説明

固体架橋剤を含む水性塗料の製造方法

水性組成物は分散液中で活性水素−官能性樹脂とウレトジオン化合物を含む。ウレトジオン化合物は活性水素−官能性樹脂のための架橋剤である。ウレトジオン化合物は、硬化反応中の揮発性副生成物を放出することがないことから、規制された放出を減少させ、支持体上で硬化する塗膜に変換させる塗料固体質量を増加させる。水性分散液塗料は、固体ウレトジオン化合物と溶融され水分散可能な樹脂とを組み合わせて、必要である場合には水分散可能な樹脂を塩形成させ、樹脂混合物を水中に分散させることにより製造される。溶融した水分散可能な樹脂は、ウレトジオン化合物と反応性の官能基を有していてもよいか、あるいは、塗料組成物はウレトジオン化合物と反応性の官能基を有する他の水分散可能な樹脂を含有していてもよい。本発明の塗料組成物を、支持体上に塗布し、その後に硬化することにより、支持体上に硬化した塗層を生じる。特に好ましい実施態様において、本発明の塗料組成物が電着可能であり、かつ支持体上に電着により塗布される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性水性塗料、特に電着可能な水性分散液の製造方法に関する。さらに本発明は、揮発性副生成物を放出することなく反応する、塗料のための架橋剤に関する。
【0002】
背景技術
水性塗料は、自動車塗装工業における種々の適用において使用される。これらは、有利には、減少した有機物放出、低い毒性および減少した火炎危険性を提供する。水性塗料は、一般には「分散液」または連続媒体中に微細に分割された固体または液体から成る二相系である。ここで使用される「分散液」は、連続液体媒体、たとえば水または水と有機助溶剤との混合物中での1種またはそれ以上の微細に分割された固体、液体またはこれらの混合物から成る二相系に関する。ここで使用される「エマルション」とは、液体媒体、好ましくは水または水と種々の助溶剤との混合物中での液滴の分散液に関する。
【0003】
水性分散液は、電着塗料、プライマー、シーラー、ベースコートおよび/またはトップコートとして使用することができる。種々のバインダーは、水性塗料分散液中で使用することができ、この場合、これに制限されることはないが、エポキシベース樹脂、アクリル酸樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド、ポリウレタン、ポリウレタンアダクト等を含む。電着塗装工程において、荷電塗料粒子は、導電性支持体上に水性塗料を「めっき」または「沈着」させる。電着または「エレトクロコーティング」は、経済的および環境的の双方の利点を有し、それというのも、固体塗料の支持体に対する高いトランスファー効率および有機溶剤の低いレベルによるものである。
【0004】
電着塗料組成物および方法は、今日では工業的に広範囲に使用されている。電着塗料組成物および方法の利点の一つは、塗布された塗料組成物が、形状または構造に関係なく種々の金属支持体上に、均一かつ連続的な層を形成することである。これは塗料が、不規則な表面を有する支持体、たとえば自動車の車体上にさび止め塗料として塗布される場合には特に有利である。さらに金属支持体のすべての部分に亘っての連続的な塗層は、最大のさび止め効果を提供する。
【0005】
電着浴は、通常は主に膜形成樹脂、たとえば、イオン安定性を有する、アクリル酸樹脂またはエポキシ樹脂の水性分散液を含有する。硬質な電着膜が望ましいとされる自動車用または工業用適用に関しては、電着塗料組成物は、硬化可能な組成物として配合される。これは、通常は、適切な条件下(たとえば熱の適用下で)主要な樹脂上の官能基と反応しうる架橋剤を浴中に含むことにより、塗膜を硬化させる。電着中において、かなり低い分子量を有するイオン荷電樹脂を含有する塗料組成物を、導電性支持体上に、その中に荷電樹脂を分散させた電着浴中に支持体を浸漬し、その後に支持体と反対の電荷の電極、たとえばステンレス鋼電極との間に電位を適用することにより、電着させる。荷電塗料材料は導電性支持体上に移動し、かつ沈着する。その後に硬化した支持体を加熱し、塗膜を硬化させる。
【0006】
