説明

固体酸化物形燃料電池システム

【課題】 燃料電池スタックの温度分布を縮小し、これによって燃料電池スタックの発電性能及び耐久性を高めることができる固体酸化物形燃料電池システムを提供すること。
【解決手段】 柱状の燃料電池セルの複数個が配設された燃料電池スタック2と、これら燃料電池セル10の内部のガス流路に燃料ガスを分配送給する第1分配送給部と、複数の燃料電池セル10の間をセル間流路12として酸素含有ガスを分配送給する第2分配送給部20と、を備えた固体酸化物形燃料電池システム。燃料電池スタックの両方の側面側には空間形成部材により空間42,44が設けられ、空間42,44と複数のセル間流路との間には、ガス透過性の仕切り部材56が配設され、酸素含有ガスの一部は、複数のセル間流路12を下流側に流れ、その残部は、仕切り部材56を通して空間42,44に流れた後、この仕切り部材56を通して再び複数のセル間流路12を下流側に流れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物形燃料電池セルを用いて発電する固体酸化物形燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池セルとして固体酸化物形燃料電池セルを用いた固体酸化物形燃料電池システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この固体酸化物形燃料電池システムでは、燃料電池セルの複数個が所定方向に配設された燃料電池スタックを備え、複数の燃料電池セルの内部にガス流路が設けられ、複数の燃料電池セルの間を複数のセル間流路とし、各セル間流路は隣接する燃料電池セル間を延びている。この燃料電池スタックに関連して、第1及び第2分配送給部が設けられ、第1分配送給部は燃料ガスを複数の燃料電池セルのガス流路に分配送給し、また第2分配送給部は酸素含有ガスを複数のセル間流路に分配送給するように構成されている。
【0003】
このような固体酸化物形燃料電池システムでは、作動温度が高いと発電性能は向上するが、この作動温度が高くなると燃料電池セル自体の劣化速度が速くなり、このようなことから、燃料電池セル自体の温度を適切に管理して燃料電池反応が行われている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−158526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような固体酸化物形燃料電池システムでは、燃料電池スタック自体の温度分布が大きく、このことに起因して発電性能及び耐久性の両面において更なる改善が求められていた。すなわち、燃料電池スタックの一部において作動温度が低くなり過ぎると、発電性能が低下し、発電の出力密度及び発電効率が充分に得られない。また、燃料電池スタックの一部において作動温度が高くなり過ぎると、燃料電池セルの劣化速度が速くなり、その寿命が短くなる。このようなことから、発電性能及び耐久性を高めるために、燃料電池スタックの温度分布を縮小することが望まれている。
【0006】
一般に、固体酸化物形燃料電池スタックでは、燃料電池反応による発電の際に発熱し、この発熱の冷却は、作動温度よりも低い温度の酸素含有ガス(例えば、空気)、燃料ガスにより行われ、燃料電池反応のために導入される酸素含有ガス及び燃料ガスとの間の熱交換により行われる。酸素含有ガスは、燃料電池反応の反応ガスとして燃料電池スタックに導入され、燃料電池スタックの空気入口部から空気出口部に向けて温度が上昇する傾向にある。固体酸化物形燃料電池スタック自体の熱伝導率が低いと、作動の温度分布は更に大きくなるが、その熱伝導率が高くても相当の作動の温度分布が生じる。また、燃料ガスは、燃料電池セルの燃料入口部から燃料出口部にかけて消費されるが、その燃料ガス濃度と燃料電池セルにおける作動の温度差に基づいて、燃料電池セルの各部で電流密度に分布が生じる。この電流密度は発電分布とも関連し、このようなことに起因して、燃料電池セルの燃料入口部から燃料出口部の範囲における温度差(燃料電池セル内の温度差)が生じる。また、固体酸化物形燃料電池スタックでは、燃料電池セルが配設される所定方向における両端部は中央部に比して放熱面積が大きくなり、このことに起因して、その両端部は中央部に比して温度が低下する傾向にある。また、燃料電池セルの劣化などによって、燃料電池セルごとに発電性能に差が生じた場合、熱量が燃料電池セルごとにばらつくことになり、このようなことも温度差発生の原因となる。
【0007】
