説明

固定具

【課題】底面と床面との間の隙間が小さく、かつ、床面から持ち上げることが困難な被固定物についても、容易に床面に固定することができる固定具を提供する。
【解決手段】水平支持板21の下面には床面に対する第一粘着手段23を備えさせ、該水平支持板の上面には一対の水平基部27aを間隔を置いて備えた垂直可動板27を被固定物に接離する方向に位置調節可能、かつ、この位置調節可能な範囲内における所望の位置に固定可能に取り付け、該垂直可動板には該被固定物の垂直面に対する第二粘着手段37を備えさせ、前記水平支持板の上面には押圧ボルト支持体39を位置調節不能に立設し、該押圧ボルト支持体には該押圧ボルト支持体を貫くねじ孔を形成し、該ねじ孔に押圧ボルト53を螺挿し、該押圧ボルトを回転させることにより該押圧ボルトの先端が該垂直可動板を該被固定物方向に押圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定具に関するものであり、特に精密機械、重量物等の被固定物を該被固定物にも床面にも傷をつけることなく該床面に固定することにより、地震発生時における該被固定物の転倒及び移動を防止するようにした固定具に係るものである。
【背景技術】
【0002】
このような固定具としては、特開2007−75264号公報に示すもの(以下「従来の固定具」という。)が知られている。
【0003】
従来の固定具は、図7に示すように、床面1に対する第一粘着手段3と、被固定物5の底面7に対する第二粘着手段9と、被固定物5の垂直面11に対する第三粘着手段13とを備え、該第二粘着手段9は高さ調節自在としてなるものである。前記第一粘着手段3は第一水平支持板15の下面に取り付け、前記第二粘着手段9は第二水平支持板17の上面に取り付け、前記第三粘着手段13は第三垂直支持板19における被固定物5の垂直面11に対向する面に取り付け、該第二水平支持板17は第三垂直支持板19に高さ調節自在に取り付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−75264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の固定具においては、第一粘着手段3を被固定物5の下方における床面1に粘着させ、第二粘着手段9を被固定物5の底面7に粘着させ、第三年着手段13を被固定物5の垂直面11に粘着させるようにしているため、第一粘着手段3を備えた第一水平支持板15と第二粘着手段9を備えた第二水平支持板17とを被固定物5の底面7と床面1との間に位置させる必要がある。
【0006】
しかるに、上記従来の固定具においては、被固定物5の底面7と床面1との間に第一粘着手段3を備えた第一水平支持板15と第二粘着手段9を備えた第二水平支持板17とを挿入するに足る隙間がない場合には、該被固定物5を床面1から持ち上げ、被固定物5の底面7と床面1との間に所定の隙間を設けた状態で第一粘着手段3を備えた第一水平支持板15と第二粘着手段9を備えた第二水平支持板17とを挿入しなければならない。しかるに、このように被固定物5を床面1から持ち上げ、被固定物5の底面7と床面1との間に所定の隙間を設ける作業は面倒であるだけでなく、被固定物5が例えば精密機械、重量物等の如く、床面1から持ち上げることが困難である場合には、上記従来の固定具は使用することができないという問題がある。
【0007】
このような状況に鑑み、本発明は、例えば精密機械、重量物等の如く、底面と床面との間の隙間が小さく、かつ、床面から持ち上げることが困難な被固定物についても、容易に床面に固定することができるようにした固定具を提供しようとしてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、下記の固定具を提供する。
【0009】
(1)水平支持板の下面には床面に対する第一粘着手段を備えさせ、該水平支持板の上面には一対の水平基部を間隔を置いて備えた垂直可動板を被固定物に接離する方向に位置調節可能、かつ、この位置調節可能な範囲内における所望の位置に固定可能に取り付け、該垂直可動板における該被固定物の垂直面に対向する面には該被固定物の垂直面に対する第二粘着手段を備えさせ、前記水平支持板の上面には押圧ボルト支持体を該垂直可動板における一対の水平基部間に位置調節不能に立設し、該押圧ボルト支持体には該押圧ボルト支持体を貫くねじ孔を形成し、該ねじ孔に押圧ボルトを螺挿し、該押圧ボルトを回転させることにより該押圧ボルトの先端が該垂直可動板を該被固定物方向に押圧し、以て該第二粘着手段を該被固定物の垂直面に圧着させるようにしたことを特徴とする固定具(請求項1)。
【0010】
(2)前記水平支持板には錘を備えさせる(請求項2)。
【0011】
