説明

固体電解コンデンサの製造方法

【課題】高容量を示し、容量出現率の高い固体電解コンデンサの製造方法を提供する。また、そのような固体電解コンデンサを製造するのに必要なポリアニリン溶液を提供する。
【解決手段】誘電体酸化皮膜が形成された弁作用金属に、導電性高分子層を形成する際、特定の分子量を有するポリアニリンが溶解された溶液を用い、弁作用金属上に塗布、乾燥することによってポリアニリン層を形成し、次いで、導電性高分子からなる固体電解質層を形成する工程を包含することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性高分子を固体電解質として用いた固体電解コンデンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性高分子を固体電解質として用いてなる固体電解コンデンサが実用化されている。前記固体電解コンデンサは、陽極体である弁作用金属上に固体電解質層として導電性高分子が形成されたものであり、導電性高分子材料としてポリアニリン、ポリピロール、ポリフラン、ポリチオフェン及びポリアルキレンジオキシチオフェン等の誘導体が知られている。
【0003】
固体電解コンデンサは、通常、誘電体酸化皮膜が形成された陽極弁作用金属上に、真の陰極として機能する固体電解質層が形成された構造を有している。
一般に陽極となる弁作用金属の表面は、単位体積当たりの静電容量を増大させるためにエッチング等によって拡面化処理されている。
固体電解コンデンサの製造において、この微細孔を有する誘電体酸化皮膜上に導電性高分子をいかに形成するかという点が特性向上に極めて重要である。
すなわち、複雑な形状を有している誘電体酸化皮膜上に緻密に導電性高分子を形成できないと、得られる固体電解コンデンサの静電容量が不十分になり、誘電損失やESRが増大する場合があるからである。
【0004】
しかしながらサブミクロンオーダーの細孔内に導電性高分子を緻密に充填することは極めて困難な工程であり、一般に煩雑な重合工程が必要とされる。
例えば、弁作用金属上に導電性高分子を形成する方法として、弁作用金属表面上にて、その場で重合性モノマーを重合せしめ、生成する導電性高分子を細孔内に析出させる方法がよく知られているが、重合反応を上手く制御しないと、過剰な重合反応により導電性高分子が大きな塊状に生成し、該導電性高分子が細孔の入り口付近を塞いでしまい、結果として細孔内への充填が不十分になってしまう場合がある。
そのような状態にて得られる固体電解コンデンサの特性は不十分であり、製品の歩留まり低下や、特性バラツキの増大の原因となる。
【0005】
そのため、予め重合され粒径や粒度が制御された極めて小さい微粒子状の導電性高分子を、分散媒に分散させ、細孔内部に導入し、固体電解質層を形成する方法も検討されている。
【0006】
特許文献1〜3には、導電性高分子層として、微粒子状導電性高分子の分散液を用い、該分散液を塗布、乾燥して導電性高分子層を形成する固体電解コンデンサの製造方法が知られている。
しかしながら、該文献に開示されている方法によっても、依然として複雑で微細孔を有する弁作用金属に導電性高分子重合体を緻密に充填することが困難であり、容量出現率の大きい固体電解コンデンサを得ることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平09−306788号公報
【特許文献2】特開平11−045824号公報
【特許文献3】特開2006−310365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、高容量で容量出現率の高い固体電解コンデンサの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、誘電体酸化皮膜が形成された弁作用金属上に導電性高分子層を形成する工程を包含した固体電解コンデンサの製造方法において、
(1)特定の分子量を有するポリアニリンの溶液を誘電体酸化皮膜上に接触、乾燥することによりポリアニリン層を形成する工程、
(2)次いで、該ポリアニリン層上に導電性高分子層を形成する工程、
を包含する固体電解コンデンサの製造方法が、上記課題を解決できることを見出し本発明の完成に至った。
【0010】
