説明

固体酸化物形燃料電池装置

【課題】運転中における発電性能の低下を防止し、優れた発電能力を維持しつつ高い発電効率で運転を継続することが可能な固体酸化物形燃料電池装置を提供する。
【解決手段】本発明による固体酸化物形燃料電池装置に備わる制御手段は、発電前の起動モード運転を実施した後に、発電運転を開始し、そのとき、発電開始からの経過時間trを検出するように構成されている。制御手段は、その経過時間trと所定値t1を比較し、tr>t1のときに、燃料電池セルが酸化物過多状態にあると推定し、その場合、起動モード運転が実行されている時に、燃料電池セルが所定の還元促進条件となるように燃料ガスを燃料極層に供給してリフレッシュ制御を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスと酸化剤ガスとにより発電を行う固体酸化物形燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:以下「SOFC」ともいう)は、電解質として酸化物イオン導電性固体電解質を用い、その両側に電極を取り付け、一方の側に燃料ガスを供給し、他方の側に酸化剤ガス(空気、酸素等)を供給して、比較的高温で発電反応を生じさせて発電を行う燃料電池装置である。
【0003】
具体的には、SOFCは、一般に、内側電極層である燃料極層と外側電極層である空気極層との間に固体電解質層が挟持されてなる管状の燃料電池セルを複数有する燃料電池セル集合体を備えており、燃料ガスと酸化剤ガス(空気、酸素等)とが、その燃料電池セルの一端側から他端側へと流れることによって作動する。SOFCの外部からは、原料ガスである被改質ガス(都市ガス等)が供給され、その被改質ガスを改質触媒が収められた改質器に導入し、水素リッチな燃料ガスに改質した後に、それが燃料電池セル集合体へ供給されるように構成されている。
【0004】
また、SOFCは、起動工程において、燃料ガスを改質器において改質する複数の工程、すなわち、部分酸化改質(Partial Oxidation Reforming:POX)反応工程、オートサーマル改質(Auto Thermal Reforming:ATR)反応工程、及び、水蒸気改質(Steam Reforming:SR)反応工程を経て、発電工程へ移行するように構成されている。SOFCでは、これらの工程を順に実行することにより、燃料電池モジュール収納室内に配置された改質器や燃料電池セルスタック等を動作温度まで昇温させることができる。
【0005】
ここで、燃料電池装置では、一般に、燃料電池セルの周囲に残存する空気等により電極が酸化することに起因して発電性能が低下する傾向にある。かかる事象に関し、例えば、特許文献1には、燃料電池セルの燃料極層に供給される還元性ガス(水素ガス)が少ないと、酸化剤ガスである空気が、燃料電池セルの外部から燃料極層に侵入してしまい、また、固体電解質層を通過する酸素イオンが燃料ガスと結合しないと、燃料極層に酸素イオンが拡散してしまうことが記載されている。特許文献1によれば、このようにして燃料極層に侵入した空気中の酸素ガスや酸素イオンは、金属を含む燃料極層を酸化させ、その結果、燃料極層中に形成された酸化物によって電極反応が抑制されるため、燃料電池の発電性能が劣化してしまうことが指摘されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-311288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、SOFCの発電時には、燃料極層には燃料ガスである水素ガス等の還元性ガスが供給されるので、その還元性ガスが燃料極層内に拡散していくことにより、たとえ特許文献1に記載されたようなメカニズムによって燃料極層が酸化されたとしても、通常の発電運転を続ければ、燃料極層は継続的に還元され、発電性能の低下は抑制されるものと推定される。しかし、本発明者らがSOFCの運転特性について詳細に検討及び評価を行ったところ、SOFCの運転を適正に継続しても、その発電性能は、経時的に且つ不可避的に徐々に低下してしまうことが確認された。
【0008】
これに対し、SOFCの燃料極層における斯様な酸化物の生成を抑制するには、SOFCの運転中、燃料極層が常時強く還元される条件となるような量の燃料ガスを、定常的に供給することが有効であると考えられる。しかし、その場合には、SOFCの発電効率が低下してしまい、経済性の観点からも問題がある。
【0009】
そこで、本発明はかかる事情及び知見に鑑みてなされたものであり、運転中における発電性能の低下を有効に防止することができ、これにより、優れた発電能力を維持しつつ高い発電効率で運転を継続することが可能な固体酸化物形燃料電池装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明者らが鋭意研究を進めたところ、SOFCの運転時に、酸化された燃料極層おいて還元されるのは、燃料ガスの流路側のごく表面に過ぎず、酸素イオンが通過してくる固体電解質層と燃料極層との界面付近の部位では、燃料極層は還元されることなく酸化が進行し易く、そのため、発電性能が徐々に低下してしまうこと、また、燃料電池セルの一端側から他端側に向けて燃料ガスが供給されるSOFCの場合、燃料ガスの濃度が比較的低くなる下流側(他端側)において、固体電解質層と燃料極層との界面付近における燃料極層の酸化の程度が顕著であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明による固体酸化物形燃料電池(SOFC)装置は、燃料ガスと酸化剤ガスとにより発電を行うものであって、炭化水素を含む原料ガスを改質して水素ガスを含む燃料ガスを生成する改質器と、燃料ガスが供給される燃料極層、酸化剤ガスが供給される空気極層、及び、燃料極層と空気極層との間に設けられた固体電解質層を有し、且つ、一端側から他端側に燃料ガスが流される燃料電池セルと、燃料極層に燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、空気極層に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給手段と、このSOFC装置の運転状態を監視及び制御する制御手段と、燃料電池セルが酸化物過多状態にあるか否かを推定する酸化推定手段とを備えており、制御手段は、酸化推定手段によって燃料電池セルが酸化物過多状態にあると推定された場合に、所定の還元促進条件となるように燃料極層に燃料ガスを供給するリフレッシュ制御を実行するものである。
【0012】
ここで、「酸化物過多状態」とは、所定の方向に延在する燃料電池セルの両端部のうちの他端側(寄り)において、発電中に空気極層側から固体電解質層を通過して燃料極層に到達した酸素イオンと、燃料極層に含まれる金属との酸化反応によって生成される、固体電解質層と燃料極層との界面及び界面近傍における燃料極層の酸化物が、予め設定された所定量に達した状態を意味する。また、「所定の還元促進条件」とは、燃料電池セルが酸化物過多状態にない場合(非酸化物過多状態にある場合)に比して、燃料極層の酸化物が還元され易くなる(反応)条件を意味する。
【0013】
このように構成されたSOFC装置においては、通常時は発電効率が高い状態で発電を行いながら、酸化推定手段及び制御手段によって燃料電池セルの状態をモニターし、燃料電池セルが酸化物過多状態にあると推定された場合には、その酸化物が比較的還元され易い還元促進条件となるように、原料ガスを改質して得られる水素ガスリッチな(還元性に富む)燃料ガス(燃料極層の酸化物の還元を目的とする意味において、還元促進用の燃料ガスとも言える)の所定量を燃料極層に供給することにより、燃料極層ひいては燃料電池セルのリフレッシュ(初期状態又はそれに近い状態への回復)が行われる。
【0014】
よって、燃料電池セルが酸化物過多状態となるまでは、発電に寄与しない燃料ガスの供給を極力抑えた状態でSOFC装置の発電効率を高めることができる一方、燃料電池セルが酸化物過多状態になった場合には、リフレッシュ制御の実行により、燃料電池セルの燃料極層の酸化物を十分に還元して、その発電性能を運転初期の高い状態に回復させることができる。
【0015】
また、制御手段が、リフレッシュ制御を実行している時の燃料ガスの利用率を、リフレッシュ制御を実行していない時の燃料ガスの利用率よりも低下させるようにしてもよい。なお、「燃料ガスの利用率」とは、燃料電池セルに供給される燃料ガスのうち発電に寄与する燃料ガスの割合を示す。
【0016】
このようにすれば、リフレッシュ制御の実行時に燃料ガスの利用率を通常の発電時から変化させない場合に比して、燃料電池セルの他端側(寄り)における燃料ガスに含まれる還元性の水素ガス濃度が高められるので、燃料極層の固体電解質層との界面及びその近傍に生成した酸化物がより効果的に還元され、これにより、燃料電池セルの発電性能を確実に且つ迅速に回復させることが可能となる。
【0017】
さらに、燃料電池セルを通過した燃料ガスを燃焼させ、その燃焼熱により燃料電池セルを加熱する燃焼部を備え、制御手段が、リフレッシュ制御を実行している時は、リフレッシュ制御を実行していない時よりも燃料ガスの利用率を低下させるとともに、燃料電池セルを通過する燃料ガスの流量を増加させて燃焼熱を大きくするよう構成しても好適である。
【0018】
このように構成すれば、燃料電池セルの他端側(寄り)における還元性の水素ガスの流量が増加するので、燃料極層の固体電解質層との界面及びその近傍に生成した酸化物がさらに効果的に還元される。また、燃料電池セルでの発電に使用されずに燃料電池セルの他端から流出する残余の燃料ガスが増加するが、その残余の燃料ガスの燃焼による燃焼熱も大きくなり、燃料電池セルがさらに加熱されて昇温されるので、燃料極層における酸化物の還元反応が促進され、その結果、燃料電池セルの発電性能をより確実に且つ迅速に回復させることが可能となる。
【0019】
このとき、制御手段が、リフレッシュ制御を実行している時の燃料電池セルの温度を、リフレッシュ制御を実行していない時の発電電力に応じて予め定められている温度よりも高くするものであっても好ましい。
【0020】
一般に、SOFCでは、燃料電池セルの発電性能が、その温度に依存する(換言すれば、燃料電池セルの温度と取り出される電力が正の相関関係を有する)傾向にあるところ、リフレッシュ制御実行時の燃料電池セルの温度を、リフレッシュ制御を実行していない時の発電電力に依らずその発電電力に応じて設定された温度よりも高めることにより、燃料極層における酸化物の還元反応が更に促進され、その結果、燃料電池セルの発電性能をより一層確実に且つ迅速に回復させることができる。
【0021】
