説明

固体電解コンデンサ

【課題】 リード端子の強度を確保しつつ、リード端子と陽極部等との接合強度と耐剥離強度とを高め、かつその抵抗値を低減することができる固体電解コンデンサを提供すること。
【解決手段】 コンデンサ素子の陽極部および陰極部のそれぞれにリード端子が接続されてなる固体電解コンデンサであって、
前記リード端子の前記陽極部および/または前記陰極部との接続部には、前記リード端子の接続部以外の部分と略同じ厚さ寸法を有する平坦状部と、前記平坦状部から突設して厚み寸法が大きくなる段差部とがあり、前記段差部は、前記リード端子の幅方向に対向する各々の位置に形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、積層型固体電解コンデンサ等の固体電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
固体電解コンデンサにおいては、通常、母材が42アロイや銅等からなる平板状のリード端子が用いられ、そのリード端子の上に、コンデンサ素子の陽極部等が接続される。陽極部として、例えば、タンタル固体電解コンデンサでは、タンタルワイヤが用いられ、アルミニウム積層型固体電解コンデンサでは、陽極アルミニウム箔が用いられる。
【0003】
従来から、リード端子と陽極部等との接続には、溶接や導電性接着剤を介する方法等が用いられており、接続部の機械的強度を保ち、かつその抵抗値を低減するために、様々な工夫がなされていた。
【0004】
そのようなリード端子と陽極部等との接続方法としては、例えば、チリトリ状に曲げ加工したリード端子を用い、アルミニウム積層素子を設置後に折り曲げて押さえ込む方法がある(例えば、特許文献1参照)。
また、コンデンサ素子の陽極部のアルミニウム部分に溶接し易い金属を事前に具備させておき、溶接する方法がある(例えば、特許文献2参照)。
また、リード端子に凹凸を設けて溶接する方法がある(例えば、特許文献3参照)。
さらに、フレーム先端がフレーム短手方向に沿って両方向に延びるように、フレーム先端を幅広に形成し、その両側の部分をそれぞれ表と裏とに折り曲げる方法がある(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−45753号公報
【特許文献2】特開2006−54327号公報
【特許文献3】特開2005−93591号公報
【特許文献4】特開平11−135367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に記載の接続方法では、リード端子と陽極部との接続が、対向する2平面(リード端子と陽極部の表面)の溶接または導電性接着剤等を介することによる接着により行われるため、充分な接合強度を得ることが困難であり、また外応力の付加に伴う耐剥離強度を充分に得ることが困難であるという問題があった。
また、特許文献3においては、平板状のリード端子に直接凹凸を設けるため、リード端子自体の強度が低下するという問題があった。また充分な深さを有する凹凸を形成することが困難であり、充分なアンカー効果を得ることが難しく、接合強度が充分ではないという問題があった。
また、特許文献4においても、その構造上、充分なアンカー効果を得ることが困難であり、充分な接合強度を得ることが困難であるという問題があった。
さらに、リード端子の先端に曲げ加工を施し、内部素子のタンタルワイヤとの溶接時に充分に溶接強度を上げても断線しないような厚みを確保する手法も検討されていたが、曲げ加工が施された部分とタンタルワイヤとが平面で接するため、充分な接合強度と耐剥離強度とを確保することが困難であった。
【0007】
本発明の課題は、リード端子の強度を確保しつつ、リード端子と陽極部等との接合強度と耐剥離強度とを高め、かつその抵抗値を低減することができる固体電解コンデンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、以下の構成を採用する。
(1) コンデンサ素子の陽極部および陰極部のそれぞれにリード端子が接続されてなる固体電解コンデンサであって、
前記リード端子の前記陽極部および/または前記陰極部との接続部には、前記リード端子の前記接続部以外の部分と略同じ厚さ寸法を有する平坦状部と、前記平坦状部から突設して厚み寸法が大きくなる段差部とがあり、前記段差部は、前記リード端子の幅方向に対向する各々の位置に形成されていることを特徴とする。
【0009】
