説明

固体高分子形燃料電池発電システム

【課題】燃料ガス中の一酸化炭素濃度を省スペース且つ低コストで検知することができる固体高分子形燃料電池発電システムを提供する。
【解決手段】固体高分子電解質膜141aが燃料極141b及び酸化極141cで挟まれて、スタック111に供給される改質ガス2を燃料極141bに供給されると共に、スタック111に供給される空気3を酸化極141cに供給されるセル141からなるモニタ電池140と、モニタ電池140の電圧を計測するモニタ電池用の電圧計150とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体高分子形燃料電池発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池は、プロトン(H+)伝導性を有する固体高分子電解質膜を燃料極及び酸化極で挟んだ固体高分子電解質膜電極接合体(セル)を有するスタックに対して、水素ガス(H2)を含有する燃料ガスを燃料極に供給すると共に、酸素ガス(O2)を含有する酸化ガスを酸化極に供給し、上記固体高分子電解質膜を介して水素及び酸素を電気化学的に反応させることにより、電力を得ることができるようになっている。
【0003】
このような固体高分子形燃料電池を利用する発電システムにおいては、燃料ガスとして、灯油や天然ガス等の炭化水素から改質反応により水素ガスを生成させた改質ガスや、ボンベに充填された水素ガス等が使用されている。また、上記セルは、燃料極や酸化極に含まれている触媒が一酸化炭素と接触すると、被毒して触媒性能の劣化を生じてしまい、電圧が低下してしまう。
【0004】
このため、上記改質反応の際に一酸化炭素を生じてしまう改質ガスを燃料ガスとして使用する場合には、上記セルの上記触媒の劣化を抑制するため、改質反応器において、燃料ガス中の一酸化炭素を低減させるように二酸化炭素に酸化すると共に、当該燃料ガスを定期的にサンプリングして当該燃料ガスの組成をガスクロマトグラフィ等の分析装置で計測し、当該燃料ガス中の一酸化炭素濃度が基準値を超える場合には、上記改質反応器の補修等を行うようにしている。
【0005】
他方、ボンベに充填された水素ガスを燃料ガスとして使用する場合には、上記スタックで上記電気化学反応に利用し切れずに当該スタックから排出された当該燃料ガスを新たな燃料ガスと共に当該スタックに再び供給するように循環利用することから、上記ボンベ中にわずかながらも存在する一酸化炭素が、上記循環利用に伴って、徐々に濃縮されて当該スタック中に流通するようになるため、当該燃料ガスを定期的にサンプリングして当該燃料ガスの組成をガスクロマトグラフィ等の分析装置で計測し、当該燃料ガス中の一酸化炭素濃度が基準値を超える場合には、循環する当該燃料ガスを系外へ排出するようにしている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−123777号公報
【特許文献2】特開2004−327074号公報
【特許文献3】特開2006−216285号公報
【特許文献4】特開2007−012583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したように、従来の固体高分子形燃料電池発電システムにおいては、燃料ガスの組成分析を行うガスクロマトグラフィ等の分析装置を備える必要があることから、設置スペースが大きくなってしまうだけでなく、装置コストも高くなってしまっていた。
【0008】
このようなことから、本発明は、燃料ガス中の一酸化炭素濃度を省スペース且つ低コストで検知することができる固体高分子形燃料電池発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した課題を解決するための、第一番目の発明に係る固体高分子形燃料電池発電システムは、固体高分子電解質膜を燃料極及び酸化極で挟んだセルを有して、水素ガスを含有する燃料ガスを当該セルの当該燃料極に供給されると共に、酸素ガスを含有する酸化ガスを当該酸化極に供給されるスタックを備えている固体高分子形燃料電池発電システムにおいて、固体高分子電解質膜が燃料極及び酸化極で挟まれて、前記スタックに供給される前記燃料ガス又は当該スタックから排出された当該燃料ガスを当該燃料極に供給されると共に、前記スタックに供給される前記酸化ガス又は当該スタックから排出された当該酸化ガスを当該酸化極に供給されるセルからなるモニタ電池と、前記モニタ電池の電圧を計測するモニタ電池電圧計測手段とを備えていることを特徴とする。
【0010】
第二番目の発明に係る固体高分子形燃料電池発電システムは、第一番目の発明において、前記モニタ電池の前記セルが単一であることを特徴とする。
【0011】
