説明

固体酸化物形燃料電池装置

【課題】厚さ方向の寸法を小さくしても、容器の破損を有効に防止することができ、耐久性に優れ且つ設置スペースを一層削減することが可能な固体酸化物形燃料電池(SOFC)装置を提供する。
【解決手段】SOFC装置1の燃料電池モジュール2は、略直方体形状に構成された燃料電池セル集合体が収容されるケーシング56を備えている。そのケーシング56は、燃料電池セル集合体の長辺側面に対向する一対の長辺側壁561,561と、燃料電池セル集合体の短辺側面に対向する一対の短辺側壁562,562から構成される胴部560を有している。長辺側壁561の端部面561sは、短辺側壁562の面562sに対向して配置されており、その状態で先端部56Tにおいて溶接等によって接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスと酸化剤ガスとにより発電を行う固体酸化物形燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:以下「SOFC」ともいう)は、電解質として酸化物イオン導電性固体電解質を用い、その両側に電極を取り付け、一方の側に燃料ガスを供給し、他方の側に酸化剤ガス(空気、酸素等)を供給して、比較的高温で発電反応を生じさせて発電を行う燃料電池装置である。
【0003】
具体的には、SOFCは、一般に、内側電極層である燃料極層と外側電極層である空気極層との間に固体電解質層が挟持されてなる管状の燃料電池セルを複数有する燃料電池セル集合体(燃料電池セルスタック)を備えており、燃料ガスと酸化剤ガス(空気、酸素等)とが、その燃料電池セルの一端側から他端側へと流れることによって作動する。SOFCの外部からは、原料ガスである被改質ガス(都市ガス等)が供給され、その被改質ガスを改質触媒が収められた改質器に導入し、水素リッチな燃料ガスに改質した後に、それが燃料電池セル集合体へ供給されるように構成されている。
【0004】
また、SOFCは、起動工程において、燃料ガスを改質器において改質する複数の工程、すなわち、部分酸化改質(Partial Oxidation Reforming:POX)反応工程、オートサーマル改質(Auto Thermal Reforming:ATR)反応工程、及び、水蒸気改質(Steam Reforming:SR)反応工程を経て、発電工程へ移行するように構成されている。SOFCでは、これらの工程を順に実行することにより、改質器や燃料電池セルスタック等を動作温度まで昇温させることができる。
【0005】
かかるSOFCは、種々の用途に供され、家屋や店舗といった建屋等の建築物に設置される場合、その建築物の外部(例えば、建築物の外壁の近傍)に載置されることが多い。このとき、その外壁面からの突出量を極力抑えて必要な設置スペースを削減することにより、SOFCを建家間の狭小なエリア等にも設置可能にするには、SOFCの厚さ方向の寸法を可能な限り小さくすることが望ましい。そのため、かかる用途に供されるSOFCは、通常、燃料電池セル集合体の外形が略直方体形状になるように形成され、且つ、その燃料電池セル集合体を極力コンパクトに収容可能な同じく略直方体形状を有する容器(ケーシング)を備え、一般に、その長辺側壁が建築物の外壁面に沿うように配置される傾向にある。例えば、特許文献1には、そのような直方体形状をなすSOFCの一例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-140734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1には、SOFCの容器の詳細な構成について言及がされていないものの、例えば直方体形状の金属製容器であれば、平板状の長辺部材と平板状の短辺部材を溶接等で接合することによって角筒状の胴部を形成することができる。
【0008】