前記(1)の構成によれば、リード端子の陽極部および/または陰極部との接続部には、平坦状部と段差部とがあり、段差部は、リード端子の幅方向に対向する各々の位置に形成されている。ここで、接続部とは、図1に示すように、コンデンサ素子とリード端子が接続されている箇所をいう。従って、リード端子の幅方向に対向する各々の位置に形成された段差部により構成される凹凸により、リード端子と、溶接材や導電性接着剤等とが十分に噛み合い、これにより優れたアンカー効果を発揮し得る。その結果、リード端子と陽極部等との接合強度と耐剥離強度とを高め、かつその抵抗値を低減することができる。
また、平坦状部は、リード端子の接続部以外の部分と略同じ厚さ寸法を有しており、段差部は、その平坦状部から突設して厚み方向が大きくなっている。従って、上述したようにリード端子と陽極部等との接合強度と耐剥離強度とを向上させ、かつその抵抗値を低減させつつ、リード端子の強度を確保することができる。
【0010】
本発明は、さらに、以下の構成を採用することができる。
(2) 前記(1)の固体電解コンデンサであって、
前記段差部により厚み寸法が大きくなる凸部が、複数設けられている。
【0011】
従来、アルミニウムの積層素子をリード端子に溶接する際には、材料間の融点の差に起因して、アルミニウムが容易に溶融し、周辺に広がって固まる状態(以降、スパッタと呼ぶ)になり、このスパッタが大きくなると、製品寸法に余裕の無い場合に、外部に露出してしまうという問題があった。特に、下面電極タイプのコンデンサの場合に、スパッタの露出は、より顕著な問題となった。
【0012】
前記(2)の構成によれば、段差部により厚み寸法が大きくなる凸部が、複数設けられており、複数の凸部が有する段差部のうち、対向する段差部に挟まれた領域に、溶接時に溶融した溶接材(アルミニウム等)や導電性接着剤等を収容することができるので、溶接材や導電性接着剤等の露出(例えば、スパッタの露出)を防止することができる。
また、対向する段差部に挟まれた領域に、溶接材や導電性接着剤等が入り込むことにより、リード端子と溶接材や導電性接着剤等とが十分に噛み合い、これにより優れたアンカー効果を発揮し得る。その結果、リード端子と陽極部等との接合強度と耐剥離強度とを高め、かつその抵抗値を低減することができる。
【0013】
本発明は、さらに、以下の構成を採用することができる。
(3) 前記(1)または(2)の固体電解コンデンサであって、
前記段差部は、前記平坦状部に対して鋭角をなすように形成されている。
【0014】
前記(3)の構成によれば、段差部が平坦状部に対して鋭角をなしているので、リード端子と、溶接材や導電性接着剤等との噛み合いがより強固になる。従って、アンカー効果をより強めることができ、その結果、リード端子と陽極部等との接合強度と耐剥離強度とをより高め、かつその抵抗値を低減することができる。
【0015】
本発明は、さらに、以下の構成を採用することができる。
(4) 前記(1)〜(3)のいずれか1の固体電解コンデンサであって、
前記段差部は、前記リード端子の先端において、その幅方向に沿っても形成されている。
【0016】
前記(4)の構成によれば、段差部が、リード端子の先端において、その幅方向に沿っても形成されているので、リード端子と、溶接材や導電性接着剤等との接触面積を増やすことができ、その結果、リード端子と陽極部等との接合強度と耐剥離強度とを高め、かつその抵抗値を低減することができる。また、溶接材や導電性接着剤等の露出を防止することもできる。
【0017】
本発明は、さらに、以下の構成を採用することができる。
(5) 前記(1)〜(4)のいずれか1の固体電解コンデンサであって、
前記凸部は、前記リード端子の先端が屈曲状に折り返されることにより形成された折り返し部であり、
前記段差部は、前記折り返し部の側壁面により形成されている。
【0018】
前記(5)の構成によれば、段差部は、リード端子の厚さ寸法(リード端子の接続部以外の部分の厚さ寸法)と同程度の高さを有するので、リード端子と、溶接材や導電性接着剤等との接触面積を増やすことができ、その結果、リード端子と陽極部等との接合強度と耐剥離強度とを高め、かつその抵抗値を低減することができる。また、段差部を高く形成することができるので、溶接材や導電性接着剤等の収容スペースを確保することができ、その結果、溶接材や導電性接着剤等の露出を防止することができる。さらに、段差部を簡単に形成することができるので、製造コストを抑えることができる。
【0019】
本発明は、さらに、以下の構成を採用することができる。
(6) 前記(5)の固体電解コンデンサであって、