この場合さらに、制御手段が、リフレッシュ制御を実行している時の燃料電池セルの温度を、リフレッシュ制御を実行していない時の発電電力の上限に応じて予め定められている温度よりも高くするように制御しても好ましい。
【0022】
リフレッシュ制御の実行時における燃料電池セルの温度を、このように制御すれば、燃料極層における酸化物の還元反応が、通常の発電運転時よりも確実に促進されるので、燃料電池セルの発電性能を更に一層確実に且つ迅速に回復させることができる。
【0023】
またさらに、制御手段が、リフレッシュ制御を実行している時に、燃料電池セルにおける発電を、燃料電池セルが酸化物過多状態にない場合に比して抑制するものであっても好適である。
【0024】
このようにして発電を抑制することで、燃料電池セルの燃料極層へ新たに供給される酸素イオンの量が低減されるので、燃料極層の還元を行うためのリフレッシュ制御の実行時に、燃料極層における新たな酸化物の生成が有効に抑制される。その結果、燃料電池セルの発電性能を殊更に迅速に回復させ得る利点がある。
【0025】
さらにまた、制御手段が、燃料電池セルを発電可能な温度に加熱する起動モード運転を実行するように構成されており、且つ、酸化推定手段によって燃料電池セルが酸化物過多状態にあると推定された後の最初の起動モード運転時に、上述したリフレッシュ制御を実行するものであると有用である。
【0026】
かかる制御手段を備えると、燃料電池セルが酸化物過多状態にあると推定された後、直ちにリフレッシュ制御を実行することなく、次の起動モード運転時にリフレッシュ制御が実行されるので、その起動モード運転までは、低発電効率ながらも発電を継続することが可能であり、これにより、不意な発電停止を回避してSOFC装置の実使用上(運用上)の不便を軽減することができる。また、発電に先駆けて、起動モード運転時に燃料電池セルの発電性能(能力)を回復させることができるので、効率よい発電を実現することが可能となる。
【0027】
或いは、制御手段が、リフレッシュ制御を実行する起動モード運転において燃料極層に供給する燃料ガスの供給量を、リフレッシュ制御を実行しない起動モード運転において燃料極層に供給する燃料ガスの供給量よりも大きくするような制御を行うものであってもよい。
【0028】
そうすることにより、リフレッシュ制御を実行しない通常の起動モード運転では、燃料電池セルの加熱に必要十分な量の燃料ガスを供給して燃料ガスの使用量の増大を抑止しつつ、リフレッシュ制御を行う起動モード運転では、燃料電池セルへの燃料ガスの供給量を増大させることによって燃料極層の酸化物の還元力を高めることができるので、経済性を向上させると共に、燃料極層の酸化物を確実に還元してその発電性能を回復させ易くなる。
【0029】
このとき、起動モード運転において、部分酸化改質反応(POX)工程、オートサーマル改質反応(ATR)工程、及び、水蒸気改質反応(SR)工程を実行し、且つ、リフレッシュ制御を実行する起動モード運転における水蒸気改質反応(SR)工程の実行時間を、リフレッシュ制御を実行しない通常の起動モード運転における水蒸気改質反応(SR)工程の実行時間よりも長くするように、制御手段を構成しても好適である。なお、各工程の詳細については、後述する。
【0030】
この場合、後述する各反応式より化学量論的にも明らかなとおり、上述の3つの工程のなかでも、改質器への原料ガスの供給量に対して得られる水素ガスの収率が最も高い水蒸気改質反応(SR)工程を、リフレッシュ制御を実行する起動モード運転において比較的長時間行うことにより、燃料電池セルの燃料極層への水素ガスの供給量をより高めることができ、効率よく且つ確実に燃料極層の酸化物を還元させて発電性能を効果的に回復させることができる。
【0031】
より具体的には、酸化推定手段は、運転開始後の累積発電時間、又は、実行したリフレッシュ制御後の累積発電時間が予め設定された所定値に達したときに、燃料電池セルが酸化物過多状態であると推定するものであると有用である。
【0032】
本発明者らの知見によれば、SOFCにおいては、累積発電時間(発電時間の累積値)が大きくなるほど、燃料電池セルの燃料極層への酸素イオンの累積供給量(供給量の累積値)も大きくなることに起因して多量の酸化物が生成されているものと推測される。したがって、酸化推定手段により、運転開始後の累積発電時間、又は、実行したリフレッシュ制御後の累積発電時間が、予め設定された所定値に達したときに、燃料電池セルが酸化物過多状態にあると推定すれば、その推定精度(確度)を十分に且つ極めて簡便に高めることが可能となるので、燃料電池セルの発電性能を適時に且つ更に効果的に回復させることができる。
【0033】
その際、運転開始後のリフレッシュ制御の累積実行回数(実行回数の累積値)に応じて、その推定に用いる所定値を変化させるように酸化推定手段を構成しても好適である。具体的には、例えば、リフレッシュ制御の実行回数が比較的多い場合には、リフレッシュ制御の実行回数が比較的少ない場合に比して、燃料電池セルの酸化物過多状態を推定してリフレッシュ制御への移行を判定するための累積発電時間の所定値をより小さくする例が挙げられる。
【0034】
本発明者らの更なる知見によれば、燃料電池セルが長く使用されて累積発電時間が大きくなると、リフレッシュ制御の実行によっても還元されずに燃料極層と固体電解質層との界面及びその近傍に残留する酸化物が増加していく傾向にある。したがって、燃料電池セルの酸化物過多状態を推定してリフレッシュ制御への移行を判定するための累積発電時間の所定値を、運転開始後のリフレッシュ制御の累積実行回数に応じて可変にすることにより、残留する酸化物の増加に対応して、燃料電池セルが酸化物過多状態にあるか否かを更に正確に推定することが可能となり、燃料電池セルの発電性能を一層適切に且つ効果的に回復させることができる。
【0035】
さらに、酸化推定手段は、運転開始後の総発電量、又は、前回実行したリフレッシュ制御後の総発電量が予め設定された所定値に達したときに、燃料電池セルが酸化物過多状態にあると推定するものであっても好ましい。
【0036】
SOFCにおいては、総発電量が大きくなるほど、燃料電池セルの燃料極層への酸素イオンの累積供給量も大きくなることから、この場合にも、燃料極層においては多量の酸化物が生成されているものと推測される。したがって、酸化推定手段により、運転開始後の総発電量、又は、前回実行したリフレッシュ制御後の総発電量が予め設定された所定値に達したときに、燃料電池セルが酸化物過多状態にあると推定しても、その推定精度(確度)を十分に且つ極めて簡便に高めることが可能となるので、燃料電池セルの発電性能を適時に且つ更に効果的に回復させることができる。
【0037】
加えて、酸化推定手段は、発電時に燃料電池セルから電力を取り出している時の出力電圧が、取り出される電力の値に応じて予め設定された基準値よりも小さいときに、換言すれば、燃料電池セルからの出力電圧の低下(降下)が、所定量よりも大きくなったときに、燃料電池セルが酸化物過多状態にあると推定するものであってもよい。
【0038】
燃料電池セルから電力を取り出すと、その取り出された電力値に応じてセルの出力電圧は低下(降下)するところ、本発明者らの更なる知見によれば、燃料極層において生成する酸化物が比較的少量の場合、その際の電圧低下は、燃料極層において生成する酸化物が比較的多量の場合に比して小さく、出力電圧は比較的高い範囲に留まる傾向にある。したがって、燃料電池セルからの出力電圧が、その時の電力値に応じて予め設定された基準値よりも小さいときに、燃料電池セルが酸化物過多状態にあると推定すれば、その推定精度(確度)が更に高められ得るので、燃料電池セルの発電性能を適時に且つ更に効果的に回復させることができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、SOFC装置の燃料電池セルが酸化物過多状態にあるか否かを推定する酸化推定手段によって燃料電池セルが酸化物過多状態にあると推定された場合に、装置の運転状態を監視及び制御する制御手段が、所定の還元促進条件となるように燃料電池セルの燃料極層に燃料ガスを供給するリフレッシュ制御を実行することにより、その燃料極層と固体電解質層との界面及びその近傍に存在する酸化物が十分に還元されるので、SOFC装置の運転中における発電性能の低下を有効に防止することができ、これにより、優れた発電能力を維持しつつ高い発電効率でSOFC装置の発電運転を継続することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態によるSOFC装置を示す全体構成図である。
【図2】本発明の一実施形態によるSOFC装置のハウジングが取り外された状態の燃料電池モジュールを示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態によるSOFC装置の燃料電池モジュールを図2のA方向から見た断面図である。
【図4】本発明の一実施形態によるSOFC装置の燃料電池モジュールを図2のB方向から見た断面図である。
【図5】本発明の一実施形態によるSOFC装置の燃料電池セルユニットを示す正面図である。
【図6】図2に示す燃料電池モジュールから燃料電池セル集合体を覆うケーシングを取り外した状態を示す燃料電池モジュールの斜視図である。
【図7】図6に示す燃料電池モジュールにおける蒸発混合器を示す斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態によるSOFC装置の燃料電池モジュールの熱交換器を上方から見た概略平面図である。
【図9】本発明の一実施形態によるSOFC装置の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の一実施形態によるSOFC装置の起動時の動作を示すタイムチャートである。
【図11】本発明の一実施形態によるSOFC装置においてリフレッシュ制御を行う処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図12】(A)及び(B)は、本発明の一実施形態によるSOFC装置の起動時の動作を示すタイムチャートであり、(A)は、起動モード運転における動作を、(B)は、リフレッシュ制御における動作を模式的に示す図である。
【図13】本発明の一実施形態によるSOFC装置においてリフレッシュ制御の有無による出力電流と燃料ガス流量との関係の一例を示すグラフである。
【図14】本発明の一実施形態によるSOFC装置においてリフレッシュ制御の有無による出力電流とスタック温度との関係の一例を示すグラフである。
【図15】本発明の一実施形態によるSOFC装置においてリフレッシュ制御の有無による出力電流と燃料ガス流量との関係の別例を示すグラフである。
【図16】(A)及び(B)は、本発明の一実施形態によるSOFC装置において、リフレッシュ制御を行う処理手順の他の例を示すタイムチャートである。
