説明

固体膜モジュール

【課題】ガス種含有ガス混合物からガス種を分離することができる膜ユニットから形成された固体膜モジュールを提供する。
【解決手段】緻密混合伝導性酸化物層を有する少なくとも1つの膜ユニットと、緻密層と、該緻密層に隣接する多孔質層及びスロット付き層のうち少なくとも一方とを含む少なくとも1つの導管又はマニホールドとを含む固体膜モジュール。この固体膜モジュールは、フィード流から任意のイオン化可能な成分を分離することを含む種々のプロセスを実施するのに使用でき、このようなイオン化可能な成分は、膜モジュールを構成する膜ユニットの緻密混合伝導性酸化物層を介して輸送することができる。構造を簡単にするため、膜ユニットは平面であることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス種含有ガス混合物からガス種を分離することができる膜ユニットから形成された固体膜モジュールに関する。さらに本発明は、酸素含有ガス混合物から酸素を分離することができる膜ユニットから形成された固体膜モジュールに関する。改善された空気圧の保全性を提供するモジュールは、高温で電子伝導性及び酸素イオン伝導性を示す混合伝導性金属酸化物を含む複数の平面固体膜ユニットから製作することができる。
【背景技術】
【0002】
酸素イオン伝導性材料から形成される固体膜は、酸素含有ガス混合物から酸素を分離することを含む種々の商業プロセスにおいて将来性を示し続けている。代表的な固体膜は、多成分金属酸化物から形成された膜であり、高温(例えば、700℃以上)で典型的に操作され、酸素イオンと電子の両方を伝導する。混合伝導性金属酸化物膜の相対する側で酸素分圧に差があり、そして操作条件が適切に制御されると、酸素イオンが固体膜の低酸素分圧側に移動するにつれて、酸素含有ガス混合物から酸素が分離され、一方で、電荷を保存するために酸素イオンの移動方向とは逆方向に電子束が発生し、膜の透過側に純粋な酸素が作り出される。
【0003】
あるいはまた、透過した酸素が炭化水素含有ガスと触媒的又は非触媒的に直接反応し、炭化水素酸化生成物を得ることができる。種々の酸素含有ガス、例えば、空気を使用することができ、操作条件及び触媒が使用される場合にはその触媒に応じて数多くの他の炭化水素酸化生成物が可能である。
【0004】
混合伝導性セラミック膜反応器システムを用いて天然ガスと空気から合成ガスを製造することに対する関心は顕著であり、ますます高まっている。この技術は、現在のところ開発段階にあり、技術が成熟するにつれて、今後商業的な応用が予想される。混合伝導性セラミック膜反応器システムは、合成ガスの成分CO、H2、CO2及びH2Oを形成するために部分酸化メタンによって合成ガスを生成する。このプロセスは、メタン含有供給ガスと空気供給ガスを膜反応器システムに導入し、膜の一方の表面をメタンと接触させ、そしてもう一方の表面を空気と接触させることにより実施される。酸素が膜を透過し、メタンが透過酸素と反応してメタン/合成ガス混合物が形成され、そしてこの混合物が追加の透過酸素と反応しながら反応器を通って移動するにつれて、メタンがさらに合成ガスに転化される。
【0005】
メタン/合成ガス流が高圧、典型的に250〜450psigである場合には、このプロセスは上流及び下流のプロセスと有利に統合することができる。加えて、空気が低圧、典型的に50psig未満である場合には、プロセスの経済的側面は最も好都合である。それゆえ、膜反応器システムの膜は、空気側とメタン/合成ガス側との有意な圧力差に耐えるよう設計されなければならない。膜を通過する酸素フラックスを大きくするには、膜の活性分離層を薄くするべきであり、典型的には200μm未満にするべきである。しかしながら、この厚さの自立膜は、200〜400psigの典型的な圧力差に耐えることが困難であり、それゆえ、薄い分離層は何らかの方法で構造的に支持されてもよい。
【0006】
複数の固体膜ユニットを一緒に接合して膜モジュールを形成することができ、分離すべき酸素含有ガス混合物のモジュールへの導入及びモジュールからの酸素生成物の回収を容易にするため、それぞれの膜ユニット間に通路が組み込まれる。
【0007】
従来技術のガス分離モジュール及び燃料セルは、膜セルを横切って存在する圧力差がゼロに近いような条件下で操作されるのが典型的である。空気圧の保全性に関連する問題は最小限に抑えられ、セル間において限られた範囲で少量の漏れが許容される。これらのモジュールは、それぞれの膜ユニット内部の流路を通って酸素が出られるような構成においてマニホールドにすることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
種々のプロセス及び反応を実施するのに好適で、改善された空気圧の及び構造的な保全性を示す固体膜モジュールが業界で求められている。さらには、このようなモジュールは、望ましくは容易に製作及びマニホールドにされ、空気分離プロセスを実施するのに必要でかつ部分酸化プロセスを実施するのに望ましい圧力差に耐えることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、フィード流から任意のイオン化可能な成分を分離することを含む種々のプロセスを実施するのに使用できる固体膜モジュールに関し、このようなイオン化可能な成分は、膜モジュールを構成する膜ユニットの緻密混合伝導性酸化物層を介して輸送することができる。例えば、イオン化可能な成分は空気中に存在する酸素であることができ、酸素イオンが膜ユニットの緻密混合伝導性酸化物層を通過する。イオン化された水素種を輸送することができる混合伝導性酸化物から各膜ユニットの緻密混合伝導性酸化物層を製作することにより、フィード流から水素を分離することもできる。
【0010】
本発明の固体膜モジュールを用いて、種々の反応、例えば、酸化カップリング、化学的脱酸素化、及び酸化的脱水素化などを実施することもできる。例えば、モジュールを利用して、メタン、天然ガス又は他の軽質炭化水素の酸化により合成ガスを製造するか又は飽和炭化水素化合物から不飽和化合物を製造することができる。
【0011】
本発明の各固体膜モジュールを構成する膜ユニットは、連続通し多孔性をもたない隣接する平面緻密混合伝導性酸化物層と接触している連続通し多孔性を有する流路のない多孔質支持体を有することができ、また、酸素輸送と関連する物質移動限界が劇的に低減され、酸素フラックスが実質的に改善され、モジュールが、ペンシルバニア州、アレンタウンのエア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ社に譲渡された1997年10月28日付け交付の米国特許第5,681,373号明細書、及び2003年3月21日付け出願の米国特許出願第10/394,620号明細書において記載されているように、実質的に改善された空気圧の及び構造的な保全性を示すよう配向された任意選択の多孔質層及び流路付き層を有することができる。緻密混合伝導性酸化物層は緻密であるが、このことは層が孔の網状構造をもたないことを意味し、分離選択性が許容できないレベルまで低減されないことを条件として少ない亀裂又は穴を限られた範囲で許容することができる。
【0012】
連続通し多孔性という用語は、流路のない多孔質支持体が当該多孔質支持体の一方の側から当該多孔質支持体の反対側へプロセスガスを移動させることができる三次元構造全体にわたる孔のマトリックスを有することを意味する。流路のないとは、多孔質支持体の一方の側から多孔質支持体の反対側へプロセスガスを移動させることができる形成された流路がないことを意味する。形成された流路とは、ランダムな多孔質構造とは対照的に、故意に成形された通路であって、予め配置され及び配列された構造を有する通路である。
【0013】
