説明

固体基質の表面に抗菌活性を付与する方法

本発明は、固体基質構成物を基質の共有結合性の接合および熱重合に適した条件に曝すことにより、固体基質の表面に抗菌活性を付与する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
四級アンモニウム塩(quats)は、その抗菌活性および/または防腐活性について周知である。結果として、四級アンモニウム基は、種々の化学構造に組み込まれてきた。例えば、米国特許第6,251,967号明細書(Perichaud, et al.)は、四級アンモニウム基を含むモノマーから非架橋ポリマーを作る方法を開示している。
【0002】
四級アンモニウム基を含む化合物を固体基質に付着させる効果的且つ効率的な方法を見出すことも、大きな関心事である。米国特許出願公開第2005/0095266号(Perichaud et al.)は、光開始剤(photoprimer)および接合剤(grafting agent)を用いた抗菌性の基を含むモノマーの光重合および共有結合性の接合を含む、固体基質の表面を処理する方法を開示している。光重合および共有結合性の接合は、固体基質および前記モノマーを含む配合物を紫外線露光することにより生じる。
【0003】
しかしながら、紫外線の使用は、その制限を有する。例えば、紫外線は、固体基質(例えば布)の部分のみを透過し、布の表面のみが抗菌性ポリマーで被覆されることとなる。
【0004】
固体基質が抗菌および/または防腐活性の層を有するように、固体基板に抗菌性ポリマーを付着させることに対する必要性が残っている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、固体基質の表面に抗菌活性を付与する方法であって、
a)固体基質と1つ以上の抗菌性モノマーQjXj-を含む組成物とを接触させて、固体基質構成物を形成する工程と;
ここで、
Qは、以下の式(I)を有する四級アンモニウムイオンを表し;
【化1】

【0006】
式中、
Aは、
【化2】

【0007】
を表し;
Rは、独立に、HまたはCH3を表し;
Bは、直鎖状または分枝鎖状のC1-5アルカンジイル鎖;またはアリーレンもしくはアリールアルカンジイル基を表し;
mは、0または1を表し;
RlおよびR2は、独立に、C1-5アルキル基を表し;
R3は、C8-20アルキル基、アリール基、またはアリールアルキル基を表し;
Xj-は、価数jを有するアニオンを表す;
b)固体基質構成物を、基質の共有結合性の接合および熱重合に適した条件に曝す工程と
を含む方法に関する。
【0008】
他のおよびさらなる利点と共に本発明をよりいっそう理解するために、以下の詳細な説明を参照し、その範囲は特許請求の範囲で指摘する。
【詳細な説明】
【0009】
本発明は、固体表面に抗菌活性を付与する方法に関する。抗菌活性には、抗微生物活性または防腐活性(例えば、抗細菌活性、抗真菌活性、および抗酵母活性)が含まれる。抗菌活性には、微生物の増殖を停止するもしくは遅くする、または微生物を殺す活性(例えば、殺菌活性もしくは静菌活性)が含まれる。
【0010】
固体基質は、いずれかの固体、多孔質または非多孔質の材料であってよい。固体基質の例には、限定するものではないが、合成または天然の繊維または糸から作られた不織または織布、拭き掃除用の繊維、プラスチック、医療用のガーゼまたは包帯、浄水媒体、セラミック、ガラス、珪藻土、砂、フィルターカートリッジ、おむつ、医療用または外科用のマスク、衣類、スポンジ、ブラシ、セルロース、木、調剤クリーンルーム、ならびに壁、天井、床、ドア、蛇口の取手、および便座のようなバスルームの表面が含まれる。
【0011】
前記方法は、以下の工程を含む:a)固体基質と1つ以上のモノマーQjXj-を含む組成物とを接触させて(ここで、Qは、式(I)を有する四級アンモニウムイオンを表す)、固体基質構成物を形成する工程と;b)固体基質構成物を、基質の共有結合性の接合および熱重合に適した条件に曝す工程。共有結合性の接合および熱重合に適した条件には、限定するものではないが、開始剤の使用およびコロナ処理またはプラズマ放電処理を用いた基質の前処理が含まれる。コロナ処理およびプラズマ放電処理は、より優れた接合を与え得る。
【0012】
固体基質は、いずれかの可能な手段によりモノマー組成物と接触させる。固体基質とモノマー組成物とを接触させるいくつかの例には、固体基質をモノマー組成物の溶液に導入することまたはモノマー組成物を固体基質上に噴霧することが含まれる。
【0013】
式(I)の四級アンモニウムを以下に示す:
【化3】