【図17】燃料電池セルの内側電極層(燃料極層)と固体電解質層との界面を含む部位の断面を拡大して示す顕微鏡写真の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。なお、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではなく、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。
【0042】
図1は、本発明による固体酸化物形燃料電池(SOFC)装置の好適な一実施形態を示す全体構成図である。SOFC装置1は、燃料電池モジュール2と、補機ユニット4(補機)を備えており、その燃料電池モジュール2は、ハウジング6を備えている。このハウジング6の内部には、断熱材(図示せず)に囲まれて密封空間8が形成されている。この密封空間8の下方部分である発電室10には、燃料ガスと酸化剤ガスである空気とにより発電反応を行う燃料電池セル集合体12が配置されている。
【0043】
燃料電池セル集合体12は、例えば10個の燃料電池セルスタック14を備えている(図6参照)。この燃料電池セルスタック14は、例えば16本の燃料電池セルユニット16(図5参照)から構成されている。燃料電池セル集合体12は、例えば160本の燃料電池セルユニット16を有し、これらの燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されている。
【0044】
燃料電池モジュール2の密封空間8における上述した発電室10の上方には、燃焼室18が画成されている。この燃焼室18において、発電反応に使用されなかった残余の燃料ガスと残余の酸化剤ガス(空気)とが燃焼し、燃焼ガス(排気ガス)を生成するようになっている。
【0045】
その燃焼室18の上方には、原料ガスを改質して燃料ガスを生成する改質器20が配置されており、上述した燃焼ガスの燃焼熱によって、改質器20を改質反応が可能な温度となるように加熱する。さらに、この改質器20の上方には、外部から導入される酸化剤ガス(空気)を、燃焼ガスの熱によって加熱する熱交換器22が配置されている。
【0046】
補機ユニット4は、水道等の水供給源24からの水を貯留してフィルターにより純水を生成する純水タンク26と、この貯水タンク26から供給される純水の流量を調整する水流量調整ユニット28(モータで駆動される「水ポンプ」等)を備えている。また、補機ユニット4は、都市ガス等の燃料供給源30から供給される燃料ガスを遮断するガス遮断弁32と、燃料ガスから硫黄を除去するための脱硫器36と、燃料ガスの流量を調整する燃料流量調整ユニット38(モータで駆動される「燃料ポンプ」等)を備えている。
【0047】
さらに、補機ユニット4は、空気供給源40から供給される酸化剤ガス(空気)を遮断する電磁弁42と、酸化剤ガス(空気)の流量を調整する改質用空気流量調整ユニット44(モータで駆動される「空気ブロア」等)及び発電用空気流量調整ユニット45(モータで駆動される「空気ブロア」等)と、改質器20に供給される改質用空気を加熱する第1ヒータ46と、発電室に供給される発電用空気を加熱する第2ヒータ48とを備えている。これらの第1ヒータ46と第2ヒータ48は、起動時の昇温を効率よく行うために設けられているが、省略してもよい。
【0048】
また、燃料電池モジュール2には、排気ガスが供給される温水製造装置50が接続されており、この温水製造装置50には、水供給源24から水道水が供給され、その水道水が排気ガスの熱によって温水となり、例えば、図示しない外部の給湯器の貯湯タンクへ供給されるようになっている。さらに、燃料電池モジュール2には、燃料ガスの供給量等を制御するための制御ボックス52が取り付けられている。またさらに、燃料電池モジュール2には、その燃料電池モジュール2により発電された電力を取り出して外部に供給するための電力取出部(電力変換部)であるインバータ54と、発電された電力を補機ユニット4又はインバータ54に送るように切り換える切換器55が接続されている。なお、切換器55は、発電電力を補機ユニット4の各機器の駆動電圧(DC)に変換するためのDC−DCコンバータの機能も有している。
【0049】
続いて、図2〜図4、図6、及び図7により、SOFC装置1の燃料電池モジュール2の内部構造を説明する。図2は、SOFC装置1のハウジング6が取り外された状態の燃料電池モジュール2を示す斜視図である。図2においては、燃料電池モジュール2を構成する各燃料電池セルスタック14において、燃料電池セルユニット16が8本並ぶ方向をx軸方向としている。また、燃料電池セルユニット16が立設されて延びる方向をy軸方向とし、x軸及びy軸に直交する方向をz軸方向としている。図3以降において図中に記載されているx軸、y軸、及びz軸は、図2におけるx軸、y軸、及びz軸を基準としている。
【0050】
図3は、SOFC装置1の燃料電池モジュール2を図2のA方向から見た断面図であり、図4は、SOFC装置1の燃料電池モジュール2を図2のB方向から見た断面図である。また、図6は、図2に示す燃料電池モジュール2から燃料電池セル集合体12を覆うケーシングが取り外された状態の燃料電池モジュール2を示す斜視図であり、図7は、図6に示す燃料電池モジュール2における蒸発混合器58を示す斜視図である。
【0051】
図2〜図4に示すように、燃料電池モジュール2の燃料電池セル集合体12は、ケーシング56により、全体が覆われている。また、図6に示すように、燃料電池セル集合体12は、B方向よりA方向の方が長いほぼ直方体形状をなしており、上面12a、下面12b、図2のA方向に沿って延びる長辺側面12c、及び、図2のB方向に沿って延びる短辺側面12dを備えている。
【0052】
図3に示すように、燃料電池モジュール2内の密封空間8内の最下方部分には、蒸発混合器58が燃料電池セル集合体12の長辺側面12cに沿って設けられている。この蒸発混合器58は、燃焼ガスにより加熱されて、純水を水蒸気にすると共に、この水蒸気と、被改質ガスである燃料ガス(都市ガス)、及び、酸化剤ガス(空気)とを混合するためのものである。蒸発混合器58の一端側には、図2、図4、及び図7に示すように、被改質ガス供給管60と、水供給管62が接続されている。この被改質ガス供給管60は、燃料流量調整ユニット38及び改質用空気流量調整ユニット44から、被改質ガス(燃料ガス)及び改質用空気を蒸発混合器58へ導入するためのものである。
【0053】
また、図4に示すように、蒸発混合器58の他端側には、燃料供給管64の下端が接続されており、その燃料供給管64の上端は、改質器20の上流端に接続されている。この燃料供給管64により、燃料ガスが蒸発混合器58から改質器20へ供給されるようになっている。また、改質器20の下流端には、燃料供給管66の上端が接続されている。この燃料供給管66の下端側66aは、燃料ガスタンク68内に進入して、水平方向に延びている。
【0054】
さらに、図3及び図4に示すように、燃料ガスタンク68は、燃料電池セル集合体12の真下に設けられている。また、燃料ガスタンク68内に挿入された燃料供給管66の下端側66aの外周には、長手方向(A方向)に沿って複数の小穴(図示せず)が形成されている。改質器20で改質された燃料ガスは、これら複数の小穴(図示せず)によって燃料ガスタンク68内に、長手方向に均一に供給されるようになっている。そうして燃料ガスタンク68に供給された燃料ガスは、燃料電池セルユニット16の内側にある燃料ガス流路88(図5参照)内に供給され、燃料電池セルユニット16内を流上して、燃焼室18に到達する。
【0055】
次に、発電用空気を燃料電池モジュール2へ供給するための構造について説明する。図2〜図4に示すように、改質器20の上方には、燃料電池モジュール2の燃料電池セル集合体12の上面12a及び短辺側面12d(図2及び図4の右側短辺側面)に沿って、熱交換器22が設けられている。熱交換器22には、複数の燃焼ガス配管70と、これらの燃焼ガス配管70の周囲に形成された発電用空気流路72が設けられている。
【0056】
なお、本実施形態においては、熱交換器22は、燃料電池セル集合体12の上面12a及び右側の短辺側面12dに沿って設けるようにしているが、これに限らず、熱交換器22を、右側の短辺側面12dのみに沿って設けてもよいし、右側及び左側の両方の短辺側面12dのみに沿って設けてもよく、さらに、上面12a及び両側の短辺側面12dに沿って設けるようにしてもよい。
【0057】
また、熱交換器22の短辺側面12dに沿って設けられた部分の下端の一端側には、図2に示すように、発電用空気導入管74の導入口74aが取り付けられている。発電用空気は、発電用空気流量調整ユニット45から、この発電用空気導入管74を通して、熱交換器22内に導入される。
【0058】
また、図4及び図8に示すように、熱交換器22の上側の他端側には、発電用空気流路72の出口ポート72aが形成されている。さらに、図3に示すように、燃料電池モジュール2のケーシング56の幅方向(B方向:短辺側面方向)の両側の外側には、発電用空気供給路76が燃料電池セル集合体12の長手方向(長辺側面12c方向)に沿って形成されており、その発電用空気流路72の出口ポート72aから、発電用空気が供給されるようになっている。またさらに、その下方側であり且つ燃料電池セル集合体12の下方側に対応する位置には、発電室10内の燃料電池セル集合体12の各燃料電池セルユニット16に向けて発電用空気を吹き出すための複数の吹出口78が、長手方向に沿って等間隔に形成されている。これらの吹出口78から送出された発電用空気は、各燃料電池セルユニット16の外側に沿って、下方から上方へ流れるようになっている。
【0059】
さらに、燃料ガスと発電用空気(酸化剤ガス)が燃焼して生成される燃焼ガスを排出するための構造について説明する。上述したとおり、熱交換器22内には、燃焼室18において燃料ガスと発電用空気が燃焼して生成された燃焼ガスを排出するための複数の燃焼ガス配管70が設けられている。図4に示すように、これらの燃焼ガス配管70の下流端側には、燃料電池セル集合体12の下方に位置し且つ長手方向に延在する燃焼ガス排出室80が形成されており、燃焼ガス配管70の下端側と燃焼ガス排出室80が接続されている。なお、この燃焼ガス排出室80内に、上述した蒸発混合器58が配置され、この蒸発混合器58内の燃料ガスが、高温の燃焼ガスにより、長手方向に沿って加熱されるようになっている。また、燃焼ガス排出室80の下面には、燃焼ガス排出管82が接続され、これにより、燃焼ガスが外部へ排出される。
【0060】
続いて、図5を参照しながら、燃料電池セルユニット16について説明する。図5は、SOFC装置1の燃料電池セルユニット16を示す正面図(部分断面図)である。同図に示すように、燃料電池セルユニット16は、燃料電池セル84と、この燃料電池セル84の上下方向端部にそれぞれ接続された内側電極端子86とを備えている。
