説明

固定化触媒を使用してバイオディーゼルを製造するための新規な方法

【課題】速い反応速度と単純化された後処理プロセスによりプロセスの経済性を向上できる、脂肪又は油とアルコールのエステル交換による脂肪酸アルキルエステルの製造方法の提供。
【解決手段】反応は管型反応装置9において固定化された不均一触媒によって触媒され(触媒は、Mgを含む金属酸化物を含む)、温度は300℃〜420℃、圧力は少なくとも40barである。脂肪又は油とアルコールの混合物は前記管型反応装置を通って連続流で導かれ、特定の供給速度、触媒量、滞留時間にて反応される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪及び油及びアルコールを互いに反応させることによって脂肪及び油に含有されるトリグリセリドのエステル交換を通して脂肪酸アルキルエステルを製造するための方法に関する。本発明は、エステル交換が固定化触媒を含有する管型反応装置において実施され、原材料がそれを通過して互いに反応することを開示する。
【背景技術】
【0002】
世界の増大するエネルギー需要及び化石燃料の限られた利用可能性のため、代替的な再生可能燃料の開発及び改良に多くの研究が向けられている。低分子量有機液体は、バイオマスから製造されることができ、車両のための燃料として使用されることができ又は提案されている。燃料として植物油を使用するコンセプトは燃焼機関自体と同じくらい古い。Rudolf Dieselはディーゼル機関を、植物油を含む様々な燃料で動かすことを目的として開発し、彼の機関を1900年のパリの万国博覧会でデモンストレーションするために燃料としてピーナッツ油を使用することさえした。
【0003】
代替燃料として植物油(バージン油又は廃油)を使用する幾つかの方法がある。最も有望なものはエステル交換であると考えられる。「バイオディーゼル」として知られる植物油のメチルエステルは、従来のディーゼル燃料と極めて類似し、従来のディーゼル機関において何ら変性せずに使用されることができる。グリセロール及び脂肪酸メチルエステル(FAME)を形成するためにメタノールのような単純アルコールと植物油中のトリグリセリドの塩基触媒又は酸触媒エステル交換は長い間、好ましい方法である(Swabら、1987)。しかしながら、エステルを形成するために酸(1〜45時間)又は塩基(1〜8時間)触媒を使用すると、相対的に長い反応時間が必要とされる(Saka及びKusdiana,2001)。さらに、アルカリ触媒エステル交換のために、トリグリセリド及びアルコールは実質的に無水物でなければならない。なぜならば水は石けんを生成するけん化に部分的反応変化を起こすからである。この石けんは、触媒を消費し、触媒効率を低下するとともに、グリセロールの分離を達成する際の困難性及び粘度の増加を生じる(Fukudaら、2001)。また、遊離脂肪酸(それは商業的に入手可能な原油及び脂肪に存在する)は、通常のプロセスでアルカリ触媒と反応し、バイオディーゼル燃料生成のためのエステル交換反応中にけん化生成物を形成することが知られている。これは、後処理プロセス(即ち、グリセロール及び脂肪酸メチルエステルから触媒及びけん化生成物の両方の除去及び分離)を極めて複雑にし、バイオディーゼルの生産を極めてコスト高にする。
【0004】
従来の酸触媒又は塩基触媒プロセスと関連した問題を克服するため、様々な情報ソースが代替反応媒体として触媒の使用なしに超臨界アルコールを使用することを提案する。流体は物質がその臨界温度及び臨界圧力よりともに上であるなら超臨界である。例えば、ヨーロッパ特許EP 0985654B1は、脂肪及び油及びアルコールの少なくとも一つが触媒の不存在下で超臨界状態であるという条件下で反応を実施することによって油及び脂肪及びアルコールから脂肪酸エステルを生成するための方法に関する。製造された脂肪酸エステルはディーゼル燃料、潤滑油基油又は燃料添加剤のような燃料として有用である。Saka及びKusdiana(2001)は触媒を使用せずに一工程プロセスで超臨界メタノールにおいてナタネ油のエステル交換を調査した。実験は、350〜400℃に予熱され、45〜65MPaの圧力を持つバッチ型反応容器で、42:1のメタノール対ナタネ油の比で実施された。著者は、350℃の予熱温度(45MPaの圧力)において、240秒のメタノールの超臨界処理がナタネ油をメチルエステル(>95%)に変換するために十分であること、及び製造されたメチルエステルが塩基触媒を用いた従来方法によって得られたものと基本的に同じであることを証明した。さらに、超臨界メタノールプロセスの非触媒的性質のため、エステル交換反応後の生成物の後処理プロセスは、全ての触媒及びけん化生成物がバイオディーゼル及びグリセロールを得るために除去されなければならない従来の(塩基触媒)方法と比較してずっと簡単であることが見出された。