(3)前記第二粘着手段は、前記垂直可動板における該被固定物の垂直面に対向する面に該垂直可動板に対し上下方向に位置調節可能に取り付けられた垂直支持板における該被固定物の垂直面に対向する面に備えさせる(請求項3)。換言すれば、前記第二粘着手段は、上下方向に位置調節可能な垂直支持板を介して前記垂直可動板に備えさせるのである。
【発明の効果】
【0012】
[請求項1の発明]
請求項1の発明による固定具は、第一粘着手段を被固定物の近傍における床面に粘着させ、第二粘着手段を被固定物の垂直面に粘着させるようにしたため、該固定具を被固定物の底面と床面との間に挿入する必要がない。したがって、請求項1の発明によれば、例えば精密機械、重量物等の如く、底面と床面との間の隙間が小さく、かつ、床面から持ち上げることが困難な被固定物についても、容易に床面に固定することができる。
【0013】
垂直可動板を被固定物に接離する方向に位置調節可能にした状態で水平支持板を被固定物方向に押すことにより第二粘着手段を被固定物の垂直面に押し付け、水平支持板の上面に位置調節不能に立設した押圧ボルト支持体に螺挿された押圧ボルトの先端を該垂直支持板に当接させると共に第一粘着手段を被固定物の近傍における床面に粘着させ、しかる後に、該押圧ボルトを回転させることにより該押圧ボルトの先端が垂直可動板を被固定物方向に押圧し、以て第二粘着手段を該被固定物の垂直面に圧着させ、更に、該垂直可動板を水平支持板に対し固定することにより、該第二粘着手段は該被固定物の垂直面に確実に粘着する。したがって、被固定物にも床面にも傷をつけることなく、該被固定物は床面に確実に固定され、地震発生時においても転倒及び移動が防止される。なお、押圧ボルトを回転させることにより該押圧ボルトを緩めると共に、水平支持板に対する垂直可動板の固定を解除することにより、固定具を被固定物の垂直面及び床面から取り外すことができる。
【0014】
[請求項2の発明]
請求項2の発明によれば、水平支持板に錘を備えさせたため、該水平支持板の下面に備えさせた第一粘着手段は床面に確実に粘着する。
【0015】
[請求項3の発明]
請求項3の発明によれば、垂直支持板は垂直可動板に対し上下方向に位置調節可能であるため、該垂直支持板に備えさせた第二粘着手段を被固定物の垂直面に粘着させる位置を調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明による固定具の一例を示す斜視図である。
【図2】図2は、同上固定具の使用状態を示す側面図である。
【図3】図3は、同上の平面図である。
【図4】図4は、同上の正面図である。
【図5】図5は、同上の一部断面平面図である。
【図6】図6は、同上の一部断面正面図である。
【図7】図1は、従来の固定具の使用状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
符号21に示すものは、水平支持板である。水平支持板21の下面には床面1に対する第一粘着手段23を備えさせる。
【0018】
水平支持板21は、第一粘着手段23を床面1に確実に粘着させるに足る重さを備えたものであるが、水平支持板21には錘25を備えさせてもよい。錘25はいかなるものであってもよいが、図示の事例においては、錘25として水平支持板21上に板状錘を重ねている。
【0019】
水平支持板21の上面には一対の水平基部27a、27aを間隔を置いて備えた垂直可動板27を被固定物5に接離する方向に位置調節可能、かつ、この位置調節可能な範囲内における所望の位置に固定可能に取り付ける。
【0020】
すなわち、一例として、各水平基部27aには該水平基部27aを上下に貫く長孔29を被固定物5に接離する方向に形成し、水平支持板21には該長孔29に対応するねじ孔31を形成し、ボルト33を水平基部27aの上方より該長孔29に貫通させると共に該ねじ孔31に螺合させる。この事例においては、ねじ孔31に螺合させたボルト33を緩めたときには、該水平基部27aを備えた垂直可動板27は被固定物5に接離する方向に位置調節可能である。一方、ねじ孔31に螺合させたボルト33を締め付けたときには、該垂直可動板27は水平支持板21に対し移動不能に固定される。符号34に示すものは座金である。
【0021】
なお、水平支持板21上に錘25として板状錘を重ねたときには、該錘25にはねじ孔31に対応する透孔35を形成する。この場合には、ボルト33は水平基部27aの長孔29と該錘25の透孔35とに貫通させると共に水平支持板21のねじ孔31に螺合させる。
【0022】
垂直可動板27における被固定物5の垂直面11に対向する面には、被固定物5の垂直面11に対する第二粘着手段37を備えさせる。
【0023】
第一粘着手段23と第二粘着手段37は、それぞれ一例として、粘着性を備えたゲル状の超軟質ウレタンにより形成された板状体とする。
