説明

固体電解コンデンサ及びその製造方法

【課題】漏れ電流を低減した固体電解コンデンサ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の固体電解コンデンサにおいて、陽極1は、他端面1a側の角部Kb近傍の領域である第1領域Aと、陽極1の側面1cの中央近傍の領域である第2領域Bと、陽極リード2が埋め込まれた陽極1内部の領域である第3領域Cと、を有し、第1領域Aにおける誘電体層3の厚みは、第2領域B及び第3領域Cにおける誘電体層3の厚みよりも厚いことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解コンデンサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の固体電解コンデンサの断面構成を図12に示す。
【0003】
従来、固体電解コンデンサ120は、同図に示すように、弁作用金属からなる陽極101と、陽極101に一端部102aが埋設し、他端部102bが陽極101の一端面101aから突出するように設けられた陽極リード102と、陽極101及び陽極リード102の一部を陽極酸化することにより形成された誘電体層103と、誘電体層103上に形成された電解質層104と、電解質層104上に形成された陰極引出層105とからなるコンデンサ素子を有する。陽極101と陽極リード102とは、陽極リード102を他端部102bが突出するように弁作用金属からなる粉末体に陽極リード102を埋め込み、直方体の外形を有する陽極101を成形し、焼結することにより結合し一体化している。
【0004】
陽極リード102の他端部102bには陽極端子107が取り付けられ、陰極引出層105上の一部には、導電性接着材108により陰極端子109が取り付けられている。陽極端子107及び陰極端子109が固定された状態でこのコンデンサ素子を樹脂形成型に設置し、樹脂外装体111により封止するモールド工程により、固体電解コンデンサ120が形成されている。
【0005】
このような固体電解コンデンサ120において、陽極101のうち、陽極リード102が突出している陽極101の一端面101a近傍の領域100αは、陽極端子107の取り付け時や、モールド工程等の組立工程において、陽極リード102や樹脂外装体111から応力の影響を受け易く、領域100αにおいて陽極101の表面に形成された誘電体層103にはクラック等の欠陥が生じ易くなる。
【0006】
そこで、特許文献1に記載された固体電解コンデンサでは、前述した領域100αの全域において陽極101上に形成される誘電体層を厚くし、これにより、応力が原因で、前述の領域100αにおいて陽極101の表面に形成された誘電体層にクラックが発生することを抑制し、漏れ電流を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平02−277213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の固体電解コンデンサでは、陽極の一端面の反対側の面である他端面に、樹脂外装体から応力が加わった場合において、漏れ電流が増大するという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、従来の固体電解コンデンサと比べて漏れ電流を低減した固体電解コンデンサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の固体電解コンデンサは、一端面側と、一端面側とは反対側である他端面側とに
角部を有する多孔質焼結体からなる陽極と、陽極に一端部が埋設され、他端部が一端面から突出する陽極リードと、陽極の多孔質焼結体の表面に形成された誘電体層と、誘電体層上に形成された電解質層と、を有する固体電解コンデンサにおいて、陽極は、他端面側の角部近傍の領域である第1領域と、陽極の側面の中央近傍の領域である第2領域と、陽極リードが埋め込まれた陽極内部の領域である第3領域と、を有し、第1領域における誘電体層の厚みは、第2領域及び第3領域における誘電体層の厚みよりも厚いことを特徴とする。
【0011】
本発明の固体電解コンデンサでは、樹脂外装体からの応力が陽極の他端部側に加わった場合においても、該応力が集中し易い第1領域の誘電体層の厚みが、厚いため、第1領域での前記応力による影響を抑え、漏れ電流を抑制できる。
【0012】
本発明において、陽極は、一端面側の角部近傍の領域である第5領域を有し、第5領域における誘電体層の厚みは、第2領域及び第3領域における誘電体層の厚みよりも厚いことを特徴とすることが好ましい。このように、樹脂外装体からの応力が陽極の一端面側に加わった場合においても、該応力が集中し易い第5領域における誘電体層の厚みを、第2領域及び第3領域における誘電体層の厚みよりも厚くすることにより、漏れ電流をより低減できる。
【0013】
