説明

固体電解質、電解コンデンサ及びにその製造方法

【課題】 導電性及び耐熱性に優れた固体電解質を提供することを目的とする。さらには、ESRが低く、しかも苛酷な条件に耐えうる電解コンデンサ並びにその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の固体電解質は、化学式(1)で表されるπ共役系導電性高分子を含有する。(化学式(1)におけるRは、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、置換フェニル基、シクロアルキル基、ナフタレン基、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、アルキルエーテル基、カルボキシ基、カルボキシエステル基、スルホ基、ハロゲン基のいずれかである。)本発明のコンデンサは、上記固体電解質からなる陰極を有する。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリチオフェン系のπ共役系導電性高分子を含む固体電解質に関する。また、π共役系導電性高分子を含む固体電解質層を陰極に備えた電解コンデンサ並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器のデジタル化に伴い、これに用いられるコンデンサとしては高周波領域におけるインピーダンスが低いものが要求されてきている。従来から、この要求に対応すべく、アルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁金属の酸化皮膜を誘電体とし、この表面にポリピロール、ポリチオフェンなどのπ共役系導電性高分子を形成して陰極とした、所謂、機能性コンデンサが使用されている。
機能性コンデンサの具体的構造としては、特許文献1に示されるように、弁金属多孔体を陽極とし、この表面に形成した誘電体酸化皮膜上に、π共役系導電性高分子を含む固体電解質層、カーボン層、銀層を積層した陰極材料を持つものが一般的である。
【0003】
π共役導電性高分子を含む固体電解質層は、多孔質状の誘電体酸化皮膜の内部にまで入り込んで、誘電体酸化皮膜との接触面積を大きくして、高容量を引き出すと共に、誘電体酸化皮膜の欠損部を修復して漏れ電流によるリークを防止する役割を果たす。このような役割を果たすためには、等価直列抵抗(ESR)が低いことが求められ、ESRを低くするためには、導電性を高くする必要がある。また、固体電解質層としては、使用環境下において信頼性を保つための安定性(例えば耐熱性)が求められる。
【0004】
π共役系導電性高分子は不溶不融の固体物質であり、その形成法としては、通常、電解重合法と化学酸化重合法が採られる。例えば、特許文献2には、弁金属多孔体表面にマンガン酸化物からなる導電層を形成した後に、その導電層を電極としてπ共役系導電性高分子の前駆体モノマーを電解重合することが記載されている。また、特許文献3,4には、化学酸化重合法によりπ共役系導電性高分子を得る方法が開示されている。
【0005】
電解重合法はマンガン酸化物のような導電体をあらかじめ形成する必要があることから工程が煩雑になりやすく、主流は化学酸化重合法に移行してきている。化学酸化重合法においては、モノマーの反応性が工程の所要時間、設計を決める重要な要素となっているため、π共役系導電性高分子の前駆体モノマーとしては、反応性が高く、短時間で重合が完了し、副生成物の少ないものが求められる。その要求を満たすものとして、ピロール、3,4−エチレンジオキシチオフェンなどが挙げられる。
しかしながら、近年、電解コンデンサの使用される用途が広がり、使用環境も次第に苛酷な条件となってきており、導電性及び耐熱性のより一層の向上が求められている。
【0006】
また、電解重合、化学酸化重合をコンデンサ製造工程内で行うことは、煩雑であり、困難である。そのため、スルホ基、カルボキシ基等を持つポリアニオンを共存させながらアニリンを重合して、ポリアニリンの水溶液を調製し、そのポリアニオン水溶液を塗布、乾燥することが提案されている(特許文献5参照)。しかしながら、特許文献5の方法では、ポリアニオン水溶液の多孔質内部への浸透性が低く、満足のいく性能は得られなかった。
【特許文献1】特開2003−37024号公報
【特許文献2】特開昭63−158829号公報
【特許文献3】特開昭63−173313号公報
【特許文献4】特開平11−74157号公報
【特許文献5】特開平7−105718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、導電性及び耐熱性に優れた固体電解質を提供することを目的とする。さらには、ESRが低く、しかも苛酷な条件に耐えうる電解コンデンサ並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の固体電解質は、化学式(1)で表されるπ共役系導電性高分子を含有することを特徴とする。
(化学式(1)におけるRは、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、置換フェニル基、シクロアルキル基、ナフタレン基、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、アルキルエーテル基、カルボキシ基、カルボキシエステル基、スルホ基、ハロゲン基のいずれかである。)
【0009】
【化1】

【0010】
本発明の固体電解質においては、(a)アミド化合物、(b)窒素含有芳香環化合物、(c)2個以上のヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有芳香族性化合物、(d)グリシジル基を有する化合物、(e)アリル基、ビニルエーテル基、メタクリル基、アクリル基、メタクリルアミド基、アクリルアミド基から選ばれる1種とヒドロキシ基とを有する化合物、から選ばれる1種または2種以上の導電性向上成分をさらに含有することが好ましい。
また、本発明の固体電解質においては、ポリアニオンをさらに含有することが好ましい。
本発明の電解コンデンサは、弁金属の多孔質体からなる陽極と、該陽極の表面が酸化されて形成された誘電体層と、該誘電体層上に形成され、上述した固体電解質からなる固体電解質層を備える陰極とを有することを特徴とする。
本発明の電解コンデンサの製造方法は、弁金属の多孔質体からなる陽極と該陽極の表面が酸化されて形成された酸化被膜の誘電体層とを有するコンデンサ中間体の誘電体層側表面に、導電性高分子溶液を塗布して固体電解質層を形成する電解コンデンサの製造方法であって、前記導電性高分子溶液が、上述した固体電解質を溶媒中に溶解又は分散した液であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の固体電解質は、導電性及び耐熱性に優れる。
本発明の電解コンデンサは、ESRが低く、容量を高くできる上に、漏れ電流を小さくでき、しかも苛酷な条件に耐えうる。
本発明の電解コンデンサの製造方法によれば、ESRが低く、容量を高くできる上に、漏れ電流を小さくでき、しかも苛酷な条件に耐えうる電解コンデンサの製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(固体電解質)
本発明の固体電解質は、π共役系導電性高分子を含有し、必要に応じて、ポリアニオン、導電性向上成分、ドーパントなどを含有するものである。固体電解質中のπ共役系導電性高分子の含有量は、10〜100質量%であることが好ましい。
【0013】
[π共役系導電性高分子]
本発明におけるπ共役系導電性高分子は、化学式(1)で表されるポリチオフェンである。このようなポリチオフェンは、化学式(2)で表されるモノマーを単独重合もしくは他のモノマーとの共重合により得られる。
なお、化学式(1),(2)におけるRは、水素原子または炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、置換フェニル基、シクロアルキル基、ナフタレン基、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、アルキルエーテル基、カルボキシ基、カルボキシエステル基、スルホ基、ハロゲン基のいずれかである。
【0014】
【化2】

【0015】
化学式(2)で表されるモノマーとしては、例えば、3,4−b−チエノチオフェン、2−デシルチエノ−3,4−b−チオフェン、2−フェニルチエノ−3,4−b−チオフェン、2−ナフチル−チエノ−3,4−b−チオフェンなどが挙げられる。
【0016】
π共役系導電性高分子が共重合体である場合の他のモノマーとしては、例えば、ピロール類及びその誘導体、チオフェン類及びその誘導体、アニリン類及びその誘導体等が挙げられる。