前記折り返し部には、前記リード端子の先端から延びるスリット部または穴部が形成されており、
前記段差部は、前記スリット部または前記穴部に面する前記折り返し部の側壁面により形成されている。
【0020】
前記(6)の構成によれば、スリット部又は穴部に溶接材や導電性接着材等が入り込み、これにより優れたアンカー効果を発揮し得る。その結果、リード端子と陽極部等との接合強度と耐剥離強度とを高め、かつその抵抗値を低減することができる。
【0021】
本発明は、さらに、以下の構成を採用することができる。
(7) 前記(5)または(6)の固体電解コンデンサであって、
前記平坦状部と、前記折り返し部の内面との間には、隙間が形成されている。
【0022】
前記(7)の構成によれば、隙間に溶接材や導電性接着剤等が入り込み、これにより優れたアンカー効果を発揮し得る。その結果、リード端子と陽極部等との接合強度と耐剥離強度とを高め、かつその抵抗値を低減することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の固体電解コンデンサによれば、リード端子の強度を確保しつつ、リード端子と陽極部等との接合強度と耐剥離強度とを高め、かつその抵抗値を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る積層型固体電解コンデンサの一例を模式的に示す斜視図である。
【図2】(a)は、図1に示す陽極リード端子の接続部を示す斜視図であり、(b)は、(a)のA−A線断面図であり、(c)は、陽極リード端子の接続部の他の例を示す断面図である。
【図3】(a)〜(d)は、それぞれ陽極リード端子の接続部の変形例を示す斜視図である。
【図4】(a)、(b)は、それぞれ積層型固体電解コンデンサの変形例を模式的に示す断面図である。
【図5】(a)、(b)は、それぞれ陽極リード端子の接続部の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明に係る積層型固体電解コンデンサ10の一例を模式的に示す斜視図である。
積層型固体電解コンデンサ10は、下面電極型であり、積層コンデンサ素子11を備え、積層コンデンサ素子11の陽極部13に、陽極リード端子20が接続され、陰極部15には、陰極リード端子19が接続され、モールド樹脂によって封止されることにより構成されている。図中、16は、モールド部を示している。
【0026】
陽極リード端子20および陰極リード端子19としては、材質や形状は特に限定されず、例えば、母材が42アロイや銅等からなる平板状のリード端子を用いることができ、その厚みについても、通常の厚みのものを用いることができる。本発明では、陽極リード端子20の先端にスリット24a、24b(図2)を形成し、屈曲状に折り曲げることにより、簡便な方法で、後述する第1の段差部22a〜22d(図2)を形成することができる。
【0027】
積層コンデンサ素子11は、コンデンサ素子板12が複数枚積層されることにより構成されている。コンデンサ素子板12は、弁作用金属箔を基材とし、弁作用金属箔の表面の一方側に位置する陽極部13、他方側に形成された陰極部15、および陽極部13と陰極部15との間に形成されたレジスト部14を備えている。陽極部13では、弁作用金属箔が露出している。陰極部15は、弁作用金属箔の表面に、酸化皮膜層、固体電解質層および陰極引出層が順に積層されることにより形成されている。レジスト部14は、陽極部13と陰極部15とを絶縁している。このような積層コンデンサ素子11としては、従来公知のものを採用することができる。複数枚のコンデンサ素子板12は、各陽極部13が積層コンデンサ素子11の一端側(図中、右端側)に積層され、かつ各陰極部15が他端側(図中、左側)に積層され、これにより、積層コンデンサ素子11は、2端子構造を有している。
【0028】
最下層のコンデンサ素子板12の陽極部13および陰極部15が、積層コンデンサ素子11の陽極部13および陰極部15であり、積層コンデンサ素子11の陽極部13および陰極部15には、それぞれ陽極リード端子20と陰極リード端子19とが接続されている。
【0029】
陽極リード端子20の先端は、上側(積層コンデンサ素子11側)に向けて屈曲状に折り返され、これにより、凸部(折り返し部。本発明の段差部に相当)23(図2)が形成されている。凸部23の上面と、積層コンデンサ素子11の陽極部13の下面とが溶接によって接合されている。図中、27は、陽極リード端子20の接続部を示す。接続部27は、積層コンデンサ素子11の陽極部13と接続される部分である。なお、陽極リード端子20において、凸部を除く箇所が平坦状部に相当する。
