下水スラッジを処理及び/又は還元するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粉塵及びスラグ、特に廃棄物スラグ、裁断機からの軽量画分、コーティングされたアルミ箔のような複合材料、製鋼スラグ、並びに非鉄冶金及び無機技術に由来するスラグは、多くの金属酸化物を含有し、製鋼スラグの場合にはスラグに相当量の重金属酸化物が含有されている。このような望ましくない金属酸化物、並びに、特に、クロム、バナジウム、モリブデン、タングステン、コバルト、マンガン、鉛、銅及び亜鉛の酸化物を還元するために、溶解炭素を含有する好適な還元金属浴、特に鉄浴上に液体溶融物を注ぐことが既に提案されており、これにより、還元された金属は、金属レギュラス内に移行することとなる。しかし、このような方法を経済的に実施するには、ほとんどの場合、出発材料を溶融物として直接用いて、溶融物の顕熱を利用することができるようにする必要がある。このタイプの全ての酸化還元反応において、スラグは、さらに、金属浴と平衡状態にあり、平衡状態が原因で、重金属酸化物は、スラグに残存する酸化物が分析検出限界未満となり得る程度までに完全には還元され得ない。このことは、特に、酸化クロム及び酸化バナジウムに当てはまり、これらの酸化物は、還元されたスラグにおいて、ほぼ1000ppmを超える量で残存し得る。
【0003】
ガラス及び特にガラス溶融物は、このようなガラス溶融物から実に極めて微量の重金属酸化物が定量的に除去されると、無色の状態でのみ生成され得る、なぜなら、金属酸化物は、それぞれの色をガラスに付与し得るからである。ガラス又はガラス溶融物を処理するとき、金属酸化物を排除するための還元プロセスにおいて、最も微細なガラス気泡も形成されるため、さらにこれらを確実に除去するためには、原則として清澄がさらに必要とされることとなる。このことが実現可能となるのは、相応の高温及び相応の低粘性溶融物、並びに依然としてガスの漏れを可能にする比較的低い湯面の場合のみであろう。
【0004】
これに関連して、固体粒子及び/又は溶融物を、少なくとも部分的に誘導的に加熱された、塊状コークスを含有するベッド又はカラム上に供給すること、並びに還元された及び/又は脱気された流出する溶融物を収集することがWO2006/079132A1において既に提案されている。このようなコークスベッドは、公知の金属浴よりも実質的に高い還元電位を有し、溶融操作及び還元操作は、両方とも、コークスベッド内に、又はコークス粒子上において直接実施される。しかし、該方法は、コークスベッドが比較的高い硫黄含量を有し且つ非常に高い誘導周波数においてのみ結合するという欠点を含んでいたため、電気機器の観点から比較的高い費用を必要とした。それぞれの周波数は、約50〜100kHzであった。これらの周波数は、ひいては、表皮効果のためにコークスベッドの外縁部のみに導入され得る結果となった。コークスベッドをバルクの中央においても十分に加熱するためには、高入力が必要とされた。なぜなら、誘導的に加熱された縁部ゾーンからコークスを通してのその中央までの熱伝導は、非常に低い程度でしか起こらなかったからであった。さらに、公知の方法は、コークスが還元反応の過程で徐々に消費されるため、連続的に補充されなければならず、装置の点において比較的高価な測定器が必要とされるという欠点を含んでいた。主な問題は、冷コークスを赤熱バルク上に供給するとき、コークスが極めて微細な粉塵に分解されるため、バルクの十分に高い気孔率がもはや保証されなかったこと及び高い圧力損失が受け入れられなければならなかったことであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、言及した欠点を回避しながら、固体材料だけでなく溶融物も、特に簡単且つ経済的な様式で重金属酸化物をかなりの程度まで定量的に含まないようにすることができ、特に、多くの重金属酸化物を検出限界未満まで排除でき、ここで、同時に、プロセスの過程において投入又は形成された溶融物が確実に完全に脱気又は純化されることになるという効果があるように、初めに定義した種類の方法を改善することを目的とする。特に、裁断機からの、軽量画分のような問題となる材料を容易に処理することが可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を解決するために、本発明による方法は、固体又は溶融材料が少なくとも部分的に誘導的に加熱された黒鉛体上に装入されること、黒鉛の炭素と異なる還元剤が導入されること、並びに流れ出る還元された及び/又は脱気された溶融物が収集されることに本質的にあり、ここで、還元剤は、固体又は溶融投入材料と共に導入され、上記還元剤として、天然ガス、褐炭粉、炭化水素、水素、一酸化炭素及び/又はアンモニアが、水蒸気、酸素、二酸化炭素及び/又はハロゲン若しくはハロゲン化水素と一緒に導入される。
