説明

固体電解コンデンサ及びその製造方法

【課題】インピーダンスの低い固体電解コンデンサを提供する。
【解決手段】本発明の固体電解コンデンサ10は、弁金属からなる陽極11と、陽極11の表面が酸化されて形成された誘電体層12と、誘電体層12上に形成され、π共役系導電性高分子を含む固体電解質層13aを具備する陰極とを有し、誘電体層12の陰極13側の表面に高導電化剤12aが付着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム電解コンデンサ、タンタル電解コンデンサ、ニオブ電解コンデンサなどの固体電解コンデンサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器のデジタル化に伴い、電子機器に用いられるコンデンサは高周波領域におけるインピーダンス(ESR)を低下させることが要求されている。従来から、この要求に対応すべく、アルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁金属の酸化皮膜を誘電体とし、この表面に、ポリピロールやポリチオフェンなどのπ共役系導電性高分子の膜を形成して陰極とした固体電解コンデンサが使用されている。
【0003】
この固体電解コンデンサの構造は、特許文献1に示されるように、弁金属からなり、表面に凹凸が形成された陽極と、陽極の表面を酸化して形成した誘電体層と、誘電体層に固体電解質層、カーボン層、銀層を積層した陰極とを有するものが一般的である。
π共役系導電性高分子の膜の形成法としては、電解重合法(特許文献2参照)と化学酸化重合法(特許文献3参照)とが広く知られている。
しかし、電解重合法では、陽極表面にマンガン酸化物からなる導電層をあらかじめ形成しておく必要があり、非常に煩雑である上に、マンガン酸化物は導電性が低く、高導電性のπ共役系導電性高分子を使用する効果が薄れるという問題があった。
一方、化学酸化重合法では、重合時間が長く、また、膜の厚みを確保するために繰り返し重合しなければならず、固体電解コンデンサの生産効率が低かった上に、導電性も低かった。
そこで、特許文献4では、スルホ基、カルボキシル基等を持つポリアニオンを共存させながらアニリンを化学酸化重合して水溶性のポリアニリンを調製し、そのポリアニリン水溶液を塗布、乾燥して塗膜を形成する方法が提案されている。
【特許文献1】特開2003−37024号公報
【特許文献2】特開昭63−158829号公報
【特許文献3】特開昭63−173313号公報
【特許文献4】特開平7−105718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献4に記載のポリアニリン溶液の塗膜を固体電解質層としたコンデンサは、上記電解重合法や化学酸化重合法と同等のインピーダンスを得ることが困難であった。
本発明は、インピーダンスの低い固体電解コンデンサを提供することを目的とする。また、インピーダンスの低い固体電解コンデンサを簡便に製造できる固体電解コンデンサの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、ポリアニリン溶液の塗膜を固体電解質層とした場合、誘電体層と固体電解質層との電気的親和性が低いため、コンデンサのインピーダンスが低くなることを見出した。そして、その知見に基づいてさらに検討して、以下の固体電解コンデンサ及びその製造方法を提供することを発明した。
本発明の固体電解コンデンサは、弁金属からなる陽極と、該陽極の表面が酸化されて形成された誘電体層と、該誘電体層上に形成され、π共役系導電性高分子を含む固体電解質層を具備する陰極とを有する固体電解コンデンサにおいて、
誘電体層の陰極側の表面に高導電化剤が付着していることを特徴とする。
本発明の固体電解コンデンサにおいては、陰極の固体電解質層が中和剤を含有することが好ましい。
本発明の固体電解コンデンサの製造方法は、弁金属からなる陽極の表面を酸化して誘電体層を形成する誘電体層形成工程と、
誘電体層の表面に高導電化剤を塗布する高導電化剤塗布工程と、
高導電化剤を塗布した誘電体層表面上に、π共役系導電性高分子を含む固体電解質層を形成する固体電解質層形成工程とを有することを特徴とする。
本発明の固体電解コンデンサの製造方法における固体電解質層形成工程では、高導電化剤を塗布した誘電体層表面上に、溶媒中にπ共役系導電性高分子が含まれる導電性高分子溶液を塗布することが好ましい。
本発明の固体電解コンデンサの製造方法においては、固体電解質層形成工程にて形成する固体電解質層が中和剤を含有することが好ましい。
固体電解質層が中和剤を含有する場合、固体電解質層形成工程では、高導電化剤を塗布した誘電体層表面上に、溶媒中にπ共役系導電性高分子および中和剤が含まれる導電性高分子溶液を塗布することが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の固体電解コンデンサは、インピーダンスが低い。
本発明のコンデンサの製造方法によれば、インピーダンスの低い固体電解コンデンサを簡便に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の固体電解コンデンサ(以下、コンデンサと略す。)の一実施形態例について説明する。
(コンデンサ)
図1は、本実施形態例のコンデンサの構成を示す図である。このコンデンサ10は、弁金属からなる陽極11と、陽極11の表面が酸化されて形成された誘電体層12と、誘電体層12上に形成された陰極13とを有して概略構成されている。
【0008】
<陽極>
陽極11をなす弁金属としては、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモンなどが挙げられる。これらのうち、アルミニウム、タンタル、ニオブが好適である。
陽極11の具体例としては、アルミニウム箔をエッチングして表面積を増加させた後、その表面を酸化処理したものや、タンタル粒子やニオブ粒子の焼結体表面を酸化処理して多孔質状ペレットにしたものが挙げられる。このように処理されたものは表面に凹凸が形成されている。
【0009】
<誘電体層>
