説明

固体支持体に吸着された原薬

本発明は、医薬品業界の分野に属し、担体に吸着された、水にほとんど溶けない、タダラフィル、シンバスタチン、フェノフィブラートおよびロバスタチンなどの原薬(API)を含む剤形に関する。さらに、本発明は、水にほとんど溶けないAPIを含む吸着質に関し、塩素化された炭化水素、ジイソプロピルエーテルおよびヘキサンなどの1種(または複数)の非極性溶媒を用いて前記吸着質を調製するための方法に関する。さらに、本発明は、剤形を調製するための方法、ならびに剤形を調製するための吸着質の使用に関する。さらに、本発明は、勃起機能不全、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症および/または後天性免疫不全症候群(AIDS)の治療に用いるための剤形に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品業界の分野に属し、担体において水にほとんど溶けない原薬(API)を含む剤形に関する。さらに、本発明は、担体において水にほとんど溶けない前記APIを含む吸着質および吸着質および剤形を調製する方法、ならびに剤形を調製するための吸着質の使用に関する。さらに、本発明は、勃起機能不全、高コレステロール血症、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症または後天性免疫不全症候群(AIDS)などの疾患の治療に使用するための剤形に関する。本発明は、さらに水に溶解性が低いAPIに一般に適用することができ、担体において前記APIを含む吸着質を調製するために特に適当である吸着質の調製に関する。
【背景技術】
【0002】
ほとんど溶けない原薬(API)を含み、優れた溶解特性を有する剤形を製造することは、医薬品業界において大きな課題である。APIは例えば、タンパク質、ペプチド、ヌクレオチド、抗肥満薬、栄養補助食品、コルチコステロイド、エラスターゼ阻害薬、抗真菌薬、腫瘍領域の治療、鎮吐薬、鎮痛薬、心血管作動薬、抗炎症薬、駆虫薬、抗不整脈薬、抗生物質、抗凝血薬、抗うつ薬、抗糖尿病薬、抗てんかん薬、抗ヒスタミン薬、高血圧治療薬、抗ムスカリン薬、抗ミコバクテリア薬、抗新生物薬、免疫抑制薬、抗甲状腺薬、抗ウイルス薬、抗不安薬、鎮静薬、収れん薬、β−アドレノセプター遮断薬、血液製剤および代用薬、強心薬(cardiac inotropic agent)、造影剤、コルチコステロイド、鎮咳剤、診断薬、診断用イメージング剤、利尿薬、ドーパミン作動薬、止血剤、免疫学的作用物質、脂質調節薬、筋弛緩薬、副交感神経作動薬、副甲状腺カルシトニンおよびビスホスホネート、プロスタグランジン、放射性医薬品、性ホルモン、抗アレルギー薬、刺激薬および食欲抑制薬、交感神経模倣薬、甲状腺薬剤、血管拡張薬およびキサンチンからなる群から選択されるAPIとなり得る。水にほとんど溶けないAPIは、例えば、タダラフィル、フェノフィブラート、コレカルシフェロール(ビタミンD)、シンバスタチン、ナプロキセンおよびイブプロフェンなどのNSAID(非ステロイド性抗炎症薬)、酢酸メゲストロール、リトナビル(HIVプロテアーゼ阻害薬)またはシクロスポリンである。適当な剤形は、所望の溶解速度を有するAPIの完全な量を放出すべきであり、所望の安定性および剤形に関して重要である他の特性をやはり有するべきである。
【0003】
前述のように、このようなほとんど溶けないAPIについての一例は、(6R,12aR)−6−(1,3−ベンゾジオキソル−5−イル)−2,3,6,7,12,12a−ヘキサヒドロ−2−メチル−ピラジノ[1’,2’:1,6]ピリド[3,4−b]インドール−1,4−ジオン(タダラフィル)である。タダラフィルは、次式を有する環状グアノシン一リン酸(cGMP)−特異的ホスホジエステラーゼ酵素PDE5の強力なおよび選択的な阻害薬である。
【0004】
【化1】

それぞれ溶けにくいまたはほとんど溶けないAPIの多くのように、タダラフィルは、水にほとんど溶けない結晶性の固体として存在する。しかし、非晶質の状態で存在する他のほとんど溶けないAPIであり得ることを留意すべきである。PDE5を阻害すると、cGMPの量が増加し、その結果、平滑筋を弛緩させ、血流を増加させる。したがって、タダラフィルは、現在、例えば、肺動脈高血圧または男性の勃起機能不全などの性機能低下の治療に用いられる。
【0005】
EP129893A2は、溶けにくい結晶の薬物の吸着剤とのすりつぶした混合物を調製することによる溶解性の増加を開示している。吸着剤として、活性炭、活性粘土、シリカ、合成吸着樹脂、活性アルミナおよび他の生理的に許容される吸着剤などの固体支持体が言及されている。
【0006】
WO2008/104852A2は、フェノフィブラートの吸着質または吸着剤に吸着された約150μm以上の粒度を有するフェノフィブラートを含む医薬組成物およびその調製方法を記載している。
【0007】
US5,985,326は、タダラフィルおよび薬学的に許容されるその担体または賦形剤を有するこれらの組成物などの、水に溶けにくい薬物の共沈殿の形態の固体分散体に関し、かかる共沈殿の調製に関する。
【0008】
US6,821,975B1は、40μm未満の粒度を有するタダラフィルを有する遊離の微粒子の形態を記載している。しかし、結晶の形態のタダラフィルの遊離の形態は、(以下に記載される通り)溶解速度が乏しいことを示す。
【0009】
US2007/0098804は、二峰性粒度分布を有する固形微粒子タダラフィルを記載している。
【0010】
WO03/000238は、溶媒を速やかに除去することによって形成されている吸着質に関する。
【0011】
WO2008/005039A1は、担体と密接に会合したタダラフィルを含む固形複合体を開示する。開示された担体は、ポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、ポリメタクリラートおよびヒドロキシプロピルセルロースなどの親水性ポリマーである。担体およびタダラフィルは、溶液を形成するために有機溶媒と組み合わされる。担体とタダラフィルとの間の密接な会合をもたらすために、溶媒は、蒸発によって、例えば、流動層乾燥およびスプレー乾燥によって除去される。
【0012】
US2006/0286166A1は、約200から約600μmの粒度を有する微粒子タダラフィルおよびその調製方法を記載している。さらに、C−Cケトン、脂肪族ニトリル、低級脂肪族アルコール、水およびそれらの混合物となり得る溶媒とのタダラフィルの組み合わせは開示されている。
【0013】
しかしながら、上記の方法およびそれぞれ溶けにくいまたは水にほとんど溶けない薬物を含む製剤の調製にもかかわらず、特に、改善されたバイオアベイラビリティおよび優れた効果を可能にする、改善された溶解プロファイルに関して溶けにくい薬物を含む改善された剤形およびその剤形を調製するための方法が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許出願公開第129893号明細書
【特許文献2】国際公開第2008/104852号
【特許文献3】米国特許第5,985,326号明細書
【特許文献4】米国特許第6,821,975号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2007/0098804号明細書
【特許文献6】国際公開第03/000238号
【特許文献7】国際公開第2008/005039号
【特許文献8】米国特許出願公開第2006/0286166号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
(発明の要旨)
本発明は、以下の態様、主題および好ましい実施形態を提供し、これらはそれぞれ、単独でまたは組み合わせて投与され、さらに、本発明の目的を解決するのに寄与している。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(1)微粒子および/または多孔質の担体と会合した、水にほとんど溶けない原薬(API)を含み、非極性溶媒または非極性溶媒の混合物を用いることによって調製されることが好ましい吸着質。
【0017】
好ましくは、極性溶媒は全く用いられない。さらに好ましくは、本質的に、APIは、API沈殿物の形態でも、API粒子の形態でもAPI結晶の形態でもない。本発明の意味の範囲内で、「本質的に、APIは、API沈殿物の形態でも、API粒子の形態でも、API結晶の形態でもない」という用語は、吸着質サンプルから100個の担体/吸着質−粒子の任意に選択されたサンプルを分析するとき、わずか10個以下の担体/吸着質−粒子、好ましくは8個以下の担体/吸着質−粒子、より好ましくは6、4、2または1個の担体/吸着質−粒子以下、最も好ましくは、担体/吸着質−粒子なしは、担体におけるAPIの沈殿物、結晶もしくは粒子または単離されたAPI粒子を示すことを意味する。「分析する」は、通常、吸着質が、サブミクロン微粒子物を分離することができる適当な倍率で走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて分析されることを意味する。適当な倍率は、例えば、15,000または13,000である。
【0018】
さらに、好ましくは、吸着質によって構成されるAPIの少なくとも90重量%は、非共有結合によって担体の表面と会合している。さらに好ましくは、担体によって構成されるAPIの10重量%未満は、沈殿物、粒子または結晶の形態である。より具体的には、APIは、微粒子および/または多孔質の担体の表面と会合している。
【0019】
本発明による吸着質は、熱力学的に安定性があり、したがって、自発的に形成する。さらに、吸着質は、動力学的に捕獲した状態ではなく、したがって、他の吸着質、例えば、異なる方法によって得られた吸着質に比べて優位な化学的および/または物理的安定性を示す。本発明による吸着質は、APIがそれぞれの担体の表面に単に堆積するだけでないことを意味するが、「と会合した」という用語は、APIの主な部分(50重量%以上)、好ましくは本質的にすべて(すなわち、少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%)が、非共有結合によって、すなわち、水素結合、双極子相互作用、イオン相互作用、ファンデルワールス力、疎水的相互作用および/または担体材料による他の直接の会合力によって安定させることを意味する。
【0020】
本発明による担体は、微粒子および/または多孔質の担体であり、これは、この担体がAPIが吸着することができる外面および/または内面を有することを意味する。さらに、本発明による担体は、APIの吸着(adsorbtion)中その形態を本質的に変化しない。好ましくは、担体は、無機担体であり、好ましくは二酸化ケイ素であり、より好ましくは、コロイド状二酸化ケイ素または多孔質のシリカである。多孔質のシリカは、好ましくは下記に定義した通り多孔度を有する。
【0021】
好ましい吸着質および好ましい微粒子および/または多孔質の担体は、後述する。多孔度は、DIN EN623−2に従って決定することができ、多孔度は、好ましくは少なくとも20%、30%、40%、50%または60%である。また好ましくは、多孔度は、10−70%の間の範囲であり、さらに好ましくは、20−70%の間の範囲であり、さらに好ましくは30−70%の間または40−70%の間である。