すなわち本発明は下記の第1〜第8の発明に示されたものである。
【0011】
第1の発明は、誘電体酸化皮膜が形成された弁作用金属上に導電性高分子層が形成されてなる固体電解コンデンサの製造方法において、
前記導電性高分子層が、
(1)ポリアニリン溶液を弁作用金属に接触、乾燥することによりポリアニリン層を形成する工程、
(2)前記ポリアニリン層上に、導電性高分子層1を形成する工程、
を含み、
前記ポリアニリン溶液に含まれるポリアニリンのポリスチレン換算分子量が、
ピークトップの分子量(Mp)が5.0×10〜5.5×10の範囲、又は、数平均分子量(Mn)が3.0×10〜2.5×10の範囲であることを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法である。
【0012】
第2の発明は、前記導電性高分子層1が、ポリピロール類、ポリアニリン類及びポリチオフェン類からなる群から選ばれる少なくとも1つの導電性高分子重合体であることを特徴とする第1の発明に記載の固体電解コンデンサの製造方法である。
【0013】
第3の発明は、前記ポリアニリン溶液の25℃における粘度が、2.0〜8.0mPa・sであることを特徴とする第1又は第2の発明に記載の固体電解コンデンサの製造方法である。
【0014】
第4の発明は、前記ポリアニリン溶液の濃度が、0.2〜10質量%の濃度であることを特徴とする第1〜第3の発明のいずれかに1つに記載の固体電解コンデンサの製造方法である。
【0015】
第5の発明は、弁作用金属上に塗布乾燥してポリアニリン層を形成するために使用される固体電解コンデンサ製造用ポリアニリン溶液であって、
前記ポリアニリン溶液中のポリアニリンは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法にて測定されるポリスチレン換算分子量のピークトップ分子量(Mp)が、5000〜55000の間である又は数平均分子量値(Mn)が3000〜25000の間であり、該ポリアニリンがNMP溶媒に、0.2〜10質量%溶解されてなることを特徴とする固体電解コンデンサ製造用ポリアニリン溶液である。
【0016】
第6の発明は、振動式粘度計によって測定される25℃における粘度が、2.0〜8.0mPa・sであることを特徴とする第5の発明に記載の固体電解コンデンサ製造用ポリアニリン溶液である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の固体電解コンデンサの製造方法によれば、容量出現率が高く、高い容量を有する固体電解コンデンサの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の固体電解コンデンサの製造方法について説明する。
【0019】
〔弁作用金属〕
本発明に使用できる弁作用金属としては、アルミニウム、タンタル、ニオブ又はチタンからなる群から選ばれた1種の弁作用金属が挙げられ、焼結体あるいは箔の形状で用いることができる。用いる弁作用金属の形状は特に制限されることはなく、チップ型であっても捲回型であって良い。
【0020】
例えば、アルミニウム箔を用いる場合を例に挙げれば、表面をエッチング処理により粗面化させ、エッチドアルミニウム箔とした後、アジピン酸二アンモニウム等の水溶液で、化成処理し、エッチドアルミニウム箔表面に誘電体酸化皮膜を形成させたものを用いる。
【0021】
〔ポリアニリン溶液〕
次に、本発明に用いるポリアニリン溶液について説明する。
本発明のポリアニリン溶液に溶解させるポリアニリンは、その誘導体も含む。
〔ポリアニリンの調整方法〕
ポリアニリンの調整方法としては、アニリンもしくはアニリン誘導体と硫酸とを含む水溶液を準備し、これをモノマー溶液とする。