【0007】
還元剤は、誘導的に加熱されたバルク自体によってはもはや形成されないが、導入される、特に、固体又は溶融装入材料と共に、或いは固体若しくは溶融装入材料又は自然発火性材料として導入されるため、誘導的に加熱された黒鉛体は使い尽くされず、又は無視できる程度にのみ消費されて、その結果、黒鉛を補充するための高価なデバイスを完全に取り除くことができる。黒鉛バルクは基本的には使い尽くされないため、バルク内で黒鉛パラメータの軸方向及び半径方向の勾配の両方を調整することが可能になった。したがって、例えば、温度及び流れ条件を最適化するために、個々の黒鉛体のサイズ、形状、結晶含量及び電気伝導度に局所的に影響を与えてそれぞれの効果を達成することが可能である。既に言及した反応体の他に、酸化及び予備熱処理された製鋼工場粉塵を使用することもできる。鉛、ハロゲン及びアルカリは、予備熱処理の間に反応器の外側に放出されて、非常に純粋な亜鉛を、場合により酸化物の形態で本発明による方法の排ガスから回収することを可能にする。
【0008】
還元剤は、固体若しくは溶融装入材料の成分として、又は装入材料から別々に導入され得る。
【0009】
裁断機からの軽量画分は、黒鉛上に装入されて、約1500〜2000℃で気化される。高温且つ還元雰囲気に起因して、ダイオキシン、フラン及びPCBが直ちに開裂され得る。タールも同様に気化され得る。生成された熱分解コークスは、水蒸気及び/又は酸素の添加によって気化される。含有される可能性がある硫黄は、それ相応に調整されたスラグに硫化カルシウムとして溶解している。金属成分及びスラグ成分は液化されて、別々に採取され得る。生成された汚染ガスは吸引されてガス処理され、そこで精製される。気化剤として注入された水蒸気及び酸素により、精製されたガスは、空気によって希釈されることはなく、したがって、窒素酸化物(NOx)を含まないこととなる。ガスは、還元ガスとして溶鉱炉において、或いは直接還元プロセスのために、代替の燃料ガスとしてセメントクリンカーキルンにおいて、種々の冶金(予熱)炉のために、(例えば、ガスエンジンにおいて)電気への直接変換のために、又はその高いH含量に起因してフィッシャー−トロプス合成のために好ましくは用いられる。
【0010】
固体粒子及び/又は溶融物が、誘導的に加熱された黒鉛体上に装入され、且つ還元剤が導入されるため、生じる還元反応とは独立した還元に必要とされる熱エネルギーを提供することが可能となった。黒鉛体は、この場合、塊状の黒鉛のベッド、カラム又はバルクによって好ましくは形成されていてよい。代替的には、黒鉛体は、貫通チャネル(through−going channel)、穴などを含む黒鉛ブロックとして構成されていてよい。全てのこれらの構成が共通して有するのは、ベッド、カラム若しくはバルクの黒鉛塊(lump)間に依然として存在する、又は黒鉛ブロックのチャネル若しくは穴にある隙間(clearance)であり、該隙間では、還元反応が気相で主として起こる。還元は黒鉛体のこれらの隙間において直ちに起こり得、ここで、溶融物の凝集もまた、高い乱流及び表面力に起因して起こることになる。反応メカニズムは、一酸化炭素を用いて金属酸化物を金属と二酸化炭素とに、又は水素を用いて金属と水とに間接的に還元することと、炭素を用いて金属酸化物を金属と一酸化炭素とに直接還元することとを含み得る。次いで、二酸化炭素は反応性炭素によって一酸化炭素に変換され、形成する水は水性ガス反応を介して炭素と反応して水素及び一酸化炭素となる。
【0011】
本発明による方法は、必要な熱エネルギー及び還元剤を別々に提供することを可能にするため、複数の異なる還元剤を使用することができ、ここで、実際に使用した還元剤は、還元要件及び経済的態様に応じて選択され得る。
【0012】