本発明において、陽極は、角部を結ぶ稜線近傍の領域である第6領域を有し、第6領域における誘電体層の厚みは、第2領域及び第3領域における誘電体層の厚みよりも厚いことが好ましい。このように、角部に加えて樹脂外装体からの応力が集中し易い第6領域における誘電体層の厚みを、第2領域及び第3領域における誘電体層の厚みよりも厚くすることにより、漏れ電流をより低減できる。
【0014】
本発明の固体電解コンデンサの製造方法は、陽極の他端面側の角部近傍の領域である第1領域を局所的に陽極酸化することにより陽極の表面に誘電体層を形成する陽極酸化工程を備えることを特徴とする。
【0015】
このように本発明の固体電解コンデンサの製造方法は、陽極の他端面側の角部近傍の領域である第1領域上の誘電体層の厚みを、局所的に厚くすることが出来、漏れ電流を低減した固体電解コンデンサを容易に製造することが出来る。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、漏れ電流を低減した固体電解コンデンサ及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態における固体電解コンデンサを説明するための断面図である。
【図2】第1実施形態における陽極の形状及び陽極の領域を説明するための図である。
【図3】第1実施形態における陽極の形状及び陽極の領域を説明するための図である。
【図4】陽極1の要部を示す断面図である。
【図5】第1実施形態における第1の陽極酸化工程を説明するための図である。
【図6】第1実施形態における第2の陽極酸化工程を説明するための図である。
【図7】第2実施形態における第2の陽極酸化工程を説明するための図である。
【図8】第3実施形態における第2の陽極酸化工程を説明するための図である。
【図9】第1変形例における陽極の領域を説明するための図である。
【図10】第2変形例における陽極の領域を説明するための図である。
【図11】第3変形例における陽極の領域を説明するための図である。
【図12】従来における固体電解コンデンサを説明するための模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、図面を用いて、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態における固体電解コンデンサ20の内部を説明するための断面図である。
【0020】
本実施形態における固体電解コンデンサ20は、図1に示すように、陽極リード2が埋設された陽極1と、陽極1上に形成された誘電体層3と、誘電体層3上に形成された電解質層4と、電解質層4上に形成された陰極引出層5とを含むコンデンサ素子を有している。陽極リードの他端部2bには陽極端子7が接続され、陰極引出層5には導電性接着材8により陰極端子9が接着されている。そして、陽極端子7及び陰極端子9の一部が露出するよう、コンデンサ素子の周囲に外装樹脂体11が形成されている。尚、同図は多孔質焼結体からなる陽極1の外周部側に形成された誘電体層3のみを模式的に図示している。また、本実施形態における、陽極1の領域及び誘電体層3の厚みの分布については後述する。
【0021】
以下に、本実施形態における固体電解コンデンサ20の具体的な構成を説明する。
【0022】
本実施形態において陽極1には、弁作用金属または弁作用金属を主成分とする合金からなる多孔質焼結体を用いる。陽極1は、多数の弁作用金属または弁作用金属を主成分とする合金からなる金属粒子を成形し、それを焼結することにより形成されている。弁作用金属としては、タンタル、ニオブ、アルミニウム、チタン等が挙げられる。弁作用金属を主成分とする合金としては、例えば、合金の総重量に対して添加剤の重量が10%以下となることが好ましい。弁作用金属を主成分とする合金に含まれる添加剤としては、ケイ素、バナジウム、ホウ素、窒素等が挙げられ、このような添加剤を主成分となる弁作用金属に添加することにより合金が形成される。
【0023】
陽極リード2の材料としては、陽極1と同様に弁作用金属または弁作用金属を主成分とする合金を用いることができる。また、陽極リード2の材料は、陽極1と異なる弁作用金属を用いてもよい。
【0024】
図1に示すように、陽極1は、多孔質焼結体の外周部である一端面1a、他端面1b及び側面1cを有する。陽極1の一端面1aには、陽極リード2の一端部2aが埋設され、陽極リード2の他端部2bが陽極1の一端面1aから突出している。他端面1bは、一端面1aと反対側の陽極1の面である。陽極リードの根元2cは、陽極1から陽極リード2が突出している部分を示す、陽極リード2の部分である。
【0025】
図2(a)は、陽極リード2が埋め込まれた陽極1の形状を示す一部(破線部分)を透過した斜視図である。図2(a)に示すように、陽極1は、一端面1a、他端面1b及び一端面1aと他端面1bとの間の4つの側面1cからなる直方体の外形を有している。また、陽極1は、直方体の頂点からなる8箇所の角部1Ka,1Kbを有する。角部1Kaは一端面1a側の角部であり、角部1Kbは他端面1b側の角部である。
【0026】
図2(b)は、陽極1の領域を説明するための一部(破線部分)を透過した斜視図であ