第三番目の発明に係る固体高分子形燃料電池発電システムは、第一番目又は第二番目の発明において、前記モニタ電池の前記セルが、前記スタックの前記セルの有効発電面積と同一以下の有効発電面積であることを特徴とする。
【0012】
第四番目の発明に係る固体高分子形燃料電池発電システムは、第一番目から第三番目の発明のいずれかにおいて、前記モニタ電池の前記セルが、ラジカルによる前記固体高分子電解質膜の劣化を抑制する電解質膜劣化抑制手段を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る固体高分子形燃料電池発電システムによれば、スタックのセルの触媒の多くが一酸化炭素で被毒してしまう前にモニタ電池及びモニタ電池電圧計測手段で燃料ガス中の一酸化炭素濃度が高くなったことを検知することができるので、スタックの一酸化炭素による劣化を著しく抑制することができる。その結果、燃料ガスの組成分析を行うガスクロマトグラフィ等の分析装置を不要とすることができ、省スペース化及び低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る固体高分子形燃料電池発電システムの実施の形態を図面に基づいて説明するが、本発明は図面に基づいて説明する以下の実施の形態のみに限定されるものではない。
【0015】
[第一番目の実施の形態]
本発明に係る固体高分子形燃料電池発電システムの第一番目の実施形態を図1,2に基づいて説明する。図1は、固体高分子形燃料電池発電システムの要部の概略構成図、図2は、モニタ電池の要部の概略構成図である。
【0016】
図1に示すように、プロトン(H+)伝導性を有する固体高分子電解質膜を燃料極及び酸化極で挟んだ固体高分子電解質膜電極接合体(セル)を複数積層したスタック111の燃料ガス受入口には、灯油や天然ガス等の炭化水素1を改質反応させて水素ガスを含有する燃料ガスである改質ガス2を生成させる改質反応器121の燃料ガス送出口が接続されている。上記改質反応記121の炭化水素受入口には、炭化水素1を供給する炭化水素供給源(図示省略)が接続されている。上記スタック111の燃料ガス排出口は、系外へ接続している。
【0017】
前記スタック111の酸化ガス受入口には、酸素ガスを含有する酸化ガスである空気3を送給するブロア131の空気送出口が接続されている。上記スタック111の酸化ガス排出口は、系外へ接続している。
【0018】
前記改質反応器121の燃料ガス送出口と前記スタック111の燃料ガス受入口との間には、プロトン(H+)伝導性を有する固体高分子電解質膜141aを燃料極141b及び酸化極141cで挟んだ単一の固体高分子電解質膜電極接合体(セル)141(図2参照)からなるモニタ電池140の燃料ガス受入口が接続しており、当該モニタ電池140の当該セル141は、その有効発電面積が、前記スタック111のセルの有効発電面積と同一以下となっている。このモニタ電池140の燃料ガス排出口は、前記改質反応器121の燃料ガス送出口と前記スタック111の燃料ガス受入口との間の、当該モニタ電池140の上記燃料ガス受入口との接続位置よりも改質ガス2の流通方向下流側に接続している。
【0019】
前記改質反応器121の酸化ガス送出口と前記スタック111の酸化ガス受入口との間には、前記モニタ電池140の酸化ガス受入口が接続している。このモニタ電池140の酸化ガス排出口は、前記改質反応器121の酸化ガス送出口と前記スタック111の酸化ガス受入口との間の、当該モニタ電池140の上記酸化ガス受入口との接続位置よりも空気3の流通方向下流側に接続している。
【0020】
そして、前記モニタ電池140には、当該モニタ電池140の電圧を計測するモニタ電池電圧計測手段である電圧計150が電気的に接続されている。
【0021】
また、前記モニタ電池140の前記セル141の前記燃料極141b及び前記酸化極141cには、Pt系の触媒金属や活性炭を始めとして、Ce,Tl,Mn,Ag,Yb,Wのうちの少なくとも一種の酸化物,炭酸塩,リン酸塩のうちの少なくとも一種や、Ce,Tl,Mn,Ag,Ybのうちの少なくとも一種のタングステン酸塩等のような、ラジカルによる前記固体高分子電解質膜141aの劣化を抑制する電解質膜劣化抑制手段である劣化抑制材が含有されている。
【0022】
なお、本実施形態においては、前記改質反応器121、前記炭化水素供給源等により、燃料ガス供給手段を構成し、前記ブロア131等により、酸化ガス供給手段を構成している。
【0023】