非常に良好な電気伝導体である黒鉛は、電気設備の観点から、言及した欠点を回避できるように実質的により低い誘導周波数で、特に、0.5kHzを超える周波数で既に結合している。黒鉛の電気伝導率は、温度が上昇すると共に減少する。しかし、より低い誘導周波数において黒鉛の結合が既に誘導されているという事実は、顕著な表皮効果を回避することを助けるため、入力エネルギーが黒鉛体の断面内により深く浸透することを可能にし、したがって、より均一な誘導加熱を提供することを可能にする。しかし、この場合、誘導周波数は、かなり自由に選択可能であるため、より強い表皮効果を意図的に達成するためには、より高い周波数を選択することも想定可能である。このことは、過熱された縁部ゾーンにおけるガスの高い粘性に起因して、大部分の反応ガスが反応器の中央に向かって集中し得る程度まで縁部ゾーンが加熱されるときに有益となり、反応器の耐火材料は、縁部ゾーンにおいて起こる、粘性に関係する最小化された物質移動によって保護されている。同時に、黒鉛の熱伝導率は、コークスの熱伝導率よりも大きいため、より均一な誘導加熱に加えて、熱伝導による温度の均一化が黒鉛体の全断面にわたって起こることとなる。
【0013】
本発明の好ましい実施形態によると、上記方法は、固体又は溶融材料及び黒鉛の炭素とは異なる還元剤、並びに、場合により、固体又は溶融投入材料が黒鉛ベッド内に吸引されるという効果があるようにさらに発展することができる。このことは、圧力勾配が、黒鉛バルクの軸方向長さに対して調整されることで遂行され得、この圧力勾配によって、粒子及びガスがバルクの投入端からタップ端まで流れることが可能となる。このようにして、本発明による方法の安全な適用が保証されることとなる。
【0014】
本発明の好ましい実施形態と対応して、炭粉(coal dust)又は褐炭粉が上記還元剤として導入されると、コークスベッドの還元電位よりも複数倍高い還元電位が達成されることとなる(WO2006/079132A1を参照のこと)。炭粉は、誘導的に加熱された黒鉛体に作用するか、又はその隙間内に浸透すると、同じく導入された酸素/水蒸気と共に直ちに一酸化炭素及び水素に変換されて、反応体のかなり効果的な還元を保証する。さらなる利点は、炭粉がコークスよりも実質的に安価であることにある。褐炭粉は、極めて費用効果が高い様式で利用可能であって、本発明による方法の実施に特に好適である。褐炭粉は、一方では、純粋な炭粉とは対照的に、付随する物質と共に比較的強く負荷されるため、結果として、熱分解の際に高い還元電位を有する複数の揮発した物質を生じるが、他方では、褐炭粉に含まれる比較的高い硫黄含量がスラグ分内に完全に移行するため、上記問題及びこの種の褐炭の使用に関与する排ガスの脱硫の費用を総じて排除する。
【0015】
好ましい様式では、上記方法は、固体還元剤がキャリアガス及び、特に、窒素、CO、O又は空気の助けによって導入されるという効果があるようにさらに発展される。これにより、バルクの、還元又は溶融される材料の表面において均一な分布が保証されることとなる一方で、多量の生成ガスの形成が防止されることとなるため、バルクからの粒子の過度な同伴を回避し、バルクの圧力損失を制限する。
【0016】
好ましい操作態様によると、ガスは、本発明によって提供される誘導的に加熱された黒鉛体内に、特に、塊状の黒鉛を含むベッド内又はバルク内に注入されて、黒鉛体の酸化還元電位を広い範囲内で制御することを可能にする場合がある。酸化還元電位は、例えば、中和されて、より希な金属のみがその金属酸化物から還元されることとなるプロセス制御を可能にする場合があるが、あまり希でない金属は溶融物に残存することとなる。同時に、このようなガス供給は、酸化還元電位の調整に加えて、温度の変化も可能にして、黒鉛体のそれぞれの領域において揮発物質を再濃縮する。黒鉛体の温度は、電力入力を変化させることによって、誘導加熱の際に特に簡単な様式で制御することができ、その結果、かなり多くの種々のパラメータを考慮できる完全なプロセス制御を簡単で比較的小さな構造の反応器中で可能にする。適切に高い温度では、さらにクロム及びバナジウムの酸化物の還元も容易に実現可能となる。
【0017】
装入材料は、赤熱黒鉛体上に好ましくは直接装入され得るため、本発明による方法の過程において、ガラス溶融物の迅速な脱気又は清澄が、例えば、比較的薄い層に起因して、それ相応の高温で達成され得る。全体において、2000℃以上の温度が、誘導的に加熱された黒鉛体、及び、特に、塊状の黒鉛を含む誘導的に加熱されたベッド又はカラムによって容易に達成され得る。塊状材料の使用は、ガス及び液体溶融物の所望の透過性を保証するのに主として役立つ。
