説明

固化成形体の製造方法

【課題】消石灰、及び産業廃棄物等を用いた骨材から、固化成形体を製造する製造方法を提供する。
【解決手段】消石灰を用いて製造する固化成形体の製造方法において、消石灰の混合割合が40重量%から80重量%である消石灰および骨材の混合物に、水を10重量%から20重量%加え混練して混練物を製造する工程と、混練物を型枠に入れ毎分3000回から9000回の振動を与えて振動成形する工程と、振動成形後の成形体を直ちに型枠から取り出し、炭酸ガス中で炭酸化養生をさせる工程と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築物の内装材、外装材あるいは公共設備に利用される舗装用ブロック、レンガ、タイル、化粧石材などの固化成形体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
舗装用ブロック、レンガ、タイル等の成形体は、一般に、水硬性のセメントあるいは磁器などで作られている。例えば、セメント製の舗装用ブロックはセメントを結合材として製造する場合、一般にセメントと破砕された石等からなる骨材に水を加えて混練し、振動成形した後に水和反応を起こさせ、一定の強度が得られるまで養生をしている。また、さらに強度を増すため、あるいは白華現象を防止するために、炭酸ガスによる炭酸化養生を行っている。
【0003】
磁器製の成形体は、粘土と骨材に水を加えた後、所定の形状に成形し、乾燥した後高温で焼成することにより、粘土と骨材を焼結あるいは溶融固化させ製造している。結合材として水酸化カルシウム等を用いる方法は、水酸化カルシウムと骨材と水を混練し、高圧成形して成形体を製造し、その後、成形体を炭酸ガスによる炭酸化養生を行うことにより強度を確保している。
【0004】
一方、近年、多量に発生する産業廃棄物の処理が問題になっている。種類が多く、多量に発生する産業廃棄物は、これまで埋め立て等により処理されてきた。近年、産業廃棄物に含まれる有害成分の雨水、地下水による溶出等が懸念され、埋め立て処理の規制など法的な規制が強化されつつある。
【0005】
産業廃棄物としては、天然石を破砕した時に発生する石粉、コンクリート、レンガ、タイルなどの建築廃材、ごみ焼却装置から出る溶融灰、溶鉱炉スラグ、ガラスカレット、石炭灰、汚水処理残渣、メッキ処理残渣等がある。最近、これらの産業廃棄物を有効に利用する技術が開発されつつある。
【特許文献1】特開2000−1290058号公報
【特許文献2】特許第2988196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水硬性のセメントを用いて固化成形体を製造するためには、振動成形後に強度を増すために、一定時間保持し養生することで、水和反応を起こさせ固化させている。水和反応により一定の強度が得られた段階で、振動成形機の型枠から固化成形体を取り出すことができるが、水和反応には時間を要する。
【0007】
磁器製のものは、強度を増すために高温で焼成する工程が必要であり、多くのエネルギーを必要とする。また、産業廃棄物等を骨材に用いた場合、産業廃棄物に含まれる有害物質が、加熱されることにより、蒸気になり飛散する恐れがある。
【0008】
水酸化カルシウムを用いて固化成形体を製造する場合は、成形後の成形体の強度が一般に弱く形状を保つことができないため、高圧プレスによる高圧成形が行われている。高圧プレスは、型枠に入れた水酸化カルシウムと骨材等の混合物を、100N/mmから300N/mmの高圧で押し付け、粒子間を密着させて成形する方法である。
【0009】
そのため、高圧成形は、加圧するために大きなエネルギーを必要とすると共に、設備費が高価になる等の問題がある。また、水酸化カルシウムは、付着性が強いことから型枠からの取り出した時に、成形体の一部が型枠に付着して欠落することがある。
【0010】
また、成形体の強度を向上ためには、炭酸ガスによる炭酸化養生が必要になる。高圧成形では、成形された成形体が圧密化されており、成形体の内部には細孔が少ない。そのため、炭酸化養生では、炭酸ガスを成形体の中心部まで拡散させ固化させる必要があるが、細孔が少なく、拡散速度が遅いため長時間の養生を必要とするなどの問題がある。炭酸化養生により高強度に固化した固化成形体が舗装用ブロック等としての製品となるが、舗装用ブロック等は、使用目的により、耐酸性、透水性等が要求される。
【0011】