次に、別途過硫酸アンモニウムの水溶液等の酸化剤溶液を準備し、前記モノマー溶液中に添加することでアニリンの化学重合反応が進行する。この際、重合反応を制御するためモノマー溶液を低温に、好ましくは5℃以下にしておくことが好ましい。また、酸化剤溶液へのモノマー溶液の添加方法は特に制限なく、どのような方法を採っても良いが、所定流量で滴下する方法によれば重合生成するポリアニリンの分子量を制御することができ、好適である。また、p位に置換基を持ったアニリン誘導体とアニリンの混合比を調整することで狙った分子量のポリアニリンを再現よく合成できるため、あらかじめモノマー溶液にこのp位に置換基を持ったアニリン誘導体を所定量添加することが好ましい。このp位に置換基を持ったアニリン誘導体の割合を多くすると、得られてくるポリアニリンの分子量は小さくなり、p位に置換基を持ったアニリン誘導体の割合を少なくすると得られてくるポリアニリンの分子量は大きくなる。これは、p位に置換基を持ったアニリン誘導体が末端へ挿入されることで重合反応が抑制されるためである。ここで、p位に置換基を持ったアニリン誘導体とはアニリンの4位に置換基を有したものであれば良く、例えば、p−トルイジン、p−アニシジン、4−t−ブチルアニリンなどが挙げられる。
酸化剤滴下後、所定時間撹拌することにより重合体生成物が得られる。この重合生成物をアンモニア水およびヒドラジン1水和物と所定時間攪拌、次いで濾別、乾燥することにより還元及び脱ドープされた重合体生成物が得られる。
【0022】
〔ポリアニリン溶液の調整方法〕
上記のようにして得られたポリアニリンから、本発明に使用するポリアニリン溶液を調整する方法について説明する。
上記ポリアニリンを溶解する溶媒としては、NMPが好ましい。
当該ポリアニリンの濃度としては、0.2質量%以上10質量%未満であることが好ましい。
【0023】
濃度が0.2質量%に満たない場合、ポリアニリン層の形成が困難になり、また、10質量%以上の場合、ポリアニリン溶液の粘度が増大し、微細な細孔内にポリアニリン溶液が含浸し難くなり、ポリアニリン層の形成が困難になるおそれがある。
なお、ポリアニリン層の形成方法は、例えば誘電体酸化皮膜が形成された弁作用金属に、前記ポリアニリン溶液を接触させ、乾燥することによりポリアニリン層を形成することができる。
【0024】
前記誘電体酸化皮膜が形成された弁作用金属に前記ポリアニリン溶液を接触させる方法としては、例えば、前記誘電体酸化皮膜が形成された弁作用金属に対して前記ポリアニリン溶液を塗布する方法、吹き付ける方法等や、前記ポリアニリン溶液に対して前記誘電体酸化皮膜が形成された弁作用金属を浸漬する方法等を挙げることができる。
【0025】
〔分析方法〕
本発明に用いる、ポリアニリンはピークトップの分子量(Mp)が5000〜55000の間である、又は、数平均分子量(Mn)が3000〜25000の間であることが好ましい。分析に用いるポリアニリンは前記還元及び脱ドープされた重合生成物を約0.1重量%の濃度になるように0.01Mの濃度のLiBrを溶解させたNMP溶液に溶解させたものを用いる。
ここで、前記分子量(Mp)は、ポリスチレン換算の分子量を表し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
また、前記数平均分子量(Mn)は、同様にGPCにより測定することができる。
そのような分析方法にて、ピークトップのMpが5000に満たないポリアニリンを用いた場合、ポリアニリン層の形成が困難になり、55000を超える場合もまた、均一なポリアニリン層が形成し難くなる。
同様に、数平均分子量(Mn)が3000に満たないポリアニリンを用いた場合、ポリアニリン層の形成が困難になり、25000を超える場合もまた、均一なポリアニリン層が形成し難くなる。
【0026】
〔導電性高分子層〕
上記、ポリアニリン層上に、導電性高分子層1を形成する。導電性高分子層1の形成方法としては、化学重合法、電解重合法でもよい。
他の形成方法としては、導電性高分子が分散媒中に溶解ないし分散されてなる導電性高分子分散液を塗布、乾燥する方法を採用しても良い。
化学重合法としては、前記ポリアニリン層を形成した弁作用金属上にて、導電性高分子モノマーを、公知の酸化剤と接触させ、導電性高分子を析出させる方法である。
電解重合法としては、導電性高分子モノマー及び支持電解質を含有した電解液中にて、弁作用金属上に形成した前記ポリアニリン層を陽極として電解酸化することにより、導電性高分子を電解重合析出させる方法である。
上記支持電解質としては、例えば、ベンゼン誘導体スルホン酸塩、ナフタレン誘導体スルホン酸塩、アントラセン誘導体スルホン酸塩等のスルホン酸化合物塩等が挙げられる。
【0027】