【0030】
次に、陽極リード端子20について説明する。
図2(a)は、図1に示す陽極リード端子20の接続部を示す斜視図であり、図2(b)は、(a)のA−A線断面図である。
【0031】
図2(a)に示すように、陽極リード端子20は、複数(3つ)の凸部(折り返し部)23a〜23cを有している。凸部23a〜23cは、陽極リード端子20の幅方向に沿って並んでおり、各凸部23a〜23cの間には、陽極リード端子20の長手方向に延びるスリット部24a、24bが形成されている。その結果、平面視において、陽極リード端子20の上段部分と下段部分とが重複する面積よりも、陽極リード端子20の下段部分の面積が大きくなっている。スリット部24a、24bの底面は、平坦状面21と同一平面上に位置する。両側の凸部23a、23cは、陽極リード端子20の幅方向の両端まで達している。
【0032】
凸部23aの第1の段差部22aは、スリット部24aに面する凸部23aの側壁面からなる。凸部23bの第1の段差部22bは、スリット部24aに面する凸部23bの側壁面からなる。第1の段差部22a、22bは、陽極リード端子20の幅方向に対向する各々の位置に形成されている。
凸部23bの第1の段差部22cは、スリット部24bに面する凸部23bの側壁面からなる。凸部23cの第1の段差部22dは、スリット部24bに面する凸部23cの側壁面からなる。第1の段差部22c、22dは、陽極リード端子20の幅方向に対向する各々の位置に形成されている。
【0033】
第2の段差部25a、25bは、陽極リード端子20の先端において、陽極リード端子20の幅方向に沿って形成されており、それぞれスリット部24a、24bに面している。
第3の段差部26a、26b、26cは、凸部23の側壁面のうちの陽極リード端子20の後端側の側壁面からなる。
【0034】
図2(b)に示すように、陽極リード端子20の凸部23a〜23cの間には、それぞれスリット部24a、24bが形成されている。第1の段差部22a、22bと、第2の段差部25aとは、スリット部24aに面しており、第1の段差部22c、22dと、第2の段差部25bとは、スリット部24bに面している。
第1の段差部22a〜22dと、スリット部24a、24bの底面(平坦状面21)とは、直交しており、第2の段差部25a、25bと、スリット部24a、24bの底面(平坦状面21)とは、直交している。
【0035】
上述した積層型固体電解コンデンサ10によれば、第1の段差部22a〜22dは、陽極リード端子20の幅方向に対向する各々の位置に形成されているので、第1の段差部22a〜22dにより構成される凹凸により、陽極リード端子20と溶接材や導電性接着剤等とが噛み合い、これにより優れたアンカー効果を発揮し得る。その結果、陽極リード端子20と陽極部13との接合強度と耐剥離強度とを高め、かつその抵抗値を低減することができる。
【0036】
また、複数の凸部23a〜23cが設けられているので、対向する第1の段差部22a〜22dに挟まれるスリット部24a、24bに、溶接材や導電性接着剤等を収容することができる。従って、溶接材や導電性接着剤等の露出を防止することができる。
また、第2の段差部25a、25bが、陽極リード端子20の先端において、その幅方向に沿って形成されているので、接合強度と耐剥離強度とを高め、かつその抵抗値を低減することができるとともに、溶接材や導電性接着剤等の露出(例えば、積層型固体電解コンデンサ10の底面側に向かう溶接材や導電性接着剤等の漏れ等)を防止することができる。
【0037】
また、凸部23a〜23cは、陽極リード端子20の先端が屈曲状に折り返されることにより形成されているので、第1の段差部22a〜22dの厚さ寸法を大きく確保し、1段の金属平板では確保できない深さのスリット24a、24bを形成することができる。従って、溶接材や導電性接着剤等の露出を防止することができる。さらに、金属平板の切り欠き形成および折り曲げという簡便な方法により、第1の段差部22a〜22dを形成できるため、製造コストを抑えることができる。
【0038】
また、凸部23a、23cが、陽極リード端子20の幅方向の両端まで達しているので、溶接材や導電性接着剤等の露出をより確実に防止することができる。
また、図1に示すように、積層型固体電解コンデンサ10では、積層コンデンサ素子11の陽極部13より陰極部15が厚くなる。ここで、本実施形態によれば、陽極リード端子20の先端を屈曲状に折り返して、凸部23を形成することにより、その高さの差を補って、バランス良く積層コンデンサ素子11を支持することができる。