【0018】
本発明の好ましい実施形態によると、上記方法は、黒鉛が、球体、円柱、ブロック、ペレット状成形体及び/又は電極破片の形態で用いられるという効果があるようにさらに発展される。黒鉛がバルクに存在している幾何学的形状を適切に選択することにより、バルク密度及びしたがってバルクを介した予測される圧力損失を、それぞれの要件に対して適合させることができる。特に費用効果が高い様式においては、幾何学的に非常に好適な形状で、黒鉛を、電気鋼の生成に適用されたAl電解からの使用済み電極及び使用済み黒鉛陰極(=SPL→廃炉材)の形態で使用することができる。SPLは、最大で15%のアルカリ及び最大で1%のCN(シアン化物)を含有し、最初のAl生成から黒鉛電極に使用されて、全世界において大量の廃棄の問題を引き起こす。SPLを用いると、シアン化物がT>900℃において破壊され(HCN→H+C+N)、アルカリが、形成される生成物スラグ内に移行する。水蒸気を用いると、SPLからのNaCNが以下の式に従ってスラグのNaO内に溶解される:
NaCN+HO→NaO+HCN
この場合、黒鉛体のサイズは、直径が約5mm〜約5cmの範囲である。
【0019】
しかし、有利には、黒鉛体は、押圧され場合により焼結された黒鉛及び触媒粉末の混合物から構成されて、バルクに特定の触媒特性を付与すること、並びにバルクをそれぞれの場合において好適であるとされる化学的及び物理的プロセス要件に適合させることもできる。これに関連して、本発明の好ましい実施形態によると、黒鉛体を好適な塩及び/又は金属若しくはセラミックと一緒に押圧して、その電気伝導率を調整することも想定可能である。
【0020】
黒鉛バルク又はカラムの流動特性を最適なレベルに調整するために、本発明による方法は、黒鉛体がその微細孔性に関して制御されて構成されるという効果があるように有利にはさらに発展される。好ましい様式では、本発明による方法は、低周波数及び高周波数を選択することにより2種の異なる周波数で電流を適用することによって上記誘導加熱が行われるように実施される。高周波数は、好ましくは3から15kHzの間の範囲であり、黒鉛を誘導的に加熱する働きをする。低周波数は、好ましくは0.5kHz未満であり、黒鉛体に作用してそれらを動かすローレンツ力を生ずる。結果として、還元された高温の投入原料は、黒鉛体によって、これに作用する電気力学的衝撃に起因して撹拌される。この撹拌効果は、物質移動/熱交換による反応を大幅に加速する。
【0021】
隣接する黒鉛片における電流ブリッジの形成及びこれにより引き起こされる熱損失を防止するために、上記方法は、黒鉛体が、黒鉛及び不活性な充填体、特に触媒活性のCaO又はMgO体の混合物のバルクとして導入されるように好ましくは実施される。不活性な充填体は、個々の黒鉛片間での直接接触を大幅に防止するため、各黒鉛片に別個の加熱セルを形成させる。
【0022】
好ましい様式において、本発明による方法は、Znを含有する製鋼工場粉塵が投入材料と一緒に装入されて硫黄と結合する(ZnO+HS→ZnS+HO)ように実施される。
【0023】
固体若しくは溶融材料及び/又は自然発火性材料、特に、裁断機からの軽量画分を処理する又は還元するためのデバイスには、固体又は溶融材料のための供給開口部、並びに処理された溶融物のための採取開口部が備えられている。このようなデバイスは、黒鉛体を含有するチューブ状又はシュート状のハウジング、及び該ハウジングを取り囲み、黒鉛体を誘導的に加熱するための少なくとも1つの誘導コイルを含む加熱デバイスを本質的に特徴とする。酸化還元電位を調整する及び/又は局所的な冷却を提供するために、その構成は、ガスを供給するためのパイプがハウジングに接続されるように、好ましくは考案される。特に簡単な様式では、チューブ状のハウジングがAl若しくはMgOなどの電気絶縁性材料によって、又は少なくとも1種の電気絶縁性ホイル若しくはマットによって形成されて、冷却された誘導コイルによって包囲されるように、その構成は考案され得る。このような電気絶縁性ホイルは、例えば、開始時に、機械的支持が通常は水冷却された誘導コイルによって達成される高温耐熱性クロム−コランダムマットから構成されていてよい。溶融材料を供給するとき、又は溶融物を形成する際に、電気絶縁性ホイルは、誘導コイルが適切に冷却されるため、スラグ又は溶融物コートによって迅速に被覆されて、カラムの機械的安定性を実質的に向上させると同時に、耐火材料による問題を完全に排除する。しかし、誘導体を耐火塊内に鋳造して誘導体が機械的特性も得ることを可能にすることも想定可能である。この場合、耐火塊は、マグネタイト、スピネル又はコランダム及び耐火コンクリートから構成されていてよい。