【0014】
式(I)において、Aは、
【化4】

【0015】
を表す。
【0016】
上記Aに対する3つの可能な構造において、上記構造の左側はビニル基(H2C=CR-)と結合し、上記構造の右側はBと結合する。従って、式(I)におけるAに対する3つの可能性は、以下に示す通りである:
【化5】

【0017】
式(I)において、Rは、独立に、HまたはCH3を表す。
【0018】
-(B)m-において、mは0または1を表す。Bは、直鎖または分枝鎖状のC1-5アルカンジイル鎖;またはアリーレニルもしくはアリーレニルアルカンジエニル基を表す。直鎖状のC1-5 アルカンジイル鎖は、-(CH2)n-として表されてもよく、式中のn=1〜5である。それ故、アルカンジイル鎖は、独立に、各々の末端でもう1つの化学的部分(例えば、基または原子)と結合してもよい。好ましい実施形態において、mは1であり、Bは少なくとも1つの直鎖状のC2アルカンジイル鎖を表し、それにより少なくとも2つの炭素原子がAをアンモニウムイオンの窒素原子から隔てる。
【0019】
分枝鎖状のC1-5アルカンジイル鎖の例を以下に示す:
【化6】

【0020】
mが0の場合、基Aは、四級アンモニウム基の窒素に直接連結する。好ましくは、文字mは1である。
【0021】
アリーレニル基は、独立に、2つの化学的部分(例えば、基または原子)と結合し、-Ar-として表されてもよい(ここでのArは、フェニレンまたはヘテロシクロアリーレニル基である)。
【0022】
アリーレニル基は、芳香環のいずれか2つの位置において、2つの化学的部分と結合してもよい。例えば、可能なフェニレン基を以下に示す:
【化7】

【0023】
複素環式アリーレニル基は、-O-、-S-、=N-、または-NR4-から選択される1〜3のヘテロ原子を有する5〜6環員の環を含み、ここでのR4は、水素、メチル、またはエチルを表す。複素環式アリーレニル基の例には、チオフェニレン、フリレン、ピロリレン、ピラジニレン、ピリミジニレン、イミダゾリレン、オキサゾリレン、およびピリミジニレンが含まれる。例えば、可能な複素環式アリーレニル基を以下に示す:
【化8】

【0024】
アリーレニルアルカンジイル基は、上述したアルカンジイル基のいずれかと結合した上記アリーレニル基のいずれかを含み、結合はいずれの方向であってもよい(例えば、-Ar-(CH2)n-または-(CH2)n-Ar-)。アリーレニルアルカンジイル基の例を以下に示す:
【化9】

【0025】
R1およびR2は、独立に、飽和の直鎖状または分枝鎖状のC1-5アルキル基を表す。C1-5アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、およびペンチルが含まれる。
【0026】
R3は、C8-20ヒドロカルビル基、アリール基、ヒドロカルビルアリール基、またはアリールヒドロカルビル基を表す。ヒドロカルビル基は、飽和(アルキル)または不飽和(アルケニル)であってよい。飽和C8-20アルキル基の例には、オクチル、デシル、ドデシル、トリデシル、およびイコサニルが含まれる。不飽和C8-20アルケニル基の例には、5-オクテニル、オレイル、リノレイル、リノレニル、およびエライドリノレニル(elaidolinolenyl)が含まれる。
【0027】
アリール基は、炭素環式または複素環式であってよい。炭素環式アリール基は、フェニルである。複素環式アリール(ヘテロアリール)基は、-O-、-S-、=N-、または-NR4-から選択される1〜3のヘテロ原子を有する5〜6環員の環を含み、ここでのR4は、水素、メチル、またはエチルを表す。複素環式アリール基の例には、チオフェニル、フリル、ピロリル、ピラジニル、ピリミジニル、イミダゾリル、オキサゾリル、およびピリミジニルが含まれる。
【0028】
ヒドロカルビルアリールおよびアリールヒドロカルビル基は、飽和の分枝鎖状または直鎖状のC1-5アルキル鎖または基と結合したアリールまたはアリーレニル基を含む。アリールヒドロカルビル基の例を以下に示す:
【化10】

