説明

固体状酸化物燃料電池/イオン輸送膜用の新規な陰極と電解質材料

新規な陰極、電解質及び酸素分離材料が開示される。該材料は、固体状酸化物燃料電池及びペロブスカイト関連構造とAサイトカチオンの規則配置を有する酸化物に基づくイオン輸送膜に対して用いられる中間温度において作動する。該材料は、対応する不規則配置を有するペロブスカイトに比べて、酸素を著しく速く移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
この発明は、米国のエネルギー省の奨励金を受けたDE−FC26−03NT41960に基づく米国政府支援によってなされたものである。米国政府はこの発明に関して一定の権利を有する。
この出願は、米国の仮特許出願第60/706,836号(出願日:2005年8月9日)に基づく優先権を伴う出願である。
【0002】
発明の分野
この発明は、ペロブスカイト関連構造とAサイト(site)カチオンの規則配置を有する酸化物に基づく固体状酸化物燃料電池/イオン輸送膜における中間温度用の新規な陰極と電解質材料に関する。
【0003】
より詳細に言えば、本発明は、下記の一般式(I)で表される化合物を少なくとも1種含有する組成物群に関する:
(ABO(A’BO2+x(A’O2+x (I)
(式中、p、q及びrは整数を示し、xは実数を示し、Aは2価金属を示し、A’は3価金属を示し、Bは「3」の酸化状態と「4」の酸化状態との間で容易に変換しうる金属又はこれらの混合物若しくは化合物を示す)。
この場合、陰極組成物は酸素イオン拡散率と電子伝導率を有する。また、陰極組成物は、イオン輸送による酸素分離膜と陰極において用途を有する。
【0004】
また、本発明は、下記の一般式(II)で表される化合物を少なくとも1種含有する電解質組成物群にも関する:
(AB’O(A’B’O2+x(A’O2+x (II)
(式中、p、q及びrは整数を示し、xは実数を示し、Aは2価金属を示し、A’は3価金属を示し、B’は非遷移金属を示す)。
この場合、電解質組成物は純粋なイオン伝導体であり、また、電解質組成物は化学的センサーにおいても使用することができる。
【0005】
さらに、本発明は、式(I)及び/又は式(II)で表される化合物を含有する組成物を含む燃料電池と分離セル及びこれらの製造法と使用法にも関する。
【背景技術】
【0006】
固体状酸化物燃料電池(SOFCs;solid oxide fuel cells)によってエネルギー効率が改善され、クリーンエネルギーの製造技術分野がもたらされることが明らかにされている。高温での操作により、固体状酸化物燃料電池は、既存の化石燃料を用いて十分に作動させることができ、また、熱と電力を組み合わせた用途において使用することができ、あるいはタービンと効率よく組み合わせることにより非常に高い効率で燃料を電気に変換することが可能である。
【0007】
現在のところ、1000℃で作動させる固体状酸化物燃料電池においては、イットリア安定化ジルコニア電解質(YSZ)、ランタンストロンチウムマンガナイト陰極及びニッケル/YSZサーメット陽極が利用されている。この種の電池はランタンストロンチウムクロマイト双極プレートを用いて接続されている。電池のデザインとしては種々の形態のものが研究されているが、最も発達した形態はジーメンス/ウェスチングハウス社製の管状構造体である。この構造体においては、多孔性ランタンストロンチウムマンガナイト製チューブ(長さ:1.5m)上にYSZ電解質膜(厚さ:30〜40μm)が保持されている。このジーメンス/ウェッスチングハウス社製の管状構造体の有用性は100kW規模において証明されている。
【0008】
この技術は有用な技術として確立されているが、SOFCsを市場へ広範囲に亘って供給するためにはコストが高すぎるという問題がある。コストの低減化には、材料(特に、電解質)の特性の改良と低コスト製造法の開発が必要である。連結機器と熱交換器内における高価でない材料の使用を可能にすることによって、操作温度を低下させることはコスト面に大きな影響をもたらす。操作温度が低い場合には、個々の成分の相互拡散と反応起因する性能劣化と熱サイクルに関連する問題を低減させることによってSOFCs系の信頼性が高められる。熱と電力の分散併用及び補助電力のための中間温度で作動する3〜10kW規模の面状及び管状のSOFCsは、米国の数社によって現在開発中である。
【0009】
中間温度(500〜800℃)でSOFCsを作動させるためには、電解質材料と電極材料の新規な組合せであって、電解質と電極/電解質界面を横断する迅速なイオン輸送及び酸素の還元反応と燃料の酸化反応の効率的な電気触媒反応をもたらす該新規な組合せが必要である。
【0010】
混合イオン性電子伝導性(MIEC)酸化物は、イオン輸送膜(ITMs)の主要な機能性成分である。ITMsは、該膜の一方の表面上での酸素分子の解離と還元の触媒反応及びその後の酸素イオンと2個の電子ホールのバルク材料中での複合輸送により、高温で作動する。該膜の第2の表面上においては、酸化物イオンは、炭化水素(例えば、メタン)の触媒反応のためのオキシダントとして作用して合成ガスを生成させるか、又は該イオンは再結合して該膜中へ電子を放出する分子状酸素を生成させる。後者の場合、該膜は高温の酸素分離デバイスとして機能する。イオン輸送膜系は、SOFCsに比べて、外部回路が不要であるという点でデザイン的にはより簡単であるが、膜を横断する酸素活性度の勾配が大きいために、材料に対する要求条件は非常に過大となる。ITMsの全体的な性能は、強く関連する表面反応とバルク輸送によって決定される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、当該分野においては、SOFCsとITMsを中間温度で作動させることができる新規な材料群が要請されており、本発明はこのような要請に応えるためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、酸素還元に対して優れた特性を示す新規な陰極組成物群であって、約400℃〜約800℃の範囲内の中間温度における使用に適した該組成物群を提供する。
また、本発明は、約400℃〜約800℃の範囲内の中間温度において優れた特性を示す新規な電解質組成物群を提供する。
さらに本発明は、酸素分離における使用に対して優れた特性を示す新規な膜形成性組成物群を提供する。
これらの組成物は、該組成物中の化合物が約400℃〜約800℃の範囲内の中間温度におけるSOFCsとITMsの作動を可能にするために、操作コストの低減化に係る問題を解決する。
【0013】
本発明は、下記の一般式(I)で表される化合物を少なくとも1種含有するペロブスカイト酸化物陰極組成物群を提供する:
(ABO(A’BO2+x(A’O2+x (I)
(式中、p、q及びrは整数を示し、xは実数を示し、Aは2価金属を示し、A’は3価金属カチオンを示し、Bは遷移金属カチオン又は遷移金属の混合物若しくは化合物を示す。)
この場合、該陰極組成物は異常に大きな酸素イオン拡散係数を有するために、該陰極組成物は、中間温度でのSOFCsと酸素分離用のITMsに対する電極としては理想的なものである。
【0014】
上記の一般式(I)において、pの値は一般的には1〜約4の範囲である。pの値が4のとき、qの値は1〜4の範囲であり、rの値は0〜4の範囲である。即ち、p≧q(pはqよりも大きいか、又はqと等しい)及びq≧r(qはrよりも大きいか、又はrと等しい)という条件を満たすので、p≧r(pはrよりも大きいか、又はrと等しい)という条件を満たす。特定の実施態様においては、組成物は、p>q(pはqよりも大きい)、q>r(qはrよりも大きい)及びp>r(pはrよりも大きい)という条件を満たすことによって規定される。別の実施態様においては、pは4よりも大きく、これに対応するqとrの範囲は広がる。xの値は実数であり、その範囲は0.0よりも大きく1.0よりも小さい範囲である(即ち、0.0<x<1.0である)。
【0015】
本発明は、下記の一般式(II)で表される化合物を少なくとも1種含有するパロブスカイト酸化物電解質組成物群を提供する:
(AB’O(A’B’O2+x(A’O2+x (II)
(式中、p、q及びrは整数を示し、xは実数を示し、Aは2価金属を示し、A’は3価金属カチオンを示し、B’は非遷移金属又はこれらの任意の混合物若しくは化合物を示す)。
該組成物は、SOFCsに関する中間温度において効率よく作動する理想的な電解質として適している。
【0016】