ここで、上述の如く、燃料電池セル集合体を極力コンパクトに収容できるように構成すると、容器の内容積が小さくなり、その結果、SOFCの発電反応によって生じた熱が、燃料電池セル集合体から容器の外部に輻射や伝導によって放散され難くなる。こうなると、コンパクトで内容積が小さい容器は、内容積が比較的大きい容器に比して、より高温に加熱されて変形(膨張)し易くなる。具体的には、SOFCの燃料電池セルは、通常、発電時に500℃〜700℃程度の高温に昇温されるため、上述した構成の胴部を有する容器では、長辺部材からなる長辺側壁の膨張量が短辺部材からなる短辺側壁の膨張量よりも顕著に大きくなるので、それらの溶接部分に熱膨張に起因する変形による応力や荷重が過度に集中してしまい、その部位が破損し易くなってしまう。かかる事象は、燃料電池セル集合体と容器の長辺側壁との間の間隔をより狭めて厚さ方向の寸法をより小さく形成したSOFCにおいて、特に顕著となり得る。
【0009】
そこで、本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、厚さ方向の寸法を小さくしても、容器の破損及び破断を有効に防止することができ、これにより、耐久性に優れ且つ設置スペースを一層削減することが可能な固体酸化物形燃料電池装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明による固体酸化物形燃料電池(SOFC)装置は、燃料ガスと酸化剤ガスとにより発電を行うものであって、燃料ガスが供給される燃料極層、酸化剤ガスが供給される空気極層、及び、それらの燃料極層と空気極層との間に設けられた固体電解質層を有する複数の燃料電池セルが、略直方体形状に連設され且つ電気的に接続されてなる燃料電池セル集合体と、そのように略直方体形状に構成された燃料電池セル集合体が収容され、且つ、燃料電池セル集合体において画定される一対の長辺側面に対向する一対の長辺側壁、及び、燃料電池セル集合体において画定される一対の短辺側面に対向する一対の短辺側壁を含む胴部を有する容器を備えており、一対の長辺側壁の端部面が、一対の短辺側壁において互いに対面する部位(一対の短辺側壁において容器の内部側を向いて対向している面部)に対向して配置され、その部位の少なくとも一部において、一対の長辺側壁と一対の短辺側壁が接合されている。
【0011】
このように構成されたSOFCにおいては、外形が略直方体形状をなす燃料電池セル集合体が、長辺側壁と短辺側壁を有する胴部を備える容器内に収容される。そして、容器の胴部のそれらの長辺側壁及び短辺側壁は、それぞれ、燃料電池セル集合体の長辺側面及び短辺側面に相対しており、容器の全体形状も略直方体形状とされるので、容器胴部の短辺側壁の寸法を極力小さくすることにより、SOFCの厚さ方向の寸法を可能な限り小さくすることができる。
【0012】
このとき、長辺側壁の端部面は、一対の短辺側壁において互いに対面する部位(対向面部)に対向して配置され、且つ、その状態でその部位の少なくとも一部において、一対の長辺側壁と一対の短辺側壁が例えば溶接等によって接合固定されている。よって、上述の如く高温に加熱されたときの膨張量が比較的大きくなる長辺側壁が熱変形したとしても、その端部面が短辺側壁に面状に強く当接するので、長辺側壁の膨張が規制されつつ、長辺側壁と短辺側壁との接合部位を破断又は破損せしめるような応力(例えば剪断力)がその部位に作用することを抑止することができる。
【0013】
また、長辺側壁の端部面が、容器の外方に向かって屈曲形成されていても好適である。この場合、長辺側壁において外方に屈曲した部分の外側の面が、長辺側壁の端部面となり、残余の長尺部分が、実質的に側壁として機能し得る。具体的には、長辺側壁が例えば平板矩形部材から形成される場合、その両端部をL字状に折り曲げることにより、その折り曲げられた部分の外側(外方を向く側)の面が端部面となり、かかる構造を有する長辺側壁を短辺側壁によって挟持するようにして容器の胴部が構成される。
【0014】
このように構成すれば、長辺側壁において端部面を除く部分が燃料電池セル集合体の長辺側面に対向するので、長辺側壁が高温に加熱された場合、その端部面を除く部分が実質的に熱膨張して伸長するように変形する。このとき、長辺側壁において屈曲形成された端部面とそれに対向する短辺側壁の面との少なくとも一部において両側壁が接合されているので、その接合部を固定支点として、且つ、その屈曲部を自由支点として、長辺側壁に変形力が作用する。そうすると、長辺側壁には、それらの支点を中心として、そのときの変形モーメントに応じた反力(弾性モーメント)が反作用するので、その分、接合部に印加される応力や荷重(例えばスラスト荷重による剪断応力)が軽減され、その結果、接合部ひいては容器の破断や破損をより一層防止することができる。
