説明

固体酸化物形燃料電池用電解質シート及びその製法

両面に形成される電極膜との密着性を高め得ると共に、電極反応面積の増大によって燃料電池の発電特性を高めることのできる固体酸化物形燃料電池用電解質シートを提供するもので、シート状の焼結体からなり、レーザー光学式非接触三次元形状測定装置で測定したシート表面の粗さが、いずれの面もRzで2.0〜20μm、Raで0.20〜3.0μm、更に、シートの一方側のRz,Raが何れも小さい方の面に対する他方側の面(上記Rz,Raが何れも大きい方の面)のRzの比(Rz比)が1.0〜3.0、Raの比(Ra比)が1.0〜3.0で、少なくとも一方の面のRmaxとRzの比(Rmax/Rz比)が1.0〜2.0ある固体酸化物形燃料電池用電解質シートとその製法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は固体酸化物形燃料電池用電解質シートとその製法に関し、特にスクリーン印刷などで該シート両面に電極形成を行う際に、電解質シートと電極との密着性を高め得ると共に、電極反応面積の増大によって燃料電池の発電特性を高めることができ、コストパフォーマンスに優れた燃料電池用セルを得るのに有用な固体酸化物形燃料電池用電解質シートとその製法に関するものである。
【背景技術】
セラミックスは、耐熱性や耐摩耗性などの機械的性質に加えて電気的・磁気的特性にも優れたものであることから、多くの分野で活用されている。中でもジルコニアを主体とするセラミックシートは、優れた酸素イオン伝導性や耐熱・耐食性、靭性、耐薬品性などを有していることから、酸素センサーや湿度センサーの如きセンサー部品の固体電解質膜、更には燃料電池用の固体電解質膜として活用されている。
燃料電池用の固体電解質膜としては、電池反応の有効面積を増大させて発電性能を高めるため、電極との接触面積を大きくすることが求められる。また、固体電解質膜から電極層が剥離するのを防ぐには、表面に適度の凹凸を有するものが望ましい。そのため固体電解質膜を作製する際には、表面をブラスト加工し、或いは粗粒ジルコニアペーストなどを塗布してから焼成することによりテクスチャー層を設ける、等によって粗面化する方法が検討されてきた。
また本発明者らも、かねてより、電極層との密着性を高めることのできるジルコニアシートの表面粗さについて検討しており、その一環として、JIS B−0601の規定における最大粗さ(Ry)が0.3〜3μmで、且つ算術的粗さ中間値(Ra)が0.02〜0.3μmの範囲のものは、シート面と電極印刷層との界面で高い密着性を示し剥離を起こし難いこと、またこうした表面粗さを達成するための手段として、スラリー状態での粒度分布を制御する方法を開発し、先に提案した(特開2000−281438号公報)。
しかし、電解質表面の表面粗さと発電性能との関係については明らかにされていない。即ちこの公報に記載された方法では、電極反応中における電解質面からの経時的な電極層の剥離に対する電解質面と電極層間の密着性しか考慮されていない。しかも、電解質シート表面の粗さと発電特性の関係については全く考慮されておらず、電極印刷層の密着性と発電特性の両方を満足する電解質シートは記載されていない。
また特開2000−351669号公報には、JIS B−0601に規定される粗さ曲線の平均線よりも窪んだ部分を特定したLaGaO系酸化物焼結体が開示されている。しかしこの発明は、高密度で緻密な焼結体を得るための技術として開発されたもので、表面粗さや発電性能については開示がなく、電極印刷層の密着性と発電特性の両方を満たす電解質シートは記載されていない。
また、単位面積当たりの発電量を向上させるための手段として、固体電解質グリーンシートの上に8モル%酸化イットリウム安定化ジルコニア(以下、8YSZと記す)や10モル%酸化スカンジウム安定化ジルコニア(以下、10ScSZと記す)よりなる粗大粒子をスクリーン印刷し、固体電解質シートの表面に粗大粒子を付着させてから焼成することによって、電極との接触面積を増大し、電極層との電極反応面積を増加させる方法が提案されている(第4回ヨーロッパSOFCフォーラム予稿集第697頁、2000年、および第7回固体酸化物形燃料電池国際シンポジウム(SOFC VII)予稿集第349頁,2001年)。
しかしこれらの報文にも、電解質表面の表面粗さと発電性能との関連については言及されていない。
更に、特開2002−42831号公報には、燃料電池の高出力化に寄与するグリーンシートの成形に好適な離型フィルムが開示されている。しかしこの離型フィルムは、固体電解質の一方の面について表面積の拡大を意図するだけで、電流密度の増加率も高々4%程度までであり、満足し得るものとは言い難い。また該公報に開示された技術でも、電極印刷層の密着性と発電特性の両方を満たす電解質シートを得ることができない。
他方、一般的な表面粗面化法としてブラスト加工法があり、例えば半導体ウエハーチャックを粗面化し、あるいはSAWフィルター基板の裏面を粗面化するための手段として、ブラスト加工する方法が知られている。ところが、膜厚が0.5mm程度以下、特に200μm以下といった非常に薄い固体電解質膜の表面をブラスト加工すると、ブラスト加工により与えられた応力によって固体電解質膜に反りやうねり等が発生するという問題が生じてくる。即ち現状の技術レベルでは、膜厚の薄い固体電解質シートの表面を物理的に粗面化することは難しい。
しかも、上記の如く固体電解質膜の表面をブラスト加工する方法や、固体電解質の表面に粗粒ジルコニアペーストを塗布してから焼成しテクスチャー層を設けるといった前処理法は、量産に不向きでセル製造コストを高めるため、改善の必要がある。
また、電極印刷層の密着性と発電特性の両方を満足せしめ得るような電解質シートに対する要望が存在しない訳ではないが、その様な要望に叶う電解質シートを得るための具体的な方法を開示したものは知らない。
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、理論密度に対する嵩密度が97%以上で、且つ実質的にガス透過率がゼロである緻密質のシート状焼結体であって、シート両面に電極印刷が施される固体酸化物形燃料電池用電解質シートを対象とし、発電特性を高め得ると共に、安定して優れた熱的、機械的特性を有し、しかも、その表面に電極印刷などを高密着性で強力に接合することができ、剥離などによる発電特性の低下を起こすことなく優れた性能を安定して発揮し得る電解質シートを提供し、更には、その様な高性能の電解質シートを工業的量産性の高い方法で効率よく製造することのできる技術を確立することにある。
【発明の開示】
上記課題を解決することのできた本発明にかかる固体電解質シートとは、シート状の焼結体からなり、レーザー光学式非接触三次元形状測定装置で測定したシート表面の粗さが、いずれの面もRzで2.0〜20μm、Raで0.20〜3.0μmであり、更に加えて、下記1)〜3)の何れかの要件を満たすものであるところに特徴を有している。
1)シートのRzが小さい方の面に対する他方側の面(上記Rzが大きい方の面)のRzの比(Rz比)が1.0〜3.0であり、且つ少なくとも一方の面のRmaxとRzの比(Rmax/Rz比)が1.0〜2.0である。