【0024】
黒鉛体、特に、塊状の黒鉛のベッド又はカラムの温度を簡単な様式で部分的に変化させることができるように、誘導コイルがチューブ状ハウジングの軸方向にいくつかの部分に分割されるような構成が有利には考案され、ここで、別個の温度測定手段及び/又は別個の電力入力測定手段が、チューブ状ハウジングの軸方向に連続する部分に好ましくは設けられ、温度及び酸化還元の形態は、注入すべき電力及び/若しくはガス並びに/又はガス体積を調整することによって別個の部分で制御可能である。
【0025】
上記デバイスは、キリング又は静止ゾーンが、還元ゾーンに軸方向に続いて配置されるように構成されており、これは、加熱デバイスの領域に位置する。上記ゾーンにおいて、反応ゾーンで生じる反応生成物がブレンドされ、溶融物の液滴が凝集されて、均一な生成物が得られる。好ましい様式では、キリングゾーンは、キリングゾーンの軸方向長さがチューブ状ハウジングのクリア幅の1〜2倍に相当して、ガスの全体的なブレンドを達成すると同時に、気相に依然として存在する固体粒子の溶融を可能にするような寸法である。流量を低下させるには、反応器の直径をこの領域に好ましくは適合させる。
【0026】
以下、本発明を、図面において模式的に示されるデバイスの例示的な実施形態によって、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による方法を実施するための黒鉛カラムを収容するための反応器の構成を示す。
【図2】反応器の別の構成を示す。
【図3】本発明による方法と産業上の適用との統合を示すプロセススキームを示す。
【図4】投入デバイスの好ましい構成を示す。
【図5】多量の反応体粉塵を投入するためのデバイスの好ましい実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、黒鉛ベッド又は黒鉛カラム16を含有し、ベース2及びハウジング3を含む反応器1を示す。ハウジング3は、固体粒子又は溶融物の投入端に隣接して位置し、その上方部において、導入されるバッチのための拡散器を形成しながら円錐形にテーパ状になっており、粉塵、スラグ、溶融物及び/若しくはスラリーのための、又は金属酸化物ガラスのための供給デバイスを備え、この場合の該供給デバイスは、還元又は脱気すべき材料がウォームコンベア5によって供給される計量供給サイクロン4から実質的に構成されており、還元されるべき上記材料は、投入ホッパ6において貯蔵されており、還元剤、所望によりSiOのような添加剤と場合により混合される。この場合の計量供給サイクロンは、窒素のような不活性ガスと一緒に操作され、ここでは、軸方向に調整可能なランス7が、炭粉を導入するために付加的に備えられていてよい。このような計量供給サイクロンは、例えば、WO03/070651に記載されている。ハウジング3は、軸方向領域において、黒鉛バルク又はベッド16を誘導的に加熱すことができる誘導コイル8によって取り囲まれている。キリングゾーン9は、誘導コイル8を含むハウジング部に続くように配置されており、キリングゾーン内には熱エネルギーが導入されず、結果として、反応後にキリング及びブレンドゾーンとして機能する。10は、移動体を表し、最も簡単な場合には、加熱が困難である可能性がある黒鉛芯領域を含まないようにするのに役立ち、フロー制御を最適化するのに役立ち得る。同時に、移動体を介して追加のガスを供給すること、又は移動体にさらなる誘導体を提供することが想定可能である。
【0029】
チャンバ11において、反応ガスが金属溶融物から分離され、ここで、ガスは、開口部12を通して引き出され得るが、溶融物は、採取開口部13を通り抜ける。14は、開口部を表し、これを通して黒鉛バルク16を例えば黒鉛球体又は電極破片を添加することによって新しくすることができる。ガス供給及び温度制御により、軸方向長さに対する、即ち、反応器の軸15の長さ方向における酸化還元勾配及び温度勾配の両方の調整を可能にし、これにより、採取領域13において鉄酸化物不含及び重金属酸化物不含のスラグ及び金属の成功裏の採取が保証され、且つ、この位置においても耐火物の問題が回避される。