具体例としては、ピロール、N−メチルピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−プロピルピロール、3−ブチルピロール、3−オクチルピロール、3−デシルピロール、3−ドデシルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジブチルピロール、3−カルボキシピロール、3−メチル−4−カルボキシピロール、3−メチル−4−カルボキシエチルピロール、3−メチル−4−カルボキシブチルピロール、3−ヒドロキシピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−ブトキシピロール、3−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−プロピルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−ヘプチルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−デシルチオフェン、3−ドデシルチオフェン、3−オクタデシルチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−クロロチオフェン、3−ヨードチオフェン、3−シアノチオフェン、3−フェニルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジブチルチオフェン、3−ヒドロキシチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3−ブトキシチオフェン、3−ヘキシルオキシチオフェン、3−ヘプチルオキシチオフェン、3−オクチルオキシチオフェン、3−デシルオキシチオフェン、3−ドデシルオキシチオフェン、3−オクタデシルオキシチオフェン、3,4−ジヒドロキシチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3,4−ジプロポキシチオフェン、3,4−ジブトキシチオフェン、3,4−ジヘキシルオキシチオフェン、3,4−ジヘプチルオキシチオフェン、3,4−ジオクチルオキシチオフェン、3,4−ジデシルオキシチオフェン、3,4−ジドデシルオキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3,4−プロピレンジオキシチオフェン、3,4−ブテンジオキシチオフェン、3−メチル−4−メトキシチオフェン、3−メチル−4−エトキシチオフェン、3−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン、3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン、アニリン、2−メチルアニリン、3−イソブチルアニリン、2−アニリンスルホン酸、3−アニリンスルホン酸等が挙げられる。
【0017】
π共役系導電性高分子が、化学式(1)で表されるモノマー単位と上記他のモノマー単位とからなる共重合体である場合、他のモノマー単位は10〜90モル%であることが好ましい。
【0018】
上記π共役系導電性高分子は、酸化剤又は酸化触媒存在下、化学式(2)で表されるモノマーと、必要に応じて、上記他のモノマーとを化学酸化重合することにより得られる。
ここで、酸化剤、酸化触媒としては、前記モノマーを酸化させてπ共役系導電性高分子を得ることができるものであればよく、例えば、ぺルオキソ二硫酸アンモニウム(過硫酸アンモニウム)、ぺルオキソ二硫酸ナトリウム(過硫酸ナトリウム)、ぺルオキソ二硫酸カリウム(過硫酸カリウム)等のぺルオキソ二硫酸塩、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物、三フッ化ホウ素、塩化アルミニウムなどの金属ハロゲン化合物、酸化銀、酸化セシウム等の金属酸化物、過酸化水素、オゾン等の過酸化物、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、酸素等が挙げられる。
【0019】
π共役系導電性高分子を化学酸化重合により製造する際には、溶媒中で行うことが好ましい。溶媒としては特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール(IPA)などのアルコール系溶媒、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)などのアミド系溶媒、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル系溶媒、トルエン、キシレン、水など、これらの単独もしくは混合溶媒が用いられる。中でも、環境への負荷が小さいことから、水やアルコール系溶媒の使用が好ましい。
【0020】
化学式(1)で表されるモノマー単位を有するπ共役系導電性高分子は、反応性の高いモノマー(化学式(2))から合成されるため、短時間で得られる上に、副生成物が少ない。また、上記π共役系導電性高分子は、導電性及び耐熱性に優れる。
【0021】
[ポリアニオン]
本発明の固体電解質は、導電性及び耐熱性がより高くなることから、ポリアニオンを含有することが好ましい。
ポリアニオンは、置換若しくは未置換のポリアルキレン、置換若しくは未置換のポリアルケニレン、置換若しくは未置換のポリイミド、置換若しくは未置換のポリアミド、置換若しくは未置換のポリエステル及びこれらの共重合体であって、アニオン基を有する構成単位からなるものまたは、アニオン基を有する構成単位とアニオン基を有さない構成単位とからなるものである。
このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能し、π共役系導電性高分子の導電性と耐熱性をより向上させる。
【0022】
ポリアルキレンとは、主鎖がメチレンの繰り返しで構成されているポリマーである。ポリアルキレンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリヘキセン、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリ3,3,3−トリフルオロプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリスチレン等が挙げられる。
【0023】
ポリアルケニレンとは、主鎖に不飽和結合(ビニル基)が1個以上含まれる構成単位からなるポリマーである。ポリアルケニレンの具体例としては、プロペニレン、1−メチルプロペニレン、1−ブチルプロペニレン、1−デシルプロペニレン、1−シアノプロペニレン、1−フェニルプロペニレン、1−ヒドロキシプロペニレン、1−ブテニレン、1−メチル−1−ブテニレン、1−エチル−1−ブテニレン、1−オクチル−1−ブテニレン、1−ペンタデシル−1−ブテニレン、2−メチル−1−ブテニレン、2−エチル−1−ブテニレン、2−ブチル−1−ブテニレン、2−ヘキシル−1−ブテニレン、2−オクチル−1−ブテニレン、2−デシル−1−ブテニレン、2−ドデシル−1−ブテニレン、2−フェニル−1−ブテニレン、2−ブテニレン、1−メチル−2−ブテニレン、1−エチル−2−ブテニレン、1−オクチル−2−ブテニレン、1−ペンタデシル−2−ブテニレン、2−メチル−2−ブテニレン、2−エチル−2−ブテニレン、2−ブチル−2−ブテニレン、2−ヘキシル−2−ブテニレン、2−オクチル−2−ブテニレン、2−デシル−2−ブテニレン、2−ドデシル−2−ブテニレン、2−フェニル−2−ブテニレン、2−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、3−メチル−2−ブテニレン、3−エチル−2−ブテニレン、3−ブチル−2−ブテニレン、3−ヘキシル−2−ブテニレン、3−オクチル−2−ブテニレン、3−デシル−2−ブテニレン、3−ドデシル−2−ブテニレン、3−フェニル−2−ブテニレン、3−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、2−ペンテニレン、4−プロピル−2−ペンテニレン、4−ブチル−2−ペンテニレン、4−ヘキシル−2−ペンテニレン、4−シアノ−2−ペンテニレン、3−メチル−2−ペンテニレン、4−エチル−2−ペンテニレン、3−フェニル−2−ペンテニレン、4−ヒドロキシ−2−ペンテニレン、ヘキセニレン等から選ばれる1種以上の構成単位を含む重合体が挙げられる。
これらの中でも、不飽和結合とπ共役系導電性高分子との相互作用があること、置換若しくは未置換のブタジエンを出発物質として合成しやすいことから、置換若しくは未置換のブテニレンが好ましい。
【0024】
ポリイミドとしては、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−テトラカルボキシジフェニルエーテル二無水物、2,2’−[4,4’−ジ(ジカルボキシフェニルオキシ)フェニル]プロパン二無水物等の無水物とオキシジアニン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン等のジアミンとからのポリイミドが挙げられる。
ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10等が挙げられる。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0025】
ポリアニオンが置換基を有する場合、その置換基としては、アルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、シアノ基、フェニル基、フェノール基、エステル基、アルコキシ基等が挙げられる。溶媒への溶解性、耐熱性及び樹脂への相溶性等を考慮すると、アルキル基、ヒドロキシ基、フェノール基、エステル基が好ましい。
アルキル基は、極性溶媒又は非極性溶媒への溶解性及び分散性、樹脂への相溶性及び分散性等を高くすることができ、ヒドロキシ基は、他の水素原子等との水素結合を形成しやすくでき、有機溶媒への溶解性、樹脂への相溶性、分散性、接着性を高くすることができる。また、シアノ基及びヒドロキシフェニル基は、極性樹脂への相溶性、溶解性を高くすることができ、しかも、耐熱性も高くすることができる。
