説明

固体粒子の存在下で材料をエッチングする方法

本発明は、エッチングすべき少なくとも1つの材料(4)を含む構造体(1)をエッチングするための方法に関し、この方法は、エッチングすべき前記材料(4)と反応できる少なくとも1つの化学種を選択するステップと、前記化学種を放出できる少なくとも1つの可溶性化合物を選択するステップと、前記化合物および懸濁状態にある粒子または固体の粒(13)の粉体を含む溶液(11)を製造するステップと、前記溶液内に前記エッチングすべき材料を入れるステップと、前記化学種を発生し、これら化学種がエッチングすべき前記材料と反応し、それによって可溶性化合物または沈殿物を生成するように活性キャビテーションバブルを発生できる、少なくとも1つの周波数の高周波超音波を前記溶液内に発生するステップとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料をエッチングする技術分野に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、製造中に、ある材料を別のまたは他の材料に対して選択的にエッチングするための一般に多数のステップが設けられている、半導体部品を製造する技術分野に関し、また、適当な方法で形成された所定の数の層が既に設けられている直下の基板を再生するよう表面の層を除去したい、欠陥のある半導体基板を再生する技術分野に関し、更に、ある材料の層の表面状態を改善する技術分野に関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、基板上に堆積された層を別の層に対して選択的に除去したいときにおいて、除去すべき層の一部を、可能な場合にマスクした後に、この部分だけを除去したい場合、半導体部品を製造する技術分野では、主に2つの方法が存在する。
【0004】
第1群の方法は、1つの層をエッチングすべき構造体を、一般に塩化水素酸またはフッ化水素酸をベースとするエッチャント内に浸漬する「ウェット」エッチング方法から成る。ある層を別の層に対して、例えばシリコン酸化膜を窒化シリコン層に対して、シリコン酸化膜をシリコンに対して、または金属膜を絶縁層に対して、選択的にエッチングできるようにするためのいくつかの混合物がこれまで開発されている。
【0005】
この群では、米国特許第6,746,967号が、制御されたpHの酸化溶液内でニッケルを酸化するための方法について述べている。単に酸化を加速するために低周波の超音波が存在することによって、この溶液によってエッチングすべきニッケルに対して必要なエネルギーバリアを変えている。
【0006】
「ドライ」エッチングと称される第2の群の方法は、例えば塩素、フッ素、酸素などのラジカル種、すなわち活性ラジカルであるエッチャントを含むプラズマ内に、除去すべき層を支持する構造体を入れるステップを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この第2の群の方法は、特に異方性侵食を可能にし、かつ2つの材料の間のエッチングの選択性がより良好であるという事実から、第1の群の方法と比較して多くの利点を有する。しかしながらこの第2の群の方法は、複雑な機器が必要であり、かつエッチングすべき層がシリコン基板に支持されている場合、同時に1つまたは2つのシリコン基板しか処理できないという欠点をする。他方、第1の群の方法は、ある材料を別の材料に対して極めて選択的にエッチングしたいときに、実行が不可能であることが多いが、多数のウェーハを1つのボート内に設置し、次にこれら多数のウェーハをエッチング溶液内に浸漬するバッチ処理が可能である利点を持つ。
【0008】
当業者にはこれら2つの群の方法の種々の変形例が知られている。例えば「ウェット」エッチング方法に関して、処理すべき材料とエッチング溶液との間に電界を印加することによって、得られる結果を改善することが時々提案されている。
【0009】
表面をクリーニングし脱脂するのに、より一般的に使用される第3の群の方法は、クリーニング浴、例えばアルコール浴内に表面を浸漬するステップと、一般に20〜45kHzの高さの比較的低い音の周波数で液体媒体に音の振動を加えるステップとから成る。これら音の振動は、クリーニングすべき表面からの汚染粒子を剥離するのを補助する。
【0010】
