説明

固体試料の分析方法

【課題】固体試料中における低濃度の水素を二次イオン質量分析法によって正確に分析する手法を提供することを課題とする。
【解決手段】質量数1の水素同位体と物理的な挙動が酷似し、単体または化合物として大気中での存在量が極めて少ない質量数2の水素同位体をイオン注入によって分析対象とする固体試料中に導入する。そして、固体試料を加熱処理し、固体試料中に含まれる質量数1及び質量数2の水素同位体の濃度を減少させ、二次イオン質量分析法を用いて固体試料中における質量数2の水素同位体の濃度を分析し、その数値を固体試料中に残留する質量数1の水素同位体の濃度として同定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
元素の定量分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基板上に形成された半導体を用いて絶縁ゲート型トランジスタを構成する技術が注目されている。絶縁ゲート型トランジスタはICや電気光学装置のような電子デバイスに広く応用され、特に液晶ディスプレイなどの画像表示装置のスイッチング素子に多く用いられている。
【0003】
また、画像表示装置などで必要とされる透明電極材料には金属酸化物が用いられているが、金属酸化物の中には半導体特性を示すものがあり、それらは酸化物半導体と呼ばれている。酸化物半導体としては、例えば、酸化タングステン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛などがあり、この様な酸化物半導体をチャネル形成領域とする絶縁ゲート型トランジスタが既に知られている(特許文献1及び特許文献2)。
【0004】
また、上述の酸化物半導体中に含まれる水素や酸素欠損はドナーとなり、酸化物半導体のキャリア密度を変化させることが知られている。例えば、特許文献3では酸化物半導体中に水素を添加して所望のキャリア密度を得る手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−123861号公報
【特許文献2】特開2007−96055号公報
【特許文献3】特開2007−103918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
固体試料中の水素を定量分析する手法は数多くあり、二次イオン質量分析法(SIMS)、水素前方散乱分析法(HFS)、昇温脱離ガス分析法(TDS)などが代表的である。この中でも二次イオン質量分析法(SIMS)は、試料中の微量成分の深さ方向濃度を精度良く定量できることが知られている。
【0007】
しかしながら、定量分析の対象となる水素は、水分や炭化水素、またはその他の水素化合物の形で大気中に多く存在している。そのため、二次イオン質量分析法を用いる場合、分析する試料の表面や分析機器の内部などに吸着した水素化合物(主に水分)が固体試料の分析面に再吸着し、水素のバックグラウンドの要因となってしまう問題があった。
【0008】
ここで二次イオン質量分析法のバックグラウンドとは、分析の対象である元素を含む物質が、上述の様に別の経路から試料の分析面に到達し、検出されてしまう事象を言う。対象元素のバックグラウンドレベルが分析する固体試料を構成する元素濃度よりも低い場合はほぼ問題は無いが、元素濃度が同程度以上であると信頼性のある分析結果を得られなくなる。
【0009】
固体試料を分析する際の水素のバックグラウンドレベルは、測定環境を極力整えたとしても、1×1017atoms/cm前後であり、通常はそれより約一桁程度高い値となる。
【0010】
従って、固体試料中の水素濃度が1×1018atoms/cm程度以下の場合は、現状の二次イオン質量分析装置においては信頼性のある水素濃度の値を直接検出することが困難となっている。そのため、試料作製条件等における既知の数値とバックグラウンドレベル以上の検出結果を用いた外挿法によって、分析対象とする試料の水素濃度を推測する手段が使われることがある。
【0011】
しかし、外挿法によって得られる結果はあくまでも予測値であり、水素濃度が低い場合は、外挿法による誤差は無視できないものであった。
【0012】
従って、本発明の一態様は、固体試料中における低濃度の水素を二次イオン質量分析法によって正確に分析する手法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、脱水化または脱水素化の工程を施した高純度化酸化物半導体に残留する水素の定量分析手法に関する。
【0014】