【0022】
本発明に関して、水にほとんど溶けないすべてのAPIは、用いることができる。例えば、APIは、タンパク質、ペプチド、ヌクレオチド、抗肥満薬、栄養補助食品、コルチコステロイド、エラスターゼ阻害薬、抗真菌薬、腫瘍領域の治療、鎮吐薬、鎮痛薬、心血管作動薬、抗炎症薬、駆虫薬、抗不整脈薬、抗生物質、抗凝血薬、抗うつ薬、抗糖尿病薬、抗てんかん薬、抗ヒスタミン薬、高血圧治療薬、抗ムスカリン薬、抗ミコバクテリア薬剤、抗新生物薬、プロテアーゼ阻害薬クラスによる抗レトロウイルス薬、免疫抑制薬、抗甲状腺薬、抗ウイルス薬、抗不安薬、鎮静薬、収れん薬、β−アドレノセプター遮断薬、血液製剤および代用薬、強心薬、造影剤、コルチコステロイド、鎮咳剤、診断薬、診断用イメージング剤、利尿薬、ドーパミン作動薬、止血剤、免疫学的作用物質、脂質調節薬、筋弛緩薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、副交感神経作動薬、副甲状腺カルシトニンおよびビスホスホネート、プロスタグランジン、放射性医薬品、性ホルモン、抗アレルギー薬、刺激薬および食欲抑制薬、交感神経模倣薬、甲状腺薬剤、血管拡張薬およびキサンチンからなる群から選択することができる。好ましくは、本発明の意味の範囲内のAPIは、タダラフィル、フェノフィブラート、コレカルシフェロール(ビタミンD)、シンバスタチン、ナプロキセンおよびイブプロフェンなどのNSAID、酢酸メゲストロール、リトナビル(HIVプロテアーゼ阻害薬)またはシクロスポリンであり、より好ましくは、APIはタダラフィルである。さらに具体的に好ましいのは、APIは、タダラフィル、シンバスタチン、ロバスタチンおよびフェノフィブラートからなる群から選択される。「水にほとんど溶けない」という用語の意味は、以下に説明される。
【0023】
(2)微粒子および/または多孔質の担体と会合したAPIを含む、項目(1)に記載の吸着質。
【0024】
さらに好ましくは、吸着質は、タダラフィル、シンバスタチン、ロバスタチンおよびフェノフィブラートからなる群から選択されるAPIを含む。さらに好ましいのは、タダラフィルは、APIとして用いられる。
【0025】
(3)APIが非晶質の形態である、項目(1)または(2)に記載の吸着質。好ましくは、APIは、本質的に結晶または粒子の形態ではなく、また好ましくは、APIは、本明細書で定義する通りAPI沈殿物として微粒子担体に存在せず、より具体的には、APIは、このような沈殿物として微粒子担体において、または内部の気孔表面に存在しない。言い換えれば、本質的にAPIは、沈殿物の形態でも、粒子の形態でも結晶の形態でもない。この用語に関して、上記の説明について言及がなされている。
【0026】
溶解特性に与える影響を効率的に制御するために、例えば、結晶または沈殿物または粒子の形態であるAPIの10%未満、好ましくは7%未満、より好ましくは5%未満、さらにより好ましくは2%未満、最も好ましくは1%未満(全体の吸着質に対してそれぞれ重量%で)を提供することが可能であり;特に好ましくは、用いられたAPIのどの割合も、沈殿物もしくは粒子の形態でもなくまたは結晶の形態でもない。「吸着質」およびこの文脈中で、本発明について本明細書で使用される場合「と会合した」という用語の真の意味は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)によって表面におけるAPIの沈殿物、粒子または結晶を有する担体を識別することができる。本発明による吸着質の形態は、担体材料自体の形態に本質的に対応し、これは、APIが担体材料の形態を本質的に変化させないことを意味する。それに反して、担体材料の表面にAPIの結晶または沈殿物を有する担体材料のSEM−画像は、担体材料の表面に異なる形態を有する物体としてのAPIを示す。APIのこれらの結晶または沈殿物または粒子は、担体とは別々に見ることができる。したがって、本発明によるAPIと担体との間の適切な「会合」を定義する吸着質が得られているか否かを見出すために、当業者は、得られた生成物のSEM−画像を、純粋な担体材料(担体自体、すなわち、APIなし)から得られたSEM−画像と比較することができる。好ましい実施形態では、得られた生成物のSEM−画像、すなわち、吸着質が、担体自体の形態と本質的に異なる形態を有する物体を示す場合、得られた生成物は、本発明による吸着質ではない。図(fig.)4aは、本発明による吸着質、すなわち、結晶および/または沈殿物を有さない吸着質のSEM−画像を示し、図4bおよび4cは、結晶の形態のAPIを有する担体のSEM−画像を示す。
【0027】
(4)担体が、二酸化ケイ素であり、好ましくは、コロイド状二酸化ケイ素または多孔質のシリカの形態である、項目(1)から(3)のいずれかに記載の吸着質。
【0028】
(5)吸着質中のAPIの量が、(それぞれ全体の吸着質に対して重量%で)0.01から40重量%の範囲であり、好ましくは、0.1から30重量%の範囲であり、より好ましくは1から30重量%の範囲であり、さらにより好ましくは、10から30重量%の範囲である、項目(1)から(4)のいずれかに記載の吸着質。
【0029】
(6)水溶性作用物質からなる群から選択される1種または複数の物質をさらに含有し、好ましくは、水溶性作用物質が、プロピレングリコール、クエン酸トリエチル、ポリエチレングリコール400およびポリソルベートからなる群から選択される、項目(1)から(5)のいずれかに記載の吸着質。好ましくは、吸着質は、担体、APIおよび1種(または複数)の前記水溶性作用物質しかを含有しない。これは、吸着質が、担体、溶媒、APIおよび1種(または複数)の水溶性作用物質を用いることによって調製されることを意味する。さらに好ましいのは、吸着質は、1種のみ水溶性作用物質を含み、好ましくはプロピレングリコール、クエン酸トリエチル、ポリエチレングリコール400およびポリソルベートからなる群から選択される1種の水溶性作用物質を含む。さらに好ましいのは、吸着質を調製するために用いる1種(または複数)の水溶性作用物質の量は、吸着質を調製するために用いられるAPIの量に基づいて50重量%未満であり、さらに好ましいのは、30重量%以下である。
【0030】
(7)項目(1)−(6)のいずれかに記載の吸着質を含む剤形。
【0031】
(8)医薬組成物/剤形が、少なくとも1種の賦形剤を含み、好ましくは、賦形剤が、賦形剤、結合剤、充填剤、崩壊剤、滑沢剤、制御放出(CR)剤、甘味剤、流動促進剤(glidant)、香料および着色剤からなる群から選択され;
充填剤が、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、コメデンプン、コムギデンプン、アルファ化デンプン、完全にアルファ化したデンプンなどの異なるグレードのデンプン;微結晶セルロースまたはケイ化した微結晶セルロースなどのセルロース;マンニトール、エリトリトール;乳糖一水和物、無水乳糖、スプレー乾燥した乳糖または粉砕した乳糖などの乳糖;リン酸水素カルシウムなどのカルシウム塩;ソルビトールおよびキシリトールからなる群から選択され;特に好ましくは、充填剤が、アルファ化デンプン、微結晶セルロース、ケイ化した微結晶セルロース、乳糖一水和物、スプレー乾燥した乳糖および粉砕した乳糖からなる群から選択され;
崩壊剤が、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルデンプンナトリウム、クロスカルメロースナトリウム(架橋したセルロースカルボキシメチルエーテルナトリウム塩)、デンプンおよびデンプングリコール酸ナトリウムなどのそれらの誘導体、架橋ポリビニルピロリドン(クロスポビドン)および低置換ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択され;特に好ましくは、崩壊剤が、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウムおよびクロスポビドンからなる群から選択され;
滑沢剤が、ステアリン酸、タルク、グリセリルベヘナート、フマル酸ステアリルナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムからなる群から選択され;特に好ましくは、滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウムおよびフマル酸ステアリルナトリウムであり;
結合剤が、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ビニルピロリドンの他のビニル誘導体とのコポリマー(コポビドン)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、粉末化したアラビアゴム、ゼラチン、グアーガム、カルボポールなどのカルボマー、ポリメタクリラートおよびアルファ化デンプンからなる群から選択され;
賦形剤が、グルコースなどの単糖、スクロース、無水乳糖、乳糖一水和物または粉砕した乳糖などのオリゴ糖ならびにソルビトール、マンニトール、エリトロールおよびキシリトールなどの糖アルコールなどの炭水化物から選択され;特に好ましくは、賦形剤が、ソルビトールおよび粉砕した乳糖からなる群から選択され;
グラダントが、コロイド状シリカ、疎水性コロイド状シリカおよびタルクなどの三ケイ酸マグネシウムからなる群から選択され;特に好ましくは、グラダントが、コロイド状シリカおよび疎水性コロイド状シリカからなる群から選択され;
マトリックスに基づくCR固形剤形の生成のための制御放出(CR)剤が、好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒプロメロースなどの高粘度水溶性ポリマーおよびグリセリルベヘナートなどの脂溶性(lypophilic)マトリックス形成剤からなる群から選択される;および/または
甘味剤が、アスパルテーム、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸ジカリウム、アスパルテーム、ステビア、タウマチンなどからなる群から選択され;好ましくは、賦形剤が、微結晶セルロース、ケイ化した微結晶セルロース、粉砕した乳糖、スプレー乾燥した乳糖、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、ステアリン酸マグネシウムおよびフマル酸ステアリルナトリウムである、項目(7)に記載の剤形。
【0032】
さらに、APIの固形剤形からの放出はまた、CR被膜を適用することによって制御することもできる。これに関して、当業者に知られている任意の適当なポリマーは、吸着質を含む固形剤形で適用される延長もしくは遅延放出コーティングを生成するために使用してよい。
【0033】
(9)微結晶セルロース、ケイ化した微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウムおよび粉砕したもしくはスプレー乾燥した乳糖を含む、項目(7)または(8)に記載の剤形。
【0034】
(10)医薬組成物/剤形中の吸着質の量が、(それぞれ全体の剤形に対して重量%で)1から95重量%の範囲であり、好ましくは、5から90重量%の範囲であり、より好ましくは10から70重量%の範囲であり、さらにより好ましくは20から50重量%の範囲である、項目(1)から(9)のいずれかに記載の剤形。