【0061】
燃料電池セル84は、上下方向に延びる管状構造体であり、内側(内部)に燃料ガス流路88を画成する円筒状の内側電極層90(燃料極層)と、円筒状の外側電極層92(空気極層)と、内側電極層90及び外側電極層92の間に設けられた酸化物電解質形の電解質層94とを備えている。内側電極層90は、燃料ガスが通過する燃料極であって(−)極として機能する一方、外側電極層92は、空気と接触する空気極であって(+)極として機能する。
【0062】
燃料電池セルユニット16の上端側と下端側に取り付けられた内側電極端子86は、同一構造であるので、ここでは、上端側に取り付けられた内側電極端子86について具体的に説明する。内側電極層90の上部90aは、電解質層94と外側電極層92に対して露出された外周面90bと上端面90cとを備えている。内側電極端子86は、導電性のシール材96を介して内側電極層90の外周面90bと接続され、さらに、内側電極層90の上端面90cとは直接接触することにより、内側電極層90と電気的に接続されている。内側電極端子86の中心部には、内側電極層90の燃料ガス流路88と連通する燃料ガス流路98が形成されている。
【0063】
内側電極層90は、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、並びに、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、及びCuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレードとの混合体、の少なくとも一種から形成されている。
【0064】
電解質層94は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、並びに、S及びMgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成されている。
【0065】
外側電極層92は、例えば、Sr及びCaから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、及びCuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、及びCuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンコバルタイト、銀、等の少なくとも一種から形成される。
【0066】
ここで、図17は、燃料電池セル84の内側電極層90(燃料極層)と同電解質層94との界面を含む部位の断面を拡大して示す顕微鏡写真の一例である。なお、同図において、内側電極層90は、NiとGdドープのセリアとの混合体(Ni/GDC)が、Niとイットリア安定化ジルコニアの混合体 (Ni/YSZ)からなる支持体(写真の下部領域の部分)上に形成されたものである。図17に示す如く、内側電極層90と電解質層94(例えば、ランタンガレート、La1-xSrxGa1-yMgy3:LSGM)は、連続して積層形成されており、両層はそれぞれ異なる密度で複数の空隙を有している。よって、内側電極層90と電解質層94との境界を「界面」として厳密に明定することは難しいものの、図17において領域Bで示す範囲が、本明細書における「固体電解質層と燃料極層との界面及び界面近傍」に相当する。
【0067】
また、本発明者らの分析評価によれば、SOFC装置1の運転が進むにつれて、電解質層94と内側電極層90との界面及び界面近傍である領域Bにおいて、内側電極層90に含まれるNi(粒状に分布)が酸化されてNi酸化物が生成し、そのNi酸化物は、従来の通常の運転を継続してもNiに還元されることなくそのまま残留することが確認された。
【0068】
続いて、図9を参照しながら、SOFC装置1に取り付けられた制御部、装置、センサ、及びタイマについて説明する。図9は、SOFC装置1の構成を示すブロック図である。同図に示すように、SOFC装置1は、SOFC装置1の運転状態を監視及び制御するための制御部110(制御手段)を備えている。この制御部110には、使用者が操作するための「ON」や「OFF」等の操作ボタンを備えた操作装置112、発電出力値(ワット数)等の種々のデータを表示するための表示装置114、及び、異常状態のとき等に警報(ワーニング)を発する報知装置116が接続されている。なお、この報知装置116は、遠隔地にある管理センタに接続され、この管理センタに異常状態を通知するようなものであってもよい。
【0069】
制御部110には、以下に説明する種々のセンサからの信号が入力されるようになっている。可燃ガス検出センサ120は、ガス漏れを検知するためのもので、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4に取り付けられている。CO検出センサ122は、本来燃焼ガス排出室80等を経て外部に排出される排気ガス中のCOが、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4を覆う外部ハウジング(図示せず)へ漏出したか否かを検知するためのものである。貯湯状態検出センサ124は、図示しない給湯器におけるお湯の温度や水量を検知するためのものである。
【0070】
電力状態検出センサ126は、インバータ54及び分電盤(図示せず)の電流及び電圧等を検知するためのものであり、開回路電圧も検出できるように構成されている。発電用空気流量検出センサ128は、発電室10に供給される発電用空気の流量を検出するためのものである。改質用空気流量センサ130は、改質器20に供給される改質用空気の流量を検出するためのものであり、燃料流量センサ132は、改質器20に供給される燃料ガスの流量を検出するためのものである。
【0071】
水流量センサ134は、改質器20に供給される純水(水蒸気)の流量を検出するためのものである。水位センサ136は、純水タンク26の水位を検出するためのものである。圧力センサ138は、改質器20の外部の上流側の圧力を検出するためのものである。排気温度センサ140は、温水製造装置50に流入する排気ガスの温度を検出するためのものである。
【0072】
発電室温度センサ142は、図3及び図4に示すように、燃料電池セル集合体12の近傍の前面側と背面側に設けられ、燃料電池セルスタック14の近傍の温度を検出して、燃料電池セルスタック14(すなわち燃料電池セル84自体)の温度を推定するためのものである。
【0073】
燃焼室温度センサ144は、燃焼室18の温度を検出するためのものであり、図3及び図4に示すように、燃料電池セル集合体12と点火装置83との間に設けられている。この燃焼室温度センサ144は、燃料電池セル84に点火されたか否かを判断するための点火確認用の温度センサとしても機能する。排気ガス室温度センサ146は、燃焼ガス排出室80の排気ガスの温度を検出するためのものである。
【0074】
改質器温度センサ148は、改質器20の温度を検出するためのものであり、改質器20の入口温度と出口温度から改質器20の温度を算出する。この改質器温度センサ148は、図3及び図4に示すように、改質器20の入口側と出口側とのそれぞれの近傍に設けられている。外気温度センサ150は、SOFC装置1が屋外に設置された場合、外気の温度を検出するためのものである。また、外気の湿度等を測定するセンサを設けるようにしてもよい。
【0075】
さらに、タイマ160は、SOFC装置1の運転開始後の累積発電時間、及び、後述するリフレッシュ制御後の累積発電時間を計測する適宜の計時手段である。
【0076】
これらのセンサ類及びタイマ160からの信号は、制御部110に送られる。制御部110は、これらの信号によるデータに基づき、水流量調整ユニット28、燃料流量調整ユニット38、改質用空気流量調整ユニット44、及び発電用空気流量調整ユニット45のそれぞれに、制御信号を送り、これらのユニットにおける各流量を制御するようになっている。また、制御部110は、インバータ54に制御信号を送り、電力供給量を制御するようにもなっている。
【0077】
さらに、図10を参照しながら、SOFC装置1における起動時の動作を説明する。図10は、SOFC装置1の起動時の動作を示すタイムチャートである。
【0078】
最初は、燃料電池モジュール2を温めるために、無負荷状態で、すなわち、燃料電池モジュール2を含む回路を開いた状態で、運転を開始する。このとき、回路には電流が流れないので、燃料電池モジュール2は発電を行わない。
【0079】
まず、改質用空気流量調整ユニット44から改質用空気を、第1ヒータ46を経由して燃料電池モジュール2の改質器20へ供給する。同時に、発電用空気流量調整ユニット45から発電用空気を、第2ヒータ48を経由して燃料電池モジュール2の熱交換器22へ供給する。この発電用空気は、熱交換器22を経由して、発電室10及び燃焼室18に到達する。
【0080】
その直後、燃料流量調整ユニット38から燃料ガスが供給される。この燃料ガスに改質用空気が混合され、改質器20及び燃料電池セルスタック14、燃料電池セルユニット16を通過して、燃焼室18に到達する。
【0081】
次に、点火装置83により着火して、燃焼室18にある燃料ガスと空気(改質用空気及び発電用空気)とを燃焼させる。この燃料ガスと空気との燃焼により排気ガスが生じ、この排気ガスにより、発電室10が暖められ、また、排気ガスが燃料電池モジュール2の密封空間8内を上昇する際、改質器20内の改質用空気を含む燃料ガスを暖めると共に、熱交換器22内の発電用空気も暖める。
【0082】
このとき、燃料流量調整ユニット38及び改質用空気流量調整ユニット44により、改質用空気が混合された燃料ガスが改質器20に供給されているので、改質器20において、式(1)で表される部分酸化改質反応(POX)が進行する。なお、同式は、原料ガスに主として含まれるメタンガス(CH4)の改質反応を例示するものであり、改質反応には、他の炭化水素ガスの酸化も含まれ得る(後記の式(2)及び式(3)において同様とする)。
CH4+1/2O2 → CO+2H2 …(1)
【0083】
この部分酸化改質反応(POX)は、発熱反応であるので、起動性が良好となる。かかる発熱反応によって昇温された燃料ガスは、燃料供給管64を通して燃料電池セルスタック14の下方に供給される。これにより、燃料電池セルスタック14が下方から加熱される。燃焼室18も燃料ガスと空気が燃焼して昇温されているので、燃料電池セルスタック14は、上方からも加熱される。その結果、燃料電池セルスタック14は、上下方向において、ほぼ均等に昇温可能に構成されている。この部分酸化改質反応(POX)が進行しても、燃焼室18では継続して燃料ガスと空気との燃焼反応が持続される。
