固体酸化物形燃料電池スタックおよびその運転方法
【課題】起動を効率的かつ短時間で行うことが可能なSOFCスタックおよびその運転方法を提供する。
【解決手段】固体酸化物形燃料電池のセルを複数有し、該セル同士の間に、部分酸化改質能および水蒸気改質能を有する触媒層を有する固体酸化物形燃料電池スタック。この固体酸化物形燃料電池スタックの運転方法であって、起動時に、前記触媒層において部分酸化改質反応を進行させ、該部分酸化改質反応に伴う発熱によって該スタックを昇温する工程を有する。
【解決手段】固体酸化物形燃料電池のセルを複数有し、該セル同士の間に、部分酸化改質能および水蒸気改質能を有する触媒層を有する固体酸化物形燃料電池スタック。この固体酸化物形燃料電池スタックの運転方法であって、起動時に、前記触媒層において部分酸化改質反応を進行させ、該部分酸化改質反応に伴う発熱によって該スタックを昇温する工程を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固体酸化物形燃料電池のセルが複数配された固体酸化物形燃料電池スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、排ガスがクリーンであることや発電効率が比較的高いなどの理由で燃料電池の開発が盛んである。燃料電池の燃料極で実際に電極反応するのは水素であるが、水素よりも都市ガスや灯油等の方が供給体制や取り扱いにおいて優れる面があるため、都市ガスや灯油を改質原料とし、これを改質して水素を含むガスを製造し、これを燃料電池の燃料極に供給することが行われている。
【0003】
固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell。以下場合によりSOFCという。)は作動温度が500〜1000℃程度と高温である。特許文献1には、この熱を有効に利用してエネルギー変換効率を向上させるべく、SOFCスタックの周囲に改質部を配することが開示されている。
【特許文献1】特開2002−358997号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池もしくは燃料電池システムにおいては、起動時間が短いことが実用上望まれる。しかし、SOFCはその作動温度が高いがゆえに、起動時間が長くなる傾向にあり、その短縮が求められている。
【0005】
本発明の目的は、起動を効率的かつ短時間で行うことが可能なSOFCスタックおよびその運転方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により、固体酸化物形燃料電池のセルを複数有し、該セル同士の間に、部分酸化改質能および水蒸気改質能を有する触媒層を有する固体酸化物形燃料電池スタックが提供される。
【0007】
上記固体酸化物形燃料電池スタックにおいて、
前記セルが、平板型であって、
該セルを挟んでアノード側セパレータおよびカソード側セパレータを有し、
一つのセルに接するカソード側セパレータと、該一つのセルの隣のセルに接するアノード側セパレータとの間に、前記触媒層を有することができる。
【0008】
上記固体酸化物形燃料電池スタックにおいて、
前記セルが円筒型であって、前記触媒層が円筒状であることができる。
【0009】
本発明により、上記固体酸化物形燃料電池スタックの運転方法であって、
起動時に、前記触媒層において部分酸化改質反応を進行させ、該部分酸化改質反応に伴う発熱によって該スタックを昇温する工程を有する
固体酸化物形燃料電池スタックの運転方法が提供される。
【0010】
上記方法において、
発電時に、前記触媒層において水蒸気改質反応を進行させ、該水蒸気改質反応に伴う吸熱によって該スタックを冷却する工程を有することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、起動を効率的かつ短時間で行うことが可能なSOFCスタックおよびその運転方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
SOFCスタックは、アノード電極とカソード電極の間に電解質を挟んだセル(単セル)を複数個、セパレータもしくはインターコネクタと呼ばれる電子導電性部材、また集電体と呼ばれる電子導電性部材などにより電気的に接続した構成を有する。
【0013】
SOFCでは、酸素イオン導電性セラミックスもしくはプロトンイオン導電性セラミックスを電解質として利用し、水素と酸素とを電気化学反応させる。このときアノードもしくはカソードでH2Oが生成するとともに発熱する。
【0014】
本発明では、部分酸化改質能および水蒸気改質能を有する触媒層(以下、改質触媒層という。)を、セルとセルの間に配置する。この改質触媒層は部分酸化改質反応を促進可能でかつ水蒸気改質反応を促進可能である。
【0015】
部分酸化改質反応は、発熱反応であり、水蒸気改質反応は吸熱反応である。改質原料としてメタンを例にすれば、部分酸化改質反応は、2CH4+O2→2CO+4H2で表される。水蒸気改質反応はCH4+H2O→3H2+COで表される。SOFCシステムの起動時にはSOFCスタックを昇温するが、この際には、セルの間に位置する改質触媒層にて部分酸化改質反応を行い、その反応熱によってSOFCスタックを昇温することができる。この際、水蒸気改質反応を伴ってもよいが、部分酸化改質反応による発熱の方が、水蒸気改質反応による吸熱より大きくなるようにする。本発明では改質触媒層とセルとの間の伝熱路を短くすることが容易であるため、これにより、改質触媒層からセルへの伝熱を高効率で行うことができ、SOFCの昇温を短時間で行うことが可能となる。
【0016】
また、スタックとは別途設けられた燃焼手段の燃焼ガスなど、スタック外から高温ガスをスタックに導いてスタックを昇温する場合と比較して、スタック内部において加熱することができるため、より均一にスタックを昇温することができる。さらに、スタック昇温のための高温ガス配管を不要とするも可能となる。改質触媒層にて発生する部分酸化改質反応の熱によるスタック昇温に加えて、スタック外から高温ガスをスタックに導いてスタックを昇温することもできるが、この場合でもスタック昇温のための高温ガス配管を小さくすることが可能である。従って、本発明は、SOFCシステムの小型化にも有効である。