多くの市販の電着塗料組成物は、電着された樹脂上のヒドロキシル官能基またはアミン官能基と反応するポリイソシアネート架橋剤を使用する。この硬化方法は、望ましいウレタンまたは尿素架橋結合を提供するが、しかしながら、これは多くの欠点を有している。電着塗料組成物の早期ゲル化を回避するために、硬化剤上での高反応性イソシアネート基を遮断しなければならない。従来、イソシアネート架橋剤は、化合物、たとえばオキシム、カプロラクタム、または硬化中に遮断されずかつ揮発されるアルコールを用いて遮断することで、非ブロック化反応および硬化反応のための最も低い温度を提供する。しかしながら、硬化中に放出される揮発性ブロッキング剤は、種々の塗料特性上で他の有害な作用を生じうるものであり、有機物質放出を増加させる。したがって、好適なウレタンまたは尿素架橋結合を提供するが、ポリイソシアネート硬化剤を含有する組成物を揮発剤でブロックする際に随伴する問題を回避する、電着可能な塗料組成物および他の水性塗料組成物が必要とされた。
【0007】
本発明の説明
本発明は、分散液中に活性水素官能性樹脂およびウレトジオン化合物を含有する水性組成物を提供する。ウレトジオン化合物は、活性水素官能性樹脂のための架橋剤である。本発明の記載において「樹脂」は、ポリマー、オリゴマーおよびモノマー材料に関して使用され、この場合、これらは、硬化された塗膜を製造するためのウレトジオン架橋剤化合物を用いて使用することができる。ウレトジオン化合物は、硬化反応中で揮発性副生成物を放出することなく、これにより、規制させる放出を減少させ、かつ支持体で硬化する塗膜に変換される塗料固体質量を増加させる。
【0008】
さらに本発明は、これらの水性分散液塗料を製造するための方法を提供し、この場合、この方法は、固体ウレトジオン化合物と、溶融された水分散性樹脂とを組み合わせ、必要である場合には水分散性樹脂を塩形成させ、かつ溶融された水分散性樹脂およびウレトジオン化合物混合物を水中に分散させ、揮発性有機材料の極めて低い含量を有する塗料組成物を製造する。水分散液樹脂は、ウレトジオン化合物と反応性の官能基を有していてもよいか、あるいは、塗料組成物は、ウレトジオン化合物と反応性の官能基を有する他の水分散性樹脂を含有していてもよい。
【0009】
水性分散塗料を製造するための他の方法は、固体ウレトジオン化合物と水分散性樹脂および有機溶剤を組み合わせて、ウレトジオン−樹脂溶液を製造する工程、必要である場合には水分散性樹脂を塩形成させる工程、水中にウレトジオン樹脂混合物を分散させる工程、および場合によっては蒸発することにより有機溶剤を除去し(熱および/または真空を用いるかまたは用いないで)、極めて低い揮発性有機材料を含有する塗料組成物を製造する工程を含む。もう一度いうが、水分散性樹脂は、ウレトジオン化合物と反応性の官能基を有するか、あるいは、塗料組成物は、ウレトジオン化合物との反応性の官能基を有する他の水分散性樹脂を含有していてもよい。
【0010】
本発明はさらに、支持体を被覆するための方法に関し、この場合、この方法は、本発明による塗料組成物を支持体上に適用し、その後に硬化させることで、支持体上に硬化した塗層を生じさせる。好ましい実施態様において、本発明の塗料組成物は電着可能であり、かつ支持体上に電着により被覆する。電着塗層は、活性水素−官能性樹脂とウレトジオン化合物との反応により硬化する。
【0011】
“A”および“an”は、ここでは、対象物の“少なくとも”が存在することを示し;可能である場合には、このような対象物の複数が存在していてもよい。値を適用する場合の“約”とは、算定または測定が、値におけるわずかな不明確性を許容することを示す(値における正確性に対するいくつかのアプローチ;おおよその値または値に対して相当近似する値;ほぼ)。いくつかの理由から「約」により提供された不明確性が、この技術分野における通常の意味であると理解されない場合に限り、ここで使用された「約」は、その値において5%までの可変の値を示す。
【0012】
好ましい実施態様の詳細な記載
1個または複数の好ましい実施態様の以下の記載は例証にすぎず、本発明、その適用またはその使用を制限するものではない。
【0013】
本発明の水性塗料分散液中で使用されたウレトジオン化合物は、ホスフィンまたはピリジン触媒の存在下で芳香族ジイソシアネートを縮合させるか、または、ヘキサメチル燐トリアミド触媒の存在下で、脂肪族ジイソシアネートを縮合させることにより形成される。オリゴマー架橋剤は、ジオールとのさらなる反応によって製造され、以下の構造を有する生成物を提供する:
【0014】
【化1】

[式中、Rはジオールの二価の残基であり、R’はジイソシアネートの二価の残基であり、かつnは1〜約50の整数である]。生成物は室温で固体である。他の実施態様において、nは1〜約20、より好ましくは約3〜約16の整数である。典型的には、ウレトジオン化合物は、約250〜約350の当量を有していてもよい。
