説明

固体撮像装置及びその製造方法

【課題】 遮光膜の開口幅が小さくなった場合の透過光量を改善することで、感度の大幅な改善を実現する小型の固体撮像装置を提供する。
【解決手段】 複数の光電変換部17が形成された半導体基板11と、光電変換部17上方に位置し、光電変換部17毎に設けられた複数の開口部20を有し、半導体基板11上に形成された遮光膜19と、開口部20内に形成された高屈折率層125とを備え、開口部20は、光電変換部17に入射する光の真空中の波長に換算した最大波長よりも小さい開口幅を有し、高屈折率層125は、開口部20を介して最大波長の光を透過させる屈折率を有する高屈折率材料から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラ等に使用される固体撮像装置に関し、特に固体撮像装置を構成する受光セルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な固体撮像装置では、半導体基板上に複数の受光セルが形成され、各受光セルは遮光膜の開口部を通して入射した光を光電変換する光電変換部と遮光膜上に形成された色分離を行うカラーフィルタとを備える構造を有している。カラーフィルタとしては原色フィルタ、もしくは補色フィルタが一般的である。原色フィルタでは赤(R)、青(B)、及び緑(G)が用いられ、補色フィルタでは赤の補色であるシアン(C)、緑の補色であるマゼンタ(M)、及び青の補色である黄(Y)が用いられる。一般的に補色フィルタを用いた固体撮像装置では、この3色と緑(G)とを通して得た信号が用いられている。そして、各受光セルに上記の色のいずれかが一定のパターンで割り当てられる。そうすることで、各受光セルは、カラーフィルタによって色分離された色信号の輝度に応じて信号を生成する。(例えば、特許文献1、2参照。)
また、上記の信号を大きくして高感度を実現するために、カラーフィルタの上下にマイクロレンズ等を形成することで、高S/N化が図られている。(例えば、特許文献3参照。)
また、高感度化を図る手段として、遮光膜の開口部内において、高屈折率材料と、高屈折率材料の周辺を囲むように形成された低屈折率材料とを置き、高屈折率材料と低屈折率材料との境界での全反射を用いて集光する方法の提案等がある。(例えば、特許文献4参照。)
図7に従来の固体撮像装置の受光セル1a、1b、1cの断面図を示す。
【0003】
各受光セルは、N型不純物が添加されたシリコンからなる半導体基板11を基礎として、絶縁層13、金属層14、及びカラーフィルタ層15が形成されてなる。このとき、半導体基板11内には光電変換層12が形成されている。光電変換層12は、半導体基板11にP型不純物をイオン注入することでP型ウェル16を形成し、さらに、P型ウェル16にN型不純物をイオン注入することで形成されるN型領域である光電変換部17を有する層である。
【0004】
絶縁層13は、光電変換層12と金属層14とを絶縁するために光電変換層12上に設けられた層間膜18からなる層である。
【0005】
金属層14は、遮光膜19と層内レンズ30とを含む層である。金属層14の形成においては、遮光膜19が形成された後に、遮光膜19上に平坦化層としての層間膜29が形成される。さらに遮光膜19の上の層間膜29が形成された後に、層内レンズ30が形成される。層内レンズ30上には、層内レンズ30表面を覆うように層間膜31が形成される。
【0006】
カラーフィルタ層15は、青のフィルタ膜21a、緑のフィルタ膜21b、及び赤のフィルタ膜21cからなるカラーフィルタと、カラーフィルタ上の層間膜22とを有する層である。
【0007】
入射光24は、受光セル1a、1b、1c上方から入射し、カラーフィルタ上に形成されたマイクロレンズ23により集光され、青のフィルタ膜21a、緑のフィルタ膜21b、あるいは赤のフィルタ膜21cを透過する。カラーフィルタを透過した光は再度層内レンズ30により集光された後に、開口部20を経て、光電変換部17に到達する。受光セル1a、1b、1cが従来のように一辺が5.6μmの正方形をした大きな受光セルである場合には、開口部20の幅が2.0μm以上と大きい。従って、例えば長波長側の650nmの赤色波長の可視光等は、開口部の幅の影響を受けることなく十分に開口部を透過することができる。また、暗視野カメラ等に利用される長波長側の近赤外波長の光も十分に開口部を透過することができる。
【特許文献1】特開平10−341012号公報
【特許文献2】特開平5−326902号公報
【特許文献3】特開2000−164837号公報