本発明の目的は、燃料電池スタックの温度分布を縮小し、これによって燃料電池スタックの発電性能及び耐久性を高めることができる固体酸化物形燃料電池システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池システムは、柱状の燃料電池セルの複数個が所定方向に配設された燃料電池スタックと、前記複数の燃料電池セルの内部に設けられたガス流路に燃料ガスを分配送給するための第1分配送給部と、前記複数の燃料電池セルの間を複数のセル間流路として酸素含有ガスを分配送給するための第2分配送給部と、を備えた固体酸化物形燃料電池システムであって、
前記燃料電池スタックの少なくとも片方の側面側には、前記所定方向に伸びる空間を形成するための空間形成部材が設けられ、前記空間と前記複数のセル間流路との間には、ガス透過性の仕切り部材が配設され、前記第2分配送給部により前記複数のセル間流路に分配されて流れた酸素含有ガスの一部は、前記複数のセル間流路を下流側に流れ、その残部は、前記仕切り部材を通して前記空間に流れた後、前記仕切り部材を通して再び前記複数のセル間流路を下流側に流れるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池システムは、柱状の燃料電池セルの複数個が所定方向に配設された燃料電池スタックと、前記複数の燃料電池セルの内部に設けられたガス流路に燃料ガスを分配送給するための第1分配送給部と、前記複数の燃料電池セルの間を複数のセル間流路として酸素含有ガスを分配送給するための第2分配送給部と、を備えた固体酸化物形燃料電池システムであって、
前記燃料電池スタックの少なくとも片方の側面側には、前記所定方向に伸びる空間を形成するための空間形成部材が設けられ、前記空間における酸素含有ガスの流れ方向の長さは、前記燃料電池スタックの前記所定方向の中央部がその両端部よりも長くなっていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3に記載の固体酸化物形燃料電池システムは、柱状の燃料電池セルの複数個が所定方向に配設された燃料電池スタックと、前記複数の燃料電池セルの内部に設けられたガス流路に燃料ガスを分配送給するための第1分配送給部と、前記複数の燃料電池セルの間を複数のセル間流路として酸素含有ガスを分配送給するための第2分配送給部と、を備えた固体酸化物形燃料電池システムであって、
前記燃料電池スタックの少なくとも片方の側面側には、前記所定方向に沿って上下方向に間隔をおいて複数の空間を形成するための空間形成部材が設けられ、前記第2分配送給部により前記複数のセル間流路に分配されて流れた酸素含有ガスの一部は、前記複数のセル間流路を下流側に流れ、その残部は、前記複数の空間のうち上流側にある一の空間に流れた後、再び前記複数のセル間流路に流れ、また前記複数のセル間流路にて合流した酸素含有ガスの一部は、前記複数のセル間流路を下流側に流れ、その残部は、前記一の空間に隣接する他の空間に流れた後、再び前記複数のセル間流路を下流側に流れるように構成されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項4に記載の固体酸化物形燃料電池システムでは、前記燃料電池スタックの前記複数のセル間流路と前記空間との間には、ガス透過性の仕切り部材が配設されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項5に記載の固体酸化物形燃料電池システムでは、前記仕切り部材は、600℃の環境において1cm2当たり100Ncm3/分の空気を流したときに10〜200Paの圧力損失が生じる断熱材料から形成されていることを特徴とする。
【0013】
更に、本発明の請求項6に記載の固体酸化物形燃料電池システムでは、前記燃料電池スタックの前記複数のセル間流路を流れる酸素含有ガスの流量と、前記空間を流れる酸素含有ガスの流量との比は、前記空間における酸素含有ガスの流れ方向に見て中央部位置にて1:9〜7:3であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池システムによれば、燃料電池スタックの少なくとも片方の側面側に空間を形成するための空間形成部材が設けられているので、複数のセル間流路を流れる酸素含有ガス(例えば、空気)の一部は複数のセル間流路を下流側に流れ、その残部は空間に流れた後に再び複数のセル間流路に流れる。そして、この空間を流れる酸素含有ガスは空間を流れる間に温度の均一化が図られ、その後に複数のセル間流路に流れるので、この酸素含有ガスの温度均一化により燃料電池スタックの温度分布のバラツキが抑制され、これによって、燃料電池スタックの発電性能及び耐久性を高めることができる。