【0029】
ヒドロカルビルアリール基の例を以下に示す:
【化11】

【0030】
Xは、価数jを有するアニオンを表す。アニオンの例には、ハロゲニド、スルフェート、ホスフェート、ニトレート、シアニド、またはp-トルエンスルホネート(トシレート)、サリチレート、ベンゾエート、アセテート、もしくはウンデシレネートのような有機アニオンが含まれる。
【0031】
好ましい実施形態において、モノマーQjXj-は、
【化12】

【0032】
である。
【0033】
他の好ましい実施形態において、式Iにおけるmは1である。
さらに他の好ましい実施形態において、式IにおけるBは、直鎖状のC2アルカンジイル鎖である。
【0034】
固体基質構成物は、基質の共有結合性の接合および熱重合に適した条件に曝される。そのような条件は、当業者に周知である。例えば、熱重合のための都合のよい最低温度は、少なくとも約60℃、より好ましくは少なくとも約80℃である。熱重合のための都合のよい最高温度は、最大限でも150℃であり、より好ましくは最大限でも130℃である。さらに、固体基質構成物は、共有結合性の接合および熱重合に適した条件に、少なくとも約5分間、多くても約30分間曝されてよい。
【0035】
アニオンXj-は、好ましくはハライド、すなわちCl-、Br-、F-、またはI-であり、ここでのjは1である。
【0036】
固体基質構成物は、さらに、i)抗菌性モノマーとの共重合に適したアクリレート、エポキシド、およびビニルエーテルモノマーもしくはオリゴマーからなる群より選択される1つ以上のモノマーまたはオリゴマー;およびii)熱重合に適した1つ以上のラジカル開始剤を含んでよい。
【0037】
オリゴマーは、2つ以上のモノマーで構成される。本発明のオリゴマーについて考えられるモノマーの最大数は、8である。
【0038】
抗菌性モノマーとの共重合に適したアクリレート、エポキシド、およびビニルエーテルモノマーまたはオリゴマーは、当業者に周知である。例えば、米国特許出願公開第2005/0095266号(Perichaud et al.)は、適切なアクリレート、エポキシド、およびビニルエーテルモノマーまたはオリゴマーをパラグラフ137−152に開示している。好ましいアクリレートモノマーには、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートおよびビスフェノールAエトキシジアクリレートが含まれる。
【0039】
熱重合に適したラジカル開始剤は、当該分野で周知である。適切なラジカル開始剤の例には、tert-アミルペルオキシベンゾエート;4,4′-アゾビス(4-シアノバレイン酸); 2,2′-アゾビスイソブチロニトリル; ベンゾイルペルオキシド; 2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタン; 1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン; 2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン; 2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチル-3-ヘキシン; ビス(1-(tert-ブチルペルオキシ)-メチルエチル)ベンゼン; 1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン; tert-ブチルヒドロペルオキシド; tert-ブチルペルアセテート; tert-ブチルペルオキシベンゾエート; tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート; クメンヒドロペルオキシド; シクロヘキサノンペルオキシド; ジクミルペルオキシド; ラウロイルペルオキシド; 2,4-ペンタンジオンペルオキシド; 過酢酸; および過硫酸カリウムのようなペルオキシ化合物が含まれる。
【0040】
最も好ましくは、ラジカル開始剤はベンゾイルペルオキシドである。
【0041】
固体基質構成物は、さらに、iii)1つ以上の接合剤を含んでよい。接合剤は、当該分野で周知である。例えば、接合剤は、米国特許出願公開第2005/0095266号(Perichaud et al.)のパラグラフ99−132に開示されている。
【0042】
好ましい実施形態によると、固体基質構成物は、より良好な接合を与えるために、コロナ処理またはプラズマ放電処理で前処理される。
【0043】
好ましい実施形態において、固体基質は多孔質である。
他の好ましい実施形態によると、固体基質は、不織布または織布である。
不織布の好ましい例は、拭き掃除用の繊維である。
【0044】
他の好ましい実施形態によると、固体基質は、プラスチック材料を含む。プラスチック材料の例は、ポリエチレンもしくはポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリアミド、またはこれらのコポリマーである。
【0045】
さらに他の好ましい実施形態によると、固体基質は、医療用ガーゼまたは包帯である。
他の好ましい実施形態において、固体基質は、浄水媒体(例えば、飲料水または産業用水)である。
好ましい浄水媒体は、プラスチック、セラミック、ガラス、珪藻土、砂、またはこれらの組み合わせを含む。
【0046】
浄水媒体における他の好ましい用途は、フィルターカートリッジである。
おむつは、固体基質の他の好ましいタイプである。
本発明により処理される固体基質のさらに他の好ましい用途は、医療用または外科用のマスクおよび人工呼吸器を含む。
【0047】
調剤クリーンルームにおいて使用される表面は、本発明により処理される固体基質の使用の他の好ましい分野である。