酸化物半導体中の酸素欠損や水素はドナーとなり、酸化物半導体のキャリア濃度を高め、n型半導体化する作用がある。一方で、それらを含む欠陥等を極力取り除くことで酸化物半導体を高純度化及び高品質化することができる。
【0015】
酸化物半導体を高純度化及び高品質化することで、キャリア濃度を1×1012/cm未満、好ましくは1×1011/cm未満、より好ましくはシリコンの真性キャリア濃度1.45×1010/cmと同等、もしくはそれ以下とする。
【0016】
この様に高純度化及び高品質化された酸化物半導体を絶縁ゲート型トランジスタのチャネル形成領域に用いることで、電気特性がノーマリーオフを呈し、ドレイン電圧が1Vから10Vの範囲のいずれかの電圧において、オフ電流(ゲートソース間の電圧を0V以下としたときのソースドレイン間に流れる電流)が、1×10−13A以下、またはオフ電流密度(オフ電流を絶縁ゲート型トランジスタのチャネル幅で除した数値)は、10aA/μm(aA:アトアンペア、a(アト)は10−18倍)以下、好ましくは1aA/μm以下、更に好ましくは100zA/μm(zA:ゼプトアンペア、z(ゼプト)は10−21倍)以下とすることができる。
【0017】
酸化物半導体を高純度化及び高品質化する酸素欠損の補填は比較的容易であり、例えば、酸素または酸素を含む雰囲気や、酸化物などを接触させた状態で加熱することで酸化物半導体に酸素を供給することができる。
【0018】
一方、酸化物半導体から水素を取り除くための脱水化または脱水素化の手法としては、例えば加熱処理を用いることができる。加熱処理は、電気炉やRTA(Rapid Thermal Anneal)法等を用い、不活性ガスまたは酸素を含む雰囲気下において400℃以上800℃以下で行う。例えば、電気炉を用いて450℃で1時間の加熱を行えば良い。また、RTA法を用いれば、5分間程度の短時間で処理することもできる。なお、本明細書において脱水化または脱水素化とは、HOやHを脱離させることのみを意味するものではなく、HやOHなどを脱離させることも含めている。
【0019】
なお、上記のような脱水化または脱水素化処理を施しても水素を完全に取り除くことはできない。従って、酸化物半導体中の残留水素濃度を把握することは、製品を作製する上で工程管理の指標として重要となる。しかしながら、上記処理後の酸化物半導体中の残留水素濃度は、二次イオン質量分析法における水素のバックグラウンドレベル以下であり、信頼性の高い分析結果を直接得ることが困難となっている。
【0020】
本明細書で開示する本発明の一態様は、質量数1の水素同位体を含む固体試料中に該水素同位体と同量以上の質量数2の水素同位体をイオン注入し、固体試料に脱水化または脱水素化処理を施して固体試料中に含まれる質量数1及び質量数2の水素同位体の濃度を減少させ、二次イオン質量分析法を用いて固体試料中における質量数2の水素同位体の濃度を分析し、その数値を固体試料中に残留する質量数1の水素同位体の濃度として同定することを特徴とする固体試料中の水素濃度の分析方法である。
【0021】
また、本明細書で開示する本発明の他の一態様は、質量数1の水素同位体を含み、主成分の組成比が同一の第1及び第2の固体試料を準備し、第1の固体試料中の質量数1及び質量数2の水素同位体がそれぞれ同量となるように調整し、第1の固体試料に脱水化または脱水素化処理を施し、二次イオン質量分析法を用いて質量数1及び質量数2の水素同位体の濃度をそれぞれ分析し、質量数2の水素同位体の濃度に対する質量数1の水素同位体の濃度の割合を算出して係数とし、第2の固体試料中に質量数2の水素同位体をイオン注入し、第2の固体試料に脱水化または脱水素化処理を施して前記第2の固体試料中に含まれる質量数1の水素同位体及び質量数2の水素同位体の濃度を減少させ、二次イオン質量分析法を用いて第2の固体試料中における質量数2の水素同位体の濃度を分析し、その数値と前記係数を乗じて算出される数値を第2の固体試料中に残留する質量数1の水素同位体の濃度として同定することを特徴とする固体試料中の水素濃度の分析方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様によれば、固体試料に含まれる水素量が二次イオン質量分析法のバックグラウンドレベル以下の濃度であっても正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】二次イオン質量分析法の分析試料を説明する断面図。
【図2】二次イオン質量分析装置の概念図。
【図3】固体試料中の水素及び重水素の二次イオン質量分析結果。
【発明を実施するための形態】
【0024】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0025】
