説明

固定化触媒

【課題】 環境への負荷を低減し、化合物製造の場合において環境負荷物質の排出が少なく、リサイクル性に優れた固定化触媒を提供する。
【解決手段】 固相担体にリンカーを介して水銀トリフラート触媒を固定化したことを特徴とする固定化触媒、及びこれを用いる化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定化触媒に関する。詳しくは、固相担体にリンカーを介して水銀トリフラート触媒を固定化した固定化触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
水銀トリフラートは、優れた環化等の触媒として知られており、様々な天然物の合成研究に使用されている(例えば、非特許文献1)。例えば、末端アルキンの水和反応、生合成類似タンデム環化反応、アルキノエイトを脱離基とする触媒グリコシル化反応、プロパルギルアセテートと水の反応によるエノン合成等が知られている。これらは従来の遷移金属錯体触媒よりも触媒効率で大きく上回るケースが多いという利点を有している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、水銀は、水系環境において微生物などによって有機水銀化合物に変えられ、食物連鎖を通じて、大型魚類や、深海魚、海洋動物に蓄積される。また、水銀が気化した場合には、肺から吸収されやすく、体内に吸収された場合には、ヘモグロビンや血清アルブミンと結合し毒性を示す。このように、有機水銀化合物は、環境汚染問題や人体への影響が懸念されているため、化合物製造を行う場合において環境への排出が少なく、リサイクル性に優れた触媒が望まれている。
【0004】
【非特許文献1】有機合成化学協会誌 Vol.64 744−751
【0005】
本発明の課題は、環境への負荷を低減し、化合物製造の場合において環境負荷物質の排出が少なく、リサイクル性に優れた固定化触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の発明に係る。
1. 固相担体にリンカーを介して水銀トリフラート触媒を固定化したことを特徴とする固定化触媒。
2. リンカーがフェニル基である固定化触媒。
3. 固相担体にリンカーを介して、水銀トリフラートを固定化することを特徴とする水銀トリフラート固定化触媒の製造方法。
4. アルキン化合物又はアリルアルコール化合物と水銀トリフラート固定化触媒を接触させることを特徴とする環化体化合物の製造方法。
5. アルキン化合物と水銀トリフラート固定化触媒を接触させることを特徴とする水和化合物の製造方法。
6. アルキン化合物と水銀トリフラート固定化触媒を接触させることを特徴とするエノン化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、水銀トリフラートを固定化触媒にすることにより、環境負荷物質の排出が少なく、リサイクル性を向上させることができる。また、驚くべきことに、通常触媒を固定化し、固定化触媒とすることにより、触媒活性が低下するが、本発明の固定化触媒は、触媒活性は低下せず、本来触媒が有する活性を発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明においてはシリカゲル等の固相担体にリンカーを介して、水銀トリフラートを固定化することにより水銀トリフラート固定化触媒が得られる。
【0009】
本発明の固定化触媒に使用するシリカゲルとしては、粒子直径が0.1μm〜2000μmの物を使用することができる。好ましくは40〜300μmのものがよい。(例:関東化学,Silica gel 60, spherical)
また、固定化触媒に使用する固相担体はシリカゲルの代わりにポリスチレンを使用することもできる(例:東京化成,ポリスチレン樹脂Polysyrene Resin, cross−linked with 1% DVB 200〜400mesh,又は100〜200mesh)
【0010】
本発明の固定化触媒に使用するリンカーとしては、フェニル基、ジフェニルホスフィノ基、ジアルキルフォスフィノ基、アルキル基、チオール基、ジオール基、カルボン酸、トシル酸、スルホン酸、アミノ基、ジアミノ基、トシルヒドラジンを有するものが挙げられる。
【0011】
本発明の固定化触媒に使用するリンカー付きシリカゲルとしては、Silicycle社のSiliaBond Phenyl, SiliaBond Diphenylphosphine, SiliaBond Thiol, SiliaBond Diol, SiliaBond Carboxylic Acid, SiliaBond Tosic Acid, SiliaBond Propylsulfonic Acid, SiliaBond Ethylenediaminobenzyl, SiliaBond amine, SiliaBond Diamineが挙げられる。好ましくはSiliaBond Phenylがよい。
【0012】
本発明の固定化触媒の製造方法を代表例として固相担体がシリカゲルの場合について述べる。