2)シートのRaが小さい方の面に対する他方側の面(上記Raが大きい方の面)のRaの比(Ra比)が1.0〜3.0であり、且つ、少なくとも一方の面のRmaxとRzの比(Rmax/Rz比)が1.0〜2.0である。
3)シートのRz,Raがいずれも小さい方の面に対する他方側の面(上記Rz,Raがいずれも大きい方の面)のRzの比(Rz比)が1.0〜3.0であり、且つRaの比(Ra比)が1.0〜3.0である他、少なくとも一方の面のRmaxとRzの比(Rmax/Rz比)が1.0〜2.0である。
上記において、Rz(平均化された粗さ深度)、Ra(算術的粗さ中間値)、Rmax(最大粗さ深度)は、ドイツ規格DIN−4768に準拠して求めた粗さパラメータであり、シートの夫々の面について測定した数値である。
本発明の上記電解質シートにおいては、上記の様にRzとRaを特定の範囲に設定することで、セルとした時の発電特性と電極の密着性・耐剥離性を高めることができ、また上記Ra比とRmax/Rz比を特定範囲に定めることで、優れた電極印刷性と印刷作業性を確保できる。殊に、「Rmax/Rz比が1.0〜2.0」ということは、該電解質シート断面から見たときの突起が小さくて、表面の最高端が揃った凹面状になっていることを意味しており、電極印刷時にカスレ等がなく均一な厚さの電極形成を可能にする上で重要な特性となる。
また上記電解質として最も好ましいのは、2〜10モル%の酸化イットリウムで安定化されたジルコニア、3〜12モルの酸化スカンジウムで安定化されたジルコニア、LaGaO系酸化物およびCeO系酸化物よりなる群から選択される少なくとも1種からなるものである。
そして本発明の製法は、主として上記特定の表面性状を満たす固体酸化物形燃料電池用電解質シートを確実に得ることのできる方法として位置付けられるもので、その構成は、スラリー中の固形成分の粒度構成が、50体積%径(以下、d50と記す)が0.2〜0.8μm、90体積%径(以下、d90という)が0.8〜10μmであり、且つ、粒度分布が、0.2〜0.8μmと0.8〜10μmの範囲にそれぞれ1つのピークを有するグリーンシート製造用スラリーを製造し、該スラリーを、塗工面の表面粗さがRzで3〜30μm以下であり、且つRaで0.3〜5μmである高分子フィルム上にシート成形して電解質グリーンシートを作製した後、焼成するところに要旨を有している。
そして、上記の様なグリーンシート製造用スラリーを得るための好ましい方法としては、d50が0.2〜0.8μm、d90が0.8〜10μmの原料粉末(A)、バインダー、分散剤および溶剤をミリングして得たスラリーに、d50が0.2〜2μm、d90が0.8〜20μmである原料粉末(B)を、全原料粉末中に占める比率で1〜30質量%添加し、該原料粉末(B)を添加した後のミリング時間(T)と前記原料粉末(A)のみのミリング時間(T)との比(T/T)が1/100〜1/2となる様に、更にミリングする方法が挙げられる。
そして、上記粒度構成のグリーンシート製造用スラリーを用いて電解質グリーンシートを製造した後これを所定形状に切断し、切断した該グリーンシートを積層して焼成する際に、積層されるグリーンシートの間にスペーサーとして多孔質セラミックシート、該多孔質シートの前駆体グリーンシートおよびセラミック粒子よりなる群から選択される少なくとも1種を配置してから焼成する方法を採用すれば、積層される電解質グリーンシート同士が融着することなく、反りやウネリの少ない平坦なシートを生産性よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、実験で使用した単セル発電評価装置を示す概念図である。
1:ヒータ、2:アルミナ製外筒管、3:アルミナ製内筒管、4:白金リード線、5:固体電解質シート、6:カソード、7:アノード、8:シール材
【発明を実施するための最良の形態】
本発明者らは前述した様な解決課題の下で、電解質シートの製造条件と、当該製造条件のファクターにより変わってくる電解質シートの物性(特に、電解質シートの表面粗さと発電特性)について詳細に研究を重ねてきた。その結果、追って詳述していく本発明の方法を採用すれば、特定の表面粗さを規定することにより、電極層の密着性と発電特性を共に満足する電解質シートが得られることを突き止め、更には、当該物性を備えた目的物を安定して得ることのできる製造条件を特定し得たものである。そして以下に詳述する如く、電解質シートの表面粗さ状態を新たな指標とすることで、上記電極層の密着性や発電特性の確保を容易とし、簡便な製造技術を確立することに成功した。また本発明の製法を採用すれば、目的物をより確実に得ることができるが、本発明では目的物を得るための指標が明らかにされているので、本発明で定める製法以外でも、製造条件を様々に工夫すれば、本発明の目的に叶う電解質シートを得ることも勿論可能となる。
以下、本発明の具体的な構成を詳細に説明していく。
まず本発明者らは、固体酸化物形燃料電池用電解質シートの両面の表面粗さが、電極印刷層の密着性や発電特性に少なからぬ影響を及ぼすとの確信の下で、シート両面の表面粗さについて研究を進めてきた。その結果、該シート両面の表面粗さを、RzとRaが特定範囲内となる様に、且つ、Rz比とRa比が特定の範囲内となる様に調整し、更にRmax/Rz比を特定の範囲内に調整したものは、優れた電極密着性を示し、且つ両面の表面粗さの差が少ないことから、優れた電極印刷作業性と印刷安定性を示すことが確認された。また、この電解質シートを用いて得られる発電セルは、同じ電解質材料や同じ電極材料を使用しても、非常に優れた発電性能を有するものになることが確認された。
ちなみに、該電解質シート表面が平滑過ぎる場合、具体的には、Rzが2.0μm未満および/またはRaが0.20μm未満である場合は、電極反応場を構成する固体電解質−電極−気孔の三相界面となる有効接触面積が少なくなる。そのため、電池としての発電性能、すなわち、電極単位面積当たりの発電量が小さくなるばかりでなく、電極形成後の焼結時あるいは使用時に高温で長時間曝されたとき、または室温と高温の間で繰り返し熱履歴を受けたときに、シート表面と電極層との間で剥離を起こし易くなる。
従ってこうした問題を回避するには、電極の塗布・形成に先立って、電解質シートの表面を粗面化することが必要になる。但し、該シートの表面粗さが大き過ぎる場合、具体的にはRzが20μmを超え、及び/又はRaが3.0μmを超える場合は、発電性能の向上に寄与する均一厚さの電極形成が困難になり、更には、電極層の密着性が低下するばかりでなく電解質シート自体の曲げ強度も弱くなる。
ちなみに、電解質シートを成形する方法として一般的に採用されているのは、前述の如く電解質原料粉末と有機質バインダー、分散剤、溶剤、必要により可塑剤や消泡剤などを含むスラリーを、離型処理した高分子フィルム上にドクターブレード法、カレンダー法、押出し法などによって敷き延べてシート状に成形し、これを乾燥し分散媒を揮発させてグリーンシートを得、これを切断、パンチング等により適当なサイズに揃えてから焼成し、有機質バインダーを分解除去すると共に、セラミックス粉末を相互に焼結させる方法である。こうして得られるグリーンシートの表面粗さは、上記高分子フィルムに接した面(塗工面側)は、フィルムの表面粗さが転写される傾向にあり、他方の面である乾燥時に大気に開放されている表面側(Air面側)の粗さは、原料スラリー中の固形成分の粒度分布に依存する傾向がある。