【特許文献4】特開平6−224398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、固体撮像装置の高画素化を実現するために受光セルが微細化されて小さくなると、遮光膜の開口部の幅が赤(R)色光、緑(G)色光、及び青(B)色光等の可視光の波長に近づく。そして、遮光膜の開口部の幅が可視光の波長よりも小さくなった場合には、カラーフィルタを透過した光の波長の中で、開口部の幅によって決定される特定の波長以上の波長帯域の光が遮断されて、その遮断波長以上の波長の光が開口部を透過できなくなり、光電変換部まで到達できなくなる。この場合には、特に、長波長側の赤(R)色光の透過率の低下が顕著になる。例えば、真空中で650nmの赤色波長の光が狭い開口部を透過する場合には、真空中で650nmの波長の光は、屈折率が1.45のシリコン酸化膜(SiO2)で充填されている開口部中では波長を屈折率で割った値の波長(650nm/1.45=450nm)の450nmを有する。よって、この真空中で650nmの波長の光の透過率は、開口部の幅がほぼ450nmでほぼゼロになるが、実際には、開口幅650nm付近から減少し始める。従って、開口部を充填する材料がシリコン酸化膜(SiO2)等の低屈折率材料の場合には、開口部の幅とほぼ同等以上の波長の光が透過できなくなる。
【0009】
特に受光セルが一辺3.2μm以下の正方形をした小型の受光セルである場合には、開口部の幅が1.0μm以下になってくる。このような狭い開口部の幅では、長波長である赤色波長の可視光や、1.0〜2.0μmの近赤外光等の長波長側の波長の光は、開口部を充填する平坦化層が低屈折率材料から構成される場合には、特に透過できなくなる。例えば、開口部を充填する平坦化層が屈折率1.5の低屈折率なシリコン酸化膜(SiO2)や、屈折率1.3〜1.7の低屈折率樹脂等から構成される場合には、長波長の光は開口部を透過できなくなる。
【0010】
そこで、本発明は、遮光膜の開口幅が小さくなった場合の透過光量を改善することで、感度の大幅な改善を可能にする小型の固体撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る固体撮像装置は、半導体基板と、前記半導体基板に形成された光電変換部と、前記光電変換部上方に位置するように形成された開口部が設けられ、前記半導体基板上に設置された遮光膜と、前記開口部内に形成された高屈折率層とを備え、前記開口部は、前記開口部を介して前記光電変換部に入射する光の真空中の波長に換算した最大波長よりも小さい開口幅を有し、前記高屈折率層は、前記開口部を介して前記光電変換部に入射する光の前記最大波長の光を透過させる屈折率を有する高屈折率材料から構成されることを特徴とする。ここで、前記固体撮像装置は、さらに、前記開口部上方に位置するように前記遮光膜上に設置され、特定の波長域の光を透過させるフィルタ膜を備え、前記開口部は、前記フィルタ膜が透過させる光の前記最大波長よりも小さい開口幅を有してもよい。
【0012】
本発明に係る固体撮像装置では、開口部内を通過する光の波長が真空中における波長を屈折率で割った値(真空中の波長/(屈折率=N))になる原理を利用して、開口部を高屈折率材料で充填することで、開口部中を透過する光の波長を相対的に小さくしている。従って、開口部の中を透過する光の透過波長帯域の最大波長は、開口部内の屈折率がNの場合には、真空中の波長に換算すると、開口部を充填した高屈折率材料の屈折率倍(N倍)だけ大きくなる。その結果、開口部の幅が狭くなり、開口部の幅が透過すべき光の真空中における波長と同等または、それ以下になった場合であっても、開口部を高屈折率材料で充填することで光を透過させることができる。すなわち、長波長側の光の感度を大幅に向上させ、感度の大幅な改善を可能する小型の固体撮像装置を実現することができる。
【0013】
また、上記目的を達成するために前記開口部内には、前記高屈折率層が充填されていてもよい。
【0014】
上記構成とすることで、開口部内の全域に亘って高屈折率材料が充填され、開口部内全体の平均的な屈折率を大きくすることができるため、開口部の中を透過する光の真空中の透過波長帯域を長波長側に大きくシフトすることができ、長波長側の光の感度をさらに向上させることができる。
【0015】
また、特許文献4に示される、開口部内において高屈折率材料の周辺を囲むように低屈折率材料を置き、高屈折率材料と低屈折率材料との境界での全反射を用いて集光する方法の場合には、開口部内に低屈折率材料を積極的に導入する必要があるため、開口部内における高屈折率材料の幅は、開口部の幅から開口部内における低屈折率材料の幅を引いた値となる。従って、この事例の場合の実質的な透過できる光の波長は、開口部の幅より必ず小さい高屈折率材料の幅によって決まってしまうこととなる。そのため、実質的な開口幅が小さくなり、長波長側の透過波長の光が制限を受けてしまい、感度の向上には不利な状態となる。しかしながら、上記構成とすることで、開口部の幅が開口部内における高屈折率材料の幅となり、実質的な開口幅を大きくすることができるので、長波長側の透過波長の光が制限を受けず、感度の向上を実現することができる。
