固体間接触部位解析方法及び解析装置
【課題】直接又は潤滑油等を介して接している2物体の間のごく微小の間隙の大きさやその接触部位付近の両物体の微細な表面形状を計測・観測可能とする。
【解決手段】2物体4A、4Bの接触部位に対して、該接触部位の接平面に対する角度が全反射臨界角以下である入射角度でX線を照射し、その接触部位から反対側に出射してくる通過X線、回折・散乱X線、特性X線等を位置敏感型の2次元X線検出器5で検出する。2次元X線強度分布作成部61はX線検出器5からの検出信号により2次元X線強度分布画像を作成し、解析処理部62は該画像中で例えば接触の種類(点、線等)に応じて設定された検出窓に含まれる複数の画素のみを抽出して、該画素のX線強度を積算する。そして、この積算X線強度に基づいて接触部位に存在する微小間隙の大きさを求めるとともに、2次元X線強度分布画像から求まる強度パターンを解析して表面形状を推定する。
【解決手段】2物体4A、4Bの接触部位に対して、該接触部位の接平面に対する角度が全反射臨界角以下である入射角度でX線を照射し、その接触部位から反対側に出射してくる通過X線、回折・散乱X線、特性X線等を位置敏感型の2次元X線検出器5で検出する。2次元X線強度分布作成部61はX線検出器5からの検出信号により2次元X線強度分布画像を作成し、解析処理部62は該画像中で例えば接触の種類(点、線等)に応じて設定された検出窓に含まれる複数の画素のみを抽出して、該画素のX線強度を積算する。そして、この積算X線強度に基づいて接触部位に存在する微小間隙の大きさを求めるとともに、2次元X線強度分布画像から求まる強度パターンを解析して表面形状を推定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体である2つの物体が直接的に接触する接触部位、或いは、それら固体に比べてX線透過率が高い液体若しくは固体を介して間接的に接触する接触部位を、X線を利用して解析する方法及び装置に関し、さらに詳しくは、点、線、又は面である接触部位に存在するごく微小な間隙のサイズ計測や接触部位を挟んだ両物体の微視的な形状観察などが可能な解析方法及び解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、固体である2つの物体が点、線、又は面で直接的に接している場合であっても、物体の表面はごく微細な凹凸の集合であるので、微視的に見ればその接触部位にはごく微細な間隙が存在する。2つの物体が互いに近づく方向にそれら物体に圧力を加えれば接触部位の微細な間隙は縮小するし、さらに圧力を大きくすれば、例えば一方の物体の一部が他方の物体の表面に間隙なく密着し、その密着箇所の周囲で一方又は両方の物体に微視的な変形が生じる。
【0003】
様々な分野における近年の精密加工技術、高密度実装技術等の進展に伴い、上記のような2つの物体間の接触部位における微小間隙のサイズ計測や接触部位を挟んだ両物体の微細形状観察、或いは接触部位付近の物体の組成解析などの要求は高くなっている。また、2つの物体が直接的に接触している場合だけでなく、例えば油等の薄い液体層や固体薄膜層を介して2つの物体が間接的に接触している場合のその接触部位における微小間隙のサイズ計測や接触部位を挟んだ両物体の微細形状観察などの要求も非常に大きい。
【0004】
従来一般的に、ミクロン単位の間隙計測や形状観察には工業用X線透視装置やX線CT装置などが用いられている。しかしながら、こうした装置をもってしても、さらに微細なサブミクロンレベル、ナノレベルの間隙計測や形状観察は困難である。また、上記のような従来の装置では装置自体がかなり大掛かりになり、測定に比較的長い時間を要するため測定のスループットを上げるのは困難である。
【0005】
特許文献1、2には、回転する磁気ディスク上で浮上するヘッドと該ディスク面との間隙といった比較的狭い間隙の計測をX線を用いて行う方法が開示されている。しかしながら、磁気ディスクやヘッドの対向平面は非常に高い平坦性をもつように加工されているから、磁気ディスクの回転によってヘッドが浮上した状態では、両者の間にはほぼ一様なサイズの間隙が形成される。上記特許文献に記載の測定方法は、このようにX線が直接的に且つ十分な強度で通過し得る大きさの間隙が計測対象として想定されており、直接的に通り抜けて来るX線がきわめて少ない状況下でのごく微細な間隙計測や形状観察は実質的には困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−189541号公報
【特許文献2】特開平11−132754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、巨視的には接触しているとみなせる2つの物体(固体)の接触部位に存在する微小な間隙や、X線透過率が高い液体や固体の層を挟んで間接的に接触している2つの物体間の微小な間隙の計測やその接触部位を挟んで対向する両物体の形状の観察などの接触部位構造解析を、X線を用い非接触で非破壊的に実施することができる固体間接触部位解析方法及び解析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた第1発明は、固体である第1物体と同じく固体である第2物体とが点、線若しくは面で直接的に接触する接触部位、又は、第1物体と第2物体とがそれら物体よりも高いX線透過率を有する液体若しくは固体を介して点、線若しくは面で間接的に接触している接触部位の微視的な構造をX線を用いて解析するための固体間接触部位解析方法であって、
a)前記接触部位を挟んで対向する両物体の平面又は両物体の最近接部位の接平面に対し全反射臨界角以下の入射角度をもって該接触部位にX線を入射するX線照射ステップと、
b)その入射X線に対して前記接触部位の反対側から出射してきたX線を、複数の微小X線検出素子が2次元的に配列されてなる位置敏感型の2次元X線検出器により検出するX線検出ステップと、
c)前記2次元X線検出器からの検出信号により得られる2次元X線強度分布に基づいて前記接触部位の構造についての情報を取得する解析ステップと、
を有することを特徴としている。
【0009】
また上記課題を解決するためになされた第2発明は上記第1発明に係る解析方法を実施するための装置であり、固体である第1物体と同じく固体である第2物体とが点、線若しくは面で接触する接触部位、又は、第1物体と第2物体とがそれら物体よりも高いX線透過率を有する液体若しくは固体を介して点、線若しくは面で間接的に接触している接触部位の微視的な構造をX線を用いて解析するための固体間接触部位解析装置であって、
a)前記接触部位を挟んで対向する両物体の平面又は両物体の最近接部位の接平面に対し全反射臨界角以下の入射角度をもって該接触部位にX線を入射させるX線照射手段と、
b)前記X線照射手段による入射X線に対して前記接触部位の反対側から出射してきたX線を検出する、複数の微小X線検出素子が2次元的に配列されてなる位置敏感型のX線検出手段と、
c)前記X線検出手段からの検出信号により得られる2次元X線強度分布に基づいて前記接触部位の構造についての情報を取得するデータ処理手段と、
を備えることを特徴としている。
【0010】
ここで、「接触部位を挟んで対向する両物体の平面又は両物体の最近接部位の接平面」とは、その両物体が巨視的に略平行な平面で接している場合にはその平面自体である。また、両物体の一方が平面である場合にはその平面自体である。さらにまた、両物体の対向面の両方が凸形状曲面又は尖塔形状面であって両物体が点又は線で接している場合には、両物体が最も近接した箇所において両物体の表面に存在する微小凹凸の近似平面高さにより形成される仮想的な近似平面である。