【0035】
(11)
a)水にほとんど溶けない原薬(API)を提供するステップ(「水にほとんど溶けない」という用語は、APIの溶解性が0.1mg/ml以下であることを定義する。);
b)粒子の形態の固体支持担体を提供するステップ;
c)前記APIおよび前記担体を所定の溶媒に入れ、その後の除去により、担体粒子における、より具体的には担体粒子の外面または内部の気孔表面におけるAPI材料/物質の会合性吸着を可能にするが、API−沈殿物を実質的に生成せず、より具体的には無API−沈殿物が、担体粒子の外面または内部の気孔表面で形成されるステップ(溶解特性に与える影響を効率的に制御するために、例えば、結晶または沈殿物の形態である総APIの10%未満、好ましくは7%未満、より好ましくは5%未満、さらにより好ましくは2%未満、最も好ましくは1%未満を提供することが可能であり;特に好ましくは、用いられたAPIの割合は、結晶の形態でも沈殿物の形態でもない。)および
d)溶媒を除去してAPI/担体吸着質を形成するステップ
を含む、沈殿物、粒子または結晶の形態のAPIを本質的に含まない吸着質を調製するための方法。
【0036】
項目(11)の好ましい実施形態において、方法は以下の通りに実施される。
【0037】
以下の順序で、
a)非極性溶媒または非極性溶媒を含む溶媒と、水にほとんど溶けない原薬(API)(「水にほとんど溶けない」という用語は、APIの溶解性が0.1mg/ml以下であることを定義する。)との混合物、および場合によって、水溶性作用物質を含む、好ましくはこれらからなる溶液を提供するステップ、
b)得られた溶液を粒子の形態の固体支持担体と合わせるステップおよび
c)溶媒を除去してAPI/担体吸着質を形成するステップ
を含み、非極性溶媒は、担体粒子における、より具体的には、担体粒子の外面または内部の気孔表面における、APIの吸着を可能にするが、API−沈殿物を実質的に生成せず、より具体的には、無API−沈殿物は、担体粒子の外面または内部の気孔表面に形成される、沈殿物、粒子または結晶の形態のAPIを本質的に含まない吸着質を調製するための方法。「沈殿物、粒子または結晶の形態のAPIを本質的に含まない」という用語の意味に関しては、上記の説明を参照されたい。
【0038】
溶解特性に与える影響を効率的に制御するために、例えば、結晶または沈殿物の形態である総APIの10%未満、好ましくは7%未満、より好ましくは5%未満、さらにより好ましくは2%未満、最も好ましくは1%未満を提供することが可能であり、特に好ましくは、用いられたAPIの割合は、結晶の形態でも沈殿物の形態でもない。
【0039】
溶媒は、任意の公知の方法を用いて除去することができる。好ましくは、溶媒は、ろ過もしくは蒸発によってまたは蒸発およびろ過の組み合わせによって除去され、より好ましくは、溶媒は、蒸発およびろ過の組み合わせによって除去される。また好ましくは、蒸発または蒸発およびろ過は、有機溶媒が、適当には、少なくとも30分、さらに好ましくは少なくとも50分、さらに好ましくは少なくとも70分、さらに好ましくは少なくとも100分、さらに好ましくは少なくとも120分の時間(蒸発時間)中に、より好ましくは少なくとも2.5時間の間に、蒸発されるまたは蒸発およびゆっくりとろ過されるこのような方式で行われる。本発明の文脈中で、「蒸発時間」は、溶媒の少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%を蒸発させるために必要とする時間に対応する。言い換えれば、蒸発の期間は、例えば、溶媒の少なくとも80%が蒸発する時間を測定することによって決定される。溶媒が過度速く蒸発すると、例えば、APIの共沈殿を形成し、これは、担体に吸着されないはずであり、非晶質のまたは結晶の粒子の形態になるはずである。溶媒をゆっくりと除去すると、高速な除去を達成するために通常なら必要であるはずである、不経済で、複雑なおよび骨の折れる工程段階は、必要でないという利点を有する。さらに、溶媒をゆっくりと除去すると、APIの安定性および溶解性に関して改善された特性を有する、安定した吸着質が形成される。これにより、開示された方法は、増強されたAPI安定性を提供するために、API物質および担体材料の表面の間の会合力の形成を平衡させ、その後、水溶液中に入れたとき、前記会合力の増強されたおよび比較的高速の解離を達成することが可能になる。極性の水分子の担体へのより強力な会合による結合により、水分子は、担体表面と相互作用し、担体に吸着されるAPI分子を速やかに置換すると考えられる。さらに、API分子が(API−沈殿物を本質的に形成せずに)担体粒子の内面または外面に吸着されるため、極めて低い溶解性生成物は、APIを十分に溶解する。本発明に記載の方法の一実施形態では、溶媒は、ステップd)中で完全に除去されない。
【0040】
(12)APIが、タダラフィル、シンバスタチン、ロバスタチンまたはフェノフィブラートであり、さらに好ましくはタダラフィルであるおよび/または担体が、二酸化ケイ素などの無機担体であり、好ましくはコロイド状二酸化ケイ素または多孔質のシリカである、項目(11)に記載の方法。
【0041】
(13)溶媒が、非極性溶媒もしくは非極性溶媒の混合物である、または溶媒は、極性および非極性溶媒の混合物であり、混合物が、少なくとも70%非極性溶媒を含む、項目(11)または(12)に記載の方法。好ましくは、1種(または複数)の非極性溶媒は、塩素化された炭化水素およびエーテル、好ましくはジクロロメタン、ジイソプロピルエーテルまたはトリクロロメタン;およびn−ヘキサンなどのヘキサンからなる群から選択される。好ましくは、溶媒は、非極性溶媒または非極性溶媒の混合物である。一般に、15未満の誘電率を有する溶媒は非極性であるものとみなされる。
【0042】
フェノフィブラートの場合、好ましい溶媒系は、ジイソプロピルエーテルおよびn−ヘキサンの混合物である。
【0043】
ロバスタチンの場合、好ましい溶媒系は、トリクロロメタンおよびジイソプロピルエーテルの混合物である。
【0044】
シンバスタチンの場合、好ましい溶媒系は、ジクロロメタンである。
【0045】
タダラフィルの場合、好ましい溶媒系は、ジクロロメタンである。
【0046】
(14)少なくとも1種の水溶性作用物質が、その方法における任意の時点で、好ましくは、ステップ(d)の前に添加される、項目(11)から(13)のいずれかに記載の方法。
【0047】
(15)ステップ(a)から(c)が、溶媒にAPIを溶解することによって、好ましくは透明な溶液を提供し、次いで、得られた溶液を固体支持担体と合わせることによって達成される、項目(11)から(14)のいずれかに記載の方法。
【0048】
(16)剤形を調製するための方法は、本発明による吸着質を製剤するステップを含む。「吸着質」およびこの文脈中で、「と会合した」という用語の定義については、上記、特に項目(3)を参照されたい。「多孔度」という用語に関しては、上記、特に項目(1)を参照されたい。上記で述べた通り、「水にほとんど溶けない」という用語は、通常、APIの溶解性が0.1mg/ml以下であることを定義する。
【0049】
一般に、吸着質は、当技術分野で一般に用いられる広範囲の技法によって固形剤形に製剤し配合することができる。高い薬物負荷を有する吸着質(例えば、タダラフィル吸着質)に使用されることが好ましい、本発明による方法は、
a)微粒子または多孔質の担体において、またはその内側に、水にほとんど溶けないAPIが形成された本発明による吸着質と、少なくとも1種の賦形剤との混合物を提供するステップ、
b)好ましくは衝撃式粉砕によって、ステップ(a)の混合物を微粉砕し、好ましくは、微粉砕されたステップ(a)の混合物を賦形剤、好ましくは項目(8)で定義された賦形剤と混合し、またはステップ(a)の混合物を賦形剤と共に、好ましくは項目(8)で定義された賦形剤と共に共粉砕もしくは微細分散させるステップ、
c)ステップ(b)の混合物を、好ましくは乾式製剤技法によって剤形に製剤するステップ、場合によって、
d)さらに、APTの当業者に知られ、使用することができる固形剤形からの放出を制御するための任意の方法を適用するステップ
を含み、これらの方法には、マトリックスに基づいたまたはコーティングに基づいた制御放出系が含まれる。
【0050】
(17)一般に、吸着質は、賦形剤、例えば、項目(8)に記載された賦形剤と簡単にブレンドすることができ、当技術分野で一般に用いられる剤形を調製するための方法に供することができる。項目(16)において定義された方法の好ましい実施形態において、好ましくは、高い薬物負荷を有する吸着質を含む剤形を調製する場合、ステップ(a)における賦形剤は、親水性賦形剤であり、より好ましくは、賦形剤は、乳糖、微結晶セルロース、ケイ化した微結晶セルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウムおよびクロスポビドンからなる群から選択される。
【0051】
(18)一般に、吸着質は、純粋な形態のAPIと同様に処理することができ、湿式もしくは乾式造粒方法、直接圧縮または任意のペレット製造技法を用いて製剤することができる。高い薬物負荷を有する吸着質を含む剤形のために好ましくは用いた、項目(16)または(17)に記載の方法の好ましい実施形態において、ステップ(c)における好ましい乾式製剤技法は、乾式造粒法または直接圧縮であり、好ましくは、低用量調製の場合では、直接圧縮は使用され、高用量の調製の場合では、乾式造粒法は使用される。
【0052】
(19)好ましくはステップ(b)の後に項目(8)に定義された任意のさらなる賦形剤が添加される、項目(16)から(18)のいずれか一項に記載の方法。
【0053】
(20)さらなる賦形剤が、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ステアリン酸マグネシウムおよびフマル酸ステアリルナトリウムから選択される、項目(19)に記載の方法。
【0054】
(21)調製された吸着質がAPIの結晶または沈殿物を本質的に含まず、これは、APIの10%未満、好ましくは7%未満、より好ましくは5%未満、さらにより好ましくは2%未満、最も好ましくは1%未満(それぞれ全体の吸着質に対して重量%で)が結晶または沈殿物の形態であることによって定義され;特に好ましくは、用いられたAPIの割合が、結晶の形態でも沈殿物の形態でもない、項目(16)から(20)のいずれか一項に記載の方法。
【0055】
さらなる調製された実施形態において、本質的にAPIは、結晶または沈殿物の形態ではなく、「本質的にAPIは結晶または沈殿物の形態ではない」という用語は、視覚的に検査したとき、100個の吸着質、10個以下の吸着質、好ましくは8個以下の吸着質、より好ましくは6、4、2または1個の吸着質以下、最も好ましくは吸着質がないものが、担体におけるAPIの沈殿物、結晶または粒子を示すことを意味する。「視覚的に検査する」という用語に関して、上記の説明について言及がなされている。
【0056】
(22)(a)において、吸着質が、項目(7)から(10)のいずれか一項に記載の剤形を調製するための項目(1)から(6)のいずれかに記載の吸着質である、項目(16)から(21)のいずれか一項に記載の方法。
