説明

固体状のアミンのカルボジチオ酸塩の製造方法及びアミンのカルボジチオ酸塩水溶液の製造方法

【課題】従来の固体状のアミンのカルボジチオ酸塩を得る方法は効率的ではなく、特に溶解度の高いアミンのカルボジチオ酸塩の場合、固体状のものを効率的に得るのは困難であった。
【解決手段】水溶液中でアミン、二硫化炭素、金属水酸化物を混合して反応するアミンのカルボジチオ酸塩の製造方法において、前記金属水酸化物を前記アミンの二硫化炭素と反応するアミノ基に対して1.3倍当量以上共存させることにより、効率的に固体状のアミンのカルボジチオ酸塩を得ることができる。さらに、固体状のアミンのカルボジチオ酸塩を分離したアミンのカルボジチオ酸塩水溶液にさらにアミン、二硫化炭素、金属水酸化物を混合して反応させることにより、高濃度のアミンのカルボジチオ酸塩水溶液を同時に製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重金属処理剤として有用なアミンのカルボジチオ酸塩を固体状で効率的に得ることができる製造方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
アミンのカルボジチオ酸塩は飛灰、土壌、廃水等の重金属の固定化処理剤として用いられている。重金属処理剤としてのアミンのカルボジチオ酸塩は通常は20〜60重量%程度の水溶液が用いられているが、昨今、固体(粉末状)の重金属処理剤の要求が高まっている。
【0003】
これまで、アミンのカルボジチオ酸塩を含む固体状の重金属処理剤としては例えば、カルボジチオ酸塩3〜30重量部に対してアルカリ金属水酸化物やアルカリ土類金属水酸化物を100重量部用いる重金属処理剤(例えば特許文献1参照)、ケイ酸カルシウムを担体とした重金属処理剤(例えば特許文献2参照)、不溶性である遷移金属のカルボジチオ酸塩(例えば特許文献3参照)、カルボジチオ酸塩溶液を高温で噴霧乾燥したもの(例えば特許文献4参照)、デンプンにキレート剤を含ませて粉末状にしたもの(例えば特許文献5参照)等が報告されている。
【0004】
しかし、従来の濃縮や噴霧乾燥によって固体状の重金属処理剤を得る方法では、水溶液の蒸発に多大なエネルギーが必要であり、経済的でなかった。
【0005】
これに対して、固体状のピペラジンのカルボジチオ酸塩(例えば特許文献6,7参照)、固体状のジエチルアミンのカルボジチオ酸塩(例えば特許文献8参照)をアミンのカルボジチオ酸塩の飽和水溶液を循環することにより効率的に得る方法が提案されている。しかしながら、これらの方法ではピペラジンのカルボジチオ酸ナトリウム塩やジエチルアミンのカルボジチオ酸ナトリウム塩のような水への溶解度が約20重量%と比較的低いアミンのカルボジチオ酸塩では従来の方法に比べて効率的ではあったが、アミンのカルボジチオ酸カリウム塩のような水への溶解度が30重量%を超えるカルボジチオ酸塩の場合、収率が低くなり必ずしも効率的とはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3895018号公報
【特許文献2】特開2004−97927号公報
【特許文献3】特開2003−301165号公報
【特許文献4】特開2003−336035号公報
【特許文献5】特開2003−113362号公報
【特許文献6】特開2010−150501号公報
【特許文献7】特開2010−150504号公報
【特許文献8】特開2010−167344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、重金属処理剤として有用なアミンのカルボジチオ酸塩、特に水への溶解度が30重量%を超えるアミンのカルボジチオ酸塩を水溶液中で効率的に固体で得ることができ、さらに固体状のアミンのカルボジチオ酸塩を分離したアミンのカルボジチオ酸塩水溶液を重金属処理剤として有用な濃度へ高濃度化するアミンのカルボジチオ酸塩水溶液の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、重金属処理剤として有用なアミンのカルボジチオ酸塩、特に溶解度が30重量%を超えるアミンのカルボジチオ酸塩を固体状で効率的に得る製造方法について鋭意検討を重ねた結果、水溶液中でアミン、二硫化炭素、金属水酸化物を混合して反応するアミンのカルボジチオ酸塩の製造方法において、前記金属水酸化物を前記アミンの二硫化炭素と反応するアミノ基に対して1.3倍当量以上共存させることにより、効率的に固体状のアミンのカルボジチオ酸塩を得ることができ、さらに、固体状のアミンのカルボジチオ酸塩を分離したアミンのカルボジチオ酸塩水溶液にさらにアミン、二硫化炭素を混合して反応させることで重金属処理剤として有用な高濃度のアミンのカルボジチオ酸塩水溶液を得ることができることも見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
