説明

固体状態にあるポリマー

【課題】噴霧乾燥工程や水不溶性の添加剤を必要とすることなく、固体状態で得られ、必要があれば、残渣を残すことなく水中に再溶解および/または水中に再分散させることが可能なポリマーを調製すること
【解決手段】不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸、または不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸の類似体から選択される少なくとも1種のモノマー(a)、および場合によっては少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(b)から製造される少なくとも1種のポリマー(A)と、一方の末端が通常の反応条件下では非反応性の末端基で終端しており、それの他方の末端がヒドロキシル官能化またはアミン官能化されている、少なくとも1種のポリマー(B)と、場合によっては少なくとも1種のアミン(C)とを反応させることによって得られる、固体状態にあるポリマー

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、必要があれば、残渣を残すことなく水に溶解および/または分散させることが可能な、固体状態にあるポリマーの調製とそれらの調製方法およびそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアルキレングリコールカルボキシレートが、水性分散体のための分散剤として、長年使用されてきた。それらによって、それら分散体の水分含量を劇的に減少させることが可能になった。それらのポリマーは、水溶液中で調製されるか、または水性ポリマー溶液として得られる。それらの溶液の欠点は、その輸送コストが高いことで、それは、ポリマーと共に大量の溶媒をも輸送しなければならないからである。さらに、特に水溶液の場合には、細菌による攻撃も起こりうる。水溶液は凍結の影響を受けやすく、すなわち、第1には凍結してしまう可能せいがあり、また第2には、低温の保存条件下では固体の結晶化が起こりうる。そのため、貯蔵条件には特別な配慮が必要である。ポリアルキレングリコールカルボキシレートが、たとえばアクリル系エステルの共重合に由来する、エステル基を有している場合には、その水溶液の貯蔵寿命が極めて限られるが、その理由は、それらのエステルが、特に比較的温度が高い場合には加水分解される傾向が強いからである。
【0003】
粉体または固体のものは水溶液よりも技術的に有利であるが、それは、輸送コストが顕著に低くなり、生物学的な攻撃が少なく、また変性ポリカルボキシレート中のエステル結合が切断される可能性が低下するためにその貯蔵寿命が顕著に長くなり、そして凍結に対する敏感さが顕著に低下するからである。
【0004】
国際公開第0017263号パンフレットには、安定剤を添加してポリマー水溶液を乾燥させることによる、ポリオキシアルキレングリコールカルボキシレート系の水溶性ポリマー粉体の調製が記載されている。
【0005】
欧州特許第1052232号明細書には、粉末状分散剤の調製が記載されていて、そこでは、ポリカルボキシレートポリマーを含有する液体に還元剤を添加し、次いでその還元剤を含む液体を乾燥、粉体化している。
【0006】
国際公開第0047533号パンフレットには、ポリエーテルカルボキシレートの中に鉱物質の保持材料を取り入れた粉末状のポリマー組成物の調製が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際特許出願公開第0017263号
【特許文献2】欧州特許第1052232号
【特許文献3】国際特許出願公開第0047533号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
固体ポリマーを溶液から乾燥させることによって調製しようとすると、追加の工程が必要となり、大量のエネルギーを消費し、高価につく。鉱物質の保持材料と混合したポリマー粉体は、再溶解化させた後で安定したポリマー水溶液を調製するには、適していない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明が目的としているのは、従来技術における上記のような欠点を克服し、噴霧乾燥工程や水不溶性の添加剤を必要とすることなく、固体状態で得られ、必要があれば、残渣を残すことなく水中に再溶解および/または水中に再分散させることが可能なポリマーを調製することである。本発明によれば、特許請求項1または2で定義される固体状態にあるポリマーの手段を用いることによって、従来技術の持つ欠点を克服することが可能となることが、思いがけなくも見いだされた。
【0010】