る。図3(a)は、図2(a)に示すように、陽極1の一端面1aにおいて対角に位置する一対の角部1Ka,1Kaと陽極リード2とを通るα−α´間(二点鎖線)を陽極リード2の長手方向である矢印の方向に沿って切断した場合の断面図である。図3(b)は、図2(a)に示すように、陽極1の一端面1aにおいて角部1Ka,1Kaを結ぶ対向する稜線の中央部と陽極リード2とを通るβ−β´間(二点鎖線)を、陽極リード2の長手方向である矢印の方向に沿って切断した場合の断面図である。陽極1は、第1領域A、第2領域B、第3領域C、第4領域D、第5領域E、第6領域F、第7領域G、及び第8領域Hを有している。一点鎖線A〜Hで囲む領域は、第1領域〜第8領域を夫々示している。尚、図2(b)には、第1領域A、第5領域E、第6領域Fx,Fy,Fz及び第7領域Gのみを図示している。第1領域Aは、他端面1b側の角部1Kb近傍の領域である。第2領域Bは、側面1cの中央部分の領域である。第3領域Cは、陽極1の内部の領域であり、そのうち陽極リードの一端部2aが埋まり込んだ陽極リードの一端部2aの周りの領域である。第4領域Dは、他端面1bの中央部分の領域である。第5領域Eは、一端面1a側の角部1Ka近傍の領域である。第6領域Fxは、陽極1の角部1Ka間を結ぶ4つの稜線近傍の領域である。第6領域Fyは、陽極1の角部1Kb間を結ぶ4つの稜線近傍の領域である。第6領域Fzは、陽極1の角部1Kaと角部1Kbとを結ぶ4つの稜線近傍の領域である。第7領域Gは、陽極リード2の陽極1に埋め込まれる根元2c近傍の領域である。第8領域Hは、一端面1a側における第5領域Eと第7領域Gとの間の領域である。
【0027】
図4(a)は、図3(a)の破線αで囲む陽極1の領域において、陽極1の表面に形成された誘電体層3を示す模式的な断面図である。図4(b)は、図3(b)の破線βで囲む陽極1の領域において、陽極1の表面に形成された誘電体層3を示す模式的な断面図である。図4(a)及び図4(b)に示すように、誘電体層3は、多孔質焼結体からなる陽極1の表面に形成されているので、多孔質焼結体の外表面だけでなく、多孔質焼結体の内側における細孔の壁面にも形成されている。
【0028】
本実施形態において、第1領域Aにおける誘電体層3の厚みは、第1領域A以外の領域の誘電体層3の厚みよりも厚く形成されている。具体的には、第1領域Aにおける陽極1の表面の誘電体層3の厚みは、第2領域B及び第3領域Cにおける陽極1の表面の誘電体層3の厚みよりも厚い。また、第1領域Aにおける陽極1の表面の誘電体層3の厚みは、第4領域D、第5領域E、第6領域F、第7領域G、及び第8領域Hにおける陽極の表面の誘電体層3の厚みよりも厚い。
【0029】
本実施形態においては、図4(a)に示すように、第1領域Aにおいて、陽極1の角部1Kbから離れるに従い徐々に誘電体層3の厚みが薄くなるよう形成されている。尚、第1領域Aにおいて誘電体層3の厚みは、均一に厚く形成されていてもよい。
【0030】
誘電体層3の厚みは、断面SEM(走査型電子顕微鏡)により測定できる。図4(a)及び図4(b)に示すように、誘電体層3の厚みは、陽極1の表面から誘電体層3の表面までの距離dを測定することにより求めることができる。このように断面SEM像により、多孔質焼結体の外表面の誘電体層3の厚みと、多孔質焼結体の内側における細孔の壁面に形成された誘電体層3の厚みを測定できる。本実施形態においては、例えば、図2(a)で示す方向に固体電解コンデンサ20を切断した切断面において、上記第1〜第3領域内における任意の箇所を夫々5箇所測定し、その値を平均した平均値から第1〜第3領域内の誘電体層3の厚みを求める。第4領域D内の誘電体層3の厚みについても同様に測定して求める。
【0031】
電解質層4は、誘電体層3の表面に形成されている。尚、本実施形態において、電解質層4は多孔質焼結体の孔を充填するように形成されているが、一部に電解質層4が形成さ
れていない箇所があってもよい。電解質層4には、導電性高分子や二酸化マンガンを用いることができる。導電性高分子は化学重合法や電解重合法などにより形成することができ、材料としてはポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン及びポリフランなどが挙げられる。電解質層4は、単一の層で形成しても良いし、複数の層で形成してもよい。
【0032】
陰極引出層5は、電解質層4を覆うように形成されており、カーボン層5a、銀ペースト層5bが順次形成された積層構造をしている。カーボン層5aは、カーボン粒子を含む層により形成されている。このように陰極引出層5は、電解質層4上に直接接するように形成されている。尚、本実施形態において、陽極の一端面1a上には陰極引出し層5は、陽極リード2との短絡を防止するため形成されていない。
【0033】
陰極端子9は、陰極引出層5に取り付けられている。具体的には、この陰極端子9は、帯状の金属板を折り曲げて形成されており、図1に示すように、その一端部9a側の下面が陰極引出層5に導電性接着材8により接着されることにより、陰極端子9と陰極引出層5とは機械的にも電気的にも接続されている。具体的な導電性接着材8の材料としては、銀とエポキシ樹脂とが混合された銀ペーストなどの材料が挙げられる。