【0015】
ジイソシアネートは芳香族、脂肪族および脂環式ポリイソシアネートおよびこれらの組み合わせ物であってもよい。常用のジイソシアネートの典型的なものはm−フェニレンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−および2,6−トルエンジイソシアネートの混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエンジイソシアネートの任意の異性体、イソホロンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネートの任意の異性体、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、1−メトキシフェニル−2,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートの任意の異性体、この場合、これらは2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、および4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ビフェニレンジイソシアネートの異性体、この場合、これらは2,2’−、2,4’−、および4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニルジイソシアネートおよび3,3’−ジメチル−ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートを含む。好ましい実施態様において、ジイソシアネートはイソホロンジイソシアネートである。
【0016】
適したジオールの例は、これに制限されることはないが、エチレングリコール、ジエチレングリコールおよび高級ポリエチレングリコール、たとえばトリエチレングリコール;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、および高級ポリプロピレングリコール、たとえばトリプロピレングリコール;1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等、ならびにこれらのジオールの組み合わせ物である。ウレトジオンオリゴマーは、Degussa Corporation, Downers Grove, ILからの市販のもの、たとえばVestagon BF 1350およびBeyer Polymers LLC, Pittsburgh, PAから市販されているものである。
【0017】
水性塗料組成物は、さらに少なくとも1種の活性水素−官能性樹脂を含む。イソシアネート基と反応性の活性水素基は、これに制限されることはないが、ヒドロキシル基、メルカプタン、第1級および第2級アミン、活性水素を含むアミド基、酸基およびこれらの組み合わせ物を含む。活性水素官能性樹脂である。水性塗料組成物を製造するために、活性水素−官能性樹脂は水分散可能である。水分散可能な樹脂は、塩形成させることにより樹脂を安定して分散させるイオン化可能な基または樹脂を安定して分散させる親水基、たとえばポリエチレンオキシド部分を含有していてもよい。このような種々の樹脂は知られており、この場合、これに制限されることはないが、アクリル酸ポリマー、他の添加ポリマー、ポリエステル、エポキシ樹脂およびポリウレタン樹脂である。電着塗料組成物に関して、樹脂は好ましくは陰性であり、すなわち、塩基性基を有するものであって、かつ酸により塩形成する。陰極電着工程において、被覆すべき製品は陰極である。陰極電着塗装工程において使用される水分散可能な樹脂は、カチオン官能基、たとえば、第1級、第2級、第3級、および/または第4級アミン基、第4級スルホニウム基、または第4級ホスホニウム基を、正に荷電可能な親水基として有していてもよい。第4級アンモニウム、スルホニウムおよびホスホニウム基が好ましい。水系トップコート組成物、たとえば、クリアコートまたはベースコート組成物は、好ましくはアクリル酸ポリマーまたはポリウレタンポリマーを含有し、この場合、これらは、好ましくはアニオンまたはノニオンである。
【0018】