【0024】
前記水平支持板21の上面には押圧ボルト支持体39を垂直可動板27における一対の水平基部27a、27a間に位置調節不能に立設する。すなわち、一例として、押圧ボルト支持体39は水平基部39aを備え、該水平基部39aには透孔41を形成し、水平支持板21には該透孔41に対応するねじ孔43を形成し、該水平基部39aの上方よりボルト45を該透孔41に貫通させると共に該ねじ孔43に螺合させる。
【0025】
なお、水平支持板21上に錘25として板状錘を重ねたときには、該錘25にはねじ孔43に対応する透孔47を形成する。この場合には、ボルト45は水平基部39aの透孔41と該錘25の透孔47とに貫通させると共に水平支持板21のねじ孔43に螺合させる。符号49に示すものは座金である。
【0026】
押圧ボルト支持体39には該押圧ボルト支持体39を貫くねじ孔51を形成し、該ねじ孔51に押圧ボルト53を螺挿し、該押圧ボルト53を回転させることにより該押圧ボルト53の先端53aが垂直可動板27を被固定物5方向に押圧し、以て第二粘着手段37を該被固定物5の垂直面11に圧着させるようになす。
【0027】
第二粘着手段37は、上下方向に位置調節可能な垂直支持板36を介して該垂直可動板27に備えさせてもよい。すなわち、第二粘着手段37は、該垂直可動板27における該被固定物5の垂直面11に対向する面に該垂直可動板27に対し上下方向に位置調節可能に取り付けられた垂直支持板36における該被固定物5の垂直面11に対向する面に備えさせてもよい。
【0028】
前記垂直支持板36を垂直可動板27に対し上下方向に位置調節可能となすために、一例として、垂直可動板27に上下方向の長孔55、55を形成し、垂直支持板36には該長孔55、55に対応するねじ孔57、57を形成し、ボルト59を各長孔55に貫通させると共に各ねじ孔57に螺合させる。この事例においては、ねじ孔57に螺合させたボルト59を緩めたときには、垂直支持板36は垂直可動板27に対し上下方向に位置調節可能である。一方、ねじ孔57に螺合させたボルト59を締め付けたときには、垂直支持板36は垂直可動板27に対し上下方向に位置調節不能である。符号61に示すものは、座金である。
【符号の説明】
【0029】
1 床面
3 第一粘着手段
5 被固定物
7 底面
9 第二粘着手段
11 垂直面
13 第三粘着手段
15 第一水平支持板
17 第二水平支持板
19 第三垂直支持板
21 水平支持板
23 第一粘着手段
25 錘
27 垂直可動板
27a 水平基部
29 長孔
31 ねじ孔
33 ボルト
34 座金
35 透孔
36 垂直支持板
37 第二粘着手段
39 押圧ボルト支持体
39a 水平基部
41 透孔
43 ねじ孔
45 ボルト
47 透孔
49 座金
51 ねじ孔
53 押圧ボルト
53a 先端
55 長孔
57 ねじ孔
59 ボルト
61 座金

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平支持板の下面には床面に対する第一粘着手段を備えさせ、該水平支持板の上面には一対の水平基部を間隔を置いて備えた垂直可動板を被固定物に接離する方向に位置調節可能、かつ、この位置調節可能な範囲内における所望の位置に固定可能に取り付け、該垂直可動板における該被固定物の垂直面に対向する面には該被固定物の垂直面に対する第二粘着手段を備えさせ、前記水平支持板の上面には押圧ボルト支持体を該垂直可動板における一対の水平基部間に位置調節不能に立設し、該押圧ボルト支持体には該押圧ボルト支持体を貫くねじ孔を形成し、該ねじ孔に押圧ボルトを螺挿し、該押圧ボルトを回転させることにより該押圧ボルトの先端が該垂直可動板を該被固定物方向に押圧し、以て該第二粘着手段を該被固定物の垂直面に圧着させるようにしたことを特徴とする固定具。
【請求項2】
前記水平支持板には錘を備えさせたことを特徴とする請求項1に記載の固定具。
【請求項3】
前記第二粘着手段は、前記垂直可動板における被固定物の垂直面に対向する面に該垂直可動板に対し上下方向に位置調節可能に取り付けられた垂直支持板における該被固定物の垂直面に対向する面に備えさせたことを特徴とする請求項1又は2に記載の固定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−233549(P2012−233549A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104201(P2011−104201)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(311006571)
【Fターム(参考)】