【0017】
さらに、SOFCで発電が行われている際にはセルが電気化学反応等により発熱するが、この際には上記改質触媒層で水蒸気改質反応を行い、その反応熱によってSOFCの冷却を行うことができる。この際、部分酸化改質反応を伴ってもよいが、水蒸気改質反応による吸熱の方が、部分酸化改質反応による発熱より大きくなるようにする。この場合も、セルから改質触媒層への伝熱を高効率で行うことができ、熱利用効率を向上させることが可能となる。
【0018】
また、ガス(通例カソードガス)を大量に供給することによってスタックを冷却する場合と比較して、スタック冷却のための所要動力(ブロワ等の消費電力)を低減し、ブロワや配管等を小型化する効果もある。これによってSOFCシステムの高効率化や小型化が可能となる。
【0019】
上記改質触媒層として、部分酸化改質反応を促進可能な部分酸化改質触媒と、水蒸気改質反応を促進可能な水蒸気改質触媒との両者を含む触媒層を用いることができる。例えば部分酸化改質触媒と水蒸気改質触媒を混合して充填した触媒層を採用できる。また、部分酸化改質反応と水蒸気改質反応の両反応を促進可能なオートサーマルリフォーミング触媒を含む触媒層を用いることもできる。
【0020】
部分酸化改質触媒、水蒸気改質触媒、オートサーマルリフォーミング触媒のいずれも、公知のそれぞれの触媒から適宜選んで使用することができる。部分酸化改質触媒の例としては白金系触媒、水蒸気改質触媒の例としてはルテニウム系およびニッケル系、オートサーマル改質触媒の例としてはロジウム系触媒を挙げることができる。また、オートサーマル改質触媒については、特開2000−84410号公報、特開2001−80907号公報、「2000 Annual Progress Reports(Office of Transportation Technologies)」、米国特許5,929,286号公報などに記載されるようにニッケルおよび白金、ロジウム、ルテニウムなどの貴金属等がこれら活性を持つことが知られている。触媒形状としては、ペレット状、ハニカム状、その他従来公知の形状を適宜採用することができる。
【0021】
改質触媒層への供給物の組成を適宜調節することによって、部分酸化改質反応の進行度と、水蒸気改質反応の進行度を調節することができる。例えば、起動時には、改質触媒層において部分酸化反応を行うためには、改質原料と酸素を改質触媒層に供給すればよい。酸素を供給するために、空気、酸素富化空気、純酸素などの酸素含有ガスを改質触媒層に供給することができる。発電時に、改質触媒層において水蒸気改質反応を行うためには、改質触媒層に改質原料と水蒸気を供給すればよい。このとき、酸素の供給を行わなければ、部分酸化改質反応を進行させないようにすることができる。
【0022】
部分酸化改質反応が進行可能な温度は例えば200℃以上1000℃以下、水蒸気改質反応が進行可能な温度は例えば400℃以上1000℃以下である。
【0023】
起動時に行う部分酸化反応の条件としては、例えば、水素製造用原料に含まれる炭素原子モル数に対する酸素分子モル数の比O2/C比(酸素/カーボン比)を例えば1〜6程度とすることができる。
【0024】
必要に応じ、部分酸化改質反応が進行可能な温度まで改質触媒層を適宜加熱することができる。例えば電気ヒータなどを用いてもよいし、燃焼器等で発生させた燃焼熱を利用してもよい。部分酸化改質反応によって、改質触媒層を含むスタックが昇温され、水蒸気改質(もしくはオートサーマル改質)および発電が可能な状況となったら、改質を水蒸気改質(もしくはオートサーマル改質)に移行し、また発電を行うことができる。
【0025】
以下、水蒸気改質、オートサーマル改質のそれぞれにつき、発電時の運転条件について説明する。
【0026】
水蒸気改質の反応温度は例えば450℃〜900℃、好ましくは500℃〜850℃、さらに好ましくは550℃〜800℃の範囲で行うことができる。反応系に導入するスチームの量は、水素製造用原料に含まれる炭素原子モル数に対する水分子モル数の比(スチーム/カーボン比)として定義され、この値は好ましくは0.5〜10、より好ましくは1〜7、さらに好ましくは2〜5とされる。水素製造用原料が液体の場合、この時の空間速度(LHSV)は水素製造用原料の液体状態での流速をA(L/h)、触媒層体積をB(L)とした場合A/Bで表すことができ、この値は好ましくは0.05〜20h-1、より好ましくは0.1〜10h-1、さらに好ましくは0.2〜5h-1の範囲で設定される。
【0027】
オートサーマル改質ではスチームの他に酸素含有ガスが原料に添加される。酸素含有ガスとしては純酸素でも良いが入手容易性から空気が好ましい。水蒸気改質反応に伴う吸熱反応をバランスし、かつ、改質触媒層やSOFCの温度を保持もしくはこれらを昇温できる発熱量が得られるように酸素含有ガスを添加することができる。酸素含有ガスの添加量は、水素製造用原料に含まれる炭素原子モル数に対する酸素分子モル数の比(酸素/カーボン比)として好ましくは0.05〜1、より好ましくは0.1〜0.75、さらに好ましくは0.2〜0.6とされる。オートサーマル改質反応の反応温度は例えば450℃〜900℃、好ましくは500℃〜850℃、さらに好ましくは550℃〜800℃の範囲で設定される。水素製造用原料が液体の場合、この時の空間速度(LHSV)は、好ましくは0.1〜30、より好ましくは0.5〜20、さらに好ましくは1〜10の範囲で選ばれる。反応系に導入するスチームの量は、スチーム/カーボン比として好ましくは0.3〜10、より好ましくは0.5〜5、さらに好ましくは1〜3とされる。
【0028】
改質触媒層をセル間に設けるために、改質触媒層を収容した適宜の形状の容器をセル間に設けることができる。また隣り合う二つのセパレータの間の領域の周囲を適宜封止してその内部に改質触媒層を収容することができる。