【0030】
反応器1のハウジング3の壁は、簡素な耐火物ホイルから構成されていてよく、該ホイルは、溶融又は溶融物の流下の際に溶融物によって湿潤されて、好適なスラグ又は溶融物コートを形成する。コイル8は、水冷却された銅導体として設計されており、壁の適切な冷却、したがってスラグ又は溶融物コート層の形成を保証している。
【0031】
供給デバイス4と黒鉛体16との間に、予燃又は予熱ゾーン17が配置されていてよく、予燃又は予熱のためのエネルギーキャリア及び/又は酸化ガスを導入するための少なくとも1つの導管(図示せず)は、開口していてよい。
【0032】
供給端/採取端において、黒鉛カラム内で再燃してCOをCOに燃焼することが基本的に可能であり、化石熱の入力により効率の上昇がもたらされることとなる。この場合、黒鉛バルク表面は、いずれにせよ非常に不活性であって、スラグ溶融物によって部分的に被覆されて、黒鉛質炭素(graphite carbon)によるBoudouard反応を大幅に抑制する。
【0033】
黒鉛カラムにおいて形成された金属溶融物は、さらに、炭粉によって浸炭され得るか、又は金属、即ち鉄、バナジウム、クロム若しくはタングステンの炭化物などの、金属浴に分散した炭化物を形成する。原則として、比較的短い黒鉛カラムを用いても、スラグからクロムを60ppm未満にまで還元することも実現可能である。スラグの純度は、質の高い構造用鋼及び工具鋼を製造するためのエレクトロスラグ再溶融プロセスにおいて用いられる、特に「3分の1スラグ」に関して最重要である。上記スラグは、それぞれ3分の1(重量基準)のCaF(ホタル石)、CaO(生石灰)及びAl(コランダム)並びに、一部の場合においては、MgO、SiOなどから本質的になる。本発明による方法は、このようなスラグの生成に特に好適である、なぜなら、H、P、S、N、C、Pb、Bi、CN、Na、K及びBの不純物は、特に効果的な様式で排除することができるからである。現在のところ、上記スラグは、超純粋な出発物質を電気アーク炉において溶融することによって生成される。しかし、電気アーク(約8000℃、プラズマ)及び電極材料(黒鉛)において非常に高温であることで、非常に望ましくない浸炭並びにCa及びAlの炭化物の形成、さらには、一部では、黒鉛電極に残存する硫黄による硫化が起こることとなる。同様に、空気の窒素がこのスラグに溶解されることとなる。生成したスラグには、可能なさらなる不純物が残存することとなる。
【0034】
対照的に、本発明による方法は、多数の利点を提示する:
− 温度が実質的により低いこと、温度レベルが均一に分布し容易に調整可能であること、温度ピークが無いこと(誘導的に加熱された黒鉛体ベッド);
− 部分揮発下に、超純粋な「カーボンブラック」の添加によって望ましくない元素を還元すること、したがって実質的により望ましい原材料状態であること;
− 本発明による還元によって使用済みスラグの3分の1を場合により「再生」すること;極めて高価な有害な廃棄堆積物を防止すること;及びNi、Cr、V、W、Mo、Taなどのような価値のある合金成分を回収すること;
− 投入原料が、黒鉛ベッド内に吸引されるため、反応器内においてブリッジを形成しないこと(ブリッジの形成は、不均一に溶融された材料において、電気炉内で「キャッピング」を生成するという大きな問題を構成する);
− 連続的な溶融プロセスの費用効果が非常に高いこと、反応器の体積が小さいこと(電気炉のみが非連続的である);
− スラグが、誘導ゾーンにおいて耐火物材料と接触しないため、耐火物の問題が無いこと;
− 電気エネルギーを熱に転換する効率が高く、電極炉と比較して熱損失が非常に低いこと;
− 排ガス量が可能な限り少ないこと;吸引ガスが、好ましくは、Arのような不活性な希ガス、さらには窒素、又は好ましくはFのような、さらにはHO、Cl、O若しくはこれらの混合物のような反応性ガスであること。
【0035】
一般に、起源が異なる液体スラグを用いてよく、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化リン、酸化亜鉛、酸化鉛、酸化マンガン、酸化銅、酸化バナジウム及び酸化クロムを簡単な様式で還元することがとりわけ可能である。黒鉛の良好な電気伝導率に起因して、高いレベルのエネルギー効率を達成することができるため、黒鉛炭素の実質的に不活性な挙動に起因して、高温においても高い安定性を維持することができる。