【0084】
部分酸化改質反応(POX)の開始後、改質器温度センサ148により検出された改質器20の温度、及び発電室温度センサ142により検出された燃料電池セルスタック14の温度に基づいて、水流量調整ユニット28、燃料流量調整ユニット38、及び改質用空気流量調整ユニット44により、燃料ガスと改質用空気と水蒸気とを予め混合したガスの改質器20への供給が開始される。このとき、改質器20においては、上述した部分酸化改質反応(POX)と後述する水蒸気改質反応(SR)とが併用された式(2)で表されるオートサーマル改質反応(ATR)が進行する。
CH4+1/4O2+1/2H2O → CO+5/2H2 …(2)
【0085】
このオートサーマル改質反応(ATR)は、熱的に内部バランスが取れる(平衡状態が生起される)ので、言わば、改質器20内では熱的に自立した状態で反応が進行する。すなわち、酸素(空気)が多い場合には部分酸化改質反応(POX)による発熱が支配的となり、水蒸気が多い場合には水蒸気改質反応(SR)による吸熱反応が支配的となる。この段階では、既に起動の初期段階は過ぎており、発電室10内がある程度の温度まで昇温されているので、吸熱反応が支配的であっても大幅な温度低下を引き起こすことはない。また、オートサーマル改質反応(ATR)が進行中も、燃焼室18では燃焼反応が継続して行われている。
【0086】
オートサーマル改質反応(ATR)の開始後、改質器温度センサ148により検出された改質器20の温度、及び発電室温度センサ142により検出された燃料電池セルスタック14の温度に基づいて、改質用空気流量調整ユニット44による改質用空気の供給が停止されると共に、水流量調整ユニット28による水蒸気の供給を増加させる。
【0087】
これにより、改質器20には、空気を含まず燃料ガスと水蒸気のみを含むガスが供給され、改質器20において、式(3)で表される水蒸気改質反応(SR)が進行する。
CH4+H2O → CO+3H2 …(3)
【0088】
この水蒸気改質反応(SR)は吸熱反応であるので、燃焼室18からの燃焼熱と熱バランスをとりながら反応が進行する。この段階では、燃料電池モジュール2の起動の最終段階であることから、発電室10内が十分高温に昇温されているので、吸熱反応が進行しても、発電室10が大幅な温度低下を招くこともない。また、水蒸気改質反応(SR)が進行しても、燃焼室18では継続して燃焼反応が進行する。
【0089】
このようにして、燃料電池モジュール2は、点火装置83によって点火が行われた後、部分酸化改質反応(POX)、オートサーマル改質反応(ATR)、及び水蒸気改質反応(SR)が、順次進行することにより、発電室10内の温度が徐々に上昇する(起動モード運転、起動工程)。図10に示すように、起動工程においては、発電室10内の温度上昇と、燃料電池セルスタック14の開回路電圧OCVとが相関関係にある。以上の起動処理が終了した後、燃料電池モジュール2で発電された電力が、切換器55を介して、インバータ54及び補機ユニット4に取り出される(すなわち、発電が開始される。)。燃料電池モジュール2の発電により、燃料電池セル84自体も発熱し、燃料電池セル84の温度も上昇する。また、起動処理が終了した時点、又は、燃料電池モジュール2から電力が取り出されて発電が開始された時点で、タイマ160による計時処理が開始される。
【0090】
発電開始後においても、改質器20の温度を維持するために、燃料電池セル84で発電に消費される燃料ガス及び発電用空気の量よりも多い燃料ガス及び発電用空気を供給し、燃焼室18での燃焼を継続させる。なお、発電中は、改質効率の高い水蒸気改質反応(SR)で発電が進行する。
【0091】
また、図10に示す起動工程(起動モード運転)においては、部分酸化改質反応(POX)工程、オートサーマル改質反応(ATR)工程、及び水蒸気改質反応(SR)工程を、それぞれ単一の工程として説明したが、それぞれを細分化した工程としても好適である。POX工程を、POX1工程及びPOX2工程に細分化し、ATR工程を、ATR1工程及びATR2工程に細分化し、SR工程を、SR1工程及びSR2工程に細分化した例を説明する。
【0092】
まず、制御部110は、改質用空気流量調整ユニット44及び発電用空気流量調整ユニット45に信号を送って、これらを起動させ、改質用空気(酸化剤ガス)及び発電用空気を燃料電池モジュール2に供給する。なお、供給が開始される改質用空気の供給量は10.0(L/min)、発電用空気の供給量は100.0(L/min)に設定される。
【0093】
次いで、制御部110は、燃料流量調整ユニット38に信号を送って、改質器20への燃料ガス供給を開始する。これにより、改質器20へ送り込まれた燃料ガス及び改質用空気は、改質器20、燃料供給管64、及びマニホールド66を介して各燃料電池セルユニット16内に送り込まれる。各燃料電池セルユニット16内に送り込まれた燃料ガス及び改質用空気は、各燃料電池セルユニット16の燃料ガス流路98上端から流出する。なお、供給が開始されるときの燃料ガスの供給量は6.0(L/min)に設定されている。
【0094】
さらに、制御部110は、点火装置83に信号を送り、燃料電池セルユニット16から流出する燃料ガスに点火する。これにより、燃焼室18内で燃料ガスが燃焼され、これによって生成した排気ガスにより、その上方に配置された改質器20が加熱されると共に、燃焼室18、発電室10、及びその中に配置された燃料電池セルスタック14の温度(以下「セルスタック温度」という)も上昇する。燃料ガス流路98を含む燃料電池セルユニット16及びその上端部位は燃焼部に相当する。
【0095】
改質器20が加熱されることにより、改質器20の温度(以下「改質器温度」という)が300℃程度まで上昇すると、改質器20内においては、部分酸化改質反応(POX)が発生する(POX1工程開始)。部分酸化改質反応は発熱反応であるため、改質器20は、部分酸化改質反応の発生により、その反応熱によっても加熱されるようになる。
【0096】
さらに温度が上昇し、改質器温度が350℃に達すると(POX2移行条件)、制御部110は、燃料流量調整ユニット38に信号を送り、燃料ガス供給量を減少させると共に、改質用空気流量調整ユニット44に信号を送り、改質用空気供給量を増加させる(POX2工程開始)。これにより、燃料ガス供給量は5.0(L/min)に変更され、改質用空気供給量は18.0(L/min)に変更される。これらの供給量は、部分酸化改質反応(POX)を発生させるために適切な供給量である。すなわち、部分酸化改質反応(POX)が発生し始める初期の温度領域においては、供給する燃料ガスの割合を多くすることにより、燃料ガスに確実に着火させる状態を形成すると共に、その供給量を維持して着火を安定させる(図9の「POX1」工程参照)。さらに、安定して着火され、温度が上昇した後には、部分酸化改質反応(POX)を維持するために必要にして十分な量の燃料ガスを供給することにより、燃料の浪費を抑えている。
【0097】
次に、改質器温度が600℃以上、且つ、セルスタック温度が250℃以上になると(ATR1移行条件)、制御部110は、改質用空気流量調整ユニット44に信号を送り、改質用空気供給量を減少させると共に、水流量調整ユニット28に信号を送り、水の供給を開始させる(ATR1工程開始)。これにより、改質用空気供給量は8.0(L/min)に変更され、水供給量は2.0(cc/min)にされる。改質器20内に水(水蒸気)が導入されることにより、改質器20内で水蒸気改質反応(SR)も生じるようになる。すなわち、ATR1工程においては、部分酸化改質反応と水蒸気改質反応が混在したオートサーマル改質反応(ATR)が進行するようになる。
【0098】
このとき、セルスタック温度は、発電室10内に配置された発電室温度センサ142によって測定されている。発電室10内の温度とセルスタック温度は、厳密には同一ではないが、発電室温度センサ142によって検出される温度はセルスタック温度を反映したものであり、発電室10内に配置された発電室温度センサ142によりセルスタック温度を把握することができる。なお、本明細書において、「セルスタック温度」とは、セルスタック温度を反映した値を指示する任意のセンサにより測定された温度を意味するものとする。
【0099】
さらに、改質器温度が600℃以上、且つ、セルスタック温度が400℃以上になると(ATR2移行条件)、制御部110は、燃料流量調整ユニット38に信号を送り、燃料ガス供給量を減少させる。また、制御部110は、改質用空気流量調整ユニット44に信号を送り、改質用空気供給量を減少させると共に、水流量調整ユニット28に信号を送り、水の供給量を増加させる(ATR2工程開始)。これにより、燃料ガス供給量は4.0(L/min)に変更され、改質用空気供給量は4.0(L/min)に変更され、水供給量は3.0(cc/min)に変更される。このように改質用空気供給量が減少され、且つ、水供給量が増加されることにより、改質器20内においては、発熱反応である部分酸化改質反応(POX)の割合が減少し、吸熱反応である水蒸気改質反応(SR)の割合が増加する。これにより、改質器温度の上昇が抑制され、一方、改質器20から受けるガス流により燃料電池セルスタック14が昇温されることによって、セルスタック温度は改質器温度に追従するように昇温していくので、両者の温度差が縮小され、両者は安定的に昇温されていく。
【0100】
次に、改質器温度とセルスタック温度の温度差が縮まり、改質器温度が650℃以上、且つ、スタック温度が600℃以上になると(SR1移行条件)、制御部110は、改質用空気流量調整ユニット44に信号を送り、改質用空気の供給を停止する。また、制御部110は、燃料流量調整ユニット38に信号を送り、燃料ガス供給量を減少させると共に、水流量調整ユニット28に信号を送り、水の供給量を増加させる(SR1工程開始)。これにより、燃料ガス供給量は3.0(L/min)に変更され、水供給量は8.0(cc/min)に変更される。改質用空気の供給が停止されることにより、改質器20内において部分酸化改質反応(POX)は生起されなくなり、水蒸気改質反応のみが進行する。
【0101】
改質器温度とセルスタック温度の温度差が更に縮まり、改質器温度が650℃以上、且つ、スタック温度が650℃以上になると(SR2移行条件)、制御部110は、燃料流量調整ユニット38に信号を送り、燃料ガス供給量を減少させると共に、水流量調整ユニット28に信号を送り、水の供給量も減少させる。また、制御部110は、発電用空気流量調整ユニット45に信号を送り、発電量空気の供給量も減少させる(SR2工程開始)。これにより、燃料ガス供給量は2.3(L/min)に変更され、水供給量は6.3(cc/min)に変更され、発電用空気供給量は80.0(L/min)に変更される。
【0102】