つまり、焼成後の電解質シートの表面粗さについては、塗工面側の表面粗さには、電解質グリーンシートを成形する際に用いる高分子フィルムの表面粗さが影響を及ぼし、またAir面側の表面粗さには、電解質シートの前駆体となる電解質グリーンシートの製造に用いるスラリーの粒度分布が影響を及ぼし、どちらの面も粗めのものを使用すると表面粗さは相対的に粗くなり、微細なものを使用すると表面粗さは相対的に細かくなることが確認された。
そのため、ミリングした通常のスラリーと通常の高分子フィルムを用いる場合、塗工面側の表面粗さはAir面側よりも1桁以上小さくなる傾向があるが、本発明では、特定の表面粗さに粗面化したフィルムを使用することで塗工面側の表面粗さを規制し、またAir面側の表面粗さについては、ミリングして得た通常のスラリーに更に原料粉体を添加してスラリー中の固形成分の粒度分布が、特定の範囲にそれぞれ1つのピークを有するグリーンシート製造用スラリーを使用することによって調整し、両面の表面粗さが何れも前述した範囲に納まり、且つ一方の面と他方の面の表面粗さが大きく異なることがない様、両面の表面粗さ比が特定範囲内に納まるように規定している。
なお本発明でいう上記表面粗さとは、1990年5月に改正されたドイツ規格「DIN−4768」の電気接触式粗さパラメータRa,Rz,Rmaxの測定に準拠して測定した値をいい、測定器としては、シート表面に非接触状態で測定するレーザー光学式非接触三次元形状測定装置を使用した。
この装置の主な測定原理は、780nmの半導体レーザー光源から可動対物レンズを通して試料面(すなわち、電解質シート面)で直径1μmのフォーカスを結び、この時、正反射光は同じ光路を戻りビームスリッターを介して4つのフォトダイオード上に均等に結像されるため、凹凸のある測定試料面では変位して像に不均等が生じ、即座にこれを解消する信号が発せられ対物レンズの焦点が常に測定物表面に合うようにレンズが制御される時の移動量をライトバリア測定機構で検出することで高精度な測定を行うもので、その仕様は、スポット径1μm、分解能は測定レンジの0.01%(最高0.01μm)である。
ドイツ規格「DIN−4768」では、電気接触式粗さパラメータによるRa,Rz,Rmaxの測定を規定しているが、本発明で定める前記Ra,Rz,Rmaxは、この測定装置に付帯しているRa,Rz,Rmaxの測定法と、Ra,Rz,Rmax計算解析プログラムから「DIN−4768」に準拠して求めたものである。
即ち、Rzを測定する場合、Rzが0.1μm超0.5μmの範囲の場合は、遮断波長(λc)0.25mm、個別測定区間(1e)0.25mm、総合測定区間(1m)1.25mmとし、Rzが0.5μmを超え10μm未満の場合は、(λc)を0.8mm、(1e)を0.8mm、(1m)を4mmとし、Rzが10μmを超え50μm未満の場合は、(λc)を2.5mm、(1e)を2.5mm、(1m)を12.5mmとして測定する。
またRaの測定に当たっては、Raが0.1μm超、2μmの範囲の場合は、(λc)を0.8mm、(1m)を4mmとし、Rzが2μm超、10μm未満の場合は、(λc)を2.5mm、(1m)を12.5mmとして測定した値である。
一般に、表面粗さはダイヤモンドプルーブ等を被測定物の表面に接触させ、表面の位相差を電気的信号に変換して測定する接触式表面粗さ測定装置で評価されている。しかし、そのプルーブ径は最小でも2μmでレーザー光学式よりも大きく、しかも凹部や凸部でプルーブが引掛りを起こすためか、接触式表面粗さ測定装置によって求められる表面粗さは、発電性能に大きな差となって現れ難い傾向がある。しかし、レーザー光学式非接触測定法であれば、前述の如く接触式測定装置よりも正確に表面形状や粗さを把握し得ると予想される。そこで本発明では、レーザー光学式非接触測定装置によって測定した表面粗さ測定値を電解質シートの表面粗さとした。
そして、この方法によって求められるシート両面の表面粗さが上記範囲に納まるものは、電極反応場(反応有効面積)の増大によって発電性能が向上し電極面積当たりの発電量が高められる。更には、電解質シートの両面に均一な厚さの電極を容易に塗布形成できると共に、適度のアンカー効果によって高レベルの密着性を確保でき、電極焼成時あるいは高温に曝される稼動時においても、また低温から高温の条件に繰り返し曝される熱履歴を受けた場合でも、電極皮膜の剥離を可及的に阻止することが可能となる。
上記電極単位面積当たりの発電量、電極皮膜の形成性と密着性の双方を考慮してより好ましい表面粗さは、Rzで3μm以上、より好ましくは4μm以上で、15μm以下、より好ましく12μm以下、Raで0.4μm以上、より好ましくは0.5μm以上で、2μm以下、より好ましくは1.5μm以下である。
また本発明においては、シート両面の粗さがRzおよびRaとして上記要件を満たすことに加えて、下記a)〜c)の何れかの要件を満たすものであることを必要とする。
a)シートのRzが小さい方の面に対する他方側の面(上記Rzが大きい方の面)のRzの比(Rz比)が1.0〜3.0であること。
b)シートのRaが小さい方の面に対する他方側の面(上記Raが大きい方の面)のRaの比(Ra比)が1.0〜3.0であること。
c)シートのRz,Raがいずれも小さい方の面に対する他方側の面(上記Rz,Raがいずれも大きい方の面)のRzの比(Rz比)が1.0〜3.0であり、且つRaの比(Ra比)が1.0〜3.0であること。
なお上記において、シート両面の表面粗さを規定する際に、一方側面のRz(またはRa)が他方側面のRz(またはRa)よりも大きい場合は、通常は一方面側のRa(またはRz)も他方面側のRa(またはRz)より大きくなり、よって一般的には、シートの一方側面(Rz,Raの両方が小さい方の面)に対する他方側面(Rz,Raの両方が大きい方の面)に対する比率で規定される。しかしシートの成形条件などによっては、一方側面のRz(またはRa)だけが他方側面のRz(またはRa)よりも大きい場合もあり得るので、本発明ではこの様な場合も想定して上記の様に定めた。
上記Rz比やRa比が上記好適範囲を超える場合は、両面の表面粗さが違い過ぎるため印刷適性に差が生じ、電極印刷に使用するペーストの物性や印刷条件、焼成条件をそれぞれの面に適合させる必要が生じ、電極の製造作業が煩雑になる。
更に本発明の上記電解質シートにおいては、シート表面のRmaxとRzの比が重要な制御因子になる。即ち、Rmax/Rz比が1以上で、2以下、より好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.3以下であるものは、RmaxとRzとの差が小さいことを意味しており、当該電解質シートを断面方向に見たとき、突起が比較的小さく且つ高さが全体的にほぼ揃った形状になっていることを表わしている。そのため、スクリーン印刷時にシート印刷面に刷版が均等に接触して電極印刷をスムーズに行える結果、膜厚が均一で且つ均質な電極膜が得られ易くなるのである。