一方、産業廃棄物の処理方法として、埋め立て処理が経済的であるが、産業廃棄物に含まれる有害物の溶出が懸念され、最近、法的にも規制されている。また、産業廃棄物からの有価物の回収が注目され、一部実用化しされているが、大部分は経済性の面から実用化には至っていない。そのため、産業廃棄物を有効利用することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、消石灰の混合割合が40重量%から80重量%である消石灰および骨材の混合物に、水を10重量%から20重量%加え混練して混練物を製造する工程と、混練物を型枠に入れ毎分3000回から9000回の振動を与えて振動成形する工程と、振動成形後の成形体を直ちに型枠から取り出し、炭酸ガス中で炭酸化養生をさせる工程と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の骨材として天然石を破砕した時に残渣として発生する石粉、コンクリート、レンガ、タイルなどの建築廃材、ごみ焼却装置から出る溶融灰、溶鉱炉スラグ、ガラスカレット、石炭灰、汚水処理残渣、メッキ処理残渣などの産業廃棄物を用いることで、振動成形後の成形体の強度を高め、成形体の形崩れを防止することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の混合物における混合割合が、10重量%から20重量%で平均粒径2mm以下の石粉を骨材の一部とすることで、振動成形後の成形体の強度を高め、成形体の形崩れを防止することを特徴とする。
【0015】
本発明の振動成形は10秒から60秒間振動を継続させて行うことを特徴とする。
【0016】
本発明の混練物に金属製、植物製あるいは樹脂製の格子状あるいは網状の強化材を混入させ、固化成形体の強度を高めることを特徴とする。また、本発明の混練物に塩化マグネシウムおよび/又は塩化ナトリウムを添加することで、固化成形体の強度を高めることを特徴とする。
【0017】
本発明の混練物に柿渋、ひまし油等の植物油を添加することを特徴とする固化成形体の製造方法である。また、本発明の混練物に酸化チタンを添加することを特徴とする。
【0018】
本発明の炭酸化養生は、成形体を6容積%から30容積%の炭酸ガスを含むガス雰囲気中で養生し、固化成形体を製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、消石灰を用いて製造する固化成形体の製造方法であって、最初に、消石灰と骨材を混合した混合物の消石灰の混合割合、混合物への水の添加割合を適正化することで混練物を製造する。その後、振動成形の振動数を適正化することで、混練物の振動成形を可能にし、形崩れをしない成形体を製造する。さらに、この成形体を炭酸ガスにより炭酸化養生することで製品となる固化成形体を製造するものである。
【0020】
水硬性のセメント系では、振動成形により製造された成形体を、一定の時間養生して水和反応を起こさせて固化させる必要がある。これに対し、本発明の成形体は、これらの養生が不要であり、振動成形後に、一定の形状を維持した成形体として型枠から取り出される。そのため、振動成形後、直ちに炭酸化養生を実施することができる。
【0021】
また、炭酸化養生により製造された固化成形体は、水硬性のセメント系の固化成形体と同等あるいはそれ以上の強度を持っている。振動成形法は、高圧成形法に比べてエネルギー消費量が少なく、成形体を短時間で成形することができ、設備も安価である等の特徴を持っている。
【0022】
また、骨材の一部を、平均粒径2mm以下の石粉とすることにより、強固な成形体、および強固な固化成形体を製造することができる。さらに、混練物に金属製、植物製あるいは樹脂製の格子状あるいは網状の強化材を混入させることで、強固な固化成形体を製造することができる。また、混練物に塩化マグネシウムおよび/又は塩化ナトリウムを混入させることで、強固な固化成形体を製造することができる。
【0023】
また、混練物に柿渋、ひまし油等の植物油を混合させることで、破水効果をもたせることができる。特に、固化成形体を侵食する酸性雨等の進入を防止することができる。さらに、混練物に酸化チタンを混合させることにより、有害な有機微量成分を除去する光触媒としての効果を発現させることができる。
【0024】
固化成形体の中の消石灰は、炭酸化され一部炭酸カルシウムになっているが、残りは消石灰として存在しており、この消石灰は、製品として使用している過程で、空気中の炭酸ガスを吸収し徐々に炭酸カルシウムに変化する。そのため、地球の温暖化の原因の一つである大気中の炭酸ガスを固定化する働きを持っている。また、本発明の固化成形体は赤外線を吸収する性質があることから、舗装用ブロック等に適用した場合、冬場の凍結を防止する効果等がある。
【0025】