本実施の形態では、本発明の一態様である酸化物半導体中の微量の水素を二次イオン質量分析法によって分析する手段について説明する。
【0026】
図1(A)に分析試料の断面図を示す。基板100上に固体試料110を設けたものである。図示はしないが、基板100と固体試料110との間に絶縁層を設けても良い。なお、分析の対象となるのは固体試料110の部分であるが、本明細書では、基板100を含めたものについても固体試料と表現する。
【0027】
ここで、基板100の種類は特に限定されないが、水素や水素化合物が吸着しやすい金属や化合物、または多孔質体などは二次イオン質量分析法で分析する際に水素のバックグラウンドレベルを高める要因となるため好ましくなく、例えば平坦なガラス基板などを用いると良い。
【0028】
固体試料110には分析を目的とする材料を用いれば良い。本実施の形態では、酸化物半導体であるIn−Ga−Zn−O膜を用いる。ここで、In−Ga−Zn−O膜とは、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を有する酸化物膜という意味であり、その組成比は特に問わない。
【0029】
酸化物半導体はスパッタ法を用いて形成する。膜厚は300nm程度とする。二次イオン質量分析法では、表面不純物の影響を強く受けるため、膜厚が薄いと表面不純物中に含まれる分析対象元素が見かけ上膜中でも検出される結果となり、膜中の真の値を検出することが困難となる。逆に膜厚が厚過ぎる場合にも困難を生じる。本発明の一態様は酸化物半導体に加熱処理などの脱水化または脱水素化処理を施した後の残留水素量を知り得るための手段を提供するものであるが、膜厚が厚い場合には脱水化または脱水素化処理による膜中の水素の脱離が一様に起こらず、膜中に極端な濃度勾配を生じてしまう場合がある。従って、本発明者らは表面不純物の影響及び膜中の濃度勾配を極力抑えられる膜厚として、300nm程度が好適であることを見出している。
【0030】
酸化物半導体の脱水化または脱水素化処理は、電気炉やRTA(Rapid Thermal Anneal)法等を用いた加熱処理で行うことができる。加熱処理は、不活性ガス雰囲気下において400℃以上800℃以下で行うことが好ましい。なお、基板としてガラス等を用いる場合には、その歪み点以下の温度で行う必要がある。例えば、電気炉を用いて450℃で1時間の加熱を行えば良い。また、RTA法を用いれば、短時間に脱水化または脱水素化が行えるため、ガラス基板の歪点を超える温度でも処理することができる。
【0031】
なお、脱水化または脱水素化処理は、酸化物半導体中からドナーとなる水素を脱離させて高純度化するとともに、真性または実質的に真性な半導体に近づけてキャリア濃度を低減し、該酸化物半導体を用いるトランジスタ等の電気特性を向上させるために行うものである。
【0032】
つまり、酸化物半導体中の残留水素濃度を把握することは、製品を作製する上で工程管理の指標として重要となる。しかしながら、酸化物半導体中の残留水素濃度は、二次イオン質量分析法における水素のバックグラウンドレベル以下であるため、これまでは信頼性の高い分析結果を得ることができなかった。
【0033】
二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)は、局所的に固体試料の元素分析ができる高感度表面分析の手法である。
【0034】
二次イオン質量分析法は、固体試料の表面にイオンビーム(一次イオン)を照射して試料の最表面をスパッタリングし、それによって発生した二次イオンを元素の指標として検知し、元素の同定を行う。試料の組成元素をイオンの形で直接計測するため、極めて高感度の元素分析が行える。
【0035】
図2に二次イオン質量分析法の装置概念図を示す。一次イオン201はイオン源210から一次イオンカラム220を通して固体試料200に照射され、固体試料200の表面に発生した二次イオン202は、二次イオン引き出し電極230によって二次イオン光学系に導入され、エネルギーアナライザ240を通過し、質量分析計250によって質量分離された上で検出器260に到達する。質量分析によって二次イオンを同定するため、安定同位体元素は原理的に全て測定できる。
【0036】
二次イオン質量分析法はイオンビームを用いた分析法であり、装置内部は真空にする必要がある。特に大気成分や軽元素を測定する場合は、残留ガスが試料表面に再付着し、バックグラウンドレベルが高くなる要因となってしまうため、超高真空が要求される。
【0037】