【0005】
超臨界アルコールにおけるエステル交換反応中に脂肪酸エステル収率に影響する最も重要な変数はアルコール対(植物)油のモル比、滞留時間、反応圧力及び反応温度である。特に反応温度は決定的な変数であるように思える。Demirbas(2002,2003)は、反応温度を超臨界温度に増加することがバッチ系の脂肪酸エステル変換に好ましい影響を持つことを観察した。それはKusdiana及びSaka(2001)の結果に従っている。超臨界メタノールは疎水性及び低い誘電率を有するので、非極性トリグリセリドは単一相の油/メタノール混合物を形成するために超臨界メタノールによって十分に溶媒和されることができる。この現象はナタネ油のエステル交換反応を促進しやすい。動力学的モデリングは、(メタノールにおける)反応速度が温度によって活性化されることを実際に示した(Kusdiana及びSaka,2001;Weytenら、2001,2002)。反応全体は、トリグリセリドの濃度及び反応温度の関数として一次反応として進行すると考えられる。メタノールの臨界温度(T=239.4℃)以下の温度では、反応はトリグリセリドにおけるアルコールの低い溶解度によって制限される。高い温度では、これらの物質移動の制限は、超臨界流体の増大した溶解性及び拡散性のために克服される。反応速度定数は約二桁の大きさで増大する。〜300℃以上の温度では、純粋な反応速度論は再び引き継がれ、系が使用されたメタノール対油の比に対して単一相であると考えられる。これは、油/アルコール反応混合物が短い反応時間の許容可能な変換速度を達成するために均一な(超臨界的な)状態を達成するようにエステル交換反応中の油/アルコール反応混合物への効率的な熱移動が最も重要であることを示す。
【0006】
EP 1126011は、固体塩基触媒が脂肪酸エステル製造において260℃を越える温度で、少なくとも油又は脂肪又はアルコールが超臨界状態にある条件で使用される方法を記載する。実際には、バイオディーゼルを作るとき、使用されるアルコールはメタノールである。メタノールの臨界温度は約240℃であり、臨界圧力は約80.9barである。油又は脂肪は高い臨界点を持ち、従ってこの出願に開示された最小圧力は80.9barである。
【0007】
US 5908946はZn系触媒の存在下での植物又は動物油及びモノアルコールからの酸エステルの製造の方法を開示する。反応は170℃〜250℃の温度で100bar未満の圧力で実施される。
参考文献
・ Cao,W.,Han,H.and Zhang,J.Fuel,84(2005)347.
・ Demirbas,A.Energy Convers.Manage.,43(2002)2349.
・ Demirbas,A.Energy Convers.Manage.,44(2003)2093.
・ EP 0985654B1.Method for preparing fatty acid esters.Sumitomo Chemical Company,(2004)
・ EP 1298192B1.Method and apparatus for preparing fatty acid esters.Sumitomo Chemical Company(2005).
・ EP 1061120A1.Process for preparing alkyl esters of fatty acids from fats and oils.Lonford Development Limited(2000).
・ Fukuda,H.,Kondo,A.and Noda,H.J.Biosci.Bioeng.,92(2001)405.
・ Kusdiana,D.and Saka,S.Fuel,80(2001)693.