本発明により処理される固体基質のさらに他の好ましい用途は、バスルームにおいて使用される表面である。
バスルームにおけるそのような表面の例は、壁、天井、床、ドア、および蛇口の取手である。
【0048】
化合物QjXj-は、当該分野で周知の方法により合成することができる。例えば、米国特許第6,251,967号明細書(Perichaud, et al.)は、段落5〜10において四級アンモニウム塩の合成を論じている。
【0049】
本明細書において、複数の構成要素を含む種々のパラメータの群が記載されている。パラメータの群内において、各構成要素をいずれか1つ以上の他の構成要素と組み合わせて、付加的な亜群を形成してよい。例えば、群の構成要素がa、b、c、d、およびeである場合、特に検討された付加的な亜群は、構成要素のいずれか2つ、3つ、または4つ(例えば、aおよびc;a、d、およびe;b、c、d、およびe等)を含む。
【0050】
いくつかの場合において、第1群のパラメータの構成要素(a、b、c、d、およびe)は、第2群のパラメータの構成要素(例えば、A、B、C、D、およびE)と組み合わされてよい。第1群またはその亜群のいずれかの構成要素を第2群またはその亜群のいずれかの構成要素と組み合わせ、さらなる群を形成してよい(すなわち、bとC;aおよびcとB、D、およびE等)。
【0051】
例えば、本発明において、種々のパラメータの群が定義される(例えば、Q、A、R,B、R、R、R、およびX)。各群は、複数の構成要素を含む。例えば、R3は、C8-20アルキル基、アリール基、またはアリールアルキル基を表す。構成要素の各々を他の構成要素の各々と組み合わせて、さらなる亜群を形成してよい(例えば、C8-20アルキル基とアリール基、アリール基とアリールアルキル基、およびC8-20アルキル基とアリールアルキル基)。
【0052】
本発明は、さらに、1つの群に挙げられた各要素がいずれかの他の群に挙げられた各々および全ての要素と組み合わされてよい実施形態を検討する。例えば、RlおよびR2は、独立にC1-5アルキル基を表すと上記で特定されている。R3は、独立に、C8-20アルキル基、アリール基、またはアリールアルキル基を表すと上記で特定されている。R1およびR2の各要素(C1-5アルキル基)は、R3の各々および全ての要素(C8-20アルキル基、アリール基、またはアリールアルキル基)と組み合わされてよい。例えば、1つの実施形態において、R1はプロピル基であってよく;R2はペンチル基であってよく;R3はアリール基であってよい。あるいは、R1はメチル基であってよく;R2はエチル基であってよく;R3はアリールアルキル基であってよい。同様に、第3の群はBであり、その要素は、直鎖状または分子鎖状のC1-5 アルカンジイル鎖;またはアリーレンもしくはアリールアルカンジイル基であると定義されている。上記実施形態の各々は、Bの要素の各々および全てと組み合わされてよい。例えば、R1がブチル基であり;R2がメチル基であり;R3がオクチル基である実施形態において、Bはアリーレン基であってよい(またはBの要素内のいずれかの他の化学的部分)であってよい。
【0053】
各群について、さらなる構成要素のいずれかが除外され得ることが特に検討される。例えば、ラジカル開始剤がtert-アミルペルオキシベンゾエート;4,4-アゾビス(4-シアノバレル酸);2,2′-アゾビスイソブチロニトリル;ベンゾイルペルオキシド;2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタン;1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン;2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン; 2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチル-3-ヘキシン; ビス(1-(tert-ブチルペルオキシ)メチルエチル)ベンゼン; 1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン; tert-ブチルヒドロペルオキシド; tert-ブチル過酢酸; tert-ブチルペルオキシド; tert-ブチルペルオキシベンゾエート; tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート; クメンヒドロペルオキシド; シクロヘキサノンペルオキシド; ジクミルペルオキシド; ラウロイルペルオキシド; 2,4-ペンタンジオンペルオキシド; 過酢酸; および過硫酸カリウムとして定義される場合、ラジカル開始剤がtert-アミルペルオキシベンゾエート; tert-ブチルヒドロペルオキシド; およびラウロイルペルオキシドとして定義されることも検討される。
【0054】
本発明の化合物は、化学的に実施可能で安定なものに限定される。それ故、上述した化合物における置換基または変数の組み合わせは、そのような組み合わせが結果として安定または化学的に実施可能な化合物を生じる場合にのみ許容される。安定な化合物または化学的に実施可能な化合物は、40℃以下の温度で湿気がない状態または他の化学反応条件に少なくとも1週間保持した場合に、化学構造が実質的に変化しない化合物である。
【0055】
「含む」という用語に続くリストは、包括的または無制限であり、すなわち、リストがさらなる記載されていない要素を含んでも含まなくてもよい。「からなる」に続くリストは、排他的または選択的であり、すなわち、リストはリストに特定されていないいずれかの要素を排除する。
【0056】
実施例
例1
抗菌性モノマーM1の合成は、以下の通りである:
【化13】