骨材としては、天然石を破砕した時に残渣として発生する石粉、コンクリート、レンガ、タイルなどの建築廃材の破砕材、ごみ焼却装置から出る溶融灰、溶鉱炉スラグ、ガラスカレット、石炭灰、汚水処理残渣、メッキ処理残渣などの産業廃棄物を利用することができる。そのため、産業廃棄物の有効利用が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は本発明の製造工程を示す図である。図1は歩道用などに用いられる舗装用ブロック等に適用する固化成形体を例に取り、製造工程を示したものである。消石灰、骨材等の計量器の電源等が入れられ、動作が開始される(ステップS0)。
【0027】
ステップS1は、消石灰、骨材及び水を計量器で計量する工程である。予めホッパ等に充填されている消石灰及び骨材を取り出し計量する。容器等に充填された水も同時に計量する。消石灰と骨材を混合した混合物の中で、消石灰の混合割合は、40重量%から80重量%であり、残りが骨材となるように計量され調整される。また、水は計量し混合物に対し10重量%から20重量%の範囲で設定する。
【0028】
ステップS2は、計量した消石灰、骨材、及び水を混練機で混練し、混練物を製造する工程である。この工程で、骨材と消石灰を均質に混練し、骨材の表面に消石灰と水を均一に付着させる。混練時間は5分から10分程度である。
【0029】
ステップS3は、消石灰、骨材、及び水を混練した混練物を混練機から取り出し、振動成形機の型枠に入れ振動成形することで、成形体を製造する工程である。振動成形の振動数は、1分間に3000回から9000回であり、振動成形に要する時間は10秒から60秒である。振動成形では、混練物内の空気の気泡を追い出す働きと、消石灰、骨材及び水を均質化し密に充填させ、消石灰を骨材の結合材として、水分子間力により結合させる工程である。
【0030】
この水分子間力による結合は、比較的弱い結合であり、これまで高圧成形が主流であったが、原材料の調合を適正化し、振動成形の条件を選定することにより、振動成形により形崩れの起きない強い成形体を製造できることが明らかになった。
【0031】
なお、高圧成形は、圧密化することによる消石灰の分子間力を発現させる方法であり、振動成形とは結合形態が異なる。高圧成形は、粒子が密に充填されるが、振動成形は、粒子が適度に充填されるため、製造された成形体内に細孔が存在する。そのため、後の工程である炭酸化養生において、炭酸ガスの成形体内部への拡散を容易にすることができ、均質な炭酸ガス養生の達成、及び養生時間の短縮が図れる。
【0032】
振動成形後は、成形された成形体を振動成形機の型枠から取りだす。成形体が振動成形機の型枠に付着して取り外しが困難な場合は、成形体と型枠の間に紙を敷くことにより容易に取り外すことができる。
【0033】
ステップS4は、振動成形機の型枠から取り外した成形体を、炭酸化養生装置に入れ、炭酸化する工程である。炭酸ガスの濃度は、6容積%から30容積%で、この雰囲気の中で成形体を1日から10日程度炭酸化することにより、製品として十分な強度を持つ固化成形体が製造される。炭酸化養生では、消石灰と炭酸ガスを反応させることにより、消石灰を炭酸カルシウムに変化させる。この炭酸カルシウムの生成により、骨材間に強い結合力を発現させ、強固な固化成形体を製造する工程である。
【0034】
すなわち、炭酸ガスは、成形体の細孔内へ拡散し、細孔内に付着している水に溶解し炭酸水となる。炭酸ガスは水に良く吸収され、水に溶解している消石灰と反応して炭酸カルシウムに変わることで、強い固体結合材になり骨材間を結合する。水分は時間と共に蒸発するが、消石灰と炭酸ガスの反応により、水が発生するため蒸発水を補うことができ、常に炭酸ガスを吸収させるための水は存在することになり、炭酸化養生は継続される。
【0035】
図2は、本発明の消石灰量を変化し製造した成形体及び固化成形体の評価の一例を示す図である。消石灰の混合割合は、10重量%から100重量%まで変化している。残りは骨材の量である。この時の、水分量は消石灰と骨材の混合物に対し、20重量%添加している。また、振動成形の振動数は、1分間に6000回であり、振動時間は30秒である。
【0036】
振動成形後の成形体の強さは、○印が一定の強度を持ち、持ち運び等により成形体が形崩れをしない状態を示している。△印は、成形体を持ち運びする通常の作業の過程で、時として、割れが生じたり、角が一部欠けたりするなど形崩れが生じやすい状態を示している。×印は、成形体を型枠から外した時に、成形体の形状が維持できず、一部粉体化する状態を示している。
【0037】
固化成形体の強度は、圧縮強度試験により評価している。○印は圧縮強度が35N/mm以上であり、△印は圧縮強度が18N/mmから35N/mmの範囲を示している。×印は圧縮強度が18N/mm以下であることを示している。なお、水硬性のセメント系で造られる成形体の強度は、18N/mmから35N/mm程度である。
【0038】