・ Saka,S.and Kusdiana,D.Fuel,80(2001)225.
・ Swab,A.W.,Bagby,M.O.and Freedman,B.Fuel,66(1987)1372.
・ Weyten,H.,Willems,L.,Adriansens,W.,Van Ginneken,L.and Devoldere,K.Proc.ESF“Workshop Supercritical Fluids as Active Media:Fundamentals and Applications”,Valladolid,20−22 Sept.2001,177.
・ Weyten,H.,Willems,L.,Adriansens,W.and Van Ginneken,L.Proc.8th Meeting“Supercritical Fluids”,Bordeaux,14−17 Apr.2002,139.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術は、超臨界バイオディーゼル製造が連続処理を可能にする4〜5分だけの反応時間、さらには高い反応温度(350℃)、高い圧力(少なくとも80.9bar)を持ち、高い変換率を達成するためには大過剰のMeOH(42:1mol MeOH/mol油)が必要とされることを示す。本発明の目的は、速い反応速度及び単純化された後処理プロセスを維持しながら、反応温度及び圧力並びに過剰MeOHを低下することによってプロセスの経済性を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、脂肪又は油とアルコールのエステル交換による脂肪酸アルキルエステルの製造のための方法に関し、そこでは反応は管型反応装置において固定化された(不均一)触媒によって触媒され、温度は260℃〜420℃であり、圧力は5barより高く、前記脂肪又は油と前記アルコールの混合物は前記管型反応装置を通って連続流で導かれる。
【0010】
好ましくは、アルコールはメタノールである。
【0011】
触媒は金属酸化物を含む(又はからなる)ことが好ましい。より好ましくは、金属酸化物はアルカリ土類金属を含む。Be,Ca,Mg,Sr,Ba及びRaがアルカリ土類金属である。さらにより好ましくは、金属酸化物はMgを含む。あるいは、金属酸化物はCaを含むことができる。
【0012】
好ましくは、本発明の方法では、触媒はMgOを含む(又はからなる)。
【0013】
好ましくは、触媒は金属炭化物を含む(又はからなる)。より好ましくは、金属炭化物はアルカリ土類金属を含む。アルカリ土類金属はCaであることが好ましい。
【0014】
触媒はCaCOを含む(又はからなる)ことが好ましい。
【0015】
触媒はまた、金属塩であることができる。触媒は同様にゼオライトであることができる。
【0016】
あるいは、触媒はCaCO,MgO,γ−A1,NaCO,CaO及びCaOHからなる群から選択される。
【0017】
触媒は、固定床において、粉末として、ペレットとして、被覆として、又は大きい比表面積を有する多孔質構造において固定化されることが好ましい。触媒は担体上に被覆されることができる。
【0018】
好ましくは、管型反応装置における混合物の滞留時間は1分〜100分の範囲にある。より好ましくは、管型反応装置における混合物の滞留時間は1分〜50分の範囲にある。
【0019】
好ましくは、管型反応装置における混合物の滞留時間は1分〜45分の範囲にある。より好ましくは、管型反応装置における混合物の滞留時間は5分〜25分の範囲にある。
【0020】
好ましくは、管型反応装置における混合物の滞留時間は5分〜15分の範囲にある。
【0021】
好ましくは、前記混合物と前記触媒の接触時間は40分より短く、1分以上である。
【0022】
好ましくは、前記混合物と前記触媒の接触時間は20分より短く、1分以上である。
【0023】
好ましくは、前記混合物と前記触媒の接触時間は2分〜8分、より好ましくは2分〜6分の範囲にある。
【0024】
本発明の特別な実施形態では、圧力は80.9bar未満、即ちメタノールの臨界未満である。
【0025】
本発明の代替実施形態では、圧力は5〜400bar、好ましくは5〜150bar、より好ましくは40〜80barである。
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、圧力は40〜150barの範囲にある。