本実施の形態において、定量分析の対象となる水素は、水分、炭化水素、またはその他の水素化合物の形で大気中に多く存在し、装置内部を超高真空としてもそれらを完全に排出することができない。そのため、固体試料中の濃度に換算して1×1017atoms/cm前後から1×1018atoms/cm程度が水素測定のバックグラウンドレベルとなってしまう。
【0038】
分析の対象である固体試料中の水素濃度は、上記のバックグラウンドレベル以下であり、極めて低い濃度であることが推測された。そこで本発明者らは、水素と物理的な挙動が酷似し、単体または化合物として大気中での存在量が極めて少ない重水素が分析対象元素の代替となることを考案するに至った。
【0039】
水素原子と重水素原子の天然存在割合は、水素が99.985%、重水素が0.015%である。なお、質量数1の水素及び質量数2の重水素は共に水素の安定同位体であり、どちらも水素と呼ぶことができるが、本明細書で以降に記す水素とは質量数1の同位体を指し、質量数2の同位体は重水素と呼ぶ。
【0040】
図3(A)に2×1019atoms/cm前後の水素を含む酸化物半導体中における重水素の濃度を測定した二次イオン質量分析結果を示す。重水素の濃度は、2×1015atoms/cm前後であり、上述の天然存在割合とほぼ一致する。図3(B)は、更に水素量の少ない酸化物半導体中の重水素濃度を分析した結果である。水素濃度が2×1018atoms/cm前後に対して重水素濃度は1×1015atoms/cmとなっており、上述の天然存在割合とは一致しない。すなわち、これは重水素のバックグラウンドレベルを示しているとともに、1×1015atoms/cmまでは検出が可能であることが示されたものである。
【0041】
従って、水素の代替となる重水素をイオン注入した固体試料を分析対象とすれば、代替元素の重水素を検出することによって微量の水素を同定することができる。
【0042】
具体的には、図1(B)に示すように基板101上に固体試料111を形成し、固体試料111中に重水素をイオン注入する。注入量は任意であるが、固体試料111に含まれる水素量と同等以上であり、かつ1×1017atoms/cm以上が好ましく、1×1018atoms/cm以上が更に好ましい。なお、固体試料111中にも元々天然に含まれる重水素が存在するが、その量は無視できるほど極微量である。
【0043】
そして、例えば加熱処理などの脱水化または脱水素化工程を行い、二次イオン質量分析法で重水素濃度を分析する。重水素濃度として分析された値は、物理的な挙動が酷似する水素の濃度として同定することができる。
【0044】
ここで、図3(A)、(B)においては、試料の表面側と基板との界面側(横軸の左端側と右端側)では水素と重水素が試料の内部よりも高い濃度で検出された結果が示されている。これは、試料の表面に存在する不純物や、分析面が基板界面の異種材料に到達したことによるイオン化率の変化などが影響するもので、試料中の真の水素と重水素濃度を反映したものではない。従って、二次イオン質量分析では、試料の表面側の一部と基板との界面側の一部は信頼性の欠ける情報として見なし、膜中央部の比較的平坦な結果が得られている領域から濃度を判断することが通常である。例えば、図3(A)では、少なくとも50μm以上250μm以下の深さの範囲を信頼性のある結果として用いることができる。
【0045】
また、固体試料の構成元素や構造の違いによっては、水素と重水素で熱的な挙動が異なる場合がある。すなわち、脱水化または脱水素化工程による水素と重水素の脱離現象において、それぞれの脱離する割合が異なる場合がある。ここで、水素及び重水素とは、それらのイオンや分子だけでなく、化合物も含まれる。
【0046】
この場合は、主成分の組成比が同一の固体試料を複数用意し、そのうちの一つの第1の固体試料中にバックグラウンドレベル以上、具体的には1×1017atoms/cm以上、好ましくは1×1018atoms/cm以上の水素及び重水素を同量注入する。または、第1の固体試料へのイオン注入は重水素のみとし、元々第1の固体試料に含まれている水素量と揃うように調整する。次に、第1の固体試料中の水素濃度及び重水素濃度がバックグラウンドレベル未満、具体的には1×1017atoms/cm未満とならないように脱水化または脱水素化工程を行い、それぞれの濃度を二次イオン質量分析法で分析する。そして、重水素に対する水素の割合を係数として算出する。ここで、「同一」及び「同量」との表現を用いているが、全く同じであるということを意味するものではなく、結果に与える影響が軽微であれば、その違いは許容される。
【0047】