【0057】
(23)(a)において、吸着質が、項目(11)から(16)のいずれか一項に従って調製された吸着質である、項目(16)から(21)のいずれか一項に記載の方法。
【0058】
(24)剤形を調製するための、項目(1)から(6)のいずれか一項に記載の吸着質の使用。
【0059】
(25)肺動脈高血圧、高コレステロール血症または男性の勃起機能不全などの性機能低下の治療で使用するための、水にほとんど溶けない原薬(API)、好ましくはタダラフィル、シンバスタチン、ロバスタチンおよびフェノフィブラート、さらに好ましくはタダラフィルを含む、項目(7)から(10)のいずれか一項に記載の剤形または非ステロイド性抗炎症薬、免疫抑制薬および/またはHIV感染および/またはAIDSの治療に使用するためのプロテアーゼ阻害薬クラスによる抗レトロウイルス薬を含む項目(7)から(10)のいずれかに記載の剤形。
【0060】
(26)本発明による方法に従って調製された吸着質。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明によるジクロロメタンから得られたタダラフィルの吸着質と比較した結晶のタダラフィルおよびタダラフィルの沈殿物の溶解を示す図である。タダラフィルを含む担体は、実施例1に記載されている通り調製されている。図1は、以下のサンプル:pH6.9の20mM リン酸緩衝液中でジクロロメタンから得られたAerosil(登録商標)380に対する10%タダラフィル、ジクロロメタンから得られたMgOに対する10%タダラフィル、ジクロロメタンから得られたAlに対する10%タダラフィルおよびジクロロメタンから得られたTiOに対する10%タダラフィルの溶解プロファイルを示す。
【図2】純粋なタダラフィル−吸着質(「TDL」)およびプロピレングリコール(「TDL−PG」)、クエン酸トリエチル(「TDL−TEC」)およびポリエチレングリコール400(「TDL−PEG」)のような異なる親水性添加物を有するタダラフィル吸着質の溶解を示す図である。タダラフィル:Aerosil:添加物の比は1:5:0.3重量/重量である。水溶性作用物質を用いた吸着質の調製は、実施例2および13に記載されている。
【図3】実施例3、4および5で調製される通りサンプルからの溶解を示す図である。A2溶解装置(1000mL、50rpm)は、米国薬局方(USP)に記載される通り用いられ、溶解媒体は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)0.5%を含む水である。実施例3および4は、より高速の溶解プロファイルを示す。これらの実施例で用いられる組成物は、賦形剤を有するタダラフィル−吸着質の衝撃式粉砕により調製される。実施例5による組成物は、衝撃式粉砕なしで調製される。
【図4−1】本発明による吸着質、すなわち、沈殿物および/または結晶なしのSEM−画像(図4a)を示す図である。
【図4−2】結晶の形態のAPIを有する担体のSEM−画像(図4bおよび4c)を示す図である。
【図5】実施例18に記載されている通りに調製したおよび純粋なタダラフィルの溶解に比べた、吸着質の溶解を示す図である。
【図6】実施例6において調製される通りサンプルの溶解プロファイルを示す図である。A2溶解装置(1000mL、75rpm)を用い、溶解媒体は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の0.5%を含む水である。
【図7】実施例19に記載されている通りジイソプロピルエーテル/n−ヘキサンから得られたフェノフィブラートの吸着質と比較した結晶のフェノフィブラート(FEN)の溶解を示す図である。表2は、水中のSYLOID(登録商標)AL1に対するフェノフィブラートおよび10%フェノフィブラートの溶解プロファイルを示す。
【図8】実施例20に記載されている通りトリクロロメタン/ジイソプロピルエーテルから得られたロバスタチンの吸着質と比較した結晶のロバスタチン(LVS)の溶解を示す図である。表3は、0.02M塩酸中のSYLOID(登録商標)AL1に対するロバスタチンおよび10%ロバスタチンの溶解プロファイルを示す図である。
【図9】実施例21に記載されている通りジクロロメタンから得られたシンバスタチンの吸着質と比較した結晶のシンバスタチン(SVS)の溶解を示す図である。表4は、0.02M塩酸中でSYLOID(登録商標)AL1に対するシンバスタチンおよび10%シンバスタチンの溶解プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本発明は、現在好ましい実施形態および例によってより詳細に記載されるが、これらは、例示的な目的のために示すに過ぎず、いかなる方法でも本発明の範囲を限定するものではないものと理解される。
【0063】
本発明による方法は、担体(ただし、微粒子および/または多孔質の担体が使用される)と会合した、API、具体的には水にほとんど溶けないAPI、例えば、タダラフィル、フェノフィブラート、コレカルシフェロール(ビタミンD)、シンバスタチン、ナプロキセンおよびイブプロフェンなどのNSAID、酢酸メゲストロール、リトナビル(HIVプロテアーゼ阻害薬)またはシクロスポリンを含む真の吸着質を提供することを可能にすることが驚くべきことに見出された。しかし、ほとんど溶けないAPIが用いられるとき、現在開示される概念の一般の適用性を考えると、APIはまた、タンパク質、ペプチド、ヌクレオチド、抗肥満薬、栄養補助食品、コルチコステロイド、エラスターゼ阻害薬、抗真菌薬、腫瘍領域の治療、鎮吐薬、鎮痛薬、心血管作動薬、抗炎症薬、駆虫薬、抗不整脈薬、抗生物質、抗凝血薬、抗うつ薬、抗糖尿病薬、抗てんかん薬、抗ヒスタミン薬、高血圧治療薬、抗ムスカリン薬、抗ミコバクテリア薬剤、抗新生物薬、プロテアーゼ阻害薬クラスによる抗レトロウイルス薬、免疫抑制薬、抗甲状腺薬、抗ウイルス薬、抗不安薬、鎮静薬、収れん薬、β−アドレノセプター遮断薬、血液製剤および代用薬、強心薬、造影剤、コルチコステロイド、鎮咳剤、診断薬、診断用イメージング剤、利尿薬、ドーパミン作動薬、止血剤、免疫学的作用物質、脂質調節薬、筋弛緩薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、副交感神経作動薬、副甲状腺カルシトニンおよびビスホスホネート、プロスタグランジン、放射性医薬品、性ホルモン、抗アレルギー薬、刺激薬および食欲抑制薬、交感神経模倣薬、甲状腺薬剤、血管拡張薬およびキサンチンからなる群から選択することもできる。好ましくは、本発明の意味の範囲内のAPIは、タダラフィル、フェノフィブラート、コレカルシフェロール(ビタミンD)、シンバスタチン、ナプロキセンおよびイブプロフェンなどのNSAID、酢酸メゲストロール、リトナビル(HIVプロテアーゼ阻害薬)またはシクロスポリンからなる群から選択され、好ましくはタダラフィル、シンバスタチン、ロバスタチンまたはフェノフィブラートからなる群から選択され、より好ましくは、APIは、タダラフィルである。それ自体として水にほとんど溶けないAPIの溶解性を増加するかなりの寄与として、担体と会合した有効成分は、本質的に結晶の形態でも沈殿物もしくは粒子の形態でもない。溶解特性に与える影響を効率的に制御するために、例えば、結晶または沈殿物の形態である総APIの10%未満、好ましくは7%未満、より好ましくは5%未満、さらにより好ましくは2%未満、最も好ましくは1%未満を提供することが好ましく;特に好ましくは用いられたAPIの割合は、結晶の形態でも沈殿物の形態でもない。本発明による方法を実施するとき、APIは、APIの溶媒中溶液から担体の外面に、場合によって、内面にもまた十分に吸着される。具体的には、溶媒除去中にAPIの沈澱または結晶形成を避けることに関して、用いられる関連する構成物(API、微粒子担体および溶媒)間の適切な相溶性を観察すると、吸着プロセスは、放熱することができ、担体表面に対するAPIの親和性によって起こり得る。本発明を用いて、溶液中のAPIの大部分、関連する構成物間の相溶性が観察されるとき、本質的にすべておよびおそらくさらには総量は、吸着され、微粒子担体を均質に覆い、溶媒除去後に担体に最終的に堆積し得る沈殿物または結晶を形成しない。結果として、APIは、改善されたバイオアベイラビリティおよび改善された効果を可能にする改善された溶解速度を示す。いかなる理論に縛られることも望まず、担体材料は、非極性溶媒とよりも極性溶媒と(例えば、双極子−双極子相互作用によって)より強力に相互作用することが考えられる。したがって、APIと比較して、極性溶媒は、担体に対してより高い親和性を示す。そのため、親水性溶媒を用いることは、担体の表面に対するAPIの相互作用および会合を防止する。結果として、APIは、結晶または沈殿物をむしろ形成するまたは真の会合なしに担体の表面に堆積物を一般に形成するに過ぎない。対照的に、非極性溶媒の使用は、APIと担体材料の間の相互作用および会合を可能にし最終的に増強する。
【0064】
APIの吸着質からの溶解速度は、APIの沈殿物からの溶解速度に比べて高く、結晶の形態におけるAPIの溶解速度に比べて高い。本発明による吸着質は、後者が微粒子担体に堆積される場合でも、API沈殿物よりもより高い溶解速度を有することが予想外に見出されている。したがって、本発明による吸着質は、改善された溶解速度、改善されたバイオアベイラビリティおよび改善された効果を示すなどの改善された特性を有する、医薬品剤形を調製するために用いることができる。肺動脈高血圧または男性の勃起機能不全などの性機能低下、高コレステロール血症、HIV感染またはAIDSなどの、障害の治療において、治療効果の開始が急速であるという見込みがより高いことに加えて、最高血中濃度達成が急速であることが望ましい。最高血中濃度の急速な達成は、改善された溶解速度によって達成することができ、改善されたバイオアベイラビリティ、したがって、改善された効果をもたらす。
【0065】
水にほとんど溶けないAPIと組み合わせて、非極性溶媒を用いると有利であり、塩素化された溶媒を用いるとさらに有利であり、具体的にはタダラフィルがAPIとして用いられる場合に、溶媒としてジクロロメタンを用いると特に有利であることがさらに見出されている。他の非極性有機溶媒もまた適しており、それぞれ液体炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコール、エステル、エーテルおよびケトンを含むがそれだけに限らない、室温で水と混和性でない溶媒と一般に称され得;そのそれぞれは水と非混和性である。いかなる理論に縛られることも望まず、かかるタイプの溶媒および水にほとんど溶けないAPI間の相溶性は、固形微粒子および/または多孔質の担体と適当にバランスを取ることができると考えられる。
【0066】
さらに、本発明による吸着質の形成は、溶媒の急速な除去に依存しない。したがって、本発明による方法は、不経済な、複雑なおよび骨の折れるステップおよび普通なら溶媒の高速の蒸発に必要であるはずの装置(例えば噴霧または流動床技法)を利益上避ける。さらに、ゆっくりとした蒸発は、改善した特性を有する吸着質の形成をもたらす平衡した吸着プロセスになる。例えば、高速の溶媒蒸発の場合には、物質はしばしば、低下した物理的および化学的安定性を有する平衡しない物理的状態になる。ゆっくりと蒸発すると、優位な物理的および化学的安定性を有する平衡した物理的状態になる。