【0034】
尚、陰極引出層5は、カーボン層5a又は銀ペースト層5bのどちらか一方だけからなってもよく、電解質層4と陰極端子9とを電気的に接続するものであれば種々の構成をとることができる。
【0035】
陽極端子7は、陽極リード2の他端部2bに取り付けられている。具体的には、この陽極端子7は、帯状の金属板を折り曲げて形成されおり、図1に示すように、その一端部7a側の下面が陽極リード2の他端部2bに溶接等により機械的にも電気的にも接続されている。
【0036】
陽極端子7及び陰極端子9の材料としては、銅、銅合金及び鉄‐ニッケル合金(42アロイ)などが挙げられる。
【0037】
樹脂外装体11は、上述のように配された陽極1、陰極引出層5、陽極端子7、陰極端子9の露出した周囲を覆うように形成されている。陽極端子7の他端部7b及び陰極端子9の他端部9bは、樹脂外装体11の側面から下面にかけて露出しており、この露出箇所は基板との半田接続に用いられる。樹脂外装体11の材料としては、封止材として機能する材料が用いられ、具体的にはエポキシ樹脂やシリコーン樹脂などが挙げられる。樹脂外装体11は主剤、硬化剤及びフィラーを適宜配合することにより調整された樹脂を硬化することにより形成することができる。
【0038】
(作用・効果)
本実施形態の固体電解コンデンサにおいて、樹脂外装体11からの応力が集中し易い第1領域Aでの誘電体層2の厚みが、該応力の影響を受け難い陽極1内部の第3領域C及び陽極1の側面1Cの中央部分の第2領域Bでの誘電体層3の厚みよりも厚いため、第1領域Aでの応力による影響を抑え、漏れ電流を抑制できる。
【0039】
また、本実施形態においては、第1領域A上における誘電体層3の厚みのみが、第1領域A以外の領域上における誘電体層3の厚みより厚い。従って、外装樹脂体11から応力を受け易い、第1領域Aのみの誘電体層3の厚みを他の領域の誘電体層の厚みよりも局所的に厚くすることにより、漏れ電流を抑制し、且つ、静電容量の低下を抑制できる。
【0040】
また、本実施形態においては、第1領域Aにおいて、角部1Kbから離れるに従い徐々に誘電体層3の厚みが薄くなるよう形成されているため、誘電体層3の厚みを連続的に変
化させることにより領域の境界において誘電体層3に加わる応力を分散でき、漏れ電流をより低減できる。
【0041】
尚、本実施形態において、他端面1b側の4つの角部1Kbすべてにおいて誘電体層3の厚みを厚くしているが、少なくとも1箇所の角部1Kbにおいて誘電体層3を厚く形成すれば、漏れ電流を抑制できる。
【0042】
また、本実施形態において、直方体の外形を有する陽極1を用いたが、直方体に限らず、陽極1の他端面1b側に角部を陽極が有する形状であればよく、このような場合であっても、陽極の他端面1b側の角部1Kbの誘電体層3が局所的に厚くなるように形成されていればよい。
(第1実施形態に係るタンタル固体電解コンデンサの製造方法)
本実施形態に係るタンタル固体電解コンデンサの製造方法について以下に説明する。
【0043】
<工程1:陽極の形成>
1次粒径が約0.5μm、2次粒子径が約100μmのタンタル金属粒子を用いて、複数のタンタル金属粒子を陽極リード2の一端部2aを埋め込んだ状態で成形し、真空中で焼結することにより、多孔質焼結体からなる陽極1と陽極リード2とを一体化し結合している。陽極リード2の他端部2bは、陽極1の一端面1aから突出した形で固定されている。このように形成された多孔質焼結体からなる陽極1の外形は、例えば、長さが4.2mm、幅が3.4mm、厚みが0.9mmからなる直方体である。尚、本実施形態では、陽極としてタンタルを用いたが、陽極としてニオブ、チタン等の種々の弁作用金属及び弁作用金属を主成分とする合金を用いることができる。
【0044】
<工程2:第1の陽極酸化工程>
図5は、第1の陽極酸化工程を説明するための図である。陽極1を陽極酸化することにより、陽極1の表面に酸化皮膜からなる誘電体層3を形成する。化成装置50は、化成槽51と陽極53と陰極54と電解水溶液55とを有する。陽極53及び陰極54は配線(図示省略)を通じて夫々電源に接続されている。陰極54は、化成槽51の底面側に配置されて、板状の形状を有している。陽極リード2の他端部2bを陽極53に接続し、電解水溶液55である0.01〜0.1wt%のリン酸水溶液を入れた化成槽51に陽極1と陽極リード2の一部を浸漬し、1〜10mAの電流、5〜100Vの化成電圧、3〜20時間の条件において陽極酸化を行うことにより、陽極1の表面及び陽極リード2の一部に酸化タンタル(Ta)の誘電体層3を形成できる。この第1の陽極酸化工程により、多孔質焼結体からなる陽極1の表面である外表面及び細孔の壁面には、均一な厚みを有する誘電体層3が形成される。
【0045】
尚、電解水溶液55は、リン酸水溶液に限らず、硝酸、酢酸、硫酸などを用いることができる。
【0046】
<工程3:第2の陽極酸化工程(局所化成)>