以下に本発明の固体状のアミンのカルボジチオ酸塩の製造方法及びアミンのカルボジチオ酸塩水溶液の製造方法について説明する。
【0010】
本発明の固体状のアミンのカルボジチオ酸塩の製造方法は、水溶液中でアミン、二硫化炭素、金属水酸化物を混合して反応するアミンのカルボジチオ酸塩の製造方法において、前記金属水酸化物を前記アミンの二硫化炭素と反応するアミノ基に対して1.3倍当量以上共存させることにより、固体状のアミンのカルボジチオ酸塩を効率的に析出させ、分離することで固体状のアミンのカルボジチオ酸塩を得ることができる。
【0011】
本発明の固体状のアミンのカルボジチオ酸塩の製造方法で使用するアミンとしては特に限定はなく、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のポリエチレンポリアミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン等のジアルキルアミン;モノメチルアミン、モノエチルアミン等のモノアルキルアミン;エタノールアミン等のアルカノールアミン;ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、ピロリジン等の環状アミン等を挙げることができる。これらの中でもアミンのカルボジチオ酸塩の結晶性が高く、分離が容易であることからジメチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、ピロリジン等が好ましく、さらに重金属処理剤として実用的なジエチルアミン、ピペラジンが好ましく、安定性が高いピペラジンが特に好ましい。
【0012】
本発明の固体状のアミンのカルボジチオ酸塩の製造方法で使用する金属水酸化物としては特に限定はなく、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物等が挙げられる。中でもコスト面で安価な水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が好ましく、特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
【0013】
本発明の固体状のアミンのカルボジチオ酸塩の製造方法で使用する金属水酸化物の量としては、アミンの二硫化炭素と反応するアミノ基に対して1.3倍当量以上であり、1.3〜10.0倍当量であることが好ましく、さらに1.5〜5.0倍当量であることが好ましく、特に1.5〜2.0倍当量であることが好ましい。金属水酸化物を過剰とする、すなわち、アミンの二硫化炭素と反応するアミノ基と当量を超える金属水酸化物を使用することで、効率的にアミンのカルボジチオ酸塩を得ることができる。金属水酸化物がアミンの二硫化炭素と反応するアミノ基に対して1.3倍当量未満の場合、得られる固体状のアミンのカルボジチオ酸塩の量が低下する。
【0014】
本発明の固体状のアミンのカルボジチオ酸塩の製造方法で使用する二硫化炭素の量としては、特に限定はなく、固体状のアミンのカルボジチオ酸塩の生成量を高めつつ、副生成物の抑制ができることから、アミンの二硫化炭素と反応するアミノ基に対して0.9〜1.2倍当量であることが好ましく、特に0.95〜1.1倍当量であることが好ましい。
【0015】
本発明の固体状のアミンのカルボジチオ酸塩の製造方法における原料の添加方法としては特に限定はなく、分割添加、連続添加する方法等が例示でき、その中でも水にアミンを溶解させた後、二硫化炭素、金属水酸化物の順で交互に分割添加する方法又は時間差をつけて同時に添加する方法が好ましく、さらに2分割以上で分割添加する方法が好ましく、3分割以上で分割添加する方法が特に好ましい。
【0016】