誘電体層12は、例えば、アジピン酸アンモニウム水溶液などの電解液中にて、陽極11の表面を陽極酸化することで形成されたものである。よって、図1に示すように、誘電体層12は陽極11表面の凹凸に沿って形成されている。
【0010】
また、誘電体層12の陰極13側の表面には、π共役系導電性高分子に作用して固体電解質層13aの導電性を向上させる高導電化剤12aが付着している。
高導電化剤12aとしては、(a)アミド化合物、(b)窒素含有芳香環化合物、(c)2個以上のヒドロキシル基を有するヒドロキシル基含有芳香族性化合物、(d)グリシジル基を有する化合物、(e)アリル基、ビニルエーテル基、メタクリル基、アクリル基、メタクリルアミド基、アクリルアミド基から選ばれる1種とヒドロキシル基とを有する化合物、(f)高導電化有機溶剤が挙げられる。これらは、1種で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0011】
(a)アミド化合物
アミド化合物の具体例としては、アセトアミド、マロンアミド、スクシンアミド、マレアミド、フマルアミド、ベンズアミド、ナフトアミド、フタルアミド、イソフタルアミド、テレフタルアミド、ニコチンアミド、イソニコチンアミド、2−フルアミド、ホルムアミド、プロピオンアミド、プロピオルアミド、ブチルアミド、イソブチルアミド、メタクリルアミド、パルミトアミド、ステアリルアミド、オレアミド、オキサミド、グルタルアミド、アジプアミド、シンナムアミド、グルコールアミド、ラクトアミド、グリセルアミド、タルタルアミド、シトルアミド、グリオキシルアミド、プルブアミド、アセトアセトアミド、ベンジルアミド、アントラニルアミド、エチレンジアミンテトラアセトアミド、ジアセトアミド、トリアセトアミド、ジベンズアミド、トリベンズアミド、ローダニン、尿素、1−アセチル−2−チオ尿素、ビウレット、ブチル尿素、ジブチル尿素、1,3−ジメチル尿素、1,3−ジエチル尿素及びこれらの誘導体等が挙げられる。
アミド化合物の分子量は46〜5,000であることが好ましく、46〜1,000であることがより好ましく、46〜500であることが特に好ましい。
【0012】
アミド化合物としては、導電性がより高くなることから、イミド結合を有する単分子化合物(以下、イミド化合物という。)が好ましい。イミド化合物としては、その骨格より、フタルイミド及びフタルイミド誘導体、スクシンイミド及びスクシンイミド誘導体、ベンズイミド及びベンズイミド誘導体、マレイミド及びマレイミド誘導体、ナフタルイミド及びナフタルイミド誘導体などが挙げられる。
【0013】
また、イミド化合物は両末端の官能基の種類によって、脂肪族イミド、芳香族イミド等に分類されるが、溶解性の観点からは、脂肪族イミドが好ましい。
さらに、脂肪族イミド化合物は、分子内の炭素間に不飽和結合を有する飽和脂肪族イミド化合物と、分子内の炭素間に不飽和結合を有する不飽和脂肪族イミド化合物とに分類される。
飽和脂肪族イミド化合物は、R−CO−NH−CO−Rで表される化合物であり、R,Rの両方が飽和炭化水素である化合物である。具体的には、シクロヘキサン−1,2−ジカルボキシイミド、アラントイン、ヒダントイン、バルビツル酸、アロキサン、グルタルイミド、スクシンイミド、5−ブチルヒダントイン酸、5,5−ジメチルヒダントイン、1−メチルヒダントイン、1,5,5−トリメチルヒダントイン、5−ヒダントイン酢酸、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、グルタルイミド、セミカルバジド、α,α−ジメチル−6−メチルスクシンイミド、ビス[2−(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン、α−メチル−α−プロピルスクシンイミド、シクロヘキシルイミドなどが挙げられる。
不飽和脂肪族イミド化合物は、R−CO−NH−CO−Rで表される化合物であり、R,Rの一方又は両方が1つ以上の不飽和結合である化合物である。具体例は、1,3−ジプロピレン尿素、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−ヒドロキシマレイミド、1,4−ビスマレイミドブタン、1,6−ビスマレイミドヘキサン、1,8−ビスマレイミドオクタン、N−カルボキシヘプチルマレイミドなどが挙げられる。
【0014】
イミド化合物の分子量は60〜5,000であることが好ましく、70〜1,000であることがより好ましく、80〜500であることが特に好ましい。
【0015】
(b)窒素含有芳香環化合物
窒素含有芳香環化合物としては、窒素が芳香環に含まれる化合物であれば、芳香環に置換基が導入されていなくとも、置換されていても好適に使用することができる。また、芳香環にさらに芳香環が縮合された多環系芳香環も好適に使用することができる。前記置換基としては、アルキル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、フェニル基、フェノール基、エステル基、アルコキシル基、カルボニル基等が挙げられる。
【0016】
窒素含有芳香環化合物としては、例えば、一つの窒素原子を含有するピリジン及びその誘導体、二つの窒素原子を含有するイミダゾール及びその誘導体、ピリミジン及びその誘導体、ピラジン及びその誘導体、三つの窒素原子を含有するトリアジン及びその誘導体等が挙げられる。溶媒溶解性等の観点から、ピリジン及びその誘導体、イミダゾール及びその誘導体、ピリミジン及びその誘導体が好ましい。
【0017】