上記置換基の中では、アルキル基、ヒドロキシ基、エステル基、シアノ基が好ましい。
【0026】
前記アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル等の鎖状アルキル基、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のシクロアルキル基が挙げられる。有機溶剤への溶解性、樹脂への分散性、立体障害等を考慮すると、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましい。
前記ヒドロキシ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したヒドロキシ基又は他の官能基を介在して結合したヒドロキシ基が挙げられる。他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基等が挙げられる。ヒドロキシ基はこれらの官能基の末端又は中に置換されている。これらの中では樹脂への相溶及び有機溶剤への溶解性から、主鎖に結合した炭素数1〜6のアルキル基の末端に結合したヒドロキシ基がより好ましい。
前記アミノ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したアミノ基又は他の官能基を介在して結合したアミノ基が挙げられる。他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基等が挙げられる。アミノ基はこれらの官能基の末端又は中に置換されている。
前記フェノール基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したフェノール基又は他の官能基を介在して結合したフェノール基が挙げられる。他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基等が挙げられる。フェノール基はこれらの官能基の末端又は中に置換されている。
前記エステル基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したアルキル系エステル基、芳香族系エステル基、他の官能基を介在してなるアルキル系エステル基又は芳香族系エステル基が挙げられる。
シアノ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接結合したシアノ基、ポリアニオンの主鎖に結合した炭素数1〜7のアルキル基の末端に結合したシアノ基、ポリアニオンの主鎖に結合した炭素数2〜7のアルケニル基の末端に結合したシアノ基等を挙げることができる。
【0027】
ポリアニオンのアニオン基としては、π共役系導電性高分子への化学酸化ドープが起こりうる官能基であればよいが、中でも、製造の容易さ及び安定性の観点からは、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシ基、スルホ基等が好ましい。さらに、官能基のπ共役系導電性高分子へのドープ効果の観点より、スルホ基、一置換硫酸エステル基、カルボキシ基がより好ましい。
【0028】
ポリアニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
これらのうち、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸が好ましい。ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸は、熱エネルギーを吸収して自ら分解することにより、π共役系導電性高分子成分の熱分解が緩和されるため、耐熱性、耐環境性により優れる。
【0029】
ポリアニオンの重合度は、モノマー単位が10〜100,000個の範囲であることが好ましく、溶媒溶解性及び導電性の点からは、50〜10,000個の範囲がより好ましい。
【0030】
ポリアニオンの製造方法としては、例えば、酸を用いてアニオン基を有さないポリマーにアニオン基を直接導入する方法、アニオン基を有さないポリマーをスルホ化剤によりスルホン酸化する方法、アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法が挙げられる。
アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法は、溶媒中、アニオン基含有重合性モノマーを、酸化剤及び/又は重合触媒の存在下で、酸化重合又はラジカル重合によって製造する方法が挙げられる。具体的には、所定量のアニオン基含有重合性モノマーを溶媒に溶解させ、これを一定温度に保ち、それに予め溶媒に所定量の酸化剤及び/又は重合触媒を溶解した溶液を添加し、所定時間で反応させる。その反応により得られたポリマーは溶媒によって一定の濃度に調整される。この製造方法において、アニオン基含有重合性モノマーにアニオン基を有さない重合性モノマーを共重合させてもよい。
アニオン基含有重合性モノマーの重合に際して使用する酸化剤及び酸化触媒、溶媒は、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを重合する際に使用するものと同様である。
得られたポリマーがポリアニオン塩である場合には、ポリアニオン酸に変質させることが好ましい。アニオン酸に変質させる方法としては、イオン交換樹脂を用いたイオン交換法、透析法、限外ろ過法等が挙げられ、これらの中でも、作業が容易な点から限外ろ過法が好ましい。
【0031】
アニオン基含有重合性モノマーは、モノマーの一部が一置換硫酸エステル基、カルボキシ基、スルホ基等で置換されたものであり、例えば、置換若しくは未置換のエチレンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のスチレンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のアクリレートスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のメタクリレートスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のアクリルアミドスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のシクロビニレンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のブタジエンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のビニル芳香族スルホン酸化合物が挙げられる。
具体的には、ビニルスルホン酸及びその塩類、アリルスルホン酸及びその塩類、メタリルスルホン酸及びその塩類、スチレンスルホン酸、メタリルオキシベンゼンスルホン酸及びその塩類、アリルオキシベンゼンスルホン酸及びその塩類、α−メチルスチレンスルホン酸及びその塩類、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸及びその塩類、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩類、シクロブテン−3−スルホン酸及びその塩類、イソプレンスルホン酸及びその塩類、1,3−ブタジエン−1−スルホン酸及びその塩類、1−メチル−1,3−ブタジエン−2−スルホン酸及びその塩類、1−メチル−1,3−ブタジエン−4−スルホン酸及びその塩類、アクリル酸エチルスルホン酸(CHCH-COO-(CH22-SO3H)及びその塩類、アクリル酸プロピルスルホン酸(CHCH-COO-(CH23-SO3H)及びその塩類、アクリル酸−t−ブチルスルホン酸(CHCH-COO-C(CH32CH-SO3H)及びその塩類、アクリル酸−n−ブチルスルホン酸(CHCH-COO-(CH2-SO3H)及びその塩類、アリル酸エチルスルホン酸(CHCHCH-COO-(CH22-SO3H)及びその塩類、アリル酸−t−ブチルスルホン酸(CHCHCH-COO-C(CH32CH-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸エチルスルホン酸(CHCH(CH22-COO-(CH22-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸プロピルスルホン酸(CHCH(CH22-COO-(CH23-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸−n−ブチルスルホン酸(CHCH(CH22-COO-(CH2-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸−t−ブチルスルホン酸(CHCH(CH22-COO-C(CH32CH-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸フェニレンスルホン酸(CHCH(CH22-COO-C64-SO3H)及びその塩類、4−ペンテン酸ナフタレンスルホン酸(CHCH(CH22-COO-C108-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸エチルスルホン酸(CHC(CH3)-COO-(CH22-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸プロピルスルホン酸(CHC(CH3)-COO-(CH23-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸−t−ブチルスルホン酸(CHC(CH3)-COO-C(CH32CH-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸−n−ブチルスルホン酸(CHC(CH3)-COO-(CH2-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸フェニレンスルホン酸(CHC(CH3)-COO-C64-SO3H)及びその塩類、メタクリル酸ナフタレンスルホン酸(CHC(CH3)-COO-C108-SO3H)及びその塩類、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。また、これらを2種以上含む共重合体であってもよい。