更に、「ウェット」エッチング方法では、エッチングすべき材料の表面を覆うようエッチング液を循環させるのに通常ミキサーが使用され、混合を改善するために、更に可能な場合には1〜40kHzの間の低周波の音波を加える。例えば米国特許第4,544,066号では、表面の上の反応を均一にするように、低周波超音波によって溶液を撹拌している。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の主題は、エッチングすべき少なくとも1つの材料を含む構造体をエッチングするための方法である。
【0012】
エッチングすべき少なくとも1つの材料を含む構造体をエッチングするための方法であって、
エッチングすべき前記材料と反応できる少なくとも1つの化学種を選択するステップと、
前記材料とは反応しないが、前記化学種を解放できる少なくとも1つの可溶性化合物を選択するステップと、
前記化合物を含み、かつ懸濁状態にある固体の粒または粒子の粉体を含む溶液を製造するステップと、
前記溶液内にエッチングすべき前記材料を入れるステップと、
前記化学種を発生させ、これら化学種が可溶性化合物または沈殿物を発生しながらエッチングすべき材料と反応するように、前記固体の粒または粒子の前記粉体の存在下で、活性キャビテーションバブルを発生できる少なくとも1つの周波数を有する高周波超音波を前記溶液内で発生するステップとを備える、構造体をエッチングするための方法が提案される。
【0013】
本発明に関連し、「エッチングすべき材料と反応できる化学種」なる用語は、原子化学種および/または分子化学種および/またはイオン化学種および/またはラジカル化学種を意味するものと理解する。
【0014】
前記粒子のサイズは、活性キャビテーションバブルの平均サイズと同様でよい。
【0015】
前記固体粒子は、エッチングすべき前記材料の硬度よりも高い硬度を示してよい。
【0016】
前記固体粒子の少なくとも一部は、エッチングすべき前記材料の表面の欠陥のサイズに近いか、またはそれ未満のサイズを有してもよい。
【0017】
前記固体粒子の少なくとも一部は、エッチングすべき前記材料に生じた孔のサイズ未満のサイズを有してもよい。
【0018】
前記サイズの比は15分の1未満でよい。
【0019】
前記粒子のサイズは1ミクロン未満でよい。
【0020】
前記エッチングすべき前記材料の表面を溶液内に浸漬してもよい。
【0021】
前記高周波超音波の周波数を100kHzから3MHzの間としてよい。
【0022】
前記高周波超音波の周波数を200kHzから600kHzの間としてよい。
【0023】
エッチングすべき少なくとも1つの第1材料と、少なくとも1つの第2材料とを含む構造体を選択的にエッチングするために、前記選択された化学種および前記可溶性化合物は、前記第2材料と反応しない。
【0024】
エッチングすべき材料の全体または一部を除去し、エッチングすべき材料の表面の凹凸を低減するよう、またはエッチングすべき材料の厚さを薄くするように、前記高周波超音波を発生する時間の長さを決定してもよい。
【0025】
以下、添付図面に略図で示されたエッチング装置に関連して、非限定的な例として特定の実施形態を説明することにより、本発明についてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】エッチングすべき構造体が溶液より上方に置かれているエッチング装置の垂直横断面図を示す。
【図2】エッチングすべき構造体溶液内に浸漬されているエッチング装置の垂直横断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1にはエッチング装置が示されており、この装置は容器またはチャンバ10を備え、このチャンバ10は液体溶液11と、少なくとも一部が溶液11内に導入される高周波超音波を溶液11内に発生できる超音波発生器12、すなわち超音波の他のソースとを含む。
【0028】
溶液11は固体の粒または粒子13の粉体を懸濁液内に含む。
【0029】
エッチングすべき材料を含む構造体1は、少なくとも一部が溶液11内に浸漬されている。
【0030】
以下、エッチングすべき材料およびエッチングすべきでない他の材料に対する材料のエッチングに適す溶液を例として説明する。
【0031】
これら例では、記載上の理由から、「点」により表示できた反応可能な化学種には上付き文字「°」を付する。
【0032】
実施例1.