【0015】
また、この空間と燃料電池スタックの複数のセル間流路との間にガス透過性の仕切り部材が配設されているので、この仕切り部材を適切に選択することによって、空間に流入する酸素含有ガスの流量を制御し、酸素含有ガスの複数のセル間流路を下流側に流れる流量と空間を流れる流量とを適正割合に管理することができる。
【0016】
また、本発明の請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池システムによれば、燃料電池スタックの少なくとも片方の側面側には空間を形成するための空間形成部材が設けられ、この空間における酸素含有ガスの流れ方向の長さは、燃料電池スタックの所定方向の中央部がその両端部よりも長くなっているので、この空間の長さの長い中央部に接するセル間流路は、その長さの短い両端部に接するセル間流路に比して酵素含有ガスの分配流量が多くなり、このように空間の酸素含有ガスの流れ方向の長さを変えることによって、それに対応するセル間流路を流れる酸素含有ガスの流量を調整することができる。
【0017】
一般的に、燃料電池スタックの燃料電池セルが配設される所定方向における両端部はその中央部に比して放熱が大きくなり、両端部付近においては温度(所謂、セル温度)が低下する傾向にあるが、上述したように、燃料電池スタックの両端部に対応する空間の部位の長さを短くすることによって、かかる両端部の空間を流れる酸素含有ガスの流量を、その中央部の空間を流れる流量よりも少なくすることができる。その結果、燃料電池スタックの両端部が相対的に低温になることを回避することができ、燃料電池スタックの温度分布の均一化を図り、燃料電池スタックの発電性能及び耐久性を高めることができる。
【0018】
また、本発明の請求項3に記載の固体酸化物形燃料電池システムによれば、燃料電池スタックの少なくとも片方の側面側には、所定方向に沿って上下方向(換言すると、酸素含有ガスの流れ方向)に間隔をおいて複数の空間を形成するための空間形成部材が設けられているので、第2分配送給部によりセル間流路に分配された酸素含有ガスの一部は、複数のセル間流路を下流側に流れ、その残部は、複数の空間のうち上流側にある一の空間を流れた後、再び複数のセル間流路に流れ、また複数のセル間流路にて合流した酸素含有ガスの一部は、複数のセル間流路を下流側に流れ、その残部は、一の空間に隣接する他の空間に流れた後、再び前記複数のセル間流路を下流側に流れる。このように複数の空間を酸素含有ガスが流れる間に温度の均一化が図られ、その後に複数のセル間流路に分配されるので、このように構成しても燃料電池スタックの温度分布のバラツキが抑制され、燃料電池スタックの発電性能及び耐久性を高めることができる。
【0019】
また、本発明の請求項4に記載の固体酸化物形燃料電池システムによれば、燃料電池スタックの複数のセル間流路と空間との間にガス透過性の仕切り部材が配設されているので、空間に流入する酸素含有ガスの流量を制御し、酸素含有ガスの複数のセル間流路を流れる流量と空間を流れる流量とを適正割合に管理することができる。
【0020】
また、本発明の請求項5に記載の固体酸化物形燃料電池システムによれば、仕切り部材は、600℃の環境において1cm2当たり100Ncm3/分の空気を流したときに10〜200Paの圧力損失が生じる断熱材料から形成されているので、酸素含有ガスの複数のセル間流路を流れる流量と空間を流れる流量とを所望の通りの適正割合に保つことができる。
【0021】
更に、本発明の請求項6に記載の固体酸化物形燃料電池システムによれば、燃料電池スタックの複数のセル間流路を流れる酸素含有ガスの流量と、空間を流れる酸素含有ガスの流量との比は、空間における酸素含有ガスの流れ方向に見て中央部位置にて1:9〜7:3であるので、セル間流路への酸素含有ガスの流量不足を回避しながら燃料電池スタックのより一層の温度均一化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う固体酸化物形燃料電池システムについて説明する。
第1の実施形態
まず、図1〜図4を参照して、第1の実施形態の固体酸化物形燃料電池システムについて説明する。図1は、第1の実施形態の固体酸化物形燃料電池システムを簡略的に示す断面図であり、図2は、図1の固体酸化物形燃料電池システムの燃料電池スタックを側面から見た断面図であり、図3は、図1の固体酸化物形燃料電池システムを正面から見た断面図であり、図4は、図3におけるIV−IV線による断面図である。
【0023】