【0032】
アニオン基を有さない重合性モノマーとしては、エチレン、プロぺン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、スチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−ブチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、p−メトキシスチレン、α−メチルスチレン、2−ビニルナフタレン、6−メチル−2−ビニルナフタレン、1−ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ビニルアセテート、アクリルアルデヒド、アクリルニトリル、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルイミダゾ−ル、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニルブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸アリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸イソボニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸エチルカルビトール、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸メトキシブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリロイルモルホリン、ビニルアミン、N,N−ジメチルビニルアミン、N,N−ジエチルビニルアミン、N,N−ジブチルビニルアミン、N,N−ジ−t−ブチルビニルアミン、N,N−ジフェニルビニルアミン、N−ビニルカルバゾール、ビニルアルコール、塩化ビニル、フッ化ビニル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、2−メチルシクロヘキセン、ビニルフェノール、1,3−ブタジエン、1−メチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,4−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,2−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1−オクチル−1,3−ブタジエン、2−オクチル−1,3−ブタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1−ヒドロキシ−1,3−ブタジエン、2−ヒドロキシ−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
これらアニオン基を有さない重合性モノマーを共重合することで溶媒溶解性をコントロールすることができる。
【0033】
ポリアニオンの含有量は、π共役系導電性高分子1モルに対して0.1〜10モルの範囲であることが好ましく、1〜7モルの範囲であることがより好ましい。ポリアニオンの含有量が0.1モルより少なくなると、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が弱くなる傾向にあり、導電性が不足することがある。また、ポリアニオンの含有量が10モルより多くなると、π共役系導電性高分子の含有割合が少なくなり、やはり充分な導電性が得られにくい。
【0034】
[導電性向上成分]
固体電解質は、導電性をより高める上に、多孔体への浸透性及び耐熱性がより向上することから、(a)アミド化合物、(b)窒素含有芳香環化合物、(c)2個以上のヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有芳香族性化合物、(d)グリシジル基を有する化合物、(e)e)アリル基、ビニルエーテル基、メタクリル基、アクリル基、メタクリルアミド基、アクリルアミド基から選ばれる1種とヒドロキシ基とを有する化合物、から選ばれる1種または2種以上の導電性向上成分をさらに含有することが好ましい。
【0035】
<(a)アミド化合物>
アミド化合物の具体例としては、アセトアミド、マロンアミド、スクシンアミド、マレアミド、フマルアミド、ベンズアミド、ナフトアミド、フタルアミド、イソフタルアミド、テレフタルアミド、ニコチンアミド、イソニコチンアミド、2−フルアミド、ホルムアミド、プロピオンアミド、プロピオルアミド、ブチルアミド、イソブチルアミド、メタクリルアミド、パルミトアミド、ステアリルアミド、オレアミド、オキサミド、グルタルアミド、アジプアミド、シンナムアミド、グルコールアミド、ラクトアミド、グリセルアミド、タルタルアミド、シトルアミド、グリオキシルアミド、プルブアミド、アセトアセトアミド、ベンジルアミド、アントラニルアミド、エチレンジアミンテトラアセトアミド、ジアセトアミド、トリアセトアミド、ジベンズアミド、トリベンズアミド、ローダニン、尿素、1−アセチル−2−チオ尿素、ビウレット、ブチル尿素、ジブチル尿素、1,3−ジメチル尿素、1,3−ジエチル尿素及びこれらの誘導体等が挙げられる。
アミド化合物の分子量は46〜5,000であることが好ましく、46〜1,000であることがより好ましく、46〜500であることが特に好ましい。
【0036】
アミド化合物としては、導電性がより高くなることから、イミド結合を有する単分子化合物(以下、イミド化合物という。)が好ましい。
イミド化合物の具体例としては、1,8−ナフチルイミド、フタルイミド、3−ニトロフタルイミド、4−ニトロフタルイミド、3−アミノフタルイミド、4−アミノフタルイミド、シクロヘキサン−1,2−ジカルボキシイミド、アラントイン、ヒダントイン、バルビツル酸、アロキサン、グルタルイミド、スクシンイミド、5−ブチルヒダントイン酸、5,5−ジメチルヒダントイン、1−メチルヒダントイン、1,5,5−トリメチルヒダントイン、5−ヒダントイン酢酸、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、グルタルイミド、セミカルバジド、α,α−ジメチル−6−メチルスクシンイミド、ビス[2−(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン、α−メチル−α−プロピルスクシンイミド、シクロヘキシルイミド、1,3−ジプロピレン尿素、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−ヒドロキシマレイミド、1,4−ビスマレイミドブタン、1,6−ビスマレイミドヘキサン、1,8−ビスマレイミドオクタン、N−カルボキシヘプチルマレイミドなどが挙げられる。
【0037】
イミド化合物は両末端の官能基の種類によって、脂肪族イミド、芳香族イミド等の分類もされるが、その骨格より、フタルイミド及びフタルイミド誘導体、スクシンイミド及びスクシンイミド誘導体、ベンズイミド及びベンズイミド誘導体、マレイミド及びマレイミド誘導体、ナフタルイミド及びナフタルイミド誘導体などが挙げられる。溶解性の観点からは、脂肪族イミドが好ましい。
【0038】
さらに、脂肪族イミド化合物は、分子内の炭素間に不飽和結合を有する飽和脂肪族イミド化合物と、分子内の炭素間に不飽和結合を有する不飽和脂肪族イミド化合物とに分類される。
飽和脂肪族イミド化合物は、R−CO−NH−CO−Rで表される化合物であり、R,Rの両方が飽和炭化水素である化合物である。具体的には、シクロヘキサン−1,2−ジカルボキシイミド、アラントイン、ヒダントイン、バルビツル酸、アロキサン、グルタルイミド、スクシンイミド、5−ブチルヒダントイン酸、5,5−ジメチルヒダントイン、1−メチルヒダントイン、1,5,5−トリメチルヒダントイン、5−ヒダントイン酢酸、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、グルタルイミド、セミカルバジド、α,α−ジメチル−6−メチルスクシンイミド、ビス[2−(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン、α−メチル−α−プロピルスクシンイミド、シクロヘキシルイミドなどが挙げられる。
不飽和脂肪族イミド化合物は、R−CO−NH−CO−Rで表される化合物であり、R,Rの一方又は両方が1つ以上の不飽和結合である化合物である。具体例は、1,3−ジプロピレン尿素、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−ヒドロキシマレイミド、1,4−ビスマレイミドブタン、1,6−ビスマレイミドヘキサン、1,8−ビスマレイミドオクタン、N−カルボキシヘプチルマレイミドなどが挙げられる。