【0036】
図2は、黒鉛カラム16を含有する反応器1を再び示す。図1の反応器とは異なり、本反応器は、軸方向領域において、凝集ゾーン18によって形成されるキリングゾーンを含み、ここで、ガス量の低減は、タップ端の方向に反応器の連続的な断面を拡大することによって達成される。これにより、部分的に浮遊した状態である還元された溶融物粒子を、これに作用する剪断力を低減することによって凝集させることができ、また、これらの粒子を気相から除去することができる。この反応器において、耐火物ベッドは19で表され、この上にある黒鉛体又は黒鉛バルクのための支持アーチとして機能する。耐火物ベッド19の領域において、タップ端の方向に断面を再び低減し、これにより、既に凝集した溶融物粒子を再び互いに接近させ、凝集をさらに促進する。
【0037】
図3による図解では、反応器を1で再び示し、還元すべき反応体が保持されている貯蔵容器又はビンを20で示す。セルラーホイールスルース21を介して、種々の反応体を混合器22に制御的に供給することができ、混合器から反応体混合物をさらにセルラーホイールスルース23及び搬送手段24を介して反応器1の投入ホッパ6に供給することができる。スラグ及び金属溶融物を反応器のタップ端において採取し、高温排ガスは、水を供給しながら熱交換器25に供給される。熱交換器において、質の高い還元又は燃料ガスが水性ガス反応に続いて一酸化炭素及び水素から形成される。水又は水蒸気の添加により、依然として存在する可能性があるZn蒸気が水素を形成しながらZnOに転換される。得られた排ガスは粉塵分離器26に供給され、ここで、依然として存在する可能性がある第2の粉塵が堆積されるため、純粋な燃焼ガスが、例えば、クリンカーキルン又は還元炉に出口ダクト27を介して供給され得る。第2の粉塵は、セルラーホイールスルース28を介して分離された粉塵から排出され得る。
【0038】
図4に、反応体粉塵を投入するためのセルラーホイールスルースを29で示し、上記反応体粉塵は固体又はガス形態で存在する炭素キャリアと共に反応器1に供給可能である。セルラーホイールスルース29は、反応器1のハウジング3を通過する供給ダクト30内に開口している。供給ダクト30は、図4の部分に示すように、回転取付けによる、マッシュルーム形状の分配体31に方向付けられている。このことから、溝32が分配体31に備えられていることが明らかであり、該溝は、供給された反応体粉塵を取り込み、反応体粉塵を黒鉛バルク16の方向に下方にスライドさせる。分配体31の回転速度に応じて反応体粉塵が反応器1の中央から離れて反応器1の周辺に別に投げ出されて、黒鉛バルクにおいて反応体の適用プロフィールの簡単な制御を可能にする。
【0039】
図5に、2つのセルラースルースを33で示し、比較的多量の反応体粉塵が黒鉛バルク16上に投入されることを可能にする。黒鉛バルク16の表面に好適な角度で方向付けられている排水管を34で示す。任意に加熱されて黒鉛バルク16内で最適な温度分布を達成することができる移動体を35で示す。開口部12の領域において、移動体35は黒鉛バルクを支持しており、移動体35を周期的に振動させることで採取を最適化することができ、これにより黒鉛バルク16が同時に解放され、黒鉛バルク16の塞がれた領域が必要に応じて再び除去される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体若しくは溶融材料及び/又は自然発火性材料、特に裁断機からの軽量画分を処理及び/又は還元するための方法であって、該固体又は溶融材料が少なくとも部分的に誘導的に加熱された黒鉛体上に装入されること、該黒鉛の炭素と異なる還元剤が導入されること、並びに流出する還元された及び/又は脱気された溶融物が収集されることを特徴とし、ここで、該還元剤は、固体又は溶融投入材料と共に装入され、前記還元剤として、天然ガス、褐炭粉、炭化水素、水素、一酸化炭素及び/又はアンモニアが、水蒸気、酸素、二酸化炭素及び/又はハロゲン若しくはハロゲン化水素と一緒に導入される方法。
【請求項2】
黒鉛体が、塊状の黒鉛のベッド、カラム又はバルクによって形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
黒鉛が、貫通チャネル、穴などを含む黒鉛ブロックとして構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