ピリジンの誘導体の具体例としては、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、4−エチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、3−シアノ−5−メチルピリジン、2−ピリジンカルボン酸、6−メチル−2−ピリジンカルボン酸、2,6−ピリジン−ジカルボン酸、4−ピリジンカルボキシアルデヒド、4−アミノピリジン、2,3−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノ−4−メチルピリジン、4−ヒドロキシピリジン、2,6−ジヒドロキシピリジン、6−ヒドロキシニコチン酸メチル、2−ヒドロキシ−5−ピリジンメタノール、6−ヒドロキシニコチン酸エチル、4−ピリジンメタノール、4−ピリジンエタノール、2−フェニルピリジン、3−メチルキノリン、3−エチルキノリン、キノリノール、2,3−シクロペンテノピリジン、2,3−シクロヘキサノピリジン、1,2−ジ(4−ピリジル)エタン、1,2−ジ(4−ピリジル)プロパン、2−ピリジンカルボキシアルデヒド、2−ピリジンカルボン酸、2−ピリジンカルボニトリル、2,3−ピリジンジカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸、3−ピリジンスルホン酸等が挙げられる。
【0018】
イミダゾールの誘導体の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、1−アセチルイミダゾール、4,5−イミダゾールジカルボン酸、4,5−イミダゾールジカルボン酸ジメチル、ベンズイミダゾール、2−アミノべンズイミダゾール、2−アミノべンズイミダゾール−2−スルホン酸、2−アミノ−1−メチルべンズイミダゾール、2−ヒドロキシべンズイミダゾール、2−(2−ピリジル)べンズイミダゾール等が挙げられる。
【0019】
ピリミジンの誘導体の具体例としては、2−アミノ−4−クロロ−6−メチルピリミジン、2−アミノ−6−クロロ−4−メトキシピリミジン、2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン、2−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン、2−アミノ−4,6−ジメチルピリミジン、2−アミノ−4,6−ジメトキシピリミジン、2−アミノピリミジン、2−アミノ−4−メチルピリミジン、4,6−ジヒドロキシピリミジン、2,4−ジヒドロキシピリミジン−5−カルボン酸、2,4,6−トリアミノピリミジン、2,4−ジメトキシピリミジン、2,4,5−トリヒドロキシピリミジン、2,4−ピリミジンジオール等が挙げられる。
【0020】
ピラジンの誘導体の具体例としては、ピラジン、2−メチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、ピラジンカルボン酸、2,3−ピラジンジカルボン酸、5−メチルピラジンカルボン酸、ピラジンアミド、5−メチルピラジンアミド、2−シアノピラジン、アミノピラジン、3−アミノピラジン−2−カルボン酸、2−エチル−3−メチルピラジン、2−エチル−3−メチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、2,3−ジエチルピラジン等が挙げられる。
【0021】
トリアジンの誘導体の具体例としては、1,3,5−トリアジン、2−アミノ−1,3,5−トリアジン、3−アミノ−1,2,4−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(トリフルオロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリ−2−ピリジン−1,3,5−トリアジン、3−(2−ピリジン)−5,6−ビス(4−フェニルスルホン酸)−1,2,4―トリアジン二ナトリウム、3−(2−ピリジン)−5,6−ジフェニル−1,2,4−トリアジン、3−(2−ピリジン)−5,6−ジフェニル−1,2,4―トリアジン−ρ,ρ’−ジスルホン酸二ナトリウム、2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0022】
(c)2個以上のヒドロキシル基を有するヒドロキシル基含有芳香族性化合物
2個以上のヒドロキシル基を有するヒドロキシル基含有芳香族性化合物は、芳香族環に、ヒドロキシル基が2個以上置換されているものである。例えば、1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、2,3−ジヒドロキシ−1−ペンタデシルベンゼン、2,4−ジヒドロキシアセトフェノン、2,5−ジヒドロキシアセトフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,6−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルスルフォン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、ヒドロキシキノンカルボン酸及びその塩類、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、1,4−ヒドロキノンスルホン酸及びその塩類、4,5−ヒドロキシベンゼン−1,3−ジスルホン酸及びその塩類、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン−2,6−ジカルボン酸、1,6−ジヒドロキシナフタレン−2,5−ジカルボン酸、1,5−ジヒドロキシナフトエ酸、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル、4,5−ジヒドロキシナフタレン−2,7−ジスルホン酸及びその塩類、1,8−ジヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸及びその塩類、6,7−ジヒドロキシ−2−ナフタレンスルホン酸及びその塩類、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン(ピロガロール)、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、5−メチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−エチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−プロピル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシ安息香酸、トリヒドロキシアセトフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾアルデヒド、トリヒドロキシアントラキノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゼン、テトラヒドロキシ−p−ベンゾキノン、テトラヒドロキシアントラキノン等が挙げられる。