本発明の固体膜モジュールの1つの実施態様は、第1の側と第2の側を備えた緻密混合伝導性酸化物層を有する少なくとも1つの固体膜ユニットと、該固体膜ユニットの緻密混合伝導性酸化物層の第2の側と流体が通じる少なくとも1つの導管又はマニホールドであって、緻密層と、該緻密層に隣接する多孔質層及びスロット付き層のうち少なくとも一方とを含む少なくとも1つの導管又はマニホールドとを含む。構造を簡単にするため、膜ユニットは平面であることができる。導管及びマニホールドの組成及び構造は以下により詳細に記載される。
【0014】
本発明の固体膜モジュールの別の実施態様は、供給側と透過側を備えた緻密混合伝導性酸化物層を有する少なくとも1つの固体膜ユニットと、該固体膜ユニットの緻密混合伝導性酸化物層の透過側と流体が通じる少なくとも1つの導管又はマニホールドであって、緻密層と、該緻密層に隣接する多孔質層及びスロット付き層のうち少なくとも一方とを含む少なくとも1つの導管又はマニホールドとを含む。
【0015】
本発明の固体膜モジュールの別の実施態様は、供給側と透過側を備えた緻密混合伝導性酸化物層を有する少なくとも1つの固体膜ユニットと、該固体膜ユニットの緻密混合伝導性酸化物層の供給側と流体が通じる少なくとも1つの導管又はマニホールドであって、緻密層と、該緻密層に隣接する多孔質層及びスロット付き層のうち少なくとも一方とを含む少なくとも1つの導管又はマニホールドとを含む。
【0016】
本発明の固体膜モジュールの別の実施態様は、(a)供給側と透過側を備えた緻密混合伝導性酸化物層、及び該供給側と隣接する流路付き層を有する少なくとも1つの固体膜ユニットと、(b)該流路付き層と流体が通じる少なくとも1つの導管又はマニホールドであって、緻密層と、該緻密層に隣接する多孔質層及びスロット付き層のうち少なくとも一方とを含む少なくとも1つの導管又はマニホールドとを含む。
【0017】
多孔質層は連続通し多孔性を有する層である。
【0018】
スロット付き層は、例えば、リブ、流路、轍状の凹み、溝、トラフ、畝間、スロット、ピン、カラムなどの特徴を有する機械強度を提供する任意の開口構造として本明細書で規定される。スロット付き層は、ガス流を分配する一方で、操作中の圧力降下を最小限に抑え、それと同時に構造を介して機械負荷を分配及び伝達するよう設計された、分離された円筒形、円錐形又は方形のピンの網状構造であることができる。
【0019】
緻密混合伝導性酸化物層の供給側は、フィード流、即ち、膜を透過するガスを含有するガス混合物にさらされる側である。例えば、酸素を生成するモジュールの場合、供給側は空気にさらすことができる。
【0020】
緻密混合伝導性酸化物層の透過側は、緻密混合伝導性酸化物層を透過した透過ガスにさらされる側である。例えば、酸素を生成するモジュールの場合、透過側は生成した酸素にさらされる側である。
【0021】
導管は、スペーサー、エンドキャップ又はチューブであることができる。スペーサーは2つの膜ユニット間の導管である。エンドキャップは閉鎖を提供する一連の膜ユニットの端部における導管である。チューブは膜モジュールの入口又は出口の導管である。
【0022】
マニホールドは、流体又はガスを受容又は分配するための複数の開口を有するタイプの導管であり、当技術分野における通常の意味とする。
【0023】
混合伝導性金属酸化物材料は、一般的な化学量論的組成(Ln1-xxw(B1-yB'y)O3-δを有することができ、式中、Lnは、La、IUPAC周期表のDブロックランタニド、及びYから選択された1つ又は複数の元素を表し、Aは、Mg、Ca、Sr及びBaから選択された1つ又は複数の元素を表し、B及びB'は、それぞれSc、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Cr、Al、Zr、Mg及びGaから選択された1つ又は複数の元素を表し、0≦x≦1、0≦y≦1、及び0.95<w<1.05であり、δは化合物の電荷を中性にする数である。
【0024】
混合伝導性金属酸化物材料は、一般的な化学量論的組成(LaxCa1-xwFeO3-δを有することができ、式中、1.0>x>0.5、1.1≧w≧1.0であり、δは組成物の電荷を中性にする数である。あるいはまた、混合伝導性金属酸化物材料は、一般的な化学量論的組成(LaxSr1-xwCoO3-δを有することができ、式中、1.0>x>0.1、1.05≧w≧0.95であり、δは組成物の電荷を中性にする数である。より具体的には、混合伝導性金属酸化物材料は、一般的な化学量論的組成(La0.4Sr0.6wCoO3-δを有することができ、式中、1.05≧w≧0.95であり、δは組成物の電荷を中性にする数である。
【0025】
あるいはまた、膜ユニットの緻密混合伝導性酸化物層及び流路のない多孔質支持体を製作するのに好適な混合伝導性酸化物を、1つ又は複数のイオン伝導性組成物と1つ又は複数の電子伝導性組成物の混合物から形成して混合伝導性を有する複合体を形成することができ、このことは、複合体が操作条件下でイオンと電子を伝導することを意味する。
【0026】
各膜ユニットの流路のない多孔質支持体は、材料がプロセス操作条件において酸素イオン及び/又は電子を伝導しないという意味で不活性の材料、イオン伝導性材料、電子伝導性材料、又は膜モジュールの緻密混合伝導性酸化物層に関して同じか若しくは異なる組成の混合伝導性酸化物材料から製作することもできる。好ましくは、流路のない多孔質支持体は、膜ユニットの緻密混合伝導性酸化物層及び任意の追加の層と適合する熱及び化学膨張特性を有する混合伝導性酸化物材料から製作される。各層を構成する組成物は、プロセス操作条件下で互いに不利に化学反応しない材料から選択されるべきである。
【0027】
プロセス操作条件下で混合伝導性でない、即ち、高温で酸素イオンも電子も伝導しない流路のない多孔質支持体を製作するための代表的な材料は、アルミナ、セリア、シリカ、マグネシア、チタニア、高温酸素と適合する金属合金、金属酸化物で安定化されたジルコニア、並びにこれらの化合物及び混合物を含む。
【0028】
流路のない多孔質支持体の厚さ、各膜ユニットの多孔質支持体を構成する多孔質材料の多孔度及び平均孔直径を変化させて膜ユニットの十分な機械強度を確実することができる。流路のない多孔質支持体は、緻密混合伝導性酸化物層の厚さの5倍未満の直径をもつ孔を有することができる。各膜ユニットの緻密混合伝導性酸化物層は、0.01μm〜約500μmの厚さを典型的に有する。
【0029】
固体膜モジュールの1つ又は複数の膜ユニットは、緻密混合伝導性酸化物層の反対側に流路のない多孔質支持体に隣接して配置された多孔質層をさらに含むことができる。膜ユニットは、流路のない多孔質支持体の反対側に第1の多孔質層に隣接して配置された1つ又は複数の追加の多孔質層をさらに含むことができる。各多孔質層は、多孔質層が緻密混合伝導性酸化物層からの距離に応じて連続的により大きな平均孔半径を有するよう製作することができる。複数の多孔質層を使用することにより、固体膜モジュールの物質移動特性が改善されることを見出した。
【0030】
膜ユニットの多孔質層は、連続通し多孔性を有し、操作温度で酸素イオンも電子も伝導しない材料を意味する先に記載した不活性材料、イオン伝導性材料、電子伝導性材料、又は流路のない多孔質支持体及び緻密混合伝導性酸化物層に関して記載したような混合伝導性酸化物から製作することができる。
【0031】
各多孔質層の所望の厚さは、以下の考慮事項によって調節される。第一に、各多孔質層の多孔性及び平均孔半径は、十分な機械強度を維持しつつ酸素フラックスが妨げられないように調節されるべきである。第二に、各多孔質層内部の孔又は孔の網状構造は、酸素フラックスが妨げられないほど十分広くすべきであるが、製作及び操作の際に緻密混合伝導性酸化物層をたわませるほど広くすべきではない。第三に、各多孔質層は、化学反応性、付着性及び熱膨張の点で各隣接層と適合させ、各平面固体膜ユニットの隣接層の亀裂及び層間剥離と関連する問題を低減すべきである。