SR1工程では、改質器温度及びスタック温度を発電可能な温度付近まで上昇させるため、燃料ガス供給量及び水供給量を高めに保持している。その後、SR2工程では、燃料ガス流量及び水供給量を低減して、改質器温度及びセルスタック温度の温度分布を落ち着かせ、発電可能な温度範囲に安定化させる。
【0103】
制御部110は、SR2工程において、所定の低減速度で燃料ガス供給量を含む各供給量をSR2工程用の供給量に低減し、所定の発電移行期間だけ維持する。これにより、発電移行までに、改質器20や燃料電池セルスタック14等を所定の発電移行期間だけ安定した状態に保持し、燃料電池モジュール2内の改質器温度やセルスタック温度等の温度分布を落ち着かせることができる。つまり、発電移行期間は、供給量低減後の安定化期間として機能する。
【0104】
そして、所定の発電移行期間が経過した後、改質器温度が650℃以上、且つ、スタック温度が700℃以上であると(発電工程移行条件)、燃料電池モジュール2から切換器55を介してインバータ54及び補機ユニット4に電力を出力させ、発電工程に移行して発電を開始する(発電工程開始)。この場合においても、起動処理が終了した時点、又は、燃料電池モジュール2から電力が取り出されて発電が開始された時点で、タイマ160による計時処理が開始される。
【0105】
こうして発電を開始したSOFC装置1の運転を続けると、燃料電池セル84における燃料極層である内側電極層90に、空気由来の酸素ガスや酸素イオンが流入して拡散し、内側電極層90に含まれるNi等の金属の酸化によって酸化物が生成されてしまう。特に、電解質層94と内側電極層90との界面及びその近傍(図5に示す領域B)の部位で生じた酸化物は、通常の発電運転中に挿通される燃料ガスでは還元され難く、内側電極層90の酸化が徐々に進行していく。このとき、水素ガスの濃度が比較的低くなる燃料ガス流路88の下流側(他端側)では、電解質層94と内側電極層90との界面付近における内側電極層90の酸化の程度が顕著となる。そこで、SOFC装置1の運転時には、酸化された部位を含む内側電極層90の還元処理を行うためのリフレッシュ制御を実行する。
【0106】
ここで、図11は、SOFC装置1において、かかるリフレッシュ制御を行う処理手順の一例を示すフローチャートである。まず、上述した発電前の最初の起動工程(起動モード運転)を経て発電を開始すると共に、上述の如く、制御部110からの制御信号に基づいてタイマ160による時間計測を始め、制御部110は、そのタイマ160の測定信号に基づいて、発電開始からの経過時間trを検出する(ステップS1)。より具体的には、例えば、制御部110は、電力状態検出センサ126(図9参照)がインバータ54の電流及び電圧を検知したとき、その検知信号に基づいてタイマ160の計時をONにしてその時間を計数してもよく、或いは、タイマ160から送出される連続的なタイミング信号のうち、電力状態検出センサ126がインバータ54の電流及び電圧を検知しているときに送出されてきたものを計数し、その計数値に基づいて時間を計測するように構成してもよい。すなわち、この経過時間trは、SOFC装置1の運転開始後の累積発電時間(燃料電池セル84から電力を取り出している時間)に相当する。
【0107】
一方、SOFC装置1の運転に先立ち、例えば、SOFC装置1と同様に構成されたSOFC試験機等を用い、SOFC装置1を種々の発電運転条件で運転したときに、燃料電池セル84からの出力電力又は出力電圧が、定常運転における適正な値(例えば設計仕様値等)から有意に低下した時点での運転経過時間を計測する。そして、その計測値に基づいて、燃料電池セル84が酸化物過多状態となり、よって、そのリフレッシュ制御の実行が必要であると判定するための基準時間を予め設定する。例えば、燃料電池セル84からの出力電力又は出力電圧の有意な低下が、運転開始後1年で生じたとすれば、燃料電池セル84が酸化物過多状態にあると推定するための所定値t1を1年としてもよいし、祐度を勘案して、その所定値t1を半年と設定してもよい。制御部110には、こうして種々の運転条件に対して(関連付けられて)決定された複数の所定値t1をその運転条件と共に記憶させておくことができる。
【0108】
なお、そのような試験運転は、必要に応じて加速試験等で代替しても良いし、或いは、シミュレーションによって又はシミュレーションと組み合わせて実施してもよい。また、想定される運転条件のうち、燃料電池セル84の内側電極層90における酸化の程度が最も大きくなる運転条件における所定値t1を他の運転条件に対して用いてもよい。
【0109】
そして、SOFC装置1の稼働時に、制御部110は、タイマ160で計測される経過時間trと適宜の所定値t1の比較演算を行い、tr>t1である場合(ステップS2:YES)には、燃料電池セル84が酸化物過多状態にあると推定し、燃料電池セル84のリフレッシュ制御へ移行する。一方、tr≦t1である場合(ステップS2:NO)には、燃料電池セル84が酸化物過多状態にない(非酸化物過多状態にある)と推定し、燃料電池セル84のリフレッシュ制御へは移行せずに通常の発電運転の処理に戻る。このように、本実施形態では、制御部110、タイマ160、及び電力状態検出センサ126から酸化推定手段が構成されており、或いは、制御部110が酸化推定手段として機能すると捉えてもよい。
【0110】
なお、このステップS2における比較演算は、例えば、SOFC装置1の発電中や発電を休止している夜間等に1回/日の頻度で行ったり、或いは、それよりも短い間隔で実施したり、それよりも長い間隔で実施したりしてもよく、さらには、比較演算の間隔は一定であってもなくてもよい。
【0111】
次いで、本実施形態では、直ちにリフレッシュ制御を実行するのではなく、一旦、前述した図10に示す起動工程すなわち起動モード運転が行われているか否かを制御部110によって判定する(ステップS3)。SOFC装置1は、通常、発電と発電休止を繰り返しながら稼働されることが多く(例えば家庭用のSOFC等)、休止状態から発電を再開する際には、起動工程が実行される。このとき、起動モード運転中と判定された場合(ステップS3:YES)には、その起動モード運転において、燃料電池セル84のリフレッシュ制御を実行する(ステップS4)。一方、起動モード運転中ではないと判定された場合(ステップS3:NO)には、リフレッシュ制御を実行せずに通常の発電運転の処理に戻る。このように、本実施形態では、燃料電池セル84が酸化物過多状態にあると推定された後の最初の起動モード運転中に、リフレッシュ制御が実行される。
【0112】
このリフレッシュ制御においては、SOFC装置1の稼働中に通常の発電運転が実施されることにより、燃料電池セル84の内側電極層90における、特に、内側電極層90と電解質層94との界面及びその近傍の領域B(図17参照)に形成された酸化物が、十分に還元され得る還元促進条件となるような所定量の燃料ガスを内側電極層90に供給する。なお、そのような還元促進条件を生起させるリフレッシュ制御におけるより具体的な処理については後述する。
【0113】
そして、燃料電池セル84のリフレッシュ制御の実行が完了したら、制御部110によって経過時間trをリセットし(ステップS5)、通常の発電運転の処理に戻る。ここで、リセットされた経過時間trは、次の起動モード運転が終了した後、発電運転に移行して発電が開始される時に、タイマ160によって計時が再開される(発電運転再開後のステップS1)。よって、その経過時間trは、燃料電池セル84のリフレッシュ制御を実行した後のSOFC装置1の累積発電時間となり、これにより、発電運転を再開した後のステップS2においては、前回のリフレッシュ制御の実行後からの累積発電時間である経過時間trが所定値t1を超えた場合に、燃料電池セル84が酸化物過多状態にあると推定される。
【0114】
このように構成された本発明によるSOFC装置1によれば、通常時は発電効率が高い状態で発電を行いながら、酸化推定手段及び制御手段である制御部110によって、燃料電池セル84の状態をモニターし、燃料電池セル84が酸化物過多状態にあると推定された場合に、内側電極層90に所定量の燃料ガス(水素ガスリッチであり還元性に富む)を供給して還元促進条件を生起させることにより、内側電極層90の表層のみならずその内部の電解質層94との界面及びその近傍に生じた酸化物を、燃料ガス中の水素ガスの還元力によって十分に還元することができる。
【0115】
その結果、内側電極層90ひいては燃料電池セル84を十分にリフレッシュさせることができるので、燃料電池セル84が酸化物過多状態となるまでは、発電に寄与しない燃料ガスの供給を極力抑えた状態で発電効率を高めることができ、燃料電池セル84が酸化物過多状態になった場合にリフレッシュ制御を実行することにより、燃料電池セル84の発電性能を運転初期の高い状態に回復させることができる。したがって、運転中における発電性能の低下を有効に防止して優れた発電能力を維持しつつ、高発電効率での運転継続を実現することが可能となる。
【0116】
また、制御部110により、SOFC装置1の運転開始後の経過時間tr(累積発電時間)、又は、リフレッシュ制御後の発電運転における経過時間trと、燃料電池セル84が酸化物過多状態であるか否かを推定するために予め設定した基準時間である所定値t1との比較結果に基づいて、かかる推定を行うので、その推定精度(確度)を十分に且つ極めて簡便に高めることが可能となり、これにより、燃料電池セル84の発電性能を適時に且つ効果的に回復させることができる。
【0117】
さらに、制御部110によって燃料電池セル84が酸化物過多状態にあると推定された後の最初の起動モード運転時に、燃料電池セル84のリフレッシュ制御を実行するので、そのような推定がされて時点で通常の発電運転を実施中であっても、次の起動モード運転までは、低発電効率ながらも発電を継続することが可能となる。よって、リフレッシュ制御のために発電を停止又は休止する必要がないので、不意な発電停止を回避して、稼働率の低下等のSOFC装置1を実使用する際の不都合を抑止することができる。また、発電に先駆けて、起動モード運転時に燃料電池セル84の発電性能を有効に回復させることができるので、更に効率よい発電を実現することが可能となる。
【0118】
ここで、図12(A)及び(B)は、SOFC装置1の起動時の動作を示すタイムチャートであって、図12(A)は、燃料電池セル84が酸化物過多状態にない(非酸化物過多状態にある)と推定された場合に実行される通常の起動モード運転における動作を模式的に示す図であり、図12(B)は、燃料電池セル84が酸化物過多状態にあると推定された場合に実行されるリフレッシュ制御における起動モード運転の一例における動作を模式的に示す図である。この図12(A)は、基本的に、図10に示すタイムチャートにおける動作と同等であり、また、図12(B)に示す動作は、制御部110の制御により、水蒸気改質反応(SR)工程の実施時間が、図12(A)に示す動作における同工程の実施時間よりも長くされていること以外は、その図12(A)に示すタイムチャートの動作と同様である。具体的には、例えば、図12(B)に示す起動モード運転では、水蒸気改質反応(SR)工程の実施時間を、図12(A)に示す起動モード運転よりも30分延長する。