【0027】
本発明の方法において、脂肪又は油に対するアルコールの比率は30mol/molより小さいことが好ましい。有利には、この比率はさらには20mol/mol未満、又は10mol/mol未満に低下されることができる。
【0028】
脂肪又は油は例えば精製又は未精製の脂肪又は油、及び精製又は未精製の廃脂肪又は油から選択されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は本発明による方法を表わす。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の目的は、固定化触媒を含む連続管型反応装置において油をMeOHで処理することによって合致される。固定化触媒は、金属酸化物であることができるが、それに限定されない。
【0031】
メタノール(MeOH)に加えて、他のアルコールも同様に本発明の方法に使用されることができる。
【0032】
不均一触媒は、(反応体と比較して)別個の相を構成する触媒に関する。
【0033】
本発明の触媒材料は、互いに及び/又は本発明の方法に使用するための他の触媒と混合されることができる。
【0034】
脂肪又は油及びアルコールの混合物は予め決められた流量で反応装置に適用される。前記混合物は、滞留時間として言及される時間の間、反応装置に存在する。
【実施例】
【0035】
不均一触媒の効果
バイオディーゼルは管型反応装置において製造された。反応装置は固定化不均一触媒を含有していた。固定化を実施する一つの方法は、フィルターによって触媒を物理的に包囲することによって行われる。もちろん、他の固定化技術も同様に適用可能である。プロセスの構成は以下のとおりである:油及びアルコールが高圧ポンプ5を使用してそれぞれリザーバ3及び1から導かれ、所望の圧力にもたらされる。アルコールはヒータ7において予熱される。描かれていないが、油も同様に予熱されることができる。混合された蒸気が、固定化触媒を含有する管型反応装置9を通過される。管型反応装置9は炉又は油浴11に含有される。反応後、圧力は圧力減少弁13で逃され、製品は冷却(15)及び保管(17)される。
【0036】
ナタネ油及び予熱されたメタノールは150barまで加圧され、管型反応装置においてポンプ輸送された。両反応体の完全な混合がその構成において確保された。混合された蒸気は炉又は油浴で300℃まで加熱され、固定化不均一触媒と接触された。接触後、生じた蒸気は冷却され、減圧され、収集された。
【0037】
ほとんどの実験は150barの圧力で実施されたが、方法はそれに限定されず、それより低い又はそれより高い圧力で同様に実施されることができる。また、反応温度は、反応時間をスピードアップするために高めることができ、又は方法のために必要なら低くすることができる。ここで記載されたほとんどの実験はナタネ油で実施されたが、他のタイプの油及び脂肪、廃油又は未精製油も以下に示されるように方法において同様に使用されることができる。油は水を含有してもよい。表1はこれらの実験の結果を示す。
【0038】
実験のために使用された管型反応装置は三つの区域を含む:入口の触媒のない管状部分、固定化(不均一)触媒を含有することができる固定床、及び再び最後の触媒のない管状部分。
【0039】
比較例1(C.1)
最初の比較例は、固定床のない管型反応装置においてなされた。管型反応装置の全体積は20mlであった。メタノール及び油は、10分の滞留時間及び13mol/molのメタノール過剰に相当する0.46g/gのメタノール対油の比を確保する流量で添加された。
【0040】
比較例2(C.2)
同様の試験がなされたが、20分の滞留時間であった。
【0041】
比較例3(C.3)
比較例3は比較例1及び2と同じ反応装置でなされた。メタノール及び油の流量は、20分の滞留時間及び20mol/molのメタノール過剰に相当する0.7g/gのメタノール対油の比を得るように調整された。
【0042】
比較例4(C.4)
この比較例は、空の固定床を含む管型反応装置でなされた。反応装置の全体の空の体積は33mlであった。メタノール及び油は、15分の滞留時間及び17mol/molのメタノール過剰に相当する0.6g/gのメタノール対油の比を確保する流量で添加された。
【0043】
本発明例1(I.1)