図1及び図2において、図示の固体酸化物形燃料電池システムは、燃料電池反応を行う固体酸化物形燃料電池スタック2と、この燃料電池スタック2に供給される燃料ガスを改質するための改質器4とを備え、燃料電池スタック2及び改質器4が遮熱壁6で規定された高温空間8内に収容され、この高温空間8内には、燃料電池スタック2と遮熱壁6との間を断熱するための断熱材7(図3参照)が配設されている。
【0024】
この燃料電池スタック2は、柱状の燃料電池セル10の複数個を所定方向(図1及び図2において左右方向)に配設して構成されている。複数の燃料電池セル10の内部にはガス流路(図示せず)が設けられ、各ガス流路は燃料電池セル10の内部を下端から上端まで直線状に延びている。また、隣接する燃料電池セル10の間をセル間流路12とし、各セル間流路12は隣接する燃料電池セル10の間を下から上に向けて直線状に延びている。隣接する燃料電池セル10の間、すなわちセル間流路12には、これらを電気的に接続するセル間接続材14が配設されている。このような燃料電池セル10は、酸素イオンを伝導する固体電解質の両側に燃料ガス及び酸素含有ガス(例えば、空気)中の酸素をそれぞれ酸化、還元する機能を有する電極を取り付けており、電解質の材料としてはイットリアをドープしたジルコニアが用いられる。
【0025】
改質器4は、脱硫処理された燃料ガスを改質反応させて水素及び一酸化炭素を含むガスに改質するものである。燃料供給源(図示せず)から供給される燃料ガスが燃料供給流路16を通して改質器4に供給されるとともに、水供給源(図示せず)から供給される水または水蒸気が改質器4に供給され、この改質器4において水蒸気を用いた燃料ガスの改質反応が行われる。
【0026】
燃料電池スタック2に関連して、改質された燃料ガスを分配送給するための第1分配送給部18と、酸素含有ガス(例えば、空気)を分配送給するための第2分配送給部20が設けられている。第1分配送給部18は、燃料電池スタック2の一端から他端(図2において左端から図2において右端)まで延びる細長い第1分配ハウジング22を備え、この第1分配ハウジング22の他端部に流入部24が設けられている。また、この第1分配ハウジング22の上端面には燃料電池セル10の各々に対応して接続管26が設けられ、これら接続管26が対応する燃料電池セル10のガス流路(図示せず)に接続されている。このように構成されているので、改質器4にて改質された改質燃料ガスは燃料ガス送給流路28を通して流入部24から第1分配ハウジング22内に流入し、この第1分配ハウジング22から各接続管26に分配されて燃料電池セル10のガス流路を図1及び図2において下から上に向けて流れる。
【0027】
また、第2分配送給部20は、第1分配送給部18と燃料電池スタック2との間に配設された第2分配ハウジング30を備え、この第2分配ハウジング30も燃料電池スタック2の上記一端から上記他端まで延びており、その一端部に流入部32が設けられている。また、第2分配ハウジング30の上面には、セル間流路12の各々に対応して分配流出開口(図示せず)が設けられている。このように構成されているので、空気ファン34により供給された酸素含有ガスとしての空気は、空気送給流路36を通して流入部32から第2分配ハウジング30に流入し、この第2分配ハウジング30から各分配流出開口を通して分配されて対応するセル間流路12を図1及び図2において下から上に向けて流れる。なお、この第2分配送給部20は、このような構成に限定されず、例えば、燃料電池スタック2と平行に一対の送給プレートを配設し、酸素含有ガスを一対の送給プレート間を通して送給し、それらの下端開口から複数のセル間流路12に送給するようにしてもよい。
【0028】
燃料電池スタック2の上端部には排気部38が設けられ、複数のセル間流路12を流れる酸素含有ガス及び複数の燃料電池セル10を流れる燃料ガス(燃料電池反応により反応ガスとなるが、反応しない燃料ガスが一部残留している)が排気部38内に排出され、この排気部38内にて、反応ガス中に残存する燃料ガスが酸素含有ガス中の酸素によって燃焼され、このように燃焼された反応ガスが燃焼ガス排出流路40を通して外部に排出される。
【0029】
この固体酸化物形燃料電池システムでは、燃料電池スタック2の温度分布のバラツキを抑制するために、次の通りに構成されている。図3及び図4を参照して、この第1の実施形態では、燃料電池スタック2の両方の側面側に空間42,44が設けられ、これら空間42,44は、図3において左右対称に形成されている。断熱材7の内側には、燃料電池スタック2の片面の一部を囲むように断熱プレート46,48,50,52が設けられ、これら断熱プレート46,48,50,52の開口を覆うように断熱プレート54が設けられ、断熱プレート46,48,50,52,54によって密閉された空間42が規定されている。このように構成されているので、断熱プレート46,48,50,52,54により空間形成部材が構成される。また、燃料電池スタック2の他面側に設けられた空間44も、上述した空間42と同様に、空間形成部材を構成する断熱プレート(図3において断熱プレート48,52,54のみを示す)により規定されている。なお、燃料電池スタック2の両面における空間42,44を除く部分は、断熱プレート55により覆われて密封されている。