上記の一般式(II)において、pの値は一般的には1〜約4の範囲である。pの値が4のとき、qの値は1〜4の範囲であり、rの値は0〜4の範囲である。即ち、p≧q(pはqよりも大きいか、又はqと等しい)及びq≧r(qはrよりも大きいか、又はrと等しい)という条件を満たすので、p≧r(pはrよりも大きいか、又はrと等しい)という条件を満たす。特定の実施態様においては、組成物は、p>q(pはqよりも大きい)、q>r(qはrよりも大きい)及びp>r(pはrよりも大きい)という条件を満たすことによって規定される。別の実施態様においては、pは4よりも大きく、これに対応するqとrの範囲は広がる。B’が3の酸化状態の単一の非遷移金属(例えば、Al3+)の場合、xは0.5に等しくなる。xを0.0よりも大きく1.0よりも小さい範囲で変化させるとき(即ち、0.0<x<1.0)、該組成物は3価の非遷移金属と4価の非遷移金属との混合物(例えば、Al3+とTi4+との混合物)を含有する。一般式(II)において、xが0.0<x<1.0の範囲の化合物は、3価金属の一部が4価金属によって関連づけられる異原子価(aliovalent)物のドーピング法によって調製される。
【0017】
本発明は、燃料電池を提供する。該燃料電池は、既知の陽極組成物を含有する陽極と接触する水素溜め、式(I)で表される化合物を少なくとも1種含む組成物を含有する陰極と接触する酸素溜め、及びこれらの間に介在する電解質であって、式(II)で表される化合物又は常套若しくは既知の燃料電池用電解材料を含む組成物を含有する電解質を具備する。
【0018】
本発明は、酸素濃縮装置を提供する。該装置は、酸素含有ガス溜め、酸素溜め、及びこれらの間に介在する酸素拡散膜であって式(I)で表される化合物を含む組成物を含有する酸素拡散膜を具備する。
【0019】
本発明は、以下の添付図面を用いる詳細な説明によってより良く理解することができる。添付図面中、同じ要素は同じ数字等で示す。
図1Aは、式(I)(式中、p=q=1であり、r=0である)で表される化合物の構造の正面図である。図中、白色球は酸素格子サイトを示し、暗灰色球はB金属格子サイトを示し、灰色球は部分的に充填された酸素イオン格子サイトを示し、灰色の正方形は未充填の酸素格子サイトを示す。原子A及びA’は、図示するサイトの前方又は後方に位置するので、図示されていない。
【0020】
図1Bは、図1Aに示す構造の斜視図である。図中、黒色球はバリウムカチオン(A)を示し、明灰色球はプラセオジムカチオン(A’)を示し、四角錐状の配位種はコバルトイオン(B)を示し、小さな黒色球は酸素格子サイトを示し、小さな暗灰色球は部分的に占有された酸素イオンサイトを示す。
【0021】
図1Cは、式(I)(式中、p=q=rである)で表される化合物の構造の正面図である。図中、赤色球は酸素格子サイトを示し、青色球はB金属格子サイトを示し、灰色球は部分的に充填された酸素イオン格子サイトを示し、正方形は未充填の酸素格子サイトを示す。原子A及びA’は、図示するサイトの前方又は後方に位置するので、図示されていない。
【0022】
図1Dは、式(I)(式中、p=2、q=1であり、r=0)である)で表される化合物の構造の正面図である。図中、赤色球は酸素格子サイトを示し、青色球はB金属格子サイトを示し、灰色球は部分的に充填された酸素イオン格子サイトを示し、正方形は未充填の酸素格子サイトを示す。原子A及びA’は、図示するサイトの前方又は後方に位置するので、図示されていない。
【0023】
図2は、PrBaCo5.5+x及びNdBaCo5.5+xのDC伝導率を示すグラフである。
図3は、PrBaCo5.5+x及びNdBaCo5.5+xに対する酸素の拡散係数と表面交換係数を示すグラフである。
図4は、リートフェルト精製処理に付したPrBaCo5+xのX線回折図形を示す。格子パラメーターは次の通りである:a=3.9084(1)Å、b=3.9053(1)Å、c=7.6343(2)Å。
【0024】
図5は、PrBaCo5+xの熱重量分析のデータに関するグラフであって、図示する酸素分圧における温度の関数としての酸素の化学量論組成を示す。
図6は、種々の温度におけるPBCO中の酸素原子濃度(c)と酸素分圧との関係を示すグラフである。
図7は、PrBaCo5.5+xの全伝導率と温度との関係を示すグラフである。図中の「■」及び「□」は圧力が0.01気圧(atm)のときの測定値を示し、「●」及び「○」は圧力が0.21気圧のときの測定値を示し、また、「□」及び「○」は加熱時の測定値を示し、「■」及び「●」は冷却時の測定値を示す。
図8は、ECRによって測定したPrBaCo5+xのDchem 及びkchem と温度との関係を示すグラフである。
【0025】
図9A〜図9Cは、0.2atmの18(99%)雰囲気中に400℃で5分間曝したPrBaCo5+xについてのIEDPの結果を示す。図9Aのパネルaの右側はPrBaCo5.5+x領域の二次電子画像を示し、左側はエポキシのマトリックスの二次電子画像を示す。図9Bのパネルbは、パネルaの場合と同じ領域における18Oのフラクション(f18O)のSIMS画像を示す。図9Cは、パネルbの画像から誘導される18Oの分布を示す。この場合、f18O=18O/(18O+16O)である。
図10は、セラミック試料についてECRによって測定されたDの値を比較したグラフを示す。
図11は、セラミック試料についてECRによって測定されたkの値を比較したグラフを示す。
【0026】
図12は、対称的なCGO−PBCO/CGO/CGO−PBCO電池についての温度の関数としての面積抵抗率を示すグラフである。
図13は、本発明による水素/酸素燃料電池の模式図である。
図14は、CGO電解質が支持された固体酸化物燃料電池(陰極:PBCO)のV−I特性値を示すグラフである。
図15は、CGO/PBCO電解質が支持された固体酸化物燃料電池の開放電圧を示すグラフである。
図16は、電流密度の関数としての電池の出力密度を示すグラフである。
図17は、電流断続法によって測定されたオーム抵抗及び電解質の計算された理論的抵抗を比較したグラフである。
図18は、本発明による酸素分離装置のブロック線図である。
【0027】
本願明細書等において使用する頭字語及び略語の意味は次の通りである:
「CGO」はセリウムガドリニウムオキシドを意味する。
「ECR」は電気伝導率緩和を意味する。
「EPMA」は電子プローブマイクロ分析を意味する。
「GDC」はガドリニアをドープしたセリアを意味する(「CGO」参照)。
「LSGM」はランタンストロンチウムマグネシウムガレートを意味する。
「PLD」はパルスレーザー沈着を意味する。
「TGA」は熱重量分析を意味する。
「YSZ」はイットリア安定化ジルコニアを意味する。
「IEDP」は同位体交換と深さ分布を意味する。
「PBCO」はプラセオジムバリウムコバルトオキシドを意味する。
「STO」はストロンチウムチタネートを意味する。
「LAO」はランタンアルミネートを意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明者は、新規なペロブスカイト酸化物群が中間温度で用いられる燃料電池、中間温度で用いられる酸素分離膜用途及びその他の類似の用途に対して理想的な高い酸素拡散率と伝導率特性をもたらすことができることを見出した。また、本発明者は、上記のペロブスカイト酸化物の格子中において容易に変換しうる3価の金属イオン(3+の酸化状態と4+の酸化状態との間で容易に変換しうる金属イオン、即ち、M3+⇔M4+)を、3+の酸化状態と4+の酸化状態との間において容易に変換できない金属イオンへ変換することによって、新規なペロブスカイト酸化物群が中間温度の燃料電池に使用される電解質として使用できることを見出した。
【0029】
本発明者は、酸素空格子点を層中へ局在化させる規則的なAカチオンを有する特定のペロブスカイト酸化物が、400℃〜800℃の中間温度において改良された伝導率と酸素拡散率をもたらすことを見出した。この種の化合物群の内の1群の化合物は次式で表される:
AA’B5+x
(式中、A’はBaを示し、AはY又は3価のランタニドイオンを示し、BはSc、Ti及びZnを除く第一列遷移金属イオンを示す)。これらの化合物群の理想的な構造は、次の重合配列によって構成され、キュープレート(cuprate)超伝導体に密接に関連する構造を形成する:....|A’O|BO|AO|BO|.....。空いたサイトは、x=0のときにAカチオンが8配位になるように配置される。新規なペロブスカイト酸化物群の1種であるPrBaCo5+x(PBCO)の構造を図1A及び図1Bに示す。
【0030】