逆に、Rmax/Rz比が2.0を超えるものは、電解質シートを断面方向に見たときに、部分的に高い突起が存在して表面凸凹が顕著であることを表わしており、スクリーン印刷時にシート印刷面に存在する高い突起が刷版に接触し、電極印刷が均等になり難くなって電極膜にカスレ等が生じ、均質で且つ均一な厚さの電極膜が得られ難くなるためと考えられる。
本発明で意図する前記表面粗さ範囲の電解質シートをより効率よく得るには、グリーンシートを製造する際に用いるフィルムとして、塗工面のRzが3μm以上30μm以下、より好ましくは5μm以上20μm以下で、且つRaが0.3μm以上5μm以下、より好ましくは0.5μm以上3μm以下である高分子フィルムを使用することが好ましい。即ち、この様な表面粗さのフィルムを用いてグリーンシートを製造すれば、該フィルムの表面粗さがグリーンシートの塗工面側に転写されるからである。
このとき、高分子フィルムの表面粗さを調整する好ましい手法としては、フィルムの塗工面にアルミナ、セリア、ジルコニア等の粒子をコーティングする方法が挙げられ、これらの方法であれば、使用する粒子の粒子径を任意に選定することで表面粗さを任意に調整できる。たとえば平均粒径が8μmのアルミナ粒子をコーティングして表面を粗面化すると、Rzは約7.9μm、Raは約0.9μmとなり、平均粒径が20μmのアルミナ粒子をコーティングして表面を粗面化すると、Rzは約12.4μm,Raは約1.8μmとなる。
使用する高分子フィルムの表面粗さRzが30μmを上回り、またRaが5μmを上回ると、塗工したグリーンシートを高分子フィルムからの剥離させるのが困難になって作業性が悪くなる。一方、Rzが3μm未満で且つRaが0.3μm未満の高分子フィルムを使用すると、電解質シートの塗工面側の表面粗さがRzで2.0μm未満、Raが0.20μm未満となり、本発明で意図する表面粗度を満たす電解質シートが得られ難くなる。
また、この様に粒子のコーティング付着によって粗面化した高分子フィルムを使用すると、当該フィルムの表面状態は基準面(平坦面)に対し粒子が付着した部分のみが突出した形状となる。従って該粗面化フィルムを用いてグリーンシートを成形すると、粗面化フィルム表面の凸部がグリーンシートに凹部として転写される結果、グリーンシートの当該粗面化フィルムとの接触面側は、基準面(平坦面)に対して無数の凹部が形成された状態となり、先に記載したRmax/Rzが1.0以上で、2.0以下、より好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.3以下のものを容易に得ることができるので好ましい。
また、塗工面の反対側になる電解質シートの表面粗さは、電解質原料として粒度構成を調整した粒度分布のスラリーを使用することによって、本発明で定める特定の範囲に調整することができる。
すなわち、前記電解質原料粉末、バインダー、分散剤および溶剤、必要により配合される消泡剤や可塑剤などからなる混合物を、ミリングによって、固形成分の粒度分布が0.2〜0.8μm未満と0.8〜10μmの範囲にそれぞれ1つのピークを有するグリーンシート製造用スラリーを作製し、該スラリーを、塗工面の表面粗さがRzで3〜30μm、且つRaで0.3〜5μmである高分子フィルム上に塗工してシート形成しグリーンシートを作製した後、焼成することによって達成できる。
そのためには、d50が0.2〜0.8μm、d90が0.8〜10μmの原料粉末(A)、バインダー、分散剤、溶剤をミリングして得たスラリーに、d50が0.2〜2μm、d90が0.8〜20μmである原料粉末(B)を、全原料粉末中に占める比率で1〜30質量%添加した後、該原料粉末(B)を添加した後のミリング時間(T)と前記原料粉末(A)のみのミリング時間(T)との比(T/T)が1/100〜1/2となる様に、更にミリングしてスラリーを調製することが必要であり、特に原料粉末(B)を添加する前におけるスラリー中の固形成分のd50が0.2〜0.8μm、d90が0.8〜10μmの範囲に調整することが重要となる。尚、原料粉末(A)に対して粗い原料粉末(B)を添加すれば、上記スラリー中の固形成分の粒度分布に調整し易くなる。
電解質グリーンシート製造用スラリー中の固形成分の粒度分布が0.2〜0.8μmの範囲に1つのピークだけを有する場合は、Air面側の表面粗さが小さくなり過ぎて、本発明で意図する表面粗さが確保できなくなる。また0.8〜10μmの範囲に1つのピークだけを有するものでは、焼成後の緻密性が劣るものとなり、シート強度が乏しくなる。
なお、原料粉末(A)と原料粉末(B)は同一の組成であっても異なっていても問題はないが、原料粉末(B)の割合が全原料粉末中に占める比率で1質量%未満の場合は、グリーンシート製造用スラリーの固形成分の粒度分布が0.2〜0.8μmの範囲に1つのピークだけを有するものとなり、上記と同様の問題を生じる。逆に原料粉末(B)の割合が全原料粉末中に占める比率で30質量%を上回る場合は、グリーンシート製造用スラリーの固形成分の粒度分布が0.8〜20μmの範囲に1つのピークだけとなって、0.2〜0.8μmの範囲にピークがなくなり、上記と同様の問題を生じる。
尚、原料粉末(A)、バインダー、分散剤、溶剤をミリングして得たスラリー中の固形成分の粒度分布は、d50が0.2〜0.8μm、d90が0.8〜10μmの範囲に調整することが望ましい。このとき、d50が0.8μmを超え、d90が10μmを超えると、得られる電解質シートが強度不足になり易い。
また、このスラリーを上記特定表面粗さを有する高分子フィルムに塗工するだけでは、塗工面に対して反対側となる電解質シートの表面粗さがRzで2μm以下、Raで0.2μm以下になり易い。
ところが、上記粒度分布のスラリー中に原料粉末(A)よりもd50およびd90の大きい原料粉末(B)を後添加すると、塗工面の反対側になる電解質シートの表面粗さを簡便に本発明で定める範囲に調整することが可能となる。しかも、電解質シートを理論密度に対する嵩密度が97%以上、より好ましくは98%以上となり、緻密で強度低下も殆ど起こさなくすることができる。
そのためには、後添加する原料粉末(B)の量を、全原料粉末中に占める比率で1〜30質量%、好ましくは3〜20質量%、より好ましくは5〜15質量%とするのがよい。後添加量が30質量%を上回ると、電解質シートの表面粗さがRzで20μm、Raで3.0μmを上回り易くなると共に、電解質シート自体の強度も低下してくる。また後添加量が1質量%未満では、電解質シートの表面粗さがRzで2.0μm、且つRaで0.20μmを下回り易くなる。
尚、原料粉末(A)の粒度分布は、d50が0.2〜0.8μm、d90が0.8〜10μmの範囲のものが使用されるが、より好ましい原料粉末(A)の粒度分布は、d50で0.2〜0.5μm、d90で1〜2μmの範囲である。