図には、ウェーハ状をした浸漬構造体1が示されており、このウェーハはシリコン基板2を含み、このシリコン基板は、厚み方向に不均等な状態を呈するよう、所定のパターン、例えばチェッカーパターンにエッチングされ、銅の層4でカバーされた絶縁層3でコーティングされている。通常、実際には酸化膜3と銅の層4との間の境界には、中間結合層、例えば窒化チタン(TiN)の層が堆積されている。
【0033】
大きさの順で例を挙げると、シリコンウェーハ1は、数百μmの厚さを有することができ、酸化膜2は25μm未満の厚さを有することができ、例えばそのより薄い部分に0.1μm未満の厚さを有することができ、銅の層は1μmの厚さを有することができる。
【0034】
ウェーハの右側部分に示された変形例では、直下の基板を再生するように銅の層3を完全に除去する試みを行うことができる。
【0035】
ウェーハの左側部分に示された別の変形例では、半導体デバイスを製造するための中間ステップを実行するために、マスク5によっては保護されていない層3の一部を局部的に除去する試みを行うことができる。
【0036】
溶液11内に浸漬された構造体1の銅の層4をエッチングするのに、次の選択を行うことが可能である。
【0037】
銅またはシリコン、もしくはマスクをエッチングせず、化学種がシリコンと反応することなく、更にマスクを構成する材料と反応することなく、銅と反応できる化学種を放出できる分子を含む溶液11を選択してもよい。
【0038】
活性キャビテーションバブル、すなわち100kHzを超える周波数、例えば10kHz〜3MHzの周波数、好ましくは200kHz〜3MHzの間の周波数、より好ましくは200〜600kHzの高さの周波数を有する音波を発生できる高周波音波を選択してもよい。これら周波数のレンジ内では、活性キャビテーションバブルのサイズは、400kHzのオーダーの周波数に対して1μmのオーダーの値に達し、1MHzのオーダーの周波数に対しては0.1μmのオーダーの値に再び低下し得る。
【0039】
特定の例によれば、銅の層4を侵食するために1リットル当たり1モルのHClの溶液を選択してもよく、400kHzのオーダーの周波数において、300ワットのパワーで音波を発生する超音波発生器12を選択してもよい。
【0040】
これら条件下では、特により詳細にはウェーハ1の表面で、寿命が極めて短い活性キャビテーションバブルが発生し、これらバブルは、HClの分子からラジカルな化学種Cl°を形成させる。これらキャビテーションバブルでは、圧力が数大気圧のオーダーの値に達することができ、温度は数千度に接近し得る。発生した化学種Cl°は銅と反応し、CuClまたはCuClを発生させる。
【0041】
生じるエッチングは、活性化学種Cl°を形成する現象に極めて特有である。事実、同じ濃度を有するHCl溶液と接触する銅は反応しない。
【0042】
上記厚さにおいて、シリコン酸化膜3がエッチングされることなく、すなわち約1ナノメータよりも大きいエッチングを生じることなく、全体または局部的に金属銅の層4の完全な除去が得られる。
【0043】
実施例2.
シリコン酸化膜4を支持するシリコンウェーハ2を含む構造体1を使って、このシリコン酸化膜を除去する試みを行うことができる。
【0044】
このウェーハ1を1リットル当たり1モルのNaOH(水酸化ナトリウム)の溶液11内に入れ、400kHzの高さの周波数および300ワットの大きさのパワーの音波をこの溶液内に発射する。
【0045】
この条件下では、前の実施例と同じように、顕著にかつより特別に、ウェーハ1の表面において、溶液内で生じた活性キャビテーションバブルがNaOHの分子から化学種OH°を形成をさせる。発生したラジカル化学種OH°が酸化シリコンと反応しHSiOを発生する。
【0046】
直下のシリコンをエッチングすることなくシリコン酸化膜を除去できる。
【0047】
実施例3.
実施例1の場合のように銅の層を支持するか、または実施例2のようにシリコン酸化膜を支持するシリコンウェーハを使用し、この層の表面の凹凸を減少させ試みを行うことができる。
【0048】
この目的のために、例えば実施例1または実施例2の条件をそれぞれ使用できるが、超音波発生器12の作用は、使用時間が例えば数秒だけに限られているので、凹凸のある領域またはアスペリティを構成する材料のみが少なくとも部分的にエッチングされる。
【0049】
活性キャビテーションバブルの密度は、これら凹凸のある領域またはアスペリティの端部で高くなるので、凹凸のある領域への侵食はより効果的となる。
【0050】
実施例4.