本発明に記載されているのは、少なくとも1種の不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸またはそれらの類似体(a)および場合によっては少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(b)から調製される少なくとも1種のポリマーAと、一方の末端が通常の反応条件下では反応性のない末端基で終端しており、他方の末端がヒドロキシル官能化またはアミン官能化されている少なくとも1種のポリマーBと、場合によっては少なくとも1種のアミンCとを反応させることにより得られる、固体状態にあるポリマーである。
【0011】
さらに、そのような固体状態にあるポリマーは、少なくとも1種の不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸またはそれらの類似体(a)と、フリーラジカル発生剤の存在下に、一方の末端が通常の反応条件下では反応性のない末端基で終端しており、他方の末端がヒドロキシル官能化またはアミン官能化されているポリマーBの少なくとも1種の不飽和エステルまたはアミド(c)と、場合によっては少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(b)とを反応させることによっても得ることができる。セメント含有システムにおける分散剤および流動化剤としての固体ポリマーの調製および使用についても記載する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明が提供するのは、不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸ならびに不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸の類似体の中から選択した少なくとも1種のモノマーaならびに場合によっては少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーbから調製した少なくとも1種のポリマーAと、一方の末端が通常の反応条件下では反応性のない末端基で終端しており、他方の末端がヒドロキシル官能化またはアミン官能化されている少なくとも1種のポリマーBと、場合によっては少なくとも1種のアミンCとを反応させることによって得られる、固体状態にあるポリマーである。
【0013】
本発明の目的においては、「固体ポリマー(solid polymer)」または「固体状態にあるポリマー(polymers in the solid state)」とは、室温で固体状態であり、たとえば粉体、フレーク、ペレットまたはシートであって、その形態で何の問題もなく輸送および貯蔵することが可能なポリマーのことを言う。
【0014】
本発明の目的においては、「通常の反応条件下では反応性のない末端基で終端している」という用語は、そこに存在する基が、エステル化またはアミド化に反応性を有するような官能基ではなく、逆に、もはや反応することができない基であることを意味している。通常の反応条件とは、当業者周知の、エステル化およびアミド化のための条件である。「一方の末端が終端している」化合物の場合には、一方の末端だけが、もはや反応性を有しない。
【0015】
ポリマーAは、少なくとも1種のモノマーaと、場合によっては少なくとも1種のモノマーbを重合させることによって得ることができる。
【0016】
モノマーaは、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、それらの類似体およびそれらの混合物からなる群より選択される。不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸は、好ましくはマレイン酸、イタコン酸またはクロトン酸、特にアクリル酸またはメタクリル酸である。本発明の目的においては、モノカルボン酸またはジカルボン酸の類似体とは、酸の塩、酸ハライド、酸無水物およびエステル、特にアルキルエステルを言う。
【0017】
モノマーbは、エチレン性不飽和モノマーからなる群より選択される。そのようなエチレン性不飽和モノマーの例を具体的に挙げれば、
・エチレン性不飽和芳香族化合物、たとえばスチレン、アルファ−メチルスチレン、
・ビニル化合物、たとえばN−ビニルピロリドン、酢酸ビニル、ビニルエチルエーテル、ビニルスルホン酸、ビニルカプロラクタム、
・(メタ)アリル化合物、たとえば(メタ)アリルスルホン酸、アリルグリシジルエーテル、アリルポリグリコールエーテル、
・不飽和アミドまたはニトリル、たとえばアクリロニトリルまたはアクリルアミド、
・エチレン性不飽和化合物、たとえばエチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、などがある。
【0018】
さらにポリマーAは、塩の形態であってもよいし、あるいは部分的に中和されているような形態であってもよい。
【0019】
ポリマーAを調製するには、使用する重合開始剤、重合開始助剤、重合調節剤を選択して、反応性のヒドロキシルまたはアミン官能基がポリマーAの中に全く存在しないようにしなければならない。
【0020】