【0030】
これらの空間42,44は、燃料電池スタック2における図3及び図4において上下方向(すなわち、上記所定方向に沿って上下方向)中間部に配設され、燃料電池スタック2の一端から他端まで所定方向に延び、燃料電池スタック2の実質上全幅(燃料電池セルの配設方向)にわたって設けられている。このように空間42,44を設けることによって、複数のセル間流路12を流れる酸素含有ガスの一部が空間42,44に一時的に流入し、また流入した酸素含有ガスは空間42,44内を下流側に流れて複数のセル間流路12に合流した後、セル間流路12を下流側に流れる。
【0031】
このように空間42,44を設けた場合、空間42、44を流れる流量とセル間流路12を流れる流量を適正割合に設定するために、燃料電池スタック2の片面と一方の空間42との間、またその他面と他方の空間44との間に、ガス透過性を有する仕切り部材56を設けることができる。なお、仕切り部材56は断熱性のシート状部材から構成される。仕切り部材56は、600℃の環境において1cm2当たり100Ncm2/分の酸素含有ガス(例えば、空気)を流したときに10〜200Paの圧力損失が生じる材料、より好ましくは30〜80Paの圧力損失が生じる材料から形成される。この圧力損失が10Paより小さいと、セル間流路12を流れる酸素含有ガスの多くが空間42,44を通して流れ、セル間流路12において酸素含有ガスの不足が生じるおそれがあり、一方この圧力損失が200Paを超えると、空間42,44に流入する酸素含有ガスが少なくなり、酸素含有ガスによる燃料電池スタック2の温度均一化の効果が少なくなる。このような材料は、20℃の環境において1cm2当たり100Ncm3/分の酸素含有ガス(例えば、空気)を流したときに2〜40Paの圧力損失が生じる。このような特性を有する仕切り部材56としては、繊維状アルミナシリカ材から形成されたシート部材を好都合に用いることができる。
【0032】
このような仕切り部材56を設けることによって、燃料電池スタック2の複数のセル間流路12を流れる酸素含有ガスの流量と、空間42,44を流れる酸素含有ガスの流量との比は、空間42,44における酸素含有ガスの流れ方向に見て中央部位置、すなわち図3において一点鎖線Pで示す位置にて1:9〜7:3である、更には2:8〜5:5であるのが好ましい。この比が1:9よりも小さくなると、セル間流路12を流れる酸素含有ガスの量が少なくなり、セル間流路12において酸素含有ガスの不足が生じるおそれがあり、一方この比が7:3を超えると、空間42,44に流入する酸素含有ガスが少なくなり、酸素含有ガスによる燃料電池スタック2の温度均一化の効果が少なくなる。
【0033】
上述した固体酸化物形燃料電池システムでは、燃料電池スタック2の両方の側面側に空間形成部材により空間42,44が設けられているので、複数のセル間流路12を流れる酸素含有ガスは、その一部が複数のセル間流路12を下流側に流れ、かく流れる酸素含有ガス中の酸素が燃料電池セル10内のガス流路(図示せず)を流れる燃料ガス(改質燃料ガス)との間の燃料電池反応に用いられる。また、この酸素含有ガスの残部がセル間流路12から仕切り部材56を通して空間42,44に流入し、この空間42,44内を流通する間に温度の均一化が図られる。そして、温度の均一化された酸素含有ガスが仕切り部材56を通して再び複数のセル間流路12に戻され、これらセル間流路12を下流側に排気部38に流れる。このように空間42,44において酸素含有ガスの温度均一化が図られた後にセル間流路12に戻されるので、燃料電池スタック2に生じる温度分布が縮小され、これによって、燃料電池スタック2の作動温度が均一化され、燃料電池スタックの発電性能及び耐久性を高めることができる。
【0034】
また、燃料電池スタック2の複数のセル間流路12と空間42,44との間に仕切り部材56が介在されているので、空間42,44に流入する酸素含有ガスの流量を制御し、酸素含有ガスの複数のセル間流路12を流れる流量と空間42,44を流れる流量とを適正割合に管理することができ、複数のセル間流路12を流れる酸素含有ガスの流量不足による燃料電池反応の低下、部分的な冷却不足による温度上昇などの発生を抑えることができる。