【0029】
改質触媒層に改質原料を供給するための流路や改質触媒層で得られた改質ガスをセルに供給するための流路も適宜形成することができる。例えば、各改質触媒層にスタック外部から配管を通じて改質原料を供給することができる。また平板型SOFCスタックの場合は、各セルへのアノードおよびカソードガスの供給および排出のためにセルを貫通するマニホールド孔が利用されるが、改質原料の供給のためにもマニホールド孔を利用することができる。改質ガスのセルへの供給についても、配管を利用してもよいし、改質触媒層を収容する容器やセパレータに、改質触媒層からセル(特にはアノード室)にガス供給可能な孔を設けてもよい。改質触媒層の入口および出口には、必要に応じてオリフィスや金属メッシュなどを設け、触媒層を固定することができる。
【0030】
セル間に改質触媒層を設け、これに伴ってガス供給もしくは排出のための流路を設けること以外のSOFCスタックの部材や構造については、公知のSOFCスタックの部材や構造から適宜選んで採用することができる。例えば、SOFCスタックとして、図1に例を示すような平板型や、図2に例を示すような円筒型などの各種形状を適宜選んで採用できる。
【0031】
SOFCスタックにおいては、実用上、多数のセルを積層もしくは整列させることが多い。この場合、セル同士の間の全てに改質触媒層を配置してもよいし、一部のみに改質触媒層を配置しても良い。例えば平板型SOFCの場合、セル毎に改質触媒層を配置することもできるし、複数枚のセルをブロックとして、ブロック毎に改質触媒層を配するなど、複数のセル毎に配置してもよい。
【0032】
〔SOFCシステム〕
図4を用いて従来のSOFCシステムの例を説明する。まず発電時について説明する。改質原料(ライン410)が改質器405にて改質されて水素含有ガスである改質ガス(ライン411)となり、改質ガスが必要に応じて予熱器402にて予熱媒により予熱され、SOFCスタック401のアノードに供給される。一方、カソードガス(ライン421)には空気等の酸素含有ガス(酸化剤)が用いられ、これが必要に応じて予熱器403にて予熱媒により予熱され、SOFCスタックのカソードに供給される。SOFCスタックから排出されるアノード排ガスおよびカソード排ガスは、それぞれライン412および422から燃焼器404に導かれ、アノード排ガス中の可燃成分がカソード排ガスに含まれる酸素により燃焼し、その燃焼排ガスが系外に排出される。このとき、SOFCスタックにおいて発電に伴う発熱があり、また燃焼器でも燃焼による発熱がある。これらの熱は改質器405において水蒸気改質反応(吸熱)に利用される。
【0033】
このようなシステムの起動時には、燃焼器404にて発生する燃焼熱を利用してSOFCスタック、さらには改質器を昇温する。具体的には、配管を用いて燃焼排ガスをSOFCスタックや改質器に導き、これらを昇温する。
【0034】
図3を用いて本発明のSOFCスタックを備えるSOFCシステムの例について説明する。SOFCスタック301においては、改質触媒層がセル間に配置されている。このため、SOFCスタックの外部には改質器を必要としない。
【0035】
まず発電時について説明する。改質原料(ライン310)は必要に応じて予熱器302にて予熱媒により予熱され、SOFCスタックの改質触媒層に供給される。改質触媒層で得られた、水素を含有する改質ガスがアノードに供給される。カソードガス(ライン321)には空気等の酸素含有ガス(酸化剤)が用いられ、これが必要に応じて予熱器303にて予熱媒により予熱され、SOFCスタックのカソードに供給される。SOFCスタックから排出されるアノード排ガス(ライン312)およびカソード排ガス(ライン322)は燃焼器304に導かれ、アノード排ガス中の可燃成分がカソード排ガスに含まれる酸素により燃焼し、その燃焼排ガスが系外に排出される。改質触媒層においては水蒸気改質反応による吸熱が支配的であり、発電に伴う発熱が、この吸熱を補うために利用される。すなわち、水蒸気改質反応による吸熱によってSOFCスタックが冷却される。燃焼器で生じる燃焼熱は、水蒸気改質反応に利用してもよいし、あるいは他の熱利用に供することもできる。例えば改質原料の予熱や気化、酸化剤の予熱に利用でき、またスチームタービン、ガスタービン、熱電発電、給湯などの熱源として利用することができる。
【0036】
起動時には、改質触媒層にて部分酸化改質反応による発熱が支配的であり、この発熱によってSOFCスタックが昇温される。部分酸化反応を行うに先立ち、改質触媒層を予熱するために、燃焼器304にて改質原料を燃焼させてその燃焼熱を利用することができる。
【0037】
なお、予熱媒としてはSOFCシステム内に存在する、予熱される側の流体よりも高温の流体を適宜用いることができる。また図示しないが、部分酸化改質反応のための酸素もしくは空気、水蒸気改質反応のための水蒸気などは適宜供給される。
【0038】
改質原料としては、部分酸化改質反応と水蒸気改質反応によって水素を生成しうるものであれば使用できる。例えば炭化水素類、アルコール類、エーテル類を使用することができ、工業用あるいは民生用に安価に入手できる好ましい例として、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル、都市ガス、LPG(液化石油ガス)、ガソリン、灯油などを挙げることができる。
【0039】
上に説明した機器等以外にも、公知のSOFCシステムで用いられる機器等を適宜用いることができる。例えば、灯油等の改質原料中の硫黄分濃度を低減する脱硫器、各種昇圧機、計測制御手段などである。
【0040】
なお、適宜ヘッダーもしくはマニホールド構造を利用して、セル等へのガスの供給や排出を行うことができる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0042】
〔実施例1〕