【0011】
本発明に係る固体間接触部位解析方法及び解析装置における計測対象は、点、線又は面である2物体の接触部位であるが、その接触部位には例えば潤滑油などの液体がごく薄い被膜を形成して存在していてもよい。また、接触部位を形成する2物体は静止状態でなくてもよく、計測位置さえ変化しなければ一方又は両方の物体が運動していてもよい。つまり、接触部位は摺動面であってもよい。
【0012】
2物体の接触部位に対し、該接触部位を挟んで対向する両物体の平面又は両物体の最近接部位の接平面に対し全反射臨界角以下の入射角度をもってX線が照射されると、それら物体を挟んでその反対側には、接触部位に存在する微小間隙を通り抜けてくるX線(このX線には、物体に一度も当たることなく通過してくるX線と、少なくとも1回は物体の表面で反射・散乱されたX線とを含む)、接触部位付近の物体表面に当たって回折を生じたX線、或いは、入射X線により励起されて物体自体から発生する特性X線、さらには物体の厚さや材質によっては物体内部に入り込んで透過して出てくるX線、などが混在したX線が出射する。これらX線は全体として入射X線の拡がり角よりもかなり広い拡がり角をもって出射する。
【0013】
特許文献1、2に記載のような従来の間隙の測定手法は、入射X線に対して間隙をそのまま通過してくるX線のみを検出しているが、間隙がごく狭い場合やその間隙に空気に比べてX線透過率の低い液体や固体が存在している場合には、そのまま通過してくるX線の強度は非常に弱い。そのため、十分な強度でX線を検出することができないか、或いは、検出できてもその強度情報と間隙サイズとの相関性が悪く、強度情報を間隙サイズに精度良く換算するのが困難である。これに対し、本発明に係る固体間接触部位解析方法及び解析装置では、上述のように拡がりつつ出射するX線を複数の微小X線検出素子が2次元的に配列されてなる位置敏感型のX線検出手段でできるだけ漏れなく検出する。このときにX線検出手段の検出面上に到達するX線の種類は判別できないものの、例えば接触部位が直線又は平面であれば、検出面上にはその接触部位の微小間隙に対応した略帯状の像が得られる。
【0014】
そこで、データ処理手段により実施される解析ステップでは、X線検出手段の検出信号に基づいて得られる2次元X線強度分布に基づいて、例えばX線検出手段における全微小X線検出素子のうちの特定範囲に含まれる複数の微小X線検出素子(画素)により得られるX線強度を積算し、その積算した強度情報に基づいて前記接触部位に存在する微小間隙の大きさを求める。上述したように接触部位の種類、つまり点接触、線接触、面接触のいずれであるのかによって、さらには、物体の形状等によって、検出面上で相対的に強いX線強度が得られる画素の位置は或る程度決まっているから、予め測定者が上記特定範囲を設定しておくこともできる。また、例えば2次元X線強度分布において得られているX線強度が所定以上である範囲を特定範囲として抽出してもよい。
【0015】
また、2物体の接触部位から出てくる散乱X線や回折X線の拡がり具合は接触部位付近の両物体の表面形状に依存する。そのため、例えば一方又は両方の物体に圧力が加えられて物体に変形が生じると、その変形に伴って2次元X線強度分布における像の形状、つまりX線が到達する画素の位置やX線強度が変化する。そこで、データ処理手段により実施される解析ステップでは、2次元X線強度分布から求まる強度パターンを解析することにより、接触部位を挟んで対向する両物体の表面形状を推定することができる。
【0016】
なお、前述のように2物体の接触部位からはそれら物体を構成する元素に特有の特性X線も出射してくるため、位置敏感型のX線検出手段のほかに例えば該検出手段と切り換え可能にエネルギー分散型X線分析手段を設け、或いは、位置敏感型X線検出手段とエネルギー分散型X線分析手段とを併設し、そのエネルギー分散型X線分析手段により定性分析を実行して物体の組成を併せて求めるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る固体間接触部位解析方法及び解析装置によれば、2物体の間の間隙を直接的に通過してきたX線の強度ではなく、物体表面で反射・散乱された又は回折で生じたX線、物体を透過してきたX線、物体自体から2次的に発生する特性X線など、様々なX線を網羅的に且つ2次元的な微小位置毎に検出し、その検出結果により得られる2次元X線強度分布を利用して接触部位の微小間隙のサイズや微小表面形状等の構造情報を得るようにしたので、巨視的にみれば接触状態にあるようなごく微細な間隙についての構造解析を行うことができる。
【0018】
また、本発明に係る固体間接触部位解析方法及び解析装置によれば、装置自体がそれほど大掛かりとならずに済み、また短時間での計測が可能であるので、例えば微小間隙のサイズや表面形状が時間に伴って変化するような接触部位の構造解析にも好適である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例である接触部位計測装置の概略構成図。
【図2】本実施例の接触部位計測装置において計測対象となる2物体間の接触部位の形状の一例を示す図。
【図3】一方の物体を他方に押し付けた状態における2次元強度分布画像の一例を示す図。
【図4】本実施例の接触部位計測装置を用いた計測方法の手順を示す図。
【図5】間隙dと相対X線強度との関係を実験的に求めた結果を示す図。
【図6】間隙dを変えたときの実測による2次元強度分布画像の一例を示す図。
【図7】間隙dを変えたときの実測による間隙dと出射X線強度との関係を示す図。
【図8】計測対象の接触部位形状が図2(a)であって間隙サイズが1μmである場合における検出面上での回折パターンの理論的シミュレーション計算結果を示す図。
【図9】計測対象の接触部位形状が図2(a)であって間隙サイズが30nmである場合における検出面上での回折パターンの理論的シミュレーション計算結果を示す図。
【図10】計測対象の接触部位形状が図2(b)であって間隙サイズが1μmである場合における検出面上での回折パターンの理論的シミュレーション計算結果を示す図。
【図11】計測対象の接触部位形状が図2(b)であって間隙サイズが30nmである場合における検出面上での回折パターンの理論的シミュレーション計算結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、本発明に係る固体間接触部位解析方法におけるX線を用いた測定原理を説明する。
【0021】
本願発明者は、2つの物体の間に形成されるサブミクロン〜ナノレベルのごく狭い間隙(スリット開口幅)にX線を照射したときに透過するX線や散乱・回折するX線を数量的に把握するために、理論的計算を行った。この際に想定した2つの物体の接触部位の形状例を図2に、理論的計算結果を図8〜図11に示す。一般的に、こうしたスリット開口のX線透過・散乱の数量的把握には電磁波方程式に基づく計算が必要になるが、ここではスリット開口幅がナノレベルであっても或いはスリット開口形状が複雑であっても実用的な計算量に収まるように、X線の入射平面波を数ミクロン程度の有限な幅の振幅をもつ平行ビーム束に分割し、それぞれについて求めた解の重ね合わせにより最終的な解を求めるという計算手法を採用した。
【0022】
図2(a)は、断面三角形状で図中のY方向に延伸する2つの物体が、その頂部同士が巨視的に見たときに接触状態となるように配置されたものである。図8及び図9は図2(a)に示した形状の接触部位を想定したものであり、図8は両物体の間隙が1μmの場合の、図9は両物体の間隙が0.1μmの場合の回折強度パターンある。