これらの物質における規則的な空格子点に起因して該物質のバルク中の酸化物イオンの非常に大きな拡散率がもたらされると考えられ、また、分子状酸素に対して高い反応性を示す表面欠陥がもたらされる。この種の化合物の低温での構造用特性は詳細に研究されており、これらに関しては次の文献を参照されたい:W.ゾウ、C.T.リン、W.Y.リアング、Adv. Mater. 、第5巻(1993年)、第735頁;I.O.トロヤンチュク、N.V.カスパー、D.D.カリアヴィン、H.スジムクザク、R.スジムクザク、M.バラン、Phys. Rev. Lett. 、第80巻(1998年)、第3380頁;A.マイグナン、C.マルチン、D.ペロキン、N.ニュグエン、B.ラボー、J. Solid State Chem. 、第142巻、1999年、第247頁;P.S.アンダーソン、C.A.キルク、J.クヌッドセン、I.M.レアネイ、A.R.ウェスト、Solid State Sciences 、第7巻(2005年)、第1149頁;S.ストロイレ、A.ポドレスニアク、J.メソト、M.メダルデ、K.コンデル、E.ポミヤクシナ、E.ミットベルク、V.コズヘフキコフ、J. Phys. Condens. Mater. 、第17巻(2005年)、第3317頁。しかしながら、高温での酸素化学に関してはほとんど知られていない。
【0031】
本発明者は次のことも究明した。即ち、LnBaCo5+x(Ln=Pr、Nd)に対するバルク酸化物のイオン拡散係数及び表面酸素交換速度を同位体交換と深さ分布(IEDP)と伝導度緩和(ECR)によって測定したところ、これらの物質が、燃料電池用の中間温度での陰極材料、中間温度での電解質材料及び中間温度での酸素分離材料としての使用に対して理想的に適しているということが判明した。これらの両方の測定技術によって、これらのタイプの構造における酸素の反応速度は対応する無秩序なペロブスカイトにおける場合よりも著しく速いということが証明された。
【0032】
陰極材料と酸素拡散材料として使用される本発明による組成物は、広義には下記の一般式(I)で表される化合物(該化合物はペロブスカイト酸化物構造を有する)を少なくとも1種含有する:
(ABO(A’BO2+x(A’O2+x (I)
(式中、p、q及びrは整数を示し、xは実数を示し、Aは2価金属カチオンを示し、A’は3価金属カチオンを示し、Bは遷移金属カチオン又はこれらの混合物若しくは化合物を示す)。xが実数を示すので、3価金属カチオンA’は4価状態へ変換可能である。pの値は一般に1〜約4の範囲であるが、これよりも大きな値も可能である。pの値が4のとき、qの値は1〜4であり、rの値は0〜4である。即ち、p≧q、q≧r及びp≧rである。
【0033】
特定の実施態様においては、pはqよりも大きく、qはrよりも大きく、従って、pはrよりも大きい。即ち、p>q、q>r及びp>rである。また、別の実施態様においては、pは4よりも大きく、qとrの対応する値の範囲は大きくなる。xの値は0.0よりも大きくて1.0よりも小さい実数を示す。即ち、0.0<x<1.0である。この値の範囲は、A’金属の量によって調整される。該金属は3+状態から4+状態へ変換可能であり、また、この逆の変換も可能である。
【0034】
上記の組成物は、燃料電池の作動温度を、現在採用されている作動温度(800℃よりも高温)から中間温度(約400℃〜約800℃)へ低下させることができる。特定の実施態様においては、作動温度は約400℃〜約700℃である。別の実施態様においては、作動温度は約400℃〜約600℃である。さらに別の実施態様においては、作動温度は約450℃〜約800℃である。さらにまた別の実施態様においては、作動温度は約450℃〜約700℃である。また、他の実施態様においては、作動温度は約450℃〜約600℃である。
【0035】
陰極材料と酸素拡散材料として使用される本発明による組成物は、広義には下記の一般式(II)で表される化合物(該化合物はペロブスカイト酸化物構造を有する)を少なくとも1種含有する:
(AB’O(A’B’O2+x(A’O2+x (II)
(式中、p、q及びrは整数を示し、xは実数を示し、Aは2価金属を示し、A’は3価金属カチオンを示し、B’は電解質組成物用の非遷移金属又はこれらの混合物若しくは組合せを示す)。pの値は好ましくは1〜約4の範囲である。pの値が4のとき、qの値は1〜4であり、rの値は0〜4である。即ち、p≧q、q≧r及びp≧rである。好ましい組成物においては、pはqよりも大きく、qはrよりも大きく、従って、pはrよりも大きい。pは好ましくは1〜4であるが、4よりも大きな値であってもよく、この場合には、対応するqとrの値も大きくなる。xの値は0.0よりも大きくて1.0よりも小さい実数を示す。即ち、0.0<x<1.0である。
【0036】
上記の組成物は、燃料電池の作動温度を、現在採用されている作動温度(800℃よりも高温)から中間温度(約400℃〜約800℃)へ低下させることができる。特定の実施態様においては、作動温度は約400℃〜約700℃である。別の実施態様においては、作動温度は約400℃〜約600℃である。さらに別の実施態様においては、作動温度は約450℃〜約800℃である。さらにまた別の実施態様においては、作動温度は約450℃〜約700℃である。また、他の実施態様においては、作動温度は約450℃〜約600℃である。
【0037】
上記の化合物は3つの異なる構成単位、即ち、ABO、A’B’O2+x及びA’O2+x)を含む。これらの構成単位は、p≧q及びq≧rの条件に従い、種々の方法によって結合させることができ、これによって本発明による種々の化合物を得ることができる。本発明による化合物の組成例を以下の表1に示す。
【表1】

【0038】
表1に示す式(I)で表される3種の化合物についての構成単位の構造的配置を図1A〜図1Dに示す。このような構造的配置の結果、AとA’カチオンは別の層を占めており(即ち、これらのカチオンは規則的である)、これらのカチオンは図1B(斜視図)以外の図面には示されていない。このため、酸素の空格子点はこれらの層に限定され、この特徴は酸素の高い拡散率をもたらす原因となる。
【0039】
陰極と酸素拡散膜に適した本発明に係る化合物中に使用するのに適当な2価金属カチオンとしては、特に限定的ではないが、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、鉛(Pb)及びこれらの任意の混合物又は化合物から成る群から選択され金属のカチオンが例示され、また、3価金属としては、特に限定的ではないが、イットリウム(Y)及び3価のランタニド元素、例えば、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)及びこれらの任意の混合物又は化合物が例示される。
【0040】
陰極又はイオン輸送膜の用途においては、イオン伝導度の他に電子伝導度も要求される。この場合、Bカチオンは第1遷移元素列から選択される。但し、チタンとその混合物又は化合物は除外される。特定の実施態様においては、Bカチオンはマンガン、鉄、コバルト、ニッケル又はこれらの任意の混合物若しくは化合物である。別の実施態様においては、Aはバリウム(Ba)を示し、A’はイットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)サマリウム(Sm)及びこれらの任意の混合物若しくは化合物を示し、Bは鉄(Fe)、コバルト(Co)又はこれらの任意の混合物若しくは化合物を示す。一般式(I)で表される具体的な化合物としては、PrBaCo5.5+x、PrBaFe5.5+x、NdBaCo5.5+x、及びNdBaFe5.5+x が例示される。
【0041】
電子伝導性は電解質の用途に対しては有害である。この場合には、一般式(II)(式中、B’は非遷移金属又はチタンを示す)で表される化合物が組成物中に配合される。特定の実施態様においては、B’はマンガン(Mg)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、ゲルマニウム又はこれらの任意の混合物若しくは組合せを示す。
【0042】
合成及び加工(processing)
本発明に係る化合物は、クエン酸塩前駆体法により、多結晶形態で合成することができる。得られる粉末を第1加圧処理に付すことによって直径が1インチのダイ(die)へ圧縮成型し、次いで該ダイを冷間均衡加圧処理(CIP)に付す。得られる未焼結のディスク(disk)を空気中での焼結処理に付した後、窒素雰囲気中でゆっくりと冷却させる。この合成法の別の変形法(例えば、固相反応法、噴霧熱分解法、凍結乾燥法及びゾル−ゲル法)を使用して本発明に係る化合物を合成してもよい。
【0043】
本発明に係る化合物は、噴霧法、塗装法又は適当なバインダー中に小粒子を含有させたスクリーン印刷用インキを用いる方法によって、多孔性の薄膜又は厚膜に加工することができる。あるいは、物理蒸着法(パルスレーザー沈着法、スパッタリング法を含む)、化学蒸着法、光併用化学蒸着法、エアゾール併用化学蒸着法又は原子層沈着法を使用することによって、電解質支持体上に緻密性又は多孔性のフィルムを形成させてもよく、あるいは、イオン輸送膜用の多孔性支持体上に緻密性フィルムを形成させてもよい。
【実施例】
【0044】