【0032】
別の代わりの実施態様においては、1つ又は複数の多孔質層を有する膜ユニットは、流路のない多孔質支持体の反対側に1つ又は複数の多孔質層に隣接して配置された流路付き層をさらに含むことができる。任意選択で、膜ユニットは、1つ又は複数の多孔質層の反対側に第1の流路付き層に隣接して配置された追加の流路付き層を有することができる。
【0033】
膜ユニットの流路付き層は、連続通し多孔性を有する材料、又は連続通し多孔性をもたない緻密材料から製作することができる。流路付き層は、材料がプロセス操作条件で酸素イオン若しくは電子を伝導しないという意味で不活性の材料、イオン伝導性材料、電子伝導性材料、又は膜モジュールの緻密混合伝導性酸化物層若しくは流路のない多孔質支持体に関して同じであるか若しくは異なる組成の混合伝導性酸化物材料から製作することができる。したがって、好適な材料は、緻密混合伝導性酸化物層又は流路のない多孔質支持体の製作に関して先に記載した材料である。
【0034】
流路付き層内部の流路は、種々の断面形状、例えば、方形、台形、半円形などの形状に製作することができる。流路の深さ及び間隔は様々であり、過度の実験を行うことなく所与の用途に関して最適な設計を判断することができる。流路付き層は、気相拡散抵抗を最小限に抑えるための手段によって部分的又は全体的に置き換えることができる。好適な手段は、ガス流を分配する一方で、操作中の圧力降下を最小限に抑え、構造を介して機械負荷を分配及び伝達するよう設計された、分離された円筒形、円錐形又は方形のピンの反復網状構造を含む。
【0035】
流路のない多孔質支持体の反対側に平面緻密混合伝導性酸化物層に隣接して又はプロセス流と流れが通じて配置された膜ユニットの表面に隣接して触媒層を配置することにより、膜ユニットの実施態様のいずれかをさらに改質することができる。本発明の固体膜モジュールの緻密混合伝導性酸化物層の列挙された表面上に堆積されるべき触媒は、酸素分子の酸素イオンへの解離を触媒する任意の材料を含む。好適な触媒は、II、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XV族、及び国際純正応用化学連合による元素周期表のFブロックランタニドから選択される金属及び金属酸化物を含む。好適な金属は、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、金、銀、ビスマス、バリウム、バナジウム、モリブデン、セリウム、プラセオジム、コバルト、ロジウム及びマンガンを含む。
【0036】
本発明の固体膜モジュールは、酸素含有ガス混合物から酸素を分離するために又は酸化可能な化合物を部分酸化するために好都合に使用することができ、各膜ユニットの緻密混合伝導性酸化物層は、酸化されるべき酸素含有ガス混合物と流れが通じて配置されるか又は部分酸化されるべき供給原料と流れが通じて配置され、合成ガス又は他の部分酸化生成物が生成される。
【0037】
各膜ユニットの緻密混合伝導性酸化物層の互いに対向する側に酸素分圧の差が形成されると、酸素イオンが緻密混合伝導性酸化物層を介して輸送され、酸素イオンが緻密混合伝導性酸化物層の反対側又は透過側で分子に再結合し、酸素分子がより低い酸素分圧を有する隣接する流路のない多孔質支持体に輸送される。多孔質支持体は、各膜ユニットの流路のない多孔質支持体から酸素を搬送してモジュールから出すための導管と流れが通じている。
【0038】
導管及びマニホールドは、ひとまとめにしてガス搬送手段と称される。ガス搬送手段は、固体膜モジュールから酸素又は他のプロセスガスを搬送するための種々の任意の構造であることができる。1つの実施態様においては、各膜ユニットの流路のない多孔質支持体は、その三次元全体にわたって孔の網状構造を有し、各固体膜ユニットから酸素又は他のプロセス流を搬送するためのガス搬送手段を、各膜ユニットの流路のない多孔質支持体との任意の接触点に配置できるようにする。
【0039】
例えば、膜モジュールから酸素を搬送するためのガス搬送手段は、1つ又は複数のマニホールドに成形することができる。これらのマニホールドは、酸素を捕集するために各膜ユニットの流路のない多孔質支持体と流れが通じて配置される。酸素は、緻密混合伝導性酸化物層を透過して流路のない多孔質支持体に進み、ここから捕集又は他のプロセス流において使用するために1つ又は複数のマニホールドに進む。あるいはまた、ガス搬送手段は、モジュールの任意の位置で固体膜モジュールの各膜ユニットを横切る1つ又は複数の導管を含む。但し、このような導管は各膜ユニットの同じ側、供給側又は透過側と流れが通じていることを条件とする。
【0040】
酸素分離の実施態様に関して記載される「横切る」という用語は、導管が透過ガス、例えば、酸素以外のガスを通さない構造を介して各膜ユニットと流れが通じて配置されることを意味する。導管は必ずしも各平面膜モジュールユニットを貫通しているわけではなく、単に各平面膜ユニットを接続しているに過ぎない。導管が各膜ユニットを貫通していない場合には、各膜ユニットはボイド空間を有し、各膜ユニットから分離された透過ガスは、このボイド空間からそれぞれの連続する膜ユニットを出て、導管を介して捕集することができる。
【0041】
材料の寸法は、熱膨張及び熱収縮により温度の変化に伴って変化することが知られている。熱によるこれらの寸法変化に加えて、混合伝導性金属酸化物材料は、金属酸化物の酸素化学量論量の関数である化学的な寸法変化を受ける。等温状態において、混合伝導性金属酸化物材料から作製された物品は、酸素の化学量論量が減少するにつれて寸法が増大する。等温状態において、酸素分圧が減少するにつれて酸素の化学量論量は減少する。平衡酸素化学量論量は温度が低下するとともに増大するので、混合伝導性金属酸化物から作製された物品は、温度が一定の酸素分圧で低下するにつれて熱的及び化学的寸法変化の両方により収縮する。逆に、混合伝導性金属酸化物から作製された物品は、温度が一定の酸素分圧で上昇するにつれて、熱的及び化学的寸法変化の両方により膨張する。このことは、S.B.Adlerによる「Chemical Expansivity of Electrochemical Ceramics」と題された論文(J.Am.Ceram.Soc.84(9)2117−19(2001))に記載されている。
【0042】
それゆえ、混合伝導性金属酸化物材料における平衡酸素化学量論量の変化から寸法の変化が生じる。一定の酸素分圧における温度の変化又は一定温度における酸素分圧の変化は、混合伝導性金属酸化物材料の平衡酸素化学量論量を変化させる。混合伝導性金属酸化物がイオン輸送膜として使用される場合には、例えば、膜を横切る酸素分圧差により、膜の2つの表面のそれぞれにおける平衡酸素化学量論量の差が生じ、酸素イオンが膜を介して拡散するための熱力学的推進力が作り出される。
【0043】
混合伝導性金属酸化物膜を用いたガス分離システムの始動又は停止の際、温度が上昇又は低下し、膜の一方又は両方の側の酸素分圧が変化することがある。混合伝導性材料の平衡酸素化学量論量は、温度及び酸素分圧の変化に応答して変化する。酸素アニオンは、混合伝導性材料に又は混合伝導性材料から拡散し、混合伝導性材料がその平衡酸素化学量論値に近づく。酸素の化学量論量及び温度が変化するにつれて膜の寸法が変化する。膜が膜表面の酸素分圧と化学平衡に達するのに必要とされる時間は、膜への又は膜からの酸素アニオンの拡散速度に依存している。平衡が生じるのに必要とされる時間は、膜モジュールの材料組成、温度及び特性寸法の関数である。
【0044】