まず製造方法(a)としては、リンカー付きシリカゲルとHg(OAc)を溶媒中で反応させる。溶媒としては、酢酸、硫酸、水、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド溶媒、メタノール、エタノールなどのアルコール溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル系溶媒等を挙げることができる。反応温度は、0〜200℃、好ましくは、100〜150℃がよい。反応時間は、0.5〜48時間、好ましくは、1〜2時間がよい。また、マイクロウェーブ等を照射してもよい。リンカー付きシリカゲルとHg(OAc)の使用量は、リンカー付きシリカゲルに対して、Hg(OAc)を0.5〜10当量、好ましくは、1〜2当量使用する。反応終了後、濾過、洗浄を行い、シリカゲルにリンカーを介してHgOAcが固定化された化合物を得ることができる。
【0013】
次いで、シリカゲルにリンカーを介してHgOAcが固定化された化合物とトリフルオロメタンスルホン酸を溶媒中で反応させる。溶媒としては、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル系溶媒、ジクロロメタン、1,2−クロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素などの脂肪族ハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素、ヘキサン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素、ジエチルエーテル、ジイソプロピオエーテルなどのエーテル系溶媒等を挙げることができる。反応温度は、−20〜100℃、好ましくは、0〜室温(25℃)がよい。反応時間は、1分〜2時間、好ましくは、5〜10分がよい。シリカゲルにリンカーを介してHgOAcが固定化された化合物とトリフルオロメタンスルホン酸の使用量は、シリカゲルにリンカーを介してHgOAcが固定化された化合物に対して、トリフルオロメタンスルホン酸を0.5〜10当量、好ましくは、1〜2当量使用する。反応終了後、濾過、洗浄を行い、シリカゲルにリンカーを介して水銀トリフラート(HgOTf)が固定化された化合物を得ることができる。
【0014】
また、本発明の固定化触媒の製造方法(b)としては、まずリンカー付きシリカゲルとHg(OAc)を溶媒中で反応させる。この反応は上記製造方法(a)と同じである。
【0015】
次いで、シリカゲルにリンカーを介してHgOAcが固定化された化合物と塩化ナトリウム等のアルカリ金属のハロゲン化物を溶媒中で反応させる。溶媒としては、水、メタノール、エタノールなどのアルコール溶媒、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド溶媒又は、これらの混合溶媒等を挙げることができる。反応温度は、0〜150℃、好ましくは、80〜120℃がよい。反応時間は、1〜48時間、好ましくは、5〜15時間がよい。シリカゲルにリンカーを介してHgOAcが固定化された化合物とアルカリ金属のハロゲン化物の使用量は、シリカゲルにリンカーを介してHgOAcが固定化された化合物に対して、アルカリ金属のハロゲン化物を1〜50当量、好ましくは、2〜10当量使用する。反応終了後、濾過、洗浄を行い、シリカゲルにリンカーを介して、例えばHgClが固定化された化合物を得ることができる。
【0016】
さらに、シリカゲルにリンカーを介してHgClが固定化された化合物と銀トリフルオロメタンスルホン酸を溶媒中で反応させる。溶媒としては、ジクロロメタン、1,2−クロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素などの脂肪族ハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル系溶媒、ニトロメタン、ニトロエタンなどのニトロ系溶媒等を挙げることができる。反応温度は、0〜100℃、好ましくは、室温(25℃)〜60℃がよい。反応時間は、10分〜10時間、好ましくは、0.5〜1時間がよい。シリカゲルにリンカーを介してHgClが固定化された化合物と銀トリフルオロメタンスルホン酸の使用量は、シリカゲルにリンカーを介してHgClが固定化された化合物に対して、銀トリフルオロメタンスルホン酸を0.5〜10当量、好ましくは、1〜2当量使用する。反応終了後、濾過、洗浄を行い、シリカゲルにリンカーを介して水銀トリフラート(HgOTf)が固定化された化合物を得ることができる。
【0017】
本発明の固定化触媒を用いて種々の反応を行うことができる。例えば前記非特許文献1の第745〜750頁に記載された反応に用いることができる。その反応とは例えば下記に示されるものである。
(1)アルキンの水和反応。例えば、アルキン化合物prop−2−ynylbenzeneに固定化触媒を用いれば1−phenylpropan−2−oneを得ることができる。
【0018】
【化1】