ポリマーA中のモノマー構成ブロックであるaとbのモル比は通常100:0から20:80まで、好ましくは100:0から30:70まで、特に98:2から70:30までの範囲とする。
【0021】
本発明の目的においては、「分子量」とは、重量平均分子量Mを指す。
【0022】
ポリマーAの分子量は、たとえば、1000〜100,000g/モル、好ましくは1000〜50,000g/モル、特に好ましくは2000〜30,000g/モル、特に2000〜15,000g/モルである。
【0023】
ポリマーBは、通常の反応条件下では反応性のない末端基で1端が終端している。ポリマーBは、ポリアルキレングリコール骨格を有するポリマーであるのが好ましい。このポリマーBは次式に相当するものであるのが好ましく、
X−(EO)−(PO)−(BuO)−R
ここでx、y、zはそれぞれ他とは独立して0〜250の範囲で、x+y+z=3またはそれ以上であり;
X=OHまたはNHR’で、ここでR’=1〜20個の炭素原子を有するアルキル、7〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、またはHであるが、好ましくはR’=Hであり;
EO=エチレンオキシ、PO=プロピレンオキシ、BuO=ブチレンオキシまたはイソブチレンオキシであり;
そしてR=1〜20個の炭素原子を有するアルキル、または7〜20個の炭素原子を有するアルキルアリールである。
【0024】
ポリマーB中におけるエチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)およびブチレンオキシド(BuO)単位は、ブロック状に配列していてもよいし、および/またはランダムに配列していてもよい。
【0025】
ヒドロキシル末端基を含むポリマーBの、アミン末端基を含むポリマーBに対するモル比は、100:0から0:100まで、好ましくは100:0から5:95まで、特に100:0から20:80まで、特に好ましくは100:0から91:9までである。
【0026】
固体ポリマーを調製する際には、アミンCを、アンモニア、アンモニア塩、1級、2級の直鎖状および分岐状のC1〜C20−アルキルアミンならびに2級C1〜C20−ヒドロキシアミンの中から、選択する。
【0027】
ポリマーA中のカルボン酸基またはそれらの類似体の合計の、ポリマーB中のヒドロキシルおよびアミノ基の合計に対する比は、50:1から1.1:1まで、好ましくは30:1から1.1:1までである。
【0028】
固体ポリマーを調製する際には、ポリマーAの中のカルボン酸基またはそれらの類似体の1つあたり、0〜0.5単位、好ましくは0.01〜0.3単位のアミンCを使用する。
【0029】
ポリマーAと、ポリマーB、場合によってはアミンCとの反応は、ポリマーA中のカルボキシレート基を少なくとも部分的にエステル化またはアミド化できるような条件下で実施する。その反応は高温下、具体的には好ましくは140℃から250℃まで、特に150℃から200℃までで実施するのが好ましい。たとえばルイス酸のようなエステル化触媒を添加してもよい。生成する副生物は、反応の途中にポリマー溶融物から除去することができるが、そのためにはたとえば、空気または窒素気流、真空、または塩の沈降などの手段を使用する。
【0030】
本発明はさらに、不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸ならびに不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸の類似体の中から選択される少なくとも1種のモノマーaを、フリーラジカル発生剤の存在下に、一方の末端が通常の反応条件下では反応性のない末端基で終端しており、他方の末端がヒドロキシル官能化またはアミン官能化されているポリマーBの不飽和エステルおよびアミドからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーcと、場合によっては少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーbとを反応させることによって得られる、固体状態にあるポリマーについても記載している。
【0031】
モノマーa、b、およびポリマーBは先に挙げたものである。モノマーcは、ポリマーBの不飽和エステルおよびアミドからなる群より選択される。モノマーcは、α,β−不飽和カルボン酸のエステルまたはアミドであるのが好ましく、アクリル酸またはメタクリル酸のエステルまたはアミドであるのが特に好ましい。
【0032】
上記のコポリマーにおけるモノマーa、b、cのモル比は、(a+c):b=100:0から30:70まで、好ましくは100:0から50:50まで、特に98:2から70:30までの条件に適合するようする。コポリマーにおけるモノマーaとcのモル比は、a:c=200:1から0.1:1まで、好ましくは100:1から0.1:1、特に29:1から0.1:1までの条件に適合するようにする。
【0033】