【0016】
また、上記目的を達成するために、前記高屈折率層は、1.8以上の屈折率を有する高屈折率材料から構成されてもよい。
【0017】
上記構成のように、開口部を充填する高屈折率層を構成する材料として屈折率が1.8以上の高屈折率材料を利用することで、開口部の幅が1.0μm以下になった場合でも、可視光での長波長の赤色近傍の波長の光や、1.0〜2.0μmの近赤外光等の長波長側の波長の光を透過させることができる。
【0018】
また、上記目的を達成するために、前記高屈折率層の厚みは、前記遮光膜の厚みと略同一、又は前記遮光膜の厚みよりも厚くてもよい。
【0019】
上記構成とすることで、開口部内の屈折率の高い材料の厚みを開口部の高さ方向の厚みと同等か、それ以上にすることで、真空中の波長に換算した遮断波長を長波長側に大きくシフトすることができるため、開口部の中を透過する光の長波長側の透過波長帯域を広げることができ、長波長側の感度を向上させることができる。
【0020】
また、上記目的を達成するために、前記高屈折率層は、凸レンズ形状を有し、前記開口部を介して前記光電変換部に入射する光を集めてもよい。
【0021】
上記構成とすることで、開口部内の光を透過させる高屈折率材料の上面が凸レンズ形状となり、開口部の直上で集光することができるので、開口部の幅が可視光の波長に近い場合に、特に集光率を大幅に向上させることができる。
【0022】
また、受光セルが微細化されて横方向にセルピッチが縮小した場合であっても、図7と特許文献3とに示されるように、層内レンズや層内レンズ上下の層間膜は従来通りに必要なため、遮光膜上の縦方向の寸法が従来と変わらない。従って、横方向にセルピッチが縮小したにもかかわらず、縦方向の寸法が縮小できないため、狭い開口部へ集光することが難しくなり、集光効率が極端に悪くなる。しかしながら、上記構成とすることで、従来の固体撮像装置の構造では必要であった、遮光膜上方の層内レンズを省略することができ、受光セル全体の高さを低くすることができるので、上記のような問題が起こらない。
【0023】
また、上記目的を達成するために、前記高屈折率材料が、酸化チタン、酸化タンタル及び酸化ニオブのいずれかであってもよい。
【0024】
上記構成のような、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ニオブ又は酸化ハフニウム等の高屈折率材料を高屈折率層に用いることで、一般的に絶縁膜としてよく利用されている屈折率1.5の酸化シリコンの場合に比べて開口部内の屈折率を特に大きくとることができ、真空中の波長に換算した開口部の中を透過する光の透過波長帯域を長波長側に大きくシフトさせることができるため、長波長側の感度を更に向上させることができる。
【0025】
また、上記目的を達成するために、前記開口幅は、1.0μm以下であってもよい。
【0026】
上記構成とすることで、光電変換部を構成するシリコンの主な吸収帯域である1.0μm以下の帯域で、開口部の中を透過する光の透過波長帯域を長波長側に広げる効果が大きくなるので、顕著な感度の向上を実現することができる。
【0027】
以上のように、本発明の固体撮像装置では感度を犠牲にすること無く微細な受光セルを実現することができ、撮像部の特定の光学サイズ(例えば1/4インチなど)での画素数を増やすことができるため、本発明の固体撮像装置を利用したカメラでは、高感度かつ高画素を持つ高画質なカメラを実現することができる。
【0028】
上記目的を達成するために、本発明に係る固体撮像装置の製造方法は、光電変換部が形成された半導体基板上に遮光膜を形成し、前記遮光膜に、前記光電変換部上方に位置する開口部を形成する開口部形成工程と、前記開口部内及び前記遮光膜上に高屈折率層を形成する高屈折率層形成工程とを含み、前記高屈折率層形成工程において、前記高屈折率層の表面が平坦になる膜厚の前記高屈折率層を形成することを特徴とする。ここで、前記高屈折率層形成工程において、前記開口部の幅の1/2以上の膜厚の前記高屈折率層を形成してもよい。
【0029】
上記構成とすることで、開口部の中に屈折率の高い高屈折率層を形成し、さらに開口部内の高屈折率層上に屈折率の高い高屈折率層を連続して形成することで、開口部上方を屈折率の高い高屈折率層で平坦化することができるため、開口部に入射する光を乱反射させることなく開口部に入射させることができ、感度の低下を防ぐことができる。