以下に説明する実施例及び分析的測定法は、本明細書の開示内容を補完すると共に本発明を例証するためのものであり、これらの実施例及び分析的測定法は本発明の範囲又は教示内容を制限するものではない。
【0045】
実施例1
この実施例においては、クエン酸塩前駆体法によるPrBaCo5+x及びNdBaCo5+xの合成について例証する。化学量論量のPr11(純度が99.99%のアルファ社製の製品)又はNd(NO、及び硝酸バリウムと硝酸コバルト(純度が99.99%のアルドリッチ社製の製品)を希硝酸に溶解させた。この溶液中へエチレングリコール(EMサイエンス社製の製品:純度>98%)及びクエン酸(純度が99.5%のアルドリッチ社製の製品)を添加した。この混合物を外気から保護し、150℃で撹拌した。この撹拌を反応溶液が発泡を開始するまでおこなった後、乾燥レジンを形成させた。該レジンを300℃まで加熱した後、さらに600℃での加熱処理を24時間続行することによって、残存有機成分を含有する乾燥発泡物を分解させた。最終的な混合物をペレット状に成形した後、1100℃での空気中における焼結処理に12時間付し、次いで窒素雰囲気中において室温まで冷却させた。最終生成物のX線回折図形により、単一相のPrBaCo5+x及びNdBaCo5+xが形成されたことを確認した。
【0046】
実施例2
この実施例においては、PrBaCo5.5+x及びNdBaCo5.5+xのDC伝導率の変動について説明する。全伝導率は4-プローブ法によって測定した(pO=0.01atm及び0.21atm ;25℃≦T℃≦812℃)。これらの測定は、2相ロックイン増幅器(スタンフォード・インスツルメンツ社製の「SR830」型増幅器)を使用する単一周波数(1kHz)におけるACでおこなった。全伝導率は、PrBaCo5.5+xの矩形棒(1.3×0.19×0.15cm)及びNdBaCo5.5+xの矩形棒(1.4×0.2×0.21cm)について測定した。Pr化合物及びNd化合物の周囲温度付近における伝導率はそれぞれ600Scm−1及び1000Scm−1に達した(図2参照)。温度が増加するに伴って、これらの伝導率は約150℃で低下し始めた。この現象は、格子から酸素原子が失われてCo(IV)がCo(III)へ還元されたことに起因する。これらのデータは、酸素の消失が開始する温度がNd化合物の場合の方が幾分低いことを示す。このような低温での酸素消失の発生は、これらの相における酸素イオンの移動度が大きいことを示す。
【0047】
実施例3
この実施例においては、PrBaCo5.5+x及びNdBaCo5.5+xにおける酸素の輸送速度が大きいことを、約300℃〜約450℃の温度範囲内における電気伝導率緩和による拡散係数と表面交換係数を測定することによって示す。これらの測定は、2相ロックイン増幅器(スタンフォード・インスツルメンツ社製の「SR830」型増幅器)を使用する単一周波数(1kHz)におけるACでおこなった。これらの測定は、酸化と還元の両方に対する中断ガススイッチを用いておこない、該測定は各々のガススイッチと温度に関して2回おこなった。自己拡散係数と表面交換係数を図2及び図3に示す。このような低温におけるこれらの値は、他の材料の場合に比較して著しく高い値である。
【0048】
実施例4:PBCOの合成
この実施例においては、クエン酸塩前駆体法(L.W.タイ、P.A.レッシング、J. Mater. Res. 、第7巻、1992年、第511頁)によりPrBaCo5+x(PBCO)を合成した。化学量論量のPr11(純度が99.99%のアルファ社製の製品)及び硝酸バリウムと硝酸コバルト(純度が99.99%のアルドリッチ社製の製品)を希硝酸に溶解させた。この溶液中へエチレングリコール(EMサイエンス社製の製品:純度>98%)及びクエン酸(純度が99.5%のアルドリッチ社製の製品)を添加した。この混合物を外気から保護し、150℃で撹拌した。この撹拌を反応溶液が発泡を開始するまでおこなった後、乾燥レジンを形成させた。該レジンを300℃での焼成処理に24時間付した後、さらに600℃での加熱処理を24時間続行することによって、発泡物中に残存する有機成分を分解させた。最終的な混合物をダイ(直径:1インチ)中でペレット状に加圧成形した後、冷間均衡加圧処理(CIP)に付した。該ペレットを1100℃での空気中における焼結処理に12時間付し、次いで窒素雰囲気中においてゆっくりと冷却させた(2K/分)。アルキメデス法によって測定したバルク密度は理論値の90%であった。伝導率/ECR測定用の矩形棒(約2mm×2mm×10mm)を、IEDPに適した矩形プレート(4mm×4mm)と共にディスク状の該ペレットから切り取った。
【0049】
PBCOの特性決定に使用した実験方法
シンターク社製の「XDS 2000」(Cu Kα)を使用してX線粉体回折測定をおこなうことによって当該化合物の構造を確認し、粉体の回折図形をリートフェルト(Rietveld)改良法によって解析した。この場合、GSASプログラム(ラルソン、R.B.ファン・ドレーレ、ロス・アラモス・ラボラトリーRep. No.La−UR−86−748 1987)を使用した。走査速度は0.125°/分とし、走査角度の範囲は5°≦2θ≦90°とした。乾燥酸素の分圧雰囲気中での温度の関数としての平衡酸素の化学量論組成の熱重量分析を次の条件下でおこなった(TAインスツルメント社製の測定装置「2950」を使用した):0.01atm ≦pO≦0.21atm ;25℃≦T≦800℃。試料は、最初は800℃まで加熱して痕跡量の水又は表面上の炭酸塩を除去した後、1℃/分の冷却速度で25℃まで冷却し、次いで800℃まで再加熱した。ECR測定とIEDP測定を比較するために必要な熱力学的因子(G)は、次式(1)に従って、熱重量分析のデータから誘導した。
【数1】

【0050】
輸送測定(RCR及びIEDP)
全伝導率は、次の条件下における4−プローブ(probe)法によって測定した:pO2=0.01atm 及び0.21atm;、25℃≦T≦812℃。これらの測定は、2相ロックイン増幅器(スタンフォード・インスツルメンツ社製の「SR830」型増幅器)を使用する単一周波数(1kHz)におけるACでおこなった。データの収集と調整は「ラブビュウ(Labview)」プログラム(ナショナル・インスツルメンツ社製のプログラム)を用いておこなった。伝導率の過渡的値は種々の温度と種々の酸素分圧を変化させた条件下で2回測定した。これらの測定は酸化と還元の両方の過渡的応答(transient response)としておこなった。この過渡応答は、過渡応答中の化学的な酸素の化学量論組成の変化速度に対する表面の寄与(kchem)とバルクの寄与(Dchem)に関するデータをもたらす。この点に関しては次の文献を参照されたい:S.ワン、A.ベルマ、Y.L.ヤン、A.J.ヤコブソン、B.アベレス、Solid State Ionics、第140巻、2001年、第125頁。
【0051】
また、酸素の輸送速度は18OIEDPによって直接的に測定した。この点に関しては、例えば、次の文献を参照されたい:J.A.キルナー、B.C.H.ステーレL.イルコフ、Solid State Ionics、第12巻、1984年、第89頁;C.A.ミムズ、N.I.ジョース、P.A.W.ファン・デア・ハイデ、A.J.ヤコブソン、C.L.チェン、C.W.チュー、B.I.キム、S.S.ペリー、Electrochemical and Solid State Letters、第3巻、2000年、第59頁。矩形状の試料を支持石英棒上に載置させ、これを管状炉内に保持した石英製反応管内へ導入した後、反応管内を酸素流(0.2 atm)によるパージ(purge)処理に付した。温度はゆっくりと実験温度まで高め(<5℃/分)、この実験温度を少なくとも1時間維持した後、ガス雰囲気を急激に18(0.2 atm ;同位体存在量:99%)に変換させ、次いで支持棒と試料を反応管内から取り出すことによって試料を急冷させた。露出表面と浸出物の研磨断面の両方について、飛行の結像時間のSIMS(ToFSIMS)分析をおこなうことによって18Oの分布を測定した。SIMS分析中の分析チャンバー内の圧力は1×10−9mbar 未満に維持することによって背景ガスと酸素との交換を回避した。表面酸素の交換係数k及びバルク酸素の自己拡散係数Dの値は、シミュレートした分布を実験データに適合させることによって得た。IEDPとECRによって得られた輸送パラメーターの関連性は次式によって示される(式中、Gは前記の熱力学的因子を示す):
(k又はD)chem (ECR)/G=(k又はD)
【0052】
電極測定
セリア−ガドリニア(CGO)上のPBCO/CGO複合材電極の面積抵抗率は、対称電池を用いるACインピーダンス測定によって決定した。この測定は空気中において温度の関数としておこなった。測定にはサラトロン社製の1260型インピーダンス分析器を使用した。電気的接続は金製の格子とワイヤを用いておこなった。