【0023】
各図の(a)は単純に(つまりは後述する物体自体を透過するX線を考慮せず)物体の間隙のみを通過してきたX線の回折強度パターンであり、入射X線の強度を1として規格化している。一方、各図の(b)は物体自体を透過するX線も考慮した間隙付近全体を通過してきたX線の回折強度パターンである。各図(b)において矢印で示す3本のカーブは両物体それぞれ及び両物体間の間隙の3箇所を通り抜けてくる各X線の回折パターンであり、他の1本のカーブはそれらの合計によるX線の回折パターンである。なお、ここでは、両物体の材料はステンレス鋼、各物体の頂部の角度は30°、X線の波長はCuKα(0.154nm)を想定している。
【0024】
図8(a)及び図9(a)を見れば分かるように、カーブの半値幅は回折の効果により実際の間隙サイズよりもかなり広がっており、その広がりは間隙が狭いほど大きくなる。図2(a)の形状に特徴的であるのは、物体自体を透過してくるX線の強度が相対的にかなり大きいことである。
【0025】
図2(b)は、断面半円状の頂部を有し図中のY方向に延伸する2つの物体が、その頂部同士が巨視的に見たときに接触状態となるように配置されたものである。図10及び図11は図2(b)に示した形状の接触部位を想定したものであり、図10は両物体の間隙が1μmの場合の、図11は両物体の間隙が0.1μmの場合の回折強度パターンある。上記の図2(a)に示した形状に対する計算と最も異なる点は、全反射を考慮する必要があることである。
【0026】
各図の(a)は物体表面で反射することなく直接的に通過してきたX線の回折強度パターンであり、入射X線の強度を1として規格化している。ただし、ここでは縦軸(強度軸)は対数で示している。一方、各図の(b)は物体表面での全反射成分のX線の回折強度パターンである。なお、ここでは、両物体の材料はステンレス鋼、各物体の頂部は径2mmの半円形状、X線の波長はCuKα(0.154nm)を想定している。
【0027】
特に、図10及び図11の(b)から分かることは、全反射X線の角度の拡がりは2〜3°程度あり、ピーク値は直接透過成分に比べて4〜5桁も小さいということである。
【0028】
上記計算結果から明らかなことは、接触部位を挟む両物体の形状によってその程度は異なるものの、0.1μm程度のサイズの間隙であっても、検出するに十分な強度のX線がその間隙幅と同方向に適度な拡がり幅をもって現れることである。そのため、このように拡がりつつ進むX線を的確に抽出すれば、それから求まるX線強度積算値に基づいて間隙サイズを推定することが可能である。また、回折強度パターンの形状は、接触部位を挟んだ両物体の形状によってかなり特異的である。そのため、例えばX線の到達範囲に2次元X線検出器を配置しX線強度の空間分布を測定すれば、その強度分布から物体の表面形状の推定が可能である。
【0029】
本発明に係る固体間接触部位解析方法及びこれを実施する解析装置は、上記測定原理を利用したものであり、上述したような、間隙を直接的に通り抜けてくるX線のみを1個の検出器で検出し、そのX線強度に基づいて間隙サイズを算出するという従来の測定方法とは全く原理を異にするものである。
【0030】
以下、本発明に係る固体間接触部位解析方法を実施する解析装置の一実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本実施例である接触部位計測装置の概略構成図である。該装置による計測対象は、図2(a)、(b)に示したような、鋭角状断面又は湾曲状断面を有する2つの物体の直接的な接触部位のほか、例えば図2(c)に示すような、2つの物体の略平行な平面が直接的に接触した部位など様々である。
【0031】
図2(a)、(b)では2つの物体の接触部位はY方向に延伸する直線状であるが、図2(c)では、2つの物体の接触部位はY方向、Z方向を含む平面状である。いずれの場合においても、巨視的には両物体が接触している状態であっても、それら物体の表面にはごく微細な凹凸が存在するため、微視的に見れば両物体の間にはごく微小の間隙が存在する(但し、Y方向に沿った間隙のサイズは一定ではない)。本実施例の接触部位計測装置は、こうした微視レベルで存在する間隙のサイズやその付近の両物体の形状などの計測を可能としたものである。
【0032】
もちろん、本実施例の接触部位計測装置による計測対象の間隙は、2つの物体が直接的に接触している場合のみならず、空気に比べて遙かにX線透過率が低く且つ両物体よりはX線透過率が高い液体や固体の薄膜層を挟んで両物体が間接的に接触した状態の接触部位の間隙であってもよい。
【0033】
図1に示すように、本実施例の接触部位計測装置では、X線遮蔽室1内に、X線源2、X線源2から出射されたX線を効率良く収集して略平行光にするマルチキャピラリX線レンズ3、第1物体4Aと第2物体4Bとからなる計測対象物4、及び、X線照射を受けて計測対象物4の接触部位付近から出射したX線を2次元的に検出する2次元X線検出器5、が配設されている。一方、X線遮蔽室1の外側には、2次元X線検出器5で得られる検出データを処理するために、パーソナルコンピュータ等により具現化されるデータ処理部6が設けられている。2次元X線検出器5は所定の2次元範囲において入射してきたX線の位置の判別が可能な位置敏感型の検出器である。したがって、2次元X線検出器5からデータ処理部6へは、該検出器5の2次元的な検出面に入射したX線の位置情報データ(例えば検出面上の位置アドレスを示すデータ)と検出面上の各位置のX線強度データとが出力される。
【0034】
データ処理部6は、上記のような検出データに基づいて2次元X線強度分布を作成する2次元X線強度分布作成部61と、該分布データを所定アルゴリズムに従って解析処理して例えば接触部位の微小間隙のサイズを算出する解析処理部62と、を機能ブロックとして含み、その処理結果等は出力部7により出力される。
【0035】
なお、X線を平行化するマルチキャピラリX線レンズ3は必須な要素ではなく、重要なことは、接触部位を挟んで対峙する両物体の平面又は両物体の最近接部位(接触部位)の接平面に対して全反射臨界角以下の入射角でX線が接触部位に入射するようにすることである。ここでいう接平面とは上述した定義に基づく仮想的な近似平面である。全反射臨界角は物体の材料や物体の周囲の雰囲気(例えば空気、液体等)によって相違するから、そうした条件に応じて実際の照射X線に許容される拡がり角度は相違する。
【0036】
図1に示したように第1物体4Aと第2物体4Bとが接触した状態であっても、その接触部位には物体4A、4B表面の微細な凹凸、その表面に付着した異物の影響などにより、ごく微小の間隙が存在する。そのため、この接触部位に上述したようなX線が照射されると、上記間隙で主として反射しながら通過して来るX線(以下「通過X線」という)が反対側から出射する。また、物体4A、4Bの表面の微細凹凸のエッジや結晶等により回折を生じたX線(以下「回折X線」という)も反対側から出射するし、物体4A、4Bの表面で散乱したX線(以下「散乱X線」という)も出射する。さらには、接触部位においてX線の入射角が全反射臨界角以下であっても接触部位から少し外れた位置ではX線の入射角は全反射臨界角を超えるし、接触部位においても微視的に見れば一部のX線の入射角は全反射臨界角を超えることがある。そのため、物体4A、4B中に入り込んだX線の励起作用により、それら物体から物質特有の特性X線も出射してくる。そうした様々な種類のX線は接触部位から拡がりながら進み、2次元X線検出器6の検出面に到達する。