前記ベンゼン誘導体スルホン酸塩としては、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、イソプロピルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム、炭素数1〜20のアルキル基で置換されたアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0028】
前記ナフタレン誘導体スルホン酸塩としては、ナフタレンモノスルホン酸ナトリウム、炭素数1〜20のアルキルで置換されたアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンジスルホン酸ナトリウム、ナフタレントリスルホン酸、ナフトキノンスルホン酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0029】
前記アントラセン誘導体スルホン酸塩としては、アントラセンモノスルホン酸ナトリウム、アントラセンジスルホン酸ナトリウム、アントラセントリスルホン酸ナトリウム、アントラキノンモノスルホン酸ナトリウム、アントラキノンジスルホン酸ナトリウム、アントラキノントリスルホン酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0030】
〔導電性高分子種〕
導電性高分子層1に使用できる導電性高分子種としては、ポリピロール又はその誘導体、ポリチオフェン又はその誘導体が挙げられる。
【0031】
前記ポリピロール誘導体としては、
ポリ−N位−置換ピロール、ポリ−3位−置換ピロール、ポリ−4位−置換ピロール、ポリ−3位,4位−置換ピロールが挙げられる。
前記ポリ−N位−置換ピロールとしては、ポリ−N−メチルピロール、ポリ−N−エチルピロール等のポリ−N−アルキル置換ピロールが挙げられる。
前記ポリ−3位−置換ピロールとしては、ポリ−3−メチルピロール、ポリ−3−エチルピロール、ポリ−3−ヘキシルピロール、ポリ−3−オクチルピロール等のポリ−3−アルキル置換ピロールが挙げられる。
前記ポリ−4位−置換ピロールとしては、ポリ−4−メチルピロール、ポリ−4−エチルピロール、ポリ−4−ヘキシルピロール、ポリ−4−オクチルピロール等のポリ−4−アルキル置換ピロールが挙げられる。
前記ポリ−3位,4位−置換ピロールとしては、ポリ−3,4−ジメチルピロール、ポリ−3,4−ジエチルピロール、ポリ−3,4−ジヘキシルピロール、ポリ−3,4−ジオクチルピロール等のポリ−3,4−ジアルキル置換ピロール、又は、ポリ−3,4−エチレンジオキシピロール等のポリ−3,4−アルキレンジオキシピロールが挙げられる。
【0032】
前記ポリチオフェン誘導体としては、
ポリ−3位−置換チオフェン、ポリ−4位−置換チオフェン、ポリ−3位,4位−置換チオフェンが挙げられる。
前記ポリ−3位−置換チオフェンとしては、ポリ−3−メチルチオフェン、ポリ−3−エチルチオフェン、ポリ−3−ヘキシルチオフェン、ポリ−3−オクチルチオフェン等のポリ−3−アルキル置換チオフェンが挙げられる。
前記ポリ−4位−置換チオフェンとしては、ポリ−4−メチルチオフェン、ポリ−4−エチルチオフェン、ポリ−4−ヘキシルチオフェン、ポリ−4−オクチルチオフェン等のポリ−4−アルキル置換チオフェンが挙げられる。
前記ポリ−3位,4位−置換チオフェンとしては、ポリ−3,4−ジメチルチオフェン、ポリ−3,4−ジエチルチオフェン、ポリ−3,4−ジヘキシルチオフェン、ポリ−3,4−ジオクチルチオフェン等のポリ−3,4−ジアルキル置換チオフェン、又は、ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン等のポリ−3,4−アルキレンジオキシチオフェンが挙げられる。
【0033】
〔固体電解コンデンサの製造方法〕
固体電解コンデンサの製造方法としては公知の方法を採用することができ、例えば、導電性高分子層を形成した弁作用金属側より陽極、固体電解質層側から陰極を取り出し、素子の周囲をエポキシ樹脂等で封止し、固体電解コンデンサを完成する。
【実施例】
【0034】
以下、本発明について実施例を挙げより詳細に説明する。なお、本発明は、本実施例により何ら限定されるものでない。
【0035】
[分子量の測定方法]