第1の陽極酸化工程において均一に形成した誘電体層3のうち、第1領域Aに局所化成を行うための第2の陽極酸化工程について以下に説明する。
【0047】
図6は、第2の陽極酸化工程を説明するための図である。図6(a)に示すように、化成装置60は、化成槽61と陽極63と陰極64(同図において一部図示省略)と電解水溶液65とを有する。図6(b)は、陽極1及び陽極リード2に対する陽極63と陰極64の配置を示す模式的な斜視図である。同図において、陽極1の稜線の一部と、陰極64の一部とにおいて透過した部分を破線で示している。陽極63は、陽極リード2の他端部2bに接続されている。陰極64は、細線状を有し、陽極1の他端面1b側における4つ
の角部1Kb近傍に1本ずつ配置される。陽極63及び陰極64は配線(図示省略)を通じて夫々電源に接続されている。
【0048】
局所化成を行うためには、所望の箇所に電流を集中させる必要があるため、電解水溶液の濃度(導電率)を調整し、且つ、陰極64を適宜配置する必要がある。具体的には、第1の陽極酸化工程では、濃度が0.01〜0.1wt%のリン酸水溶液(電解水溶液55)を用いるが、局所化成を行う第2の陽極酸化工程では、第1の陽極酸化工程と比較し低濃度のリン酸水溶液(電解水溶液65)を用いる。このように、電解水溶液65の濃度を低くし、陰極64を陽極1上の所定の箇所に配置し、陽極酸化を行うことにより、前述の第1領域Aの陽極1の表面における誘電体層3の厚みを他の領域である前述の第2〜第8領域B〜Hの陽極1の表面における誘電体層3の厚みと比較し局所的に厚く形成できる。
【0049】
尚、第1領域Aは、陽極1の形状に応じて適宜形成する。例えば、第1領域Aの誘電体層3の厚みは、角部1Kbから、0.1〜1.0mmの距離の範囲で厚く形成することが好ましい。
【0050】
また、陰極64を局所的に配置しても、電解水溶液65の濃度が高ければ誘電体層3の厚みの分布が広がるため、リン酸水溶液は、0.0001〜0.005wt%程度が好ましい。
【0051】
細線状の形状を有する陰極64の先端から陽極1の表面までの距離は、離れすぎると誘電体層3の厚みの分布が広がり、短すぎると陽極1に短絡する虞があるため、陰極64の先端から陽極1の表面までの距離は、0.1〜3mm程度が好ましい。
【0052】
局所化成の時間は、短過ぎると十分な誘電体層3の厚みが得られず、また、長過ぎると誘電体層3の厚みの分布が広がるため、0.5〜10minの範囲で行うことが好ましい。局所化成の電圧は、低過ぎると十分な誘電体層3の厚みが得られず、また、高過ぎると誘電体層3の厚みの分布が広がるため、50〜200Vの範囲で行うことが好ましい。更に、局所化成の電圧は、第1の陽極酸化工程の化成電圧の2〜10倍が好ましい。
【0053】
尚、局所化成に用いる電解水溶液65は、リン酸水溶液に限らず、硝酸、酢酸、硫酸などを用いることができる。本実施形態では、第1の陽極酸化工程と第2の陽極酸化工程とにおいて、同じ電解質を用いた電解水溶液を用いているため、第1の陽極酸化工程後の洗浄工程を簡略化できる。
【0054】
また、図6(b)に示す、陰極64は、細線状であるが、先端部が尖った形状を有する針状の電極を用いてもよい。陰極64の先端部が尖るほど、局所的な誘電体層3の厚みの分布を得ることができる。
【0055】
<工程4:電解質層の形成>
誘電体層3の表面に、電解質層4を形成する。電解質層4に導電性高分子を用いた場合の形成方法としては、例えば、化学重合法を用いてポリピロール等の導電性高分子からなるプレコート層を形成する。引き続き、プレコート層の表面上に、電解重合法を用いてポリピロール等の導電性高分子層を形成する。このようにして、誘電体層3上に、プレコート層、導電性高分子層の積層膜からなる導電性高分子の電解質層4を形成できる。電解質層4を、陽極1の細孔の壁面に形成された誘電体層3の表面にも形成する。
【0056】
<工程5:陰極引出層の形成>
電解質層4の表面に直接接するようにカーボンペーストを塗布することによりカーボン層5aを形成し、カーボン層5a上に銀ペーストを塗布することにより銀ペースト層5b
を形成する。本実施形態において、陰極引出層5は、このカーボン層5a及び銀ペースト層5bにより構成されている。また、本実施形態において、陽極の一端面1a側において、陰極引出層5は電解質層が露出するように形成する。
【0057】
このように工程1〜5により本実施形態のコンデンサ素子が形成される。
【0058】
<工程6:陽極端子及び陰極端子の接続>
陽極端子7の端部7aを、陽極リード2の他端部2bに溶接などにより電気的及び機械的に接続する。また、陰極端子9の端部9aを、陰極引出層5上に導電性接着材8により電気的及び機械的に接続する。
【0059】
尚、本実施形態において、陽極端子7と陽極リード2とは誘電体層3を形成する前に接続され、陽極端子7は、前述の工程2及び3の陽極53,63としても機能する。また、陽極端子7と陽極リード2とが接続された状態で、電解質層4及び陰極引出層5が形成されている。
【0060】
<工程7:モールド工程>