本発明の固体状のアミンのカルボジチオ酸塩の製造方法における過剰の金属水酸化物(使用する金属水酸化物からアミンの二硫化炭素と反応するアミノ基と当量の金属水酸化物を除いた残りの金属水酸化物)の添加方法としては、特に限定はなく、アミンの二硫化炭素と反応するアミノ基と当量の金属水酸化物と過剰の金属水酸化物とを混同して添加する方法、アミンの二硫化炭素と反応するアミノ基と当量の金属水酸化物と過剰の金属水酸化物とを別に分けて添加する方法等が例示でき、その中でもアミンの二硫化炭素と反応するアミノ基と当量の金属水酸化物を反応時に添加し、過剰の水酸化物を反応終了後に添加することが好ましい。過剰の金属水酸化物を反応終了後に添加する場合の添加方法としては、特に限定はなく、速やかに添加しても緩やかに添加してもよい。
【0017】
本発明の固体状のアミンのカルボジチオ酸塩の製造方法では反応により生成するアミンのカルボジチオ酸塩の濃度は特に限定はなく、得られる固体状のアミンのカルボジチオ酸の収率及びハンドリングの観点から、20〜60重量%とすることが好ましく、さらに30〜50重量%とすることが好ましく、特に40〜50重量%とすることが好ましい。
【0018】
本発明の固体状のアミンのカルボジチオ酸塩の製造方法において得られる固体状のアミンのカルボジチオ酸塩の分離方法は固体と液体を分離できれば特に限定はなく、例えば、遠心分離、フィルタープレス、重力ろ過、真空ろ過等を例示することができる。また、得られた固体状のアミンのカルボジチオ酸塩は、必要に応じ付着水を除去する乾燥を行い、その乾燥方法としては特に限定はなく、例えば、真空乾燥、熱乾燥、流動乾燥等を例示することができる。
【0019】
本発明の固体状のアミンのカルボジチオ酸塩の製造方法では、従来の方法に比べて効率的に固体状のアミンのカルボジチオ酸塩を得ることができ、特にアミンのカルボジチオ酸塩の水への溶解度が30重量%以上、さらに40重量%以上の場合、特にその効果が顕著である。
【0020】
本発明では、本発明の固体状のアミンのカルボジチオ酸塩の製造方法にて固体状のアミンのカルボジチオ酸塩を分離したアミンのカルボジチオ酸塩水溶液にさらにアミン、二硫化炭素を混合して反応させることで重金属処理剤として有用な高濃度のアミンのカルボジチオ酸塩水溶液を得ることができ、廃棄物を発生することなく効率的に高濃度のアミンのカルボジチオ酸塩水溶液を製造することができる。
【0021】
本発明のアミンのカルボジチオ酸塩水溶液の製造方法で使用するアミンのカルボジチオ酸塩水溶液は、水溶液中でアミン、二硫化炭素、過剰の金属水酸化物を混合して反応することで得られる固体状のアミンのカルボジチオ酸塩を分離した残りの水溶液であることから、固体状とならなかったアミンのカルボジチオ酸塩の他に過剰の金属水酸化物が存在する。過剰の金属水酸化物が存在するアミンのカルボジチオ酸塩水溶液にアミン、二硫化炭素を添加することで、添加したアミン、二硫化炭素、過剰の金属水酸化物が反応し、高濃度のアミンのカルボジチオ酸塩水溶液を製造することができる。
【0022】
本発明のアミンのカルボジチオ酸塩の製造方法で使用するアミンのカルボジチオ酸塩水溶液中の過剰の金属水酸化物の量は、水溶液中でアミン、二硫化炭素、過剰の金属水酸化物を混合して反応する固体状のアミンのカルボジチオ酸塩の製造方法におけるアミンのカルボジチオ酸塩の濃度、固体状のアミンのカルボジチオ酸塩を得るために使用する過剰の金属水酸化物の量、得られるアミンのカルボジチオ酸塩水溶液の量、反応温度等によって異なることから、所望のアミンのカルボジチオ酸塩水溶液の濃度に高濃度化する場合に、金属水酸化物が不足する場合はさらに金属水酸化物を添加することで高濃度のアミンのカルボジチオ酸塩水溶液を製造することができる。
【0023】
本発明のアミンのカルボジチオ酸塩水溶液の製造方法で使用するアミンとしては特に限定はなく、固体状のアミンのカルボジチオ酸塩を製造する際に用いたアミンを用いることができる。
【0024】
本発明のアミンのカルボジチオ酸塩水溶液の製造方法で使用する金属水酸化物としては特に限定はなく、固体状のアミンのカルボジチオ酸塩を製造する際に用いた金属水酸化物を用いることができる。
【0025】
本発明のアミンのカルボジチオ酸塩水溶液の製造方法で使用する固体状のアミンのカルボジチオ酸塩を分離したアミンのカルボジチオ酸塩水溶液中のアミンのカルボジチオ酸塩の濃度は特に限定はなく、いずれの濃度のアミンのカルボジチオ酸塩水溶液においても添加するアミン、二硫化炭素、金属水酸化物の量を変えることで高濃度のアミンのカルボジチオ酸塩水溶液を得ることができる。
【0026】
本発明のアミンのカルボジチオ酸塩水溶液の製造方法で使用するアミンの量としては、特に限定はなく、所望の濃度とするために必要なアミンを使用すればよい。