モノマーa、bおよびcの共重合は、通常のフリーラジカル共重合法により実施することができる。好適な重合開始剤としては、たとえば有機または無機過酸化物、過酸化水素、過硫酸塩、または有機アゾ化合物などが挙げられる。分子量を調節するために、無機または有機硫黄化合物、アルデヒド、ギ酸、または無機リン化合物などのような調節剤を添加してもよい。重合を、レドックス系重合開始剤の手段により開始させることもできる。重合反応は、無溶媒または溶媒中で実施することができる。好適な溶媒の例としては、トルエン、ベンゼン、水およびそれらの混合物が挙げられるが、水が好ましい。溶媒を使用する場合には、加工する前にポリマーを溶媒から分離しなければならないが、そのような分離は、ポリマーを沈降させてから溶媒を分離したり、減圧下または常圧下に溶媒を蒸留したりすることにより、実施できる。ポリマーに熱を加えて溶融させなければならないこともある。得られたポリマー溶融物は、以下に述べるようにして加工することができる。
【0034】
固体ポリマーを調製するには2つの方法が可能であるが、以下の方法が好ましい。
【0035】
プロピレンオキシド(PO)およびブチレンオキシド(BO)単位を合計した重量割合が、ポリマーBの29重量%以下、特に20重量%未満とするのが有利である。
【0036】
ポリマーBの分子量は、約120〜20,000g/モル、特に約250〜10,000g/モルとするのが有利である。
【0037】
さらに、500g/モル未満の分子量を有する全部のポリマーBの割合が、ポリマーB全体の70モル%以下、好ましくは50モル%未満、特に30モル%未満とするのが有利である。
【0038】
当業者ならば容易に理解するであろうが、工業的に生産される、一方の末端が通常の反応条件下では反応性のない末端基で終端している単官能ポリアルキレンオキシド、すなわちポリアルキレンジオールには必ず、末端基では終端していないある程度の不純物が含まれている。 具体的には、それらは、当業者が「2官能性」と呼んでいる化合物である。ポリマーB中の2官能性ポリマーの重量割合は、ポリマーBの重量を基準にして、3重量%未満、好ましくは2重量%未満、特に1重量%未満とするのが有利である。
【0039】
特定の水溶性または水分散性物質を添加することにより、ポリマー溶融物の固化反応を促進させることが可能であることが見いだされた。そのような物質の例を挙げれば、有機または無機塩たとえば、硝酸、リン酸、亜リン酸、脂肪酸、スルホン酸、フタル酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、および有機化合物たとえば、尿素、高級アルコールたとえば、脂肪族アルコールまたはネオペンチルグリコールなどがある。それらの添加剤は、加工にかける前ならば、どの時点でポリマー溶融物に添加してもよい。
【0040】
それらの添加剤は、好ましくは溶融させたポリマーに、固体状態にあるポリマーを基準にして、0から5重量%までの量で添加する。
【0041】
本発明の目的においては、「ポリマー溶融物を加工する前に」という表現は、ポリマー溶融物を固化させる前に実施する、ポリマー調製の際の全ての加工工程を指している。
【0042】
反応が終了した時点で反応器の中に存在するポリマー溶融物は、容器に小分けして、そこで放冷固化させる。それらの固体ポリマーさらに加工するために再び溶融させて、追加の加工をすることもできる。
【0043】
しかしながら、反応が終了した時点で反応器の中に存在するポリマー溶融物はさらに、連続的またはバッチ法により、取り扱いやすい固体を製造するのに適した当業者公知の手段を用いて、加工することも可能である。たとえば、それらをキャスティングしてシートを形成させ、その形態で固化させた後で、たとえば細断、微粉砕またはペレット化により、細かくすることができる。この固化工程は、冷却することにより加速させることもできる。ポリマー溶融物のさらなる加工のまた別な例としては、ポリマー溶融物を、たとえば冷却浴およびチョッパーの手段を用いることにより、直接ペレット化することも可能である。
【0044】
本発明の好ましい実施態様においては、これら固体ポリマーを、無機または有機分散体のための分散剤として使用することができる。そのような分散体の例を挙げれば、炭酸カルシウム分散体、染料分散体、セッコウプラスタースラリー、水硬性結合剤の分散体、または石炭スラリー、などがある。
【0045】
より好ましい実施態様においては、これら固体ポリマーは、水硬性結合剤または、水硬性結合剤と潜在的な水硬性結合剤との混合物を含む分散体のための分散剤として使用することができる。そのような分散剤は、コンクリート技術においては、流動化剤と呼ばれている。水硬性結合剤とは、たとえば、セメント、スラグ、焼セッコウまたは無水セッコウなどである。潜在的な水硬性結合剤としては、たとえば、ポゾランまたはフライアッシュが挙げられる。1つの具体的な用途としては、出来合い(ready−to−use)のモルタルにおける流動化剤としての使用がある。
【0046】