固定床はCaCOを充填された。反応装置の全体の空の体積は25mlであった。流量は10分の滞留時間及び0.6g/gのメタノール対油の比を達成するように調整された。
【0044】
本発明例2(I.2)
固定床はCaCOを充填された。反応装置の全体の空の体積は25mlであった。流量は5分の滞留時間及び0.6g/gのメタノール対油の比を達成するように調整された。
【0045】
本発明例3(I.3)
固定床はMgOを充填された。反応装置の全体の空の体積は25mlであった。流量は10分の滞留時間及び0.6g/gのメタノール対油の比を達成するように調整された。
【0046】
本発明例4(I.4)
固定床はMgOを充填された。反応装置の全体の空の体積は25mlであった。流量は5分の滞留時間及び0.6g/gのメタノール対油の比を達成するように調整された。
【0047】
本発明例5(I.5)
固定床はγ−Alを充填された。反応装置の全体の空の体積は25mlであった。流量は15分の滞留時間及び0.6g/gのメタノール対油の比を達成するように調整された。
【0048】
バイオディーゼル含有量はGC−分析を通して測定された。
【表1】

構成タイプ(conf.)は以下の通りである:
1.管型
2.管型+空の固定床
3.固定床中の固定化触媒
触媒は以下の通りである:
A.CaCO
B.MgO
C.γ−Al
【0049】
表は変換率を記載し、それはグリセロール画分の分離後に蒸留された反応生成物中のバイオディーゼルの量に対応する。
【0050】
表は、本発明に対して短い反応時間(滞留時間)が適用されているにもかかわらず高い変換率を明らかに示す。
【0051】
圧力/温度の条件
バイオディーゼルは管型反応装置で製造された。反応装置は、固定化不均一触媒を含有し、15mlの空の体積を有していた。固定化は、2cmの直径及び1cmの厚さを有する圧縮MgOペレットを使用して実施された。ナタネ油及び予熱メタノールは、必要な圧力まで加圧され、管型反応装置においてポンプ輸送された。両反応体の完全な混合がその構成において確保された。混合された蒸気は、炉又は油浴で必要な温度まで加熱され、固定化不均一触媒と接触された。接触後、生じた蒸気は冷却され、減圧され、収集された。
【0052】
加熱及び加圧された混合物が必要とされることを示すために、以下の実験が示され、表2にまとめられる。表はまた、工程が80.9barの圧力(メタノールの超臨界圧力)以下で実施されうることを明らかに示す。
【0053】
比較例5(C.5)
メタノール及び油は管型反応装置に添加され、流量は、15分の滞留時間及び0.6g/gのメタノール対油の比を達成するように調整された。工程温度は240℃であり、圧力は5barであった。
【0054】
本発明例6(I.6)
メタノール及び油は管型反応装置に添加され、流量は、15分の滞留時間及び0.6g/gのメタノール対油の比を達成するように調整された。工程温度は300℃であり、圧力は5barであった。
【0055】
本発明例7(I.7),8(I.8)及び9(I.9)
メタノール及び油は管型反応装置に添加され、流量は、15分の滞留時間及び0.6g/gのメタノール対油の比を達成するように調整された。工程温度は300℃であり、圧力はそれぞれ40,60及び75bar(臨界未満)であった。
【0056】
本発明例10(I.10)
メタノール及び油は管型反応装置に添加され、流量は、15分の滞留時間及び0.6g/gのメタノール対油の比を達成するように調整された。工程温度は300℃であり、圧力は150barであった。
【0057】
本発明例11(I.11)
メタノール及び油は管型反応装置に添加され、流量は、10分の滞留時間及び0.6g/gのメタノール対油の比を達成するように調整された。工程温度は240℃であり、圧力は150barであった。
【0058】
本発明例12(I.12)
メタノール及び油は管型反応装置に添加され、流量は、10分の滞留時間及び0.6g/gのメタノール対油の比を達成するように調整された。工程温度は280℃であり、圧力は150barであった。
【表2】

【0059】
廃油/未精製油への適用性
バイオディーゼルは管型反応装置で製造された。反応装置は、固定化不均一触媒を含有し、15mlの空の体積を有していた。固定化は、2cmの直径及び1cmの厚さのサイズを有する圧縮MgOペレットを使用して実施された。油及び予熱メタノールは、150barまで加圧され、管型反応装置においてポンプ輸送された。両反応体の完全な混合がその構成において確保された。混合された蒸気は、炉又は油浴で300℃まで加熱され、固定化不均一触媒と接触された。接触後、生じた蒸気は冷却され、減圧され、収集された。