このような本実施形態に係る固体高分子形燃料電池発電システム100においては、前記炭化水素供給源から炭化水素1を前記改質反応器121に送給して改質反応させることにより改質ガス2を生成させて前記スタック111の燃料ガス受入口に供給すると共に、前記ブロア131を作動させて空気3を前記スタック111の酸化ガス受入口に供給すると、当該スタック111の前記セルの前記燃料極に上記改質ガス2が供給されると共に、当該スタック111の前記セルの前記酸化極に上記空気3が供給されて、当該改質ガス2中の水素ガスと当該空気3中の酸素ガスとが当該セルにおいて電気化学的に反応することにより、当該スタック111から電力が得られる。
【0024】
上記スタック111内で上記電気化学反応に利用されずに残った改質ガス2は、当該スタック111の燃料ガス排出口から系外へ排出され、上記スタック111内で上記電気化学反応に利用されずに残った空気3は、当該スタック111の酸化ガス排出口から系外へ排出される。
【0025】
また、前記改質反応器121から送出された前記改質ガス2の一部は、前記スタック111の燃料ガス受入口に供給されずに分岐されて前記モニタ電池140の前記燃料ガス受入口に供給されると共に、前記ブロア131から送出された前記空気3の一部は、前記スタック111の酸化ガス受入口に供給されずに分岐されて前記モニタ電池140の前記酸化ガス受入口に供給されることにより、当該モニタ電池140の前記セル141の前記燃料極141bに当該改質ガス2の一部が供給されると共に、当該モニタ電池140の前記セル141の前記酸化極141cに当該空気3の一部が供給されて、当該改質ガス2中の水素ガスと当該空気3中の酸素ガスとが当該セル141において電気化学的に反応して、前記電圧計150で当該モニタ電池140の電圧値が計測される。
【0026】
そして、上記モニタ電池140内で上記電気化学反応に利用されずに残った上記改質ガス2は、当該モニタ電池140の燃料ガス排出口から前記スタック111の燃料ガス受入口へ供給され、上記モニタ電池140内で上記電気化学反応に利用されずに残った空気3は、当該モニタ電池140の酸化ガス排出口から前記スタック111の酸化ガス受入口へ供給される。
【0027】
このようにして前記電圧計150で前記モニタ電池140の電圧を計測しながら前記スタック111で発電運転を行っているときに、何らかの原因により、前記改質反応器121から送出される前記改質ガス2中の一酸化炭素の濃度が高くなると、前記モニタ電池140の前記セル141の前記燃料極141b中の前記触媒が被毒してしまい、触媒性能の劣化を生じることにより、上記電圧計150で計測される電圧値が低下する。
【0028】
この電圧計150で計測された上記電圧値が基準値を下回ると、前記改質反応器121から送出される前記改質ガス2中の一酸化炭素の濃度が高いと判断し、発電運転を一旦停止して、上記改質反応器121の補修等を行う。
【0029】
つまり、前記スタック111は、有効発電面積を大きくしたセルを多数積層していることから、電圧の低下が検知されたときには、セル中の触媒の多くが一酸化炭素で既に被毒した状態になってしまっている(約1/4〜1/2)のに対し、前記モニタ電池140は、上記スタック111のセルの有効発電面積と同一以下の有効発電面積のセル141を単一で用いていることから、一酸化炭素による被毒に伴う電圧低下を即時に検知することができるのである。
【0030】
このため、本実施形態に係る固体高分子形燃料電池発電システム100においては、前記スタック111の前記セルの前記触媒の多くが一酸化炭素で被毒してしまう前に前記モニタ電池140及び前記電圧計150で前記改質ガス2中の一酸化炭素濃度が高くなったことを検知することができるので、当該スタック111の一酸化炭素による劣化を著しく抑制することができる。
【0031】
したがって、本実施形態に係る固体高分子形燃料電池発電システム100によれば、改質ガス2の組成分析を行うガスクロマトグラフィ等の分析装置を不要とすることができ、省スペース化及び低コスト化を図ることができる。
【0032】
また、前記モニタ電池140の前記セル141の前記燃料極141b及び前記酸化極141cが前記劣化抑制材を含有していることから、一酸化炭素による前記触媒の劣化に伴って発生しやすくなる、ラジカルによる前記固体高分子電解質膜141aの劣化を抑制することができるので、当該モニタ電池140の寿命低下を抑制することができる。
【0033】
[第二番目の実施の形態]
本発明に係る固体高分子形燃料電池発電システムの第二番目の実施形態を図3に基づいて説明する。図3は、固体高分子形燃料電池発電システムの要部の概略構成図である。なお、前述した第一番目の実施形態の場合と同様な部分については、前述した第一番目の実施形態の説明で用いた符号と同様な符号を用いることにより、前述した第一番目の実施形態での説明と重複する説明を省略する。
【0034】