【0037】
一般に、通過X線の強度は最も大きいが、回折X線や散乱X線もその強度はかなり大きい。ただし、2次元X線検出器6の検出面位置において、通過X線は接触部位の微小間隙のサイズを反映した比較的狭い範囲に収まるのに対し、回折X線や散乱X線の拡がりは接触部位付近の物体4A、4Bの表面形状の影響を大きく受ける。本実施例の装置では、回折X線や散乱X線が大きく拡がりながら出射する場合でも、それらX線の殆どを2次元X線検出器6で受けて位置情報データとX線強度データとを得ることができる。
【0038】
図3は、図2(b)の形態において両物体を強く押し付けた状態で下方側のX線を遮蔽して、その状態で2次元X検出器5からの検出データに基づいて作成される2次元X線強度分布画像の一例である。この場合、両物体は大きな荷重で互いに押し付けられているため、接触部位の間隙はきわめて狭く(ほぼ零と)なっている。一方、この間隙の上方には物体の表面からの散乱X線や回折X線による像が現れており、それら像の形状は荷重による物体の微小な変形を反映している。このように2次元X線強度分布画像を利用すれば、接触部位付近の物体の表面形状を調べることも可能である。
【0039】
図4は本実施例の接触部位計測装置を用いて測定対象物4の接触部位に存在する微小間隙の大きさを求める際の、該装置の動作手順を示すフローチャートである。
【0040】
まず、X線源2を駆動して測定対象物4の接触部位にX線を照射し、上述のように接触部位からの通過X線を含む各種X線を2次元X線検出器5で検出する。そして、2次元X線検出器5から検出データを受領した2次元X線強度分布作成部61は2次元X線強度分布画像を作成する(ステップS1)。次に、解析処理部62は上記画像に対し、X線強度を抽出する画素を選択するための検出窓を設定する(ステップS2)。この検出窓は、X線が殆ど又は全く入射していない画素を後述の積算対象から除去することで実効的にS/Nを改善するため、或いは、接触部位が例えば点状である場合のように求める間隙が2次元画像中の特定の箇所のみに存在する場合に不要な、つまり接触部位でない箇所からの通過X線の影響を除去するためのものである。
【0041】
前者の目的に対しては、例えばX線強度が所定閾値以上である画素のみを選択するように自動的に検出窓を設定することができる。一方、後者の目的に対しては又は前者の目的に対しても、測定者が2次元X線強度分布画像をモニタ(図示せず)の画面上で確認しながら、手動で適切な範囲に検出窓を設定するようにするとよい。例えば後で例示するように接触部位が線状(又は平面状)である場合には、2次元X線強度分布画像上に水平方向に帯状に大きなX線強度を示す画素が並ぶから、これを包含するように検出窓を設定すればよい。次いで解析処理部62は検出窓内の画素のX線強度を積算し(ステップS3)、その積算強度から接触部位の微小間隙のサイズを算出する(ステップS4)。そして、算出された微小間隙サイズを2次元X線強度分布画像と併せて出力部7から出力する(ステップS5)。
【0042】
スリット開口幅dが6μm及び1μmであるスリットを上記接触部位計測装置により測定して得られる2次元X線強度分布画像を実測例を図5、図6に示す。スリット開口幅1μmでも、スリット開口に対応した水平な帯状(線状)の像が明瞭に得られていることが分かる。上述したように、このような場合には水平方向に延びる帯状の検出窓を設定すればよい。さらにスリット開口幅が狭くなる場合でも、積算時間を増加させて適当な検出窓を設定すれば、開口幅を算出するのに十分な強度の信号を取り出すことができる。
【0043】
スリット開口幅dを段階的に調整したものを上記実施例の接触部位計測装置により実測して、スリット開口幅dと積算X線強度相対値との関係を算出した結果が図7である。この図から、0.1〜2.5μmの範囲でスリット開口幅dと積算X線強度との間には相関があることが分かる。そこで、例えば上記のような関係を予め求めて参照情報として解析処理部62に記憶しておくことにより、測定対象物4に対して計測を実行して得られたX線強度を上記参照情報に照らして微小間隙サイズを求めることができる。
【0044】
なお、上述したようにX線の照射を受けた物体からは特性X線も放出されるから、2次元X線検出器に代えてエネルギー分散型X線分光検出器を配置する構成としておく、或いは、2次元X線検出器とエネルギー分散型X線分光検出器とを併設しておき、エネルギー分散型X線分光検出器で得られた信号を同定処理に供することにより、接触部位を形成する物体の組成も把握することが可能となる。
【0045】
また、上記実施例はいずれも本発明の一例であるから、本発明の趣旨の範囲で適宜変形、修正又は追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。例えば、上記実施例では、静止状態にある2物体が直接的又は間接的に接触している状態を想定していたが、X線を照射する位置さえ移動しなければ、一方の物体が他方に対して相対的に運動している状態や両物体が互いに運動している状態であっても、同様の測定が可能であることは明らかである。
【符号の説明】
【0046】
1…X線遮蔽室
1…特許文献
2…X線源
3…マルチキャピラリX線レンズ
4…測定対象物
4A…第1物体
4B…第2物体
5…2次元X線検出器
6…データ処理部
61…2次元X線強度分布作成部
62…解析処理部
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体である2つの物体が直接的に接触する接触部位、或いは、それら固体に比べてX線透過率が高い液体若しくは固体を介して間接的に接触する接触部位を、X線を利用して解析する方法及び装置に関し、さらに詳しくは、点、線、又は面である接触部位に存在するごく微小な間隙のサイズ計測や接触部位を挟んだ両物体の微視的な形状観察などが可能な解析方法及び解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、固体である2つの物体が点、線、又は面で直接的に接している場合であっても、物体の表面はごく微細な凹凸の集合であるので、微視的に見ればその接触部位にはごく微細な間隙が存在する。2つの物体が互いに近づく方向にそれら物体に圧力を加えれば接触部位の微細な間隙は縮小するし、さらに圧力を大きくすれば、例えば一方の物体の一部が他方の物体の表面に間隙なく密着し、その密着箇所の周囲で一方又は両方の物体に微視的な変形が生じる。
【0003】
様々な分野における近年の精密加工技術、高密度実装技術等の進展に伴い、上記のような2つの物体間の接触部位における微小間隙のサイズ計測や接触部位を挟んだ両物体の微細形状観察、或いは接触部位付近の物体の組成解析などの要求は高くなっている。また、2つの物体が直接的に接触している場合だけでなく、例えば油等の薄い液体層や固体薄膜層を介して2つの物体が間接的に接触している場合のその接触部位における微小間隙のサイズ計測や接触部位を挟んだ両物体の微細形状観察などの要求も非常に大きい。
【0004】
従来一般的に、ミクロン単位の間隙計測や形状観察には工業用X線透視装置やX線CT装置などが用いられている。しかしながら、こうした装置をもってしても、さらに微細なサブミクロンレベル、ナノレベルの間隙計測や形状観察は困難である。また、上記のような従来の装置では装置自体がかなり大掛かりになり、測定に比較的長い時間を要するため測定のスループットを上げるのは困難である。
【0005】