【0053】
PBCOの特性決定の結果
X線回折
X線粉末回折法によれば、これらの化合物は単一相を示した。各々の粉末の回折パターンは斜方晶系の単位格子(空間群=Pmmm)に帰属され、該パターンは、GSASプログラムを用いるリーフェルト法によって修正された。図4は、回折データと共に、得られた一致パターンと差パターンを示す。PBCOに対して決定された単位格子パラメーター
a、b及びcはそれぞれ3.9084(1)Å、3.9053(1)Å及び7.6343(2)Åであり、これらの値は、空気中で冷却した材料に関する先行技術文献に記載されている値と一致し、また、xの値は約0.7である。この種の文献としては次の文献が例示される:P.S.アンダーソン、C.A.キルク、J.クヌードセン、I.M.リーネイ、A.R.ウェスト、Solid State Sciences 、第7巻、2005年、第1149頁;S.ストロイレ、A.ポドレスニャーク、J.メソット、M.メダルデ、K.コンダー、E.ポムヤクシナ、E.ミットベルク及びV.コズヘフミコフ、J. Phys.: Condens. matter 、第17巻、2005年、第3317頁;C.フロンテラ、A.キャネイロ、A.E.カリリョ、J.オロ−ソレ、J.L.ガルシア−ムニョス、Chem. Mater. 、第17巻、2005年、第5439頁。近正晶系対称性(a/b=1.0008)もこの化学量論組成に近い観測結果と一致する。このような観測結果を示す文献としては次のものが例示される:S.ストロイレ、A.ポドレスニャーク、J.メソット、M.メダルデ、K.コンダー、E.ポムヤクシナ、E.ミットベルク及びV.コズヘフミコフ、J. Phys.:Condens. matter 」、第17巻、2005年、第3317頁;C.フロンテラ、A.キャネイロ、A.E.カリリョ、J.オロ−ソレ、J.L.ガルシア−ムニョス、Chem. Mater. 、第17巻、2005年、第5439頁。
【0054】
熱重量分析
図5に示す熱重量分析のデータは、種々の酸素雰囲気中における温度の関数としての酸素の化学量論組成の平均値を示す。加熱時に得られたデータと冷却時に得られたデータは一致し、また、300℃よりも高温における化学量論組成の変化は可逆的である。
【0055】
ECR測定において採用した種々の温度における固体中の酸素濃度に対する酸素分圧の影響を図6に示す。図示するラインは、熱力学的因子Gの最良の平均値を示す。これらの値を以下の表2に示す。温度が高くなるに伴って、熱力学的因子はより小さくなる。図6に示すプロットは僅かの曲線性を示唆しているが、このことは、Gが酸素分圧によって変化することを示す。
【0056】
【表2】

【0057】
DC伝導率
矩形棒形態のPrBaCo5+x(1.3×0.19×0.15cm)の全伝導率を測定した。図7に示すように、周囲温度付近においては、伝導率は2000Scm−1に達する。温度が高くなるに伴って、伝導率は約150℃で低下し始めるが、これは、結晶格子からの酸素原子の消失とCo(IV)からCo(III)への還元に起因する。
【0058】
輸送パラメーター(ECR及びIEDP)
PrBaCo5+xの拡散係数と表面交換係数を図8に示す。図中のDchem とkchem の値はECR測定から直接的に得られた値である。アレニウス式の適用によって得られた活性化エネルギーは、Dchem 及びkchem に対してそれぞれ0.48eV及び0.67eVである。Gの値を用いてECRから誘導された酸素輸送パラメーターD及びkの値を図10及び図11に示す。図10及び図11には、IEDP測定から直接的に得られたD及びkの値も示す。
【0059】
図9は、ToFSIMSデータを示す。該データは、400℃で0.20気圧のO雰囲気(18O:99%)中に300秒間曝した研磨断面から得られたものである。二次電子及び18O分率[f18O=18O/(18O+16O)]のSIMS画像を図9A及び図9Bにそれぞれ示し、また、図9Cには、この領域から得られた18Oの深さ分布とその適合度(fit)を示す。
【0060】
研磨試料の全周の回りにおける再現性のある分布により(但し、ガスが表面方向へ横断する領域は、試験雰囲気中に曝している間は試料支持体によって遮断される)、均一な輸送特性が示された。この材料には数個の亀裂(図示せず)が観測されたが、これらの亀裂は試料の急冷中に形成されたものである。何故ならば、これらの亀裂の表面上では18O成分の摂動は観測されなかったからである。
【0061】
図10及び図11は、IEDPから誘導されたD値とk値をECR測定から得られた値及び関連する材料に関する先行文献に記載されている輸送パラメーターと比較するグラフをそれぞれ示す。2つの測定法から得られたD値は良好に一致する。これとは対照的に、IEDPから得られたk値とECRから得られたk値は実質的に相違する。表面活性化速度は、欠陥部位の表面密度や表面粗さのような重要なパラメーターに影響を及ぼす試料の調製法と前処理法の僅かな相違によって大きな影響を受け、また、k値が試料によって異なるということは、セラミック材料と薄膜材料に関する類似の研究における共通の特徴である。酸素の活性化速度に対する表面欠陥の中心的な役割は、輝コバルト鉱ペロブスカイト材料の高品質薄膜において明確に示されている。表面欠陥の役割は、これらのセラミック試料について測定されたkの値が、高品質のPrBaCo5.5+xの薄膜ついて測定された値よりも非常に大きいということによってさらに例証される。
【0062】
これらの不確定性にもかかわらず、これらの複合ペロブスカイト材料が酸素の活性化と移動度に対して異常に高い活性を示すということは明らかである。図10の実線は、異なる研究グループによるLaNiOに関するいくつかの測定値の平均値(例えば、J.A.キルナー及びC.K.M.ショウ、Solid State Ionics、第154−155巻、2002年、523頁;F,マウビー、J.M.バサット、E.ボーヘム、P.ドルドア、J.P.ロウピ、Solid State Ionicks, 、第158巻、2003年、第395頁;E.ベーム、J.M.バサット、M.C.スタイル、P.ドルドア、F.マウビー、J.C.グレニール、Solid State Sciences、第5巻、2003年、第973頁;J.M.バサット、P.オジール、A.ヴィレスザンネ、C.マリン、M.ポーチャード、Solid State Ionocs、第167巻、2004年、第341頁;G.キム、S.ワン、A.J.ヤコブソン、2006年、準備中)及びLa0.5Sr0.5MO3−x(式中、M=Fe、Co)(S.ワン、A.ヴェルマ、Y.L.ヤン、A.J.ヤコブソン、B.アベレス、「ソリッドステイトイオニックス」第140巻、2001年、第125頁;J.ヨー、A.ヴェルマ、S.ワン、A.J.ヤコブソン、J. Electrochem. Soc. 、第152巻、2005年、第A497頁)に関するECR測定の平均値を示す。
【0063】
図11においては、LaNiOに対するkに関して報告されている値には大きな変化があるので、ECRのデータのみを示した。複合ペロブスカイトGdBaCo5+xに関する最近の測定データの比較も有益である。本発明による活性化エネルギーの値はタスキンらによって報告されている値(0.7eV及び0.85eV;A.A.タスキン、A.N.ラブロブ、Y.アンドウ、Appl. Phys. Lett.、第86巻、2005年、091910)よりも低い値である。本発明による材料に対する前指数因子及びDchem とkchem の絶対値は、タスキンらによって報告されている値よりも非常に高い。例えば、350℃における本発明による材料に対するDchem 及びkchem の値はそれぞれ約10−5cm−1及び約10−3cms−1であり、これらの値は、GdBaCo5+xに関して報告されている値よりも2〜3桁大きい。本明細書に記載のD及びkの値は、他の研究者によって報告されている値と比較して著しく大きな値である。例えば、D(D)の値は、タスキンらにより報告されているデータから誘導される熱力学因子を適用することによって得ることができる。タスキンらによるGdBaCo5+x材料に対するGの400℃〜550℃における値(全酸素量に基づく値)は80〜100である。GdBaCo5+x材料に対するDの誘導された値は、本発明によるPBCOに対する値に比べて少なくとも10分の1小さい値である。
【0064】