図2に示すように、消石灰の割合が10重量%から20重量%の範囲では、成形体を形成しないことが分かる。消石灰の割合が30重量%では、成形体の一部に形崩れが起き、固化成形体の強度も比較的低い値である。消石灰の割合が40重量%から70重量%の範囲では、良好な成形体及び固化成形体を作ることができる。
【0039】
消石灰が80重量%の場合、成形体は良好であるが、固化成形体の強度が多少低下する。しかしながら、セメント系とほぼ同等の強度を示しており、適用製品が多少制限されるが、実用化することができる。また、消石灰が100重量%の場合は、成形体の強度が弱く、形崩れがしやすく、固化成形体の強度も弱いため実用性がないと評価する。そこで、形崩れが起きない成形体、及び高強度の固化成形体を造るには、消石灰の割合を40重量%から80重量%にすることが望ましい。
【0040】
一方、製品である固化成形体の製造コストを低減するためには、消石灰の使用量を低減することが望ましい。また、消石灰の使用量を低減することにより、安価な骨材の使用量を増加させることができる。すなわち、骨材として産業廃棄物を用いるが、この産業廃棄物の量を増加させることにより、産業廃棄物の有効利用を図ることができる。そのため、消石灰の混合割合として、40重量%を基準とし各種製造条件における評価を次に説明する。
【0041】
図3は、本発明の振動成形の振動数及び振動時間を変化させ製造した成形体及び固化成形体の評価の一例を示す図である。振動成形の振動数は、一分間に2000回から10000回の範囲で変化させている。この時の消石灰の割合は、40重量%で骨材の割合は60重量%である。また、水分量は20重量%である。振動成形の目的は、持ち運び等により壊れない成形体を作ることである。そのためには、混練物の中に含まれる空気の気泡を除去し、混練物に含まれる骨材を密に充填させ、骨材間に消石灰を十分浸透させて強い付着力を発現させる必要がある。
【0042】
図3に評価結果を示したが、形崩れをしない成形体を形成できたのは、振動数で1分間に3000回から9000回の範囲である。振動数を1分間に10000回に増加すると振動が激しく、成形体の中の骨材がそれぞれ独立に振動し、成形体が密に充填されない状態になる。そのため、成形体から製造した固化成形体は強度不足になる。
【0043】
また、同じ条件で、振動数を1分間に2000回に減少させると、振動時間を30分から60分に増加させても成形体の強度は弱い。成形体を型枠から取り外す時に、成形体が割れて壊れる現象が見られ、固化成形体も強い強度を示さない。そこで、形崩れが起きない成形体、及び強度の高い固化成形体を造るには、振動数を1分間に3000回から9000回の範囲で振動成形することが望ましい。
【0044】
なお、振動成形の振動数は、装置が共振しない振動数を選択する必要がある。装置が共振すると密充填が阻害され成形体の形状が崩れる。共振を避けるためには、共振しない振動数を選定するか、装置の共振振動数を変えれば容易に対応できる。
【0045】
図4は、本発明の水分量を変化し製造した成形体及び固化成形体の評価の一例を示す図である。水分量は、消石灰と骨材の混合物に対し、5重量%から30重量%の範囲で混合し混練している。この時の消石灰の割合は、40重量%で骨材の割合は60重量%である。また、振動成形の振動数は、1分間に6000回及び3000回であり、振動時間は30秒から60秒である。
【0046】
水分量が5重量%の場合、振動数を1分間に6000回で振動時間30秒、及び、振動数を1分間に3000回で振動時間60秒の評価結果を示したが、水の不足から十分な結合力が発現できず成形体を形成しない。水分量が10重量%の場合、振動成形の振動数が1分間に6000回で振動時間30秒では、壊れやすい成形体が形成される。この成形体を炭酸化養生した固化成形体も十分な強度を示さない。
【0047】
水分量が10重量%で振動成形の振動数が1分間に3000回で振動時間45秒および60秒の場合、振動成形により形崩れをしない成形体が形成される。また、固化成形体も十分な強度を示している。水分量が20重量%の場合、振動成形の振動数が1分間に6000回で、振動時間30秒の条件では、振動成形により形崩れをしない成形体が形成される。また、固化成形体も十分な強度を示している。
【0048】
水分量が25重量%及び30重量%の場合、振動成形の振動数が1分間に6000回で振動時間30秒の条件では、成形体が密に充填されないため、壊れやすい成形体が形成される。また、固化成形体も十分な強度が得られていない。そのため、水分量は10重量%から20重量%が望ましい。
【0049】
本発明では、骨材の一部を平均粒径2mm以下の石粉とすることにより、骨材が密に充填され、強い強度を持つ成形体および固化成形体を製造することができる。また、混練物に金属製、植物製あるいは樹脂製の格子状あるいは網状の強化材を混入させることで、割れ等が防止され、強い強度を持つ成形体および固化成形体を製造することができる。さらに、混練物に塩化マグネシウム及び/又は塩化ナトリウムを混入させることで、高強度な成形体および固化成形体を製造することができる。