工程6まで形成後、陽極端子及び陰極端子の一部が露出するように、エポキシ樹脂及びイミダゾール化合物を含む封止材を用い、トランスファーモールド法により樹脂外装体11を形成した。具体的には、予備加熱した封止材を金型に注入し、金型内で硬化させた。樹脂外装体11を形成後、露出した陽極端子及び陰極端子を樹脂外装体11の側面から下面側に折り曲げることにより、基板との半田接続に用いる端子7b、9b部分を形成した。
【0061】
本実施形態の製造方法によれば、モールド工程において応力を受け易い領域である、第1領域Aの誘電体層3の厚みを他の領域の誘電体層3の厚みより局所的に厚く形成できるので、漏れ電流を抑制できる。
【0062】
尚、複数の固体電解コンデンサを形成する場合は、陽極端子7を帯状のリードフレームに複数箇所形成し、陽極端子7夫々に複数の陽極1を配置し、陽極リード2を接続する。同様に陰極端子9についても、帯状のリードフレームに複数箇所形成し、陰極端子9夫々にコンデンサ素子の陰極引出層5を接続する。このように複数のコンデンサ素子がリードフレームに固定された状態で、工程7の樹脂外装体11を形成する。次に、リードフレームの不要部分を切断し、陽極端子7及び陰極端子9を工程7と同様に折り曲げることにより、複数の固体電解コンデンサは形成される。
【0063】
複数の固体電解コンデンサを形成するにあたり、複数の陽極1を準備する際、複数の陽極1は互いに接触する可能性があり、特に、陽極1の他端面1b側の角部1Kbは、陽極リード2のある陽極1の一端面1a側の角部1Kaと比べて、他の陽極1と接触する可能性が高い。また、本実施形態において、陽極端子7と陽極リード2とは誘電体層3を形成する前に接続されているので、角部1Kbは、角部1Kaと比べて、その後の工程で使用する冶具等と接触したりする可能性が高い。このため、角部1Kb上の誘電体層3は角部1Ka上の誘電体層3と比較し、欠陥が発生し易く、漏れ電流が増大する惧れがあった。そこで、本実施形態において、陽極1の他端面1b側の角部1Kbにおける誘電体層の厚みを、陽極1の一端面1a側の角部1Kaの誘電体層3の厚みより厚くすることにより、漏れ電流をより抑制できる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態における固体電解コンデンサについて以下に説明する。尚、上述の第1実施形態と同様の部分については説明を省略する。
【0064】
本実施形態では、第1実施形態の第1領域Aに加え、前述の第5領域Eについても誘電体層3の厚みを大きくした。
【0065】
本実施形態において、第1領域A及び第5領域Eにおける誘電体層3の厚みは、第1領域A及び第5領域E以外の領域の誘電体層3の厚みよりも厚く形成されている。具体的には、第1領域A及び第5領域Eの誘電体層3の厚みが、第2領域B及び第3領域Cの誘電体層よりも厚い。また、第1領域A及び第5領域Eの誘電体層3の厚みが、第4領域D、第6領域F、第7領域G、及び第8領域Hにおける陽極の表面の誘電体層3の厚みよりも厚い。
【0066】
本実施形態では、樹脂外装体11からの応力の影響を受けやすい陽極1の角部Ka,1Kb近傍の第1領域A及び第5領域Eの誘電体層が、該応力の影響を受けにくい第2領域B及び第3領域Cの誘電体層よりも厚く形成されることにより、漏れ電流をより低減できる。
【0067】
また、本実施形態において、樹脂外装体11からの応力の影響を受けやすい陽極1の角部Ka,1Kb近傍の第1領域A及び第5領域Eの誘電体層3の厚みが、第1領域A及び第5領域E以外の領域の誘電体層3の厚みよりも局所的に厚く形成しているので、漏れ電流を低減できるだけでなく、静電容量の低下を抑制できる。
(第2実施形態に係るタンタル固体電解コンデンサの製造方法)
本実施形態に係るタンタル固体電解コンデンサの製造方法について以下に説明する。
【0068】
第1実施形態と異なる工程である、工程3について下記に説明する。尚、上述の第1実施形態と同様の部分については説明を省略する。
【0069】
<工程3:第2の陽極酸化工程(局所化成)>
図7は、化成装置において陽極63と陰極64の配置を示す模式的な斜視図である。陽極63は、陽極リード2の他端部2bに接続されている。陰極64は、陽極1の他端面1b側における角部1Kb近傍の領域に加え、陽極の一端面1a側の4つの角部1Ka近傍の領域にも1本ずつ配置される。
【0070】
同図のように陰極64を配置し、局所化成することより、前述の第1領域Aと同様に陽極の一端面1a側の角部1Ka近傍の領域である前述の第5領域Eの誘電体層3の厚みを局所的に厚くできる。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態における固体電解コンデンサについて以下に説明する。尚、上述の第1実施形態及び第2実施形態と同様の部分については説明を省略する。本実施形態においては、第1領域A及び第5領域Eに加え、直方体からなる陽極の稜線近傍の領域である第6領域Fx,Fy,Fzについても誘電体層3の厚みを厚くした。
【0071】