好ましい実施態様において、ウレトジオン架橋剤は、非揮発性ビヒクルの少なくとも約5質量%、より好ましくは少なくとも10質量%である。“非揮発性ビヒクル”は、膜形成成分に関する。さらに、ウレトジオン架橋剤が、非揮発性ビヒクルの約40質量%まで、より好ましくは約30質量%までであることが好ましい。架橋剤は、好ましくは非揮発性ビヒクルの約5質量%〜約40質量%、より好ましくは約10質量%〜約35質量%、およびさらに好ましくは約15質量%〜約35質量%である。
【0019】
塗料組成物は、硬化反応を増強させる触媒を含有し、たとえばルイス酸、亜鉛塩、および錫塩を含む。1種またはそれ以上の有機溶剤は、塗料組成物中で使用することができる。そうはいっても一般には、塗布工程から放出される有機性揮発成分を最小限するように、有機溶剤を避ける。常用の溶剤の例は、これに制限されることはないが、エチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、キシレン、N−メチルピロリドン、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル等を含む。
【0020】
塗料組成物がプライマー組成物または着色トップコート組成物、たとえばベースコート組成物である場合には、1種またはそれ以上の顔料および/または充填剤を含有していてもよい。顔料および充填剤は、塗料組成物の全量に対して、典型的には40質量%までの量で使用することができる。使用された顔料は無機顔料であってもよく、この場合、これらは酸化金属、クロメート、モリブデート、ホスフェートおよびシリケートを含む。使用されてもよい無機顔料および充填剤の例は二酸化チタン、硫酸バリウム、カーボンブラック、黄土、シェンナ、アンバー、ヘマタイト、リモナイト、赤色の酸化鉄、透明な赤色の酸化鉄、黒色の酸化鉄、褐色の酸化鉄、緑色の酸化クロム、ストロンチウムクロメート、リン酸亜鉛、シリカ、たとえばヒュームドシリカ、炭酸カルシウム、滑石、バライト、フェロシアン化第二鉄アンモニウム(プルシアンブルー)、ウルトラマリン、クロム酸鉛、モリブデン酸鉛、およびマイカフレーク顔料である。さらに有機顔料を使用することができる。常用の有機顔料の例は金属化および非金属化アゾレッド、キナクリドンレッドおよびバイオレット、ペリーレンレッド、銅フタロシアニンブルーおよびグリーン、カルバゾールバイオレット、モノアリーリドおよびジアリーリドイエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、トリルオレンジ、ナフトールオレンジ等である。
【0021】
付加的な薬剤、たとえばヒンダードアミン光安定化剤、紫外線光吸収剤、抗酸化剤、界面活性剤、安定化剤、湿潤剤、レオロジー調整剤、分散剤、付着促進剤等は、塗料組成物中に混合することができる。このような添加剤は公知であり、かつ塗料組成物のために典型的に使用される量で含まれてもよい。
【0022】
一つの方法において、塗料組成物は、固体ウレトジオン化合物と、溶融された水分散性樹脂とを組み合わせて、必要である場合には水分散可能な樹脂を塩形成させ、かつ水分散性樹脂とウレトジオン化合物との溶融混合物を水中に分散させることにより製造される。溶融された水分散性樹脂は、有機溶剤を用いることなく製造されてもよいか、あるいは、除去される溶剤を用いて、ウレトジオン化合物が添加される前に重合することができる(たとえば真空蒸留)。樹脂は、室温で溶融してもよいことを示すべきである。溶融された水分散可能な樹脂は、ウレトジオン化合物と反応性の官能基を有していてもよいか、および/または、塗料組成物はウレトジオン化合物と反応性の官能基を有する他の樹脂を含有していてもよい。
【0023】
水性分散塗料を製造するための他の方法は、固体ウレトジオン化合物と水分散可能な樹脂および有機溶剤とを組み合わせて、ウレトジオン樹脂溶液を製造し、必要である場合には水分散性樹脂を塩形成させ、ウレトジオン樹脂混合物を水中に分散させ、かつ場合によっては有機溶剤を蒸発により除去し(熱および/または真空を有するかまたは有しないで)、揮発性有機材料の極めて低い含量を有する塗料組成物を製造する。好ましくは、本質的にすべての有機溶剤を除去する。もう一度いうが、水分散可能な樹脂は、ウレトジオン化合物と反応性の官能基を有していてもよいか、あるいは、塗料組成物は、他のウレトジオン化合物と反応性の官能基を有する水分散可能な樹脂を含有していてもよい。
【0024】