【0050】
また、混練物に柿渋、ひまし油等の植物油を混合させることで、破水効果をもたせることができる。特に、固化成形体を侵食する酸性雨等の進入を防止することができる。さらに、混練物に酸化チタンを混合させることにより、有害な有機微量成分を除去する光触媒としての効果を発現させることができる。
【0051】
固化成形体の中の消石灰は、炭酸化養生により一部炭酸カルシウムになっているが、残りは消石灰として存在している。この消石灰は製品として使用している過程で、空気中の炭酸ガスを吸収し徐々に炭酸カルシウムに変化する。そのため、地球の温暖化の原因の一つである大気中の炭酸ガスを固定化する働きを持っている。また、本発明の固化成形体は赤外線を吸収する性質があることから舗装用ブロック等に適用した場合、冬場の凍結を防止する効果等がある。
【0052】
本発明は、骨材として、天然石を破砕した時に残渣として発生する石粉、コンクリート、レンガ、タイルなどの建築廃材の破砕材、ごみ焼却装置から出る溶融灰、溶鉱炉スラグ、ガラスカレット、石炭灰、汚水処理残渣、メッキ処理残渣などの産業廃棄物を利用することができる。そのため、産業廃棄物の有効利用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の製造工程を示す図である。
【図2】本発明の消石灰量を変化し製造した成形体及び固化成形体の評価の一例を示す図である。
【図3】本発明の振動成形の振動数及び振動時間を変化し製造した成形体及び固化成形体の評価の一例を示す図である。
【図4】本発明の水分量を変化し製造した成形体及び固化成形体の評価の一例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消石灰を用いて製造する固化成形体の製造方法において、消石灰の混合割合が40重量%から80重量%である消石灰および骨材の混合物に、水を10重量%から20重量%加え混練して混練物を製造する工程と、前記混練物を型枠に入れ毎分3000回から9000回の振動を与えて振動成形する工程と、前記振動成形後の成形体を直ちに前記型枠から取り出し、炭酸ガス中で炭酸化養生をさせる工程と、を備えたことを特徴とする固化成形体の製造方法。
【請求項2】
前記骨材として天然石を破砕した時に残渣として発生する石粉、コンクリート、レンガ、タイルなどの建築廃材、ごみ焼却装置から出る溶融灰、溶鉱炉スラグ、ガラスカレット、石炭灰、汚水処理残渣、メッキ処理残渣などの産業廃棄物を用いることで、前記振動成形後の前記成形体の強度を高め、前記成形体の形崩れを防止することを特徴とする請求項1に記載の固化成形体の製造方法。
【請求項3】
前記混合物における混合割合が10重量%から20重量%で平均粒径2mm以下の石粉を前記骨材の一部とすることで前記振動成形後の前記成形体の強度を高め、前記成形体の形崩れを防止することを特徴とする請求項1に記載の固化成形体の製造方法。
【請求項4】
前記振動成形は10秒から60秒間振動を継続させて行うことを特徴とする請求項1に記載の固化成形体の製造方法。
【請求項5】
前記混練物に金属製、植物製あるいは樹脂製の格子状あるいは網状の強化材を混入させ、前記固化成形体の強度を高めることを特徴とする請求項1に記載の固化成形体の製造方法。
【請求項6】
前記混練物に塩化マグネシウムおよび/又は塩化ナトリウムを添加することで、前記固化成形体の強度を高めることを特徴とする請求項1に記載の固化成形体の製造方法。
【請求項7】
前記混練物に柿渋、ひまし油等の植物油を添加することを特徴とする請求項1に記載の固化成形体の製造方法。
【請求項8】
前記混練物に酸化チタンを添加することを特徴とする請求項1に記載の固化成形体の製造方法。
【請求項9】
前記炭酸化養生は、前記成形体を6容積%から30容積%の前記炭酸ガスを含むガス雰囲気中で養生し、前記固化成形体を製造することを特徴とする請求項1に記載の固化成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−240236(P2006−240236A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−62424(P2005−62424)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(305012979)株式会社 エスエムエー (1)
【出願人】(305012980)広築ブロック株式会社 (1)
【出願人】(303020129)株式会社ワイエスデー (3)
【Fターム(参考)】