【0039】
図2(b)では、第1の段差部22a〜22dと、スリット部24a、24bの底面(平坦状面21)とが直交している場合について説明したが、本発明は、この例に限定されるものではない。
【0040】
図2(c)は、陽極リード端子の接続部の他の例を示す断面図である。なお、図2(c)においては、図2(b)と同様の構成箇所には、同様の符号を付している。
図2(c)に示す陽極リード端子20´では、第1の段差部22a´〜22d´と、スリット部24a、24bの底面(平坦状面21)とが、鋭角をなしている。スリット部24a、24bは、陽極リード端子20の厚み方向に上側から下側に向けて、その幅が次第に広くなるテーパ形状を有する。これにより、陽極リード端子20と、溶接材や導電性接着剤等との噛み合いがより強くなり、例えば、その部分に溶け広がったアルミニウムが噛み込み易くなる。従って、アンカー効果をより強めることができ、その結果、陽極リード端子20´と陽極部13との接合強度と耐剥離強度とをより高め、かつその抵抗値を低減することができる。
【0041】
このような平坦状面21と鋭角をなす第1の段差部22a´〜22d´の形成については、まず陽極リード端子20となる金属平板の先端に、スリット部を形成する。ここで形成されるスリット部は、金属平板の厚み方向に上側から下側に向けて次第に狭くなるテーパ形状を有する。その後、金属平板の先端を屈曲状に上側に折り返し、これにより、図2(c)に示す凸部(折り返し部)23a〜23cを形成する。凸部23a〜23cでは、第1の段差部22a´〜22d´と、スリット部24a、24bの底面とが鋭角をなし、スリット部24a、24bは、陽極リード端子20の厚み方向の下側に向かうほど幅広になる形状を有する。
【0042】
また、図示しないが、本発明においては、図2(a)に示す陽極リード端子20の平坦状部21の表面と、凸部(折り返し部)23の内面との間に、隙間が形成されていてもよい。このように隙間を形成することにより、溶接材や導電性接着剤等がスリット部を介して上記隙間に達するので、陽極リード端子20と、溶接材や導電性接着剤等との噛み合いを強くすることができる。なお、図2(b)、図2(c)では、上記の隙間を省略している。
【0043】
次に、段差部(凸部)の形状に関し、図1、2に示した実施形態では、3つの凸部23a〜23cと、2つのスリット部24a、24bとが形成される場合について説明したが、本発明は、この例に限定されるものではない。本発明における段差部(凸部)の形状としては、例えば、図3(a)〜(d)に示す形状を挙げることができる。
【0044】
図3(a)〜(d)は、それぞれ陽極リード端子の接続部の変形例を示す斜視図である。
図3(a)に示す陽極リード端子30は、先端側の中央部分に凸部33を備える。凸部33は、陽極リード端子30の先端を屈曲状に折り返すことにより形成されており、平坦状部31の厚さ寸法と同じ高さを有する。凸部33の第1の段差部32a、32bは、凸部33を挟んで対向している。また、凸部33の第3の段差部36は、凸部33の側壁面のうちの陽極リード端子30の後端側の側壁面からなる。
【0045】
陽極リード端子30によれば、第1の段差部32a、32bは、陽極リード端子30の幅方向に対向する各々の位置に形成されているので、第1の段差部32a、32bにより構成される凹凸により、陽極リード端子30と溶接材や導電性接着剤等とが噛み合い、これにより、優れたアンカー効果を発揮し得る。
このように、本発明においては、必ずしも、図1および図2に示すように、段差部を構成する凸部の側壁面が互いに向き合っている必要はなく、図3(a)に示すように、段差部を構成する凸部の側壁面が互いに外側を向いていてもよい。
【0046】
図3(b)に示す陽極リード端子40は、陽極リード端子40の幅方向の両端側に、凸部43a、43bを備える。凸部43a、43bは、陽極リード端子40の先端を屈曲状に折り返すことにより形成されており、平坦状部41の厚さ寸法と同じ高さを有する。凸部43a、43bの第1の段差部42a、42bは、スリット部44を介して対向している。スリット部44は、図2(a)に示すスリット部24a、24bに比べ、幅(開口面積)が広くなっている。第2の段差部45は、陽極リード端子40の先端において、陽極リード端子40の幅方向に沿って形成されており、スリット部44に面している。
【0047】