図3に示すように、前記スタック111の燃料ガス受入口には、水素ガス4を充填された水素ガスボンベ221が流量調整弁223を介して接続されている。上記スタック111の燃料ガス排出口には、ブロア222の吸引口が接続されている。上記ブロア222の排出口は、上記水素ガスボンベ221の上記流量調整弁223と上記スタック111の燃料ガス受入口との間に逆止弁225を介して接続している。上記ブロア222の排出口と上記逆止弁225との間は、燃料ガス系外排出手段である排出弁224を介して系外へ接続している。
【0035】
前記スタック111の酸化ガス受入口には、酸素ガス5を充填された酸素ガスボンベ231が流量調整弁233を介して接続されている。上記スタック111の酸化ガス排出口には、ブロア232の吸引口が接続されている。上記ブロア232の排出口は、上記酸素ガスボンベ231の上記流量調整弁233と上記スタック111の酸化ガス受入口との間に逆止弁235を介して接続している。上記ブロア232の排出口と上記逆止弁235との間は、酸化ガス系外排出手段である排出弁234を介して系外へ接続している。
【0036】
前記水素ガスボンベ221の前記流量調整弁223と前記逆止弁225との間と、前記スタック111の燃料ガス受入口との間には、前記モニタ電池140の燃料ガス受入口が接続している。このモニタ電池140の燃料ガス排出口は、前記水素ガスボンベ221の前記流量調整弁223と前記逆止弁225との間と、前記スタック111の燃料ガス受入口との間の、当該モニタ電池140の上記燃料ガス受入口との接続位置よりも水素ガス4の流通方向下流側に接続している。
【0037】
前記酸素ガスボンベ231の前記流量調整弁233と前記逆止弁235との間と、前記スタック111の酸化ガス受入口との間には、前記モニタ電池140の酸化ガス受入口が接続している。このモニタ電池140の酸化ガス排出口は、前記酸素ガスボンベ231の前記流量調整弁233と前記逆止弁235との間と、前記スタック111の酸化ガス受入口との間の、当該モニタ電池140の上記酸化ガス受入口との接続位置よりも酸素ガス5の流通方向下流側に接続している。
【0038】
なお、本実施形態においては、前記水素ガスボンベ221、前記ブロア222、前記流量調整弁223、前記逆止弁225等により、燃料ガス供給手段を構成し、前記酸素ガスボンベ231、前記ブロア232、前記流量調整弁233、前記逆止弁235等により、酸化ガス供給手段を構成している。
【0039】
このような本実施形態に係る固体高分子形燃料電池発電システム200においては、前記ブロア222を作動させて前記流量調整弁223を開放することにより、水素ガス4を前記スタック111の燃料ガス受入口に供給すると共に、前記ブロア232を作動させて前記流量調整弁233を開放することにより、酸素ガス5を前記スタック111の酸化ガス受入口に供給すると、当該スタック111の前記セルの前記燃料極に上記水素ガス4が供給されると共に、当該スタック111の前記セルの前記酸化極に上記酸素ガス5が供給されて、当該水素ガス4と当該酸素ガス5とが当該セルにおいて電気化学的に反応することにより、当該スタック111から電力が得られる。
【0040】
上記スタック111内で上記電気化学反応に利用されずに残った水素ガス4は、当該スタック111の燃料ガス排出口から前記ブロア222により前記逆止弁225を介して前記水素ガスボンベ221からの水素ガス4と共に上記スタック111の燃料ガス受入口へ供給されて循環再利用され、上記スタック111内で上記電気化学反応に利用されずに残った酸素ガス5は、当該スタック111の酸化ガス排出口から前記ブロア232により前記逆止弁235を介して前記酸素ガスボンベ231からの酸素ガス5と共に上記スタック111の酸化ガス受入口へ供給されて循環再利用される。
【0041】
また、前記水素ガスボンベ221から送出された前記水素ガス4及び前記スタック111の燃料ガス排出口から排出された前記水素ガス4の一部は、前記スタック111の燃料ガス受入口に供給されずに分岐されて前記モニタ電池140の前記燃料ガス受入口に供給されると共に、前記酸素ガスボンベ231から送出された前記酸素ガス5及び前記スタック111の酸化ガス排出口から排出された前記酸素ガス5の一部は、前記スタック111の酸化ガス受入口に供給されずに分岐されて前記モニタ電池140の前記酸化ガス受入口に供給されることにより、当該モニタ電池140の前記セル141の前記燃料極141bに当該水素ガス4の一部が供給されると共に、当該モニタ電池140の前記セル141の前記酸化極141cに当該酸素ガス5の一部が供給されて、当該改水素ガス4と当該酸素ガス5とが当該セル141において電気化学的に反応して、前記電圧計150で当該モニタ電池140の電圧値が計測される。
【0042】