ヒドロキシル基含有芳香族性化合物の中でも、導電性の点からは、π共役系導電性高分子にドーピングしうる、アニオン基であるスルホ基及び/又はカルボキシル基を有する化合物がより好ましい。
【0023】
(d)グリシジル基を有する化合物
グリシジル基を有する化合物としては、下記(d−1)〜(d−3)の化合物が挙げられる。
(d−1):グリシジル基と、アリル基、ビニルエーテル基、メタクリル基、アクリル基、メタクリルアミド基、アクリルアミド基から選ばれる1種とを有する化合物(以下、化合物(d−1)という。)。
(d−2):グリシジル基を2つ以上有する化合物(以下、化合物(d−2)という。)。
(d−3):グリシジル基を1つ有する化合物であって、化合物(d−1)以外の化合物(以下、化合物(d−3)という。)。
【0024】
化合物(d−1)のうち、グリシジル基とアクリル(メタクリル)基を有する化合物として、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
グリシジル基とアリル基を有する化合物として、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、アリルフェノールグリシジルエーテル等が挙げられる。
グリシジル基とヒドロキシル基とを有する化合物として、1,4−ジヒドロキシメチルベンゼンジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
グリシジル基とヒドロキシル基とアリル基とを有する化合物として、3−アリル−1,4−ジヒドロキシメチルベンゼンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0025】
化合物(d−2)としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ダイマー酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジル、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ジグリシジルテトラフタレート等が挙げられ1種類または2種類以上の混合として用いることができる。
【0026】
化合物(d−3)としては、例えば、アルキルグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0027】
(e)アリル基、ビニルエーテル基、メタクリル基、アクリル基、メタクリルアミド基、アクリルアミド基から選ばれる1種と、ヒドロキシル基とを有する化合物
アリル基、ビニルエーテル基、メタクリル基、アクリル基、メタクリルアミド基、アクリルアミド基から選ばれる1種と、ヒドロキシル基とを有する化合物のうち、例えば、ヒドロキシル基とビニルエーテル基とを有する化合物としては、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等が挙げられる。
ヒドロキシル基とアクリル(メタクリル)基を有する化合物としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート(メタクリレート)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(メタクリレート)、4−ヒドロキシブチルアクリレート(メタクリレート)、エチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート、ジペンタエリストリトールモノヒドロキシペンタアクリレート等が挙げられる。
ヒドロキシル基とアクリルアミド(メタクリルアミド)基を有する化合物としては、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリルアミドが挙げられる。
【0028】
(f)高導電化有機溶剤
高導電化有機溶剤としては特に限定されず、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホルトリアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等の極性溶媒、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、D−グルコース、D−グルシトール、イソプレングリコール、ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール等の多価脂肪族アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類、ギ酸、酢酸等のカルボン酸、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル類、3−メチル−2−オキサゾリジノン等の複素環化合物、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上の混合物としてもよいし、他の溶媒との混合物としてもよい。
【0029】
<陰極>
陰極13は、固体電解質層13aと、固体電解質層13a上に形成されたカーボン、銀、アルミニウムなどからなる陰極導電層13bとを具備するものであり、固体電解質層13aは、π共役系導電性高分子を含有する層であり、誘電体層12側に形成されている。
【0030】
[π共役系導電性高分子]
π共役系導電性高分子は、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば使用できる。例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、及びこれらの共重合体等が挙げられる。
【0031】