【0019】
(2)エンイン化合物のアリールイン環化反応。例えば、エンイン化合物1,3−dimethoxy−5−(oct−3−ynyl)benzeneに固定化触媒を用いれば4−butyl−5,7−dimethoxy−1,2−dihydronaphthaleneを得ることができる。
【0020】
【化2】

【0021】
(3)インエンアリール化合物のタンデム環化反応。例えば、インエンアリール化合物(E)−1,3−dimethoxy−5−(4−methylnon−3−en−7−ynyl)benzeneに固定化触媒を用いれば5,7−dimethoxy−1,4a−dimethyl−3,4,4a,9,10,10a−hexahydrophenanthreneを得ることができる。
【0022】
【化3】

【0023】
(4)ケトアルキン化合物のフラン環合成反応。例えば、ケトアルキン化合物1,4−diphenylbut−3−yn−1−oneに固定化触媒を用いれば2,5−diphenylfuranを得ることができる。
【0024】
【化4】

【0025】
(5)アルキニルアニリン化合物のインドール環合成反応。例えば、アルキニルアニリン化合物N−(2−ethynylphenyl)−4−methylbenzenesulfonamideに固定化触媒を用いれば1−tosyl−1H−indoleを得ることができる。
【0026】
【化5】

【0027】
(6)アルキニルカルボン酸化合物のエキソメチレンラクトン合成反応。例えば、アルキニルカルボン酸化合物hex−5−ynoic acidに固定化触媒を用いれば6−methylenetetrahydro−2H−pyran−2−oneを得ることができる。
【0028】
【化6】

【0029】
(7)プロパルギルアセテート化合物のエノン化合物合成反応。例えば、プロパルギルアセテート化合物undec−3−yn−2−yl acetateに固定化触媒を用いれば(E)−undec−2−en−4−oneを得ることができる。
【0030】
【化7】

【0031】
アルキン化合物としては、エンイン化合物、インエンアリール化合物、ケトアルキン化合物、アルキニルアニリン化合物、アルキニルカルボン酸化合物、プロパルギルアセテート化合物等を挙げることができる。具体的には、prop−2−ynylbenzene、1,3−dimethoxy−5−(oct−3−ynyl)benzene、(E)−1,3−dimethoxy−5−(4−methylnon−3−en−7−ynyl)benzene、1,4−diphenylbut−3−yn−1−one、N−(2−ethynylphenyl)−4−methylbenzenesulfonamide、hex−5−ynoic acid、undec−3−yn−2−yl acetate等を挙げることができる。
【0032】
上記アルキン化合物に代ってアリルアルコール化合物であっても同様の環化化合物を得ることができる。その反応は例えば下記に示されるものである。
【0033】
(1)アリルアルコール化合物(E)−6−(3,5−dimethoxyphenyl)hex−2−en−1−olに固定化触媒を用いれば6,8−dimethoxy−1−vinyl−1,2,3,4−tetrahydronaphthaleneを得ることができる。
【0034】
【化8】