【0015】
さらに、長辺側壁が、長辺側壁の端部面の好ましくは先端部、更に好ましくはより先端において、短辺側壁に例えば溶接等によって接合されていても好適である。
【0016】
こうすれば、接合部から長辺側壁における任意の部位までの距離が最長化されるので、上述した長辺側壁の変形モーメントが最も大きくなり、その結果、接合部に作用する変形モーメントに応じた反力(弾性モーメント)も最大化されるので、接合部に印加される応力が更に軽減され、接合部の破断や破損を更に一層防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、SOFCの容器胴部における一対の長辺側壁の端部面が、一対の短辺側壁において内方を向いて対面している部位に対向して配置され、その部位の少なくとも一部において、長辺側壁と短辺側壁が接合されており、これにより、長辺側壁が燃料電池セルの発電で生じた熱により加熱されて膨張しても、その長辺側壁の端部面が短辺側壁に強く当接することにより、長辺側壁と短辺側壁との接合部位が破損又は破断してしまうことを抑止することができる。その結果、SOFC全体の厚さ方向の寸法をより小さくして設置スペースを削減することができるとともに、容器の耐久性を向上させることができるので、SOFC装置としての汎用性及び製品信頼性を格段に高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の好適な一実施形態における燃料電池モジュールの外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示す燃料電池モジュールをその中央近傍において図1のA方向から見た断面図である。
【図3】図1に示す燃料電池モジュールをその中央近傍において図1のB方向から見た断面図である。
【図4】図1に示す燃料電池モジュールからケーシングの一部(外板)を取り外した状態を示す斜視図である。
【図5】図2に対応する模式図であって、発電用空気及び燃焼ガスの流れを示す図である。
【図6】図3に対応する模式図であって、発電用空気及び燃焼ガスの流れを示す図である。
【図7】図1に示す燃料電池モジュールの燃料電池セルユニットを示す部分断面図である。
【図8】図1に示す燃料電池モジュールの燃料電池セルスタックの構成を示す斜視図である。
【図9】図1〜図4に示すIX−IX線における水平断面図である。
【図10】図9において一点鎖線で囲んだ部位及びその周辺を示す一部拡大断面図であり、容器が加熱されていない状態を示す。
【図11】図9において一点鎖線で囲んだ部位D及びその周辺を示す一部拡大断面図であり、容器が加熱されている状態の一例を示す。
【図12】比較例の構成を示す一部拡大断面図(図9に対応する断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。また、寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。さらに、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。またさらに、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。
【0020】
図1は、本発明の好適な一実施形態におけるSOFC装置の外観を概略的に示す斜視図である。燃料電池モジュール2は、本発明によるSOFC装置1の一部を構成するものである。SOFC装置1は、燃料電池モジュール2と、補機ユニット(図示せず)とを備える。
【0021】
なお、図1においては、3次元軸座標として、x軸、y軸、及びz軸を定義する。すなわち、燃料電池モジュール2の高さ方向をy軸方向とし、そのy軸に直交する平面に沿ってx軸及びz軸を定め、燃料電池モジュール2の短手方向に沿った方向をx軸方向とし、燃料電池モジュール2の長手方向に沿った方向をz軸方向とする。また、図2以降において図中に記載されているx軸、y軸、及びz軸は、図1におけるx軸、y軸、及びz軸を基準としている。またさらに、z軸における原点から負方向に延びる方向をA方向とし、x軸における原点から正方向に延びる方向をB方向とする。
【0022】