【0067】
本発明による方法は、担体にAPIの高い量を有する吸着質を調製することが可能であるということも見出されている。
【0068】
さらに、本発明による吸着質の1種または複数の賦形剤との共粉砕、好ましくは衝撃式粉砕は、本発明による剤形を調製するとき、剤形から放出されたAPIの総量を増加させ、したがって、従来技術の製剤に比べて剤形のバイオアベイラビリティを増加させることが見出されている。
【0069】
具体的な一態様では、本発明は、タダラフィル、シンバスタチン、ロバスタチンおよびフェノフィブラート、好ましくは微粒子および/または多孔質の担体と会合したタダラフィルを含む吸着質に関する。
【0070】
本明細書で使用される場合「吸着質」という表現は、APIが、好ましくは、微粒子担体の内面および/または外面に均質に分布し、好ましくはAPIの実質的にすべてが、担体の表面と会合することを指定する。本発明の意味の範囲内の「APIの実質的にすべて」は、総APIの75%を超える、好ましくは80%を超える、より好ましくは90%を超える、さらにより好ましくは95%を超える、最も好ましくは98%を超える、総APIのすべてを意味する。この文脈中の「会合」は、APIおよび担体の表面が、吸着質を形成することを意味する。吸着質の調製中、分子のレベルにおけるAPIの吸着は、担体の表面によって影響を与えられ、これは、APIが担体によって吸着され、表面に吸着されたAPIの構造が、担体の表面によって決定され、したがって、担体表面の接近なしに自己会合したAPI分子の構造と異なることを意味する。吸着質中のAPIの構造は、共沈殿、結晶または別の方法で粉塵APIの構造とは対称的に、表面−API分子力の組み合わせによって決定され、構造は、API分子間の分子間力によって単独で決定される。いかなる理論に縛られることも望まず、溶媒中に存在するAPI分子は、担体の表面に既に存在するおよび結晶、沈殿物または別の方法で粉塵APIを形成しない、API分子と容易に会合し得ないことを想定することができる。APIの得られた物理的状態は、図5に示される通り微粒子の形態でAPIを含む吸着質の溶解プロファイルに比べて、APIを含む吸着質のより優れた溶解プロファイルを好む可能性があり、APIは、顕微鏡的に、担体物質と適切に会合しない。好ましくは、APIは、粗粒子、より大型の結晶または担体との混合物を形成するにすぎないはずである沈殿物を形成しない。本発明の意味の範囲内の真の吸着質は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)によって、その表面におけるAPIの沈殿物または結晶を有する担体と識別することができる。本発明による吸着質の形態は、担体材料自体の形態に本質的に対応し、これは、APIが、担体材料の形態を本質的に変化させないことを意味する。それに反して、担体材料の表面におけるAPIの結晶、沈殿物またはより粗雑な粒子を有する担体材料のSEM−画像は、担体材料の表面における異なる形態を有する物体としてのAPIを示す。したがって、本発明による吸着質が得られているか否かを見出すために、当業者は、得られた生成物のSEM−画像を、純粋な担体材料(担体自体、すなわち、APIなし)から得られたSEM−画像と比較することができる。好ましい実施形態では、得られた生成物、すなわち、吸着質のSEM−画像が担体自体の形態と本質的に異なる形態を有する物体を示す場合、得られた生成物は本発明による吸着質ではない。
【0071】
本発明による吸着質では、タダラフィルなどの、水にほとんど溶けないAPIは、好ましくは主に非晶質の形態であり、好ましくはAPIの本質的にすべて、例えば、タダラフィルすべては、非晶質の形態である。これは、示差走査熱量測定法(DSC)または粉末X線回折(XRPD)などの、当業者に公知の適当な方法を用いた吸着質または剤形の分析がそれぞれのAPIの結晶の形態の反射または溶融遷移を示さない場合である。それぞれのAPIの特徴的な反射は、当業者によってデータベースからまたは単に結晶の形態中のAPI出発原料を測定することによって引き出すことができる。タダラフィルの特徴的な反射のピークリストは、例えば、US2006/0111571に記載されている。さらに「吸着質」という表現は、その内面または/および外面に吸着されたAPIを含む単離した担体(乾燥状態)に関する。このような吸着質は、本明細書に記載した通り剤形を調製するために用いることができる。
【0072】
担体は、高いBET−表面積を有することがやはり好ましく、好ましくはBET−表面積は少なくとも1m/gであり、さらにより好ましくはBET−表面積は、10から10000m/gの範囲内であり、さらにより好ましくは20から5000m/gの範囲内であり、最も好ましくは100から1000m/gの範囲内であり、また好ましいのは10から1000m/gの範囲内であり、さらにより好ましくは20から500m/gの範囲内であり、やはり好ましくは100から450m/gの範囲内である。担体のBET−表面積の決定は、J.Am.Chem.Soc.60、309(1938)の記事に記載されている方法に従って実施することができる。さらに好ましくは、定義されたBET−表面を有する担体は、以下に定義される通り多孔度を有する。
【0073】
本発明に従って使用しようとする担体は、上記で定義した通り任意の微粒子および/または多孔質の担体となり得る。好ましくは、担体は、無機担体である。さらに好ましくは、担体は、APIの吸着前、吸着中および吸着後にその形態を本質的に変化させない。好ましくは、担体は、二酸化ケイ素であり、より好ましくはコロイド状二酸化ケイ素または沈殿させた二酸化ケイ素である。両タイプの二酸化ケイ素は、気孔を開くことによる高い表面積によって特徴付けられる。適当な担体(carrierse)は、例えば、Aerosil(登録商標)90、130、150、200もしくは380またはAerosil(登録商標)OX50、EG50またはTT600(Evonik Degussa GmbH、Germany)であるまたはSyloid244もしくはSyloid AL−1(Grace Davison、USA)などのSyloidシリーズ、HDK N20(Wacker Chemie AG、Germany)などのHDK発熱性シリカシリーズは用いることができる。好ましくは、Aerosil(登録商標)200またはSyloid244は用いることができ、より好ましくはSyloid AL−1は用いることができる。また好ましくは、担体は、ケイ化した微結晶セルロースであり、適当な担体材料は、例えば、PROSOLV(登録商標)SMCCという商品名で販売されているJRS Pharmaから得ることができる。
【0074】
さらに好ましくは、担体の多孔度は、好ましくは少なくとも20%、30%、40%、50%または60%である。また好ましくは、多孔度は、10−70%の間の範囲内であり、さらに好ましくは20−70%の間であり、さらに好ましくは30−70%の間または40−70%の間である。本明細書で使用される場合「多孔度」という用語は、前述の方法を用いて決定することができる、開いた気孔多孔度を意味する。担体の開いた気孔は、吸着質を調製するための過程中APIを含む溶媒に通常到達可能である。
【0075】
本発明による吸着質は、担体粒子の表面に、または気孔の内部の表面に吸着された、API、具体的には、タダラフィル、フェノフィブラート、ロバスタチン、シンバスタチンの高い量を含むことができる。好ましくは、吸着質中のAPIの量は、0.01から40重量%の範囲内であり、好ましくは0.1から30重量%の範囲内であり、より好ましくは1から30重量%の範囲内であり、さらに最も好ましくは10から30重量%の範囲内である。
【0076】
さらに、本発明による吸着質は、水溶性作用物質を含有することができる。これらの水溶性作用物質は、本発明による吸着質を調製するために用いられる溶媒中で可溶性である。好ましい水溶性作用物質は、プロピレングリコール、クエン酸トリエチル、ポリソルベートおよびポリエチレングリコール400である。
【0077】
本発明はまた、本発明による吸着質を含む剤形に関する。
【0078】
吸着質に加えて、本発明による剤形は、好ましくは少なくとも1種の賦形剤、より好ましくは少なくとも2種の賦形剤、さらにより好ましくは少なくとも3種の賦形剤、さらにより好ましくは少なくとも4種の賦形剤を含む。適当な賦形剤は、当技術分野で公知であり、好ましくは賦形剤は、賦形剤、結合剤、充填剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、グラダント、制御放出剤、香料および着色剤からなる群から選択され、好ましくは充填剤は、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、コメデンプン、コムギデンプン、アルファ化デンプン、完全にアルファ化したデンプンなどの異なるグレードのデンプン;微結晶セルロースまたはケイ化した微結晶セルロース、マンニトール、エリトリトールなどのセルロース;乳糖一水和物、無水乳糖、スプレー乾燥した乳糖または粉砕した乳糖などの乳糖;リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、ソルビトールおよびキシリトールなどのカルシウム塩からなる群から選択され、特に好ましくは充填剤は、アルファ化デンプン、微結晶セルロース、ケイ化した微結晶セルロース、乳糖一水和物、スプレー乾燥した乳糖および粉砕した乳糖からなる群から選択され;
崩壊剤は、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルデンプンナトリウム、クロスカルメロースナトリウム(架橋したセルロースカルボキシメチルエーテルナトリウム塩)、デンプングリコール酸ナトリウムまたはコーンスターチなどのデンプン、架橋ポリビニルピロリドン(クロスポビドン)および低置換ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択され、特に好ましくは崩壊剤は、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウムおよびクロスポビドンからなる群から選択され;
滑沢剤は、ステアリン酸、グリセリルベヘナート、タルク、フマル酸ステアリルナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムからなる群から選択され、特に好ましくは滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウムおよびフマル酸ステアリルナトリウムであり;
結合剤は、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ビニルピロリドンの他のビニル誘導体とのコポリマー(コポビドン)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、粉末化したアラビアゴム、ゼラチン、グアーガム、カルボポールなどのカルボマー、ポリメタクリラートおよびデンプンからなる群から選択され;
賦形剤は、グルコースなどの単糖、スクロース、無水乳糖、乳糖一水和物または粉砕した乳糖などのオリゴ糖ならびにソルビトール、マンニトール、エリトロールおよびキシリトールなどの糖アルコールなどの炭水化物から選択され、特に好ましくは賦形剤は、ソルビトールおよび粉砕した乳糖からなる群から選択され;