【0039】
イミド化合物の分子量は60〜5,000であることが好ましく、70〜1,000であることがより好ましく、80〜500であることが特に好ましい。
【0040】
アミド化合物及びイミド化合物の含有量は、π共役系導電性高分子のドープに寄与していないポリアニオンのアニオン基に対して0.1〜100モル当量であることが好ましく、0.5〜50モル当量であることがより好ましく、1.0〜20モル当量であることが特に好ましい。アミド化合物及びイミド化合物の添加量が前記下限値未満であると、アミド化合物及びイミド化合物添加による効果が低くなるため好ましくない。また、前記上限値を超えると、π共役系導電性高分子濃度の低下に起因する導電性の低下が起こるため好ましくない。
【0041】
<(b)窒素含有芳香環化合物>
窒素含有芳香環化合物としては、窒素が芳香環に含まれる化合物であれば、芳香環に置換基が導入されていなくとも、置換されていても好適に使用することができる。また、芳香環にさらに芳香環が縮合された多環系芳香環も好適に使用することができる。前記置換基としては、アルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、フェニル基、フェノール基、エステル基、アルコキシ基、カルボニル基等が挙げられる。
【0042】
窒素含有芳香環化合物としては、例えば、一つの窒素原子を含有するピリジン及びその誘導体、二つの窒素原子を含有するイミダゾール及びその誘導体、ピリミジン及びその誘導体、ピラジン及びその誘導体、三つの窒素原子を含有するトリアジン及びその誘導体等が挙げられる。溶媒溶解性等の観点から、ピリジン及びその誘導体、イミダゾール及びその誘導体、ピリミジン及びその誘導体が好ましい。
【0043】
一つの窒素原子を含有するピリジン及びその誘導体の具体的な例としては、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、4−エチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、3−シアノ−5−メチルピリジン、2−ピリジンカルボン酸、6−メチル−2−ピリジンカルボン酸、2,6−ピリジン-ジカルボン酸、4−ピリジンカルボキシアルデヒド、4−アミノピリジン、2,3−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノ−4−メチルピリジン、4−ヒドロキシピリジン、2,6−ジヒドロキシピリジン、6−ヒドロキシニコチン酸メチル、2−ヒドロキシ−5−ピリジンメタノール、6−ヒドロキシニコチン酸エチル、4−ピリジンメタノール、4−ピリジンエタノール、2−フェニルピリジン、3−メチルキノリン、3−エチルキノリン、キノリノール、2,3−シクロペンテノピリジン、2,3−シクロペキサノピリジン、1,2−ジ(4−ピリジル)エタン、1,2−ジ(4−ピリジル)プロパン、2−ピリジンカルボキシアルデヒド、2−ピリジンカルボン酸、2−ピリジンカルボニトリル、2,3−ピリジンジカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸、3−ピリジンスルホン酸等があげられる。
【0044】
二つの窒素原子を含有するイミダゾール及びその誘導体の具体的な例としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−ウンデジルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾール、2−エチル-4-メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、1−アセチルイミダゾール、4,5−イミダゾールジカルボン酸、4,5−イミダゾールジカルボン酸ジメチル、ベンズイミダゾール、2−アミノべンズイミダゾール、2−アミノべンズイミダゾール−2−スルホン酸、2−アミノ−1−メチルべンズイミダゾール、2−ヒドロキシべンズイミダゾール、2−(2−ピリジル)べンズイミダゾール等が挙げられる。
【0045】
二つの窒素原子を含有するピリミジン及びその誘導体の具体的な例としては、2−アミノ−4−クロロ−6−メチルピリミジン、2−アミノ−6−クロロ−4−メトキシピリミジン、2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン、2−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン、2−アミノ−4,6−ジメチルピリミジン、2−アミノ−4,6−ジメトキシピリミジン、2−アミノピリミジン、2−アミノ−4−メチルピリミジン、4,6−ジヒドロキシピリミジン、2,4−ジヒドロキシピリミジン−5−カルボン酸、2,4,6−トリアミノピリミジン、2,4−ジメトキシピリミジン、2,4,5−トリヒドロキシピリミジン、2,4−ピリミジンジオール等が挙げられる。
【0046】
二つの窒素原子を含有するピラジン及びその誘導体の具体的な例としては、ピラジン、2−メチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、ピラジンカルボン酸、2,3−ピラジンジカルボン酸、5−メチルピラジンカルボン酸、ピラジンアミド、5−メチルピラジンアミド、2−シアノピラジン、アミノピラジン、3−アミノピラジン−2−カルボン酸、2−エチル−3-メチルピラジン、2−エチル−3−メチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、2,3−ジエチルピラジン等が挙げられる。
【0047】
三つの窒素原子を含有するトリアジン及びその誘導体の具体的な例としては、1,3,5−トリアジン、2−アミノ−1,3,5−トリアジン、3−アミノ−1,2,4−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(トリフルオロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリ−2−ピリジン−1,3,5−トリアジン、3−(2−ピリジン)−5,6−ビス(4−フェニルスルホン酸)−1,2,4−トリアジン二ナトリウム、3−(2−ピリジン)−5,6−ジフェニル−1,2,4−トリアジン、3−(2−ピリジン)−5,6−ジフェニル−1,2,4−トリアジン−ρ,ρ’−ジスルホン酸二ナトリウム、2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5、−トリアジン等が挙げられる。
また、前記窒素含有芳香環化合物に他の官能基を付加することによって得られる前記窒素含有芳香環化合物カチオンと陰イオンで構成される塩を添加しても同様の効果が得られる。
窒素含有芳香環化合物とカチオンを形成する官能基としては、水素、アルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、フェニル基、フェノ−ル基、エステル基、アルコキシ基、カルボニル基等が挙げられる。
前記陰イオンとしては、前記窒素含有芳香環化合物カチオンと塩を構成すれば、ここで特に限定されるものではない。例えば、ハロゲンイオン、硫酸イオン、亜塩酸イオン、前記有機スルホン酸イオン等が挙げられる。
【0048】
窒素含有芳香環化合物の含有量は、ポリアニオンのアニオン基1モルに対して0.1〜100モルの範囲であることが好ましく、1〜30モルの範囲であることがより好ましく、固体電解質の物性及び導電性の観点から3〜10モルの範囲であることが特に好ましい。窒素含有芳香環化合物の含有量が0.1モルより少なくなると、窒素含有芳香環化合物とドーパント及びπ共役系導電性高分子との相互作用が弱く、充分な効果が得られず高い導電性が得られにくく、固体電解質中に窒素含環化有芳香合物が100モルを超えて含まれるとπ共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が低くなる傾向にある。
【0049】
<(c)2個以上のヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有芳香族性化合物>