燃料電池モジュール2は、燃料電池セル(詳細は後述する)を収容するケーシング56(容器)と、ケーシング56の上部に設けられている熱交換器22とを備える。ケーシング56には、被改質ガス供給管60と、水供給管62とが接続されている。一方、熱交換器22には、発電用空気導入管74と、燃焼ガス排出管82とが接続されている。
【0023】
被改質ガス供給管60は、ケーシング56の内部に都市ガスといった改質用の被改質ガスを供給する管路である。また、水供給管62は、被改質ガスを水蒸気改質する際に用いられる水を供給する管路である。さらに、発電用空気導入管74は、改質後の燃料ガスと発電反応を起こさせるための空気を供給する管路である。また、燃焼ガス排出管82は、発電反応後の燃料ガスが燃焼して生じる燃焼ガスを排出する管路である。
【0024】
続いて、図2〜図6を参照しながら、燃料電池モジュール2の内部構成について説明する。図2は、燃料電池モジュール2をその中央近傍において図1のA方向から見た断面図であり、図3は、燃料電池モジュール2をその中央近傍において図1のB方向から見た断面図である。また、図4は、図1に示す燃料電池モジュール2から燃料電池セル集合体を覆うケーシング56の一部(外板)を取り外した状態を示す斜視図である。さらに、図5は、図2に対応する模式図であって、発電用空気及び燃焼ガスの流れを示す図であり、図は6、図3に対応する模式図であって、同様に発電用空気及び燃焼ガスの流れを示す図である。
【0025】
図2〜図4に示すように、燃料電池モジュール2の燃料電池セル集合体12は、ケーシング56によって全体が覆われるように、その内部に収容されている。また、図5に示す如く、燃料電池セル集合体12は、全体としてB方向よりもA方向の方が長い略直方体形状をなしており、改質器20側の上面、燃料ガスタンク68側の下面、図2のA方向に沿って延びる長辺側面(後述)と、図2のB方向に沿って延びる短辺側面(後述)とが画定されている。
【0026】
本実施形態の場合、水供給管62から供給される水を蒸発させるための蒸発混合器(図に明示せず)は、改質器20の内部に設けられている。蒸発混合器は、燃焼ガスにより加熱され、水を水蒸気にするとともに、この水蒸気と、被改質ガスである燃料ガス(都市ガス)と空気とを混合するためのものである。
【0027】
被改質ガス供給管60及び水供給管62は、ケーシング56の内部に導かれた後、共に改質器20に連結されており、より具体的には、図3に示すように、改質器20の上流端である図示右側の端部に繋がれている。また、改質器20は、燃料電池セル集合体12の上方に画成された燃焼室18の更に上方に配置されている。これにより、改質器20は、発電反応後の残余の燃料ガス及び空気による燃焼熱によって熱せられ、蒸発混合器、及び、改質反応を生起させるための改質器として機能する。さらに、改質器20の下流端(図3における図示左側の端部)には、燃料供給管66の上端が接続されており、その燃料供給管66の下端側66aは、燃料ガスタンク68内に入り込むように配置されている(図2参照)。
【0028】
一方、図3及び図4に示すように、燃料ガスタンク68は、燃料電池セル集合体12の略真下に設けられている。この燃料ガスタンク68内に挿入された燃料供給管66の下端側66aの外周には、長手方向(A方向)に沿って複数の小穴(図示せず)が形成されている。改質器20で改質された燃料ガスは、これら複数の小穴(図示せず)によって燃料ガスタンク68内に長手方向に沿って均一に供給されるようになっている。また、燃料ガスタンク68に供給された燃料ガスは、燃料電池セル集合体12を構成する各燃料電池セルユニット16の内側にある燃料ガス流路(詳細は後述する)内に供給され、燃料電池セルユニット16内を上昇して、燃焼室18に至るようになっている。
【0029】
さらに、図2〜図6を参照しながら、発電用空気を燃料電池モジュール2の内部へ供給するための機構について説明する。図5及び図6に示すように、改質器20の上方には、熱交換器22が設けられている。この熱交換器22には、複数の燃焼ガス配管70が設けられており、その燃焼ガス配管70の周囲には、発電用空気流路72が画成されている。
【0030】