このように、本発明においては、陽極リード端子の幅方向の両端側に凸部を形成し、凸部の間に幅広のスリットを設けることにより、溶接材や導電性接着剤等の収容スペースを広く確保することができるので、溶接材や導電性接着剤等の露出を防止することができる。
【0048】
図3(c)に示す陽極リード端子50は、1つの凸部53を備える。凸部53は、陽極リード端子50の幅方向に沿う中空状の穴部54を備えており、穴部54は、凸部53における陽極リード端子50の長さ方向の後端に達していない。凸部53は、陽極リード端子50の幅方向の両端側まで達している。凸部53は、陽極リード端子50の先端を屈曲状に折り返すことにより形成されており、平坦状部51の厚さ寸法と同じ高さを有する。凸部53の第1の段差部52a、52bは、穴部54を介して、陽極リード端子50の幅方向に対向している。第2の段差部55は、陽極リード端子50の先端において、陽極リード端子50の幅方向に沿って形成されており、第4の段差部57は、穴部54を介して、第2の段差部55と向かい合う凸部53の側壁面からなる。すなわち、第2の段差部55と、第4の段差部57とは、穴部54を介して、陽極リード端子50の長さ方向に対向している。第3の段差部56は、凸部53の側壁面のうちの陽極リード端子50の後端側の側壁面からなる。
【0049】
陽極リード端子50では、陽極リード端子50の幅方向に対向する位置に設けられた第1の段差部52a、52bと、陽極リード端子50の先端において、陽極リード端子50の幅方向に沿って形成された第2の段差部55に加え、第2の段差部55と向かい合う位置に第4の段差部57が形成されている。
【0050】
本発明においては、図3(c)に示すように、周囲が段差部からなり、かつ陽極リード端子の外縁に到達しない穴部を形成することにより、接合強度と耐剥離強度とを高め、かつその抵抗値を低減しつつ、溶接材や導電性接着剤等の露出をより確実に防止することができる。
【0051】
図3(d)に示す陽極リード端子60は、1つの凸部63を備える。凸部63には、平面視半円状の切欠部(スリット部)64が形成されている。第1の段差部62a、62bは、凸部63の側壁面のうちの陽極リード端子60の幅方向に対向する位置にある側壁面からなり、第2の段差部65は、凸部63の側壁面のうちの陽極リード端子60の後端側に向く側壁面からなる。
【0052】
図3(d)では、対向する第1の段差部62a、62bが、第2の段差部65を介して円弧状に滑らかに連続している。このような態様であっても、対向する第1の段差部62a、62bによって、陽極リード端子60の幅方向に沿って凹凸が構成されるので、接合強度と耐剥離強度とを高め、かつその抵抗値を低減しつつ、溶接材や導電性接着剤等の露出をより確実に防止することができる。
【0053】
なお、本明細書において、第1の段差部は、リード端子の幅方向に対向する各々の位置に形成されている段差部であり、第2の段差部は、リード端子の先端において、その幅方向に沿って形成されている段差部である。第3の段差部は、凸部の側壁面のうちのリード端子の後端側に位置する側壁面からなる段差部である。第4の段差部は、第2の段差部と向かい合うように形成された段差部である。
【0054】
凸部(段差部)に関し、図1に示す実施形態では、陽極リード端子20のみに凸部23が形成されている場合について説明したが、本発明は、この例に限定されるものではなく、例えば、図4(a)、(b)に示す実施形態を採用することができる。
【0055】
図4(a)、(b)は、それぞれ積層型固体電解コンデンサの変形例を模式的に示す断面図である。なお、図4(a)、(b)において、図1と同様の構成には、図1と同様の符号を付している。
【0056】
図4(a)に示す積層型固体電解コンデンサ10では、陽極リード端子20が凸部(折り返し部)23を備えるだけではなく、陰極リード端子19が凸部(折り返し部)29を備えている。この点において、図4(a)に示す積層型固体電解コンデンサ10は、図1に示す積層型固体電解コンデンサ10と異なるが、他については、図1に示す積層型固体電解コンデンサ10と同様である。なお、この際、陰極リード端子19の凸部29にも、図2および図3に示すような態様の段差部およびスリットを設けることで、陰極リード端子19と導電性接着材等とも噛み合うため、接合強度と耐剥離強度とを高め、かつその抵抗値を低減しつつ、導電性接着剤等の露出をより確実に防止することができることは言うまでもない。
【0057】