本実施例では、平板型SOFCを採用しており、セルと改質触媒層とを1つずつ交互に配置している。図1は、本例の平板型SOFCスタックを説明するための部分的模式図である。電解質板1は酸素イオン導電性セラミックスである。電解質板1を挟む位置にアノード電極2aおよびカソード電極2cが配される。アノード電極2aの電解質板とは反対側にアノード側セパレータ3aが配され、カソード電極2cの電解質板とは反対側にカソード側セパレータ3cが配される。つまり、電解質板1と電極2aおよび2cで構成されるセル(単セル)4を挟む位置にセパレータ3aおよび3cが配される。セパレータ3aのセルとは反対側に改質触媒層を収容した容器(改質容器)5が配され、さらに改質容器5のセパレータ3aとは反対側に、隣のセル(不図示)を挟むカソード側セパレータ3c−1が配される。改質容器の外形は平板状である。このようにしてアノード側セパレータとカソード側セパレータに挟まれたセルと、改質容器とが交互に積層される。
【0043】
起動時には、改質原料と酸素含有ガスが改質触媒層に供給されここで部分酸化改質反応が進行して発熱する。改質ガスがアノードに流入することにより、また改質触媒層からの熱伝導(輻射)により、この熱がセルに伝わり、SOFCスタックが加熱、昇温される。発電時には、改質原料と水蒸気が改質触媒層に供給され、水蒸気改質反応により水素を含有する改質ガスが改質触媒層から排出される。改質ガスがSOFCスタックのアノードに供給され、カソードには酸素含有ガスが供給され、アノードにおいて水素と酸素イオンとからH2Oが生成する。このときセルが発熱し、その熱が輻射等により改質触媒層に伝わり、水蒸気改質反応を進行させるための熱が供給される。
【0044】
〔実施例2〕
本実施例では、円筒型SOFCを採用している。改質触媒層は、中空円筒状の容器(パイプ)の中に収容され、円筒状となっている。図2に示すように、セル21−1と、その隣にあるセル21−2との間に、改質触媒層を収容する改質容器25−1が配される。セル21−2の、改質容器25−1とは反対側にも改質容器25−2が配される。セルは、一端が閉じられた円筒状の電解質を挟んで内側にアノード電極が、外側にカソード電極が設けられた構造を有する。
【0045】
起動時には、改質原料と酸素含有ガスとが改質容器25−1に供給され、部分酸化改質されて改質ガスとなる。セル21−1は内管22を有し、内管から改質ガスが供給される。部分酸化改質に伴って発生する熱が、改質ガスによってセルに運ばれ、また輻射によりセルに移動する。これによりSOFCスタックが昇温される。
【0046】
発電時には、改質原料と水蒸気とが改質容器に供給され、水蒸気改質されて改質ガスとなる。改質ガスは内管22からセルの内側(アノード側)に供給される。また酸素含有ガス(酸化剤)が、セルの外側(カソード側)に供給される。セルで発電に伴って生じた熱が、輻射により改質容器に伝わり、水蒸気改質反応に利用される。
【0047】
セル21−1とセル21−3の間には改質触媒層は配置されず、これらは集電体23およびインターコネクタ24により電気的に接続されている。セル21−2とセル21−4との間も同様である。セル21−1および21−3と、セル21−2および21−4とは、不図示の集電体およびインターコネクタにより接続され一本の電気的経路が形成される。
【0048】
なお、ここに示した例に限らず、セルを複数電気接続したセルバンドルの隙間に改質触媒層を配置すればよく、例えばセル21−1とセル21−3との間に改質触媒層を設けることもできる。
【0049】
以上いくつかの例を説明したが、本発明においては、燃料電池スタックを平板型にするか円筒型にするか、改質触媒層を平板状にするか円筒状にするかなど様々な選択が可能であり、その選択に応じた様々な形態があり得る。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のSOFCシステムは、例えば定置用もしくは移動体用の発電システムに、またコージェネレーションシステムに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明のSOFCスタックの一例を示す部分模式図である。
【図2】本発明のSOFCスタックの別の例を示す部分模式図であり、(a)は横断面図、(b)は縦断面図である。
【図3】本発明のSOFCスタックを有するSOFCシステムの一例を説明するための模式図である。
【図4】従来のSOFCシステムを説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0052】
1 電解質板
2a アノード電極
2c カソード電極
3a アノード側セパレータ
3c カソード側セパレータ
4 セル(単セル)
5 改質触媒層を収容する容器
21 セル(単セル)
23 集電体
24 インターコネクタ
25 改質触媒層を収容する容器
301、401 SOFCスタック
302、303、402、403 予熱器
304、404 燃焼器
405 改質器
310、410 改質原料ライン
411 改質ガスライン
312、412 アノード排ガスライン
321、412 カソードガスライン
322、422 カソード排ガスライン
【技術分野】
【0001】
本発明は固体酸化物形燃料電池のセルが複数配された固体酸化物形燃料電池スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、排ガスがクリーンであることや発電効率が比較的高いなどの理由で燃料電池の開発が盛んである。燃料電池の燃料極で実際に電極反応するのは水素であるが、水素よりも都市ガスや灯油等の方が供給体制や取り扱いにおいて優れる面があるため、都市ガスや灯油を改質原料とし、これを改質して水素を含むガスを製造し、これを燃料電池の燃料極に供給することが行われている。
【0003】
固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell。以下場合によりSOFCという。)は作動温度が500〜1000℃程度と高温である。特許文献1には、この熱を有効に利用してエネルギー変換効率を向上させるべく、SOFCスタックの周囲に改質部を配することが開示されている。