【0030】
また、上記目的を達成するために、前記固体撮像装置の製造方法は、さらに、前記高屈折率層の表面を平坦化する平坦化工程を含んでもよい。
【0031】
上記構成とすることで、開口部の中に屈折率の高い高屈折率層を形成し、さらに開口部内の高屈折率層上に屈折率の高い高屈折率層を連続して形成した後に、屈折率の高い高屈折率層をCMP等により平坦化エッチングするので、開口部上方の高屈折率層の平坦度を高め、開口部に入射する光の乱反射を最小化することができる。その結果、開口部に入射できる光量の受光セル間のバラツキを最小化することができ、感度バラツキを大きく改善することができる。
【0032】
また、上記目的を達成するために、前記固体撮像装置の製造方法は、さらに、前記開口部上方に位置する前記高屈折率層を凸レンズ形状に加工するレンズ形成工程を含んでもよい。
【0033】
上記構成とすることで、開口部の中に屈折率の高い高屈折率層を形成し、さらに開口部内の高屈折率層上に屈折率の高い高屈折率層を連続して形成した後に、屈折率の高い高屈折率層を用いて層内レンズを形成するので、従来の層内レンズ用に必要であった特別な成膜工程を削除し、固体撮像装置を製造する工程を削減することができる。その結果、低価格な固体撮像装置を提供することができる。また、層内レンズが遮光膜の直前にあるため、開口部の幅が小さい場合であっても、効率良く集光ができ、高感度化を実現することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る固体撮像装置は、光電変換部上に形成された遮光膜の開口部に屈折率の高い高屈折率材料を用いることで開口部の幅が狭くなった場合にでも、開口部を透過する光の透過波長帯域を大きく保つことができる。これにより、固体撮像装置の受光セルが小さくなり、開口部が小さくなった場合にでも、長波長側での顕著な感度低下を防ぐことができ、小型化及び高感度化を実現することができる。さらに、開口部を埋める高屈折率材料を開口部上方にも連続して形成して平坦化することで、開口部上方での光の乱反射を少なくでき、感度低下を防ぐと同時に受光セル間の感度のバラツキを抑えて高画質化を実現できる。また、開口部を埋める高屈折率材料を開口部上にも連続して形成した後に、その高屈折率材料を用いてマイクロレンズを形成することで高感度・高S/Nの固体撮像装置を実現できるため、高画質なカメラを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態における固体撮像装置について図面に基づいて説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0036】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1の固体撮像装置の受光セル111a、111b、111cの断面図である。各受光セルの半導体基板11、光電変換層12、及び絶縁層13は、図7に示す従来の受光セルにおける構造と同じ構造を有する。
【0037】
金属層114は、従来の固体撮像装置と同様に遮光膜19と層内レンズ30とを含む層であるが、本発明の実施の形態1に係る固体撮像装置では、金属層114は、遮光膜19が形成された後に、遮光膜19の開口部20を埋めむように形成され、高屈折率材料により構成された高屈折率層125を有する。このとき、従来の受光セルの構造と同じように、遮光膜19の上方には層間膜29及び層内レンズ30が形成されており、層内レンズ30上には層間膜31が形成されている。また、金属層114上には層間膜22を含むカラーフィルタ層15が形成され、カラーフィルタ層15上にはマイクロレンズ23が形成されている。
【0038】
本実施の形態1の固体撮像装置では、マイクロレンズ23により集光され、カラーフィルタ層15を透過した光は、再度層内レンズ30により集光された後に、高屈折率層125が形成された開口部20を経て、光電変換部17に到達する。
【0039】
ここで、開口部20は、光電変換部17に入射する光の真空中の波長に換算した最大波長よりも小さい開口幅を有する。すなわち、真空中の赤(R)色光の最大波長よりも小さい開口幅を有する。また、高屈折率材料は、開口部20を介して光電変換部17に入射する光の真空中の波長に換算した最大波長の光を透過させる屈折率を有する。すなわち、開口部20を介して光電変換部17に入射する赤(R)色光を透過させる屈折率を有する。
【0040】
図2はカラーフィルタ層15及び開口部20の透過特性を示す図である。