【0057】
モノマーM1 5gを494.25gの脱イオン水に溶解することにより、モノマーM1の1%水溶液を調製した。別のビーカーにおいて、9.9gの1,6-ヘキサンジオールジアクリレートおよび0.1gのベンゾイルペルオキシドを含む混合物を10分間超音波処理し、ベンゾイルペルオキシドを溶解した。ベンゾイルペルオキシドを溶解後、0.75gのこの混合物を1%モノマーM1溶液に加え、混合した(磁気撹拌子を使用)。溶液は、この時点で濁っていた。混合を続けながら、プラスチックピペットを使用して液体の一部を取り出した。ピペット中の液体を乾燥した拭き取り用繊維基質に移した。添加した量は、3%濃度のモノマーM1が拭き取り用繊維基質に供給されるような量である。例えば、乾燥した拭き取り用繊維の重量は約2gである。6gのモノマーM1溶液を拭き取り用繊維に付加することにより、3重量%のモノマーM1が拭き取り用繊維に付加された。
【0058】
液体を拭き取り用繊維基質に付加した後、少なくとも80℃に加熱し、完全に乾燥した。80℃に設定したオーブンを使用して、基質を乾燥した。
【0059】
その後、American Association of Textile Chemists and Colorists test method AATCC 100-2004を使用して、調製したサンプルを評価した。混合細菌培養液を使用した。
【表1】