実施例1のように銅の層を有するか、または実施例2のようにシリコン酸化膜を有するウェーハ1を使用して、この層の厚さを薄くする試みを行うことができる。
【0051】
この目的のためには、例えば実施例1または実施例2の条件を使用することが可能であるが、層の残留厚みが所望する値に達するよう、高周波超音波発生器12の作動時間の長さを制限し、制御しなければならない。
【0052】
次に、前の実施例を検討しながら、次の項目に従い、構造体1の第2材料2に対する第1材料4の選択的エッチングのより詳細な説明を続ける。
【0053】
エッチングすべき第1材料と反応できるが、第2材料とは反応できない化学種を選択する。
【0054】
材料をエッチングしないが、選択された化学種を放出できる可溶性化合物を選択する。
【0055】
この化合物を含む溶液を調製し、この溶液内に構造体を浸漬した後に、活性キャビテーションバブルを発生できる周波数で、この溶液内に超音波を発生する。
【0056】
この結果、圧力が数大気圧の大きさの値に達し、温度が数千度に接近するような活性キャビテーションバブルが発生し、これらバブルが溶液内において特に処理すべき固体表面の近くで、選択された化学種を発生させ、この化学種は第1材料と選択的に反応し、第2材料をエッチングすることなく可溶性化合物または沈殿物を生じさせる。
【0057】
適当な化学種および適当な可溶性化合物を選択するために、第1材料と反応し易く、可溶性化合物、すなわち容易に粉々になる化合物または沈殿物を発生する化学種を決定するのに、当業者であれば、例えば欧州SGTEデータベースを含む「FactSage」ソフトウェアの使用法を知っているであろう。この場合、この化学種は第2材料とは反応しない。
【0058】
このSGTEデータベースは、当業者が利用できる唯一の熱力学的データベースではない。例えば「Thermo−Calc」ソフトウェアのような他のデータベースも存在する。この「Thermo−Calc」または「FactSage」ソフトウェアにアクセスするには次のウェブサイトhttp://222.thermocalc.com;www.factsage.com;www.gtt-technologies.comに接続するだけでよい。
【0059】
これらデータベースは、ギブスのエネルギーを最小にすることにより、所定のスタート混合物からの化学的反応によって形成される熱力学的に安定な化合物を示すことができるソフトウェアプログラムをサポートするのに役立つ。「熱力学的に安定」なる用語は、無限反応時間後に得られる生成物を意味するものと解される。例えば次のようなことを観察できる。
【0060】
・シリカ+固体の銅+1リットル当たり1モルに希釈されたHClのスタート混合物は変化しない(安定した状態のままである)。もし溶液内にCl°ラジカルまたはラジカル種が存在する計算式にこの混合物を加えると、固体の銅はCuClおよびCu2+に完全に変換されるが、シリカは変化しない。
【0061】
・シリコン+シリカおよび1リットル当たり1モルの水酸化ナトリウムのスタート混合物は、熱力学的に安定な混合物である(変化なし)。もし溶液内でラジカル化学種OH°またはNa°が形成されるべき計算式にこのスタート混合物を加えると、シリカは固体化合物NaSiOに変換されるが、シリコンは安定状態のままであることを熱力学的ソフトウェアは示す。
【0062】
当業者であれば、上記ソフトウェアを使用することにより、所定の溶液内でどんな化学種が形成され、どのようにテストするのか、溶液内ではどの相(化合物または純粋物)が安定となるか、化学反応によって何が変化するかを判断することができよう。
【0063】
ウェーハの第2材料をエッチングすることなく、第1材料をエッチングすることを目的とした化学種を選択するための次の例について注目できよう。
【0064】
SiGeをエッチングすることなくSiをエッチングするのに、化学種OH°を活性化してもよい。
【0065】
SiOをエッチングすることなくInSnOをエッチングするのに、化学種H°を活性化してもよい。
【0066】
SiOをエッチングすることなくCuをエッチングするのに、化学種Cl°を活性化してもよい。
【0067】
ポリマーをエッチングすることなくSiをエッチングするのに、化学種F°を活性化してもよい。
【0068】
AlNセラミックをエッチングすることなくAuをエッチングするのに、化学種Cl°を活性化してもよい。
【0069】
AlをエッチングすることなくAlをエッチングするのに、化学種OH°または化学種Cl°を活性化してもよい。
【0070】
AlをエッチングすることなくWをエッチングするのに、化学種OH°を活性化できる。
【0071】
SiOまたはTiNをエッチングすることなくCuをエッチングするのに、化学種Cl°を活性化してもよい。