【0041】
開口部に入射する光のうちで開口部20の幅に近い波長以上の波長の光は、開口部20を透過でき難くなり遮断されることは良く知られている。開口部20の幅が広い場合(例えば2μm以上の場合)には、開口部20の幅が広いため、遮断波長101は、赤色の分光よりもはるかに長波長側にある。よって、赤(R)、緑(G)、及び青(B)の分光のカラーフィルタを透過した光は、それぞれ開口部20を透過することができる。しかしながら、受光セル111a、111b、111cの微細化により、開口部20の幅が狭くなった場合では、開口部20の幅が狭いため、遮断波長102は、赤(R)のフィルタ膜21cの透過波長以下になる。その結果、赤(R)のフィルタ膜21cの下の開口部20では、赤色光の透過率が極端に小さくなり、光電変換部17まで到達できる光量が減少して、感度低下を起こしてしまう可能性がある。本発明に係る固体撮像装置では、この不具合を解消するために、開口部20内に高屈折率層125が形成されている。開口部20内に高屈折率層125を用いることで、開口部20の中を透過する光の波長を、真空中の波長に対して屈折率分の1(1/(屈折率=N))と小さくすることができる。例えば、高屈折率層125として屈折率2.5の酸化チタン(TiO2)を用いる場合には、開口部20の中を透過する光の波長は、真空中の波長に対して1/2.5の波長となり、真空中で650nmの赤色光の波長は、開口部20の中で260nmの波長になる。従って、例えば650nmの開口幅を持つ開口部20の中では、真空中で650nmの赤色光の波長は波長260nmとなる。その結果、開口部20中の赤色光の波長260nm(真空中で650nm)は、開口幅650nmに対して、かなり小さくなり、赤色光は十分開口部20を透過することができる。
【0042】
遮断波長を考える場合、開口部20内の屈折率が1であり、例えば遮断波長が真空中の波長に換算して650nmの開口幅である開口部20の遮断波長は、開口部20内を高屈折率2.5の酸化チタン(TiO2)で埋め込んで開口部20内の屈折率を2.5とすることで、真空中の遮断波長に換算して650nmの2.5倍の1625nmとなる。従って、開口部20内を屈折率=Nの高屈折率材料で充填することで、開口部20を透過できる真空中の遮断波長をN倍広くとることができ、開口幅が狭くなった場合にでも図2に示すように遮断波長103を可視光より大きくすることができる。すなわち、開口部20の幅が小さくなった場合でも、開口部20内を充填する材料として屈折率の高い材料を用いることで、遮断波長を長波長側にシフトさせることができるため、長波長側の透過帯域を広くとることができ、長波長側の感度を向上させることができる。
【0043】
なお、以上で述べた開口部20内にある高屈折率材料の幅を開口部20の幅と同一にすることで、最も大きな遮断波長を実現することができる。
【0044】
また、上記の高屈折率層125を構成する高屈折率材料として屈折率2.5の酸化チタンを例示した。しかし、開口部20内の屈折率を1.8以上にすることで、開口部20の幅が1.0μm以下になった場合でも、可視光での長波長の赤色近傍の波長の光や、1.0〜2.0μmの近赤外光等の長波長側の波長の光を透過させることができるため、開口部20内を充填する高屈折率材料は、1.8以上、特に2.2以上の屈折率を有する高屈折率材料であれば酸化チタンに限られない。
【0045】
また、図1に示す高屈折率材料の厚み28は、遮光膜19の厚みつまり開口部20の厚み27と略同一又は開口部20の厚み27より大きく、開口部20は高屈折率材料で埋め尽くされている。これによって、真空中の波長に換算した開口部20の遮断波長を長波長側に最も大きくシフトさせることができるため、長波長側の透過帯域を広くとることができ、長波長側の感度を向上させることができる。
【0046】
また、開口部20内を充填する高屈折率材料として窒化シリコン、酸化チタン、酸化タンタル又は酸化ニオブ等を利用することで、一般的に絶縁膜としてよく利用されている酸化シリコンの屈折率(約1.5)に比べて屈折率を特に大きくとることができ、真空中の波長に換算した開口部20の遮断波長を長波長側に最も大きくシフトさせることができるため、長波長側の透過帯域を広くとることができ、長波長側の感度を更に向上させることができる。
【0047】
また、本実施の形態1の固体撮像装置では入射光として可視光を例示したが、近赤外光の波長に対しても、同様の効果が認められるため、シリコンが光電変換できる近赤外光の波長に相当する1.0μm以下の帯域の光に対しても、波長の透過帯域を長波長側に広げる効果が大きく、顕著な感度の向上を実現することができる。
【0048】