【特許文献1】特開2002−358997号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池もしくは燃料電池システムにおいては、起動時間が短いことが実用上望まれる。しかし、SOFCはその作動温度が高いがゆえに、起動時間が長くなる傾向にあり、その短縮が求められている。
【0005】
本発明の目的は、起動を効率的かつ短時間で行うことが可能なSOFCスタックおよびその運転方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により、固体酸化物形燃料電池のセルを複数有し、該セル同士の間に、部分酸化改質能および水蒸気改質能を有する触媒層を有する固体酸化物形燃料電池スタックが提供される。
【0007】
上記固体酸化物形燃料電池スタックにおいて、
前記セルが、平板型であって、
該セルを挟んでアノード側セパレータおよびカソード側セパレータを有し、
一つのセルに接するカソード側セパレータと、該一つのセルの隣のセルに接するアノード側セパレータとの間に、前記触媒層を有することができる。
【0008】
上記固体酸化物形燃料電池スタックにおいて、
前記セルが円筒型であって、前記触媒層が円筒状であることができる。
【0009】
本発明により、上記固体酸化物形燃料電池スタックの運転方法であって、
起動時に、前記触媒層において部分酸化改質反応を進行させ、該部分酸化改質反応に伴う発熱によって該スタックを昇温する工程を有する
固体酸化物形燃料電池スタックの運転方法が提供される。
【0010】
上記方法において、
発電時に、前記触媒層において水蒸気改質反応を進行させ、該水蒸気改質反応に伴う吸熱によって該スタックを冷却する工程を有することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、起動を効率的かつ短時間で行うことが可能なSOFCスタックおよびその運転方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
SOFCスタックは、アノード電極とカソード電極の間に電解質を挟んだセル(単セル)を複数個、セパレータもしくはインターコネクタと呼ばれる電子導電性部材、また集電体と呼ばれる電子導電性部材などにより電気的に接続した構成を有する。
【0013】
SOFCでは、酸素イオン導電性セラミックスもしくはプロトンイオン導電性セラミックスを電解質として利用し、水素と酸素とを電気化学反応させる。このときアノードもしくはカソードでH2Oが生成するとともに発熱する。
【0014】
本発明では、部分酸化改質能および水蒸気改質能を有する触媒層(以下、改質触媒層という。)を、セルとセルの間に配置する。この改質触媒層は部分酸化改質反応を促進可能でかつ水蒸気改質反応を促進可能である。
【0015】
部分酸化改質反応は、発熱反応であり、水蒸気改質反応は吸熱反応である。改質原料としてメタンを例にすれば、部分酸化改質反応は、2CH4+O2→2CO+4H2で表される。水蒸気改質反応はCH4+H2O→3H2+COで表される。SOFCシステムの起動時にはSOFCスタックを昇温するが、この際には、セルの間に位置する改質触媒層にて部分酸化改質反応を行い、その反応熱によってSOFCスタックを昇温することができる。この際、水蒸気改質反応を伴ってもよいが、部分酸化改質反応による発熱の方が、水蒸気改質反応による吸熱より大きくなるようにする。本発明では改質触媒層とセルとの間の伝熱路を短くすることが容易であるため、これにより、改質触媒層からセルへの伝熱を高効率で行うことができ、SOFCの昇温を短時間で行うことが可能となる。
【0016】
また、スタックとは別途設けられた燃焼手段の燃焼ガスなど、スタック外から高温ガスをスタックに導いてスタックを昇温する場合と比較して、スタック内部において加熱することができるため、より均一にスタックを昇温することができる。さらに、スタック昇温のための高温ガス配管を不要とするも可能となる。改質触媒層にて発生する部分酸化改質反応の熱によるスタック昇温に加えて、スタック外から高温ガスをスタックに導いてスタックを昇温することもできるが、この場合でもスタック昇温のための高温ガス配管を小さくすることが可能である。従って、本発明は、SOFCシステムの小型化にも有効である。
【0017】
さらに、SOFCで発電が行われている際にはセルが電気化学反応等により発熱するが、この際には上記改質触媒層で水蒸気改質反応を行い、その反応熱によってSOFCの冷却を行うことができる。この際、部分酸化改質反応を伴ってもよいが、水蒸気改質反応による吸熱の方が、部分酸化改質反応による発熱より大きくなるようにする。この場合も、セルから改質触媒層への伝熱を高効率で行うことができ、熱利用効率を向上させることが可能となる。
【0018】
また、ガス(通例カソードガス)を大量に供給することによってスタックを冷却する場合と比較して、スタック冷却のための所要動力(ブロワ等の消費電力)を低減し、ブロワや配管等を小型化する効果もある。これによってSOFCシステムの高効率化や小型化が可能となる。
【0019】
上記改質触媒層として、部分酸化改質反応を促進可能な部分酸化改質触媒と、水蒸気改質反応を促進可能な水蒸気改質触媒との両者を含む触媒層を用いることができる。例えば部分酸化改質触媒と水蒸気改質触媒を混合して充填した触媒層を採用できる。また、部分酸化改質反応と水蒸気改質反応の両反応を促進可能なオートサーマルリフォーミング触媒を含む触媒層を用いることもできる。
【0020】
部分酸化改質触媒、水蒸気改質触媒、オートサーマルリフォーミング触媒のいずれも、公知のそれぞれの触媒から適宜選んで使用することができる。部分酸化改質触媒の例としては白金系触媒、水蒸気改質触媒の例としてはルテニウム系およびニッケル系、オートサーマル改質触媒の例としてはロジウム系触媒を挙げることができる。また、オートサーマル改質触媒については、特開2000−84410号公報、特開2001−80907号公報、「2000 Annual Progress Reports(Office of Transportation Technologies)」、米国特許5,929,286号公報などに記載されるようにニッケルおよび白金、ロジウム、ルテニウムなどの貴金属等がこれら活性を持つことが知られている。触媒形状としては、ペレット状、ハニカム状、その他従来公知の形状を適宜採用することができる。