【0072】
ポリマーまたはガラスをエッチングすることなくInSnOをエッチングするのに、化学種H°またはCl°を活性化してもよい。
【0073】
AlをエッチングすることなくSiOをエッチングするのに、化学種Na°またはF°を活性化してもよい。
【0074】
WをエッチングすることなくAlエッチングするのに、化学種H°またはF°を活性化してもよい。
【0075】
SiOをエッチングすることなくTiNをエッチングするのに、化学種Br°を活性化してもよい。
【0076】
SiOまたはポリマーをエッチングすることなくSiをエッチングするのに、化学種K°を活性化してもよい。
【0077】
SiOをエッチングすることなくTaNセラミックをエッチングするのに、化学種Cl°を活性化してもよい。
【0078】
また発生する活性キャビテーションバブルの作用によって所望するエッチングをもたらすように、特定の各ケースにおいて選択される溶液の濃度、超音波の最適周波数および最適パワーをどのように決定するかだけでなく、エッチングすべき第1材料に施される処理時間長さも当業者であれば簡単なテストで知ることができよう。
【0079】
実施方法が大幅に簡潔になることだけでなく、同じ溶液内で複数の構造体1のバッチを同時に処理できるということについても注目できよう。
【0080】
図2に示されている別の例では、除去すべき粒子4の堆積により汚れた電気接点2の端部のクリーニング、特に電子チップをテストするのに使用されるタングステンプローブに堆積されたアルミ粒子の化学的エッチングを実行、すなわち接点の汚れた端部を溶液11内に浸漬することが推奨される。この場合、アルミもタングステンもエッチングしないがCl°化学種を放出し、タングステンをエッチングすることなく、アルミをエッチングするようなNaCl溶液を選択してもよい。
【0081】
これまで述べたすべてのエッチング例では、次のような効果を生じるように固体粒子13の粉体を選択できる。
【0082】
溶液11内に懸濁状態にある固体粒子13は、活性キャビテーションバブルを形成するための種として働くことができる。したがって、特にエッチングすべき材料4の表面の近くにおいて、溶液11内で懸濁状態にある固体粒子13が存在することにより、高周波超音波の作用により形成される活性キャビテーションバブルの数を増やすことが可能となる。
【0083】
このような活性キャビテーションバブルの数の増加は、放出される化学種の数の増加を可能にし、これがエッチングすべき材料の化学的エッチングを加速する効果を有し得る。
【0084】
固体粒子13のサイズが、形成された活性キャビテーションバブルのサイズに近いかまたはこれより小さい限り、結果として増加が生じる。特に固体粒子13の少なくとも大部分のサイズは、0.5ミクロンの近くかそれ未満のサイズでよい。
【0085】
高周波超音波の作用により、領域11内で懸濁状態にある固体粒子13を撹拌することができ、これら固体粒子13は、特に活性キャビテーションバブルの破裂の作用および関連する水力学的作用による変位を生じる。従って、これら変位を起こし、かつエッチングすべき材料の表面の近くに位置するかまたはこの表面に接触する固体粒子が、この表面の機械的な微小摩滅を生じさせ得る。
【0086】
第1に、このような摩滅は、エッチングすべき材料の化学的エッチングの加速にも寄与し得る。
【0087】
第2に、このような摩滅は、この表面のアスペリティをエッチングすることにより、エッチングすべき材料の表面での磨き効果を生じさせ得る。このような摩滅は、エッチングすべき材料の表面内に生じた孔の壁面での磨き効果も生じさせ得る。
【0088】
かかる摩滅を有効にするためには、固体粒子13が損傷せず粒子の摩滅効果を生じさせるよう、固体粒子13は、エッチングすべき材料の硬度よりも高い硬度を呈してもよい。エッチングすべき材料4に応じ、選択は、シリコンカーバイド(SiC)、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)またはジルコニア(ZrO)の粒子に関係することが好ましい。ガラスをエッチングまたは磨く場合、シリコンカーバイド(SiC)が特に適している。
【0089】
更に、固体粒子11の少なくとも大部分のサイズは、表面アスペリティ間の中空部のサイズに近い値でよい。しかしながら、エッチングすべき材料の表面内に生じた孔の壁を磨くまたはクリーンにしようとする場合、固体粒子が孔内に容易に侵入するように、固体粒子の少なくとも大部分のサイズを孔のサイズの10分の1の近くまたはそれ未満とすることが好ましい。1ミクロンの直径を有する孔に対しては、1ミクロンの10分の1以下の固体粒子13が適する。
【0090】