図3は本発明の実施の形態1の固体撮像装置の受光セル111a、111b、111cにおける遮光膜19上の構造の形成方法を示す断面図である。図3は、実施の形態1の固体撮像装置の受光セル111a、111b、111cにおける開口部20の形成工程から遮光膜19の上方の層間膜29の形成工程までを示している。
【0049】
この形成方法では、まず遮光膜19上にパターニングされたレジストを形成する。すなわち、遮光膜19上にレジストを形成し、開口部20を形成する領域のレジストを除去する。その後、ドライエッチ技術によりレジストをマスクとして遮光膜19の一部を除去し、光電変換部17上方に位置する開口部20を形成する第1工程(図3(a))を行う。
【0050】
次に、光を透過させる高屈折率層125を開口部20内及び遮光膜19上に形成する第2工程(図3(b))と、高屈折率層125を開口部20内及び遮光膜19上にさらに形成する第3工程(図3(c))とを連続して行う。このように、第2工程と第3工程とを連続して行うことで開口部20上の高屈折率層125を高屈折率層125自体で平坦化する工程を行うことができる。
【0051】
最後に、高屈折率層125よりも屈折率の小さい遮光膜19の上方に層間膜29を形成する第4工程(図3(d))を行う。
【0052】
以上の第1〜第4工程を行うことにより、実施の形態1の固体撮像装置の受光セル111a、111b、111cにおける遮光膜19上の構造を形成することができる。本発明の固体撮像装置のように、特に開口部20の幅が狭いときには、開口部20を高屈折率材料で埋める第2工程の後に、引き続き高屈折率材料を形成していくと、開口部20の部分に凹型を形成していた高屈折率材料は、膜厚が厚くなるに従い凹部の幅が狭くなり、最終的に凹部の左右の側壁が接触して、表面が平坦な構造の高屈折率層125を作ることができる。このとき、高屈折率材料が遮光膜19の平面と側面とに均等に付く場合には、高屈折率層125の膜厚を開口部20の幅(d)の1/2以上にすることで、凹部を平坦にすることができる。高屈折率層125が平坦化されているため、高屈折率層125上にある遮光膜19の上方の層間膜29の表面を平坦に形成でき、層間膜29をCMP(chemical mechanical polishing)等により平坦化する工程をなくす、または、CMP等の平坦化量、時間を少なくすることができる。
【0053】
この形成方法を、従来のような開口部20の幅(d)が大きい構造を有する固体撮像装置に適用する場合には、上記のような凹部を無くすための高屈折率層125の膜厚(d/2)がかなり大きくなるため、上記形成方法により平坦化した場合の高屈折率層125の膜厚が大きくなり、集光が難しくなる課題が発生する。従って、この形成方法は、実用上、開口部20の幅(d)が1.5μm以下のような狭い開口部20の場合に特に有効となる。
【0054】
上記形成方法を利用する場合には、固体撮像装置の特性面では、開口部20上の高屈折率層125を容易に平坦化することができるため、高屈折率層125と遮光膜19の上方の層間膜29との間の界面に凹凸が無くなり、界面において光を乱反射させることなく開口部20に入射させることができ、感度低下を大幅に改善することができる。
【0055】
図3の形成方法では、高屈折率層125を形成して表面を平坦化した直後に、遮光膜19の上の層間膜29を形成したが、高屈折率材料を形成する第3工程の後に、さらにCMP等による高屈折率層125の平坦化を実施する第5工程を追加してもよい。これにより、高屈折率層125と遮光膜19の上方の層間膜29との間の界面における光の乱反射をさらに低減することができ、感度低下を極端に改善することができる。また、各受光セルの開口部20に入射する光量のバラツキを最小化することができ、感度バラツキも大きく改善することができる。
【0056】
(実施の形態2)
図4は本発明の実施の形態2の固体撮像装置の受光セル211a、211b、211cの断面図を示す。各受光セルの半導体基板11、光電変換層12、及び絶縁層13は、図7に示す従来の受光セルにおける構造と同じ構造を有する。
【0057】
金属層214は、従来の固体撮像装置と同様に遮光膜19を含む層であるが、本発明の実施の形態2に係る固体撮像装置では、金属層214は、遮光膜19が形成された後に、遮光膜19の開口部20を埋めむように形成され、高屈折材料により構成された高屈折率層225を有する。このとき、高屈折率層225は凸型の層内レンズの形状に加工されている。これにより、従来の固体撮像装装置の構造では必要であった、遮光膜19の上方の層間膜29及び層内レンズ30を省略することができ、受光セル全体の高さを低くすることができる。
【0058】