【0035】
第2の実施形態
次いで、図5及び図6を参照して、第2の実施形態の固体酸化物形燃料電池システムについて説明する。図5は、第2の実施形態の固体酸化物形燃料電池システムを正面から見た断面図であり、図6は、図5の固体酸化物形燃料電池システムを側面から見た断面図である。なお、以下の実施形態において、上述した第1の実施形態と実質上同一の部材には同一の参照番号を付し、その説明を省略する。
【0036】
図5及び図6において、この第2の実施形態においては、空間に関連して改良が施されている。更に説明すると、この実施形態では、断熱材7Aの内面、すなわち燃料電池スタック2と対向する面にくぼみ部62,64が設けられ、その片面に対向する内面のくぼみ部62によって一方の空間42Aが規定され、その他面に対向する内面のくぼみ部64によって他方の空間44Aが規定されている。すなわち、この断熱材7A(くぼみ部62,64)により空間形成部材を構成している。そして、断熱材7Aのくぼみ部62,64により空間42A,44Aを規定することによって、空間42A,44Aを規定するための専用の空間形成部材を省略することができ、固体酸化物形燃料電池システム自体の構成を簡単にすることができる。
【0037】
第2の実施形態においても、空間42A,44Aは、燃料電池スタック2における図5及び図6において上下方向(すなわち、燃料電池セル10が配設される所定方向に沿って上下方向)中間部に配設され、燃料電池スタック2の一端から他端まで上記所定方向に延び、燃料電池スタック2の実質上全幅(燃料電池セルの配設方向)にわたって設けられている。
【0038】
この空間42A,44Aに関連して、更に、この空間42A,44Aにおける酸素含有ガスの流れ方向(図5及び図6において上下方向)の長さは、燃料電池スタック2の所定方向(図5において紙面に垂直な方向、図6において左右方向)の中央部がその両端部よりも長くなっている。この形態では、図6に示すように、空間42A,44Aの燃料電池セルの配設方向における両端部において、上下方向の幅が上端側及び下端側において両側に向けてテーパ状に漸減するように形成され、このように形成することによって、空間42A,44Aの長さ(図5及び図6において上下方向の長さ)が、燃料電池スタック2の所定方向の中央部がその両端部よりも長くなっている。なお、上述するような構成に限定されず、空間42A,44Aの両端部において、上下方向の幅が上端側及び下端側において弧状に漸減するようにしてもよく、或いは空間42A,44Aの両端部において、それらの上端側及び下端側のいずれか一方においてテーパ状に又は弧状に漸減するようにしてもよい。この第2の実施形態のその他の構成は、上述した第1の実施形態と実質上同一である。
【0039】
この第2の実施形態においては、空間42A,44Aにおける酸素含有ガスの流れ方向の長さ(図5及び図6において上下方向の長さ)は、燃料電池スタック2の所定方向の中央部がその両端部よりも長くなっているので、この空間42A,44Aの長さの長い中央部に接するセル間流路12は、その長さの短い両端部に接するセル間流路12に比して酸素含有ガスの分配流量が多くなり、空間42A,44Aの酸素含有ガスの流れ方向の長さを変えることによって、それに対応するセル間流路12を流れる酸素含有ガスの流量を調整することができる。
【0040】
第2の実施形態の燃料電池スタック2では、燃料電池セルの配設方向における両端部はその中央部に比して放熱が大きくなり、両端部付近においては温度(所謂、セル温度)が低下する傾向にあるが、上述したように構成することによって、燃料電池スタック2の両端部のセル間流路を流れる酸素含有ガスの流量が少なくなり、その結果、燃料電池スタック2の両端部が相対的に低温になることを回避でき、燃料電池スタックの温度分布の均一化を図ることができる。
【0041】
この第2の実施形態では、第1の実施形態と同様に、燃料電池スタック2の複数のセル間流路12と空間42A,44Aとの間に仕切り部材56を設け、この仕切り部材56によって、複数のセル間流路12を流れる酸素含有ガスの流量と空間42A,44Aを流れる酸素混合ガスの流量とを管理しているが、空間42A,44Aの流れ方向の長さを適宜設定することによってこれらの流量を管理できる場合、上述した仕切り部材56を省略してもよい。
【0042】
第3の実施形態
次に、図7及び図8を参照して、第3の実施形態の固体酸化物形燃料電池システムについて説明する。図7は、第3の実施形態の固体酸化物形燃料電池システムを正面から見た断面図であり、図8は、図7の固体酸化物形燃料電池システムを側面から見た断面図である。
【0043】