グラダントは、コロイド状シリカ、疎水性コロイド状シリカおよびタルクなどの三ケイ酸マグネシウムからなる群から選択され;
マトリックスに基づいたCR固形剤形を生成するための制御放出(CR)剤は、好ましくはヒドロキシプロピルセルロースおよびヒプロメロースなどの高粘度水溶性ポリマーならびにグリセリルベヘナートなどの脂溶性マトリックス形成剤からなる群から選択される;および/または甘味剤は、アスパルテーム、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸ジカリウム、アスパルテーム、ステビア、タウマチンなどからなる群から選択され、さらに好ましくは賦形剤は、微結晶セルロース、ケイ化した微結晶セルロース、粉砕した乳糖、スプレー乾燥した乳糖、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウムである。
【0079】
さらに、固形剤形からのAPIの放出はまた、CR被膜を適用することにより制御することもできる。これに関して、当業者に知られている任意の適当なポリマーは、吸着質を含む固形剤形に適用される延長もしくは遅延放出コーティングを生成するために使用することができる。
【0080】
本発明の好ましい実施形態において、剤形は、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウムおよび乳糖からなる群からの賦形剤の少なくとも1種、より好ましくは少なくとも2種、さらにより好ましくは少なくとも3種、さらにより好ましくは少なくとも4種を含む。さらに好ましくは実施形態では、剤形は、前述の賦形剤のすべてを含む。
【0081】
本発明による剤形は、1から95重量%の範囲で、より好ましくは5から90重量%の範囲で、さらにより好ましくは10から70重量%の範囲で、最も好ましくは20から50重量%の範囲で吸着質の量を含むことがさらに好ましい。
【0082】
本発明はまた、本発明による吸着質を調製するための方法に関する。吸着質を調製するための方法は、
a)非極性溶媒または非極性溶媒および水にほとんど溶けない原薬(API)の混合物からなる溶液を提供するステップ(「水にほとんど溶けない」という用語は、APIの溶解性が0.1mg/ml以下であり、場合によって、水溶性作用物質であることを定義する。);
b)得られた溶液を、粒子または多孔質の微粒子材料の形態の固体支持担体と合わせるステップおよび
c)溶媒を除去してAPI/担体吸着質を形成するステップ(非極性溶媒は、担体粒子におけるAPIの吸着を可能にするが、API−沈殿物を実質的に生成しない。)を含む。溶媒は、任意の公知の方法を用いて除去することができる。
【0083】
好ましくは、溶媒は、ろ過もしくは蒸発または蒸発およびろ過の組み合わせによって除去され、より好ましくは溶媒は、蒸発およびろ過の組み合わせによって除去され、最も好ましくはゆっくりとした蒸発およびろ過の組み合わせによって除去される。さらに、ゆっくりとした蒸発は、改善された特性を有する吸着質の形成をもたらす平衡した吸着過程をもたらす。例えば、(例えば、スプレー乾燥過程を用いたときのように)高速の溶媒蒸発の場合、物質は、しばしば物理的および化学的安定性が低下した平衡しない物理的状態となる。ゆっくりと蒸発すると、優位な物理的および化学的安定性を有する平衡した物理的状態になる。
【0084】
本発明による方法で用いられるAPIは、そのようなものとして(すなわち、吸着質形態ではない)特性として決定されたとき、水にほとんど溶けない。本発明の意味の範囲内の「水にほとんど溶けない」という用語は、米国薬局方(U.S.P.)XXI(1441頁)など、米国薬局方または欧州薬局方で定義される通り、0.1mg/ml以下の溶解性を意味する。好ましくは、本方法で用いられようとするAPIはタダラフィルである。本発明による方法に適している担体は、上記で定義される。
【0085】
本発明による吸着質を調製する方法において、所与の担体および用いようとするAPIの両方の関係における適当な溶媒の選択は、重大であることが判明している。適当な溶媒/担体の組み合わせを決定するために、以下の一般的な参考試験は、次の通り行うことができる。つまり、APIの所望のタイプおよび量は、試験しようとする溶媒に溶解され、BETによって決定された通り十分な表面積を有する適当な担体と合わせる。好ましくは、担体の量は、API1g当たり担体表面少なくとも500m、より好ましくはAPI1g当たり担体表面少なくとも1000m、さらにより好ましくはAPI1g当たり担体表面少なくとも1500m、さらに好ましくはAPI1g当たり担体表面少なくとも2000m、最も好ましくはAPI1g当たり担体表面少なくとも3000mが提供されるために選択される。担体を溶液に添加してから、溶液中の遊離のAPIの濃度は、適当な溶媒/担体の組み合わせの場合に低下する。例えば、溶媒除去過程中、沈殿物が全く形成されない場合、溶媒/担体の組み合わせは、適しており、本発明による吸着質をもたらす。前述した通り、得られた本発明による吸着質は、例えば、SEM−画像処理により分析することができる。
【0086】
担体の添加後に遊離のAPI濃度の低下がない場合、溶媒/担体の組み合わせは、所望のAPIに適しておらず、APIは、担体に適切に吸着されない。実施例1は、タダラフィル吸着質を調製するためにこのような試験を例示している。
【0087】
有機溶媒は、当業者に公知の任意の方法によって除去することができる。好ましくは、溶媒は、ろ過もしくは蒸発または蒸発およびろ過の組み合わせによって除去され、より好ましくは、溶媒は、蒸発およびろ過の組み合わせによって除去される。有機溶媒は、正常な雰囲気でまたは部分真空で蒸発することによって除去することができる。蒸発は、適当には、少なくとも15分の間、さらに好ましくは少なくとも30分の間、より好ましくは少なくとも2時間、有機溶媒がゆっくりと蒸発させるこのような方式で好ましくは実施される。このゆっくりとした蒸発過程は、通常なら高速の蒸発を必要とするはずである不経済な、複雑なおよび骨の折れる工程段階が避けることができるという利点を有する。さらに、ゆっくりとした蒸発過程は、吸着質のより優れた形成をもたらす。さらに、ゆっくりとした蒸発は、改善された特性を有する吸着質の形成をもたらす平衡した吸着過程をもたらす。例えば、高速の溶媒蒸発の場合、物質はしばしば、物理的および化学的安定性が低下した平衡しない物理的状態となる。ゆっくりとした蒸発は、優位な物理的および化学的安定性を有する平衡した物理的状態になる。
【0088】
好ましくは本発明による方法において用いようとする溶媒は、非極性有機溶媒または非極性有機溶媒の混合物であり、好ましくは溶媒は、塩素化された炭化水素であり,好ましくはジクロロメタンは用いられる。好ましくは、前述の溶媒は、二酸化ケイ素または微結晶セルロースと組み合わせて用いられ、好ましくは担体として、ケイ化した微結晶セルロース、好ましくは二酸化ケイ素と組み合わせて用いられる。溶媒はまた、溶媒の混合物にもなり得る。
【0089】
本発明の別の好ましい実施形態において、上記で定義した少なくとも1種の水溶性作用物質は、その方法における任意の時点で、好ましくはステップ(d)の前に添加される。
【0090】
本発明はさらに、
a)本発明による吸着質と1種(または複数)の賦形剤との混合物を提供するステップと、
b)好ましくは衝撃式粉砕によって、ステップ(a)の混合物を微粉砕し、好ましくは微粉砕したステップ(a)の混合物を賦形剤、好ましくは項目(7)で定義された賦形剤と混合し、またはステップ(a)の混合物を賦形剤と共に、好ましくは項目(7)で定義された賦形剤と共に共粉砕もしくは微細分散させるステップと、
c)ステップ(b)の混合物を剤形に製剤するステップと
を含む、本発明による剤形を調製するための方法に関する。ステップ(c)の場合、好ましくは乾式造粒方法が使用される。20%(重量/重量)以下の吸着質の濃度(剤形の量当たりの吸着質の量)を有する製剤の場合では、好ましくは直接圧縮が使用される。吸着質の濃度は、20%を超える場合、好ましくは乾式造粒方法が使用される。
【0091】
本発明によれば、1種または複数の賦形剤は、前述した通り用いることができる。好ましい賦形剤はまた、上記で記載される。好ましい実施形態において、少なくとも1種の賦形剤は用いられ、好ましくは賦形剤は、細粒親水性賦形剤であり、より好ましくは前記賦形剤は、乳糖、微結晶セルロース、ケイ化した微結晶セルロース、クロスポビドンおよびクロスカルメロースナトリウムからなる群から選択される。最も好ましくは、少なくとも微結晶セルロース、好ましくはケイ化した微結晶セルロースおよびクロスカルメロースナトリウムは用いられる。
【0092】
ステップ(a)から生じる混合物は、粉砕ステップに好ましくは供される。好ましくは混合物は、微粉砕され、より好ましくは衝撃式粉砕に供される。得られた粒子から、90%は、500μm以下であり、好ましくは得られた粒子の90%は、50から500μmの範囲であり、より好ましくは100から400μmの範囲であり、さらにより好ましくは200から300μmの範囲であり、最も好ましくは220から260μmの範囲である。また好ましくは、得られた粒子から、90%は、500μm以下であり、好ましくは得られた粒子の90%は、400μm以下であり、より好ましくは300μm以下である。
【0093】
ステップ(b)の後、本明細書で定義する通り少なくとも1種のさらなる賦形剤が添加されることがさらに好ましく、好ましくはデンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、フマル酸ステアリルナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムが添加される。ステップ(b)の後およびステップ(c)の前、追加の混合および/または粉砕ステップは実施することができる。
【0094】
最後のステップとして、混合物は剤形に製剤される。本発明の製剤は、周知の技術的方法によって調製することができる。好ましくは当業者に知られている任意の乾式製剤技法は、乾式造粒法または直接圧縮などを用いることができ、好ましくは20%以下(重量/重量)の吸着質の濃度を有する製剤の場合では、直接圧縮は使用され、より高い吸着質濃度(20%(重量/重量)以上)を有する製剤の場合では、乾式造粒法は好ましい。他の過程技術に対して直接圧縮、ならびに乾式造粒法は、これらが水またはアルコールに対する必要性をなくし、やはり他の溶媒に対する必要性、さらには任意の液体物質のための必要性をなくすことがさらにでき、したがって溶媒感受性薬物の製剤を可能にする利点を有する。さらに、水またはアルコールまたは他の溶媒を取り除くことで、APIの結晶化をさらに回避し、したがって、さらに結晶の形態中に存在するAPIの溶解速度に比べて改善された溶解速度に寄与する。すなわち、本発明のこの態様は、(選択されたAPIの疎水性性質を示す。)水に溶解性が低いAPIの場合だけでなく、一般に溶媒に感受性があるAPIの場合に、さらに溶媒(特に水またはメタノールもしくはエタノールなどのアルコール)中で沈殿物を形成するまたは結晶化する傾向を有するAPIの場合に有益である。さらに直接圧縮は、錠剤調製の最も高速で最も対費用効果の高い方法である。直接圧縮を実施するために、当業者は、適当な装置を選ぶことができる。乾燥顆粒を錠剤にするために、当業者は、適当な装置を選択することができ、例えば、回転式錠剤成形機は用いることができる。本発明による剤形は、薬剤として適当な任意の剤形となり得、好ましくは、錠剤、カプセル剤(軟カプセル剤または硬カプセル剤)、カプレット、トローチ剤および小袋を含めた固形の形態となり得る。本発明による剤形は、好ましくは錠剤の形態となる。さらに、剤形は、コーティングを含むことができる。適当なコーティングは、当技術分野において公知であり、例えば、フィルムコーティングは、通常着色する目的で適用される。さらに、剤形は、浮動剤形(FDF)となり得る。