ポリアニリンの数平均分子量(Mn)、ピークトップの分子量(Mp)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(日本ウォーターズ株式会社製、Waters600E)を用いて、ポリスチレン換算値として求めた。また、測定するポリアニリンは、約0.1質量%の濃度になるように0.01Mの濃度のLiBrを溶解させたNMP溶液に溶解させ、その溶液20μLをGPC測定に供した。
更に、GPCの移動相としては、0.01M LiBrを溶解させたNMP溶液を用い、0.5mL/minの流速で流した。
ポリアニリン溶液の粘度は振動式粘度計(CBC株式会社製、VISCOMATE VM−100A)を用いて25℃にて測定を行った。
【0036】
[合成例1]ポリアニリン溶液1の合成
アニリン21.87g、4−t−ブチルアニリン1.85g及び濃硫酸24.24gを含む水溶液495mLをとり、5℃に保持しながら過硫酸アンモニウム67.8gを含む水溶液169.44mLを75分間で滴下した後、1時間反応させて化学酸化重合によるポリアニリンを得た。
【0037】
次いで、重合反応液に、25質量%アンモニア水108gを加え1時間撹拌した後、ヒドラジン一水和物35.25gを加え、3時間撹拌後、次いで濾別、乾燥することで還元及び脱ドープされたポリアニリン粉末を得た。
【0038】
該ポリアニリン粉末を固形分濃度2質量%になるようNMPに溶解し、ポリアニリン溶液1を得た。このポリアニリン溶液1に含まれるポリアニリンのポリスチレン換算の数平均分子量Mnは2.1×10であり、ポリスチレン換算のピークトップ分子量Mpは4.8×10であった。
粘度計を用いて測定した25℃での粘度は6.7mPa・sであった。
【0039】
[合成例2]ポリアニリン溶液2の合成
アニリン20.73g、4−t−ブチルアニリン3.69g及び濃硫酸24.24gを含む水溶液495mLをとり、5℃に保持しながら過硫酸アンモニウム67.8gを含む水溶液169.44mLを75分間で滴下した後、1時間反応させて化学酸化重合によるポリアニリンを得た。25質量%アンモニア水108gを加え1時間撹拌した後、ヒドラジン一水和物35.25gを加え、3時間撹拌、次いで濾別、乾燥することで還元及び脱ドープされたポリアニリン粉末を得た。該ポリアニリンを固形分濃度2質量%となるようNMPに溶解し、ポリアニリン溶液2を得た。
このポリアニリン溶液2に含まれるポリアニリンのポリスチレン換算の数平均分子量Mnは1.7×10であり、ポリスチレン換算のピークトップの分子量(Mp)は4.1×10であった。
粘度計を用いて測定した25℃での粘度は、5.1mPa・sであった。
【0040】
[合成例3]ポリアニリン溶液3の合成
アニリン17.28g、4−t−ブチルアニリン9.21g及び濃硫酸24.24gを含む水溶液495mLをとり、5℃に保持しながら過硫酸アンモニウム67.8gを含む水溶液169.44mLを75分間で滴下した後、1時間反応させて化学酸化重合によるポリアニリンを得た。25質量%アンモニア水108gを加え1時間撹拌した後、ヒドラジン一水和物35.25gを加え、3時間撹拌、次いで濾別、乾燥することで還元及び脱ドープされたポリアニリン粉末を得た。該還元及び脱ドープされたポリアニリンを固形分濃度2質量%になるようNMPに溶解し、ポリアニリン溶液3を得た。このポリアニリン溶液3に含まれるポリアニリンのポリスチレン換算の数平均分子量Mnは8.2×10であり、ポリスチレン換算のピークトップの分子量Mpは1.2×10であった。粘度計を用いて測定した25℃での粘度は2.8mPa・sであった。
【0041】
[合成例4]比較用ポリアニリン溶液1の調整
アニリン23.0g及び濃硫酸24.24gを含む水溶液495mLを取り、5℃に保持しながら過硫酸アンモニウム67.8gを含む水溶液169.44mLを75分間で滴下した後、1時間反応させて化学酸化重合によるポリアニリンを得た。25質量%アンモニア水108gを加え1時間撹拌した後、ヒドラジン1水和物35.25gを加え、3時間撹拌、次いで濾別、乾燥することで還元及び脱ドープされたポリアニリン粉末を得た。該還元及び脱ドープされたポリアニリンを固形分濃度2質量%になるようNMPに溶解し、比較用ポリアニリン溶液1を得た。
この比較用ポリアニリン溶液1に含まれるポリアニリンのポリスチレン換算の数平均分子量Mnは3.0×10であり、ポリスチレン換算のピークトップの分子量Mpは6.3×10であった。粘度計を用いて測定した25℃での粘度は10.1mPa・sであった。