【0035】
(2)アリルアルコール化合物1−(3,5−dimethoxyphenyl)but−3−en−2−olに固定化触媒を用いれば5,7−dimethoxy−1,4−dihydronaphthaleneを得ることができる。
【0036】
【化9】

【0037】
(3)アリルアルコール化合物(E)−6−(1−tosyl−1H−indol−2−yl)hex−2−en−1−olに固定化触媒を用いれば9−tosyl−4−vinyl−2,3,4,9−tetrahydro−1H−carbazoleを得ることができる。
【0038】
【化10】

【0039】
アリルアルコール化合物としては具体的には、(E)−6−(3,5−dimethoxyphenyl)hex−2−en−1−ol、1−(3,5−dimethoxyphenyl)but−3−en−2−ol、(E)−6−(1−tosyl−1H−indol−2−yl)hex−2−en−1−olなどを挙げることができる。
【0040】
本発明の固定化触媒を使用した反応の一例として、アルキン化合物の環化体化合物への製造方法を示すと、シリカゲルにリンカーを介して水銀トリフラート(HgOTf)が固定化された化合物とアルキン化合物を溶媒中で反応させる方法を挙げることができる。溶媒としては、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル系溶媒、ニトロメタン、ニトロエタンなどのニトロ系溶媒、ジクロロメタン、1,2−クロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素などの脂肪族ハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素、又はこれら混合溶媒等を挙げることができる。反応温度は、−78〜200℃、好ましくは、0℃〜室温(25℃)がよい。反応時間は、5分〜48時間、好ましくは、10分〜6時間がよい。反応終了後、濾過、洗浄を行い、環化体化合物を得ることができる。
【0041】
本発明は、シリカゲルにリンカーを介して水銀トリフラート(HgOTf)が固定化された化合物を固定化触媒として使用し、例えば、アルキン化合物を反応させ環化体化合物を得ることができる。水銀トリフラートを本発明の固定化触媒にすることにより、環境負荷物質の排出が少なく、リサイクル性を向上させることができる。また、驚くべきことに、通常触媒を固定化し、固定化触媒とすることにより、触媒活性が低下するが、本発明の固定化触媒は、触媒活性は低下せず、本来触媒が有する活性を発揮させることができる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが何らこれらに限定されるものではない。
【0043】
合成例1(シリカゲル−Phenyl−HgOAcの調製)
シリカゲル担体(シリカゲルLICYCLE社,シリカゲル−Phenyl Reversed Phase Silica Gel, 230〜400mesh, loading 1.62mmol/g)(250mg,405μmol)とHg(OAc)(155mg,486μmol)を99.5%酢酸中(2.7mL)で、マイクロウェーブ(CEM社,Discover System,MODEL No.908015)を140℃、1時間照射した。その後室温(25℃)まで冷却し、濾紙を用いて反応液を取り除き、得られる残渣を10%酢酸、水、メタノール、酢酸エチル、エーテルを順次用いて洗浄し、デシケーターにより乾燥してシリカゲル−Phenyl−HgOAc(248mg, loading 0.20mmol/g)を得た。又、反応濾液及び、洗浄溶媒中の未反応Hg(OAc)を還元気化原子吸光光度法(NIPPON INSTRUMENTS社, MERCURY ANALYZER RA−2を使用)により定量(138mg)し、水銀担持率(loading)0.20mmol/gを算出した。担体径は光学顕微鏡(OLYMPUS社,IX70)と、デジタルカメラ(OLYMPUS社,DP70)によって20倍拡大写真を撮影し、解析ソフト(Media Cybernetics社,Image−Pro PLAS)を用いて計100個の担体数を測定し主担体径が50〜80μmであることを確認した。
【0044】