熱交換器22の上面における一端側(図3における右端側)には、発電用空気導入管74が取り付けられている。この発電用空気導入管74により、発電用空気流量調整ユニット(図示しない)から、発電用空気が熱交換器22内に導入されるようになっている。また、熱交換器22の上側の他端側(図3における左端側)には、発電用空気流路72の出口ポート76aが一対形成されている。この出口ポート76aは、一対の連絡流路76に連通されている。さらに、図2に示す如く、燃料電池モジュール2のケーシング56における幅方向(B方向:短辺側面方向)の両外側には、燃料電池セル集合体12の長手方向に沿って、発電用空気供給路77,77が画成されている。
【0031】
かかる構成により、発電用空気供給路77には、発電用空気流路72の出口ポート72a及び連絡流路76から、発電用空気が供給されるようになっている。また、発電用空気供給路77及び燃料電池セル集合体12の下方側に対応する位置には、発電室10内の燃料電池セル集合体12の各燃料電池セルユニット16に向けて発電用空気を送出するための複数の吹出口78a,78bが形成されている。これらの吹出口78a,78bから吹き出された発電用空気は、各燃料電池セルユニット16の外側に沿って、流上する(下方から上方へ流れる)ようになっている。
【0032】
続いて、燃焼室18において燃料ガスと発電用空気(酸化剤ガス)の燃焼によって生成する燃焼ガスを排出するための機構について説明する。燃料電池セルユニット16の上方で発生した燃焼ガスは、燃焼室18内を上昇し、開口21aが設けられた整流板21に至る。燃焼ガスは、この開口21aから熱交換器22側へ導かれ、開口21aを通過した燃焼ガスは、熱交換器22の他端側に至る。上述したとおり、熱交換器22内には、その燃焼ガスを排出するための複数の燃焼ガス配管70が設けられており、これらの燃焼ガス配管70の下流端側には、燃焼ガス排出管82が接続され、これにより、燃焼ガスが外部に排出されるようになっている。
【0033】
次に、図7を参照しながら燃料電池セルユニット16について説明する。図7は、本実施形態の燃料電池セルユニット16を示す部分断面図である。同図に示す如く、燃料電池セルユニット16は、燃料電池セル84と、この燃料電池セル84の図示上下端部にそれぞれ接続された内側電極端子86とを備えている。
【0034】
燃料電池セル84は、上下方向に延びる管状構造体であり、内部に燃料ガス流路88を画成する円筒形の内側電極層90(燃料極層)、円筒形の外側電極層92(空気極層)、及び、内側電極層90と外側電極層92との間に配された電解質層94を備えている。内側電極層90は、燃料ガスが流通する燃料極であって(−)極として機能し、一方、外側電極層92は、空気と接触する空気極であって(+)極として機能する。
【0035】
燃料電池セルユニット16の上端側及び下端側に取り付けられた内側電極端子86,86は、同一構造を有するので、ここでは、上端側に取り付けられた内側電極端子86を例にとって具体的に説明する。内側電極層90の上部90aは、電解質層94と外側電極層92に対して露出された外周面90bと上端面90cとを備えている。内側電極端子86は、導電性のシール材96を介して内側電極層90の外周面90bと接続され、さらに、内側電極層90の上端面90cとは直接接触することにより、内側電極層90と電気的に接続されている。また、内側電極端子86の中心部には、内側電極層90の燃料ガス流路88と連通する燃料ガス流路98が画成されている。
【0036】
この内側電極層90は、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレードとの混合体の少なくとも一種から形成される。
【0037】
また、電解質層94は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレートの少なくとも一種から形成される。
【0038】
さらに、外側電極層92は、例えば、Sr、Caから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンコバルタイト、銀等の少なくとも一種から形成される。
【0039】
続いて、図8を参照しながら燃料電池セルスタック14について説明する。図8は、本発実施形態の燃料電池セルスタック14を示す斜視図である。同図に示す如く、一つの燃料電池セルスタック14は、例えば16本の燃料電池セルユニット16を備えており、複数の燃料電池セルユニット16の下端側及び上端側が、それぞれ、セラミック製の燃料ガスタンク上板68a及び上支持板100によって一体に支持されている。これらの燃料ガスタンク上板68a及び上支持板100には、各燃料電池セルユニット16の内側電極端子86が貫通可能な貫通穴が形成されている。