【0042】
[合成例5]比較用ポリアニリン溶液2の調整
アニリン11.5g、4−t−ブチルアニリン18.4g及び濃硫酸24.24gを含む水溶液495mLをとり、5℃に保持しながら過硫酸アンモニウム67.8gを含む水溶液169.44mLを75分間で滴下した後、1時間反応させて化学酸化重合によるポリアニリンを得た。25質量%アンモニア水108gを加え1時間撹拌した後、ヒドラジン1水和物35.25gを加え、3時間撹拌、次いで濾別、乾燥することで還元及び脱ドープされたポリアニリン粉末を得た。該還元及び脱ドープされたポリアニリンを固形分濃度2質量%になるようNMPに溶解し、比較用ポリアニリン溶液2を得た。この比較用ポリアニリン溶液2に含まれるポリアニリンのポリスチレン換算の数平均分子量Mnは1.3×10であり、ポリスチレン換算のピークトップの分子量Mpは2.3×10であった。粘度計を用いて測定した25℃での粘度は1.9mPa・sであった。
【0043】
(実施例1)
本実施例では陽極用にアルミニウム箔を弁作用金属として使用した。
前記アルミニウム箔表面をエッチングし、粗面化処理を施したエッチドアルミニウム箔(縦2.0mm×5.0mm)を用い、前記エッチドアルミニウム箔に、陽極リードを溶接させた後、アジピン酸二アンモニウム水溶液中、電圧13Vにより化成処理して、前記エッチドアルミニウム箔表面に誘電体酸化皮膜を形成したエッチドアルミニウム箔のコンデンサ素子を準備した。
【0044】
ポリアニリン溶液1中に、先に準備したコンデンサ素子を5分間浸漬した後、温度100℃で、5分間乾燥し、ポリアニリン層を形成させたコンデンサ素子を得た。
【0045】
次に、ステンレス容器中、ピロールモノマー0.4mol/Lと、支持電解質であるブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム0.4mol/Lとの水溶液中に、上記コンデンサを浸漬し、前記ポリアニリン層の一部分に金ワイヤーを接触させて、0.3mAの電流で、40分間電解重合を行い、導電性高分子層1を形成した。
【0046】
次いで、上記コンデンサ素子に、カーボンペースト及び銀ペーストを塗布、乾燥させた。
【0047】
次に、陰極を銀ペースト等により接着し、陽極を溶接で接合することによって、コンデンサ素子をリードフレーム上に固定し、エポキシ樹脂でトランスファーモールドを行い、固体電解コンデンサを完成した。
【0048】
完成したコンデンサについて、120Hzでの静電容量(以下「Cap.」と記す。)を測定した。
また、誘電体酸化皮膜層の形成のみ行った、コンデンサと同サイズの、アルミニウム箔について、アジピン酸二アンモニウム水溶液での静電容量を120Hzで測定した値を基準として、容量出現率の算出を行った。これらの結果を表1に示す。
【0049】
(実施例2)
ポリアニリン溶液として、ポリアニリン溶液2を使用した以外は実施例1と同様にして固体電解コンデンサを作製した。得られた固体電解コンデンサの特性評価結果を表1に示す。
【0050】
(実施例3)
ポリアニリン溶液として、ポリアニリン溶液3を使用した以外は実施例1と同様にして固体電解コンデンサを作製した。得られた固体電解コンデンサの特性評価結果を表1に示す。
【0051】
(実施例4)
電解重合液中に含有させる支持電解質としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いた以外は実施例1と同様にして固体電解コンデンサを作製した。得られた固体電解コンデンサの特性評価結果を表1に示す。
【0052】
(実施例5)
電解重合液中に含有させる支持電解質としてナフタレンスルホン酸ナトリウムを用いた以外は実施例1と同様にして固体電解コンデンサを作製した。得られた固体電解コンデンサの特性評価結果を表1に示す。
【0053】
(実施例6)
実施例1において、ポリアニリン層を形成させたコンデンサ素子をPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)水分散液(アルドリッチ社販売試薬)に5分間浸漬した後、100℃、5分間乾燥し、導電性高分子層1を形成させた以外は実施例1と同様にして固体電解コンデンサを作製した。得られた固体電解コンデンサの特性評価結果を表1に示す。