【0119】
こうすることにより、起動モード運転において生じる3つの反応工程のうち、水蒸気改質反応(SR)による水素ガスの収率が最も高いので、燃料電池セル84の内側電極層90への水素ガスの供給量をより高めることができ、これにより、燃料電池セル84の発電性能の回復を極めて効果的に実現することができる。
【0120】
上記の図12(A)及び(B)に示す制御運転は、リフレッシュ制御を起動モード運転において実行する手順の一例であり、さらに、図13〜図15を参照して、リフレッシュ制御を発電運転時に実行する手順の例について説明する。
【0121】
図13は、SOFC装置1においてリフレッシュ制御の有無による出力電流と燃料ガス流量との関係の一例を示すグラフである。同図において、破線で示す曲線は、燃料電池セル84が酸化物過多状態にない(非酸化物過多状態にある)ときの燃料供給テーブル(基本燃料供給テーブル)を表しており、制御部110は、通常の発電運転においては、予め定められたその基本燃料供給テーブルに即して、燃料ガスを供給する。一方、実線で示す曲線は、燃料電池セル84が酸化物過多状態にあるときの燃料供給テーブル(リフレッシュ制御時燃料供給テーブル)を表しており、制御部110は、リフレッシュ制御においては、予め定められたそのリフレッシュ制御時燃料供給テーブルに即して、燃料ガスを供給する。
【0122】
すなわち、燃料電池セル84のリフレッシュ制御の実行時は、通常の発電運転時に比して、同等の出力電流を得るための燃料ガス流量を増大させ、燃料ガスの利用率を低下させる。これにより、燃料電池セル84の他端側(寄り)における燃料ガスに含まれる水素ガス濃度を有意に高めることができるので、内側電極層90の酸化物の還元を促進して、燃料電池セル84の発電性能をより確実に且つより迅速に回復させ得る。
【0123】
また、図13に示す例では、基本燃料供給テーブルに沿って付加追従運転を行えば、本来、最大7Aの発電電流を出力することが可能であるところ、リフレッシュ制御時燃料供給テーブルに沿った運転を行う際には、最大でも4Aの発電電流しか出力されないような制御が実施される。すなわち、リフレッシュ制御の実行時には、通常の発電運転に比して発電を抑制するので、燃料電池セル84の内側電極層90へ新たに供給される酸素イオンの量を低減して、内側電極層90における新たな酸化物の生成を抑止し、これにより、燃料電池セル84の発電性能の回復速度を向上させることが可能となる。
【0124】
また、図14は、SOFC装置1においてリフレッシュ制御の有無による出力電流とスタック温度との関係の一例を示すグラフである。同図において、破線で示す曲線に囲まれた網掛け部は、燃料電池セル84が酸化物過多状態にない(非酸化物過多状態にある)ときのスタック温度の範囲(基本温度帯域)を表しており、制御部110は、通常の発電運転においては、スタック温度が予め定められたその基本温度帯域の範囲内の値に維持されるように、燃料ガスを供給する。一方、実線で示す曲線に囲まれた網掛け部は、燃料電池セル84が酸化物過多状態にあるときのスタック温度の範囲(リフレッシュ制御時温度帯域)を表しており、制御部110は、リフレッシュ制御の実行時には、スタック温度が予め定められたそのリフレッシュ制御時温度帯域の範囲内の値に維持されるように、燃料ガスを供給する。
【0125】
このようにして、燃料電池セル84のリフレッシュ制御では、通常の発電運転時に比して、同等の出力電流を得るために、燃料電池セル84の温度をより高めることにより、内側電極層90における酸化物の還元反応を更に促進することができ、その結果、燃料電池セル84の発電性能をより一層確実に且つ迅速に回復させることが可能となる。
【0126】
また、図14に示す例の如く、リフレッシュ制御を実行している時の燃料電池セル84の温度を、通常の発電運転における発電電流の上限(7A)に対応して予め定められている上限温度(650℃)よりも高くするので、内側電極層90における酸化物の還元反応を、通常の発電運転時よりも確実に促進させることができ、これにより、燃料電池セル84の発電性能を更に一層確実に且つ迅速に回復させることが可能になる。
【0127】
さらに、図15は、SOFC装置1においてリフレッシュ制御の有無による出力電流と燃料ガス流量との関係の別の一例を示すグラフである。同図において、破線で示す曲線は、図13におけるのと同じ燃料供給テーブル(基本燃料供給テーブル)を表している。一方、2つの黒塗り丸印は、燃料電池セル84が酸化物過多状態にあるときの出力電流と燃料ガスの流量を表しており、制御部110は、リフレッシュ制御においては、発電量を一定(出力電流=0.5A:リフレッシュ制御時A)にするか、或いは、発電を停止(出力電流=0A:リフレッシュ制御時B)する制御を実施する。
【0128】
これらのうち、リフレッシュ制御時Aの条件では、燃料電池セル84における発電量が一定にされるので、燃料電池セル84の内側電極層90へ新たに供給される酸素イオンの量的変動を抑制することができ、また、リフレッシュ制御時Bの条件では、燃料電池セル84における発電が停止されるので、燃料電池セル84の内側電極層90へ新たに供給される酸素イオンを格段に低減することができる。よって、かかる制御を実施することにより、燃料電池セル84の発電性能をより安定的に回復させることが可能となる。
【0129】
このとき、リフレッシュ制御時Aにおける出力電流(0.5A)を、切換器55を操作して、補機ユニット4(図1及び図9参照)の構成機器に供給することもでき、この場合、補機ユニット4への供給電流を安定化させることが望ましい。そうすれば、燃料電池セル84の内側電極層90における還元(反応)の進行に伴って、補機ユニット4への電力供給が変動することに起因して補機ユニット4の構成機器に不具合が生じてしまうことを抑止することが可能となる。また、リフレッシュ制御時Aであっても、その時の出力電流を補機ユニット4へ供給しなくてもよく、そうすれば、補機ユニット4の構成機器を確実に保護してその不具合の発生を更に防止することができる。
【0130】
かかる有利な作用効果は、補機ユニット4への電力供給すら停止させるリフレッシュ制御時Bの制御を行う場合にも同様に奏され、このリフレッシュ制御時Bの制御においては、燃料電池セル84における反応の熱自立に必要な量以上の燃料ガスが内側電極層90に供給され、これにより、内側電極層90における還元反応を促進させることができる。
【0131】
また、図16(A)及び(B)は、SOFC装置1において、リフレッシュ制御を行う処理手順の他の例を示すタイムチャートである。この例では、まず、起動モード運転を実施すると、燃料電池セル84の温度上昇に伴って、電力を取り出していない開回路状態での開回路電圧OCVが160V程度まで上昇する。それから、燃料電池セル84が発電に十分な温度にまで昇温されると、通常の発電運転に移行する。
【0132】
発電運転に入り、発電(燃料電池セル84からの電力の取り出し:より具体的には、図16(B)に示すとおり、例えば電流Itを出力させる)を開始すると、図16(A)に実線で示すとおり、取り出される電力の大きさに応じて電圧が低下(降下)する。この実線に示すように、低下後の出力電圧が、電流Itに応じて予め定められている電圧基準値である下限電圧Vlimit(図16(A)参照)を下回らない場合には、燃料電池セル84は酸化物過多状態にない(非酸化物過多状態にある)と推定する。
【0133】
ここで、本発明者らが、SOFC装置1と同等の構成を有する装置を用いた運転試験の結果から定めた上記電流Itと下限電圧Vlimitの設定(テーブル)例を以下に示す。
・It=7Aのとき、Vlimit=109V
・It=6Aのとき、Vlimit=112V
・It=5Aのとき、Vlimit=115V
・It=4Aのとき、Vlimit=119V
・It=3Aのとき、Vlimit=124V
・It=2Aのとき、Vlimit=129V
【0134】
他方、図16(A)に破線で示すように、低下後の出力電圧が、下限電圧Vlimitを下回った場合には、燃料電池セル84が酸化物過多状態にあると推定し、例えば、先述した図12(A)及び(B)〜図15に示す手順によりリフレッシュ制御を実行する。こうすることにより、燃料電池セル84が酸化物過多状態にあるか否かの推定精度(確度)を更に高めることができるので、燃料電池セル84の発電性能の回復特性を更に向上させることができる。
【0135】
なお、上述したとおり、本発明は上記の実施の形態において説明した具体例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない限度において様々な変形が可能である。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の技術的範囲に包含される。換言すれば、前述した各具体例が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズ等は、例示したものに制限されず適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の技術的範囲に包含される。
【0136】
例えば、図11に示す処理手順において、リフレッシュ制御を実行した後、経過時間trをリセットせずに(つまり、ステップS5を省略して)、通常の発電運転に戻ってタイマ160による計時を再開し、ステップS1においては、その計測時間をリフレッシュ制御実行前の経過時間trに加算してもよい。この場合、経過時間trは、SOFC装置1における最初の通常の発電運転開始からの総積算累積発電時間を表し、ステップS2においては、この経過時間trと所定値t1との比較結果に基づいて、燃料電池セル84が酸化物過多状態にあるか否かを推定してもよい。
【0137】
また、同図の処理手順において、燃料電池セル84が酸化物過多状態にあるか否かを推定するために、経過時間trとその所定値t1に代えて、総発電量wrとその所定値w1を用いてもよい。すなわち、ステップS1において、発電前の最初の起動工程(起動モード運転)を実施した後に、制御部110が、電力状態検出センサ126によるインバータ54の電流及び電圧の検知信号に基づいて、発電開始からの総発電量wrを検出する。次いで、ステップS2では、制御部110は、発電時間に対する所定値t1と同様に予め設定しておいた発電量に対する所定値w1と測定された総発電量wrとの比較演算を行い、wr>w1であるとき(ステップS2:YES)には、燃料電池セル84が酸化物過多状態にあると推定してステップS3及びS4を実施してリフレッシュ制御を実行し、wr≦w1であるとき(ステップS2:NO)には、燃料電池セル84が酸化物過多状態にはない(非酸化物過多状態にある)と推定してリフレッシュ制御を行わずに通常の発電運転の処理に戻る。