【0060】
工程が廃蒸気及び未精製油にも適用可能であることを示すために以下の例が示される。実験の結果は表3に示される。
【0061】
本発明例13(I.13)
メタノール及びナタネ油は管型反応装置に添加され、流量は、15分の滞留時間及び0.6g/gのメタノール対油の比を達成するように調整された。工程温度は300℃であり、圧力は150barであった。
【0062】
本発明例14(I.14)
メタノール及び未精製ナタネ油は管型反応装置に添加され、流量は、15分の滞留時間及び0.6g/gのメタノール対油の比を達成するように調整された。工程温度は300℃であり、圧力は150barであった。
【0063】
本発明例15(I.15)
メタノール及び廃フライ油は管型反応装置に添加され、流量は、15分の滞留時間及び0.6g/gのメタノール対油の比を達成するように調整された。工程温度は300℃であり、圧力は150barであった。
【表3】

【0064】
長期間加工性
バイオディーゼルは管型反応装置で製造された。反応装置は、固定化不均一触媒を含有し、15mlの全体の空の体積を有していた。固定化は、2cmの直径及び1cmの厚さのサイズを有する圧縮MgOペレットを使用して実施された。油及び予熱メタノールは150barまで加圧され、管型反応装置においてポンプ輸送された。両反応体の完全な混合がその構成において確保された。混合された蒸気は、炉又は油浴で300℃まで加熱され、固定化不均一触媒と接触された。接触後、生じた蒸気は冷却され、減圧され、収集された。
【0065】
工程が安定していることを示すために、工程は異なる条件で8時間、精製ナタネ油で実施された。各日の終わりに、変換率が310℃,150bar,15分の滞留時間の基準条件で決定された。MeOH過剰は0.6g/gであった。触媒はMgOペレットであった。
【0066】
結果は表4に示される。Day2では、基準条件で二つの変換率が実施された。
【表4】

【0067】
固定床/空の反応装置体積の比
バイオディーゼルは管型反応装置において製造された。反応装置は三つの区域を含む:入口の触媒のない管状部分、固定化不均一触媒を含有する固定床、及び再び最後の触媒のない管状部分。固定化は、2cmの直径及び1cmの厚さのサイズを有する圧縮MgOペレットを使用して実施された。油及び予熱メタノールは、150barまで加圧され、管型反応装置においてポンプ輸送された。両反応体の完全な混合がその構成において確保された。混合された蒸気は炉又は油浴で300℃まで加熱され、固定化不均一触媒と接触された。接触後、生じた蒸気は冷却され、減圧され、収集された。
【0068】
工程が小さい固定床でも作用することを示すために、工程は異なる反応装置構成で実施された。固定床の体積は反応装置の残りの管状部分に対して変化された。反応装置の固定床の体積と残りの体積の間の比率が29%〜150%で変化された。この場合において、固定床の体積は空の体積、即ち触媒の存在しない固定床の体積として表現された。結果は表5に示される。
【表5】

【0069】
大きい油対メタノールの比率
バイオディーゼルは管型反応装置において製造された。反応装置は、固定化不均一触媒を含有し、15mlの空の体積を有していた。固定化は、2cmの直径及び1cmの厚さを有する圧縮MgOペレットを使用して実施された。ナタネ油及び予熱メタノールは、必要な圧力まで加圧され、管型反応装置においてポンプ輸送された。両反応体の完全な混合がその構成において確保された。混合された蒸気は炉又は油浴で必要な温度まで加熱され、固定化不均一触媒と接触された。接触後、生じた蒸気は冷却され、減圧され、収集された。
【0070】
工程が小さい過剰のメタノールで作用することを示すために、幾つかの例が示される。
【表6】

【0071】
接触時間の影響
接触時間は、反応装置に適用されるアルコール及び油又は脂肪(反応体)の体積流量に対する反応装置中の触媒の体積の比率として規定される(US 5908946参照)。比率は、時間の単位であり、反応体が触媒と接触する時間の表示と見なすことができる。
【0072】