【0040】
また、燃料電池セルユニット16には、集電体102及び外部端子104が取り付けられている。この集電体102は、燃料極である内側電極層90に取り付けられた内側電極端子86と、隣接する燃料電池セルユニット16の空気極である外側電極層92の外周面とを電気的に接続するためのものである。また、外部端子104は、各燃料電池セルスタック14の端に位置する2つの燃料電池セルユニット16,16の上側端及び下側端の内側電極端子86に接続されており、さらに、隣接する燃料電池セルスタック14の端にある燃料電池セルユニット16の上側端及び下側端の内側電極端子86にも接続され、燃料電池セルユニット16の全て(例えば上述した160本)が直列接続されるようになっている。このように、それぞれ複数の燃料電池セルユニット16を有する複数の燃料電池セルスタック14が連設され且つ電気的に接続されて、上述の如く略直方体形状をなす燃料電池セル集合体12が構成されている。
【0041】
さらに、図9〜図11を参照して燃料電池セル集合体12が収容されるケーシング56の構造についてより詳細に説明する。図9は、図1〜図4に示すIX−IX線における水平断面図である。また、図10及び図11は、ともに、図9において一点鎖線で囲んだ部位D及びその周辺を示す一部拡大断面図であり、図10は、容器56が加熱されていない状態を示し、図11は、容器56が加熱されている状態の一例を示す。さらに、図12は、本発明の構成を備えていない比較例の構成を示す一部拡大断面図(図9に対応する断面図)である。
【0042】
図9に示すように、略直方体形状をなすケーシング56は、一対の長辺側壁561,561と一対の短辺側壁562,562によって構成された胴部560を有している。長辺側壁561,561は、略直方体形状に構成された燃料電池セル集合体12において仮想的に画定される一対の長辺側面121,121(図示破線で示す)に対向して設けられている。また、短辺側壁562,562は、平板矩形状部材から形成されており、燃料電池セル集合体12において仮想的に画定される一対の短辺側面122,122(図示二点鎖線で示す)に対向している。なお、図9においては、ケーシング56を覆うように設けられる外装筐体30も図示されている。
【0043】
さらに、長辺側壁561,561は、平板矩形状部材の両端部がL字状に折り曲げられた形状を有しており、図10に示す如く、その折り曲げられた部分の外側(外方を向く側)面、つまり、図示屈曲点Lから部材の先端までの部位における図示左面が端部面561sとされる。このように、長辺側壁561,561の各端部面561sは、ケーシング56の外方(ケーシング56の内部50の外側領域)に向かって屈曲形成されている。
【0044】
またさらに、長辺側壁561,561の各端部面561sは、短辺側壁562,562において互いに対面する部位、つまり、短辺側壁562,562においてケーシング56の内部50側を向いて対向している面562s,562sの全面に対向して配置されており、その部位の少なくとも一部(図9〜図11における部位D)、すなわち、胴部560の四隅における長辺側壁561の端部面561sの先端及び短辺側壁562の先端(まとめて先端部56Tと記す)において、長辺側壁561,561と短辺側壁562,562が、例えば溶接等によって接合固定されている。このようにして、端部面561sを有する長辺側壁561,561が短辺側壁562,562によって挟持されることにより、ケーシング56の胴部560が構成されている。
【0045】
このように構成された燃料電池モジュール2を備えるSOFC装置1によれば、発電によって燃料電池セル集合体12が高温となり、長辺側壁561及び短辺側壁562は、その熱によって加熱され、それらの部材料の物性に依拠する(線)熱膨張係数に応じて膨張する。その際、長辺側壁561の方が、短辺側壁562よりも長尺であるため、膨張量が比較的大きくなり、図10において矢印56vで示す方向(図1〜図4において±z軸方向)に伸長し易くなる。
【0046】