固体又は溶融材料及び黒鉛の炭素とは異なる還元剤、並びに、場合により、固体又は溶融装入材料が、黒鉛ベッド内に吸引されることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
炭粉又は褐炭粉が、前記還元剤として導入されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
固体還元剤がキャリアガス及び、特に、窒素、アルゴン、CO、CO、O又は空気によって導入されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
黒鉛体の酸化還元電位が、ガスを注入することによって制御され、黒鉛体の温度が、電力入力を変化させること及びガスを注入することによって制御されることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
黒鉛体の軸方向に連続する部分について、温度及び/又は電力入力が、別個に測定され、温度及び酸化還元レジメが、電力及び/若しくは注入されるべきガス、及び/又はガス体積を調整することによって別部分で制御されることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ガラス粒子又はガラス溶融物が赤熱黒鉛体上に投入されることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
黒鉛が、球体、円柱、ブロック、ペレット状成形体及び/又は電極破片の形態で用いられることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
黒鉛体が、黒鉛及び触媒粉末によって形成されていることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
黒鉛体が、好適な塩及び/又は金属若しくはセラミックと一緒に押圧されて、電気伝導率を調整することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
黒鉛体が、その微細孔性に関して制御された様式で構成されていることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記誘導加熱が、2種の異なる周波数で電流を適用することによって達成されていることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記2種の異なる周波数の一方が、3から15kHzの間の範囲であり、他方の周波数が、0.5kHz未満であることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
黒鉛体が、黒鉛及び不活性な充填体、特に触媒活性のCaO又はMgO体の混合物のバルクとして導入されることを特徴とする、請求項1から15までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
製鋼工場粉塵が、装入材料と一緒に装入されて硫黄と結合することを特徴とする、請求項1から16までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
自然発火性材料が、裁断された使用済みタイヤ、油性ミルスケール、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、汚染された使用済み木材、汚染された掘削材料(ダイオキシン又はフラン)、石油蒸留残渣及び乾燥下水スラッジから構成されていることを特徴とする、請求項1から17までのいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−500717(P2012−500717A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524133(P2011−524133)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【国際出願番号】PCT/AT2009/000329
【国際公開番号】WO2010/022425
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(511051030)
【Fターム(参考)】