特許文献1、2には、回転する磁気ディスク上で浮上するヘッドと該ディスク面との間隙といった比較的狭い間隙の計測をX線を用いて行う方法が開示されている。しかしながら、磁気ディスクやヘッドの対向平面は非常に高い平坦性をもつように加工されているから、磁気ディスクの回転によってヘッドが浮上した状態では、両者の間にはほぼ一様なサイズの間隙が形成される。上記特許文献に記載の測定方法は、このようにX線が直接的に且つ十分な強度で通過し得る大きさの間隙が計測対象として想定されており、直接的に通り抜けて来るX線がきわめて少ない状況下でのごく微細な間隙計測や形状観察は実質的には困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−189541号公報
【特許文献2】特開平11−132754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、巨視的には接触しているとみなせる2つの物体(固体)の接触部位に存在する微小な間隙や、X線透過率が高い液体や固体の層を挟んで間接的に接触している2つの物体間の微小な間隙の計測やその接触部位を挟んで対向する両物体の形状の観察などの接触部位構造解析を、X線を用い非接触で非破壊的に実施することができる固体間接触部位解析方法及び解析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた第1発明は、固体である第1物体と同じく固体である第2物体とが点、線若しくは面で直接的に接触する接触部位、又は、第1物体と第2物体とがそれら物体よりも高いX線透過率を有する液体若しくは固体を介して点、線若しくは面で間接的に接触している接触部位の微視的な構造をX線を用いて解析するための固体間接触部位解析方法であって、
a)前記接触部位を挟んで対向する両物体の平面又は両物体の最近接部位の接平面に対し全反射臨界角以下の入射角度をもって該接触部位にX線を入射するX線照射ステップと、
b)その入射X線に対して前記接触部位の反対側から出射してきたX線を、複数の微小X線検出素子が2次元的に配列されてなる位置敏感型の2次元X線検出器により検出するX線検出ステップと、
c)前記2次元X線検出器からの検出信号により得られる2次元X線強度分布に基づいて前記接触部位の構造についての情報を取得する解析ステップと、
を有することを特徴としている。
【0009】
また上記課題を解決するためになされた第2発明は上記第1発明に係る解析方法を実施するための装置であり、固体である第1物体と同じく固体である第2物体とが点、線若しくは面で接触する接触部位、又は、第1物体と第2物体とがそれら物体よりも高いX線透過率を有する液体若しくは固体を介して点、線若しくは面で間接的に接触している接触部位の微視的な構造をX線を用いて解析するための固体間接触部位解析装置であって、
a)前記接触部位を挟んで対向する両物体の平面又は両物体の最近接部位の接平面に対し全反射臨界角以下の入射角度をもって該接触部位にX線を入射させるX線照射手段と、
b)前記X線照射手段による入射X線に対して前記接触部位の反対側から出射してきたX線を検出する、複数の微小X線検出素子が2次元的に配列されてなる位置敏感型のX線検出手段と、
c)前記X線検出手段からの検出信号により得られる2次元X線強度分布に基づいて前記接触部位の構造についての情報を取得するデータ処理手段と、
を備えることを特徴としている。
【0010】
ここで、「接触部位を挟んで対向する両物体の平面又は両物体の最近接部位の接平面」とは、その両物体が巨視的に略平行な平面で接している場合にはその平面自体である。また、両物体の一方が平面である場合にはその平面自体である。さらにまた、両物体の対向面の両方が凸形状曲面又は尖塔形状面であって両物体が点又は線で接している場合には、両物体が最も近接した箇所において両物体の表面に存在する微小凹凸の近似平面高さにより形成される仮想的な近似平面である。
【0011】
本発明に係る固体間接触部位解析方法及び解析装置における計測対象は、点、線又は面である2物体の接触部位であるが、その接触部位には例えば潤滑油などの液体がごく薄い被膜を形成して存在していてもよい。また、接触部位を形成する2物体は静止状態でなくてもよく、計測位置さえ変化しなければ一方又は両方の物体が運動していてもよい。つまり、接触部位は摺動面であってもよい。
【0012】
2物体の接触部位に対し、該接触部位を挟んで対向する両物体の平面又は両物体の最近接部位の接平面に対し全反射臨界角以下の入射角度をもってX線が照射されると、それら物体を挟んでその反対側には、接触部位に存在する微小間隙を通り抜けてくるX線(このX線には、物体に一度も当たることなく通過してくるX線と、少なくとも1回は物体の表面で反射・散乱されたX線とを含む)、接触部位付近の物体表面に当たって回折を生じたX線、或いは、入射X線により励起されて物体自体から発生する特性X線、さらには物体の厚さや材質によっては物体内部に入り込んで透過して出てくるX線、などが混在したX線が出射する。これらX線は全体として入射X線の拡がり角よりもかなり広い拡がり角をもって出射する。
【0013】
特許文献1、2に記載のような従来の間隙の測定手法は、入射X線に対して間隙をそのまま通過してくるX線のみを検出しているが、間隙がごく狭い場合やその間隙に空気に比べてX線透過率の低い液体や固体が存在している場合には、そのまま通過してくるX線の強度は非常に弱い。そのため、十分な強度でX線を検出することができないか、或いは、検出できてもその強度情報と間隙サイズとの相関性が悪く、強度情報を間隙サイズに精度良く換算するのが困難である。これに対し、本発明に係る固体間接触部位解析方法及び解析装置では、上述のように拡がりつつ出射するX線を複数の微小X線検出素子が2次元的に配列されてなる位置敏感型のX線検出手段でできるだけ漏れなく検出する。このときにX線検出手段の検出面上に到達するX線の種類は判別できないものの、例えば接触部位が直線又は平面であれば、検出面上にはその接触部位の微小間隙に対応した略帯状の像が得られる。
【0014】
そこで、データ処理手段により実施される解析ステップでは、X線検出手段の検出信号に基づいて得られる2次元X線強度分布に基づいて、例えばX線検出手段における全微小X線検出素子のうちの特定範囲に含まれる複数の微小X線検出素子(画素)により得られるX線強度を積算し、その積算した強度情報に基づいて前記接触部位に存在する微小間隙の大きさを求める。上述したように接触部位の種類、つまり点接触、線接触、面接触のいずれであるのかによって、さらには、物体の形状等によって、検出面上で相対的に強いX線強度が得られる画素の位置は或る程度決まっているから、予め測定者が上記特定範囲を設定しておくこともできる。また、例えば2次元X線強度分布において得られているX線強度が所定以上である範囲を特定範囲として抽出してもよい。
【0015】
また、2物体の接触部位から出てくる散乱X線や回折X線の拡がり具合は接触部位付近の両物体の表面形状に依存する。そのため、例えば一方又は両方の物体に圧力が加えられて物体に変形が生じると、その変形に伴って2次元X線強度分布における像の形状、つまりX線が到達する画素の位置やX線強度が変化する。そこで、データ処理手段により実施される解析ステップでは、2次元X線強度分布から求まる強度パターンを解析することにより、接触部位を挟んで対向する両物体の表面形状を推定することができる。
【0016】