このようなπ共役系導電性高分子の具体例としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブテンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等が挙げられる。
【0032】
これらの中でも、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)から選ばれる1種又は2種からなる(共)重合体が抵抗値、反応性の点から好適に用いられる。さらには、ポリピロール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)は、導電性がより高い上に、耐熱性が向上する点から、より好ましい。
また、π共役系導電性高分子が置換基を有し、置換基が炭素数6以上のアルキル基であれば、後述するポリアニオンを用いることなく溶剤溶解性を付与できるため好ましい。また、置換基がアニオン基を有する場合には、π共役系導電性高分子が水溶性になるため好ましい。
【0033】
上記π共役系導電性高分子は、溶媒中、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを、酸化剤又は酸化重合触媒の存在下で化学酸化重合することによって容易に得ることができる。
その際に使用される前駆体モノマーとしては、例えば、ピロール類及びその誘導体、チオフェン類及びその誘導体、アニリン類及びその誘導体等が挙げられる。
酸化剤としては、前記前駆体モノマーを酸化させてπ共役系導電性高分子を得ることができるものであればよく、例えば、ぺルオキソ二硫酸アンモニウム(過硫酸アンモニウム)、ぺルオキソ二硫酸ナトリウム(過硫酸ナトリウム)、ぺルオキソ二硫酸カリウム(過硫酸カリウム)等のぺルオキソ二硫酸塩、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物、三フッ化ホウ素、塩化アルミニウムなどの金属ハロゲン化合物、酸化銀、酸化セシウム等の金属酸化物、過酸化水素、オゾン等の過酸化物、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、酸素等が挙げられる。
【0034】
π共役系導電性高分子の製造で使用する溶媒としては特に制限されず、前記前駆体モノマーを溶解又は分散しうる溶媒であり、酸化剤の酸化力を維持させることができるものであればよく、水及び/又は有機溶剤が使用される。有機溶剤としては、上述した高導電化有機溶剤を用いることができる。
【0035】
[中和剤]
陰極13の固体電解質層13aには、誘電体層12の腐食を防止してコンデンサのインピーダンスをより低くできることから、中和剤が含まれていることが好ましい。
ここで、中和剤としては、アルカリが挙げられる。アルカリとしては特に限定されず、公知の無機アルカリや有機アルカリを使用できる。無機アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニアなどが挙げられる。また、有機アルカリとしては、例えば、エチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、トリエチルアミン等の脂肪族アミン、アニリン、ベンジルアミン、ピロール、ピリジン及びその誘導体、イミダゾール及びその誘導体、ピリミジン及びその誘導体、ピラジン及びその誘導体、トリアジン及びその誘導体などの芳香族アミンもしくはこれらの誘導体、N−メチル−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチレンホスホルトリアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等の窒素含有化合物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、カルシウムアルコキシド等の金属アルコキシド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
これらの中でも、弱塩基の脂肪族アミン、芳香族アミン、金属アルコキシドが好ましい。
なお、ピリジンの誘導体、イミダゾールの誘導体、ピリミジンの誘導体、ピラジンの誘導体、トリアジンの誘導体の具体例としては、高導電化剤として使用できるものと同じものが挙げられる。
【0036】
固体電解質層13a中のπ共役系導電性高分子の含有量は、1質量%以上であることが好ましく、5質量%がより好ましい。
また、固体電解質層13a中に中和剤を含む場合、中和剤の含有量は、0.01〜500質量%であることが好ましい。固体電解質層13a中の中和剤の含有量が0.01質量%以上であれば、インピーダンスがより向上する。ただし、500質量%を超えると、π共役系導電性高分子の含有量が不足するため、導電性が低下してインピーダンスが低下する傾向にある。
【0037】
陰極13の陰極導電層13bは、例えば、カーボン、銀、アルミニウム等で構成することができる。カーボン、銀等で構成された陰極導電層13bは、カーボン、銀等の導電体を含む導電性ペーストから形成することができる。また、アルミニウムで構成された陰極導電層13bは、アルミニウム箔から形成することができる。
また、固体電解質層13aと陰極導電層13bとの間には、必要に応じて、セパレータを配置してもよい。
【0038】
以上説明したコンデンサ10は、誘電体層12表面に高導電化剤12aが付着しているため、誘電体層12と陰極13の固体電解質層13aとの界面の接触抵抗が低く、電気的親和性が高くなっている。その結果、誘電体層12と陰極13との界面の電気抵抗が小さくなるため、コンデンサ10のインピーダンスが低くなり、しかも容量が高くなる。
【0039】
(コンデンサの製造方法)
次に、本発明のコンデンサの製造方法の一実施形態例について説明する。
本実施形態例のコンデンサの製造方法では、まず、誘電体層形成工程にて、弁金属からなる陽極の表面を酸化して誘電体層を形成する。
陽極表面を酸化する方法としては、例えば、アジピン酸アンモニウム水溶液などの電解液中にて陽極表面を陽極酸化する方法などが挙げられる。
【0040】
次いで、高導電化剤塗布工程にて、誘電体層の表面に高導電化剤を塗布する。