2個以上のヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有芳香族性化合物は、芳香族環に、ヒドロキシ基が2個以上置換されているものである。例えば、1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、2,3−ジヒドロキシ−1−ペンタデシルベンゼン、2,4−ジヒドロキシアセトフェノン、2,5−ジヒドロキシアセトフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,6−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルスルフォン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、ヒドロキシキノンカルボン酸及びその塩類、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、1,4−ヒドロキノンスルホン酸及びその塩類、4,5−ヒドロキシベンゼン−1,3−ジスルホン酸及びその塩類、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン−2,6−ジカルボン酸、1,6−ジヒドロキシナフタレン−2,5−ジカルボン酸、1,5−ジヒドロキシナフトエ酸、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル、4,5−ジヒドロキシナフタレン−2,7−ジスルホン酸及びその塩類、1,8−ジヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸及びその塩類、6,7−ジヒドロキシ−2−ナフタレンスルホン酸及びその塩類、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン(ピロガロール)、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、5−メチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−エチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−プロピル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシ安息香酸、トリヒドロキシアセトフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾアルデヒド、トリヒドロキシアントラキノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゼン、テトラヒドロキシ−p−ベンゾキノン、テトラヒドロキシアントラキノン等が挙げられる。
ヒドロキシ基含有芳香族性化合物の中でも、導電性の点からは、π共役系導電性高分子にドーピングしうる、アニオン基であるスルホ基及び/又はカルボキシ基を有する化合物がより好ましい。
【0050】
ヒドロキシ基置換芳香族性化合物の含有量は、ポリアニオンのアニオン基単位1モルに対して0.05〜10モルの範囲であることが好ましく、0.3〜5モルの範囲であることがより好ましい。ヒドロキシ基置換芳香族性化合物の含有量が、ポリアニオンのアニオン基単位1モルに対して0.05モルより少なくなると、導電性及び耐熱性が不足することがある。また、ヒドロキシ基置換芳香族性化合物の含有量が、ポリアニオンのアニオン基単位1モルに対して10モルより多くなると、固体電解質中のπ共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得られにくくなることがある。
【0051】
<(d)グリシジル基を有する化合物>
グリシジル基を有する化合物としては、下記(d−1)〜(d−3)の化合物が挙げられる。
(d−1):グリシジル基と、アリル基、ビニルエーテル基、メタクリル基、アクリル基、メタクリルアミド基、アクリルアミド基から選ばれる1種とを有する化合物(以下、化合物(d−1)という。)。
(d−2):グリシジル基を2つ以上有する化合物(以下、化合物(d−2)という。)。
(d−3):グリシジル基を1つ有する化合物であって、化合物(d−1)以外の化合物(以下、化合物(d−3)という。)。
【0052】
化合物(d−1)のうち、グリシジル基とアクリル(メタクリル)基を有する化合物として、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
グリシジル基とアリル基を有する化合物として、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、アリルフェノールグリシジルエーテル等が挙げられる。
グリシジル基とヒドロキシ基とを有する化合物として、1,4−ジヒドロキシメチルベンゼンジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
グリシジル基とヒドロキシ基とアリル基とを有する化合物として、3−アリル−1,4−ジヒドロキシメチルベンゼンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0053】
化合物(d−2)としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ダイマー酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジル、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ジグリシジルテトラフタレート等が挙げられ1種類または2種類以上の混合として用いることができる。
【0054】
化合物(d−3)としては、例えば、アルキルグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0055】
グリシジル基を有する化合物の含有量は、ポリアニオンのアニオン基に対して、0.1〜100モル当量であることが好ましく、2〜50モル当量であることがより好ましい。グリシジル基を有する化合物含有量がポリアニオンのアニオン基に対して100モル当量を超える場合には、当該化合物が過剰になり、導電性を低下させるおそれがある。また、ポリアニオンのアニオン基に対して0.1モル当量未満では、導電性、耐熱性、成膜性、耐磨耗性、基材密着性を向上させることが困難になる傾向にある。
【0056】
<(e)アリル基、ビニルエーテル基、メタクリル基、アクリル基、メタクリルアミド基、アクリルアミド基から選ばれる1種と、ヒドロキシ基とを有する化合物>
アリル基、ビニルエーテル基、メタクリル基、アクリル基、メタクリルアミド基、アクリルアミド基から選ばれる1種と、ヒドロキシ基とを有する化合物のうち、例えば、ヒドロキシ基とビニルエーテル基とを有する化合物としては、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等が挙げられる。
ヒドロキシ基とアクリル(メタクリル)基を有する化合物としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート(メタクリレート)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(メタクリレート)、4−ヒドロキシブチルアクリレート(メタクリレート)、エチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート、ジペンタエリストリトールモノヒドロキシペンタアクリレート等が挙げられる。
ヒドロキシ基とアクリルアミド(メタクリルアミド)基を有する化合物としては、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリルアミドが挙げられる。
【0057】
アリル基、ビニルエーテル基、メタクリル基、アクリル基、メタクリルアミド基、アクリルアミド基から選ばれる1種と、ヒドロキシ基とを有する化合物(e)の含有量は、ポリアニオンのアニオン基に対して0.1〜100モル当量であることが好ましく、2〜50モル当量であることがより好ましい。当該化合物(e)の含有量がポリアニオンのアニオン基に対して100モル当量を超える場合には、当該化合物(e)が過剰になり、導電性を低下させるおそれがある。また、ポリアニオンのアニオン基に対して0.1モル当量未満では、導電性、耐熱性、成膜性、耐磨耗性、基材密着性を向上させることが困難になる傾向にある。
【0058】
[ドーパント]
固体電解質においては、ポリアニオン以外に他のドーパントを添加してもよい。他のドーパントとしては、π共役系導電性高分子を酸化還元させることができればドナー性のものであってもよく、アクセプタ性のものであってもよい。
【0059】
<ドナー性ドーパント>
ドナー性ドーパントとしては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム等の4級アミン化合物等が挙げられる。
【0060】
<アクセプタ性ドーパント>
アクセプタ性ドーパントとしては、例えば、ハロゲン化合物、ルイス酸、プロトン酸、有機シアノ化合物、有機金属化合物、フラーレン、水素化フラーレン、水酸化フラーレン、カルボン酸化フラーレン、スルホン酸化フラーレン等を使用できる。
さらに、ハロゲン化合物としては、例えば、塩素(Cl)、臭素(Br2)、ヨウ素(I)、塩化ヨウ素(ICl)、臭化ヨウ素(IBr)、フッ化ヨウ素(IF)等が挙げられる。
ルイス酸としては、例えば、PF、AsF、SbF、BF、BCl、BBr、SO等が挙げられる。
有機シアノ化合物としては、共役結合に二つ以上のシアノ基を含む化合物が使用できる。例えば、テトラシアノエチレン、テトラシアノエチレンオキサイド、テトラシアノベンゼン、ジクロロジシアノベンゾキノン(DDQ)、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノアザナフタレン等が挙げられる。
【0061】
プロトン酸としては、無機酸、有機酸が挙げられる。さらに、無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウフッ化水素酸、フッ化水素酸、過塩素酸等が挙げられる。また、有機酸としては、有機カルボン酸、フェノール類、有機スルホン酸等が挙げられる。
【0062】