【0060】
例2
抗菌性モノマーM1-C12は、UV硬化または熱的技術によりポリマーに変換され得る。モノマーの抗菌活性は、重合後も維持される。M1-C12は、抗菌性の特性を有するようにされ得る多くのモノマーの1つにすぎない。使用することができるモノマーの他の例のリストについては、付録Aを参照されたい。
【0061】
モノマーの重合および接合は、UVまたは熱的技術を介して達成され得る。この用途に対して(医療用ガーゼまたは包帯への適用)、好ましい技術は熱重合および接合によるものである。これは、基質全体にポリマーを接合させることが望ましいためである。UV技術は、基質の表面にポリマーを重合させるのみである。UV技術は、表面のコーティングのみが必要とされる固体表面に対してより望ましい。
【0062】
以下に示す研究において、モノマーの医療用ガーゼまたは包帯への重合および接合のための開始剤として、ベンゾイルペルオキシドを使用した。ベンゾイルペルオキシドは、モノマーM1-C12に不溶であるため、ベンジルペルオキシドを可溶化するためのコモノマーとして、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(Miramer M200)を使用した。1,6-ヘキサンジオールジアクリレート中の1%ベンジルペルオキシドを調製した。
【0063】
モノマーM1-C12(0.8 g)を脱イオン水(199.1 g)に溶解した。この混合物に、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート中の1%ベンゾイルペルオキシド0.1 gを添加した。
【0064】
上述した混合物の全量2.5gを、重量0.9 gの1枚の医療用ガーゼ(Johnson & Johnson’s FirstAid(登録商標)ブランド)に吸収させた。その後、ガーゼをマイクロ波オーブン中で5分間乾燥して過剰な水分を飛ばし、ガーゼの温度を80℃以上にして重合反応を開始した。同じ方法を使用して、全部で3つのサンプルを準備した。包帯のサンプル (Johnson & Johnson’s Band-Aid(登録商標)ブランド) は、1.5gの上述した混合物を重量0.6gの1枚の包帯に吸収させることにより準備した。その後、包帯をマイクロ波オーブン中で5分間乾燥して過剰な水分を飛ばし、包帯の温度を80℃以上にして重合反応を開始した。同じ方法を使用して、全部で3つのサンプルを準備した。
【0065】
方法AATCC 100を使用して、処理された医療用ガーゼおよび包帯の抗菌特性を評価した。以下の表に、S. aureusに対する効果をまとめる。
【表2】

【0066】
例3
抗菌性モノマーM1-C12は、UV硬化または熱的技術によりポリマーに変換され得る。モノマーの抗菌活性は、重合後も維持される。M1-C12は、抗菌性の特性を有するようにされ得る多くのモノマーの1つにすぎない。使用することができるモノマーの他の例のリストについては、付録Aを参照されたい。モノマーの重合および接合は、UVまたは熱的技術を介して達成され得る。
【0067】
以下に記載する方法において、モノマーの砂への重合および接合のための開始剤として、ベンゾイルペルオキシドを使用した。ベンゾイルペルオキシドは、モノマーM1-C12に不溶であるため、ベンジルペルオキシドを可溶化するためのコモノマーとして、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(Miramer M200)を使用した。1,6-ヘキサンジオールジアクリレート中の1%ベンジルペルオキシドを調製した。モノマーM1-C12(0.8 g)を脱イオン水(199.1 g)に溶解した。この混合物に、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート中の1%ベンゾイルペルオキシド0.1 gを添加した。
【0068】
上述した混合物の全量20gを、50gの砂 (KolorScape White Play Sand) に吸収させた。その後、砂をマイクロ波オーブン中で5分間乾燥して過剰な水分を飛ばし、砂の温度を80℃以上にして重合反応を開始した。同じ方法を使用して、全部で2つのサンプルを準備した。
【0069】
抗菌性ポリマーは天然では陽イオン性であるため、ブロモフェノールブルー溶液の溶液に曝した場合に青色に染色される。ブロモフェノールブルー溶液に曝した場合、上述した処理された砂サンプルは青色に変化し、水で洗浄しても砂は洗い流されなかった。一方、処理されていない砂サンプルは、水で洗浄した後は青色を保持しなかった。この実験は、抗菌性ポリマーが砂粒子上に接合されたことを示している。
【化14】

【化15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体基質の表面に抗菌活性を付与する方法であって、
a)前記固体基質と1つ以上の抗菌性モノマーQjXj-を含む組成物とを接触させて、固体基質構成物を形成する工程と;
ここで、
Qは、以下の式(I)を有する四級アンモニウムイオンを表し;
【化1】