このとき、ケーシング56の長辺側壁561の端部面561sが、部位Dにおいて、短辺側壁562の面562sに対向して配置され、且つ、長辺側壁561及び短辺側壁562の先端部Tで溶接等により接合固定されているので、長辺側壁561が熱膨張によって伸長しようとすると、その端部面561sが短辺側壁562に面状に強く当接する(両者が圧接される)。これにより、長辺側壁561の膨張は、短辺側壁562に阻まれて規制され、しかも、長辺側壁561と短辺側壁562が先端部56Tにおいて接合されているので、その先端部56Tに、接合を破断又は破損せしめるような応力、すなわち、その接合を剪断しようとするようなスラスト方向(長辺側壁561の端部面561s及び短辺側壁562の面562sに平行な方向)の加重が印加することを抑止することができる。つまり、SOFC装置1によれば、ケーシング56の先端部56Tが剪断されるようなストレスモードが生起されない。
【0047】
したがって、長辺側壁561と短辺側壁562との接合部位である先端部56Tにおいてケーシング56が破損又は破断してしまうことを防止することができる。その結果、ケーシング56の厚さ56w(図9参照)、ひいては燃料電池モジュール2の全体(実質的に外装筐体30)の厚さ方向の寸法をより小さくして設置スペースを削減することができるとともに、そのようにケーシング56の耐久性を向上させることができるので、SOFC装置としての汎用性及び製品信頼性を格段に高めることが可能となる。
【0048】
また、長辺側壁561の端部面561sが、ケーシング56の外方に向かってL字状に屈曲形成されており、長辺側壁561において端部面561sを除く部分が燃料電池セル集合体12の長辺側面121に対向するので、長辺側壁561が高温に曝された場合、その端部面561sを除く部分が実質的に熱膨張して伸長するように変形し得る。このとき、図11に示す如く、長辺側壁561は、破線で示す状態(図10に示す状態)から、接合部である先端部56Tを固定支点として、且つ、屈曲点Lを自由支点として、ケーシング56の外側に膨らむように変形する(長辺側壁561’)。
【0049】
そうすると、それらの支点には、そのときに長辺側壁561に作用する変形力によって生起される変形モーメントに応じた反力(弾性モーメント)が反作用する。具体的には、屈曲点Lを中心として図示矢印で示す弾性モーメントN1が、また、先端部56Tを中心として図示矢印で示す弾性モーメントN2が、長辺側壁561に作用するので、その分、接合部56Tに印加される応力(スラスト荷重に起因する剪断応力)が更に軽減され、その結果、先端部56Tにおいてケーシング6が破損又は破断してしまうことをより一層防止することができる。
【0050】
なお、比較例として図12に示す如く、平板状の長辺側壁41と略平板状の短辺側壁42が図示のとおり組み合わされて先端部4Tで接合されてなるケーシングの胴部4の場合、長辺側壁41の先端の端面は、短辺側壁41の面41sに対向していないため、長辺側壁41が熱膨張して矢印56vで示す方向に伸長すると、接合部である先端部4Tにはスラスト荷重が直に作用し、その剪断力によって、先端部4Tの接合ひいては容器が破断又は破損し易い。
【0051】
さらに、長辺側壁561と短辺側壁562が、長辺側壁561の端部面561a及び短辺側壁562の面562sの先端部56Tで接合されているので、その接合部である先端部56Tから長辺側壁561における任意の部位までの距離が最長化される。これにより、上述した長辺側壁561の変形モーメントが最も大きくなり、その結果、特に、先端部56Tに作用する弾性モーメントN2も最大化されるので、先端部56Tに印加される応力を更に軽減することができるので、先端部56Tにおいてケーシング56が破損又は破断してしまうことを更に一層抑止することが可能となる。
【0052】
なお、上述したとおり、本発明は上記の実施の形態において説明した具体例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない限度において様々な変形が可能である。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の技術的範囲に包含される。換言すれば、前述した各具体例が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズ等は、例示したものに制限されず適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の技術的範囲に包含される。