図4(b)に示す積層型固体電解コンデンサ10では、陰極リード端子19の凸部(折り返し部)29が、図4(a)に示す積層型固体電解コンデンサ10と比べると小さくなっているが、本発明において、凸部(折り返し部)の面積は、特に限定されず、図4(b)に示す程度の大きさであってもよく、逆に、陽極部または陰極部の表面の略全域と接触し得る程度の大きさであってもよい。
【0058】
また、凸部の形状に関し、図2および図3に示した例では、上段の凸部の外縁は、下段の平坦状部の外縁の直上または平坦状部の外縁より内側に位置する場合について説明したが、本発明において、凸部の外縁は、例えば、図5(a)、(b)に示すように、平坦状部の外縁より外側に位置していてもよい。
【0059】
図5(a)、(b)は、それぞれ陽極リード端子の接続部の変形例を示す斜視図である。
図5(a)に示す陽極リード端子70は、陽極リード端子70の幅方向の両端側に、凸部73a、73bを備える。凸部73a、73bは、陽極リード端子70の先端を屈曲状に折り返すことにより形成されており、平坦状部71の厚さ寸法と同じ高さを有する。陽極リード端子70の幅方向において、凸部73a、73bの外縁は、平坦状部71の外縁より外側に位置している。凸部73a、73bの第1の段差部72a、72bは、スリット部74を介して対向している。第2の段差部75は、陽極リード端子70の先端において、陽極リード端子70の幅方向に沿って形成されており、スリット部74に面している。
【0060】
図5(a)に示す陽極リード端子70によれば、平坦状部71より外側に凸部73a、73bが突出しているので、平坦状部71より幅広のコンデンサ素子(図示せず)であっても接合され得る。
【0061】
図5(b)に示す陽極リード端子80は、陽極リード端子80の幅方向の両端側に、凸部83a、83bを備える。凸部83a、83bは、陽極リード端子80の先端を屈曲状に折り返し、更に凸部83a、83bの外縁側を上方に向けて折り曲げることにより形成されている。凸部83a、83bの外縁は、平坦状部81の外縁より外側に位置している。凸部83a、83bの第1の段差部82a、82bは、スリット部84を介して対向している。第2の段差部85は、陽極リード端子80の先端において、陽極リード端子80の幅方向に沿って形成されており、スリット部84に面している。
【0062】
図5(b)に示す陽極リード端子80によれば、上方に向けて折り曲げられた凸部83a、83bによって、積層コンデンサ素子(図示せず)と陽極リード端子80とを、下方からのみではなく、側方からも接合することができるので、接合強度と耐剥離強度とをより高め、かつその抵抗値を低減することができる。また、上方に向けて折り曲げられた凸部83a、83bによっても、溶接材や導電性接着剤等の露出を防止することができる。
【0063】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。
上述した実施例では、陽極リード端子が2段に折り返される場合と、陰極リード端子および陽極リード端子が2段に折り返される場合とについて説明したが、本発明は、この例に限定されるものではない。例えば、陰極リード端子のみが折り返されていてもよい。また、リード端子が折り返される回数(凸部の段数)も特に限定されるものではない。
ただし、陽極リード端子および陰極リード端子が凸部を備える場合、積層コンデンサ素子の陰極部と陽極部との厚みの差を補うために、陽極リード端子の凸部の厚み寸法が、陰極リード端子の凸部の厚み寸法より大きい方が好ましい。
【0064】
上述した実施例では、積層型固体電解コンデンサを例に挙げて説明したが、本発明は、積層型固体電解コンデンサに限定されるものではない。また、リード端子の厚みは、下段と上端とで必ずしも同じである必要はない。さらに、本発明において、凸部は、必ずしもリード端子の先端の折り返しにより形成される必要はない。例えば、先端の厚み寸法が大きいリード端子の先端に溝や切欠等が形成されることにより、段差部が形成されていてもよい。
【0065】
上述した実施形態において、凸部(折り返し部)は、リード端子の先端を1回屈曲状に折り返し、リード端子の先端を2段にすることにより形成されているが、リード端子の先端は、2回以上屈曲状に折り返され、リード端子の先端が3段以上になっていてもよい。
【0066】
さらに、上述した実施形態において、積層型固体電解コンデンサは陽極リード端子と陰極リード端子が各々1つずつからなる2端子の形状を有しているが、本発明における固体電解コンデンサは、この例に限定されず、例えば、3端子構造とした積層型固体電解コンデンサであっても、同様の効果が得られる。3端子構造とした積層型固体電解コンデンサとしては、例えば、陽極部がコンデンサ素子の両端に設けられ、陰極部が2つの陽極部の間に設けられており、コンデンサ素子の両端に陽極リード端子を配し、該陽極リード端子間に陰極リード端子を配する3端子構造とした積層型固体電解コンデンサを挙げることができる。