本実施の形態2の固体撮像装置では、入射光24は、マイクロレンズ23及びカラーフィルタ層15を透過し、従来の固体撮像装置の層内レンズ30を透過することなく、直接、高屈折率層225で形成された層内レンズにより集光され、光電変換部17に到達する。これにより、開口部20内にある高屈折率層225が凸型の層内レンズ形状を有し、開口部20の直上で集光することができるので、開口部20の幅が可視光の波長に近い場合の時に、特に集光率を大幅に向上させることができる。
【0059】
図5は本発明の実施の形態2の固体撮像装置の受光セル211a、211b、211cにおける遮光膜19上の構造の形成方法を示す断面図である。図5は、実施の形態2の固体撮像装置の受光セル211a、211b、211cにおける開口部20の製造工程から遮光膜19の上の層間膜31の形成工程までを示している。
【0060】
この製造方法では、図3に示す実施の形態1における固体撮像装置の形成方法と同様の方法で高屈折率層225を形成する第1〜第3工程(図5(a)〜図5(c))を行った後に、形成された高屈折率層225そのものを利用して層内レンズを形成する第4〜第7工程を追加して行い、その後に、遮光膜19の上に層間膜31を形成する第8工程を行っている。第4〜第8工程について以下に詳述する。
【0061】
まず、高屈折率層225の上にレジスト32を塗布する第4工程を行う(図5(d))。
【0062】
次に、レンズを形成しない領域のレジスト32を残すように露光・現像を行う第5工程を行う(図5(e))。
【0063】
次に、残ったレジスト32を加熱することによりレンズ状に整形する第6工程を行う(図5(f))。
【0064】
次に、レンズ形状のレジスト32と高屈折率層225を均等にエッチングすることで、高屈折率層225による層内レンズを形成する第7工程を行う(図5(g))。
【0065】
最後に、遮光膜19の上に層間膜31を形成する第8工程を行う(図5(h))。
【0066】
以上のように、高屈折率層225を用いて層内レンズを形成する第4〜第7工程を行うことで、従来の層内レンズ用に必要であった特別な成膜工程を削除し、固体撮像装置を製造する工程を削減することができるので、低価格な固体撮像装置を提供することができる。また、層内レンズが遮光膜19の直前にあるため、開口部20の幅の小さい場合であっても、効率良く集光ができ、高感度化を実現することができる。
【0067】
(実施の形態3)
図6は本発明の実施の形態3の固体撮像装置の受光セル311a、311b、311cの断面図である。
【0068】
本実施の形態3の固体撮像装置は、絶縁層13、金属層114、及びマイクロレンズ23の屈折率が等しいという点で実施の形態1の固体撮像装置と異なる。例えば、一つの材料を用いて、絶縁層13、金属層114、及びマイクロレンズ23を構成することにより、それらの屈折率を等しくする。その結果、製造コストを抑えることができる。
【0069】
以上、本発明の固体撮像装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態の限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲内で当業者が思いつく各種変形を施したものも本発明の範囲内に含まれる。
【0070】
例えば、上記実施の形態の固体撮像装置を用いてカメラを構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、固体撮像装置等に利用でき、特にデジタルカメラやデジタルビデオカメラ等に用いられる固体撮像装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施の形態1の固体撮像装置の受光セル111a、111b、111cの断面図である。
【図2】カラーフィルタ層15及び開口部20の透過特性を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1の固体撮像装置の受光セル111a、111b、111cにおける遮光膜19上の構造の形成方法を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態2の固体撮像装置の受光セル211a、211b、211cの断面図である。
【図5】本発明の実施の形態2の固体撮像装置の受光セル211a、211b、211cにおける遮光膜19上の構造の形成方法を示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態3の固体撮像装置の受光セル311a、311b、311cの断面図である。
【図7】従来の固体撮像装置の受光セル1a、1b、1cの断面図である。