有機カルボン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にカルボキシ基を一つ又は二つ以上を含むものを使用できる。例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ニトロ酢酸、トリフェニル酢酸等が挙げられる。
【0063】
有機スルホン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にスルホ基を一つ又は二つ以上含むもの、又は、スルホ基を含む高分子を使用できる。
スルホ基を一つ含むものとして、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸、1−ヘプタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−ノナンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、1−ドデカンスルホン酸、1−テトラデカンスルホン酸、1−ペンタデカンスルホン酸、2−ブロモエタンスルホン酸、3−クロロ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロエタンスルホン酸、コリスチンメタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アミノメタンスルホン酸、1−アミノ−2−ナフトール−4−スルホン酸、2−アミノ−5−ナフトール−7−スルホン酸、3−アミノプロパンスルホン酸、N−シクロヘキシル−3−アミノプロパンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、プロピルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、ペンチルベンゼンスルホン酸、ヘキチルベンゼンスルホン酸、ヘプチルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸、2,4−ジメチルベンゼンスルホン酸、ジプロピルベンゼンスルホン酸、4−アミノベンゼンスルホン酸、o−アミノベンゼンスルホン酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、4−アミノ−2−クロロトルエン−5−スルホン酸、4−アミノ−3−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−5−メトキシ−2−メチルベンゼンスルホン酸、2−アミノ−5−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−2−メチルベンゼン−1−スルホン酸、5−アミノ−2−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−3−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アセトアミド−3−クロロベンゼンスルホン酸、4−クロロ−3−ニトロベンゼンスルホン酸、p−クロロベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、ペンチルナフタレンスルホン酸、4−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸、8−クロロナフタレン−1−スルホン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン重縮合物、アントラキノンスルホン酸、ピレンスルホン酸等が挙げられる。また、これらの金属塩も使用できる。
【0064】
スルホ基を二つ以上含むものとしては、例えば、エタンジスルホン酸、ブタンジスルホン酸、ペンタンジスルホン酸、デカンジスルホン酸、o−ベンゼンジスルホン酸、m−ベンゼンジスルホン酸、p−ベンゼンジスルホン酸、トルエンジスルホン酸、キシレンジスルホン酸、クロロベンゼンジスルホン酸、フルオロベンゼンジスルホン酸、ジメチルベンゼンジスルホン酸、ジエチルベンゼンジスルホン酸、アニリン−2,4−ジスルホン酸、アニリン−2,5−ジスルホン酸、3,4−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、メチルナフタレンジスルホン酸、エチルナフタレンジスルホン酸、ペンタデシルナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−5−ヒドロキシ−2,7−ナフタレンジスルホン酸、1−アセトアミド−8−ヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸、2−アミノ−1,4−ベンゼンジスルホン酸、1−アミノ−3,8−ナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−1,5−ナフタレンジスルホン酸、8−アミノ−1−ナフトール−3,6−ジスルホン酸、4−アミノ−5−ナフトール−2,7−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−イソチオ−シアノトスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−イソチオシアナトスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−マレイミジルスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、ジナフチルメタンジスルホン酸、アントラキノンジスルホン酸、アントラセンスルホン酸等が挙げられる。また、これらの金属塩も使用できる。
【0065】
本発明の固体電解質は、上記特定のπ共役系導電性高分子を含有するため、導電性及び耐熱性に優れている。このような固体電解質は、例えば、電極や固体電解質膜、帯電防止膜などとして好適に利用できる。
【0066】
(電解コンデンサ及びその製造方法)
以下、本発明の電解コンデンサ及びその製造方法について説明する。
図1に、本発明の電解コンデンサの一例を示す。この電解コンデンサ10は、弁金属の多孔質体からなる陽極11と、陽極11の表面が酸化されて形成された誘電体層12と、誘電体層12上に形成された陰極13とを有して概略構成されている。
【0067】
陽極11をなす弁金属としては、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモンなどが挙げられる。これらのうち、アルミニウム、タンタル、ニオブが好適である。
陽極11の具体例としては、アルミニウム箔をエッチングして表面積を増加させた後、その表面を酸化処理したものや、タンタル粒子やニオブ粒子の焼結体表面を酸化処理してペレットにしたものが挙げられる。このように処理されたものは表面に凹凸が形成されている。
【0068】
誘電体層12は、例えば、アジピン酸アンモニウム水溶液などの電解液中にて、陽極11の表面を陽極酸化することで形成されたものである。よって、図1に示すように、陽極11と同様に誘電体層12の表面にも凹凸が形成されている。
【0069】
陰極13は、固体電解質層13aと、固体電解質層13a上に形成されたカーボン、銀、アルミニウム等で構成されている陰極導電層13bとを具備し、固体電解質が上記固体電解質からなるものである。
陰極導電層13bがカーボン、銀等で構成される場合には、例えば、カーボン、銀等の導電体を含む導電性ペーストから形成することができる。また、陰極導電層13bがアルミニウムで構成される場合には、例えば、アルミニウム箔から形成することができる。
また、固体電解質層13aと陰極導電層13bとの間には、必要に応じて、セパレータを設けることができる。
【0070】
本発明の電解コンデンサの製造方法では、まず、弁金属の多孔質体からなる陽極と該陽極の表面が酸化されて形成された酸化被膜の誘電体層とを有するコンデンサ中間体を用意し、そのコンデンサ中間体の誘電体層側表面に、上記π共役系導電性高分子とポリアニオンと溶媒とを含む導電性高分子溶液を塗布して固体電解質層を形成する。次いで、その固体電解質層上に、カーボンペースト、銀ペーストによって陰極を形成したり、セパレータを介して陰極電極を対向したりして陰極を形成して電解コンデンサを得る。
ここで、導電性高分子溶液は、例えば、ポリアニオンを、これを溶解する溶媒に溶解してポリアニオン溶液を調製し、このポリアニオン溶液にπ共役系導電性高分子の前駆体モノマーを加え、さらに酸化剤を加えて前駆体モノマーを重合する。その後、余剰の酸化剤や前駆体モノマーを分離、精製することにより得られる。
導電性高分子溶液の塗布方法としては、例えば、コーティング、浸漬、スプレーなどの方法を採ることができる。
このような、導電性高分子溶液を塗布する方法は、工程が簡便であり、大量生産に向いており、コストも安く出来るという利点を有する。
【0071】
なお、本発明の電解コンデンサは、上記製造方法以外の方法で製造することもできる。例えば、固体電解質層を形成する際に、上記のように導電性高分子溶液を塗布する方法以外に、化学酸化重合法、電解重合法を適用することができる。
化学酸化重合では、例えば、上記π共役系導電性高分子の前駆体モノマー溶液と酸化剤の溶液とをそれぞれ用意し、コンデンサ中間体をこれらに交互に浸漬してコンデンサ中間体表面に導電性高分子を重合させる。
電解重合では、例えば、アセトニトリルなどの溶媒にモノマーを加え、ドーパントを電解質として加えた電解槽に表面に導電層を形成したコンデンサ中間体を電極として仕込み、電圧を加えることによってコンデンサ中間体上に固体電解質を重合させる。
【0072】