塗料組成物は、多くの公知技術により製品上に塗布することができる。これらは、たとえば噴霧塗布、浸漬塗布、ロール塗布、カーテンコーティング等を含む。自動車用車体パネルに関しては、噴霧塗布が好ましい。好ましい実施態様において、本発明の塗料組成物は電着可能であり、かつ電着により支持体上に塗布する。電着されたかまたは塗布された塗層を、活性水素−官能性樹脂とウレトジオン化合物との反応によって硬化させ、支持体上に硬化された塗層を生じさせる。
【0025】
塗料組成物を、多くの異なる支持体上に適用することができ、この場合、この支持体は金属支持体、たとえば未処理の鋼板(bare steel)、リン酸塩処理鋼板、亜鉛めっき鋼板、またはアルミニウム;および非金属支持体、たとえばプラスチックおよび複合材料を含む。さらに支持体は、すでにその上に他の塗料層、たとえば電着プライマー、プライマーサーフェイサー、および/またはベースコートであって、硬化されたかまたは未硬化のこれらの任意の材料であってもよい。電着塗料に関して支持体は導電性である。
【0026】
さらに塗料組成物は、自動車用複合材料カラー−プラス−クリア(color-plus-clear)塗料のクリアコートまたはベースコートであってもよい。クリアコート塗料組成物は、一般には、ベースコート塗料組成物上に、ウエット−オン−ウエット(wet-on-wet)で、工業的に広範囲に実施されるようにして適用する。これに関して、記載された塗料組成物は、好ましくは塗料組成物を硬化させる条件下におく。硬化の種々の方法を使用することができるが、熱硬化が好ましい。一般に熱硬化は、不溶性ポリマー網状構造を形成するための反応体を生じるのに十分な温度および時間で加熱することにより実施する。硬化温度は、通常は約150℃〜約200℃であり、かつ硬化の長さは通常は約15分〜約60分である。加熱は、赤外線および/または熱対流炉中で実施することができる。
【0027】
さらに本発明は、以下の例により記載される。例は例証するにすぎないものであって、記載および請求した本発明の範囲について何ら制限するものではない。すべての部については、別記しない限りは質量部により示される。
【0028】
実施例
製造方法A 樹脂混合物
適した反応器を、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル894.5質量部、ビスフェノールA396.0質量部、アルキルフェノール18.8質量部およびキシレン68.9質量部で装填する。反応器の内容物を窒素でブランクにし、かつ125℃に加熱した。キシレン5質量部中のトリフェニルホスフィン1質量部の溶液を添加した。この温度を150℃で、エポキシドに対する質量が、当量に対して1050gで測定されるまで維持した。その後に、それぞれDOWANOL PPHおよびDOWANOL Pn−Pの98.7質量部を添加した。この混合物を、116℃に冷却し、かつメチルイソブチルケトン182.8質量部を添加した。その後にチオジエタノール151.9質量部、乳酸(88%)126.4質量部および水126.4質量部を添加し、かつ反応器の内容物を93〜95℃で3時間に亘って混合した。最終的に、イソブタノール70質量部を添加した。
【0029】
例1 本発明の塗料組成物
無着色のエマルションを、製剤A 423.5質量部、エトキシ化ビスフェノールA 29.1質量部、VESTAGON BF1350 159.9質量部(Degussa Corporation, Downers Grove, IL)およびSURFYNOL 104DPM 1質量部(Air Products, Allentown, PA)を混合し、かつ混合物を75℃に加熱した。この混合物を、他の成分中にVESTAGON BF1350が溶解するまで撹拌しながら、この温度を維持した。その後に、この混合物を約60℃に冷却し、かつ脱イオン化水1186.5質量部をゆっくりと添加することにより、樹脂混合物を乳化した。
【0030】
着色した塗料組成物を、無着色のエマルション769.3質量部、脱イオン化水1073.2質量部および灰色顔料ペースト157.5質量部を組み合わせることにより製造した。
【0031】
例2 本発明の塗料組成物