次に、第1の固体試料と同一組成の第2の固体試料に重水素をイオン注入する。注入量は任意であるが、元々固体試料に含まれる水素量と同等であることが好ましい。次に、脱水化または脱水素化工程を行い、二次イオン質量分析法で重水素濃度を分析する。そして、重水素濃度として分析された値に、先に算出した係数を乗ずることで水素濃度を求めることができる。
【0048】
これら二つの方法は、分析の対象とする固体試料の性質によって使い分ければ良い。
【0049】
以上の様に、固体試料中に重水素をイオン注入し、その重水素濃度を二次イオン質量分析法で分析することでバックグラウンドレベル以下の水素濃度を同定することができる。
【0050】
なお、本実施の形態では、酸化物半導体中の水素の定量方法を事例として説明したが、他の半導体、金属、またはその他の固体材料中の水素も同様な方法で定量することができる。
【符号の説明】
【0051】
100 基板
101 基板
110 固体試料
111 固体試料
200 固体試料
201 一次イオン
202 二次イオン
210 イオン源
220 イオンカラム
230 二次イオン引き出し電極
240 エネルギーアナライザ
250 質量分析計
260 検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量数1の水素同位体を含む固体試料中に、該水素同位体と同量以上の質量数2の水素同位体をイオン注入し、
前記固体試料に脱水化または脱水素化処理を施して前記固体試料中に含まれる質量数1及び質量数2の水素同位体の濃度を減少させ、
二次イオン質量分析法を用いて前記固体試料中における質量数2の水素同位体の濃度を分析し、その数値を前記固体試料中に残留する質量数1の水素同位体の濃度として同定することを特徴とする固体試料中の水素濃度の分析方法。
【請求項2】
請求項1において、前記固体試料中にイオン注入する質量数2の水素同位体の濃度は、1×1015atoms/cm以上であることを特徴とする固体試料中の水素濃度の分析方法。
【請求項3】
請求項1または2において、前記固体試料は酸化物半導体であることを特徴とする固体試料中の水素濃度の分析方法。
【請求項4】
質量数1の水素同位体を含み、主成分の組成比が同一の第1及び第2の固体試料を準備し、
前記第1の固体試料中の質量数1及び質量数2の水素同位体がそれぞれ同量となるように調整し、
前記第1の固体試料に脱水化または脱水素化処理を施し、二次イオン質量分析法を用いて質量数1及び質量数2の水素同位体の濃度をそれぞれ分析し、
質量数2の水素同位体の濃度に対する質量数1の水素同位体の濃度の割合を算出して係数とし、
前記第2の固体試料中に質量数2の水素同位体をイオン注入し、
前記第2の固体試料に脱水化または脱水素化処理を施して前記第2の固体試料中に含まれる質量数1の水素同位体及び質量数2の水素同位体の濃度を減少させ、
二次イオン質量分析法を用いて前記第2の固体試料中における質量数2の水素同位体の濃度を分析し、その数値と前記係数を乗じて算出される数値を前記第2の固体試料中に残留する質量数1の水素同位体の濃度として同定することを特徴とする固体試料中の水素濃度の分析方法。
【請求項5】
請求項4において、前記第1の固体試料中で同量となるように調整された質量数1及び質量数2の水素同位体のそれぞれの濃度は、1×1017atoms/cm以上であることを特徴とする固体試料中の水素濃度の分析方法。
【請求項6】
請求項4または5において、前記第1の固体試料の脱水化または脱水素化処理は、前記第1の固体試料中の残留水素濃度が1×1017atoms/cm未満とならないように行うことを特徴とする固体試料中の水素濃度の分析方法。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれか一項において、前記第2の固体試料中にイオン注入する質量数2の水素同位体の濃度は、1×1015atoms/cm以上であることを特徴とする固体試料中の水素濃度の分析方法。
【請求項8】
請求項4乃至7のいずれか一項において、前記第1及び第2の固体試料は酸化物半導体であることを特徴とする固体試料中の水素濃度の分析方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項において、前記脱水化または脱水素化処理は、加熱処理であることを特徴とする固体試料中の水素濃度の分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−149933(P2011−149933A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287771(P2010−287771)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】