本発明の新規な固体状態にあるポリマーは、分散させる対象の物質の中にたとえば粉体またはペレットとして、直接混合して使用することもできるし、あるいは、分散させる対象の物質が微粉砕しなければならないようなものならば、その固体ポリマーを、場合によっては、その分散させる対象の物質に添加してから微粉砕工程にかけてもよい。しかしながら、固体ポリマーを水に溶解させてから、水溶液として使用することも可能である。
【0047】
その他の添加剤を、好ましくはポリマー溶融物を加工するより前に、固体ポリマーに添加することもできる。そのような添加剤としては、たとえば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニウム、C1〜C2−アルキルアミンのようなアルカリ類、その他の分散剤たとえば、スルホネート化ナフタレン縮合物、スルホネート化メラミン縮合物、リグノスルホネート、ポリアクリレート、その他のポリカルボキシレート、または水硬性結合剤のための硬化抑制剤および/または硬化促進剤、粘度調節剤、界面活性剤または消泡剤のような表面活性物質、または収縮抑制剤などが挙げられる。
【実施例】
【0048】
ポリマーAとポリマーBとの反応による調製(実施例PA−1〜PA−5)
本発明によるポリマーPA−1のための調製方法

160gのポリアクリル酸(分子量:4500)の50パーセント強度の水溶液および5.0gの5Oパーセント強度の硫酸を、機械的撹拌器、温度計、ガス注入チューブおよび蒸留用付属器具を備えた丸底フラスコの中に加える。その混合物を50℃に加温し、400gのポリエチレングリコールモノメチルエーテル(分子量:2000)を添加する。その混合物を、N気流下で160℃に加熱する。混合物中に存在していた水および反応による水を、N気流下で連続的に留去する。4時間後には、1.5ミリモルH+/gの酸価となるので、そのポリマー溶融物を、実験台の加熱していないセラミック板の上に置いた直径約100mm、高さ約7mmのアルミニウム皿の中に注入して、放冷固化させる。
【0049】
ポリマーPA−2〜PA−5は、表aに示した出発物質と反応時間を用いて、ポリマーPA−1と同様な方法により調製した。
【0050】
比較例ポリマーCA−1およびCA−2のための調製方法

比較例ポリマーCA−1およびCA−2を、表bに示した出発物質と反応時間を用いて、ポリマーPA−1と同様な方法により調製した。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
ポリマーPA1〜PA5は、冷却して固化させた後、何の問題もなく皿から板状物として取り外すことができ、小片に破砕することができたが、それらには粘着性は無かった。
【0054】
比較例ポリマーCA−1およびCA−2は、室温に24時間置き、さらに6℃で24時間置いた後でも、粘稠で、依然として粘着性があった。
【0055】
モノマーaとモノマーc、および場合によってはモノマーbの反応のための調製方法
本発明によるポリマーのための調製方法(実施例PC−1)
70gの脱イオン水を、機械的撹拌器、温度計および還流冷却器を備えた500mL丸底フラスコ中に入れ、75〜80℃に加温する。その温度になったら直ぐに、モノマー混合物(121.2gのメタクリル酸のポリエチレングリコール5000モノメチルエーテルとのエステル、12.1gのメタクリル酸および140gの水からなる)と40gの水に溶解した3.1gのペルオキソ二硫酸ナトリウム溶液とを、別々の定量ポンプを使用して同時に、4時間かけて計量仕込みする。開始直後および15分ごとに、全量1.4gのチオ乳酸を8回にわけて添加する。次いで、5.0gの水に溶解させた0.8gのペルオキソ二硫酸ナトリウムを添加して、75〜80℃で重合を継続し、過酸化物試験がマイナスになるまで続ける。6.4gのNaOH(50%強度)を添加してpHを4.7に維持する。次いで還流冷却器を蒸留用付属器具に取り替えて、水を留去する。その粘稠なポリマー溶融物を、実験台の加熱していないセラミック板の上に置いた直径約100mm、高さ約7mmのアルミニウム皿の中に注入して、放冷固化させる。
【0056】
比較例ポリマーのための調製方法(比較例CC−1)

92.0gの脱イオン水を、機械的撹拌器、温度計および還流冷却器を備えた500mL丸底フラスコ中に入れ、85〜90℃に加温する。その温度になったら直ぐに、モノマー混合物(103.0gのメタクリル酸のポリエチレングリコール500モノメチルエーテルとのエステル、44.7gのメタクリル酸および110gの水からなる)、39.0gの水に溶解させた4.6gのピロ亜硫酸塩ナトリウム溶液、および40.0gの水に溶解させた5.7gのペルオキソ二硫酸ナトリウムの溶液を、別々の定量ポンプを使用して同時に、2時間かけて計量仕込みする。次いでその混合物を85〜90℃で反応を継続し、過酸化物試験がマイナスになるまで続ける。次いで還流冷却器から蒸留用付属器具に取り替えて、水を留去する。そのポリマー溶融物を、実験台の加熱していないセラミック板の上に置いた直径約100mm、高さ約7mmのアルミニウム皿の中に注入して、放冷固化させる。
【0057】