材料間の比較は、構造的な相違、特に結晶化度、化学量論組成及び表面汚染度に起因して複雑である。例えば、単純なコバルタイト・ペロブスカイト酸化物の薄膜に関する研究においては、完全な規則度のより劣る材料は表面とバルクの輸送速度においてより高い値を示す(X.チェン、S.ワン、Y.L.ヤン、L.スミス、N.J.ウ、B.I.キム、S.S.ペリー、A.J.ヤコブソン、A.イグナチーフ、Solid State Ionics、第146/3−4巻、2002年、第405頁〜第413頁)。タスキンらによる研究はGdBaCo5+xの単結晶に関するのに対し、本発明による材料は多結晶性の緻密なセラミックスであるという事実は、本発明において観測された高い速度の主要な理由であると考えられる。最近、本発明者は、(100)SrTiO上に形成させた高品質のエピタキシャルPBCO薄膜に関する研究において、本願明細書に記載の値よりも著しく小さなk値を得た。この点に関しては、次の文献を参照されたい:G.キム、S.ワン、A.J.ヤコブソン、W.ドンナー、C.L.チェン、L.ライムス、P.ブロダーソン、C.A.ミムス、Appl. Phys. Lett. 、第88巻、2006年、第024103頁。厚さが200nmの薄膜についての500℃におけるkchem の測定値は5×10−7cms−1であり、この値は、本願明細書に記載のセラミック材料に対して得られた値よりも数百分の一小さい値である。これらの実験データは、この種の材料が、固体酸化物燃料電池、酸素透過膜及びセンサーの材料として理想的であるということを明確に証明するものである。
【0065】
さらに、迅速な酸素イオンの拡散と表面交換は、PBCOを含有する電極の面積抵抗率に反映される。図12に示すデータは、3つの別々の実験において得られたデータであって、CGO電解質上におけるPBCO/CGO複合電極の面積抵抗率を示す。600℃における測定値は僅かに0.15 ohm cmであり、この値は迅速な交換速度に対応する。
【0066】
燃料電池の実施例
提示された研究の特定の目的は陰極材料であって、700℃においてYSZと併用したとき、又は600℃においてGDC、LSGM又は酸化ビスマスに基づく電解質と併用したときに、0.7Vにおいて1.0W/cmの電極性能を示すという要求を満たす陰極材料を開発することである。この性能目標には、電池全体が約0.5Ωcmの面積抵抗率を示すということも含まれる。
【0067】
酸素不足の複合ペロブスカイトPrBaCo5.5+d(PBCO)についておこなった測定について説明する。PBCOの高い電子伝導度及び迅速な拡散速度と表面交換速度は、中間温度で使用される固体酸化物燃料電池(SOFC)における陰極材料としてPBCOが適していることを示す。このような適用例としては対称電池(symmetric cell)と完全電池(complete cell)が挙げられる(Ni/CGO/CGO/PBCO/CGO)。
【0068】
前置き
本発明による陰極材料は次の特性を有する:700℃においてYSZと併用したとき、又は600℃においてCGO、LSGM電解質と併用したとき、0.7Vにおいて1.0W/cmの性能を示す。この新規な陰極材料を合成してその特性を決定した。該陰極材料の速度パラメーターと共に、種々の電解質との熱的/化学的適合性並びに表面交換速度、拡散係数及び界面輸送値を測定した。
【0069】
要約
酸素不足の複合ペロブスカイトPrBaCo5.5+d(PBCO)の高い電子伝導度及び迅速な拡散速度と表面交換速度は、PBCOを、中間温度で使用される固体酸化物燃料電池における陰極材料として理想的なものにする。PBCO電極を具備する対称電池に関する材料試験測定をおこなったところ、600℃において低いASR値が得られた。また、完全電池及び電解質担持電池についても測定をおこなった。
【0070】
試料の調製
CGO(ガドリニウムをドープさせたセリア)粉末をダイ内で圧縮してペレット状に成形し、これを空気雰囲気中において1450℃で8時間の焼結処理に付した。CGO電解質ペレットの厚さは、SiCペーパーを用いる研磨処理によって0.8mmまで低減させた。PrBaCo5+x(PBCO)とCGO(50重量%)との50:50重量%混合物を陰極として使用し、Ni−CGO(30体積%)材料を陽極として使用した。PBCO−CGOペースト及びNiO−CGOペーストをそれぞれPBCO/CGO粉末混合物及びNiO/CGO粉末混合物へテルピネオールを添加することによって調製した。NiO−CGOペーストをCGO電解質上へ塗布し、該電解質を空気雰囲気下において1300℃で2時間の焼結処理に付した。テープキャスティング法(tape casting)によって調製した薄い未焼結のPBCO−CGOテープ(25mm)を、テルピネオールを用いてCGO電解質ペレットの他方の側面上へ張り付け、該積層体を空気雰囲気下において1100℃で30分間の焼結処理に付した。次いで、PBCO−CGOペーストを、焼結処理に付したPBCO−CGOテープの表面上へ塗布し、該積層体を空気雰囲気下において1100℃でさらに2時間の焼結処理に付すことによって陰極の厚さを増大させた。陰極と陽極の活性な電極の面積は1.27cmであった。2つの金製網片を捕電器として使用した。該補電器は、金ペーストと共に陰極と陽極を空気雰囲気下における700℃で30分間の焼結処理に付すことによって該電極の表面上へ結合させた。
【0071】
電気的測定
下記の構成を有する電解質担持固体酸化物燃料電池を、500℃〜700℃の温度範囲内において、25℃間隔の試験に供した:

97体積%H+3体積%HO;Ni−CGO陽極/CGO電解質/PBCO−CGO陰極;空気
【0072】
単一電池の陽極側は、ばねの荷重を伴う金製O−リングを用いてアルミニウム管上に密封状態で装着させた。一方、陰極は空気に曝した状態とした。試験に先だって、電池を800℃まで加熱して金製O−リングを変形させると共に、陽極上を流れる水素によってNiOをNiへ還元させた。陽極へ供給する水素の流速は150cc/分とした。電池の電流と電圧との関係(I−V)を示すプロットを、アルビン社製の「BT4+型」試験システムを用いて測定した。電池のオーム抵抗は、ケイスレイ社製の電源メーターを使用する電流断続測定法によって測定した。
【0073】
次に、本発明による燃料電池の一例を模式的に示す図13について説明する。一般的には、該電池100は、式(I)で表される化合物を少なくとも1種含む組成物を含有する陰極102及び常套の陽極104を具備し、これらの電極間には中間温度で使用される電解質106が介在する。電解質106は常套の電解質、又は式(II)で表される化合物を少なくとも1種含む組成物を含有することができる。陰極102は、酸素含有ガスを保有する酸素室108に隣接して配設される。酸素含有ガスとしては、特に限定的ではないが、空気、空気以外の窒素/酸素混合ガス、酸素/アルゴン混合ガス、及び酸素/ヘリウム混合ガス等が例示されるが、純粋な酸素ガスであってもよい。酸素含有ガスは陰極102の一方の表面と接触する。一方、陽極104は、水素含有ガスを保有する水素室114に隣接して配設されるので、陽極104の一方の表面は水素含有ガスと接触する。水素含有ガスとしては、特に限定的ではないが、純粋な水素ガス、水素/ヘリウム混合ガス、水素とその他の不活性ガスとの混合物等が例示される。酸素含有ガスと水素含有ガスは水蒸気を所望の濃度で含有していてもよい。
【0074】
一般に、燃料電池100は約400℃〜約800℃の中間温度において作動される。また、一般に、燃料電池100は大気圧下又は大気圧にほぼ等しい圧力下で作動されるが、該燃料電池が使用される用途に応じて、これよりも低圧又は高圧で作動させることができる。特定の用途においては、より高い圧力が採用されるが、別の用途においては、より低い圧力が採用される。酸素室108においては、酸素含有ガスが矢印110(流入)と112(排出)の方向に移動する。同様に、水素室114においては、水素含有ガスが矢印116(流入)と118(流出)の方向に移動する。また、燃料電池100は抵抗型負荷120を具備しており、該抵抗型負荷は、電線122及び電線124を介して陰極102及び陽極104へそれぞれ接続される。抵抗型負荷120は、水素/酸素燃料電池によって給電可能ないずれの電気装置であってもよい。もちろん、流出する水素ガスは、水素と酸素との反応によって形成される水分を含有する。
【0075】
結果
上記の燃料電池の電圧−電流特性を図14に示す。CGOに対して期待されたように、開放電圧(OCV)(図15)は0.87V/700℃〜1.04V/500℃であり、該電圧はネルンスト電位よりも低い。これらのOCVの値は、セリアに基づく電解質を用いて一般的に測定される値と比較しうるものである。低下したOCVは、還元性雰囲気下において温度が高くなるに伴って全伝導率に対する電子伝導率の寄与率が高くなったことに起因する。
【0076】
500℃〜700℃における電流密度の関数としての出力密度を図16に示す。最大出力密度は9.6mW/cm/500℃〜69.4mW/cm/700℃である。この電池を用いて達成しうる出力密度は主として電解質の抵抗によって制限される。電解質は0.8mmの厚さを有しており、500℃よりも高温における電池の全抵抗の内の主要な部分に寄与する。電池の全オーム抵抗は、電流断続法によって測定された。得られた結果を、文献に記載されたデータを用いて計算されたCGOの抵抗と共に図17に示す。