なお、前述のように2物体の接触部位からはそれら物体を構成する元素に特有の特性X線も出射してくるため、位置敏感型のX線検出手段のほかに例えば該検出手段と切り換え可能にエネルギー分散型X線分析手段を設け、或いは、位置敏感型X線検出手段とエネルギー分散型X線分析手段とを併設し、そのエネルギー分散型X線分析手段により定性分析を実行して物体の組成を併せて求めるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る固体間接触部位解析方法及び解析装置によれば、2物体の間の間隙を直接的に通過してきたX線の強度ではなく、物体表面で反射・散乱された又は回折で生じたX線、物体を透過してきたX線、物体自体から2次的に発生する特性X線など、様々なX線を網羅的に且つ2次元的な微小位置毎に検出し、その検出結果により得られる2次元X線強度分布を利用して接触部位の微小間隙のサイズや微小表面形状等の構造情報を得るようにしたので、巨視的にみれば接触状態にあるようなごく微細な間隙についての構造解析を行うことができる。
【0018】
また、本発明に係る固体間接触部位解析方法及び解析装置によれば、装置自体がそれほど大掛かりとならずに済み、また短時間での計測が可能であるので、例えば微小間隙のサイズや表面形状が時間に伴って変化するような接触部位の構造解析にも好適である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例である接触部位計測装置の概略構成図。
【図2】本実施例の接触部位計測装置において計測対象となる2物体間の接触部位の形状の一例を示す図。
【図3】一方の物体を他方に押し付けた状態における2次元強度分布画像の一例を示す図。
【図4】本実施例の接触部位計測装置を用いた計測方法の手順を示す図。
【図5】間隙dと相対X線強度との関係を実験的に求めた結果を示す図。
【図6】間隙dを変えたときの実測による2次元強度分布画像の一例を示す図。
【図7】間隙dを変えたときの実測による間隙dと出射X線強度との関係を示す図。
【図8】計測対象の接触部位形状が図2(a)であって間隙サイズが1μmである場合における検出面上での回折パターンの理論的シミュレーション計算結果を示す図。
【図9】計測対象の接触部位形状が図2(a)であって間隙サイズが30nmである場合における検出面上での回折パターンの理論的シミュレーション計算結果を示す図。
【図10】計測対象の接触部位形状が図2(b)であって間隙サイズが1μmである場合における検出面上での回折パターンの理論的シミュレーション計算結果を示す図。
【図11】計測対象の接触部位形状が図2(b)であって間隙サイズが30nmである場合における検出面上での回折パターンの理論的シミュレーション計算結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、本発明に係る固体間接触部位解析方法におけるX線を用いた測定原理を説明する。
【0021】
本願発明者は、2つの物体の間に形成されるサブミクロン〜ナノレベルのごく狭い間隙(スリット開口幅)にX線を照射したときに透過するX線や散乱・回折するX線を数量的に把握するために、理論的計算を行った。この際に想定した2つの物体の接触部位の形状例を図2に、理論的計算結果を図8〜図11に示す。一般的に、こうしたスリット開口のX線透過・散乱の数量的把握には電磁波方程式に基づく計算が必要になるが、ここではスリット開口幅がナノレベルであっても或いはスリット開口形状が複雑であっても実用的な計算量に収まるように、X線の入射平面波を数ミクロン程度の有限な幅の振幅をもつ平行ビーム束に分割し、それぞれについて求めた解の重ね合わせにより最終的な解を求めるという計算手法を採用した。
【0022】
図2(a)は、断面三角形状で図中のY方向に延伸する2つの物体が、その頂部同士が巨視的に見たときに接触状態となるように配置されたものである。図8及び図9は図2(a)に示した形状の接触部位を想定したものであり、図8は両物体の間隙が1μmの場合の、図9は両物体の間隙が0.1μmの場合の回折強度パターンある。
【0023】
各図の(a)は単純に(つまりは後述する物体自体を透過するX線を考慮せず)物体の間隙のみを通過してきたX線の回折強度パターンであり、入射X線の強度を1として規格化している。一方、各図の(b)は物体自体を透過するX線も考慮した間隙付近全体を通過してきたX線の回折強度パターンである。各図(b)において矢印で示す3本のカーブは両物体それぞれ及び両物体間の間隙の3箇所を通り抜けてくる各X線の回折パターンであり、他の1本のカーブはそれらの合計によるX線の回折パターンである。なお、ここでは、両物体の材料はステンレス鋼、各物体の頂部の角度は30°、X線の波長はCuKα(0.154nm)を想定している。
【0024】
図8(a)及び図9(a)を見れば分かるように、カーブの半値幅は回折の効果により実際の間隙サイズよりもかなり広がっており、その広がりは間隙が狭いほど大きくなる。図2(a)の形状に特徴的であるのは、物体自体を透過してくるX線の強度が相対的にかなり大きいことである。
【0025】
図2(b)は、断面半円状の頂部を有し図中のY方向に延伸する2つの物体が、その頂部同士が巨視的に見たときに接触状態となるように配置されたものである。図10及び図11は図2(b)に示した形状の接触部位を想定したものであり、図10は両物体の間隙が1μmの場合の、図11は両物体の間隙が0.1μmの場合の回折強度パターンある。上記の図2(a)に示した形状に対する計算と最も異なる点は、全反射を考慮する必要があることである。
【0026】
各図の(a)は物体表面で反射することなく直接的に通過してきたX線の回折強度パターンであり、入射X線の強度を1として規格化している。ただし、ここでは縦軸(強度軸)は対数で示している。一方、各図の(b)は物体表面での全反射成分のX線の回折強度パターンである。なお、ここでは、両物体の材料はステンレス鋼、各物体の頂部は径2mmの半円形状、X線の波長はCuKα(0.154nm)を想定している。
【0027】
特に、図10及び図11の(b)から分かることは、全反射X線の角度の拡がりは2〜3°程度あり、ピーク値は直接透過成分に比べて4〜5桁も小さいということである。
【0028】
上記計算結果から明らかなことは、接触部位を挟む両物体の形状によってその程度は異なるものの、0.1μm程度のサイズの間隙であっても、検出するに十分な強度のX線がその間隙幅と同方向に適度な拡がり幅をもって現れることである。そのため、このように拡がりつつ進むX線を的確に抽出すれば、それから求まるX線強度積算値に基づいて間隙サイズを推定することが可能である。また、回折強度パターンの形状は、接触部位を挟んだ両物体の形状によってかなり特異的である。そのため、例えばX線の到達範囲に2次元X線検出器を配置しX線強度の空間分布を測定すれば、その強度分布から物体の表面形状の推定が可能である。
【0029】
本発明に係る固体間接触部位解析方法及びこれを実施する解析装置は、上記測定原理を利用したものであり、上述したような、間隙を直接的に通り抜けてくるX線のみを1個の検出器で検出し、そのX線強度に基づいて間隙サイズを算出するという従来の測定方法とは全く原理を異にするものである。
【0030】
以下、本発明に係る固体間接触部位解析方法を実施する解析装置の一実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本実施例である接触部位計測装置の概略構成図である。該装置による計測対象は、図2(a)、(b)に示したような、鋭角状断面又は湾曲状断面を有する2つの物体の直接的な接触部位のほか、例えば図2(c)に示すような、2つの物体の略平行な平面が直接的に接触した部位など様々である。
【0031】