異なる膜組成物は異なる酸素アニオン拡散係数を有し、より高い拡散係数を有する組成物は、他のすべての因子が等しいとして気相とより速く平衡する。所与の膜組成に関して、酸素アニオン拡散係数は温度とともに指数関数的に増大する。それゆえ、平衡時間は温度が上昇するとともに減少する。最後に、平衡時間は、大体、膜モジュール内の部分の特性寸法(例えば、長さ又は厚さ)の二乗で増大する。それゆえ、例えば、他のすべての因子が等しいとして、より薄い部分はより厚い部分よりも速く平衡する。その部分の厚さが増大して温度が低下するにつれ、その部分への又はその部分からの酸素アニオンの緩やかな拡散により、その部分の内部を気相と平衡状態に保つのが次第に困難になる。
【0045】
混合伝導性金属酸化物のセラミック部品における温度勾配によって、差熱膨張及び差熱収縮のために差ひずみが生じる場合があることが知られている。同様に、セラミック部品における酸素化学量論量の勾配によって、差化学膨張及び差化学収縮のために差ひずみが生じる場合がある。酸素化学量論量におけるこの勾配は、対応して大きな差化学膨張を生みだし、それゆえ部品の破損に至る大きな機械的応力を生みだすほど十分大きなものとなる場合があることが問題である。それゆえ、差化学膨張を回避するか又は少なくとも差化学膨張を最大許容値未満に制御することが望ましい。
【0046】
固体膜ユニットを接続する導管及びマニホールドは、膜ユニットと同じか又は同様の材料から一般に作製される。これらの導管及びマニホールドは、構造的な要件を満たすために膜よりも厚くすることがしばしば必要である。出願人らは、厚くすることで必要な構造的支持を提供できるが、厚さが増すと、熱的及び化学的な膨張歪みによる導管の破損しやすさが増大することを見出した。
【0047】
本発明のガス搬送手段は、緻密層と、多孔質層及びスロット付き層のうち少なくとも一方とを含む。本発明よりも前には、ガス搬送手段は、全体的に緻密層から構成され、ガス搬送手段の構造的な保全性及び他の必要な機能を提供していた。従来技術と比較して、本発明による緻密層の厚さは有意に低減され、多孔質層及びスロット付き層のうち少なくとも一方が追加されて必要な構造的保全性が提供される。このように、構造を熱的又は化学的な過渡に対してより耐性にし、機械的に破損しにくくしながら、構造に関する全体的な強度要件を満たすことができる。発明者らは、多孔質層及びスロット付き層は、等しい厚さの緻密層ほどの強度を提供することはできないものの、必要な構造的保全性を提供することができ、それらがガス搬送手段内部の化学的ストレスを低減し、それにより機械的破損の可能性が低減されるという追加の利点を提供することを見出した。
【0048】
膜モジュールから酸素を搬送するためのガス搬送手段の緻密層は、緻密混合伝導性酸化物層並びに多孔質支持体を形成するのに用いられるのと同じ材料から製作することができる。但し、選択された材料は、酸素以外のガスを通さないことを条件とするが、同様に酸素を通さなくてもよい。具体的には、酸素が透過種である場合、ガス搬送手段は、酸素含有ガス混合物中に含まれる酸素以外のガスの透過が不可能でなければならない。例えば、酸素含有ガス混合物から酸素を分離するのにモジュールが利用される場合、ガス搬送手段は、酸素含有ガス混合物中に含まれる酸素以外の成分と酸素生成物との間にバリアを形成しなければならない。緻密層は緻密であり、即ち、層は孔の網状構造をもたないが、生成物の純度が許容できないレベルまで低減されないことを条件として少ない亀裂又は穴を限られた範囲で許容することができる。
【0049】
膜モジュールから酸素を搬送するための本発明のガス搬送手段の多孔質層は、流路のない多孔質支持体に関して上述したのと同じ材料から製作することができる。
【0050】
膜モジュールから酸素を搬送するための本発明のガス搬送手段のスロット付き層は、連続通し多孔性を有する材料又は連続通し多孔性をもたない緻密材料から製作することができる。スロット付き層は、材料がプロセス操作条件で酸素イオン若しくは電子を伝導しないという意味で不活性の材料、イオン伝導性材料、電子伝導性材料、又は緻密混合伝導性酸化物層、膜モジュールの流路のない多孔質支持体若しくは導管の緻密層に関して同じであるか若しくは異なる組成の混合伝導性酸化物材料から製作することができる。したがって、好適な材料は、膜ユニットの緻密混合伝導性酸化物層、流路のない多孔質支持体及び流路付き層の製作に関して先に記載した材料である。
【0051】
ガス搬送手段は、緻密層及び1つ又は複数のスロット付き層を含むことができ、流路は互いに関して角度をつけて配向され、それにより格子型パターンが形成される。
【0052】
ガス搬送手段のスロット付き層内部の流路は、種々の断面形状、例えば、方形、台形、半円形などの形状に製作することができる。流路の深さ及び間隔は様々であり、過度の実験を行うことなく所与の用途に関して最適な設計を判断することができる。
【0053】
混合伝導性金属酸化物材料は、一般的な化学量論的組成(Ln1-xxw(B1-yB'y)O3-δを有することができ、式中、Lnは、La、IUPAC周期表のDブロックランタニド、及びYから選択された1つ又は複数の元素を表し、Aは、Mg、Ca、Sr及びBaから選択された1つ又は複数の元素を表し、B及びB'は、それぞれSc、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Cr、Al、Zr、Mg及びGaから選択された1つ又は複数の元素を表し、0≦x≦1、0≦y≦1、及び0.95≦w≦1.05であり、δは化合物の電荷を中性にする数である。より具体的には、混合伝導性金属酸化物材料は、一般的な化学量論的組成(LaxCa1-xwFeO3-δを有することができ、式中、1.0>x>0.5、1.1≧w≧1.0であり、δは組成物の電荷を中性にする数である。あるいはまた、混合伝導性金属酸化物材料は、一般的な化学量論的組成(LaxSr1-xwCoO3-δを有することができ、式中、1.0>x>0.1、1.05≧w≧0.95であり、δは組成物の電荷を中性にする数である。より具体的には、混合伝導性金属酸化物材料は、一般的な化学量論的組成(La0.4Sr0.6wCoO3-δを有することができ、式中、1.05≧w≧0.95であり、δは組成物の電荷を中性にする数である。
【0054】
本発明のガス搬送手段を含む固体モジュールは、酸素含有ガス混合物を膜ユニットの緻密混合伝導性酸化物層と接触させ、膜ユニットの供給側に過剰な酸素分圧を作り出すこと及び/又は膜ユニットの透過側に低減された酸素分圧を作り出すことにより各膜ユニットの緻密混合伝導性酸化物層の互いに対向する側に正の酸素分圧差を確立し;酸素含有ガス混合物を膜ユニットの緻密混合伝導性酸化物層と約300℃よりも高い温度で接触させて酸素含有ガス混合物を酸素透過流に分離することにより、酸素含有ガス混合物から酸素を回収するのに使用することができる。酸素透過流は、各膜ユニットの流路のない多孔質支持体を通過し、続いて酸素生成物を搬送するための導管によって捕集される。酸素が減損されたガス混合物はプロセスに再循環するか又は別のプロセスに移し、その発熱量を回収するか又は任意選択でさらに加熱して膨張器に通すことができる。
【0055】
酸素含有ガス混合物から分離された酸素は、捕集することができるか又は酸化可能な組成物とその場で反応させて部分酸化された生成物を形成することができる。好適な酸素含有ガス混合物は、空気、分子酸素を含有する任意のガス混合物、又は他の酸素源、例えば、N2O、NO、NO2、SO2、CO2などを含む。
【0056】