【0027】
本発明のアミンのカルボジチオ酸塩水溶液の製造方法で使用する二硫化炭素の量としては、使用するアミンの二硫化炭素と反応するアミノ基に対して0.9〜1.2倍当量が好ましく、特に0.95〜1.1倍当量であることが好ましい。
【0028】
本発明のアミンのカルボジチオ酸塩水溶液の製造方法における金属水酸化物の量としては、固体状のアミンのカルボジチオ酸塩が析出がなく、かつアミンのカルボジチオ酸塩の生成量が低下することがないことから、添加するアミンの二硫化炭素と反応するアミノ基に対して0.95〜1.2倍当量が好ましく、特に0.97〜1.1倍当量であることが好ましい。また、添加する場合の金属水酸化物の量としては、固体状のアミンのカルボジチオ酸塩を分離したアミンのカルボジチオ酸塩水溶液中には過剰の金属水酸化物が存在することから、添加するアミンの二硫化炭素と反応するアミノ基に対して前記範囲となる金属水酸化物の量から固体状のアミンのカルボジチオ酸塩を分離したアミンのカルボジチオ酸塩水溶液中に含有される金属水酸化物を引いた量とすることが好ましい。
【0029】
本発明のアミンのカルボジチオ酸塩水溶液の製造方法における原料の添加方法としては分割添加、同時添加等が例示でき、固体状のアミンのカルボジチオ酸塩を分離したアミンのカルボジチオ酸塩水溶液にアミン、二硫化炭素の順で添加することが好ましい。さらに金属水酸化物を添加する場合には、固体状のアミンのカルボジチオ酸塩を分離したアミンのカルボジチオ酸塩水溶液にアミンを全量添加した後、二硫化炭素、金属水酸化物の順で添加することが好ましく、特に一括又は2分割に分割し交互に添加することが好ましい。アミンのカルボジチオ酸塩水溶液に添加するアミン、二硫化炭素、金属水酸化物の量が多い場合、アミンのカルボジチオ酸塩水溶液にアミンを先に全量添加した後、二硫化炭素、金属水酸化物の順で2分割以上に分割して交互に添加することが好ましい。
【0030】
本発明の固体状のアミンのカルボジチオ酸塩又はアミンのカルボジチオ酸塩水溶液の製造方法における、反応時、及び熟成時の温度は特に限定はなく、20〜45℃が好ましく、特に25〜40℃が好ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明の製造方法では重金属処理剤として有用なアミンのカルボジチオ酸塩を効率的に固体状として得ることができる。さらに固体状のアミンのカルボジチオ酸塩を分離したアミンのカルボジチオ酸水溶液を重金属処理剤として有用な濃度とすることができる。特に水への溶解度が30重量%以上のアミンのカルボジチオ酸塩の場合、効果的である。
【実施例】
【0032】
以下本発明を実施例で説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
実施例1
ピペラジン61.6g、純水82.4g、二硫化炭素107.8g(ピペラジンの二硫化炭素と反応するアミノ基に対して0.99倍当量)、48.5%水酸化カリウム248.2g(ピペラジンの二硫化炭素と反応するアミノ基に対して1.5倍当量)とし、ピペラジンを純水に40℃で溶解させた後、攪拌しながら40℃にて二硫化炭素と48.5%水酸化カリウムの内165.5g(ピペラジンの二硫化炭素と反応するアミノ基に対して1.0倍当量)をそれぞれ交互に4分割して滴下した。滴下終了後、さらに残りの48.5%水酸化カリウム82.7gを添加し、30分熟成後、ピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウムが析出したスラリー溶液が得られた(反応により生成するピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウムの濃度は44.5重量%)。
【0034】
析出したピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウムを減圧ろ過にてろ別し、固体状のピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウム191.3gとピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウム水溶液286.2gを得た。
【0035】
水への溶解度が30重量%を超える44.5重量%アミンのカルボジチオ酸塩を水溶液中で効率的に固体状のピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウムを得ることができた。