いずれの場合にせよ、固体粒子13の少なくとも大部分は、エッチング作業中に溶液11内に懸濁状態になっていなければならず、沈殿によって分離してはならない。沈殿によるかかる分離を防止するために、適当な手段による溶液11の撹拌を追加してもよい。
【0091】
それに加えて、溶液11内の固体粒子13の密度を、所望する効果に応じて調節してもよい。特に重大な効果を得るには、2つのアスペリティ間に少なくとも15個から20個の粒子が存在するようにすることが賢明である。摩滅作用は(すべての方向に)等方的であるので、アスペリティのポイントは、より多くエッチングされ、表面欠陥を低減できることである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチングすべき少なくとも1つの材料(4)を含む構造体(1)をエッチングするための方法において、
エッチングすべき前記材料(4)と反応できる少なくとも1つの化学種を選択するステップと、
前記材料とは反応しないが、前記化学種を放出できる少なくとも1つの可溶性化合物を選択するステップと、
前記化合物を含み、かつ懸濁状態にある固体の粒または粒子(13)の粉体を含む溶液(11)を製造するステップと、
前記溶液内にエッチングすべき前記材料を入れるステップと、
前記化学種を発生し、これら化学種が可溶性化合物または沈殿物を発生しながら、エッチングすべき材料と反応するように固体の粒または粒子の前記粉体の存在下で、活性キャビテーションバブルを発生できる少なくとも1つの周波数を有する高周波超音波を前記溶液内で発生するステップとを備える、構造体(1)をエッチングするための方法。
【請求項2】
前記粒子のサイズは、活性キャビテーションバブルの平均サイズと同様である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記固体粒子は、エッチングすべき前記材料の硬度よりも高い硬度を示す、請求項1および2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記固体粒子の少なくとも一部は、エッチングすべき前記材料の表面の欠陥のサイズに近いかまたはそれ未満のサイズを有する、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記固体粒子の少なくとも一部は、エッチングすべき前記材料に生じた孔のサイズ未満のサイズを有する、請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記サイズの比は15分の1未満である、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記粒子のサイズは1ミクロン未満である、請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記エッチングすべき前記材料の表面を溶液内に浸漬する、請求項1〜7のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記高周波超音波の周波数は100kHzから3MHzの間にある、請求項1〜8のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記高周波超音波の周波数は200kHzから600kHzの間にある、請求項1〜9のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
エッチングすべき少なくとも1つの第1材料(4)と、少なくとも1つの第2材料(2)とを含む構造体(1)を選択的にエッチングするための請求項1〜10のうちのいずれか1項に記載の方法において、前記選択された化学種および前記可溶性化合物は前記第2材料(2)とは反応しない方法。
【請求項12】
エッチングすべき材料の全体または一部を除去し、エッチングすべき材料の表面の凹凸を低減するよう、またはエッチングすべき材料の厚さを薄くするように、前記高周波超音波を発生する時間の長さを決定する、請求項1〜11のうちのいずれか1項に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2012−527758(P2012−527758A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511320(P2012−511320)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050928
【国際公開番号】WO2010/133787
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(511243934)
【出願人】(511280009)
【Fターム(参考)】