本発明のガス搬送手段を含む固体膜モジュールを用いて、種々の反応、例えば、酸化カップリング、化学的脱酸素化、及び酸化的脱水素化などを実施することもできる。例えば、モジュールを利用して、メタン、天然ガス又は他の軽質炭化水素の酸化により合成ガスを製造するか又は飽和炭化水素化合物から不飽和化合物を製造することができる。この実施態様によれば、膜ユニットの流路のない多孔質支持体に酸素含有ガス混合物が導入され、酸化されるべきガスは、膜モジュールの各膜ユニットの緻密混合伝導性酸化物層と接触して配置される。300℃を超える操作温度で、酸素は酸素イオンに還元され、酸素イオンは緻密混合伝導性酸化物層を横切って膜ユニットの外面に輸送される。酸化されるべきフィード流は、膜ユニットの緻密混合伝導性酸化物層の外面と流れが通じて配置され、酸素イオンが所望の供給原料と反応し、それにより供給原料を酸化して電子を放出し、電子は緻密混合伝導性酸化物層を横切って酸素イオン流とは逆方向に輸送される。
【0057】
本発明のガス搬送手段を含む固体膜モジュールは、酸素含有ガス混合物、例えば、粗アルゴンから微量の酸素を取り出すのに好都合に利用することができ、ガス混合物を各膜ユニットの緻密混合伝導性酸化物層と接触させ、還元ガス、例えば、水素又はメタンを流路のない多孔質支持体と接触させ、ガス混合物中に残留する酸素は膜を横切って導かれ、水素又はメタンと反応し、それにより、それぞれ水又は水と二酸化炭素に転化される。酸素が減損された酸素含有ガス混合物は、所定の圧力で好都合に捕集することができる。
【0058】
本発明のガス搬送手段を含む固体膜モジュールが上述の部分酸化反応を実施するのに利用される場合には、所望の反応を実施するのに適した触媒が、典型的には流路のない多孔質支持体の反対側に膜ユニットの緻密混合伝導性酸化物層に隣接して配置される。好適な反応体及び部分酸化触媒は当技術分野で周知である。
【0059】
本発明の詳細な説明及び添付の図面を参照することにより、出願人らの発明をより容易に理解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
図1は、複数の平面膜ユニットとガス搬送手段とを含む平面固体膜モジュールの実施態様の分解斜視図である。平面固体膜モジュール10は、通路25によって隔てられたガス分離膜ユニット20の配列15を有している。各膜ユニット20は、流路のない多孔質支持体22と、緻密混合伝導性酸化物層21とを含む。超薄型固体膜を製造するのに好適な技術は、ペンシルバニア州、アレンタウンのエア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ社に譲渡された1994年7月24日付け交付の米国特許第5,332,597号明細書において示されている。構造体35及び40は、膜ユニット20が受容される受容構造体55を有する所定の間隔を置いて配置された出口マニホールドを画定している。したがって、マニホールド35及び40は、膜ユニットの配列15内で各膜ユニット20の流路のない多孔質支持体22と流れが通じている。出口導管45及び50は、構造体35及び40と流れが通じており、平面固体膜モジュール10からプロセス流を運ぶよう適合している。この図面では、マニホールド35及び40は、緻密層41と多孔質層42とを含む。多孔質層42の代わりに又はそれに加えて、マニホールド35及び40は、スロット付き層(図示せず)を含むこともできる。出口導管45及び50は、緻密層46と多孔質層47とを含む。多孔質層47の代わりに又はそれに加えて、出口導管45及び50は、スロット付き層(図示せず)を含むこともできる。出口導管は、示されるとおり、多孔質層又はスロット付き層が緻密層の外側にあるように構成することができ、あるいはまた、多孔質層又はスロット付き層が緻密層の内側にあるように構成することもできる。別の変形態様は、多孔質層又はスロット付き層が内側と外側にあり、その間に緻密層がある構成である。
【0061】
図1による実施態様は、酸素含有ガス混合物を通路25を介して導入し、膜ユニット20のそれぞれの緻密混合伝導性層21と接触させることにより、酸素含有ガス混合物から酸素を分離するのに好都合に利用することができる。酸素含有ガス混合物から酸素を分離するための推進力は、各膜ユニット20の緻密混合伝導性酸化物層21の互いに対向する側で酸素分圧の差を作り出すことにより提供される。
【0062】
緻密混合伝導性酸化物層21の互いに対向する側の酸素分圧差は、約1気圧以上の圧力で酸素透過流を回収するのに十分な圧力まで通路25内の酸素含有ガス混合物を圧縮することによって作り出すことができる。空気の場合には、典型的な圧力は、約75psia〜約500psia又は約150〜約350pisaであり、最適な圧力は、酸素含有ガス混合物中の酸素量に応じて変化する。通常の圧縮器で必要な圧縮を達成することができる。圧縮を利用する代わりに又はそれと組み合わせて、構造体35及び40の入口45又は50で真空に引くことにより流路のない多孔質支持体22を部分排気し、酸素生成物を回収するのに十分な分圧差を作り出すことによって、緻密混合伝導性酸化物層21の互いに対向する側における正の酸素分圧差を達成することができる。
【0063】
酸素含有ガス混合物から分離された酸素は、好適な容器に貯蔵するか又は別のプロセスで利用することができる。酸素透過物は、純粋な酸素、又は少なくとも約90vol%のO2、約95vol%を超えるO2若しくは99vol%を超えるO2を一般に含有するガスとして規定される高純度酸素を典型的に含む。
【0064】
本発明のガス搬送手段を含む固体膜モジュールは、フィード流から任意のイオン化可能な成分を分離することを含む種々のプロセスを実施するのに使用でき、このようなイオン化可能な成分は、膜ユニットの緻密混合伝導性酸化物層を介して輸送することができる。例えば、イオン化可能な成分は空気中に存在する酸素であることができ、酸素イオンは膜ユニットの緻密混合伝導性酸化物層に通される。イオン化された水素種を輸送することができる混合伝導性酸化物から各膜の緻密混合伝導性酸化物層を製作することにより、フィード流から水素を分離することもできる。
【0065】
膜モジュール10は合成ガスを生成するために容易に利用することができる。固体膜モジュール10を300℃〜1200℃又は500℃〜900℃の温度に加熱する。上限の操作温度は、膜ユニットの組成物が焼結し始める温度によってのみ制限される。軽質炭化水素、例えば、メタン、天然ガス、エタン又は任意の利用可能な軽質炭化水素混合物を含む供給原料が通路25に導入され、入口として導管45又は50のいずれかを使用して構造体35又は構造体40に通すことにより、酸素含有ガス混合物が各膜ユニット20の流路のない多孔質支持体22に導入される。酸素含有ガス混合物は、各膜ユニット20の流路のない多孔質支持体22に流入し、酸素がイオン化され、各膜ユニット20の緻密混合伝導性酸化物層21を横切って通される。供給原料は、緻密層21の表面に形成された酸素イオンと接触し、合成ガスが形成される。
【0066】
合成ガスの反応を実施する際に利用されるべき供給原料は、源泉から所定の圧力で直接利用できるか又は産業的に生産できる天然ガスであることができる。産業的に生産される典型的な供給原料は、約70wt%のメタン、約10wt%のエタン、10〜15wt%の二酸化炭素を有し、残りがより少量のプロパン、ブタン及び窒素である組成物を含む。供給原料はまた、任意選択で任意の不活性な希釈剤、例えば、窒素、ヘリウムなどで希釈できるC1〜C6炭化水素の混合物を含むこともできる。緻密混合伝導性酸化物層上に堆積させることのできる好適な触媒は、当技術分野で周知である合成ガスを製造するための通常の触媒を含む。
【0067】
図1による膜モジュールはまた、不飽和炭化水素を生成するのに利用することもできる。このプロセスは、合成ガスの調製と類似の方法で行われ、膜モジュール10は300℃を超える温度又は500℃〜1000℃の温度に加熱される。こうして、供給原料及び酸素含有ガス混合物は、合成ガス反応の説明において論じられた供給原料及び酸素含有ガス混合物と同じ経路で膜モジュールに通される。