【0095】
本発明はさらに、剤形を調製するための本発明による吸着質の使用を意味する。
【0096】
本発明はまた、肺動脈高血圧または男性の勃起機能不全などの性機能低下の治療に使用するための本発明による剤形に関する。
【0097】
(実施例)
【実施例1】
【0098】
(本発明による)吸着質および(比較の理由のための)沈殿物の調製
タダラフィル0.1gを、ジクロロメタン20mlに溶解した。得られた溶液5mlを、固体支持体(Aerosil(登録商標)380、Al、MgO、TiO)0.25gに添加した。続いて、溶媒を蒸発によって除去した。
【0099】
サンプルを、示差走査熱量測定法(DSC)および粉末X線回折(XRPD)を用いて分析した。XRPDを用いて、すべての生成物において、API(吸着質または沈殿物)は非晶質であったことを確認した。タダラフィル用の溶媒としてジクロロメタンおよび担体としてAerosilを使用することにより、本発明による吸着質を生成する。担体としてMgO、AlおよびTiOを用いることにより、沈殿物をもたらす(図1を参照のこと)。
【0100】
上記の生成物のすべてにおいて、担体におけるAPIは、結晶のタダラフィルと比較して著しく改善された溶解速度を示した。吸着質、ジクロロメタンから得られたAerosil(登録商標)380に対するタダラフィル10%は、他の形態、特に沈殿物(残りのサンプルを参照)と比較して著しく改善された溶解速度を示した。これらの結果を、表1および図1に示す。さらに、ジクロロメタン溶媒から得られた、Aerosil(登録商標)380に対するタダラフィル10%の吸着された割合を有する、吸着質から得られたタダラフィル溶解速度(総吸着質に対する重量%)は、テトラヒドロフラン溶媒から吸着された、Aerosil(登録商標)380に対してタダラフィル10%を有する、吸着質の溶解速度に比べて、著しく改善された溶解速度を示した(未掲載)。
【0101】
【表1】

【実施例2】
【0102】
水溶性作用物質の使用
本発明による吸着質は、吸着される分子に応じた特異的な表面特性を有する(例えば、タダラフィルは、親油性分子であり、これは、親油性表面になる。)。表面特性は、プロピレングリコール(PG)、クエン酸トリエチル(TEC)またはポリエチレングリコール400(PEG)などの水溶性作用物質を含めることにより改質することができる。この改質により、吸着質をより優れた湿潤性にし、さらに、APIの溶解を加速させる(図2を比較する。)。
【0103】
タダラフィル1.6gを、ジクロロメタン300mlに溶解した。水溶性作用物質(0.48g)を添加し、その後、Aerosil 380(10g)を添加した。混合物を室温で30分間撹拌し、次いで、溶媒を蒸発によって除去した。
【実施例3】
【0104】
組成物およびタダラフィルフィルム−コーティング錠の調製
成分 組成物(%重量/重量)
タダラフィル−吸着質 30.6
粉砕した乳糖 45.7
微結晶セルロース 9.2
クロスカルメロースナトリウム 5.5
デンプングリコール酸ナトリウム 8.3
ステアリン酸マグネシウム 0.7
【0105】
(Aerosil(登録商標)380に吸着されたタダラフィル15%を含む)タダラフィル−吸着質を、粉砕した乳糖、微結晶セルロースおよびクロスカルメロースナトリウムと混合する。混合物を衝撃式粉砕で2回粉砕する(ふるい:0.25mm、5000rpm、ハンマー)。デンプングリコール酸ナトリウムの2/3を添加し、2分間混合し、ステアリン酸マグネシウムを添加し、1分間混合する。したがって、得られた混合物をスラッグにし、振動棒スクリーニングミル、すなわち、まず2.0mmふるいによって、最後に1.0mmふるいによって粉砕する。乾燥顆粒を得る、すなわち、デンプングリコール酸ナトリウムの1/3を添加し、2分間混合する。最終混合物を、回転式タブレット成形機を用いてタブレットにして436mgの質量を有する錠剤を生成した。バッチサイズは、800gであった。
【0106】
錠剤を、着色する目的のためにさらにフィルム−コーティングした。標準のヒプロメロースに基づいたコーティングを用いた。フィルムコーティングを、孔あきドラムを有するパンコ−ター(pan coater)中で行った。
【実施例4】
【0107】
組成物およびタダラフィル錠剤の調製
成分 組成物(%重量/重量)
タダラフィル−吸着質 30.6
微結晶セルロース 54.9
クロスカルメロースナトリウム 5.5
デンプングリコール酸ナトリウム 8.3
ステアリン酸マグネシウム 0.7
【0108】
(Aerosil(登録商標)380に吸着されたタダラフィル15%を含む)タダラフィル−吸着質を微結晶セルロースおよびクロスカルメロースナトリウムと混合する。混合物を衝撃式粉砕で2回粉砕する(ふるい:0.25mm、5000rpm、ハンマー)。デンプングリコール酸ナトリウムの2/3を添加し、2分間混合し、ステアリン酸マグネシウムを添加し、1分間混合する。得られた混合物をスラッグにし、振動棒スクリーニングミル、すなわち、まず2.0mmふるいによって、最後に1.0mmふるいによって粉砕する。乾燥顆粒を得る、すなわち、デンプングリコール酸ナトリウムの1/3を添加し、2分間混合する。最終混合物を436mgの質量を有する錠剤のために回転式タブレット成形機を用いることによってタブレットにした。バッチサイズは800gであった。
【実施例5】
【0109】
組成物およびタダラフィル錠剤の調製
成分 組成物(%重量/重量)
タダラフィル−吸着質 33.9
粉砕した乳糖 25.9
微結晶セルロース 35.9
クロスカルメロースナトリウム 3.5
ステアリン酸マグネシウム 0.8
【0110】
タダラフィル−吸着質を、粉砕した乳糖、微結晶セルロースおよびクロスカルメロースナトリウムと混合する。ステアリン酸マグネシウムを添加し、1分間混合する。混合物をスラッグにし、振動棒スクリーニングミル、すなわち、まず2.0mmふるいによって、最後に1.0mmふるいによって粉砕する。乾燥顆粒を得、回転式タブレット成形機を用いてタブレットにして400mgの質量を有する錠剤を生成する。バッチサイズは、800gであった。
【実施例6】
【0111】
組成物およびタダラフィル錠剤の調製
成分 組成物(%重量/重量)
タダラフィル−吸着質 33.3
スプレー乾燥した乳糖 23.5
ケイ化した微結晶セルロース 20.0
クロスポビドン 12.0
低置換ヒドロキシプロピルセルロース 10.0
フマル酸ステアリルナトリウム 1.2
【0112】
(Syloid AL−1に吸着されたタダラフィル15%を含む)タダラフィル−吸着質を、スプレー乾燥した乳糖、ケイ化した微結晶セルロース、クロスポビドンおよび低置換ヒドロキシプロピルセルロースで混合する。混合物を衝撃式粉砕で粉砕する(ふるい:0.5mm、5000rpm、ハンマー)。ステアリン酸マグネシウムを添加し、1分間混合する。したがって、得られた混合物をスラッグにし、振動棒スクリーニングミル、すなわち、まず2.0mmふるいによって、最後に1.0mmふるいによって粉砕する。最終混合物を、回転式タブレット成形機を用いることによってタブレットにして400mgの質量を有する錠剤を生成する。バッチサイズは、800gである。
【0113】
親水性(hydroplilic)添加物を有する吸着質および実施例3−5に記載されているサンプルを、溶解についてさらに試験した。
【0114】
実施例3−5は、本発明による吸着質が、錠剤製造に適用可能な方法によって錠剤に組み込むことができることを示している。得られた剤形は、APIの溶解に関して優れた特性を有する。しかし、溶解プロファイルは、吸着質を、特に細粒親水性賦形剤と共に共微粉砕によってさらに改善することができる。これにより、APIを錠剤から完全に放出させる(実施例3および4を参照のこと)。実施例5は、単なる物理的混合により調製されるが、共微粉砕せずに調製される。実施例3−5の溶解プロファイルを図3で提供し、微粉砕されたサンプルの溶解の強化は明らかである。
【実施例7】
【0115】
タダラフィル−Aerosil(登録商標)200吸着質
タダラフィル(2g)を、ジクロロメタン(500ml)に懸濁した。混合物を加熱還流し、この温度で30分間撹拌した。材料のすべてが溶解したとき、透明な溶液を25℃まで冷却し、Aerosil(登録商標)200(20g)を添加した。懸濁液を、25℃で1時間撹拌した。次いで、溶媒を減圧下で40℃で蒸発させた。生成物を0.50mmふるいで粉砕し、次いで、終夜真空中で60℃で乾燥して、吸着質20.6gを生成した。
【実施例8】
【0116】
タダラフィル−Aerosil(登録商標)200吸着質
タダラフィル(50.4g)をジクロロメタン(7.5l)に懸濁した。混合物を加熱還流し、この温度で30分間撹拌した。材料のすべてが溶解したとき、透明な溶液を25℃まで冷却し、Aerosil(登録商標)200(430g)を添加した。懸濁液を、25℃で1時間撹拌した。次いで、溶媒を減圧下で40℃で蒸発させた。生成物を0.50mmふるいで粉砕し、次いで、終夜真空中で60℃で乾燥して、吸着質473gを生成した。
【実施例9】
【0117】
タダラフィル−Aerosil(登録商標)380吸着質
タダラフィル(2g)をジクロロメタン(300ml)に懸濁した。混合物を、加熱還流し、この温度で30分間撹拌した。材料のすべてが溶解したとき、透明な溶液を25℃まで冷却し、Aerosil(登録商標)380(10g)を添加した。懸濁液を、25℃で1時間撹拌した。次いで、溶媒を減圧下で40℃で蒸発させた。
【0118】
生成物を0.50mmふるいで粉砕し、次いで、終夜真空中で60℃で乾燥して、吸着質8gを生成した。
【実施例10】
【0119】
タダラフィル−Aerosil(登録商標)380吸着質
タダラフィル(70g)をジクロロメタン(8.5l)に懸濁した。混合物を、加熱還流し、この温度で30分間撹拌した。材料のすべてが溶解したとき、透明な溶液を25℃まで冷却し、Aerosil(登録商標)380(350g)を添加した。懸濁液を、25℃で1時間撹拌した。次いで、溶媒を減圧下で40℃で蒸発させた。生成物を0.50mmふるいで粉砕し、次いで、終夜真空中で60℃で乾燥して、吸着質383gを生成した。
【実施例11】
【0120】
タダラフィル−Aerosil(登録商標)380吸着質
タダラフィル(2.4g)を、ジクロロメタン(450ml)に懸濁した。混合物を、加熱還流し、この温度で30分間撹拌した。材料のすべてが溶解したとき、透明な溶液を25℃まで冷却し、Aerosil(登録商標)380(10g)を添加した。懸濁液を、ローター−固定子ミキサー(Ultraturax)を用いて8000rpmで25℃で1時間撹拌した。次いで、溶媒を減圧下で40℃で蒸発させた。生成物を、0.50mmふるいで粉砕し、次いで、終夜真空中で60℃で乾燥して、吸着質9.4gを生成した。