【0054】
(比較例1)
ポリアニリン溶液として比較用ポリアニリン溶液1を用いた以外は実施例1と同様にして固体電解コンデンサを作製した。固体電解コンデンサの特性評価結果を表1に示す。
【0055】
(比較例2)
ポリアニリン溶液として比較用ポリアニリン溶液2を使用した以外は実施例1と同様にして固体電解コンデンサを作製した。固体電解コンデンサの特性評価結果を表1に示す。
【0056】
(比較例3)
ポリアニリン溶液として比較用ポリアニリン溶液1を使用した以外は実施例6と同様にして固体電解コンデンサを作製した。固体電解コンデンサの特性評価結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
[考察]
本発明のポリアニリン溶液を用いてポリアニリン層を形成した実施例1〜6の固体電解コンデンサは比較例1〜3の固体電解コンデンサと比較して、容量出現率が極めて高い結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、容量出現率が高く、高い容量の固体電解コンデンサを得ることができる。このような固体電解コンデンサは、小型大容量のコンデンサとして、様々なデジタル電子機器に好適に適用することができ、機器の小型化、軽量化に資する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体酸化皮膜が形成された弁作用金属上に導電性高分子層を形成する固体電解コンデンサの製造方法において、
前記導電性高分子層が、
(1)ポリアニリン溶液を弁作用金属に接触、乾燥することによりポリアニリン層を形成する工程、
(2)前記ポリアニリン層上に、導電性高分子層1を形成する工程、
を含み、
前記ポリアニリン溶液に含まれるポリアニリンのポリスチレン換算分子量が、
ピークトップの分子量(Mp)が5.0×10〜5.5×10の範囲、又は、数平均分子量(Mn)が3.0×10〜2.5×10の範囲であることを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項2】
前記導電性高分子層1が、ポリピロール類、ポリアニリン類及びポリチオフェン類からなる群から選ばれる少なくとも1つの導電性高分子重合体であることを特徴とする請求項1に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項3】
前記ポリアニリン溶液の25℃における粘度が、2.0〜8.0mPa・sであることを特徴とする請求項1又は2に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項4】
前記ポリアニリン溶液の濃度が、0.2〜10質量%の濃度であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに1つに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項5】
弁作用金属上に塗布乾燥してポリアニリン層を形成するために使用される固体電解コンデンサ製造用ポリアニリン溶液であって、
前記ポリアニリン溶液中のポリアニリンは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法にて測定されるポリスチレン換算分子量のピークトップ分子量(Mp)が、5000〜55000の間である又は数平均分子量値(Mn)が3000〜25000の間であり、
該ポリアニリンがNMP溶媒に、0.2〜10質量%溶解されてなることを特徴とする固体電解コンデンサ製造用ポリアニリン溶液。
【請求項6】
振動式粘度計よって測定される25℃における粘度が、2.0〜8.0mPa・sであることを特徴とする請求項5に記載の固体電解コンデンサ製造用ポリアニリン溶液。

【公開番号】特開2013−38201(P2013−38201A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172618(P2011−172618)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000228349)日本カーリット株式会社 (269)