滞留時間と接触時間の間の関係は、滞留時間が反応装置に適用されるアルコール及び油又は脂肪の体積流量に対する反応装置の空の(自由)体積の比率を示すと考えると、誘導されることができる。反応装置の空の体積は、触媒が充填されない反応装置の体積から触媒によってとられる体積を引いたものを示す。
【0073】
従って、滞留時間に対する接触時間の比率は反応装置の空の体積に対する触媒の体積の比率に等しい。接触時間は一般的に滞留時間より短い。なぜならば反応装置の空の体積は一般的に触媒の体積より大きいからである。
【0074】
反応体の体積流量は雰囲気条件に基づいて質量流量から計算されることができる。
【0075】
本発明例I.6〜I.15及びI.19〜I.21では、反応装置の触媒体積と空の体積の間の比率は6.1ml/15ml=0.4である。従って、本発明例I.6〜I.15の接触時間は滞留時間の0.4倍に等しい。本発明例I.6〜I.10,I.13〜I.15及びI.19〜I.21では、接触時間は6分である。本発明例I.11及びI.12では、接触時間は4分である。
【0076】
本発明の方法は短い接触時間で作用する。これは工程の極めて経済的な利点である。なぜならば、それは高い製造速度を可能にし、固定設備での触媒の使用量が少ないからである。
【0077】
比較例6(C.6)
特許US 5908946では、ZnO及びAlに基づいた不均一触媒を使用する方法が記載されている。この方法はバイオディーゼルの連続的製造を可能にする。しかしながら、極めて長い接触時間が必要とされる。90%より大きい変換効率を達成するためには少なくとも40分より長い接触時間が必要とされる。より短い接触時間(例えば20分)では、85%の最大変換効率が達成されるにすぎない。特許US 5908946に記載された実施例と同様の工程条件で得られた実施例が与えられる。
【0078】
バイオディーゼルは管型反応装置において製造された。反応装置は15gの融解MgO触媒−メッシュ4を含んでいた。触媒体積は4.2mlであった。反応装置の空の体積は16.9mlであった。流量は、17分の接触時間に対応する68分の滞留時間を持つように調整された。温度、圧力及び油/メタノールの比率のような工程条件は上記特許に記載された条件に極めて類似するようにとった(US 5908946の表4参照)。本例の工程条件は以下の通りであった:50barの圧力、240℃の温度、及び0.6g/gのMeOH過剰(それは1.4の油/アルコールの体積比率に相当する)。98%の変換効率が達成された。
【0079】
本発明例22(I.22)
本例は、本発明の方法が製品蒸気において有意なマグネシウムなしで短い接触時間で作用することを証明することである。
【0080】
バイオディーゼルは管型反応装置において製造された。油及びメタノールは管型反応装置に供給された。反応装置は15gの融解MgO−メッシュ4を含んでいた。触媒体積は4.2mlであった。反応装置の空の体積は16.9mlであった。流量は、4分の接触時間に対応する16分の滞留時間を持つように調整された。反応は320℃,150bar及び0.6g/gのMeOH過剰で実施された。変換効率は99%±3%であった。未蒸留製品蒸気には、Mgは検出されることができず、それは5ppm未満のMgを示す。
【0081】
本発明例23(I.23)
バイオディーゼルは管型反応装置において製造された。反応装置はメッシュ30の高温でか焼したMgOを81.4g含有していた。触媒体積は23mlであった。反応装置の空の体積は210mlであった。油及びメタノールの流量は、2分の接触時間に対応する20分の滞留時間を持つように調整された。反応は330℃及び150bar及び0.61g/gのMeOH過剰で実施された。変換効率は98%±4%であった。
【0082】
本発明例24(I.24)
バイオディーゼルは、3〜5mmの高温でか焼したMgOを58.6g含有する管型反応装置において製造された。反応装置の空の体積は216mlであった。油及びメタノールの流量は、2分の接触時間に対応する28分の滞留時間を持つように調整された。反応は340℃及び150barで実施された。MeOH過剰は0.6g/gであった。変換効率は95%±4%であった。
【0083】
本発明例25(I.25)