本実施形態において、第1領域A、第5領域E及び第6領域Fx,Fy,Fzにおける誘電体層3の厚みは、第1領域A、第5領域E及び第6領域Fx,Fy,Fz以外の領域の誘電体層3の厚みよりも厚い。具体的には、第1領域A、第5領域E及び第6領域Fx,Fy,Fzの誘電体層3の厚みが、第2領域B及び第3領域Cの誘電体層3よりも厚い。また、第1領域A、第5領域E及び第6領域Fx,Fy,Fzの誘電体層3の厚みが、第4領域D、第7領域G、及び第8領域Hにおける陽極の表面の誘電体層3の厚みよりも厚い。
【0072】
本実施形態の固体電解コンデンサは、第1領域A、第5領域Eに加えて樹脂外装体11から応力の影響を受け易い陽極1の辺周辺の領域である第6領域Fx,Fy,Fzの誘電
体層3を厚くすることにより、漏れ電流を更に低減できる。
(第3実施形態に係るタンタル固体電解コンデンサの製造方法)
本実施形態に係るタンタル固体電解コンデンサの製造方法について以下に説明する。
【0073】
第1実施形態と異なる工程である、工程3について下記に説明する。尚、上述の第1実施形態と同様の部分については説明を省略する。
【0074】
<工程3:第2の陽極酸化工程(局所化成)>
図8は、本実施形態に用いる化成装置において陽極63と陰極64Bの配置を示す斜視図である。尚、同図において、陽極1の稜線の一部と、陰極64Bの一部とにおいて透過した部分を破線で示している。陽極63は、陽極リード2の他端部2bに接続されている。陰極64Bは、細線を格子状に形成した形状を有し、格子の各辺が夫々、陽極1の各稜線に配置される。このように陰極64Bを陽極1上に配置し、陽極酸化することより、前述の第1領域A、第5領域E及び第6領域Fx,Fy,Fzの誘電体層3の厚みを他の領域より局所的に厚くできる。
【0075】
尚、本実施形態において第6領域Fx,Fy,Fzで示す領域全ての誘電体層を厚くしたが、これらのうちの一部の領域のみ誘電体層を厚くしてもよい。例えば、陰極引出層5が形成されていない一端面1a側の第6領域Fxの誘電体層3の厚みを厚くすれば、より漏れ電流を低減できる。
【0076】
(変形例1)
次に、第1実施形態における固体電解コンデンサの変形例について以下に説明する。尚、上述と同様の部分については説明を省略する。
【0077】
本変形例では、陽極1の他端面1b側の領域Y全域の誘電体層3を厚くすることにより、第1実施形態の第1領域Aに加え、第4領域D及び第6領域Fyについても誘電体層3の厚みを大きくした。尚、第1領域A〜第8領域Hについては、図2及び図3に示す通りである。図9は、陽極1の領域を説明するための一部(破線部分)を透過した斜視図である。同図において、第1領域A、第4領域D及び第6領域Fyにより構成される陽極1の他端面1b側の領域をYとして図示している。
【0078】
本変形例において、陽極1の他端面1b側の領域Yにおける誘電体層の厚みが、陽極1の他端面1b側の領域Y以外の領域の誘電体層3の厚みよりも厚い。具体的には、第1領域A、第4領域D及び第6領域Fyの誘電体層の厚みは、第2領域B、第3領域C、第5領域E、第6領域Fx,Fz、第7領域G及び第8領域Hの誘電体層の厚みより厚い。
【0079】
本変形例では、第1実施形態と比べ、第4領域D及び第6領域Fyにおいても誘電体層3の厚みが厚いため、漏れ電流をより低減できる。
【0080】
(変形例2)
次に、第2実施形態における固体電解コンデンサの変形例について以下に説明する。尚、第1、第2実施形態と同様の部分については説明を省略する。
【0081】
本変形例では、第2実施形態の第1領域A及び第5領域Eに加え、第7領域Gについても誘電体層3の厚みを大きくした。図10(a)は、陽極1の領域を説明するための一部(破線部分)を透過した斜視図である。図10(b)は、角部1Ka,1Kbと陽極リード2とを通るように陽極1を対角に切断した場合の断面図である。第7領域Gは、陽極リード2の陽極1に埋め込まれる根元2c近傍の領域である。第8領域Hは、一端面1a側における第5領域Eと第7領域Gとの間の領域である。
【0082】
本変形例において、第1領域A、第5領域E及び第7領域Gの誘電体層3の厚みが、第1領域A、第5領域E及び第7領域G以外の領域の誘電体層3の厚みよりも厚い。具体的には、第1領域A、第5領域E及び第7領域Gの誘電体層の厚みは、第2領域B、第3領域C、第4領域D、第6領域Fx,Fy,Fz及び第8領域Hの誘電体層の厚みより厚い。
【0083】
第7領域Gは、細線状の形状を有する化成装置の陰極を陽極リード2の根元2c近傍に配置することにより形成できる。本変形例において、第7領域Gは、陽極リード2の根元2cの周囲に対して同心円状の位置に形成されている。尚、第7領域Gは、必ず同心円状であることはなく、例えば、同心円状から一部分が欠けていてもよい。
【0084】
本変形例では、第2実施形態と比べ、陽極リード2からの応力の影響を受け易い第7領域7Gの誘電体層3の厚みが更に厚いため、漏れ電流をより低減できる。
【0085】
(変形例3)
次に、第2実施形態における固体電解コンデンサの変形例について以下に説明する。尚、第1、第2実施形態と同様の部分については説明を省略する。