後添加される原料粉末(B)は、ミリングしてスラリーを形成した原料粉末と全く同じものでも、或いは先のスラリー成分とは異なるジルコニア系酸化物やLaGaO系酸化物、CeO系酸化物であってもよい。好ましい粒度構成は、d50が0.2μm以上、2μm以下、d90が0.8μm以上、20μm以下の範囲のもので、より好ましいd50は0.4μm以上、1.0μm以下、d90が2μm以上、5μm以下の範囲である。原料粉末と後添加する原料粉末の粒度分布を同一にする必要はなく、後添加する原料粉末のd50やd90をやや大き目にする方が、表面を粗面化する上で好ましい。
また、原料粉末(A)のミリング時間(T)は1時間以上、60時間以下、好ましくは10時間以上、20時間以下であり、原料粉末(B)を添加した後のミリング時間(T)は、上記T/Tの比で1/100〜1/2、より好ましくは1/10〜1/3の範囲に調整することによって、最終スラリーの固形成分の粒度分布が0.2μm以上、0.8μm以下の範囲と、0.8μm以上、10μm以下の範囲に夫々ピークを有するグリーンシート製造用スラリーを作製する。
このとき、T/Tが1/100未満では、原料粉末(B)のスラリーへの分散などが不十分になり易く、得られる電解質シートの表面粗さが粗くなり過ぎるばかりでなく、得られる電解質シートの強度も不十分となる。またT/Tが1/2を上回ると、原料粉末(B)のスラリーへの分散は良好で十分な強度が得られ易くなるが、表面粗さが不十分となり易い。尚ミリング法に格別の制限はなく、通常のボールミル、ビーズミル等を用いた公知の方法を採用すればよい。
尚、上記原料粉末およびスラリー中の固形成分の粒度構成とは、下記の方法で測定した値をいう。即ち原料粉末の粒度構成は、島津製作所製のレーザー回折式粒度分布測定装置「SALD−1100」を使用し、蒸留水中に分散剤として0.2質量%のメタリン酸ナトリウムを添加した水溶液を分散媒とし該分散媒100cc中に原料粉末0.01〜1質量%を加えて1分間超音波処理して分散させた後の測定値であり、またスラリー中の固形成分の粒度構成は、スラリー中の溶媒と同組成の溶媒を分散媒として使用し、該分散媒100cc中に各スラリーを0.01〜1質量%となる様に加え、同様に1分間超音波処理して分散させた後の測定値である。
本発明の電解質シートを燃料電池の固体電解質膜用として実用化する際には、要求強度を満たしつつ通電ロスを可及的に抑えるため、シート厚さを10μm以上、より好ましくは50μm以上で、500μm以下、より好ましくは300μm以下とするのがよい。
またシートの形状としては、円形、楕円形、アールを持った角形など何れでもよく、これらのシート内に同様の円形、楕円形、Rを持った角形などの穴を有するものであってもよい。更にシートの面積は、50cm以上、好ましくは100cm以上である。尚この面積とは、シート内に穴がある場合は、該穴の面積を含んだ外周縁で囲まれる面積を意味する。
本発明の電解質シートを構成するセラミックの種類は特に制限されないが、好ましいセラミック焼結体としては、ジルコニア系酸化物、LaGaO系酸化物およびCeO系酸化物などが例示される。
好ましいジルコニア系酸化物としては、安定化剤としてMgO,CaO,SrO,BaOなどのアルカリ土類金属の酸化物、Y,La,CeO,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Ybなどの希土類元素の酸化物、Sc,Bi,In等から選ばれる1種もしくは2種以上の酸化物を固溶させたもの、あるいは、これらに分散強化剤としてAl,TiO,Ta,Nbなどが添加された分散強化型ジルコニア等が例示される。
また、LaGaO系酸化物としては、ペロブスカイト型結晶構造を有する複合酸化物で、LaやGaの一部がそれぞれの原子よりも低原子価のSr,Y,Mg等によって置換固溶した組成物であり、例えばLa0.9Sr0.1Ga0.8Mg0.2の様なLa1−xSrGa1−yMg,La1−xSrGa1−yMgCo,La1−xSrGa1−yFe,La1−xSrGa1−yNi等が例示される。
また好ましいCeO系酸化物としては、CaO,SrO,BaO,Ti,Y,La,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Er,Tm,Yb,PbO,WO,MoO,V,Ta,Nbの1種もしくは2種以上を添加したセリア系酸化物が例示される。
これらの酸化物は、単独で使用し得る他、必要により2種以上を適宜組み合わせて使用しても構わない。上に例示したもの中でも、より高度の熱的、機械的、化学的特性を有する電解質シートを得るには、2〜10モル%の酸化イットリウムで安定化され、もしくは3〜12モル%の酸化スカンジウムで安定化された正方晶及び/又は立方晶構造の酸化ジルコニウムが特に好ましい。
本発明で使用されるバインダーの種類にも格別の制限はなく、従来から知られた有機質バインダーを適宜選択して使用できる。有機質バインダーとしては、例えばエチレン系共重合体、スチレン系共重合体、アクリレート系及びメタクリレート系共重合体、酢酸ビニル系共重合体、マレイン酸系共重合体、ビニルブチラール系樹脂、ビニルアセタール系樹脂、ビニルホルマール系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、ワックス類、エチルセルロース等のセルロース類等が例示される。
これらの中でも、グリーンシートの成形性や強度、焼成時の熱分解性等の点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等の炭素数10以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート類;およびメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等の炭素数20以下のアルキル基を有するアルキルメタクリレート類;ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキルアクリレートまたはヒドロキシアルキルメタクリレート類;ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等のアミノアルキルアクリレートまたはアミノアルキルメタクリレート類;アクリル酸やメタクリル酸、マレイン酸、モノイソプロピルマレートの如きマレイン酸半エステル等のカルボキシル基含有モノマー、から選択される少なくとも1種を重合または共重合させることによって得られる、数平均分子量が20,000〜200,000、より好ましくは50,000〜100,000の(メタ)アクリレート系共重合体が好ましいものとして推奨される。
これらの有機質バインダーは、単独で使用し得る他、必要により2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。特に好ましいのは、イソブチルメタクリレートおよび/または2−エチルヘキシルメタクリレートを60質量%以上含むモノマーの重合体である。
原料粉末とバインダーの使用比率は、前者100質量部に対して後者5〜30質量部、より好ましくは10〜20質量部の範囲が好適であり、バインダーの使用量が不足する場合は、グリーンシートの強度や柔軟性が不足気味となり、逆に多過ぎる場合はスラリーの粘度調節が困難になるばかりでなく、焼成時のバインダー成分の分解放出が多く且つ激しくなって均質なセラミックシートが得られ難くなる。