図7及び図8において、この第3の実施形態でも、空間に関連して改良が施されている。更に説明すると、この実施形態では、燃料電池スタック2の両方の側面側に、燃料電池セル10が配設された所定方向(図7において紙面に垂直な方向、図8において左右方向)に沿って上下方向、すなわち酸素含有ガスの流れ方向に間隔をおいて複数の空間が設けられている。なお、図7及び図8においては、燃料電池スタック2の両方の側面側に、それぞれ2つの空間を設けている例を示している。なお、以降の説明においては、酸素含有ガスの流れ方向に沿って上流側を第1空間(42B,44B)、下流側を第2空間(43B,45B)として説明する。
【0044】
第1空間42B,44B及び第2空間43B,45Bは、第1の実施形態と同様に、断熱プレート72,74,76,78により規定され、また燃料電池スタック2の両面における第1空間42B,44B及び第2空間43B,45Bを除く部分は、断熱プレート80により覆われて密封されている。なお、第3の実施形態においては、上記断熱プレートが空間形成部材の役割を果たしている。
【0045】
第1空間42B,44B及び第2空間43B,45Bは、第2の実施形態と同様の形状をし、第1空間42B,44B及び第2空間43B,45Bにおける酸素含有ガスの流れ方向の長さは、燃料電池スタック2の上記所定方向の中央部がその両端部よりも長くなっており、従って、第1空間42B,44B及び第2空間43B,45Bは、第2の実施形態における空間42A,44Aと同様の作用効果が達成される。第3の実施形態の固体酸化物形燃料電池システムにおけるその他の構成は、上述した第1の実施形態と実質上同一である。
【0046】
この第3の実施形態の固体酸化物形燃料電池システムにおいては、燃料電池スタック2の両方の側面側に、上記所定方向に沿って上下方向に間隔をおいて第1空間42B,44B及び第2空間43B,45Bが設けられているので、第2分配送給部20により分配送給された酸素含有ガスの一部は、燃料電池スタック2の複数のセル間流路12を下流側に流れ、その残部は、第1空間42B,44Bに流入し、かく流入した酸素含有ガスはこの第1空間42B,44Bを流れる間に温度の均一化が図られた後、再び複数のセル間流路12に流れる。そして、このようにしてセル間流路12を流れる酸素含有ガスの一部は、複数のセル間流路12を更に下流側に流れ、その残部は、第2空間43B,45Bに流入し、かく流入した酸素含有ガスはこの第2空間43B,45Bを流れる間に温度の均一化が図られた後、再び複数のセル間流路12に流れ、これらセル間流路12を通して排気部38に流れる。このように第1空間42B,44B及び第2空間43B,45Bにおいて酸素含有ガスの温度均一化が図られた後にセル間流路12に戻されるので、燃料電池スタック2に生じる温度分布がより効果的に縮小され、これによって、燃料電池スタック2の作動温度が一層均一化される。
【0047】
この第3の実施形態においても、第1及び第2の実施形態と同様に、燃料電池スタック2の複数のセル間流路12と第1空間42B,44Bとの間に、またこれらセル間流路12と第2空間43B,45Bとの間に、ガス透過性の仕切り部材を設けるようにしてもよい。
【0048】
以上、本発明に従う固体酸化物形燃料電池システムの実施形態について説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0049】
例えば,上述した第3の実施形態では、燃料電池スタックの両方の側面側に所定方向に沿って上下方向(換言すると、酸素含有ガスの流れ方句)に間隔をおいて二つの空間(第1及び第2空間)を設けているが、このような空間は、上記所定方向に沿って上下方向に間隔をおいて三つ以上設けるようにしてもよい。
【0050】
また、例えば、上述した第1〜第3の実施形態では、酸素含有ガスの流れが安定するように燃料電池スタックの両方の側面側に空間を設けているが、かかる空間は必ず両方の側面側に設ける必要はなく、その片方の側面側に空間を設けることによって所望の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】第1の実施形態の固体酸化物形燃料電池システムを簡略的に示す断面図。
【図2】図1の固体酸化物形燃料電池システムの燃料電池スタックを側面から見た断面図。
【図3】図1の固体酸化物形燃料電池システムを正面から見た断面図。
【図4】図3におけるIV−IV線による断面図。
【図5】第2の実施形態の固体酸化物形燃料電池システムを正面から見た断面図。
【図6】図5の固体酸化物形燃料電池システムを側面から見た断面図。
【図7】第3の実施形態の固体酸化物形燃料電池システムを正面から見た断面図。