誘電体層表面に高導電化剤を塗布する方法としては、コーティング、浸漬、スプレーなどの公知の塗布方法を採ることができる。高導電化剤が固体である場合には、高導電化剤を溶媒で溶解して高導電化剤溶液を調製し、これを塗布すればよい。ただし、その場合には、高導電化剤溶液塗布後、溶媒を除去するために乾燥することが好ましい。
高導電化剤溶液の濃度としては、1〜80質量%であることが好ましく、5〜50質量%であることがより好ましい。高導電化剤濃度が前記下限未満であると、高導電化剤を塗布する効果が低くなる傾向にあり、前記上限を超えると塗布しにくくなったり、インピーダンスが低くなったりする傾向にある。
【0041】
次いで、固体電解質層形成工程にて、高導電化剤が塗布した誘電体層表面上に、溶媒中にπ共役系導電性高分子を含む導電性高分子溶液を塗布して固体電解質層を形成する。
ここで、導電性高分子溶液は、例えば、溶媒及びポリアニオンの存在下でπ共役系導電性高分子の前駆体モノマーを重合することにより得られる。また、溶媒溶解性を有するπ共役系導電性高分子を溶媒に溶解することにより得られる。
ポリアニオンの存在下でπ共役系導電性高分子の前駆体モノマーを重合する具体例としては、まず、ポリアニオンを、これを溶解可能な溶媒に溶解し、得られた溶液にπ共役系導電性高分子の前駆体モノマーを添加する。次いで、酸化剤を添加して前駆体モノマーを重合させた後、余剰の酸化剤や前駆体モノマーを分離、精製して導電性高分子溶液を得る。
【0042】
この際に用いられるポリアニオンは、置換若しくは未置換のポリアルキレン、置換若しくは未置換のポリアルケニレン、置換若しくは未置換のポリイミド、置換若しくは未置換のポリアミド、置換若しくは未置換のポリエステルから選ばれた単独重合体または共重合体であって、アニオン基を有する構成単位を有し、必要に応じてアニオン基を有さない構成単位を有するものである。
なお、ポリアニオンは、π共役系導電性高分子を溶媒に可溶化させるだけでなく、π共役系導電性高分子のドーパントとしても機能する。
【0043】
ここで、ポリアルキレンとは、主鎖がメチレンの繰り返しで構成されているポリマーである。
ポリアルケニレンとは、主鎖に不飽和結合(ビニル基)が1個以上含まれる構成単位からなるポリマーである。これらの中でも、不飽和結合とπ共役系導電性高分子との相互作用があること、置換若しくは未置換のブタジエンを出発物質として合成しやすいことから、置換若しくは未置換のブテニレンが好ましい。
【0044】
ポリイミドとしては、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−テトラカルボキシジフェニルエーテル二無水物、2,2’−[4,4’−ジ(ジカルボキシフェニルオキシ)フェニル]プロパン二無水物等の無水物とオキシジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン等のジアミンとからのポリイミドが挙げられる。
ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10等が挙げられる。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0045】
ポリアニオンが置換基を有する場合、その置換基としては、アルキル基、ヒドロキシル基、アミノ基、シアノ基、フェニル基、フェノール基、エステル基、アルコキシル基、カルボニル基等が挙げられる。溶媒への溶解性、耐熱性及び樹脂への相溶性等を考慮すると、アルキル基、ヒドロキシル基、フェノール基、エステル基が好ましい。
アルキル基は、極性溶媒又は非極性溶媒への溶解性及び分散性、樹脂への相溶性及び分散性等を高くすることができ、ヒドロキシル基は、他の水素原子等との水素結合を形成しやすくでき、有機溶剤への溶解性、樹脂への相溶性、分散性、接着性を高くすることができる。また、シアノ基及びヒドロキシフェニル基は、極性樹脂への相溶性、溶解性を高くすることができ、しかも、耐熱性も高くすることができる。
上記置換基の中では、アルキル基、ヒドロキシル基、エステル基、シアノ基が好ましい。
【0046】
前記アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル等の鎖状アルキル基、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のシクロアルキル基が挙げられる。有機溶剤への溶解性、樹脂への分散性、立体障害等を考慮すると、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましい。
前記ヒドロキシル基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したヒドロキシル基又は他の官能基を介在して結合したヒドロキシル基が挙げられる。他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基等が挙げられる。ヒドロキシル基はこれらの官能基の末端又は中に置換されている。これらの中では樹脂への相溶及び有機溶剤への溶解性から、主鎖に結合した炭素数1〜6のアルキル基の末端に結合したヒドロキシル基がより好ましい。
前記エステル基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したアルキル系エステル基、芳香族系エステル基、他の官能基を介在してなるアルキル系エステル基又は芳香族系エステル基が挙げられる。
シアノ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したシアノ基、ポリアニオンの主鎖に結合した炭素数1〜7のアルキル基の末端に結合したシアノ基、ポリアニオンの主鎖に結合した炭素数2〜7のアルケニル基の末端に結合したシアノ基等を挙げることができる。
【0047】
ポリアニオンのアニオン基としては、π共役系導電性高分子への化学酸化ドープが起こりうる官能基であればよいが、中でも、製造の容易さ及び安定性の観点からは、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシル基、スルホ基等が好ましい。さらに、官能基のπ共役系導電性高分子へのドープ効果の観点より、スルホ基、一置換硫酸エステル基がより好ましい。