そして、上記モニタ電池140内で上記電気化学反応に利用されずに残った上記水素ガス4は、当該モニタ電池140の燃料ガス排出口から前記スタック111の燃料ガス受入口へ供給され、上記モニタ電池140内で上記電気化学反応に利用されずに残った酸素ガス5は、当該モニタ電池140の酸化ガス排出口から前記スタック111の酸化ガス受入口へ供給される。
【0043】
このようにして前記電圧計150で前記モニタ電池140の電圧を計測しながら前記スタック111で発電運転を行っているときに、前記スタック111内を循環流通している前記水素ガス4中の一酸化炭素の濃度が次第に高くなってくると、前記モニタ電池140の前記セル141の前記燃料極141b中の前記触媒が被毒して、触媒性能の劣化を生じることにより、上記電圧計150で計測される電圧値が低下する。
【0044】
この電圧計150で計測された上記電圧値が基準値を下回ると、前記スタック111内を循環流通している前記水素ガス4中の一酸化炭素の濃度が高いと判断し、前記排出弁224を調整して、当該スタック111内を循環流通している当該水素ガス4の一部を系外へ排出することにより、当該スタック111内を流通する水素ガス4の一酸化炭素濃度を低減させると共に、前記排出弁234を調整して、上記水素ガス4の系外排出と併せて、当該スタック111内を循環流通している前記酸素ガス5の一部も系外へ排出することにより、当該スタック111内の燃料極側と酸化極側との差圧を一定の範囲内に抑えるようにする。
【0045】
つまり、前述した第一番目の実施形態に係る固体高分子形燃料電池発電システム100は、炭化水素1を改質した改質ガス2を燃料ガスとして利用すると共に、空気3を酸化ガスとして利用するものであったが、本実施形態に係る固体高分子形燃料電池発電システム200は、水素ガス4を燃料ガスとして利用すると共に、酸素ガス5を酸化ガスとして利用するようにしたものである。
【0046】
したがって、本実施形態に係る固体高分子形燃料電池発電システム200によれば、前述した第一番目の実施形態に係る固体高分子形燃料電池発電システム100の場合と同様な作用効果を奏し得ることができる。
【0047】
[他の実施形態]
なお、前述した第一番目の実施形態においては、モニタ電池140の燃料ガス受入口及び燃料ガス排出口を改質反応器121の燃料ガス送出口とスタック111の燃料ガス受入口との間に接続すると共に、モニタ電池140の酸化ガス受入口及び酸化ガス排出口をブロア131とスタック111の酸化ガス受入口との間に接続、すなわち、スタック111に供給する改質ガス2をセル141の燃料極141bに供給すると共に、スタック111に供給する空気3をセル141の酸化極141cに供給するようにモニタ電池140を接続した固体高分子形燃料電池発電システム100の場合について説明したが、他の実施形態として、例えば、図4に示すように、モニタ電池140の燃料ガス受入口及び燃料ガス排出口をスタック111の燃料ガス排出口の改質ガス2の流通方向下流側に接続すると共に、モニタ電池140の酸化ガス受入口及び酸化ガス排出口をスタック111の酸化ガス排出口の空気3の流通方向下流側に接続、すなわち、スタック111から排出された改質ガス2をセル141の燃料極141bに供給すると共に、スタック111から排出された空気3をセル141の酸化極141cに供給するようにモニタ電池140を接続した固体高分子形燃料電池発電システム300の場合であっても、前述した第一番目の実施形態の場合と同様な作用効果を奏することができる。
【0048】
また、前述した第二番目の実施形態においては、モニタ電池140の燃料ガス受入口及び燃料ガス排出口を水素ガスボンベ221とスタック111の燃料ガス受入口との間に接続すると共に、モニタ電池140の酸化ガス受入口及び酸化ガス排出口を酸素ガスボンベ231とスタック111の酸化ガス受入口との間に接続、すなわち、スタック111に供給する水素ガス4をセル141の燃料極141bに供給すると共に、スタック111に供給する酸素ガス5をセル141の酸化極141cに供給するようにモニタ電池140を接続した固体高分子形燃料電池発電システム200の場合について説明したが、他の実施形態として、例えば、図5に示すように、モニタ電池140の燃料ガス受入口及び燃料ガス排出口をスタック111の燃料ガス排出口とブロア222との間に接続すると共に、モニタ電池140の酸化ガス受入口及び酸化ガス排出口をスタック111の酸化ガス排出口とブロア232との間に接続、すなわち、スタック111から排出された水素ガス4をセル141の燃料極141bに供給すると共に、スタック111から排出された酸素ガス5をセル141の酸化極141cに供給するようにモニタ電池140を接続した固体高分子形燃料電池発電システム400の場合であっても、前述した第二番目の実施形態の場合と同様な作用効果を奏することができる。