【0068】
供給原料は、脱水素化されやすくかつその飽和又は不飽和形態において操作温度で安定な任意の完全又は部分飽和炭化水素を含むことができる。代表的な供給原料は、1〜6個の炭素原子を含有する脂肪族炭化水素、5又は6個の炭素原子を含有する脂環式炭化水素、2〜6個の炭素原子の脂肪族部分を有する芳香族化合物を含む。好ましい供給原料は、エタン、プロパン、エチルベンゼン及びそれらを含有する混合物を含む。供給原料は、任意選択で、任意の不活性な希釈剤、例えば、窒素、ヘリウムなどで希釈することができる。流路のない多孔質支持体の反対側で各膜ユニットの緻密混合伝導性酸化物上に配置できる好適な触媒は、約90%の酸化鉄、4%の酸化クロム及び6%の炭酸カリウムを有するShell 105触媒を含む。
【0069】
図2は、固体膜モジュールの断面図を示し、本発明を実施するのに好適なガス搬送手段の3つの一般的な実施態様を示している。図面は一定の比率及び割合によるものではなく、むしろガス搬送手段は詳細を説明するために拡大されている。固体膜モジュール300は膜ユニット320の配列を含み、各膜ユニットは、連続通し多孔性を有する流路のない多孔質支持体322によって支持され、それと隣接している緻密混合伝導性酸化物層321を含む。図2はまた、流路のない多孔質支持体322内に任意選択の流路付き層323を示している。複数の膜ユニット320は、通路325によって隔てられている。ガス搬送手段335、345、355及び365は、各膜ユニット320の流路のない多孔質支持体322と流体が通じており、導管カラー(図示せず)によって膜配列に固定することができる。ガス搬送手段345及び355は、隣接する固体膜ユニット間の、スペーサーとも称される導管である。ガス搬送手段335及び365は、それぞれエンドキャップ及びチューブである。
【0070】
ガス搬送手段335、345、355及び365はそれぞれ、スロット付き層332によって支持される緻密層331を有する。スロット付き層332は、この構造が操作状態及び構造的な負荷の際にガス搬送手段335、345、355及び365の互いに対向する側に加えられた圧力差に耐えられるように緻密層331に追加の支持を提供する。さらに流路により、スロット付き層を通る濃度変化はほとんどない。結果として、緻密層331の厚さは従来技術の緻密層と比較して低減される。緻密層の厚さが低減されることにより、熱的又は化学的な過渡から生じる緻密層の化学的ストレスが低減される。任意の数のスロット付き層を使用することができ、これらの層は、ガス搬送手段335及び365に関して示されるように緻密層の供給側、ガス搬送手段355に関して示されるように緻密層の透過側、又はガス搬送手段345に関して示されるように緻密層の両側に配置することができる。ガス搬送手段は、隣接する膜ユニットを接続するか又はモジュールから透過ガスを搬出することにより、膜ユニットから透過ガスを搬送することができる。ガス搬送手段335、345、355及び365は、緻密混合伝導性酸化物層及び多孔質支持体と同じ組成から典型的に構成される。
【0071】
図3は、固体膜モジュールの断面図を示し、本発明を実施するのに好適なガス搬送手段の3つの追加の一般的な実施態様を示している。図面は一定の比率及び割合によるものではなく、むしろガス搬送手段は詳細を説明するために拡大されている。固体膜モジュール300は膜ユニット320の配列を含み、各膜ユニットは、連続通し多孔性を有する流路のない多孔質支持体322によって支持され、それと隣接している緻密混合伝導性酸化物層321を含む。図3はまた、流路のない多孔質支持体322内に任意選択の流路付き層323を示している。複数の膜ユニット320は、通路325によって隔てられている。ガス搬送手段335、345、355及び365は、各膜ユニット320の流路のない多孔質支持体322と流体が通じており、導管カラー(図示せず)によって膜配列に固定することができる。ガス搬送手段345及び355は、隣接する固体膜ユニット間の、スペーサーとも称される導管である。ガス搬送手段335及び365は、それぞれエンドキャップ及びチューブである。
【0072】
ガス搬送手段335、345及び355はそれぞれ、多孔質層333によって支持される緻密層331を有する。多孔質層333は、この構造が操作状態及び構造的な負荷の際にガス搬送手段335、345及び355の互いに対向する側に加えられた圧力差に耐えられるように緻密層331に追加の支持を提供する。さらに連続通し多孔性により、多孔質層を通る透過ガスの濃度変化はほとんどない。結果として、緻密層331の厚さは従来技術の緻密層と比較して低減される。緻密層の厚さが低減されることにより、熱的又は化学的な過渡から生じる緻密層の化学的ストレスが低減される。任意の数の多孔質層を使用することができ、これらの層は、ガス搬送手段335に関して示されるように緻密層の供給側、ガス搬送手段355に関して示されるように緻密層の透過側、又はガス搬送手段345に関して示されるように緻密層の両側に配置することができる。ガス搬送手段は、隣接する膜ユニットを接続するか又はモジュールから透過ガスを搬出することにより、膜ユニットから透過ガスを搬送することができる。ガス搬送手段335、345及び355は、緻密混合伝導性酸化物層及び多孔質支持体と同じ組成から典型的に構成される。
【0073】
図4は、固体膜モジュールの断面図を示し、本発明を実施するのに好適なガス搬送手段の3つの追加の一般的な実施態様を示している。図面は一定の比率及び割合によるものではなく、むしろガス搬送手段は詳細を説明するために拡大されている。固体膜モジュール300は膜ユニット320の配列を含み、各膜ユニットは、連続通し多孔性を有する流路のない多孔質支持体322によって支持され、それと隣接している緻密混合伝導性酸化物層321を含む。複数の膜ユニット320は、通路325によって隔てられている。ガス搬送手段335、345、355及び365は、各膜ユニット320の流路のない多孔質支持体322と流体が通じており、導管カラー(図示せず)によって膜配列に固定することができる。ガス搬送手段345及び355は、隣接する固体膜ユニット間の、スペーサーとも称される導管である。ガス搬送手段335及び365は、それぞれエンドキャップ及びチューブである。
【0074】
ガス搬送手段335、345及び355はそれぞれ、スロット付き層332及び多孔質層333によって支持される緻密層331を有する。多孔質層333及びスロット付き層332は、この構造が操作状態及び構造的な負荷の際にガス搬送手段335、345及び355の互いに対向する側に加えられた圧力差に耐えられるように緻密層331に追加の支持を提供する。さらに、多孔質層の連続通し多孔性及びスロット付き層の開口流路により、多孔質層及びスロット付き層を通る透過ガスの濃度変化はほとんどない。結果として、緻密層331の厚さは従来技術の緻密層と比較して低減される。緻密層の厚さが低減されることにより、熱的又は化学的な過渡から生じる緻密層の化学的ストレスが低減される。任意の数の多孔質層及びスロット付き層を使用することができ、多孔質層とスロット付き層は両方とも、ガス搬送手段335に関して示されるように緻密層の供給側に配置することができる。ガス搬送手段345に関して示されるように、多孔質層は緻密層の透過側に、スロット付き層は緻密層の供給側に配置することができる。ガス搬送手段355に関して示されるように、スロット付き層は緻密層の透過側に、多孔質層は緻密層の供給側に配置することができる。ガス搬送手段は、隣接する膜ユニットを接続するか又はモジュールから透過ガスを搬出することにより、膜ユニットから透過ガスを搬送することができる。ガス搬送手段335、345及び355は、緻密混合伝導性酸化物層及び多孔質支持体と同じ組成から典型的に構成される。