【0021】
改質触媒層への供給物の組成を適宜調節することによって、部分酸化改質反応の進行度と、水蒸気改質反応の進行度を調節することができる。例えば、起動時には、改質触媒層において部分酸化反応を行うためには、改質原料と酸素を改質触媒層に供給すればよい。酸素を供給するために、空気、酸素富化空気、純酸素などの酸素含有ガスを改質触媒層に供給することができる。発電時に、改質触媒層において水蒸気改質反応を行うためには、改質触媒層に改質原料と水蒸気を供給すればよい。このとき、酸素の供給を行わなければ、部分酸化改質反応を進行させないようにすることができる。
【0022】
部分酸化改質反応が進行可能な温度は例えば200℃以上1000℃以下、水蒸気改質反応が進行可能な温度は例えば400℃以上1000℃以下である。
【0023】
起動時に行う部分酸化反応の条件としては、例えば、水素製造用原料に含まれる炭素原子モル数に対する酸素分子モル数の比O2/C比(酸素/カーボン比)を例えば1〜6程度とすることができる。
【0024】
必要に応じ、部分酸化改質反応が進行可能な温度まで改質触媒層を適宜加熱することができる。例えば電気ヒータなどを用いてもよいし、燃焼器等で発生させた燃焼熱を利用してもよい。部分酸化改質反応によって、改質触媒層を含むスタックが昇温され、水蒸気改質(もしくはオートサーマル改質)および発電が可能な状況となったら、改質を水蒸気改質(もしくはオートサーマル改質)に移行し、また発電を行うことができる。
【0025】
以下、水蒸気改質、オートサーマル改質のそれぞれにつき、発電時の運転条件について説明する。
【0026】
水蒸気改質の反応温度は例えば450℃〜900℃、好ましくは500℃〜850℃、さらに好ましくは550℃〜800℃の範囲で行うことができる。反応系に導入するスチームの量は、水素製造用原料に含まれる炭素原子モル数に対する水分子モル数の比(スチーム/カーボン比)として定義され、この値は好ましくは0.5〜10、より好ましくは1〜7、さらに好ましくは2〜5とされる。水素製造用原料が液体の場合、この時の空間速度(LHSV)は水素製造用原料の液体状態での流速をA(L/h)、触媒層体積をB(L)とした場合A/Bで表すことができ、この値は好ましくは0.05〜20h-1、より好ましくは0.1〜10h-1、さらに好ましくは0.2〜5h-1の範囲で設定される。
【0027】
オートサーマル改質ではスチームの他に酸素含有ガスが原料に添加される。酸素含有ガスとしては純酸素でも良いが入手容易性から空気が好ましい。水蒸気改質反応に伴う吸熱反応をバランスし、かつ、改質触媒層やSOFCの温度を保持もしくはこれらを昇温できる発熱量が得られるように酸素含有ガスを添加することができる。酸素含有ガスの添加量は、水素製造用原料に含まれる炭素原子モル数に対する酸素分子モル数の比(酸素/カーボン比)として好ましくは0.05〜1、より好ましくは0.1〜0.75、さらに好ましくは0.2〜0.6とされる。オートサーマル改質反応の反応温度は例えば450℃〜900℃、好ましくは500℃〜850℃、さらに好ましくは550℃〜800℃の範囲で設定される。水素製造用原料が液体の場合、この時の空間速度(LHSV)は、好ましくは0.1〜30、より好ましくは0.5〜20、さらに好ましくは1〜10の範囲で選ばれる。反応系に導入するスチームの量は、スチーム/カーボン比として好ましくは0.3〜10、より好ましくは0.5〜5、さらに好ましくは1〜3とされる。
【0028】
改質触媒層をセル間に設けるために、改質触媒層を収容した適宜の形状の容器をセル間に設けることができる。また隣り合う二つのセパレータの間の領域の周囲を適宜封止してその内部に改質触媒層を収容することができる。
【0029】
改質触媒層に改質原料を供給するための流路や改質触媒層で得られた改質ガスをセルに供給するための流路も適宜形成することができる。例えば、各改質触媒層にスタック外部から配管を通じて改質原料を供給することができる。また平板型SOFCスタックの場合は、各セルへのアノードおよびカソードガスの供給および排出のためにセルを貫通するマニホールド孔が利用されるが、改質原料の供給のためにもマニホールド孔を利用することができる。改質ガスのセルへの供給についても、配管を利用してもよいし、改質触媒層を収容する容器やセパレータに、改質触媒層からセル(特にはアノード室)にガス供給可能な孔を設けてもよい。改質触媒層の入口および出口には、必要に応じてオリフィスや金属メッシュなどを設け、触媒層を固定することができる。
【0030】
セル間に改質触媒層を設け、これに伴ってガス供給もしくは排出のための流路を設けること以外のSOFCスタックの部材や構造については、公知のSOFCスタックの部材や構造から適宜選んで採用することができる。例えば、SOFCスタックとして、図1に例を示すような平板型や、図2に例を示すような円筒型などの各種形状を適宜選んで採用できる。
【0031】
SOFCスタックにおいては、実用上、多数のセルを積層もしくは整列させることが多い。この場合、セル同士の間の全てに改質触媒層を配置してもよいし、一部のみに改質触媒層を配置しても良い。例えば平板型SOFCの場合、セル毎に改質触媒層を配置することもできるし、複数枚のセルをブロックとして、ブロック毎に改質触媒層を配するなど、複数のセル毎に配置してもよい。
【0032】
〔SOFCシステム〕