またグリーンシートの製造に使用される溶媒としては、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−ヘキサノール等のアルコール類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;ペンタン、ヘキサン、ブタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類、などが適宜選択して使用される。これらの溶媒も単独で使用し得る他、2種以上を適宜混合して使用できる。これら溶媒の使用量は、グリーンシート成形時におけるスラリーの粘度を加味して適当に調節するのがよく、好ましくはスラリー粘度が10〜200ポイズ、より好ましくは10〜50ポイズの範囲となる様に調整するのがよい。
上記スラリーの調製に当たっては、原料粉末の解膠や分散を促進するため、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アンモニウム等の高分子電解質;クエン酸、酒石酸などの有機酸;イソブチレンまたはスチレンと無水マレイン酸との共重合体やそのアンモニウム塩、アミン塩;ブタジエンと無水マレイン酸との共重合体やそのアンモニウム塩などの分散剤、更には、グリーンシートに柔軟性を付与するためのフタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチルなどのフタル酸エステル類;プロピレングリコール等のグリコール類やグリコールエーテル類などの可塑剤など、更には、界面活性剤や消泡剤などを必要に応じて添加することができる。
上記原料配合からなるスラリーを前述の様な方法でシート状に成形し、乾燥して電解質グリーンシートを得た後、所定の形状・寸法に切断し、これを加熱焼成すると本発明の電解質シートが得られる。この焼成工程では、電解質グリーンシート同士の融着を防止しつつ、反りやウネリを生じることなく平坦度の高い電解質シートを得るため、スペーサーとして平坦度の高い多孔質セラミックシート、該多孔質セラミックシートの前駆体グリーンシートおよびセラミック粒子よりなる群から選択される少なくとも1種を使用し、特に好ましくは、該グリーンシート以上の面積を有し、且つ該グリーンシートの焼成温度に至るまでの加熱による収縮率が5%以下で、しかも理論密度に対して5〜60%の嵩密度を有する多孔質シートの間に、前記グリーンシートをその周縁がはみ出さない様に挟み込んで焼成し、あるいは上記多孔質シートを前記グリーンシートの周縁がはみ出さない様に載せてから焼成することが望ましい。
尚セラミック粒子をスペーサーとして使用すると、電解質グリーンシートの表面粗さをそのまま維持した表面粗さの電解質シートが得られ易く、また多孔質セラミックシートやその前駆体グリーンシートをスペーサーとして使用すると、電解質シート表面の凹凸の頂部がより均一且つ平坦になり易く、前記Rmax/Rz比をより一層1に近づけることができるので好ましい。
焼成条件は特に限定されないが、好ましい条件としては、前述の様にして得られるグリーンシートを300〜500℃程度で30〜300分程度予備加熱して先ずバインダー成分を分解焼失させた後、1300〜1500℃程度で60〜300分程度加熱して焼結させる方法である。
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例1】
原料粉末(A)として、8YSZ粉末(住友大阪セメント社製、商品名「OZC−8Y」、d50;0.4μm、d90;1.8μm)90質量部と、高純度アルミナ粉末(大明化学社製商品名「TMDAR」)0.5質量部との混合粉末に対し、メタクリル系共重合体からなるバインダー(分子量;30000、ガラス転移温度;−8℃)を固形分換算で15質量部、分散剤としてソルビタン酸トリオレート1質量部、可塑剤としてジブチルフタレート2質量部、溶剤としてトルエン/イソプロパノール(質量比=3/2)の混合溶剤50質量部を、ジルコニアボールが装入されたナイロンポットに入れ、35時間ミリングしてスラリーを調製した。
このスラリーに、原料粉末(B)として上記YSZ粉末を1100℃で3時間仮焼して得た粉末(d50;1.6μm、d90;7.3μm)を10質量部添加し、更に5時間ミリングして電解質シート成形用スラリーを得た。
このスラリーの一部を採取し、トルエン/イソプロパノール(質量比=3/2)の混合溶剤で希釈して島津製作所製の粒度分布測定装置「SALD−1100」を用いて、スラリー中の固形成分の粒度分布を測定したところ、スラリー中の固形成分の粒度分布は、d50が0.6μm、d90が2.8μmであり、0.5μmに大きなピークと、6.9μmに小さなピークを有していた。
このスラリーを濃縮脱泡して粘度を30ポイズ(23℃)に調整し、最後に200メッシュのフィルターに通した後、表面を粗面化したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にドクターブレード法により塗工し、固体電解質グリーンシートを得た。用いた表面粗面化PETフィルムの塗工面の表面粗さは、Rzで7.9μm、Raで0.9μmであった。
このグリーンシートを正方形に切断してPETフィルムから剥離した後、その上下をウネリ最大高さが10μmの99.5%アルミナ多孔質板(気孔率:30%)で挟んで脱脂した後、1450℃で3時間加熱焼成し、1辺が約40mm角、厚さ0.3mmの8YSZ電解質シートを得た。該シートの作製条件を表1に示す。
得られたシートの、PETフィルムに接触していた塗工面と、その反対側の空気に曝されていた面(Air面)を、UBM社製のレーザー光学式非接触三次元形状測定装置、マイクロフォーカスエキスパート「UBC−14システム」を用いてRz,Ra,Rmaxを測定した。
また、アルキメデス法によって該電解質シートの嵩密度を測定した後、ダイヤモンドカッターで4mm×40mmの短冊状に切出して試験片を作成し、JIS R−1601に準拠して3点曲げ強度を測定した。結果を表2に示す。
【実施例2】
塗工面の表面粗さがRzで12.4μm、Raで1.8μmである表面粗面化PETフィルムを使用した以外は前記実施例1と全く同様にして、1辺が約40mm角、厚さ0.3mmの8YSZ電解質シートを製造した。
【実施例3】
原料粉末(B)として、前記原料粉末(A)と同じ8YSZ粉末を使用し、原料粉末(B)を添加してから40分間ミリングした以外は前記実施例1と同様にして、1辺が約40mm角、厚さ0.3mmの電解質シートを製造した。
【実施例4】
原料粉末(B)として、3YSZ粉末(住友大阪セメント社製、商品名「OZC−3Y」、d50;0.5μm、d90;2.1μm)を使用した以外は前記実施例1と同様にして、1辺が約40mm角、厚さ0.3mmの電解質シートを製造した。
【実施例5】