ポリマーPC−1は、冷却して固化させた後、何の問題もなく皿から板状物として取り外すことができ、小片に破砕することができたが、それらには粘着性は無かった。比較例ポリマーCC−1は、24時間後でも固体にはならず、柔らかいままであった。
【0058】
ポリマー溶融物の固化反応のための促進剤として水酸化カルシウムを使用する実施例

ポリマーPA−1の調製を、同じバッチサイズで繰り返す。そのポリマー溶融物を冷却して100℃とし、2重量パーセントの水酸化カルシウム粉体を添加して、5分間よく混合する。次いでそのポリマー溶融物を、金属シートの上に注ぎだし、放冷固化させる。固体ポリマーの硬度は、ショアーA硬度試験用計測器、DIN53505を用いて試験した。水酸化カルシウム粉体を添加すると、それを添加しない場合に比較して、顕著によい速やかに固化が起きるが、それについては表cに示した。
【0059】
【表3】

【0060】
表cから判るように、水酸化カルシウムを添加することによって、ポリマーは15分後には固体状態となるが、無添加では60分経過してやっと同じ状態に達する。
【0061】
固体ポリマーから水性ポリマー溶液を調製する実施例

30gの固体ポリマーPA−1を70gの水に溶解させる。透明で、黄みがかったポリマー溶液が得られる。
【0062】
2重量パーセントの水酸化カルシウム粉体を添加して固化させた固体ポリマーPA−1の30gを70gの水に溶解させる。濁った、黄みがかったポリマー溶液が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体状態にあるポリマーであって、
・不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸ならびに不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸の類似体の中から選択される少なくとも1種のモノマーa、
および
・場合によっては少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーb、
から調製される少なくとも1種のポリマーAと、
一方の末端が通常の反応条件下では反応性のない末端基で終端しており、他方の末端がヒドロキシル官能化またはアミン官能化されている、少なくとも1種のポリマーBと、
場合によっては、少なくとも1種のアミンCと、
を反応させることによって得られる、固体状態にあるポリマー。
【請求項2】
固体状態にあるポリマーであって、不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸ならびに不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸の類似体の中から選択される少なくとも1種のモノマーaと、
フリーラジカル発生剤の存在下に、
一方の末端が通常の反応条件下では反応性のない末端基で終端しており、他方の末端がヒドロキシル官能化またはアミン官能化されているポリマーBの不飽和エステルおよびアミドからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーcと、
場合によっては少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーbと、
を反応させることによって得られる、固体状態にあるポリマー。
【請求項3】
前記不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸の前記類似体が、酸の塩、酸ハライド、酸無水物およびエステルからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の固体状態にあるポリマー。
【請求項4】
一方の末端が通常の反応条件下では反応性のない末端基で終端しており、他方の末端がヒドロキシル官能化またはアミン官能化されている、前記ポリマーBが、次式を有し:
X−(EO)−(PO)−(BuO)−R
ここでx、y、zはそれぞれ他とは独立して0〜250の範囲で、x+y+z=3またはそれ以上であり;
X=OHまたはNHR’で、ここでR’=1〜20個の炭素原子を有するアルキル、7〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、またはHであるが、好ましくはR’=Hであり;
EO=エチレンオキシ、PO=プロピレンオキシ、BuO=ブチレンオキシまたはイソブチレンオキシであり;そして
R=1〜20個の炭素原子を有するアルキル、または7〜20個の炭素原子を有するアルキルアリールである、
ことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の固体状態にあるポリマー。
【請求項5】
前記ポリマーBが、前記ポリマーBの重量を基準にして、2官能性ポリマー不純物を、3重量%未満、好ましくは2重量%未満、特に1重量%未満の重量割合で含むことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の固体状態にあるポリマー。