【0075】
この説明から明らかなのは、緻密層の供給側及び/又は透過側におけるスロット付き層332と多孔質層333の任意の組み合わせを使用できることである。ガス搬送手段は、固体膜ユニットのうちの少なくとも1つの流路のない多孔質支持体322と流体が通じており、ガス搬送手段は、緻密層と、緻密層に隣接する多孔質層及びスロット付き層のうち少なくとも一方とを含む。
【0076】
酸素含有ガス混合物を通路325を介して導入し、膜ユニット320のそれぞれの緻密混合伝導性層321と接触させることにより、酸素含有ガス混合物から酸素を分離するために、図2、3及び4による実施態様を好都合に利用することができる。酸素含有ガス混合物から酸素を分離するための推進力は、各膜ユニット320の緻密混合伝導性酸化物層321の互いに対向する側における酸素分圧に差を作り出すことにより提供される。緻密混合伝導性酸化物層321の互いに対向する側における酸素分圧差は、約1気圧以上の圧力で酸素透過流を回収するのに十分な圧力まで通路325内の酸素含有ガス混合物を圧縮することにより作り出すことができる。典型的な圧力は、約75psia〜約500psia又は約150psia〜約350pisaであり、最適な圧力は、酸素含有ガス混合物中の酸素量に応じて変化する。通常の圧縮器で必要な圧縮を達成することができる。圧縮の代わりに又はそれと組み合わせて、透過側で真空に引くことにより流路のない多孔質支持体322を部分排気し、酸素生成物を回収するのに十分な分圧差を作り出すことによって、緻密混合伝導性酸化物層321の互いに対向する側における正の酸素分圧差を達成することができる。
【0077】
酸素含有ガス混合物から分離された酸素は、好適な容器に貯蔵するか又は別のプロセスで利用することができる。酸素透過物は、純粋な酸素、又は少なくとも約90vol%のO2、約95vol%を超えるO2若しくは99vol%を超えるO2を一般に含有するガスとして規定される高純度酸素を典型的に含む。
【0078】
図2、3及び4の固体膜モジュールが合成ガスを生成するのに利用される場合には、膜モジュールを300℃〜1200℃又は500℃〜900℃の温度に加熱する。軽質炭化水素、例えば、メタン、天然ガス、エタン又は任意の利用可能な軽質炭化水素混合物を含む供給原料が通路325に導入され、入口として用いられるガス搬送手段365を介してガス搬送手段345及び355に通すことにより、酸素含有ガス混合物が各膜ユニット320の流路のない多孔質支持体322に導入される。酸素含有ガス混合物は、各膜ユニット320の流路のない多孔質支持体322に流入し、酸素がイオン化され、緻密混合伝導性酸化物層321を横切って通される。このプロセスにおいても酸素含有ガス混合物から酸素が分離される。しかしながら、緻密混合伝導性酸化物層の供給側と透過側が逆になる。供給原料は、緻密層321の表面に形成された酸素イオンと接触し、合成ガスが形成される。
【0079】
あるいはまた、膜モジュールは、2003年3月21日付け出願の米国特許出願第10/394,620号明細書(米国特許出願公開第2004/0186018号明細書)に記載されているように構成することもでき、この文献はその参照により全体として本願に含まれる。米国特許出願第10/394,620号明細書の図8A及び8Bに示されているガス搬送手段であるセラミックスペーサーを、それぞれが緻密層と、緻密層に隣接する多孔質層及びスロット付き層のうち少なくとも一方とを含むよう本発明により構成することができる。この幾何学的形状においては、固体膜ユニットの緻密層の供給側に流路付き層が配置され、透過側に流路のない多孔質支持体が配置される。したがって、ガス搬送手段は、固体膜ユニットの流路付き層と流体が通じている。同様に、米国特許出願第10/394,620号明細書のエンドキャップ及びチューブも、それぞれが緻密層と、緻密層に隣接する多孔質層及びスロット付き層のうち少なくとも一方とを含むよう本発明により構成することができる。
【0080】
透過側の流路のない多孔質支持体は、合成ガスの製造のための触媒を含むことができる。
【0081】
合成ガスの反応を実施する際に利用されるべき供給原料は、源泉から直接利用できるか又は産業的に生産できる天然ガスが好ましい。産業的に生産される典型的な供給原料は、約70wt%のメタン、約10wt%のエタン、10〜15wt%の二酸化炭素を有し、残りがより少量のプロパン、ブタン及び窒素である組成物を含む。供給原料はまた、任意選択で任意の不活性な希釈剤、例えば、窒素、ヘリウムなどで希釈できるC1〜C6炭化水素の混合物を含むこともできる。緻密混合伝導性酸化物層上に堆積させることのできる好適な触媒は、当技術分野で周知であるように合成ガスにおいて周知の通常の触媒を含む。
【0082】
図2、3及び4による膜モジュールはまた、不飽和炭化水素を生成するのに利用することもできる。このプロセスは、合成ガスの調製と類似の方法で行われ、膜モジュールは300℃を超える温度又は500℃〜1000℃の温度に加熱される。こうして、供給原料及び酸素含有ガス混合物は、合成ガス反応の説明において論じられた供給原料及び酸素含有ガス混合物と同じ経路で膜モジュールに通される。
【0083】
供給原料は、脱水素化されやすくかつその飽和又は不飽和形態において操作温度で安定な任意の完全又は部分飽和炭化水素を含むことができる。代表的な供給原料は、1〜6個の炭素原子を含有する脂肪族炭化水素、5又は6個の炭素原子を含有する脂環式炭化水素、2〜6個の炭素原子の脂肪族部分を有する芳香族化合物を含む。好ましい供給原料は、エタン、プロパン、エチルベンゼン及びそれらを含有する混合物を含む。供給原料は、任意選択で、任意の不活性な希釈剤、例えば、窒素、ヘリウムなどで希釈することができる。好適な触媒は、約90%の酸化鉄、4%の酸化クロム及び6%の炭酸カリウムを有するShell 105触媒を含む。
【0084】
膜モジュールを収容するための容器システムの例が、Steinらの2003年8月6日付け出願の米国特許出願第10/635,695号明細書(米国特許出願公開第2005/0031531号明細書)に記載されている。
【0085】
100μm〜約0.01μmの厚さを有する所望の多成分金属酸化物からなる緻密薄層を、列挙した多孔質層上に公知の技術によって堆積することができる。例えば、まず、多成分金属酸化物の比較的粗いサイズの粒子から多孔質体を形成することにより、膜複合体を製造することができる。次いで、同じ材料又は類似の適合性のある多成分金属酸化物のより微細な粒子のスラリーを多孔質材料上にコーティングして未加工状態に硬化し、次いで二層系を焼成して複合膜を形成することができる。
【0086】
この膜の隣接する多孔質層と緻密層は、少なくとも2つの異なる金属の酸化物又は少なくとも2つの異なる金属酸化物の混合物を含む1つ又は複数の多成分金属酸化物から形成することができ、多成分金属酸化物は高温で電子伝導性並びに酸素イオン伝導性を示す。本発明を実施するのに好適な多成分金属酸化物は「混合」伝導性酸化物と称される。なぜなら、このような多成分金属酸化物は、高温で電子並びに酸素イオンを伝導するからである。
【0087】
本発明を実施するのに好適な混合伝導性酸化物は、混合伝導性酸化物を構成する各金属酸化物の所望の化学量論比を混合及び焼成し、硝酸塩と酢酸塩を熱分解し、そしてクエン酸調製法を利用することを含む従来の方法により調製することができる。これらの方法のそれぞれが当技術分野で周知であり、本発明の混合伝導性酸化物を作製するのに適している。
【0088】