図2(a)、(b)では2つの物体の接触部位はY方向に延伸する直線状であるが、図2(c)では、2つの物体の接触部位はY方向、Z方向を含む平面状である。いずれの場合においても、巨視的には両物体が接触している状態であっても、それら物体の表面にはごく微細な凹凸が存在するため、微視的に見れば両物体の間にはごく微小の間隙が存在する(但し、Y方向に沿った間隙のサイズは一定ではない)。本実施例の接触部位計測装置は、こうした微視レベルで存在する間隙のサイズやその付近の両物体の形状などの計測を可能としたものである。
【0032】
もちろん、本実施例の接触部位計測装置による計測対象の間隙は、2つの物体が直接的に接触している場合のみならず、空気に比べて遙かにX線透過率が低く且つ両物体よりはX線透過率が高い液体や固体の薄膜層を挟んで両物体が間接的に接触した状態の接触部位の間隙であってもよい。
【0033】
図1に示すように、本実施例の接触部位計測装置では、X線遮蔽室1内に、X線源2、X線源2から出射されたX線を効率良く収集して略平行光にするマルチキャピラリX線レンズ3、第1物体4Aと第2物体4Bとからなる計測対象物4、及び、X線照射を受けて計測対象物4の接触部位付近から出射したX線を2次元的に検出する2次元X線検出器5、が配設されている。一方、X線遮蔽室1の外側には、2次元X線検出器5で得られる検出データを処理するために、パーソナルコンピュータ等により具現化されるデータ処理部6が設けられている。2次元X線検出器5は所定の2次元範囲において入射してきたX線の位置の判別が可能な位置敏感型の検出器である。したがって、2次元X線検出器5からデータ処理部6へは、該検出器5の2次元的な検出面に入射したX線の位置情報データ(例えば検出面上の位置アドレスを示すデータ)と検出面上の各位置のX線強度データとが出力される。
【0034】
データ処理部6は、上記のような検出データに基づいて2次元X線強度分布を作成する2次元X線強度分布作成部61と、該分布データを所定アルゴリズムに従って解析処理して例えば接触部位の微小間隙のサイズを算出する解析処理部62と、を機能ブロックとして含み、その処理結果等は出力部7により出力される。
【0035】
なお、X線を平行化するマルチキャピラリX線レンズ3は必須な要素ではなく、重要なことは、接触部位を挟んで対峙する両物体の平面又は両物体の最近接部位(接触部位)の接平面に対して全反射臨界角以下の入射角でX線が接触部位に入射するようにすることである。ここでいう接平面とは上述した定義に基づく仮想的な近似平面である。全反射臨界角は物体の材料や物体の周囲の雰囲気(例えば空気、液体等)によって相違するから、そうした条件に応じて実際の照射X線に許容される拡がり角度は相違する。
【0036】
図1に示したように第1物体4Aと第2物体4Bとが接触した状態であっても、その接触部位には物体4A、4B表面の微細な凹凸、その表面に付着した異物の影響などにより、ごく微小の間隙が存在する。そのため、この接触部位に上述したようなX線が照射されると、上記間隙で主として反射しながら通過して来るX線(以下「通過X線」という)が反対側から出射する。また、物体4A、4Bの表面の微細凹凸のエッジや結晶等により回折を生じたX線(以下「回折X線」という)も反対側から出射するし、物体4A、4Bの表面で散乱したX線(以下「散乱X線」という)も出射する。さらには、接触部位においてX線の入射角が全反射臨界角以下であっても接触部位から少し外れた位置ではX線の入射角は全反射臨界角を超えるし、接触部位においても微視的に見れば一部のX線の入射角は全反射臨界角を超えることがある。そのため、物体4A、4B中に入り込んだX線の励起作用により、それら物体から物質特有の特性X線も出射してくる。そうした様々な種類のX線は接触部位から拡がりながら進み、2次元X線検出器6の検出面に到達する。
【0037】
一般に、通過X線の強度は最も大きいが、回折X線や散乱X線もその強度はかなり大きい。ただし、2次元X線検出器6の検出面位置において、通過X線は接触部位の微小間隙のサイズを反映した比較的狭い範囲に収まるのに対し、回折X線や散乱X線の拡がりは接触部位付近の物体4A、4Bの表面形状の影響を大きく受ける。本実施例の装置では、回折X線や散乱X線が大きく拡がりながら出射する場合でも、それらX線の殆どを2次元X線検出器6で受けて位置情報データとX線強度データとを得ることができる。
【0038】
図3は、図2(b)の形態において両物体を強く押し付けた状態で下方側のX線を遮蔽して、その状態で2次元X検出器5からの検出データに基づいて作成される2次元X線強度分布画像の一例である。この場合、両物体は大きな荷重で互いに押し付けられているため、接触部位の間隙はきわめて狭く(ほぼ零と)なっている。一方、この間隙の上方には物体の表面からの散乱X線や回折X線による像が現れており、それら像の形状は荷重による物体の微小な変形を反映している。このように2次元X線強度分布画像を利用すれば、接触部位付近の物体の表面形状を調べることも可能である。
【0039】
図4は本実施例の接触部位計測装置を用いて測定対象物4の接触部位に存在する微小間隙の大きさを求める際の、該装置の動作手順を示すフローチャートである。
【0040】
まず、X線源2を駆動して測定対象物4の接触部位にX線を照射し、上述のように接触部位からの通過X線を含む各種X線を2次元X線検出器5で検出する。そして、2次元X線検出器5から検出データを受領した2次元X線強度分布作成部61は2次元X線強度分布画像を作成する(ステップS1)。次に、解析処理部62は上記画像に対し、X線強度を抽出する画素を選択するための検出窓を設定する(ステップS2)。この検出窓は、X線が殆ど又は全く入射していない画素を後述の積算対象から除去することで実効的にS/Nを改善するため、或いは、接触部位が例えば点状である場合のように求める間隙が2次元画像中の特定の箇所のみに存在する場合に不要な、つまり接触部位でない箇所からの通過X線の影響を除去するためのものである。
【0041】
前者の目的に対しては、例えばX線強度が所定閾値以上である画素のみを選択するように自動的に検出窓を設定することができる。一方、後者の目的に対しては又は前者の目的に対しても、測定者が2次元X線強度分布画像をモニタ(図示せず)の画面上で確認しながら、手動で適切な範囲に検出窓を設定するようにするとよい。例えば後で例示するように接触部位が線状(又は平面状)である場合には、2次元X線強度分布画像上に水平方向に帯状に大きなX線強度を示す画素が並ぶから、これを包含するように検出窓を設定すればよい。次いで解析処理部62は検出窓内の画素のX線強度を積算し(ステップS3)、その積算強度から接触部位の微小間隙のサイズを算出する(ステップS4)。そして、算出された微小間隙サイズを2次元X線強度分布画像と併せて出力部7から出力する(ステップS5)。
【0042】
スリット開口幅dが6μm及び1μmであるスリットを上記接触部位計測装置により測定して得られる2次元X線強度分布画像を実測例を図5、図6に示す。スリット開口幅1μmでも、スリット開口に対応した水平な帯状(線状)の像が明瞭に得られていることが分かる。上述したように、このような場合には水平方向に延びる帯状の検出窓を設定すればよい。さらにスリット開口幅が狭くなる場合でも、積算時間を増加させて適当な検出窓を設定すれば、開口幅を算出するのに十分な強度の信号を取り出すことができる。
【0043】