【請求項6】
プロピレンオキシド(PO)およびブチレンオキシド(BO)単位を合計した重量割合が、前記ポリマーBの29重量%を超えない、特に20%未満であることを特徴とする、請求項4または5に記載の固体状態にあるポリマー。
【請求項7】
モノマーaが、マレイン酸、イタコン酸またはクロトン酸、好ましくはアクリル酸またはメタクリル酸であることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載の固体状態にあるポリマー。
【請求項8】
前記ポリマーBの分子量が、約120〜20,000g/モル、特に約250〜10,000g/モルであることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれかに記載の固体状態にあるポリマー。
【請求項9】
前記ポリマーAが、1000〜100,000g/モル、好ましくは1000〜50,000g/モル、特に好ましくは2000〜30,000g/モル、特に2000〜15,000g/モルの範囲の分子量を有することを特徴とする、請求項1乃至8のいずれかに記載の固体状態にあるポリマー。
【請求項10】
前記ポリマーA中のモノマー構成ブロックであるaとbのモル比が、100:0から20:80まで、好ましくは100:0から30:70まで、特に98:2から70:30までの範囲であることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれかに記載の固体状態にあるポリマー。
【請求項11】
前記固体状態にあるポリマーが、粉体、フレークまたはシートの形状であることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれかに記載の固体状態にあるポリマー。
【請求項12】
固化の前に、少なくとも1種のコンクリート流動化剤を前記ポリマーに添加することを特徴とする、請求項1乃至11のいずれかに記載の固体状態にあるポリマー。
【請求項13】
硬化抑制剤、硬化促進剤、粘度調節剤および収縮抑制剤からなる群からの水硬性結合剤または潜在的水硬性結合剤のための少なくとも1種の添加剤を、固化の前に前記ポリマーに添加することを特徴とする、請求項1乃至12のいずれかに記載の固体状態にあるポリマー。
【請求項14】
前記固体状態にあるポリマーを、ポリマー溶融物を冷却することにより得る工程、及び場合によっては、細かくして輸送可能な形態とする工程を特徴とする、請求項1または、請求項3乃至13のいずれかに記載の固体状態にあるポリマーの調製方法。
【請求項15】
エチレン性不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸の少なくとも1種のエステルまたはアミドを有する、カルボキシル基またはそれらの類似体を含む少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーを、ポリマーB、および場合によってはさらなる共重合可能なモノマーと、場合によっては、後に除去する溶媒中で、共重合させることによる、請求項2乃至13のいずれかに記載の固体状態にあるポリマーの調製方法。
【請求項16】
冷却の前に、前記ポリマー溶融物の硬化反応のための水溶性または水分散性促進剤を、前記ポリマー溶融物に添加することを特徴とする、請求項14または15に記載の固体状態にあるポリマーの調製方法。
【請求項17】
無機および有機塩、尿素および高級アルコールからなる群より選択される促進剤を、前記ポリマー溶融物の固化反応のための水溶性または水分散性促進剤として使用することを特徴とする、請求項16に記載の固体状態にあるポリマーの調製方法。
【請求項18】
水性分散体のための分散剤としての、請求項1乃至13のいずれかに記載の固体状態にあるポリマーの使用。
【請求項19】
水硬性システムのための流動化剤としての、請求項1乃至13のいずれかに記載の固体状態にあるポリマーの使用。
【請求項20】
既製のモルタルシステムにおける流動化剤としての、請求項1乃至13のいずれかに記載の固体状態にあるポリマーの使用。
【請求項21】
セメント含有システムのための流動化剤としての、水に溶解させた、請求項1乃至13のいずれかに記載の固体状態にあるポリマーの使用。
【請求項22】
請求項1乃至13のいずれかに記載の固体状態にあるポリマーを水中に溶解させることにより得られる水溶液。

【公開番号】特開2010−255003(P2010−255003A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178023(P2010−178023)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【分割の表示】特願2003−578455(P2003−578455)の分割
【原出願日】平成15年3月19日(2003.3.19)
【出願人】(503241216)シーカ・シュヴァイツ・アーゲー (5)
【Fターム(参考)】