原料粉末(A)として、10モル%酸化スカンジウム1モル%酸化セリウム安定化ジルコニア粉末(第一希元素化学社製、商品名「10Sc1CeSZ」、d50;0.6μm、d90;2.4μm)90質量部、高純度アルミナ粉末(大明化学社製商品名「TMDAR」)0.3質量部との混合粉末、また原料粉末(B)として上記10Sc1CeSZ粉末を1000℃で2時間仮焼して得たd50が0.9μm、d90が5.4μmの粉末を使用し、1400℃で焼成した以外は前記実施例1と同様にして、1辺が約40mm角、厚さ0.5mmの10Sc1CeSZ電解質シートを製造した。
【実施例6】
LaGaO系酸化物の原料粉末(B)として、La0.9Sr0.1Ga0.8Mg0.2(高温タイプ)粉末(セイミケミカル社製、d50;0.6μm、d90;4.3μm)を、また原料粉末(A)として、上記原料粉末(B)を湿式粉砕しd50を0.5μm、d90を1.9μmとした粉砕品を使用し、マグネシアセッター上にグリーンシートを載置して1500℃で焼成した以外は前記実施例1と同様にして、1辺が約40mm角、厚さ0.5mmのLaGaO系電解質シートを製造した。
【実施例7】
CeO系酸化物の原料粉末(B)として、酸化サマリウムをドープした(CeO0.8(SmO1.50.2(セイミケミカル社製、d50;0.8μm、d90;5.7μm)を、また原料粉末(A)として、上記原料粉末(B)を湿式粉砕してd50を0.5μm、d90を1.8μmとした粉砕品を使用した以外は前記実施例1と同様にして、1辺が約40mm角、厚さ0.5mmのCeO系電解質シートを製造した。
比較例1
原料粉末(A)として、前記実施例1で用いた8YSZ粉末を使用し、原料粉末(B)は使用せずに40時間ミリングして得たスラリーと、表面を粗面化していない塗工面の表面粗さがRz;0.38μm、Ra;0.17μmである通常のPETフィルムを使用してグリーンシートを製造し、所定寸法に切断した。
塗工に使用したPETフィルムの塗工面で、切断したグリーンシートを上下から挟んで熱プレス(60℃×10分間)した以外は前記実施例1と同様にして、1辺が約40mm角、厚さが約0.3mmの8YSZ電解質シートを得た。
比較例2
表面を粗面化したPETフィルム(塗工面の表面粗さRz;31μm、Ra;5.4μm)を使用した以外は前記実施例1と全く同様にして、電解質グリーンシートを製造した。このグリーンシートを、焼成のためPETフィルムから剥離しようとしたところ、スムーズに剥離することができず、グリーンシートにひび割れが発生した。
比較例3
前記実施例1で得た8YSZ電解質シートの両面をブラスター装置(新東ブレーター社製;マイクロブラスターMB−1型)でブラスト加工することにより、Air面側の粗さRzが24.2μm、Raが5.3μm、PET面(塗工面)側の表面粗さRzが21.7μm、Raが3.8μmである電解質シートを得た。最初にブラスト加工したAir面にはやや大きな反りが発生し、反対側のPET面をブラスト加工することで反りの程度は若干小さくなったが、依然として反りが認められた。
比較例4
原料粉末(B)として、前記実施例3で使用した原料粉末(A)である8YSZ粉末を1250℃で3時間仮焼して得たd50が4.3μm、d90が25.7μmの粉末を使用し、原料粉末(B)添加後20分間ミリングして得たスラリーを、前記比較例1で使用した塗工面を粗面化していないPETフィルムに塗工した以外は前記実施例1と同様にして、1辺が約40mm角、厚さ0.3mmの8YSZ電解質シートを製造した。
比較例5
原料粉末(A)として、前記比較例4で使用した1250℃仮焼8YSZ粉末を、また原料粉末(B)として前記実施例3で使用した8YSZ粉末を使用し、原料粉末(A)が60質量部、原料粉末(B)が40質量部となる様に配合し、原料粉末(A)のミリング時間を5時間、原料粉末(B)添加後のミリング時間を35時間とし、前記実施例2で使用した表面粗面化PETフィルムを使用した以外は前記実施例1と同様にして、1辺が約40mm角、厚さ0.3mmの8YSZ電解質シートを製造した。
比較例6〜8
原料粉末(A),(B)として前記実施例5,6,7と同じものを使用し、前記比較例1で用いたのと同じ表面を粗面化していない通常のPETフィルムに塗工し、得られたグリーンシートを熱プレスすることにより、1辺が約40mm、厚さ約0.5μmの8YSZ電解質シートを製造した。
セル製造例1
前記実施例1〜4、比較例1および3〜5で得た各8YSZ電解質シートのより粗面側に、塩基性炭酸ニッケルを熱分解して得た酸化ニッケル粉末(d50:0.9μm、d90:3.1μm)70質量部と、実施例1で原料粉末(A)として使用した8YSZ粉末30質量部とからなるアノードペーストをスクリーン印刷し、乾燥後1300℃で1時間加熱焼成して厚さ約50μmのアノード電極層を形成した。
次いで他方側の面に、ストロンチウムドープドマンガナイト(La0.8Sr0.2MgO)粉末(セイミケミカル社製、d50;1.3μm、d90;3.5μm)95質量部と、上記8YSZ粉末5質量部とからなるカソードペーストをスクリーン印刷し、乾燥後1100℃で1時間加熱焼成して厚さ約30μmのカソード電極層を形成し、8YSZ電解質シートの両面に電極が形成された3層構造のセルを製造した。
但し、比較例3で得た電解質シートには反りがあり、スクリーン印刷時に均一な電極層を形成することができなかった。
セル製造例2
前記実施例5および比較例6で得た各10Sc1CeSZ電解質シートのより粗面側の面に、前記セル製造例1で使用したのと同じ酸化ニッケル粉末70質量部と、実施例5で原料粉末(A)として使用した10Sc1CeSZ粉末30質量部とからなるアノードペーストをスクリーン印刷し、乾燥後1300℃で1時間加熱焼成することにより、厚さ約50μmのアノード電極層を形成した。
次いで他方側の面に、前記セル製造例1で用いたのと同じカソードペーストをスクリーン印刷し、乾燥後1100℃で1時間加熱焼成することにより、10Sc1CeSZ電解質シートの両面に電極が形成された3層構造のセルを製造した。
セル製造例3
前記実施例6および比較例7で得たランタンガレート系電解質シートのより粗面側の面に、前記セル製造例2で使用したのと同じアノードペーストをスクリーン印刷し、乾燥後1300℃で1時間加熱焼成して厚さ約50μmのアノード電極層を形成した。
次いで他方側の面に、ストロンチウムドープドランタン鉄コバルテート(La0.6Sr0.4Fe0.8Co0.2)粉末(セイミケミカル社製、d50;1.7μm、d90;4.1μm)からなるカソードペーストをスクリーン印刷し、乾燥後1100℃で1時間焼成することにより厚さ約30μmのカソード電極層を形成し、ランタンガレート系電解質シートの両面に電極が形成された3層構造のセルを製造した。
セル製造例4
前記実施例7および比較例8で得たセリア系電解質シートのより粗面側に、セル製造例3で得たアノードペーストをスクリーン印刷し、乾燥後1300℃で1時間加熱焼成して厚さ約50μmのアノード電極層を形成した。
次いで他方側の面に、セル製造例3で得たカソードペーストをスクリーン印刷し、乾燥後1100℃で1時間加熱焼成して厚さ約30μmのカソード電極層を形成し、セリア系電解質シートの両面に電極が形成された3層構造のセルを製造した。