【図8】図7の固体酸化物形燃料電池システムを側面から見た断面図。
【符号の説明】
【0052】
2 燃料電池スタック
7,7A 断熱材
10 燃料電池セル
12 セル間流路
14 セル間接続材
18 第1分配送給部
20 第2分配送給部
42,42A,44,44A 空間
42B,44B 第1空間
43B,45B 第2空間
56 仕切り部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状の燃料電池セルの複数個が所定方向に配設された燃料電池スタックと、前記複数の燃料電池セルの内部に設けられたガス流路に燃料ガスを分配送給するための第1分配送給部と、前記複数の燃料電池セルの間を複数のセル間流路として酸素含有ガスを分配送給するための第2分配送給部と、を備えた固体酸化物形燃料電池システムであって、
前記燃料電池スタックの少なくとも片方の側面側には、前記所定方向に伸びる空間を形成するための空間形成部材が設けられ、前記空間と前記複数のセル間流路との間には、ガス透過性の仕切り部材が配設され、前記第2分配送給部により前記複数のセル間流路に分配されて流れた酸素含有ガスの一部は、前記複数のセル間流路を下流側に流れ、その残部は、前記仕切り部材を通して前記空間に流れた後、前記仕切り部材を通して再び前記複数のセル間流路を下流側に流れるように構成されていることを特徴とする固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項2】
柱状の燃料電池セルの複数個が所定方向に配設された燃料電池スタックと、前記複数の燃料電池セルの内部に設けられたガス流路に燃料ガスを分配送給するための第1分配送給部と、前記複数の燃料電池セルの間を複数のセル間流路として酸素含有ガスを分配送給するための第2分配送給部と、を備えた固体酸化物形燃料電池システムであって、
前記燃料電池スタックの少なくとも片方の側面側には、前記所定方向に伸びる空間を形成するための空間形成部材が設けられ、前記空間における酸素含有ガスの流れ方向の長さは、前記燃料電池スタックの前記所定方向の中央部がその両端部よりも長くなっていることを特徴とする固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項3】
柱状の燃料電池セルの複数個が所定方向に配設された燃料電池スタックと、前記複数の燃料電池セルの内部に設けられたガス流路に燃料ガスを分配送給するための第1分配送給部と、前記複数の燃料電池セルの間を複数のセル間流路として酸素含有ガスを分配送給するための第2分配送給部と、を備えた固体酸化物形燃料電池システムであって、
前記燃料電池スタックの少なくとも片方の側面側には、前記所定方向に沿って上下方向に間隔をおいて複数の空間を形成するための空間形成部材が設けられ、前記第2分配送給部により前記複数のセル間流路に分配されて流れた酸素含有ガスの一部は、前記複数のセル間流路を下流側に流れ、その残部は、前記複数の空間のうち上流側にある一の空間に流れた後、再び前記複数のセル間流路に流れ、また前記複数のセル間流路にて合流した酸素含有ガスの一部は、前記複数のセル間流路を下流側に流れ、その残部は、前記一の空間に隣接する他の空間に流れた後、再び前記複数のセル間流路を下流側に流れるように構成されていることを特徴とする固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項4】
前記燃料電池スタックの前記複数のセル間流路と前記空間との間には、ガス透過性の仕切り部材が配設されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項5】
前記仕切り部材は、600℃の環境において1cm2当たり100Ncm3/分の空気を流したときに10〜200Paの圧力損失が生じる断熱材料から形成されていることを特徴とする請求項1又は4に記載の固体酸化物形燃料電池システム。
【請求項6】
前記燃料電池スタックの前記複数のセル間流路を流れる酸素含有ガスの流量と、前記空間を流れる酸素含有ガスの流量との比は、前記空間における酸素含有ガスの流れ方向に見て中央部位置にて1:9〜7:3であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−9926(P2010−9926A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167683(P2008−167683)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】