バイオディーゼルは、0.5〜1mmの高温でか焼されたMgOを58.9g含有する管型反応装置に油及びメタノールを供給することによって製造された。触媒体積は16.5mlであった。反応装置の空の体積は18.2mlであった。流量は、16分の接触時間に対応する18分の滞留時間を持つように調整された。反応は310℃及び150barで実施された。MeOH過剰は0.6g/gであった。変換効率は100%±3%であった。
【0084】
他のMgO含有触媒
本発明例26(I.26)
バイオディーゼルは管型反応装置において製造された。反応装置は、固定化MgO−Al−ZrO触媒(99%純度)を含有し、15mlの空の体積を有していた。反応装置は1〜3mmの焼結塊を10g充填された。触媒は2.8mlの体積を有していた。反応装置の空の体積は18.3mlであった。油及び予熱メタノールは、150barまで加圧され、管型反応装置においてポンプ輸送された。流量は、18分の滞留時間及び0.6g/gのMeOH過剰を達成するように調整された。両反応体の完全混合はその構成において確保された。混合された蒸気は炉又は油浴において340℃まで加熱され、固定化不均一触媒と接触された。接触後、生じた蒸気は冷却され、減圧され、収集された。
【0085】
接触時間は2.8分であった。変換効率は98%±3%であった。
【0086】
本発明例27(I.27)
固定床は、1〜3mmの粒子サイズを有する固定化融解AlMgOを充填された。触媒は、9.3gの重さであり、2.6mlの体積を有していた。反応装置の空の体積は18.5mlであった。流量は、19分の滞留時間及び0.6g/gのMeOH過剰を達成するように調整された。接触時間は2.6分であった。反応は150bar及び320℃で実施された。変換効率は97%±3%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪又は油とアルコールのエステル交換による脂肪酸アルキルエステルの製造のための方法であって、以下のことを特徴とする方法:
− 反応は管型反応装置において固定化された不均一触媒によって触媒され、触媒は、Mgを含む金属酸化物を含む
− 温度は300℃〜420℃である;
− 圧力は少なくとも40barである
− 前記脂肪又は油と前記アルコールの混合物は前記管型反応装置を通って連続流で導かれ、脂肪又は油とアルコールの供給速度、管型反応装置中の触媒の量、及び管型反応装置の体積は、以下のように選択される:
アルコール及び油又は脂肪の体積流量に対する反応装置の自由体積の比率として規定される滞留時間が10分〜28分の範囲であり;
アルコール及び油又は脂肪の体積流量に対する反応装置中に充填される触媒の体積の比率として規定される接触時間が2分〜16分の範囲であり;
滞留時間に対する接触時間の比率が2/28〜16/18の範囲である。
【請求項2】
触媒はMgOを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
脂肪又は油に対するアルコールの比率は0.25g/g〜0.61g/gである請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
滞留時間が20分以下であり、滞留時間に対する接触時間の比率が2/20〜16/18の範囲である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
接触時間が6分以下であり、滞留時間に対する接触時間の比率が2/28〜6/15の範囲である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
滞留時間に対する接触時間の比率が2/20〜6/15の範囲である請求項4又は5に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−100536(P2013−100536A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−16666(P2013−16666)
【出願日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【分割の表示】特願2009−521239(P2009−521239)の分割
【原出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(502320688)ヴラームス インステリング ヴール テクノロギシュ オンデルゾーク (ヴイアイティーオー) (19)
【Fターム(参考)】