スリット開口幅dを段階的に調整したものを上記実施例の接触部位計測装置により実測して、スリット開口幅dと積算X線強度相対値との関係を算出した結果が図7である。この図から、0.1〜2.5μmの範囲でスリット開口幅dと積算X線強度との間には相関があることが分かる。そこで、例えば上記のような関係を予め求めて参照情報として解析処理部62に記憶しておくことにより、測定対象物4に対して計測を実行して得られたX線強度を上記参照情報に照らして微小間隙サイズを求めることができる。
【0044】
なお、上述したようにX線の照射を受けた物体からは特性X線も放出されるから、2次元X線検出器に代えてエネルギー分散型X線分光検出器を配置する構成としておく、或いは、2次元X線検出器とエネルギー分散型X線分光検出器とを併設しておき、エネルギー分散型X線分光検出器で得られた信号を同定処理に供することにより、接触部位を形成する物体の組成も把握することが可能となる。
【0045】
また、上記実施例はいずれも本発明の一例であるから、本発明の趣旨の範囲で適宜変形、修正又は追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。例えば、上記実施例では、静止状態にある2物体が直接的又は間接的に接触している状態を想定していたが、X線を照射する位置さえ移動しなければ、一方の物体が他方に対して相対的に運動している状態や両物体が互いに運動している状態であっても、同様の測定が可能であることは明らかである。
【符号の説明】
【0046】
1…X線遮蔽室
1…特許文献
2…X線源
3…マルチキャピラリX線レンズ
4…測定対象物
4A…第1物体
4B…第2物体
5…2次元X線検出器
6…データ処理部
61…2次元X線強度分布作成部
62…解析処理部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体である第1物体と同じく固体である第2物体とが点、線若しくは面で直接的に接触する接触部位、又は、第1物体と第2物体とがそれら物体よりも高いX線透過率を有する液体若しくは固体を介して点、線若しくは面で間接的に接触している接触部位の微視的な構造をX線を用いて解析するための固体間接触部位解析方法であって、
a)前記接触部位を挟んで対向する両物体の平面又は両物体の最近接部位の接平面に対し全反射臨界角以下の入射角度をもって該接触部位にX線を入射するX線照射ステップと、
b)その入射X線に対して前記接触部位の反対側から出射してきたX線を、複数の微小X線検出素子が2次元的に配列されてなる位置敏感型の2次元X線検出器により検出するX線検出ステップと、
c)前記2次元X線検出器からの検出信号により得られる2次元X線強度分布に基づいて前記接触部位の構造についての情報を取得する解析ステップと、
を有することを特徴とする固体間接触部位解析方法。
【請求項2】
固体である第1物体と同じく固体である第2物体とが点、線若しくは面で接触する接触部位、又は、第1物体と第2物体とがそれら物体よりも高いX線透過率を有する液体若しくは固体を介して点、線若しくは面で間接的に接触している接触部位の微視的な構造をX線を用いて解析するための固体間接触部位解析装置であって、
a)前記接触部位を挟んで対向する両物体の平面又は両物体の最近接部位の接平面に対し全反射臨界角以下の入射角度をもって該接触部位にX線を入射させるX線照射手段と、
b)前記X線照射手段による入射X線に対して前記接触部位の反対側から出射してきたX線を検出する、複数の微小X線検出素子が2次元的に配列されてなる位置敏感型のX線検出手段と、
c)前記X線検出手段からの検出信号により得られる2次元X線強度分布に基づいて前記接触部位の構造についての情報を取得するデータ処理手段と、
を備えることを特徴とする固体間接触部位解析装置。
【請求項3】
請求項2に記載の固体間接触部位解析装置であって、
前記データ処理手段は、前記X線検出手段における全微小X線検出素子のうちの特定範囲に含まれる複数の微小X線検出素子により得られるX線強度を積算し、その積算した強度情報に基づいて前記接触部位に存在する微小間隙の大きさを求めることを特徴とする固体間接触部位解析装置。
【請求項4】
請求項2に記載の固体間接触部位解析装置であって、
前記データ処理手段は、前記2次元X線強度分布から求まる強度パターンを解析することにより前記接触部位を挟んで対向する両物体の表面形状を推定することを特徴とする固体間接触部位解析装置。
【請求項1】
固体である第1物体と同じく固体である第2物体とが点、線若しくは面で直接的に接触する接触部位、又は、第1物体と第2物体とがそれら物体よりも高いX線透過率を有する液体若しくは固体を介して点、線若しくは面で間接的に接触している接触部位の微視的な構造をX線を用いて解析するための固体間接触部位解析方法であって、
a)前記接触部位を挟んで対向する両物体の平面又は両物体の最近接部位の接平面に対し全反射臨界角以下の入射角度をもって該接触部位にX線を入射するX線照射ステップと、
b)その入射X線に対して前記接触部位の反対側から出射してきたX線を、複数の微小X線検出素子が2次元的に配列されてなる位置敏感型の2次元X線検出器により検出するX線検出ステップと、
c)前記2次元X線検出器からの検出信号により得られる2次元X線強度分布に基づいて前記接触部位の構造についての情報を取得する解析ステップと、
を有することを特徴とする固体間接触部位解析方法。
【請求項2】
固体である第1物体と同じく固体である第2物体とが点、線若しくは面で接触する接触部位、又は、第1物体と第2物体とがそれら物体よりも高いX線透過率を有する液体若しくは固体を介して点、線若しくは面で間接的に接触している接触部位の微視的な構造をX線を用いて解析するための固体間接触部位解析装置であって、
a)前記接触部位を挟んで対向する両物体の平面又は両物体の最近接部位の接平面に対し全反射臨界角以下の入射角度をもって該接触部位にX線を入射させるX線照射手段と、
b)前記X線照射手段による入射X線に対して前記接触部位の反対側から出射してきたX線を検出する、複数の微小X線検出素子が2次元的に配列されてなる位置敏感型のX線検出手段と、
c)前記X線検出手段からの検出信号により得られる2次元X線強度分布に基づいて前記接触部位の構造についての情報を取得するデータ処理手段と、
を備えることを特徴とする固体間接触部位解析装置。
【請求項3】
請求項2に記載の固体間接触部位解析装置であって、
前記データ処理手段は、前記X線検出手段における全微小X線検出素子のうちの特定範囲に含まれる複数の微小X線検出素子により得られるX線強度を積算し、その積算した強度情報に基づいて前記接触部位に存在する微小間隙の大きさを求めることを特徴とする固体間接触部位解析装置。
【請求項4】
請求項2に記載の固体間接触部位解析装置であって、
前記データ処理手段は、前記2次元X線強度分布から求まる強度パターンを解析することにより前記接触部位を挟んで対向する両物体の表面形状を推定することを特徴とする固体間接触部位解析装置。
【図1】
【図2】
【図4】
【図7】
【図3】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図4】
【図7】
【図3】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−117988(P2012−117988A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269896(P2010−269896)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
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