図4を用いて従来のSOFCシステムの例を説明する。まず発電時について説明する。改質原料(ライン410)が改質器405にて改質されて水素含有ガスである改質ガス(ライン411)となり、改質ガスが必要に応じて予熱器402にて予熱媒により予熱され、SOFCスタック401のアノードに供給される。一方、カソードガス(ライン421)には空気等の酸素含有ガス(酸化剤)が用いられ、これが必要に応じて予熱器403にて予熱媒により予熱され、SOFCスタックのカソードに供給される。SOFCスタックから排出されるアノード排ガスおよびカソード排ガスは、それぞれライン412および422から燃焼器404に導かれ、アノード排ガス中の可燃成分がカソード排ガスに含まれる酸素により燃焼し、その燃焼排ガスが系外に排出される。このとき、SOFCスタックにおいて発電に伴う発熱があり、また燃焼器でも燃焼による発熱がある。これらの熱は改質器405において水蒸気改質反応(吸熱)に利用される。
【0033】
このようなシステムの起動時には、燃焼器404にて発生する燃焼熱を利用してSOFCスタック、さらには改質器を昇温する。具体的には、配管を用いて燃焼排ガスをSOFCスタックや改質器に導き、これらを昇温する。
【0034】
図3を用いて本発明のSOFCスタックを備えるSOFCシステムの例について説明する。SOFCスタック301においては、改質触媒層がセル間に配置されている。このため、SOFCスタックの外部には改質器を必要としない。
【0035】
まず発電時について説明する。改質原料(ライン310)は必要に応じて予熱器302にて予熱媒により予熱され、SOFCスタックの改質触媒層に供給される。改質触媒層で得られた、水素を含有する改質ガスがアノードに供給される。カソードガス(ライン321)には空気等の酸素含有ガス(酸化剤)が用いられ、これが必要に応じて予熱器303にて予熱媒により予熱され、SOFCスタックのカソードに供給される。SOFCスタックから排出されるアノード排ガス(ライン312)およびカソード排ガス(ライン322)は燃焼器304に導かれ、アノード排ガス中の可燃成分がカソード排ガスに含まれる酸素により燃焼し、その燃焼排ガスが系外に排出される。改質触媒層においては水蒸気改質反応による吸熱が支配的であり、発電に伴う発熱が、この吸熱を補うために利用される。すなわち、水蒸気改質反応による吸熱によってSOFCスタックが冷却される。燃焼器で生じる燃焼熱は、水蒸気改質反応に利用してもよいし、あるいは他の熱利用に供することもできる。例えば改質原料の予熱や気化、酸化剤の予熱に利用でき、またスチームタービン、ガスタービン、熱電発電、給湯などの熱源として利用することができる。
【0036】
起動時には、改質触媒層にて部分酸化改質反応による発熱が支配的であり、この発熱によってSOFCスタックが昇温される。部分酸化反応を行うに先立ち、改質触媒層を予熱するために、燃焼器304にて改質原料を燃焼させてその燃焼熱を利用することができる。
【0037】
なお、予熱媒としてはSOFCシステム内に存在する、予熱される側の流体よりも高温の流体を適宜用いることができる。また図示しないが、部分酸化改質反応のための酸素もしくは空気、水蒸気改質反応のための水蒸気などは適宜供給される。
【0038】
改質原料としては、部分酸化改質反応と水蒸気改質反応によって水素を生成しうるものであれば使用できる。例えば炭化水素類、アルコール類、エーテル類を使用することができ、工業用あるいは民生用に安価に入手できる好ましい例として、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル、都市ガス、LPG(液化石油ガス)、ガソリン、灯油などを挙げることができる。
【0039】
上に説明した機器等以外にも、公知のSOFCシステムで用いられる機器等を適宜用いることができる。例えば、灯油等の改質原料中の硫黄分濃度を低減する脱硫器、各種昇圧機、計測制御手段などである。
【0040】
なお、適宜ヘッダーもしくはマニホールド構造を利用して、セル等へのガスの供給や排出を行うことができる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0042】
〔実施例1〕
本実施例では、平板型SOFCを採用しており、セルと改質触媒層とを1つずつ交互に配置している。図1は、本例の平板型SOFCスタックを説明するための部分的模式図である。電解質板1は酸素イオン導電性セラミックスである。電解質板1を挟む位置にアノード電極2aおよびカソード電極2cが配される。アノード電極2aの電解質板とは反対側にアノード側セパレータ3aが配され、カソード電極2cの電解質板とは反対側にカソード側セパレータ3cが配される。つまり、電解質板1と電極2aおよび2cで構成されるセル(単セル)4を挟む位置にセパレータ3aおよび3cが配される。セパレータ3aのセルとは反対側に改質触媒層を収容した容器(改質容器)5が配され、さらに改質容器5のセパレータ3aとは反対側に、隣のセル(不図示)を挟むカソード側セパレータ3c−1が配される。改質容器の外形は平板状である。このようにしてアノード側セパレータとカソード側セパレータに挟まれたセルと、改質容器とが交互に積層される。
【0043】
起動時には、改質原料と酸素含有ガスが改質触媒層に供給されここで部分酸化改質反応が進行して発熱する。改質ガスがアノードに流入することにより、また改質触媒層からの熱伝導(輻射)により、この熱がセルに伝わり、SOFCスタックが加熱、昇温される。発電時には、改質原料と水蒸気が改質触媒層に供給され、水蒸気改質反応により水素を含有する改質ガスが改質触媒層から排出される。改質ガスがSOFCスタックのアノードに供給され、カソードには酸素含有ガスが供給され、アノードにおいて水素と酸素イオンとからH2Oが生成する。このときセルが発熱し、その熱が輻射等により改質触媒層に伝わり、水蒸気改質反応を進行させるための熱が供給される。
【0044】
〔実施例2〕
本実施例では、円筒型SOFCを採用している。改質触媒層は、中空円筒状の容器(パイプ)の中に収容され、円筒状となっている。図2に示すように、セル21−1と、その隣にあるセル21−2との間に、改質触媒層を収容する改質容器25−1が配される。セル21−2の、改質容器25−1とは反対側にも改質容器25−2が配される。セルは、一端が閉じられた円筒状の電解質を挟んで内側にアノード電極が、外側にカソード電極が設けられた構造を有する。
【0045】