無着色のエマルションを、製剤A 423.5質量部、PLURACOL P710 29.1質量部(BASF Corporation)、VESTAGON BF1350 159.9質量部およびSURFYNOL 104DPM 1質量部(Air Products, Allentown, PA)を組み合わせて、かつ混合物を75℃に加熱することにより製造した。混合物を、VESRAGON BF1350が他の成分中で溶融および溶解するまで、撹拌しながらこの温度を維持した。その後に混合物を約60℃に冷却し、かつ1186.5質量部の脱イオン化水を、樹脂混合物が乳化するまでゆっくりと添加した。
【0032】
着色塗料組成物を、無着色エマルション1063質量部、脱イオン水1838.9質量部および灰色顔料ペースト240.5質量部を組み合わせることにより製造した。
【0033】
着色塗料組成物はpH5.05を有し、かつ限外濾過することで、803マイクロモーの導電性を生じた。塗料組成物を、リン酸塩処理鋼板上で110゜Fの浴温度および150Vの電着電圧を用いて電着させた。電着塗料を、375℃で30分に亘ってベーキングすることにより硬化させた。膜形成は約0.9milsであった。
【0034】
本発明の記載は、本質的に例証しているにすぎず、本発明の趣旨とは逸脱しない変法は本発明の範囲内であることを意味する。このような変法は、本発明の趣旨および範囲からはずれるものとみなされるべきものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性水素−官能性樹脂およびウレトジオン化合物の分散液を含有する、水性塗料組成物。
【請求項2】
ウレトジオン化合物が、
【化1】

[式中、Rは二価のアルキレン基であり、R’は二価のアルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、またはアルキルアリーレン基であり、かつnは1〜約50の整数である]の構造を含む、請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項3】
nが、化合物が室温で固体である程度に十分に大きい数である、請求項2に記載の水性塗料組成物。
【請求項4】
ウレトジオン化合物が、イソホロンジイソシアネートのウレトジオンである、請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項5】
塗料組成物が、電着可能である、請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項6】
塗料組成物が、陰極電着可能である、請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項7】
固体ウレトジオン化合物と、溶融された水分散可能な樹脂とを組み合わせて、均質な樹脂混合物を形成し、
必要である場合には水分散可能な樹脂を塩形成させ;かつ
水中で樹脂混合物を分散させる工程を含む、水性分散塗料の製造方法。
【請求項8】
溶融された水分散可能な樹脂が、ウレトジオン化合物と反応性の官能基を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
塗料組成物が、ウレトジオン化合物と反応性の官能基を有する他の水分散可能な樹脂を含有する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
水分散可能な樹脂が、第4級基を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
請求項1の塗料組成物を支持体上に塗布し、かつ適用された塗料組成物を硬化させ、支持体上に硬化した塗層を生じさせる、支持体の塗装方法。
【請求項12】
塗料組成物を、支持体上に電着により塗布する、請求項11に記載の方法。

【公表番号】特表2007−514019(P2007−514019A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541324(P2006−541324)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/038384
【国際公開番号】WO2005/054329
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(591020700)ビー・エイ・エス・エフ、コーポレーション (53)
【氏名又は名称原語表記】BASF Corporation
【住所又は居所原語表記】3000 Continental Drive−North,Mount Olive, NJ 07828−1234, U.S.A
【Fターム(参考)】