【0077】
この電池の700℃におけるオーム抵抗は、電解質のオーム抵抗と実質上一致する。600℃における両者の差は小さいが(0.27ohm)、500℃になると、両者の差は大きくなる(5.4ohm)。この実験データは、特定の電極の寄与率を分離させるものではない。それにもかかわらず、600℃におけるデータは低い電極抵抗を示す。
【0078】
陰極材料としてのPBCOの性能に関する最初の試験は、完全電池においておこなった。0.8mmの厚いCGO電解質上に複合電極PBCO/CGOを担持させた。予想されたように、得られた結果は電解質抵抗の点で優れたものであった。600℃における他の成分のオーム抵抗は僅かに約0.27ohm であった。
【0079】
次に、本発明による酸素分離装置を図18のブロック線図に基づいて説明する。一般に、酸素分離装置200は常套の陽極202と常套の陰極204を具備し、両者の間には酸素拡散固相膜206が介在する。該膜206は、式(I)で表される化合物を少なくとも1種含むと共に、所望により二次的成分、例えば、GCO(ガリウムをドープした酸化セリウム)又は作動の開始時(作動温度への加熱時)と停止時(周囲温度への冷却時)において該膜206を安定化させるための不活性フィラー等を含む組成物を含有する。不活性フィラーは、式(I)で表される化合物の熱膨張係数を補償するために適合する。陽極202は、酸素含有ガスを保有する第1ガス室208と隣接する。酸素含有ガスとしては、特に限定的ではないが、空気、空気以外の窒素/酸素混合ガス、酸素/アルゴン混合ガス、酸素/ヘリウム混合ガス、又は精製酸素ガスの回収が望まれる煙道ガス等が例示される。酸素含有ガスは水蒸気を所望濃度で含有することができる。
【0080】
一般に、酸素含有ガスは、約400℃〜約800℃において加圧状態にある。一般に、加圧状態は約1気圧〜20気圧である。特定の実施態様においては、加圧状態は約5〜15気圧である。別の実施態様においては、加圧状態は約7.5〜12.5気圧である。陰極204は精製酸素受容室210に隣接する。該精製酸素受容室210は大気圧に近い圧力、周囲圧又は大気圧よりも幾分低い圧力に維持され、これによって該膜を異なって横断する圧力を高める。室208は、精製された酸素を該室から矢印の方向へ流出させ、一方、室210は、空気を矢印の方向から該室内へ流入させると共に、空気を該室内から矢印の方向へ流出させる。
【0081】
本明細書において引用した全ての文献は本明細書の一部を成すものである。以上の説明においては、本発明を好ましい実施態様に基づいて開示したが、該開示内容に接する当業者であれば、上記の本願発明及び特許請求の範囲によって規定される発明の範囲及び技術的思想を逸脱することなく、これらの開示内容を適宜改変及び修正してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1Aは、式(I)(式中、p=q=1であり、r=0である)で表される化合物の構造の正面図であり、図1Bは、図1Aに示す構造の斜視図であり、図1Cは、式(I)(式中、p=q=rである)で表される化合物の構造の正面図であり、図1Dは、式(I)(式中、p=2、q=1であり、r=0である)で表される化合物の構造の正面図である。
【図2】図2は、PrBaCo5.5+x及びNdBaCo5.5+xのDC伝導率を示すグラフである。
【図3】図3は、PrBaCo5.5+x及びNdBaCo5.5+xに対する酸素の拡散係数と表面交換係数を示すグラフである。
【図4】図4は、リートフェルト精製処理に付したPrBaCo5+xのX線回折図形を示す。
【図5】図5は、PrBaCo5+xの熱重量分析のデータに関するグラフであって、図示する酸素分圧における温度の関数としての酸素の化学量論組成を示す。
【図6】図6は、種々の温度におけるPBCO中の酸素原子濃度(c)と酸素分圧との関係を示すグラフである。
【図7】図7は、PrBaCo5.5+xの全伝導率と温度との関係を示すグラフである。
【図8】図8は、ECRによって測定したPrBaCo5+xのDchem 及びkchem と温度との関係を示すグラフである。
【図9】図9A〜図9Cは、0.2atmの18(99%)雰囲気中に400℃で5分間曝したPrBaCo5+xについてのIEDPの結果を示すものであって、図9Aのパネルaの右側はPrBaCo5.5+x領域の二次電子画像を示し、左側はエポキシのマトリックスの二次電子が画像を示し、図9Bのパネルbは、パネルaの場合と同じ領域における18Oのフラクション(f18O)のSIMS画像を示し、図9Cは、パネルbの画像から誘導される18Oの分布を示す。
【図10】図10は、セラミック試料についてECRによって測定されたDの値を比較したグラフを示す。
【図11】図11は、セラミック試料についてECRによって測定されたkの値を比較したグラフを示す。
【図12】図12は、対称的なCGO−PBCO/CGO/CGO−PBCO電池についての温度の関数としての面積抵抗率を示すグラフである。
【図13】図13は、本発明による水素/酸素燃料電池の模式図である。
【図14】図14は、CGO電解質が支持された固体酸化物燃料電池(陰極:PBCO)のV−I特性値を示すグラフである。
【図15】図15は、CGO/PBCO電解質が支持された固体酸化物燃料電池開放電圧を示すグラフである。
【図16】図16は、電流密度の関数としての電池の出力密度を示すグラフである。
【図17】図17は、電流断続法によって測定されたオーム抵抗及び電解質の計算された理論的抵抗を比較したグラフである。
【図18】図18は、本発明による酸素分離装置のブロック線図である。
【符号の説明】
【0083】
100 燃料電池
102 陰極
104 陽極
108 酸素室
114 水素室
120 抵抗型負荷
122 電線
124 電線
200 酸素分離装置
202 陽極
204 陰極
206 酸素拡散固相膜
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I)で表される化合物を少なくとも1種含有する組成物:
(ABO(A’BO2+x(A’O2+x (I)
(式中、p、q及びrは整数を示し、xは実数を示し、Aは2価金属又は2価金属の混合物を示し、A’は3価金属又は3価金属の混合物を示し、Bは遷移金属又は遷移金属の混合物を示し、3種の構成単位ABO、A’BO2+x及びA’O2+xは、p≧q及びq≧rという条件に従う異なる様式によって結合される)。
【請求項2】
AがBa、Sr、Pb及びこれらの任意の混合物又は化合物から成る群から選択され、A’がY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びこれらの任意の混合物又は化合物から成る群から選択され、Bが第1遷移元素(但し、スカンジウム、チタン、亜鉛及びこれらの任意の混合物又は化合物を除く)から選択される請求項1記載の組成物。
【請求項3】
Bがマンガン、鉄、コバルト、ニッケル及びこれらの任意の混合物又は化合物から選択される請求項1記載の組成物。
【請求項4】
Bが鉄、コバルト及びこれらの任意の混合物又は化合物から選択される請求項1記載の組成物。
【請求項5】
Bが鉄である請求項1記載の組成物。
【請求項6】
Bがコバルトである請求項1記載の組成物。
【請求項7】
pが1〜4の範囲の数を示す請求項1記載の組成物。
【請求項8】
pが4のときに、qが1〜4の範囲の数を示すと共にrが0〜4の範囲の数を示し、p≧q、q≧r及びp≧rという条件を満たす請求項7記載の組成物。
【請求項9】
p>q、q>r及びp>rという条件を満たす請求項7記載の組成物。
【請求項10】
xが0.0<x<1.0又は0.0>x<1.0という条件を満たす実数を示す請求項1記載の組成物。
【請求項11】
AがBaを示し、A’がY、La、Pr、Nd、及びこれらの任意の混合物又は組合せから成る群から選択され、BがFe、Co及びこれらの任意の混合物又は化合物から選択される請求項1記載の組成物。
【請求項12】
一般式(I)で表される化合物がPrBaCo5.5+x、PrBaFe5.5+x 、NdBaCo5.5+x、NdBaFe5.5+x 及びこれらの任意の混合物又は化合物から成る群から選択される請求項1記載の組成物。
【請求項13】
一般式(I)で表される化合物がPrBaCo5.5+x、PrBaFe5.5+x 、及びこれらの任意の混合物又は化合物から成る群から選択される請求項1記載の組成物。
【請求項14】
一般式(I)で表される化合物がNdBaCo5.5+x、NdBaFe5.5+x 、及びこれらの任意の混合物又は化合物から成る群から選択される請求項1記載の組成物。