【0048】
ポリアニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
これらのうち、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸は、熱エネルギーを吸収して自ら分解することにより、π共役系導電性高分子の熱分解を緩和することができる。したがって、耐熱性、耐環境性に優れる。
【0049】
導電性高分子溶液には、π共役系導電性高分子の導電性を向上させるために、ポリアニオン以外のドーパントを添加してもよい。
ドーパントとしては、ハロゲン化合物、ルイス酸、プロトン酸などが用いられ、具体的には、有機カルボン酸、有機スルホン酸等の有機酸、有機シアノ化合物、フラーレン、水素化フラーレン、水酸化フラーレン、カルボン酸化フラーレン、スルホン酸化フラーレンなどが挙げられる。
【0050】
有機酸としては、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルナフタレンジスルホン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン重縮合物、ナフタレンジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、ジナフチルメタンジスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、アントラキノンジスルホン酸、アントラセンスルホン酸、ピレンスルホン酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸などが挙げられる。また、これらの金属塩も使用できる。
有機シアノ化合物としては、共役結合に二つ以上のシアノ基を含む化合物が使用できる。例えば、テトラシアノエチレン、テトラシアノエチレンオキサイド、テトラシアノベンゼン、ジクロロジシアノベンゾキノン(DDQ)、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノアザナフタレン等が挙げられる。
【0051】
π共役系導電性高分子とドーパントとの割合は、モル比としてπ共役系導電性高分子:ドーパントが97:3〜10:90であることが好ましい。ドーパントがこれより多くても少なくても導電性が低下する傾向にある。
【0052】
導電性高分子溶液に含まれる溶媒としては、π共役系導電性高分子の製造の際に使用される溶媒と同じものを使用できる。溶媒の中でも、環境負荷が小さいことから、水またはアルコール系溶媒が好ましい。
【0053】
上記導電性高分子溶液の塗布方法としては、例えば、コーティング、浸漬、スプレーなどの公知の手法が挙げられる。また、溶媒を除去するための乾燥方法としては、熱風乾燥など公知の手法が挙げられる。
【0054】
固体電解質層を形成した後には、必要に応じて電解液を浸透させ、次いで、カーボンペースト、銀ペーストを塗布して陰極導電層を形成する方法や、セパレータを介してアルミニウム箔などの陰極導電層を配置する方法により陰極を形成して、コンデンサを得ることができる。
セパレータを用いる場合には、セパレータとして、セルロース繊維、ガラス繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などの単一または混合不織布、これらを炭化した炭化不織布などが用いられる。
【0055】
上述したコンデンサの製造方法では、誘電体層表面に高導電化剤を塗布することにより、誘電体層と固定電解質層との電気的親和性を向上させることができ、コンデンサのインピーダンスを低くすることができる。しかも、高導電化剤の塗布は簡便であるため、上述したコンデンサの製造方法によれば、インピーダンスの低いコンデンサを簡便に製造できる。
しかも、上記製造方法では、固体電解質層を導電性高分子溶液の塗布によって形成しているため、固体電解質層を簡便に形成できる上に、誘電体層と陰極との電気的親和性をより高くできる。
さらに、この製造方法により得られたコンデンサは、容量が高く、耐熱性に優れる
【0056】
なお、本発明は、上述した実施形態例に限定されない。上述した実施形態例では、固体電解質層を形成した後に陰極導電層を設けることにより陰極を形成してコンデンサを得たが、本発明では、陰極導電層を設けるタイミングはこれに限定されない。例えば、陰極導電層を誘電体層に対向するように配置した後に、誘電体層の表面に高導電化剤を塗布し、次いで、固体電解質層を形成してもよい。その場合には、陰極導電層と誘電体層との間にセパレータを配置することが好ましい。
また、高導電化剤は誘電体層表面のみならず、陰極導電層の誘電体層側の表面や、セパレータにも塗布されていても構わない。さらには、高導電化剤と導電性高分子溶液を交互に塗布して誘電体層内部にも高導電化剤を存在させてもよい。
【0057】
また、上述した実施形態例では、固体電解質層を導電性高分子溶液の塗布により形成したが、誘電体層上で、π共役系導電性高分子の前駆体モノマーを電解重合法や化学酸化重合法により重合して形成してもよい。
さらに、本発明は、弁金属からなる陽極に凹凸が形成されていない場合でも適用できる。
【実施例】
【0058】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。
(実施例1)
(1)導電性高分子溶液の調製
14.2g(0.1mol)の3,4−エチレンジオキシチオフェンと、27.5g(0.15mol)のポリスチレンスルホン酸(分子量;約150,000)を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。
これにより得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64g(0.13mol)の過硫酸アンモニウムと8.0g(0.02mol)の硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とを添加し、3時間攪拌して反応させた。