本発明の膜ユニットは、通常の化学気相成長法によって所望の多孔質基材上に所望の混合伝導性酸化物の緻密層を適用し、続いて焼結して所望の緻密層を得ることにより調製することができる。最適な緻密コーティングを得るために、バルクの平均孔半径と比較して、流路のない多孔質支持体表面のより小さな平均孔半径を使用することができる。このことは、孔半径及び多孔度などの特性が異なる2つ以上の多孔質層を使用することにより達成できる。
【0089】
本発明のガス搬送手段は幾つかの方法で製作することができる。
【0090】
緻密層に関して、材料が焼結後に緻密なり、例えば、5%未満の多孔度を有するように、膜モジュールと類似の膨張特性を有する材料の鋳造セラミックテープを使用することができる。
【0091】
多孔質層に関して、材料が焼結後に幾分多孔質になり、例えば、多孔度が10%〜60%になるように、粗い粒子サイズを有する同じ材料の鋳造セラミックテープと孔形成剤を使用することができる。
【0092】
膜モジュールと類似の膨張特性を有する材料の多孔質鋳造セラミックテープを採用し、少なくとも一方の表面に溶剤、例えばαテルピネオールを適用し、そして所望の内側厚さに達するまでテープがそれ自体の上に重なるように心棒にテープを巻き付けることにより、2つの多孔質層間にサンドイッチされた緻密層を作製することができる。次に、所望の緻密層の厚さに達するまで緻密テープを巻き付けることができる。続いて、所望の外側多孔質厚さに達するまで、緻密層の上面に多孔質テープを巻き付けることができる。その後、巻き付けられたテープアセンブリをバッグに入れ、層を一緒に静水圧プレス成形することができる。次いでこのアセンブリをバッグ及び心棒から取り出し、例えば、吊り下げ焼成によって焼結してセラミックチューブにする。
【0093】
あるいはまた、バッグにアセンブリを入れる工程及び静水圧プレス成形する工程の代わりに層をローラにより心棒と一緒に圧縮してプレスすることができる。
【0094】
ある長さの緻密テープを採用し、テープにスロットをカットしてテープが心棒に巻き付けられるとテープが格子状パターンを形成するようにし、所望の格子厚が得られるまでスロット付きテープを心棒に巻き付け、所望の緻密厚さが得られるまでスロットなしのテープを巻き付け、次いで所望の外側格子厚さが得られるまで再びスロット付きテープを巻き付けることにより、複数のスロット付き層の間にサンドイッチされた緻密層、即ち、格子パターンを作製することができる。望ましい場合には、テープが巻き付けプロセスにおいて継ぎ目をもたないように、テープの両端にはスロットがあるがテープの中央にはスロットがない単一のテープ長さを使用することができる。このアセンブリは、静水圧プレス成形するか又は層をローラにより心棒と一緒に圧縮してプレスすることができる。
【0095】
ガス搬送手段の端部にシールを形成しなければならないか否かに応じて、導管の内側又は外側にあるスロット付き層は、望ましい場合には導管の端部に作製することができる。
【0096】
特許請求の範囲に記載した本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、例示した実施態様の多くの変更を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】連続通し多孔性を有する流路のない多孔質支持体によって支持され、この支持体と隣接している緻密混合伝導性酸化物層から形成された複数の平面膜ユニットを含む固体膜モジュールの1つの実施態様の斜視図である。
【図2】スロット付き層を含むガス搬送手段の実施態様を示す固体膜モジュールの断面図である。
【図3】それぞれが多孔質層を含む3つのガス搬送手段の実施態様を示す固体膜モジュールの断面図である。
【図4】多孔質層とスロット付き層を含む3つのガス搬送手段の実施態様を示す固体膜モジュールの断面図である。
【符号の説明】
【0098】
10 平面固体膜モジュール
15 配列
20 ガス分離膜ユニット
21 緻密混合伝導性酸化物層
22 流路のない多孔質支持体
25 通路
35、40 マニホールド
41 緻密層
42 多孔質層
45、50 出口導管
46 緻密層
47 多孔質層
55 受容構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の側と第2の側を備えた緻密混合伝導性酸化物層を含む少なくとも1つの固体膜ユニットと;
該少なくとも1つの固体膜ユニットの緻密混合伝導性酸化物層の第2の側と流体が通じる少なくとも1つのガス搬送手段であって、緻密層と、該緻密層に隣接する多孔質層及びスロット付き層のうち少なくとも一方とを含む少なくとも1つのガス搬送手段と
を含む、ガス種含有ガス混合物からガス種を分離するためのモジュール。
【請求項2】
前記第1の側が供給側であり、前記第2の側が透過側である、請求項1に記載のモジュール。
【請求項3】
前記緻密混合伝導性酸化物層の透過側と隣接する連続通し多孔性を有する流路のない多孔質支持体をさらに含む、請求項2に記載のモジュール。
【請求項4】
前記少なくとも1つのガス搬送手段が、前記流路のない多孔質支持体と流体が通じている、請求項3に記載のモジュール。
【請求項5】
前記固体膜ユニットが平面である、請求項1に記載のモジュール。
【請求項6】
前記ガス種が酸素である、請求項1に記載のモジュール。
【請求項7】
前記ガス種含有ガス混合物が空気である、請求項6に記載のモジュール。
【請求項8】
前記少なくとも1つのガス搬送手段が、少なくとも2つのスロット付き層を含む、請求項1に記載のモジュール。
【請求項9】
前記第1の側が透過側であり、前記第2の側が供給側である、請求項1に記載のモジュール。
【請求項10】
前記緻密混合伝導性酸化物層の供給側と隣接する連続通し多孔性を有する流路のない多孔質支持体をさらに含む、請求項9に記載のモジュール。
【請求項11】
前記少なくとも1つのガス搬送手段が、前記流路のない多孔質支持体と流体が通じている、請求項10に記載のモジュール。
【請求項12】
前記緻密混合伝導性酸化物層の透過側と隣接する連続通し多孔性を有する流路のない多孔質支持体と、該緻密混合伝導性酸化物層の供給側と隣接する流路付き層とをさらに含む、請求項9に記載のモジュール。
【請求項13】
前記少なくとも1つのガス搬送手段が前記流路付き層と流体が通じている、請求項12に記載のモジュール。
【請求項14】
前記少なくとも1つの固体膜ユニットが触媒層をさらに含む、請求項12に記載のモジュール。
【請求項15】
前記緻密混合伝導性酸化物層が第1の混合伝導性酸化物を含み、前記少なくとも1つのガス搬送手段が第2の混合伝導性酸化物を含む、請求項1に記載のモジュール。
【請求項16】
前記第1の混合伝導性酸化物が前記第2の混合伝導性酸化物と同じである、請求項15に記載のモジュール。
【請求項17】
供給側と透過側を備えた緻密混合伝導性酸化物層、及び該緻密混合伝導性酸化物層の透過側と隣接する連続通し多孔性を有する流路のない多孔質支持体を含む複数の固体膜ユニットと;
該複数の固体膜ユニットの少なくとも1つの流路のない多孔質支持体と流体が通じる少なくとも1つのガス搬送手段であって、緻密層と、該緻密層に隣接する多孔質層及びスロット付き層のうち少なくとも一方とを含む少なくとも1つのガス搬送手段と
を含む、ガス種含有ガス混合物からガス種を分離するためのモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−272328(P2006−272328A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−76950(P2006−76950)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】7201 Hamilton Boulevard, Allentown, Pennsylvania 18195−1501, USA
【Fターム(参考)】