【0036】
実施例2
ジエチルアミン97.6g、純水8.6g、二硫化炭素100.6g(ジエチルアミンの二硫化炭素と反応するアミノ基に対して0.99倍当量)、48.5%水酸化カリウム293.2g(ジエチルアミンの二硫化炭素と反応するアミノ基に対して1.9倍当量)とし、ジエチルアミンを純水に25℃で溶解させた後、攪拌しながら25℃にて二硫化炭素と48.5%水酸化カリウムの内154.4g(ジエチルアミンの二硫化炭素と反応するアミノ基に対して1.0倍当量)をそれぞれ交互に4分割して滴下した。滴下終了後、さらに残りの48.5%水酸化カリウム138.8gを添加し、60分熟成後、ジエチルアミン−N−カルボジチオ酸カリウムが析出したスラリー溶液が得られた(反応により生成するジエチルアミン−N−カルボジチオ酸カリウムの濃度は49.5重量%)。
【0037】
析出したジエチルアミン−N−カルボジチオ酸カリウムを減圧ろ過にてろ別し、固体状のジエチルアミン−N−カルボジチオ酸カリウム214.7gとジエチルアミン−N−カルボジチオ酸カリウム水溶液273.0gを得た。
【0038】
水への溶解度が30重量%を超える49.5重量%アミンのカルボジチオ酸塩を水溶液中で効率的に固体状のジエチルアミン−N−カルボジチオ酸カリウムを得ることができた。
【0039】
実施例3
N−アミノエチルピペラジン69.5g、純水83.3g、二硫化炭素81.1g(N−アミノエチルピペラジンの二硫化炭素と反応するアミノ基に対して0.99倍当量)、48.5%水酸化ナトリウム266.1g(N−アミノエチルピペラジンの二硫化炭素と反応するアミノ基に対して3.0倍当量)とし、N−アミノエチルピペラジンを純水に40℃で溶解させた後、攪拌しながら40℃にて二硫化炭素と48.5%水酸化ナトリウムの内88.7g(N−アミノエチルピペラジンの二硫化炭素と反応するアミノ基に対して1.0倍当量)をそれぞれ交互に4分割して滴下した。滴下終了後、さらに残りの48.5%水酸化ナトリウム177.4gを添加し、30分熟成後、N−アミノエチルピペラジン−N’,N”−ビスカルボジチオ酸ナトリウムが析出したスラリー溶液が得られた(反応により生成するN−アミノエチルピペラジン−N’,N”−ビスカルボジチオ酸ナトリウムの濃度は34.7重量%)。
【0040】
析出したN−アミノエチルピペラジン−N’,N”−ビスカルボジチオ酸ナトリウムを減圧ろ過にてろ別し、固体状のN−アミノエチルピペラジン−N’,N”−ビスカルボジチオ酸ナトリウム202.1gとN−アミノエチルピペラジン−N’,N”−ビスカルボジチオ酸ナトリウム水溶液276.5gを得た。
【0041】
水への溶解度が30重量%を超える34.7重量%アミンのカルボジチオ酸塩を水溶液中で効率的に固体状のN−アミノエチルピペラジン−N’,N”−ビスカルボジチオ酸ナトリウムを得ることができた。
【0042】
実施例4
実施例1で得られたピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウム水溶液中の水酸化カリウム及びピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウムの濃度を中和滴定及びヨード滴定により求めたところ、それぞれ11.6重量%、25.5重量%であった。このピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウム水溶液275.0gにさらにピペラジン36.3gと純水88.8gを加え、40℃で溶解し、攪拌しながら40℃にて二硫化炭素64.1g(ピペラジンの二硫化炭素と反応するアミノ基に対して1.0倍当量)を添加した後、48.5%水酸化カリウム35.8g(ピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウム水溶液中の水酸化カリウムを含めてピペラジンの二硫化炭素と反応するアミノ基の1.04倍当量)を滴下した。滴下終了後、ピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウム水溶液が得られた。得られた水溶液中のピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウム濃度をヨード滴定にて分析した結果40.3重量%であった。
【0043】