本発明の電解コンデンサは、陰極として、上記固体電解質を含み、導電性に優れた固体電解質層を備えるものを用いているため、ESRが低く、高容量にできる上に、漏れ電流を小さくできる。また、耐熱性にも優れるため、苛酷な条件に耐えうる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。
(合成例1)3,4−b−チエノチオフェンの合成
温度計が備え付けられた1Lの3口フラスコに、450mlの脱水ジエチルエーテルと34.4gの3−ブロモ−4−(トリメチルシリル)エチニルチオフェンを投入し、−78℃にて30分間攪拌した。この温度を保ちながら、58.6mlのn−ブチルリチウム(2.4Mヘキサン溶液)を約1時間かけて滴下した。滴下後、−78℃で2時間攪拌した後、1時間で−45℃まで昇温して白濁液を得た。
次いで、白濁液に、4.5gの硫黄を、固体ロートを用いてゆっくり添加し、35℃に昇温して硫黄を完全に溶解した。10分後、白濁液は黄色透明な液体に変化した。その黄色透明な液体を−45℃に冷却し、2時間攪拌した後、再度30分間で−10℃まで昇温して反応液を得た。
次いで、反応液250mlを、塩水/氷により−5℃に保ったクーリングジャケット付の500ml分液ロートに採り、200mlの−5℃の塩水で抽出を行って水層を回収した。なお、水層は濁った黄色であった。
残り250mlの反応液も同様に操作して水層を回収し、得られた400mlの水層を1Lの丸底フラスコに採り、アルゴン置換して70℃に加熱し、1時間攪拌を行った。
室温まで冷却後、反応液をエーテル抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を真空除去して13gの粗生成物を得た。そして、これを蒸留して11.5gの3,4−b−チエノチオフェンの無色液体を得た。
【0074】
(実施例1)ポリ(3,4−b−チエノチオフェン)水溶液の合成
13.8g(0.1mol)の3,4−b−チエノチオフェンと、27.5g(0.15mol)のポリスチレンスルホン酸(質量平均分子量;約150,000)とを2000mlのイオン交換水に溶解してモノマー混合液を得た。このモノマー混合液を20℃に保ち、これに、200mlのイオン交換水に溶解した29.64g(0.13mol)の過硫酸アンモニウムと8.0g(0.02mol)の硫酸第二鉄の溶液を、攪拌しながら加え、1時間反応させた。得られた反応液を透析して、未反応モノマー及び酸化剤を除去し、1.5質量%のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−b−チエノチオフェン)溶液(固体電解質を含む溶液)を得た。
得られた水溶液を導電性高分子溶液としてガラス板上に塗布し、120℃の熱風乾燥機で乾燥して導電膜を形成し、その導電膜の電気伝導度をローレスタ(三菱化学社製)により測定した。その結果を表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
(実施例2)
実施例1で得たポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−b−チエノチオフェン)溶液100mlに2.5gのイミダゾールを添加した以外は実施例1と同様にして導電性高分子溶液を得た。そして、実施例1と同様にして電気伝導度を測定した。その結果を表1に示す。
【0077】
(実施例3)
実施例1で得たポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−b−チエノチオフェン)溶液100mlに2.8gの1,4−ジヒドロキシベンゼンを添加した以外は実施例1と同様にして導電性高分子溶液を得た。そして、実施例1と同様にして電気伝導度を測定した。その結果を表1に示す。
【0078】
(実施例4)
実施例1で得たポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−b−チエノチオフェン)溶液100mlに1.2gのグリシジルアクリレートを添加した以外は実施例1と同様にして導電性高分子溶液を得た。そして、実施例1と同様にして電気伝導度を測定した。その結果を表1に示す。
【0079】
(実施例5)
実施例1で得たポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−b−チエノチオフェン)溶液100mlに2.2gのアセトアミドを添加した以外は実施例1と同様にして導電性高分子溶液を得た。そして、実施例1と同様にして電気伝導度を測定した。その結果を表1に示す。
【0080】
表1に示すように、化学式(1)で表されるモノマー単位を有するポリチオフェンを含む実施例1〜5の導電性高分子溶液は、電気伝導度(導電性)に優れていた。
【0081】
(実施例6)電解コンデンサの作製
エッチドアルミ箔に、陽極リード端子を接続した後、アジピン酸アンモニウム10%水溶液中で化成して、表面に誘電体酸化皮膜を形成し、コンデンサ中間体とした。
次に、陰極リード端子を溶接させた対向アルミ陰極箔と、前記の陽極箔との間に、セパレータを挟み、円筒状に巻き取り、コンデンサ素子を準備した。
次いで、実施例1の導電性高分子溶液にコンデンサ中間体を含むコンデンサ素子を、浸漬した後、真空引きし、120℃の熱風乾燥機で乾燥し、コンデンサ中間体表面に固体電解質層を形成させた。
その後、アルミ製のケースに、上記コンデンサ素子と、電解液であるアジピン酸水素アンモニウム20%−エチレングリコール80%溶液を入れ、封口ゴムで封止して、電解コンデンサを作製した。
作製したコンデンサについて、120Hzでの静電容量、100kHzでのESRの初期値、150℃、1000時間後のESRを測定した。その結果を表2に示す。
【0082】
【表2】

【0083】
(実施例7〜10)
導電性高分子溶液を表2に示すように変更したこと以外は実施例6と同様にして電解コンデンサを作製し、評価した。その結果を表2に示す。
【0084】
(比較例1)
13.8g(0.1mol)の3,4−b−チエノチオフェンの代わりに、14.2g(0.1mol)のエチレンジオキシチオフェンを用いたこと以外は実施例1と同様にして、1.5質量%のポリスチレンスルホン酸ドープポリエチレンジオキシチオフェン溶液を得た。そして、実施例6と同様にして電解コンデンサを作製し、評価した。その結果を表2に示す。
【0085】
実施例1〜5の導電性高分子溶液を塗布して形成した固体電解質層をそれぞれ備えた実施例6〜10の電解コンデンサは、高容量であり、また、耐熱性に優れていた。一方、比較例1の電解コンデンサは耐熱性に劣っていた。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の電解コンデンサの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0087】
10 電解コンデンサ
11 陽極
12 誘電体層
13 陰極
13a 固体電解質層



【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式(1)で表されるπ共役系導電性高分子を含有することを特徴とする固体電解質。
(化学式(1)におけるRは、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、置換フェニル基、シクロアルキル基、ナフタレン基、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、アルキルエーテル基、カルボキシ基、カルボキシエステル基、スルホ基、ハロゲン基のいずれかである。)
【化1】

【請求項2】
(a)アミド化合物、(b)窒素含有芳香環化合物、(c)2個以上のヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有芳香族性化合物、(d)グリシジル基を有する化合物、(e)アリル基、ビニルエーテル基、メタクリル基、アクリル基、メタクリルアミド基、アクリルアミド基から選ばれる1種とヒドロキシ基とを有する化合物、から選ばれる1種または2種以上の導電性向上成分をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の固体電解質。
【請求項3】
ポリアニオンをさらに含有することを特徴とする請求項1または2に記載の固体電解質。
【請求項4】
弁金属の多孔質体からなる陽極と、該陽極の表面が酸化されて形成された誘電体層と、該誘電体層上に形成され、請求項1〜3のいずれかに記載の固体電解質からなる固体電解質層を備える陰極とを有することを特徴とする電解コンデンサ。
【請求項5】
弁金属の多孔質体からなる陽極と該陽極の表面が酸化されて形成された酸化被膜の誘電体層とを有するコンデンサ中間体の誘電体層側表面に、導電性高分子溶液を塗布して固体電解質層を形成する電解コンデンサの製造方法であって、
前記導電性高分子溶液が、請求項3に記載の固体電解質を溶媒中に溶解又は分散した液であることを特徴とする電解コンデンサの製造方法。


【図1】
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【公開番号】特開2007−103557(P2007−103557A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−289727(P2005−289727)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)