【請求項15】
一般式(I)で表される化合物がPrBaCo5.5+xである請求項1記載の組成物。
【請求項16】
一般式(I)で表される化合物がNdBaCo5.5+xである請求項1記載の組成物。
【請求項17】
下記の一般式(II)で表される化合物を少なくとも1種含有する組成物:
(AB’O(A’B’O2+x(A’O2+x (II)
(式中、p、q及びrは整数を示し、xは実数を示し、Aは2価金属を示し、A’は3価金属を示し、B’はマグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)及びこれらの任意の混合物又は化合物から成る群から選択される元素を示し、3種の構成単位AB’O、A’B’O2+x及びA’O2+xは、p≧q及びq≧rという条件に従う異なる様式によって結合される)。
【請求項18】
AがBa、Sr、Pb及びこれらの任意の混合物又は化合物から成る群から選択され、A’がY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びこれらの任意の混合物又は化合物から成る群から選択される請求項17記載の組成物。
【請求項19】
B’が3価金属と4価金属との混合物を示し、xが0.0<x<1.0という条件を満たす実数を示す請求項17記載の組成物。
【請求項20】
pが1〜4の範囲の数を示す請求項17記載の組成物。
【請求項21】
pが4のときに、qが1〜4の範囲の数を示すと共にrが0〜4の範囲の数を示し、p≧q、q≧r及びp≧rという条件を満たす請求項28記載の組成物。
【請求項22】
p>q、q>r及びp>rという条件を満たす請求項28記載の組成物。
【請求項23】
i)水素含有ガスの供給源、
ii)酸素含有ガスの供給源。
iii)水素含有ガスの供給源へ接続された水素室を具有する燃料電池、
iv)水素室と接触する一方の面及び固体電解質の第1面と接触する他方の面を有する陽極、及び
v)固体電解質の第2面と接触する一方の面及び酸素含有ガスの供給源へ接続された酸素室と接触する他方の面を有する陰極
を具備する電力発生装置であって、該陰極が、下記の一般式(I)で表される化合物を少なくとも1種含有する組成物を含む該電力発生装置:
(ABO(A’BO2+x(A’O2+x (I)
(式中、p、q及びrは整数を示し、xは実数を示し、Aは2価金属又は2価金属の混合物を示し、A’は3価金属又は3価金属の混合物を示し、Bは遷移金属又は遷移金属の混合物を示し、3種の構成単位ABO、A’BO2+x及びA’O2+xは、p≧q及びq≧rという条件に従う異なる様式によって結合される)。
【請求項24】
電解質が、下記の一般式(II)で表される化合物を少なくとも1種含有する組成物を含有する請求項23記載の装置:
(AB’O(A’B’O2+x(A’O2+x (II)
(式中、p、q及びrは整数を示し、xは実数を示し、Aは2価金属を示し、A’は3価金属を示し、B’はマグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)及びこれらの任意の混合物又は化合物から成る群から選択される元素を示し、3種の構成単位AB’O、A’B’O2+x及びA’O2+xは、p≧q及びq≧rという条件に従う異なる様式によって結合されて式(II)で表される種々の化合物をもたらす)。
【請求項25】
i)酸素含有ガスの供給源、
ii)酸素含有ガスの供給源へ接続された粗製酸素室を具有する分離膜、
iii)粗製酸素室と接触する一方の面及び酸素拡散膜の第1面と接触する他方の面を有する陽極、及び
iv)酸素拡散膜の第2面と接触する一方の面及び精製酸素受容ユニットへ接続された精製酸素室と接触する他方の面を有する陰極
を具備する酸素精製装置であって、該酸素拡散膜が、下記の一般式(I)で表される化合物を少なくとも1種含有する組成物を含む該酸素精製装置:
(ABO(A’BO2+x(A’O2+x (I)
(式中、p、q及びrは整数を示し、xは実数を示し、Aは2価金属又は2価金属の混合物を示し、A’は3価金属又は3価金属の混合物を示し、Bは遷移金属又は遷移金属の混合物を示し、3種の構成単位ABO、A’BO2+x及びA’O2+xは、p≧q及びq≧rという条件に従う異なる様式によって結合される)。
【請求項26】
式(I)で表される化合物において、Bがマンガン、鉄、コバルト、ニッケル及びこれらの任意の混合物又は化合物から成る群から選択される請求項23、24又は25記載の装置。
【請求項27】
式(I)で表される化合物において、Bが鉄、コバルト及びこれらの任意の混合物又は化合物から成る群から選択される請求項23、24又は25記載の装置。
【請求項28】
式(I)で表される化合物において、Bが鉄を示す請求項23、24又は25記載の装置。
【請求項29】
式(I)で表される化合物において、Bがコバルトを示す請求項23、24又は25記載の装置。
【請求項30】
式(I)で表される化合物において、pが1〜4の範囲の数を示す請求項23、24又は25記載の装置。
【請求項31】
式(I)で表される化合物において、pが4のときに、qが1〜4の範囲の数を示すと共にrが0〜4の範囲の数を示し、p≧q、q≧r及びp≧rという条件を満たす請求項23、24又は25記載の装置。
【請求項32】
式(I)で表される化合物において、p>q、q>r及びp>rという条件を満たす請求項23、24又は25記載の装置。
【請求項33】
式(I)で表される化合物において、xが0.0<x<1.0という条件を満たす実数を示す請求項23、24又は25記載の装置。
【請求項34】
式(I)で表される化合物において、AがBaを示し、A’がY、La、Pr、Nd、Sm及びこれらの任意の混合物又は化合物から成る群から選択され、BがFe、Co及びこれらの任意の混合物又は化合物から選択される請求項23、24又は25記載の装置。
【請求項35】
式(I)で表される化合物がPrBaCo5.5+x、PrBaFe5.5+x 、NdBaCo5.5+x、NdBaFe5.5+x 及びこれらの任意の混合物又は化合物から成る群から選択される請求項23、24又は25記載の装置。
【請求項36】
式(I)で表される化合物がPrBaCo5.5+x、PrBaFe5.5+x 、及びこれらの任意の混合物又は化合物から成る群から選択される請求項23、24又は25記載の装置。
【請求項37】
式(I)で表される化合物がNdBaCo5.5+x、NdBaFe5.5+x 及びこれらの任意の混合物又は化合物から成る群から選択される請求項23、24又は25記載の装置。
【請求項38】
式(I)で表される化合物がPrBaCo5.5+xである請求項23、24又は25記載の装置。
【請求項39】
式(I)で表される化合物がNdBaCo5.5+xである請求項23、24又は25記載の装置。
【請求項40】
式(II)で表される化合物において、AがBa、Sr、Pb及びこれらの任意の混合物又は化合物から成る群から選択され、A’がY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びこれらの任意の混合物又は化合物から成る群から選択される請求項23、24又は25記載の装置。
【請求項41】
式(II)で表される化合物において、B’が3価金属と4価金属との混合物を示し、xが0.0<x<1.0という条件を満たす実数を示す請求項23、24又は25記載の装置。
【請求項42】
式(II)で表される化合物において、pが1〜4の範囲の数を示す請求項23、24又は25記載の装置。
【請求項43】
式(II)で表される化合物において、pが4のときに、qが1〜4の範囲の数を示すと共にrが0〜4の範囲の数を示し、p≧q、q≧r及びp≧rという条件を満たす請求項23、24又は25記載の装置。
【請求項44】
式(II)で表される化合物において、p>q、q>r及びp>rという条件を満たす請求項23、24又は25記載の装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2009−519191(P2009−519191A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540014(P2008−540014)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/031234
【国際公開番号】WO2008/048225
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(508043796)ザ・ユニバーシティー・オブ・ヒューストン・システム (1)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF HOUSTON SYSTEM
【Fターム(参考)】