【0053】
例えば、長辺側壁561の端部面561sは、L字状に屈曲されていなくてもよく、その場合、長辺側壁561の周縁(の端面)が、短辺側壁562の面561sに対向又は当接した状態で長辺側壁561及び短辺側壁562が接合されていてもよく、また、長辺側壁561の端部面561sが、その他の形状、例えばコの字状(C字状)に屈曲されていても構わない。また、接合部は先端部56Tに制限されず、長辺側壁561の端部面561sと短辺側壁562の面562sが対向している部位であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上説明したとおり、本発明のSOFC装置によれば、厚さ方向の寸法をより小さくして設置スペースを削減することができるとともに、燃料電池モジュール集合体を収容する容器の破損及び破断を防止してその耐久性を向上させることができる。これにより、SOFC装置としての汎用性及び製品信頼性を格段に高めることが可能となるので、種々の用途に使用可能なSOFC装置、特に、建家間等の狭小なエリア等に設置されるもの、それを備える機器、システム、及び設備等、並びに、それらの製造及び使用に、広く且つ有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 固体酸化物形燃料電池(SOFC)装置
2 燃料電池モジュール
10 発電室
12 燃料電池セル集合体
14 燃料電池セルスタック
16 燃料電池セルユニット
18 燃焼室
20 改質器
21 整流板
21a 開口
22 熱交換器
30 外装筐体
50 ケーシング内部
56 ケーシング
56T 先端部
60 被改質ガス供給管
62 水供給管
66 燃料供給管
66a 下端側
68 燃料ガスタンク
68a 燃料ガスタンク上板
70 燃焼ガス配管
72 発電用空気流路
72a 出口ポート
74 発電用空気導入管
76 連絡流路
76a 出口ポート
77 発電用空気供給路
78a,78b 吹出口
82 燃焼ガス排出管
84 燃料電池セル
86 内側電極端子
88 燃料ガス流路
90 内側電極層
90a 上部
90b 外周面
90c 上端面
92 外側電極層
94 電解質層
96 シール材
98 燃料ガス流路
100 上支持板
102 集電体
104 外部端子
121 長辺側面
122 短辺側面
560 胴部
561,561’ 長辺側壁
561s 端部面
562 短辺側壁
562s 面
N1,N2 弾性モーメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと酸化剤ガスとにより発電を行う固体酸化物形燃料電池装置であって、
前記燃料ガスが供給される燃料極層、前記酸化剤ガスが供給される空気極層、及び、該燃料極層と該空気極層との間に設けられた固体電解質層を有する複数の燃料電池セルが、略直方体形状に連設され且つ電気的に接続されてなる燃料電池セル集合体と、
前記燃料電池セル集合体が収容され、且つ、前記燃料電池セル集合体において画定される一対の長辺側面に対向する一対の長辺側壁、及び、前記燃料電池セル集合体において画定される一対の短辺側面に対向する一対の短辺側壁を含む胴部を有する容器と、
を備えており、
前記一対の長辺側壁の端部面は、前記一対の短辺側壁において互いに対面する部位に対向して配置され、該部位の少なくとも一部において、前記一対の長辺側壁と前記一対の短辺側壁が接合されたものである、
固体酸化物形燃料電池装置。
【請求項2】
前記長辺側壁の端部面が、前記容器の外方に向かって屈曲形成されている、
請求項1記載の固体酸化物形燃料電池装置。
【請求項3】
前記長辺側壁は、前記長辺側壁の端部面の先端部において、前記短辺側壁に接合されている、
請求項2記載の固体酸化物形燃料電池装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2013−65416(P2013−65416A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202258(P2011−202258)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】