実施例1で得られたピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウム水溶液を用いて、高濃度化(実施例1:25.5重量%→実施例3:40.3重量%)することが可能であることが確認された。
【0044】
実施例5
実施例3で得られたジエチルアミン−N−カルボジチオ酸カリウム水溶液中の水酸化カリウム及びジエチルアミン−N−カルボジチオ酸カリウムの濃度を中和滴定及びヨード滴定により求めたところ、それぞれ19.7重量%、32.5重量%であった。このジエチルアミン−N−カルボジチオ酸カリウム水溶液260.0gにさらにジエチルアミン74.4gと純粋72.2gを加え、30℃で溶解し、攪拌しながら30℃にて二硫化炭素77.4g(ジエチルアミンの二硫化炭素と反応するアミノ基に対して1.0倍当量)を添加した後、48.5%水酸化カリウム16.0g(ジエチルアミン−N−カルボジチオ酸カリウム水溶液中の水酸化カリウムを含めてジエチルアミンの二硫化炭素と反応するアミノ基の1.03倍当量)を滴下した。滴下終了後、ジエチルアミン−N−カルボジチオ酸カリウム水溶液が得られた。得られた水溶液中のジエチルアミン−N−カルボジチオ酸カリウム濃度をヨード滴定にて分析した結果54.6重量%であった。
【0045】
実施例2で得られたジエチルアミン−N−カルボジチオ酸カリウム水溶液を用いて、高濃度化(実施例2:32.5重量%→実施例4:54.6重量%)することが可能であることが確認された。
【0046】
実施例6
実施例3で得られたN−アミノエチルピペラジン−N’,N”−ビスカルボジチオ酸ナトリウム水溶液中の水酸化ナトリウム及びN−アミノエチルピペラジン−N’,N”−ビスカルボジチオ酸ナトリウムの濃度を中和滴定及びヨード滴定により求めたところ、それぞれ17.0重量%、22.3重量%であった。このN−アミノエチルピペラジン−N’,N”−ビスカルボジチオ酸ナトリウム水溶液260.0gにさらにN−アミノエチルピペラジン66.4gと純粋95.4gを加え、40℃で溶解し、攪拌しながら40℃にて二硫化炭素78.2g(N−アミノエチルピペラジンの二硫化炭素と反応するアミノ基に対して1.0倍当量)を滴下した。滴下終了後、N−アミノエチルピペラジン−N’,N”−ビスカルボジチオ酸ナトリウム水溶液が得られた。得られた水溶液中のN−アミノエチルピペラジン−N’,N”−ビスカルボジチオ酸ナトリウム濃度をヨード滴定にて分析した結果45.6重量%であった。
【0047】
実施例3で得られたN−アミノエチルピペラジン−N’,N”−ビスカルボジチオ酸ナトリウム水溶液を用いて、高濃度化(実施例3:22.3重量%→実施例5:45.6重量%)することが可能であることが確認された。
【0048】
比較例1
ピペラジン61.6g、純水165.1g、二硫化炭素107.8g、48.5%水酸化カリウム165.5g(ピペラジンの二硫化炭素と反応するアミノ基に対して1.0倍当量)とし、ピペラジンを純水に40℃で溶解させた後、攪拌しながら40℃にて二硫化炭素と48.5%水酸化カリウムをそれぞれ交互に4分割して滴下した。滴下終了後、30分熟成したところ、ピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウムの析出は確認されなかった(反応により生成するピペラジン−N,N’−ビスカルボジチオ酸カリウムの濃度は44.5重量%)。
【0049】
金属水酸化物を前記アミンの二硫化炭素と反応するアミノ基に対して1.3倍当量未満であったことから、固体状のアミンのカルオジチオ酸塩は得られなかった。
【0050】
比較例2
ジエチルアミン97.6g、純水147.4g、二硫化炭素100.6g、48.5%水酸化カリウム154.4g(ジエチルアミンの二硫化炭素と反応するアミノ基に対して1.0倍当量)とし、ジエチルアミンを純水に25℃で溶解させた後、攪拌しながら25℃にて二硫化炭素と48.5%水酸化カリウムをそれぞれ交互に4分割して滴下した。滴下終了後、60分熟成したところ、ジエチルアミン−N−カルボジチオ酸カリウムの析出は確認されなかった(反応により生成するジエチルアミン−N−カルボジチオ酸カリウムの濃度は49.5重量%)。
【0051】
金属水酸化物を前記アミンの二硫化炭素と反応するアミノ基に対して1.3倍当量未満であったことから、固体状のアミンのカルオジチオ酸塩は得られなかった。
【0052】
比較例3