式中、
Aは、
【化2】

を表し;
Rは、独立に、HまたはCH3を表し;
Bは、直鎖状または分枝鎖状のC1-5アルカンジイル鎖;またはアリーレンもしくはアリールアルカンジイル基を表し;
mは、0または1を表し;
RlおよびR2は、独立に、C1-5アルキル基を表し;
R3は、C8-20アルキル基、アリール基、またはアリールアルキル基を表し;
Xj-は、価数jを有するアニオンを表す;
b)前記固体基質構成物を、前記基質の共有結合性の接合および熱重合に適した条件に曝す工程と
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記モノマーは
【化3】

を含む方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、mは1である方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、Bは直鎖状のCアルカンジイル鎖である方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法であって、前記工程b)における条件は、最低温度60℃および最高温度150℃を含む方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法であって、前記工程b)における条件は、最低温度80℃および最高温度130℃を含む方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法であって、前記工程b)における固体基質構成物は、前記条件に少なくとも5分間曝される方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法であって、前記工程b)における固体基質構成物は、前記条件に多くとも30分間曝される方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法であって、Xj-はハライドである方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法であって、前記固体基質構成物は、さらに
i)抗菌性モノマーとの共重合に適したアクリレート、エポキシド、およびビニルエーテルモノマーもしくはオリゴマーからなる群より選択される1つ以上のモノマーまたはオリゴマー;および
ii)熱重合に適した1つ以上のラジカル開始剤
を含む方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記1つ以上のモノマーまたはオリゴマーは、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートまたはビス-フェノールAエトキシジアクリレートからなる群より選択される方法。
【請求項12】
請求項10または11に記載の方法であって、前記1つ以上のラジカル開始剤は、tert-アミルペルオキシベンゾエート;4,4-アゾビス(4-シアノバレル酸);2,2′-アゾビスイソブチロニトリル;ベンゾイルペルオキシド;2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタン;1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン;2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン; 2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチル-3-ヘキシン; ビス(1-(tert-ブチルペルオキシ)メチルエチル)ベンゼン; 1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン; tert-ブチルヒドロペルオキシド; tert-ブチル過酢酸; tert-ブチルペルオキシド; tert-ブチルペルオキシベンゾエート; tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート; クメンヒドロペルオキシド; シクロヘキサノンペルオキシド; ジクミルペルオキシド; ラウロイルペルオキシド; 2,4-ペンタンジオンペルオキシド; 過酢酸; および過硫酸カリウムからなる群より選択される方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記1つ以上のラジカル開始剤はベンゾイルペルオキシドである方法。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれか1項に記載の方法であって、前記固体基質構成物は、さらにiii)1つ以上の接合剤を含む方法。
【請求項15】
請求項10〜14のいずれか1項に記載の方法であって、前記固体基質は、コロナ処理またはプラズマ放電処理で前処理される方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法であって、前記固体基質は多孔質である方法。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法であって、前記固体基質は不織布または織布である方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、前記固体基質は不織布であり、該不織布は拭き掃除用繊維である方法。
【請求項19】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法であって、前記固体基質はプラスチックを含む方法。
【請求項20】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法であって、前記固体基質は医療用ガーゼまたは包帯である方法。
【請求項21】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法であって、前記固体基質は浄水媒体である方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、前記浄水媒体は、プラスチック、セラミック、ガラス、珪藻土、または砂を含む方法。
【請求項23】
請求項21に記載の方法であって、前記浄水媒体は、フィルターカートリッジを含む方法。
【請求項24】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法であって、前記固体基質はおむつである方法。
【請求項25】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法であって、前記固体基質は医療用または外科用のマスクまたは人工呼吸器である方法。
【請求項26】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法であって、前記固体基質は調剤クリーンルームにおいて使用される表面を含む方法。
【請求項27】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法であって、前記固体基質はバスルームにおいて使用される表面を含む方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、前記バスルームにおいて使用される表面は、壁、天井、床、ドア、便座、または蛇口の取手である方法。

【公表番号】特表2013−505973(P2013−505973A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531279(P2012−531279)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005939
【国際公開番号】WO2011/038897
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(592233462)ロンザ インコーポレイテッド (15)
【Fターム(参考)】