起動時には、改質原料と酸素含有ガスとが改質容器25−1に供給され、部分酸化改質されて改質ガスとなる。セル21−1は内管22を有し、内管から改質ガスが供給される。部分酸化改質に伴って発生する熱が、改質ガスによってセルに運ばれ、また輻射によりセルに移動する。これによりSOFCスタックが昇温される。
【0046】
発電時には、改質原料と水蒸気とが改質容器に供給され、水蒸気改質されて改質ガスとなる。改質ガスは内管22からセルの内側(アノード側)に供給される。また酸素含有ガス(酸化剤)が、セルの外側(カソード側)に供給される。セルで発電に伴って生じた熱が、輻射により改質容器に伝わり、水蒸気改質反応に利用される。
【0047】
セル21−1とセル21−3の間には改質触媒層は配置されず、これらは集電体23およびインターコネクタ24により電気的に接続されている。セル21−2とセル21−4との間も同様である。セル21−1および21−3と、セル21−2および21−4とは、不図示の集電体およびインターコネクタにより接続され一本の電気的経路が形成される。
【0048】
なお、ここに示した例に限らず、セルを複数電気接続したセルバンドルの隙間に改質触媒層を配置すればよく、例えばセル21−1とセル21−3との間に改質触媒層を設けることもできる。
【0049】
以上いくつかの例を説明したが、本発明においては、燃料電池スタックを平板型にするか円筒型にするか、改質触媒層を平板状にするか円筒状にするかなど様々な選択が可能であり、その選択に応じた様々な形態があり得る。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のSOFCシステムは、例えば定置用もしくは移動体用の発電システムに、またコージェネレーションシステムに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明のSOFCスタックの一例を示す部分模式図である。
【図2】本発明のSOFCスタックの別の例を示す部分模式図であり、(a)は横断面図、(b)は縦断面図である。
【図3】本発明のSOFCスタックを有するSOFCシステムの一例を説明するための模式図である。
【図4】従来のSOFCシステムを説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0052】
1 電解質板
2a アノード電極
2c カソード電極
3a アノード側セパレータ
3c カソード側セパレータ
4 セル(単セル)
5 改質触媒層を収容する容器
21 セル(単セル)
23 集電体
24 インターコネクタ
25 改質触媒層を収容する容器
301、401 SOFCスタック
302、303、402、403 予熱器
304、404 燃焼器
405 改質器
310、410 改質原料ライン
411 改質ガスライン
312、412 アノード排ガスライン
321、412 カソードガスライン
322、422 カソード排ガスライン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸化物形燃料電池のセルを複数有し、該セル同士の間に、部分酸化改質能および水蒸気改質能を有する触媒層を有する固体酸化物形燃料電池スタック。
【請求項2】
前記セルが、平板型であって、
該セルを挟んでアノード側セパレータおよびカソード側セパレータを有し、
一つのセルに接するカソード側セパレータと、該一つのセルの隣のセルに接するアノード側セパレータとの間に、前記触媒層を有する
請求項1記載の固体酸化物形燃料電池スタック。
【請求項3】
前記セルが円筒型であって、前記触媒層が円筒状である
請求項1記載の固体酸化物形燃料電池スタック。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項記載の固体酸化物形燃料電池スタックの運転方法であって、
起動時に、前記触媒層において部分酸化改質反応を進行させ、該部分酸化改質反応に伴う発熱によって該スタックを昇温する工程を有する
固体酸化物形燃料電池スタックの運転方法。
【請求項5】
発電時に、前記触媒層において水蒸気改質反応を進行させ、該水蒸気改質反応に伴う吸熱によって該スタックを冷却する工程を有する
請求項4記載の固体酸化物形燃料電池スタックの運転方法。
【請求項1】
固体酸化物形燃料電池のセルを複数有し、該セル同士の間に、部分酸化改質能および水蒸気改質能を有する触媒層を有する固体酸化物形燃料電池スタック。
【請求項2】
前記セルが、平板型であって、
該セルを挟んでアノード側セパレータおよびカソード側セパレータを有し、
一つのセルに接するカソード側セパレータと、該一つのセルの隣のセルに接するアノード側セパレータとの間に、前記触媒層を有する
請求項1記載の固体酸化物形燃料電池スタック。
【請求項3】
前記セルが円筒型であって、前記触媒層が円筒状である
請求項1記載の固体酸化物形燃料電池スタック。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項記載の固体酸化物形燃料電池スタックの運転方法であって、
起動時に、前記触媒層において部分酸化改質反応を進行させ、該部分酸化改質反応に伴う発熱によって該スタックを昇温する工程を有する
固体酸化物形燃料電池スタックの運転方法。
【請求項5】
発電時に、前記触媒層において水蒸気改質反応を進行させ、該水蒸気改質反応に伴う吸熱によって該スタックを冷却する工程を有する
請求項4記載の固体酸化物形燃料電池スタックの運転方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2007−200709(P2007−200709A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−17786(P2006−17786)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】
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