【実施例12】
【0121】
タダラフィル−Aerosil(登録商標)380吸着質
タダラフィル(2.2g)をジクロロメタン(450ml)に懸濁した。混合物を、加熱還流し、この温度で30分間撹拌した。材料のすべてが溶解したとき、透明な溶液を25℃まで冷却し、Aerosil(登録商標)380(10g)を添加した。撹拌中、懸濁液を、25℃で1時間超音波にかけた。次いで、溶媒を減圧下で40℃で蒸発させた。生成物を0.50mmふるいで粉砕し、次いで、終夜真空中で60℃で乾燥して、吸着質9.6gを生成した。
【実施例13】
【0122】
タダラフィル−クエン酸トリエチル−Aerosil(登録商標)380吸着質
タダラフィル(1.6g)をジクロロメタン(300ml)に懸濁した。混合物を、加熱還流し、この温度で30分間撹拌した。材料のすべてが溶解したとき、透明な溶液を25℃まで冷却し、クエン酸トリエチル(0.48g)を添加した。混合物を、25℃で10分間撹拌した。Aerosil(登録商標)380(10g)を添加した。懸濁液を、25℃で1時間撹拌した。次いで、溶媒を減圧下で40℃で蒸発させた。生成物を0.50mmふるいで粉砕し、次いで、終夜真空中で60℃で乾燥して、吸着質5gを生成した。
【実施例14】
【0123】
タダラフィル−SYLOID(登録商標)244FP吸着質
タダラフィル(7g)をジクロロメタン(1.1l)に懸濁した。混合物を、加熱還流し、この温度で30分間撹拌した。熱い溶液をろ過し、SYLOID(登録商標)244FP(35g)を透明なろ液に添加した。懸濁液を、25℃で1時間撹拌した。次いで、溶媒を減圧下で40℃で蒸発させた。生成物を、終夜真空中で25℃で乾燥して、吸着質35gを生成した。
【実施例15】
【0124】
タダラフィル−SYLOID(登録商標)244FP吸着質
タダラフィル(2g)をジクロロメタン(300ml)に懸濁した。混合物を、加熱還流し、この温度で30分間撹拌した。熱い溶液をろ過し、SYLOID(登録商標)244FP(10g)を透明なろ液に添加した。懸濁液を、25℃で1時間撹拌した。次いで、混合物を、減圧下で40℃で140gの質量までゆっくりと濃縮した。固体をろ過し、終夜真空中で25℃で乾燥して、吸着質10.5gを生成した。
【実施例16】
【0125】
タダラフィル−SYLOID(登録商標)AL−1吸着質
タダラフィル(14g)をジクロロメタン(2.2l)に懸濁した。混合物を、加熱還流し、この温度で30分間撹拌した。熱い溶液をろ過し、SYLOID(登録商標)AL−1(70g)を透明なろ液に添加した。懸濁液を、25℃で1時間撹拌した。次いで、溶媒を減圧下で40℃で蒸発させた。生成物を終夜真空中で25℃で乾燥して、吸着質80gを生成した。
【実施例17】
【0126】
タダラフィル−SYLOID(登録商標)AL−1吸着質
タダラフィル(1.94g)をジクロロメタン(300ml)に懸濁した。混合物を、加熱還流し、この温度で30分間撹拌した。熱い溶液をろ過し、SYLOID(登録商標)AL−1(10g)を透明なろ液に添加した。懸濁液を、25℃で1時間撹拌した。次いで、混合物を、減圧下(740ミリバール)で40℃で90gの質量までゆっくりと濃縮した。固体をろ過し、終夜真空中で45℃で乾燥して、15.0%を負荷した吸着質11.1gを生成した。
【実施例18】
【0127】
タダラフィル−SYLOID(登録商標)AL−1吸着質
タダラフィル(100g)をジクロロメタン(15l)に懸濁した。混合物を、すべてのタダラフィルが溶解されるまで、加熱還流し撹拌した。熱い溶液5lをろ過し、透明なろ液をSYLOID(登録商標)AL−1(540g)に添加した。懸濁液を25℃で45分間撹拌した。混合物を、減圧下(740ミリバール)で40℃で3.5kgの質量までゆっくりと濃縮した。次いで、ジクロロメタン中の熱いタダラフィル溶液2lをろ過し、ろ液を懸濁液に添加した。混合物を、再び、減圧下で40℃で3.5kgの質量までゆっくりと濃縮した。タダラフィル溶液の新規の部分のろ過および添加を、すべての溶液を添加するまで繰り返した。次いで、混合物を、減圧下で40℃で2.8kgの質量までゆっくりと濃縮した。固体をろ過し、終夜真空中で45℃で乾燥して、15.5%を負荷した吸着質625gを生成した。
【実施例19】
【0128】
SYLOID(登録商標)AL1に対するフェノフィブラートの吸着質の調製。
【0129】
フェノフィブラート0.2gをジイソプロピルエーテル10mlおよびn−ヘキサン40mlの混合物中に溶解した。
【0130】
SYLOID(登録商標)AL1 2gを溶液に添加した。続いて、溶媒を蒸発によって除去した。
【0131】
サンプルを粉末X線回折(XRPD)を用いて分析した。XRPDを用いて、生成物中のAPIが非晶質であることを確認した。フェノフィブラートのための溶媒としてのジイソプロピルエーテルおよびn−ヘキサンならびに担体としてのSYLOID(登録商標)AL1の混合物を使用することにより、本発明による吸着質をもたらす。
【0132】
得られた吸着質中で、担体におけるAPIは、結晶のフェノフィブラートに比べて著しく改善された溶解速度を示した。これらの結果を表2および図7に示す。
【0133】
【表2】

【実施例20】
【0134】
SYLOID(登録商標)AL1に対するロバスタチンの吸着質の調製。
【0135】
ロバスタチン0.2gを、トリクロロメタン10mlおよびジイソプロピルエーテル40mlの混合物中に溶解した。SYLOID(登録商標)AL1 2gを溶液に添加した。続いて、溶媒を蒸発によって除去した。
【0136】
サンプルを粉末X線回折(XRPD)を用いて分析した。XRPDを用いて、生成物中で、APIが非晶質であることを確認した。ロバスタチンの溶媒としてのトリクロロメタンおよびジイソプロピルエーテルならびに担体としてのSYLOID(登録商標)AL1の混合物を使用することにより、本発明による吸着質をもたらした。
【0137】
得られた吸着質中で、担体におけるAPIは、結晶のロバスタチンに比べて著しく改善された溶解速度を示した。これらの結果は、表3および図8に示す。
【0138】
【表3】

【実施例21】
【0139】
SYLOID(登録商標)AL1に対するシンバスタチンの吸着質の調製。
【0140】
シンバスタチン0.2gを、ジクロロメタン50mlに溶解した。SYLOID(登録商標)AL1 2gを溶液に添加した。続いて、溶媒を蒸発によって除去した。
【0141】
サンプルを粉末X線回折(XRPD)を用いて分析した。XRPDを用いて、生成物中で、APIが非晶質であることを確認した。シンバスタチンのための溶媒としてのジクロロメタンならびに担体としてのSYLOID(登録商標)AL1を使用することにより、本発明による吸着質をもたらす。
【0142】
得られた吸着質中で、担体におけるAPIは、結晶のシンバスタチンに比べて著しく改善された溶解速度を示した。これらの結果は、表4および図8に示す。
【0143】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子および/または多孔質の担体と会合した、水にほとんど溶けない原薬(API)を含み、非極性溶媒または非極性溶媒の混合物を用いることによって調製され、本質的に、APIが沈殿物、粒子または結晶の形態ではない、吸着質。
【請求項2】
APIが非晶質の形態である、請求項1に記載の吸着質。
【請求項3】
APIが本質的に結晶の形態ではなく、さらに、好ましくは、APIが沈殿物として微粒子担体に堆積していない、請求項1または2に記載の吸着質。
【請求項4】
担体が、二酸化ケイ素であり、好ましくはコロイド状二酸化ケイ素または多孔質のシリカである、請求項1から3のいずれか一項に記載の吸着質。
【請求項5】
吸着質中のAPIの量が、0.01から40重量%の範囲である、請求項1から4のいずれかに記載の吸着質。
【請求項6】
水溶性作用物質からなる群から選択される物質をさらに含有する、請求項1から5のいずれかに記載の吸着質。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の吸着質を含む剤形。
【請求項8】
医薬組成物中の吸着質の量が、1から95重量%の範囲であり、好ましくは5から90重量%の範囲である、請求項1から7のいずれかに記載の剤形。
【請求項9】
a)非極性溶媒または非極性溶媒と水にほとんど溶けない原薬(API)との混合物、および場合によって、1種もしくは複数の水溶性作用物質を含む溶液を提供するステップ、
b)得られた溶液を粒子または多孔質の微粒子材料の形態の固体支持担体と合わせるステップおよび
c)溶媒を除去してAPI/担体吸着質を形成するステップ
を含む、沈殿物、粒子または結晶の形態のAPIを本質的に含まない吸着質を調製するための方法。
【請求項10】
APIが、タダラフィル、シンバスタチン、フェノフィブラートおよびロバスタチンからなる群から選択され、好ましくはAPIが、タダラフィルであり、および/または担体が、二酸化ケイ素であり、好ましくはコロイド状二酸化ケイ素または多孔質のシリカである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
1種(または複数)の非極性溶媒が、塩素化された炭化水素、好ましくはジクロロメタンまたはトリクロロメタン;ジイソプロピルエーテルおよびn−ヘキサンなどのヘキサンからなる群から選択される、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
a)請求項1から6のいずれかに記載の吸着質と、好ましくは細粒親水性賦形剤である少なくとも1種の賦形剤との混合物を提供するステップ、
b)ステップ(a)の混合物を微粉砕、好ましくは衝撃式粉砕にかけるステップ、
c)ステップ(b)の混合物を乾式製剤技法によって剤形に製剤するステップ
を含む、請求項1から6のいずれかに記載の吸着質を含む剤形を調製するための方法。
【請求項13】
剤形を調製するための、請求項1から6のいずれかに記載の吸着質の使用。
【請求項14】
勃起機能不全、高コレステロール血症、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症および/または後天性免疫不全症候群(AIDS)の治療に使用するための、請求項7または8に記載の剤形。
【請求項15】
請求項9から11のいずれかに記載の方法に従って調製された吸着質。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−522825(P2012−522825A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503994(P2012−503994)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054526
【国際公開番号】WO2010/115886
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(504359293)レツク・フアーマシユーテイカルズ・デー・デー (60)
【Fターム(参考)】