得られた反応液を透析して、未反応モノマー、酸化剤を除去して約1.5質量%のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を含む導電性高分子溶液を得た。
(2)高導電化剤溶液の調製
蒸留水100mlに7.79gのイミダゾールを溶解させて、高導電化剤溶液であるイミダゾール溶液を得た。
【0059】
(3)コンデンサの製造
エッチドアルミニウム箔(陽極箔)に陽極リード端子を接続した後、アジピン酸アンモニウム10質量%水溶液中で化成(酸化処理)して、アルミニウム箔の両面に誘電体層を形成して陽極箔を得た。
次に、陽極箔の両面に、陰極リード端子を溶接させた対向アルミニウム陰極箔を、セルロース製のセパレータを介して積層し、これを円筒状に巻き取ってコンデンサ素子を得た。
次いで、(2)で調製した高導電化剤溶液にコンデンサ素子を、減圧下で浸漬した後、120℃の熱風乾燥機により2分間乾燥し、続いて、(1)で調製した導電性高分子溶液にコンデンサ素子を減圧下で浸漬した後、150℃の熱風乾燥機で10分間乾燥した。そして、導電性高分子溶液への浸漬を5回繰り返して、誘電体層表面上に、π共役系導電性高分子を含む固体電解質層を形成させた。
次いで、アルミニウム製のケースに、固体電解質層が形成されたコンデンサ素子を装填し、封口ゴムで封止して、コンデンサを作製した。
作製したコンデンサについて、LCZメータ2345(エヌエフ回路設計ブロック社製)を用いて、120Hzでの静電容量、100kHzでの等価直列抵抗(ESR)の初期値、125℃、1000時間後のESRを測定した。なお、ESRはインピーダンスの指標となる。
【0060】
【表1】

【0061】
(実施例2)
高導電化剤溶液として、イミダゾール溶液の代わりに、メチルエチルケトン100mlに5gの1,2,3−トリヒドロキシベンゼンを溶解させて得た溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にしてコンデンサを得た。そして、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1に示す。
【0062】
(実施例3)
導電性高分子溶液に、中和剤である0.5gのジメチルアミンを添加したこと以外は実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1に示す。
【0063】
(実施例4)
導電性高分子溶液に、2.5gのイミダゾールを添加したこと以外は実施例1と同様にしてコンデンサを得た。そして、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1に示す。
【0064】
(比較例1)
実施例1のコンデンサの作製において、高導電化剤溶液にコンデンサ素子を浸漬しなかったこと以外は実施例1と同様にしてコンデンサを作製した。そして、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1に示す。
【0065】
誘電体層表面に高導電化剤を塗布した実施例1〜4のコンデンサは、静電容量が高く、ESR(インピーダンス)が低かった。しかも、加熱後のESRの低下が防止されており、耐熱性にも優れていた。
これに対し、誘電体層表面に高導電化剤を塗布しなかった比較例1のコンデンサは、静電容量が低く、ESR(インピーダンス)が高かった。しかも、加熱後のESRが大幅に上昇しており、耐熱性が低かった。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明のコンデンサにおける一実施形態例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0067】
10 コンデンサ
11 陽極
12 誘電体層
12a 高導電化剤
13 陰極
13a 固体電解質層
13b 陰極導電層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁金属からなる陽極と、該陽極の表面が酸化されて形成された誘電体層と、該誘電体層上に形成され、π共役系導電性高分子を含む固体電解質層を具備する陰極とを有する固体電解コンデンサにおいて、
誘電体層の陰極側の表面に高導電化剤が付着していることを特徴とする固体電解コンデンサ。
【請求項2】
陰極の固体電解質層が中和剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項3】
弁金属からなる陽極の表面を酸化して誘電体層を形成する誘電体層形成工程と、
誘電体層の表面に高導電化剤を塗布する高導電化剤塗布工程と、
高導電化剤を塗布した誘電体層表面上に、π共役系導電性高分子を含む固体電解質層を形成する固体電解質層形成工程とを有することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項4】
固体電解質層形成工程では、高導電化剤を塗布した誘電体層表面上に、溶媒中にπ共役系導電性高分子が含まれる導電性高分子溶液を塗布することを特徴とする請求項3に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項5】
固体電解質層形成工程にて形成する固体電解質層が中和剤を含有することを特徴とする請求項3に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項6】
固体電解質層形成工程では、高導電化剤を塗布した誘電体層表面上に、溶媒中にπ共役系導電性高分子および中和剤が含まれる導電性高分子溶液を塗布することを特徴とする請求項5に記載の固体電解コンデンサの製造方法。


【図1】
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【公開番号】特開2007−180259(P2007−180259A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−376776(P2005−376776)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)