N−アミノエチルピペラジン69.5g、純粋260.7g、二硫化炭素81.1g、48.5%水酸化ナトリウム88.7g(N−アミノエチルピペラジンの二硫化炭素と反応するアミノ基に対して1.0倍当量)とし、N−アミノエチルピペラジンを純水に40℃で溶解させた後、攪拌しながら40℃にて二硫化炭素と48.5%水酸化ナトリウムをそれぞれ交互に4分割して滴下した。滴下終了後、30分間熟成したところ、N−アミノエチルピペラジン−N1,N3−ビスカルボジチオ酸ナトリウムの析出は確認されなかった(反応により生成するN−アミノエチルピペラジン−N1,N3−ビスカルボジチオ酸ナトリウムの濃度は34.7重量%)。
【0053】
金属水酸化物を前記アミンの二硫化炭素と反応するアミノ基に対して1.3倍当量未満であったことから、固体状のアミンのカルボジチオ酸塩は得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の製造法で得られた固体状のアミンのカルボジチオ酸塩及びアミンのカルボジチオ酸塩水溶液は、土壌、廃水、焼却灰、飛灰等の重金属含有物中の重金属処理に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液中でアミン、二硫化炭素、金属水酸化物を混合して反応するアミンのカルボジチオ酸塩の製造方法において、前記金属水酸化物を前記アミンの二硫化炭素と反応するアミノ基に対して1.3倍当量以上共存させることでアミンのカルボジチオ酸塩を析出させ、当該塩を分離することを特徴とする固体状のアミンのカルボジチオ酸塩の製造方法。
【請求項2】
金属水酸化物の使用量がアミンの二硫化炭素と反応するアミノ基に対して1.3〜10.0倍当量であることを特徴とする請求項1に記載の固体状のアミンのカルボジチオ酸塩の製造方法。
【請求項3】
アミンを溶解した水溶液に二硫化炭素、金属水酸化物の順で2分割以上に分割して交互に添加することを特徴とする請求項1又は2に記載の固体状のアミンのカルボジチオ酸塩の製造方法。
【請求項4】
金属水酸化物のうちアミンの二硫化炭素と反応するアミノ基と当量の金属水酸化物を反応時に添加し、残りの過剰の金属水酸化物を反応終了後に添加することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の固体状のアミンのカルボジチオ酸塩の製造方法。
【請求項5】
アミンがピペラジン及び/又はジエチルアミンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の固体状のアミンのカルボジチオ酸塩の製造方法。
【請求項6】
金属水酸化物が水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の固体状のアミンのカルボジチオ酸塩の製造方法。
【請求項7】
アミンのカルボジチオ酸塩の水への溶解度が30重量%以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の固体状のアミンのカルボジチオ酸塩の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法にて固体状のアミンのカルボジチオ酸塩を分離した際に得られるアミンのカルボジチオ酸水溶液にさらにアミン、二硫化炭素を混合して反応することを特徴とするアミンのカルボジチオ酸塩水溶液の製造方法。
【請求項9】
アミンのカルボジチオ酸塩水溶液にアミンを添加後、二硫化炭素を添加することを特徴とする請求項8に記載のアミンのカルボジチオ酸塩水溶液の製造方法。
【請求項10】
さらに金属水酸化物を添加することを特徴とする請求項8又は9に記載のアミンのカルボジチオ酸塩水溶液の製造方法。
【請求項11】
アミンのカルボジチオ酸塩水溶液にアミンを添加後、二硫化炭素、金属水酸化物の順で添加することを特徴とする請求項10に記載のアミンのカルボジチオ酸塩水溶液の製造方法。
【請求項12】
金属水酸化物が添加するアミンの二硫化炭素と反応するアミノ基に対して0.95〜1.2倍当量であることを特徴とする請求項10又は11に記載のアミンのカルボジチオ酸塩水溶液の製造方法。

【公開番号】特開2012−158575(P2012−158575A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21308(P2011−21308)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】