【符号の説明】
【0073】
1a、1b、1c、111a、111b、111c、211a、211b、211c、311a、311b、311c 受光セル
11 半導体基板
12 光電変換層
13 絶縁層
14、114、214 金属層
15 カラーフィルタ層
16 P型ウェル
17 光電変換部
18、22、29、31 層間膜
19 遮光膜
20 開口部
21a、21b、21c フィルタ膜
23 マイクロレンズ
24 入射光
125、225 高屈折率層
27 開口部の厚み
28 高屈折率材料の厚み
30 層内レンズ
32 レジスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板に形成された光電変換部と、
前記光電変換部上方に位置するように形成された開口部が設けられ、前記半導体基板上に設置された遮光膜と、
前記開口部内に形成された高屈折率層とを備え、
前記開口部は、前記開口部を介して前記光電変換部に入射する光の真空中の波長に換算した最大波長よりも小さい開口幅を有し、
前記高屈折率層は、前記開口部を介して前記光電変換部に入射する光の前記最大波長の光を透過させる屈折率を有する高屈折率材料から構成される
ことを特徴とする固体撮像装置。
【請求項2】
前記開口部内には、前記高屈折率層が充填されている
ことを特徴とする請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項3】
前記高屈折率層は、1.8以上の屈折率を有する高屈折率材料から構成される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の固体撮像装置。
【請求項4】
前記高屈折率層の厚みは、前記遮光膜の厚みと略同一、又は前記遮光膜の厚みよりも厚い
ことを特徴する請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項5】
前記高屈折率層は、凸レンズ形状を有し、前記開口部を介して前記光電変換部に入射する光を集める
ことを特徴する請求項1〜4のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項6】
前記高屈折率材料が、酸化チタン、酸化タンタル及び酸化ニオブのいずれかである
ことを特徴する請求項1〜5のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項7】
前記開口幅は、1.0μm以下である
ことを特徴する請求項1〜6のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項8】
前記固体撮像装置は、さらに、前記開口部上方に位置するように前記遮光膜上に設置され、特定の波長域の光を透過させるフィルタ膜を備え、
前記開口部は、前記フィルタ膜が透過させる光の前記最大波長よりも小さい開口幅を有する
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の固体撮像装置を備える
ことを特徴とするカメラ。
【請求項10】
光電変換部が形成された半導体基板上に遮光膜を形成し、前記遮光膜に、前記光電変換部上方に位置する開口部を形成する開口部形成工程と、
前記開口部内及び前記遮光膜上に高屈折率層を形成する高屈折率層形成工程とを含み、
前記高屈折率層形成工程において、前記高屈折率層の表面が平坦になる膜厚の前記高屈折率層を形成する
ことを特徴とする固体撮像装置の製造方法。
【請求項11】
前記高屈折率層形成工程において、前記開口部の幅の1/2以上の膜厚の前記高屈折率層を形成する
ことを特徴とする請求項10に記載の固体撮像装置の製造方法。
【請求項12】
前記固体撮像装置の製造方法は、さらに、前記高屈折率層の表面を平坦化する平坦化工程を含む
ことを特徴とする請求項10又は11に記載の固体撮像装置の製造方法。
【請求項13】
前記固体撮像装置の製造方法は、さらに、前記開口部上方に位置する前記高屈折率層を凸レンズ形状に加工するレンズ形成工程を含む
ことを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の固体撮像装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−344754(P2006−344754A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−168725(P2005−168725)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】