【0049】
また、前述した各実施形態においては、ラジカルによる固体高分子電解質膜141aの劣化を抑制する劣化抑制材を燃料極141b及び酸化極141cに含有したセル141でモニタ電池140を構成するようにしたが、他の実施形態として、例えば、図6に示すように、前記劣化抑制材を固体高分子電解質膜に含有させた電解質膜劣化抑制手段である劣化抑制層541d,541eを固体高分子電解質膜141aと燃料極541b及び酸化極541cとの間にそれぞれ設けたセル541でモニタ電池を構成するようにすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る固体高分子形燃料電池発電システムは、燃料ガスの組成分析を行うガスクロマトグラフィ等の分析装置を不要とすることができ、省スペース化及び低コスト化を図ることができるので、産業上、極めて有益に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る固体高分子形燃料電池発電システムの第一番目の実施形態の要部の概略構成図である。
【図2】図1のモニタ電池の要部の概略構成図である。
【図3】本発明に係る固体高分子形燃料電池発電システムの第二番目の実施形態の要部の概略構成図である。
【図4】本発明に係る固体高分子形燃料電池発電システムの他の実施形態の要部の概略構成図である。
【図5】本発明に係る固体高分子形燃料電池発電システムのさらに他の実施形態の要部の概略構成図である。
【図6】本発明に係る固体高分子形燃料電池発電システムのさらに他の実施形態のモニタ電池の要部の概略構成図である。
【符号の説明】
【0052】
1 炭化水素
2 改質ガス
3 空気
4 水素ガス
5 酸素ガス
100 固体高分子形燃料電池発電システム
111 スタック
121 改質反応器
131 ブロア
140 モニタ電池
141 固体高分子電解質膜電極接合体(セル)
141a 固体高分子電解質膜
141b 燃料極
141c 酸化極
150 電圧計
200 固体高分子形燃料電池発電システム
221 水素ガスボンベ
222 ブロア
223 流量調整弁
224 排出弁
225 逆止弁
231 酸素ガスボンベ
232 ブロア
233 流量調整弁
234 排出弁
235 逆止弁
300,400 固体高分子形燃料電池発電システム
541 固体高分子電解質膜電極接合体(セル)
541b 燃料極
541c 酸化極
541d,541e 劣化抑制層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体高分子電解質膜を燃料極及び酸化極で挟んだセルを有して、水素ガスを含有する燃料ガスを当該セルの当該燃料極に供給されると共に、酸素ガスを含有する酸化ガスを当該酸化極に供給されるスタックを備えている固体高分子形燃料電池発電システムにおいて、
固体高分子電解質膜が燃料極及び酸化極で挟まれて、前記スタックに供給される前記燃料ガス又は当該スタックから排出された当該燃料ガスを当該燃料極に供給されると共に、前記スタックに供給される前記酸化ガス又は当該スタックから排出された当該酸化ガスを当該酸化極に供給されるセルからなるモニタ電池と、
前記モニタ電池の電圧を計測するモニタ電池電圧計測手段と
を備えていることを特徴とする固体高分子形燃料電池発電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の固体高分子形燃料電池発電システムにおいて、
前記モニタ電池の前記セルが単一である
ことを特徴とする固体高分子形燃料電池発電システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の固体高分子形燃料電池発電システムにおいて、
前記モニタ電池の前記セルが、前記スタックの前記セルの有効発電面積と同一以下の有効発電面積である
ことを特徴とする固体高分子形燃料電池発電システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の固体高分子形燃料電池発電システムにおいて、
前記モニタ電池の前記セルが、ラジカルによる前記固体高分子電解質膜の劣化を抑制する電解質膜劣化抑制手段を備えている
ことを特徴とする固体高分子形燃料電池発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−118284(P2010−118284A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291810(P2008−291810)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】