3端子構造とした積層型固体電解コンデンサにおけるコンデンサ素子は、複数枚のコンデンサ素子板が積層されることにより構成されており、複数枚のコンデンサ素子板は、その陽極部が陰極部を中心に対向するように積層されている。換言すると、複数枚のコンデンサ素子板は、陰極部がコンデンサ素子の中央部に位置するとともに、陽極部が交互にコンデンサ素子の各端部に位置するように積層されている。最下層のコンデンサ素子板の陽極部およびその上層のコンデンサ素子板の陽極部と、最下層のコンデンサ素子板の陰極部とが、それぞれコンデンサ素子の2つの陽極部と1つの陰極部である。
【0067】
なお、本発明は、上述した例に限定されるものではなく、本発明の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0068】
10 積層型固体電解コンデンサ
11 積層コンデンサ素子
12 コンデンサ素子板
13 陽極部
14 レジスト部
15 陰極部
16 モールド部
19 陰極リード端子
20 陽極リード端子
21 平坦状面
22a〜22d 第1の段差部(折り返し部の側壁面)
23a〜23c 凸部(折り返し部)
24a、24b スリット部
25a、25b 第2の段差部(折り返し部の側壁面)
26a〜26c 第3の段差部(折り返し部の側壁面)
27 接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサ素子の陽極部および陰極部のそれぞれにリード端子が接続されてなる固体電解コンデンサであって、
前記リード端子の前記陽極部および/または前記陰極部との接続部には、前記リード端子の接続部以外の部分と略同じ厚さ寸法を有する平坦状部と、前記平坦状部から突設して厚み寸法が大きくなる段差部とが形成され、前記段差部は、前記リード端子の幅方向に対向する各々の位置に形成されていることを特徴とする固体電解コンデンサ。
【請求項2】
請求項1に記載の固体電解コンデンサであって、
前記段差部により厚み寸法が大きくなる凸部が、複数設けられていることを特徴とする固体電解コンデンサ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の固体電解コンデンサであって、
前記段差部は、前記平坦状部に対して鋭角をなすように形成されていることを特徴とする固体電解コンデンサ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1に記載の固体電解コンデンサであって、
前記段差部は、前記リード端子の先端において、その幅方向に沿って形成されていることを特徴とする固体電解コンデンサ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1に記載の固体電解コンデンサであって、
前記凸部は、前記リード端子の先端が屈曲状に折り返されることにより形成された折り返し部であり、
前記段差部は、前記折り返し部の側壁面により形成されていることを特徴とする固体電解コンデンサ。
【請求項6】
請求項5に記載の固体電解コンデンサであって、
前記折り返し部には、前記リード端子の先端から延びるスリット部または穴部が形成されており、
前記段差部は、前記スリット部または前記穴部に面する前記折り返し部の側壁面により形成されていることを特徴とする固体電解コンデンサ。
【請求項7】
請求項5または6に記載の固体電解コンデンサであって、
前記平坦状部と、前記折り返し部の内面との間に、隙間が形成されていることを特徴とする固体電解コンデンサ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1に記載の固体電解コンデンサであって、
前記陽極部は、前記コンデンサ素子の両端に設けられ、前記陰極部は、2つの前記陽極部の間に設けられていることを特徴とする固体電解コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−249708(P2011−249708A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123837(P2010−123837)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)