[性能評価試験]
上記セル製造例1で得た各セルを950℃で、セル製造例2〜4で得た各セルは800℃で、各々図1に示す単セル発電評価装置(図中、1はヒータ、2はアルミナ製外筒管、3はアルミナ製内筒管、4は白金リード線、5は固体電解質シート、6はカソード、7はアノード、8はシール材、をそれぞれ示す)を用いて電流(I)と電圧(V)を測定し、発電性能結果を950℃,800℃における最大の出力密度(W/cm)として表3にまとめた。
なお、電流測定器としてはアドバンテスト社製の商品名「TR6845」、電流電圧発生器としては高砂社製の商品名「GP016−20R」を使用し、電極面積;7cm、アノード側に燃料ガスとして3%加湿水素を1リットル/分、カソード側に酸化剤として空気を1リットル/分流通させた。
更に、上記状態で連続して発電試験を行い、200時間経過後にI−V特性を評価し、同様に最大出力密度(W/cm)を求め、結果を表3に示した。
表3には、セル製造例1では比較例1に、セル製造例2では比較例6に、セル製造例3では比較例7に、セル製造例4では比較例8に、対する夫々のセルの最高出力密度アップ率を示した。



表3からも明らかな様に、電解質シート両面の表面粗さが本発明で定める要件を満たしているセル製造例1〜4のセルは、いずれの発電特性も表面粗さが平滑な電解質シートからなるセルに比べて電流密度でいずれも10%以上向上している。また、電極の密着性も優れており、発電性能評価試験後も電極は強固に固着していたが、表面粗さが平滑な電解質シートからなるセルでは、電極層が一部剥離しかかっているところがあった。更に、電解質シートの表面粗さが本発明の規定よりも粗い場合は、グリーンシートにひびが発生したり3点曲げ強度が低下し、200時間連続発電試験中に一部割れが発生したためか、発電性能が劣悪であった。
【産業上の利用可能性】
本発明は以上の様に構成されており、ジルコニアシート両面の表面粗さを特定することによって、固体電解質膜用の如く両面に電極印刷を施す場合でも、該電極印刷層の厚さ不均一による局部的な通電不良などの問題を生じることなく該電極を高密着性で強力に接合することができ、電極形成時における部分的な剥離や稼動時における電極の剥離を可及的に抑制することができ、特に燃料電池用として用いることにより、燃料電池の発電特性や耐久性を大幅に向上できる。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の焼結体からなり、レーザー光学式非接触三次元形状測定装置で測定したシート表面の粗さが、いずれの面もRzで2.0〜20μm、Raで0.20〜3.0μmであり、更に、シートのRzが小さい方の面に対する他方側の面(上記Rzが大きい方の面)のRzの比(Rz比)が1.0〜3.0であり、且つ少なくとも一方の面のRmaxとRzの比(Rmax/Rz比)が1.0〜2.0であることを特徴とする固体酸化物形燃料電池用電解質シート。
ここで、Rz(平均化された粗さ深度)、Ra(算術的粗さ中間値)、Rmax(最大粗さ深度)は、ドイツ規格「DIN−4768」に準拠して求めた粗さパラメータであり、シートの夫々の面について測定した数値である。
【請求項2】
シート状の焼結体からなり、レーザー光学式非接触三次元形状測定装置で測定したシート表面の粗さが、いずれの面もRzで2.0〜20μm、Raで0.20〜3.0μmであり、更に、シートのRaが小さい方の面に対する他方側の面(上記Raが大きい方の面)のRaの比(Ra比)が1.0〜3.0である他、少なくとも一方の面のRmaxとRzの比(Rmax/Rz比)が1.0〜2.0であることを特徴とする固体酸化物形燃料電池用電解質シート。
ここで、Rz(平均化された粗さ深度)、Ra(算術的粗さ中間値)、Rmax(最大粗さ深度)は、ドイツ規格「DIN−4768」に準拠して求めた粗さパラメータであり、シートの夫々の面について測定した数値である。
【請求項3】
シート状の焼結体からなり、レーザー光学式非接触三次元形状測定装置で測定したシート表面の粗さが、いずれの面もRzで2.0〜20μm、Raで0.20〜3.0μmであり、更に、シートのRz,Raがいずれも小さい方の面に対する他方側の面(上記Rz,Raがいずれも大きい方の面)のRzの比(Rz比)が1.0〜3.0であり、且つRaの比(Ra比)が1.0〜3.0である他、少なくとも一方の面のRmaxとRzの比(Rmax/Rz比)が1.0〜2.0であることを特徴とする固体酸化物形燃料電池用電解質シート。
ここで、Rz(平均化された粗さ深度)、Ra(算術的粗さ中間値)、Rmax(最大粗さ深度)は、ドイツ規格「DIN−4768」に準拠して求めた粗さパラメータであり、シートの夫々の面について測定した数値である。
【請求項4】
前記Rmax/Rz比が1.0を超え1.3以下である請求の範囲第1〜3項のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池用電解質シート。
【請求項5】
スラリー中の固形成分の粒度構成が、50体積%径が0.2〜0.8μm、90体積%径が0.8〜10μmであり、且つ、粒度分布が0.2〜0.8μmと0.8〜10μmの範囲にそれぞれ1つのピークを有するグリーンシート製造用スラリーを作製し、該スラリーを用いて、塗工面のRzが3〜30μmで、且つRaが0.3〜5μmである高分子フィルム上にグリーンシートを作製した後、焼成することを特徴とする請求の範囲第1〜4項のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池用電解質シートの製法。
【請求項6】
前記グリーンシート製造用スラリーを、50体積%径が0.2〜0.8μm、90体積%径が0.8〜10μmの原料粉末(A)、バインダー、分散剤および溶剤をミリングして得たスラリーに、50体積%径が0.2〜2μm、90体積%径が0.8〜20μmである原料粉末(B)を、全原料粉末中に占める比率で1〜30質量%添加し、該原料粉末(B)を添加した後のミリング時間(T)と前記原料粉末(A)のみのミリング時間(T)との比(T/T)が1/100〜1/2となる様に、更にミリングする請求の範囲第5項に記載の製法。
【請求項7】
前記グリーンシートを所定形状に切断した後、切断した該グリーンシートを積層すると共に、該グリーンシートの間にスペーサーとして多孔質セラミックシート、該多孔質セラミックシートの前駆体グリーンシートおよびセラミック粒子よりなる群から選択される少なくとも1種を配置してから焼成する請求の範囲第5または6項に記載の製法。

【国際公開番号】WO2004/034492
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【発行日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−542852(P2004−542852)
【国際出願番号】PCT/JP2003/012930
【国際出願日】平成15年10月9日(2003.10.9)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】