【0138】
このような手順によっても、燃料電池セル84が酸化物過多状態にあるか否かの推定精度(確度)を十分に且つ極めて簡便に高めることが可能であるので、燃料電池セル84の発電性能を適時に且つ効果的に回復させることができる。
【0139】
またこの場合、経過時間trに対するリセットの要否と同様に、総発電量wrを、ステップS5においてリセットしてもよいし、ステップS5を省略してリセットしなくてもよい。前者の如く、ステップS5を実施した場合には、その総発電量wrは、燃料電池セル84のリフレッシュ制御を実行した後のSOFC装置1の発電量の積算値となり、通常の発電運転を再開した後のステップS2においては、前回のリフレッシュ制御の実行後からの総発電量wrが所定値w1を超えた場合に、燃料電池セル84が酸化物過多状態にあると推定される。
【0140】
さらに、燃料電池セル84のリフレッシュ制御を起動モード運転において実行する際には、図12(B)に示すような水蒸気改質反応(SR)の延長を行わず、燃料電池セル84の燃料極層である内側電極層90に供給する燃料ガスの供給量を、リフレッシュ制御を実行しない通常の起動モード運転において内側電極層90に供給する燃料ガスの供給量よりも大きくするような制御を行ってもよい。
【0141】
そうすることにより、通常の起動モード運転では、燃料電池セル84の加熱に必要十分量の燃料ガスを供給して燃料ガスの使用量の増大を抑止しつつ、リフレッシュ制御を行う起動モード運転では、燃料電池セル84への燃料ガスの供給量を増大させることによって内側電極層90の酸化物を十分に還元することができるので、発電性能の確実且つ十分な回復と、経済性及び操作性の向上を両立させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0142】
以上説明したとおり、本発明のSOFC装置によれば、その運転中における発電性能の低下を防止することができ、これにより、優れた発電能力を維持しつつ高い発電効率で発電運転を継続することが可能となるので、種々の用途に使用可能なSOFC、それを備える機器、装置、システム、及び設備等、並びに、それらの製造及び使用に、広く且つ有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0143】
1:固体酸化物形燃料電池(SOFC)装置、2:燃料電池モジュール、4:補機ユニット(補機)、6:ハウジング、8:密封空間、10:発電室、12:燃料電池セル集合体、12a:上面、12b:下面、12c:長辺側面、12d:短辺側面、14:燃料電池セルスタック、16:燃料電池セルユニット、18:燃焼室、20:改質器、22:熱交換器、24:水供給源、26:純水タンク、28:水流量調整ユニット、30:燃料供給源、32:ガス遮断弁、36:脱硫器、38:燃料流量調整ユニット、40:空気供給源、42:電磁弁、44:改質用空気流量調整ユニット、45:発電用空気流量調整ユニット、46:第1ヒータ、48:第2ヒータ、50:温水製造装置、52:制御ボックス、54:インバータ、55:切換器、56:ケーシング、58:蒸発混合器、60:被改質ガス供給管、62:水供給管、64:燃料供給管、66:マニホールド、66a:下端側、68:燃料ガスタンク、70:燃焼ガス配管、72:発電用空気流路、72a:出口ポート、74:発電用空気導入管、74a:導入口、76:発電用空気供給路、78:吹出口、80:燃焼ガス排出室、82:燃焼ガス排出管、83:点火装置、84:燃料電池セル、86:内側電極端子、88:燃料ガス流路、90:内側電極層(燃料極層)、90a:上部、90b:外周面、90c:上端面、92:外側電極層(空気極層)、94:電解質層(固体電解質層)、96:シール材、98:燃料ガス流路、110:制御部(制御手段)、112:操作装置、114:表示装置、116:報知装置、120:可燃ガス検出センサ、122:検出センサ、124:貯湯状態検出センサ、126:電力状態検出センサ(制御手段)、128:発電用空気流量検出センサ、130:改質用空気流量センサ、132:燃料流量センサ、134:水流量センサ、136:水位センサ、138:圧力センサ、140:排気温度センサ、142:発電室温度センサ、144:燃焼室温度センサ、146:排気ガス室温度センサ、148:改質器温度センサ、150:外気温度センサ、160:タイマ(制御手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと酸化剤ガスとにより発電を行う固体酸化物形燃料電池装置であって、
炭化水素を含む原料ガスを改質して水素ガスを含む前記燃料ガスを生成する改質器と、
前記燃料ガスが供給される燃料極層、前記酸化剤ガスが供給される空気極層、及び、該燃料極層と該空気極層との間に設けられた固体電解質層を有し、且つ、一端側から他端側に前記燃料ガスが流される燃料電池セルと、
前記燃料極層に前記燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、
前記空気極層に前記酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給手段と、
当該固体酸化物形燃料電池装置の運転状態を監視及び制御する制御手段と、
前記燃料電池セルが酸化物過多状態にあるか否かを推定する酸化推定手段と、
を備えており、
前記制御手段は、前記酸化推定手段によって前記燃料電池セルが酸化物過多状態にあると推定された場合に、所定の還元促進条件となるように前記燃料極層に前記燃料ガスを供給するリフレッシュ制御を実行するものである、
固体酸化物形燃料電池装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記リフレッシュ制御を実行している時の前記燃料ガスの利用率を、前記リフレッシュ制御を実行していない時の前記燃料ガスの利用率よりも低下させるものである、
請求項1記載の固体酸化物形燃料電池装置。
【請求項3】
前記燃料電池セルを通過した燃料ガスを燃焼させ、該燃焼熱により該燃料電池セルを加熱する燃焼部を備え、
前記制御手段は、前記リフレッシュ制御を実行している時は、前記リフレッシュ制御を実行していない時よりも燃料ガスの利用率を低下させるとともに、前記燃料電池セルを通過する燃料ガスの流量を増加させて前記燃焼熱を大きくするものである、
請求項2記載の固体酸化物形燃料電池装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記リフレッシュ制御を実行している時の前記燃料電池セルの温度を、前記リフレッシュ制御を実行していない時の発電電力に応じて予め定められている温度よりも高くするものである、
請求項3記載の固体酸化物形燃料電池装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記リフレッシュ制御を実行している時の燃料電池セルの温度を、リフレッシュ制御を実行していない時の発電電力の上限に応じて予め定められている温度よりも高くするものである、
請求項4記載の固体酸化物形燃料電池装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記リフレッシュ制御を実行している時に、前記燃料電池セルにおける発電を、該燃料電池セルが酸化物過多状態にない場合に比して抑制するものである、
請求項5記載の固体酸化物形燃料電池装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記燃料電池セルを発電可能な温度に加熱する起動モード運転を実行し、且つ、前記酸化推定手段によって前記燃料電池セルが酸化物過多状態にあると推定された後の最初の起動モード運転時に、前記リフレッシュ制御を実行するものである、
請求項3記載の固体酸化物形燃料電池装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記リフレッシュ制御を実行する前記起動モード運転において前記燃料極層に供給する前記燃料ガスの供給量を、前記リフレッシュ制御を実行しない前記起動モード運転において前記燃料極層に供給する前記燃料ガスの供給量よりも大きくするものである、
請求項7記載の固体酸化物形燃料電池装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記起動モード運転において、部分酸化改質反応工程、オートサーマル改質反応工程、及び、水蒸気改質反応工程を実行し、且つ、前記リフレッシュ制御を実行する前記起動モード運転における前記水蒸気改質反応工程の実行時間を、前記リフレッシュ制御を実行しない前記起動モード運転における前記水蒸気改質反応工程の実行時間よりも長くするものである、
請求項8記載の固体酸化物形燃料電池装置。
【請求項10】
前記酸化推定手段は、運転開始後の累積発電時間、又は、前回実行した前記リフレッシュ制御後の累積発電時間が予め設定された所定値に達したときに、前記燃料電池セルが酸化物過多状態にあると推定するものである、
請求項3記載の固体酸化物形燃料電池装置。
【請求項11】
前記酸化推定手段は、前記前回実行した前記リフレッシュ制御後の累積発電時間が予め設定された所定値に達したときに、前記燃料電池セルが酸化物過多状態にあると推定し、且つ、運転開始後のリフレッシュ制御の累積実行回数に応じて該所定値を変化させるものである、
請求項10記載の固体酸化物形燃料電池装置。
【請求項12】
前記酸化推定手段は、運転開始後の総発電量、又は、前回実行した前記リフレッシュ制御後の総発電量が予め設定された所定値に達した否かに基づいて、前記燃料電池セルが酸化物過多状態にあるか否かを推定するものである、
請求項3記載の固体酸化物形燃料電池装置。
【請求項13】
前記酸化推定手段は、発電時に前記燃料電池セルから電力を取り出している時の出力電圧が、取り出される電力の値に応じて予め設定された基準値よりも小さいときに、前記燃料電池セルが酸化物過多状態にあると推定するものである、
請求項3記載の固体酸化物形燃料電池装置。

【図1】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−221791(P2012−221791A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87318(P2011−87318)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】