【0086】
本変形例では、陽極1の他端面1b側の領域Y及び一端面側1aの領域X全域の誘電体層3の厚みを厚くすることにより、第1領域A、第5領域Eに加え、第4領域D、第6領域Fx,Fy、第7領域G及び第8領域Hについても誘電体層3の厚みを大きくした。尚、第1領域A〜第8領域Hについては、図2及び図3に示す通りである。図11は、陽極1の領域を説明するための一部(破線部分)を透過した斜視図である。同図において、第1領域A、第6領域Fy及び第4領域Dから構成される陽極1の他端面1b側の領域をYとし、第5領域E、第6領域Fx、第7領域G及び第8領域Hにより構成される陽極1の一端面1a側の領域をXとして図示している。
【0087】
本変形例において、陽極1の他端面1b側の領域Yと陽極1の一端面側1aの領域Xとにおける誘電体層3の厚みが、第2領域B及び第3領域Cにおける誘電体層3よりも厚い。また、本変形例において、一端面1a側の領域X及び他端面1b側の領域Y近傍の誘電体層3の厚みは、それ以外の領域の誘電体層3の厚みよりも厚い。
【0088】
本変形例では、第2実施形態と比べ、第4領域D、第6領域Fx,Fy、第7領域G及び第8領域Hの誘電体層3の厚みが更に厚いため、漏れ電流をより低減できる。
【0089】
(その他の実施形態)
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。
【0090】
例えば、第1〜3実施形態及び変形例1〜3において、陽極1の各領域A〜Hについて厚みの関係を示したが、少なくとも第1領域Aの誘電体層3の厚みが第2領域B及び第3領域Cの誘電体層3の厚みより厚く形成されていればよく、第4領域D、第5領域E、第6領域F、第7領域G及び第8領域Hから適宜選ばれた一つ又は複数の領域において、第2領域B及び第3領域Cの誘電体層3の厚みより厚く形成してもよい。このような場合においても、第1領域Aに加えて、第4領域D、第5領域E、第6領域F、第7領域G及び第8領域Hから一つ又は複数選ばれた何れかの領域における誘電体層3の厚みが、第2領域B及び第3領域Cの誘電体層3の厚みより厚く形成されているので、漏れ電流をより抑制できる。
【符号の説明】
【0091】
1 陽極
1a 陽極の一端面
1b 陽極の他端面
1Ka 陽極の一端面側の角部
1Kb 陽極の他端面側の角部
A 第1領域
B 第2領域
C 第3領域
D 第4領域
E 第5領域
F,Fx,Fy,Fz 第6領域
G 第7領域
H 第8領域
2 陽極リード
3 誘電体層
4 電解質層
5 陰極引出層
7 陽極端子
8 導電性接着材
9 陰極端子
11 樹脂外装体
20 固体電解コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端面側と、前記一端面側とは反対側である他端面側とに角部を有する多孔質焼結体からなる陽極と、
前記陽極に一端部が埋設され、他端部が前記一端面から突出する陽極リードと、
前記陽極の前記多孔質焼結体の表面に形成された誘電体層と、
前記誘電体層上に形成された電解質層と、を有する固体電解コンデンサにおいて、
前記陽極は、前記他端面側の角部近傍の領域である第1領域と、前記陽極の側面の中央近傍の領域である第2領域と、前記陽極リードが埋め込まれた陽極内部の領域である第3領域と、を有し、
前記第1領域における前記誘電体層の厚みは、前記第2領域及び前記第3領域における前記誘電体層の厚みよりも厚いことを特徴とする固体電解コンデンサ。
【請求項2】
前記陽極は、前記一端面側の角部近傍の領域である第5領域を有し、
前記第5領域における前記誘電体層の厚みは、前記第2領域及び前記第3領域における前記誘電体層の厚みよりも厚いことを特徴とする請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項3】
前記陽極は、角部を結ぶ稜線近傍の領域である第6領域を有し、
前記第6領域における前記誘電体層の厚みは、前記第2領域及び前記第3領域における前記誘電体層の厚みよりも厚いことを特徴とする請求項1又は2に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項4】
一端面から陽極リードが突出し、一端面側と、前記一端面側とは反対側である他端面側とに角部を有する多孔質焼結体からなる陽極と、前記陽極の表面に誘電体層とを有する固体電解コンデンサの製造方法であって、
前記陽極の前記他端面側の角部近傍の領域である第1領域を局所的に陽極酸化することにより前記陽極の表面に前記誘電体層を形成する陽極酸化工程を備えることを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−110350(P2013−110350A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256082(P2011−256082)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)