合成例2(シリカゲル−Phenyl−HgClの調製)
合成例1で調製したシリカゲル−Phenyl−HgOAc(248mg, loading 0.20mmol/g)に飽和食塩水(2.7mL)を加えて、60℃、11時間撹拌した。室温(25℃)まで冷却し濾紙を用いて反応液を取り除き、得られる残渣を水、メタノール、酢酸エチル、エーテルを順次用いて洗浄し、デシケーターにより乾燥してシリカゲル−Phenyl−HgCl(収量232mg)を得た。担体径は光学顕微鏡(OLYMPUS社,IX70)と、デジタルカメラ(OLYMPUS社,DP70)によって20倍拡大写真を撮影し、解析ソフト(Media Cybernetics社,Image−Pro PLAS)を用いて計100個の担体数を測定し主担体径が6〜15μmであることを確認した。
【0045】
実施例1(シリカゲル−Phenyl−HgOTfの調製)
合成例1で調製したシリカゲル−Phenyl−HgOAc(25.0mg,5μmol, loading 0.20mmol/g)に無水アセトニトリル(0.3mL)を加え、撹拌しながらトリフルオロメタンスルホン酸(1.50mg,10μmol,0.88μL)を滴下し、室温(25℃)、10分撹拌した。濾紙を用いて反応液を取り除き、得られる残渣をアセトニトリル、ジクロロメタン、エーテルを順次用いて洗浄し、デシケーターにより乾燥してシリカゲル−Phenyl−HgOTf(収量23.8mg)を得た。担体径は光学顕微鏡(OLYMPUS社,IX70)と、デジタルカメラ(OLYMPUS社,DP70)によって20倍拡大写真を撮影し、解析ソフト(Media Cybernetics社,Image−Pro PLAS)を用いて計100個の担体数を測定し主担体径が50〜80μmであることを確認した。
【0046】
実施例2
乾燥した反応フラスコにシリカゲル−Phenyl−HgOAc(25.0mg,5μmol)と無水アセトニトリル(0.3mL)を加え、撹拌しながらトリフルオロメタンスルホン酸(1.50mg,10μmol)を滴下した。室温(25℃)で10分間撹拌した後、濾紙を用いて反応液を取り除き、アセトニトリル、ジクロロメタン及びエーテルを順次用いて残渣を洗浄しシリカゲル−Phenyl−HgOTfを調製した。次いでシリカゲル−Phenyl−HgOTfに溶媒として無水ジクロロメタン(1mL)とN−[2−(hex−1−ynyl)phenyl]−4−methylbenzenesulfonamide(32.7mg,100μmol)を順次加えて、室温(25℃)で90分間反応させた。その後、濾紙を用いて触媒を取り除き濾液を濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル 5:1)で精製し環化体 2−butyl−1−tosyl−1H−indole(32.5mg,99%)を得た。
【0047】
IR(neat) 3051, 2958, 2930, 2871, 1596, 1454, 1376, 1218, 1179cm−1
H NMR(200MHz,CDCl
δ 0.96(3H,t,J=7.4Hz), 1.48(2H,m), 1.73(2H,quintet,J=7.4Hz), 2.33(3H,s), 2.98(2H,t,J=7.4Hz), 6.38(1H,s), 7.15−7.29(4H,m), 7.40(1H,d,J=7.8Hz), 7.61(2H,d,J=7.8Hz), 8.16(1H,dd,J=7.8,0.8Hz).
【0048】
13C NMR(50MHz,CDCl) ? 13.88, 21.44, 22.43, 28.69, 30.95, 108.56, 114.78, 120.00, 123.41, 123.71, 126.19, 129.71, 129.84, 136.22, 137.19, 142.49, 144.54.
MS(EI) m/z 327(M).
HR−MS(EI) calcd for C1921NOS (M) 327.1293, found 327.1283.
【0049】
実施例3
乾燥した反応フラスコにシリカゲル−Phenyl−HgOAc(20.0mg,4μmol)に無水アセトニトリル(0.24mL)を加え、撹拌しながらトリフルオロメタンスルホン酸(1.20mg,8μmol)を滴下した。室温(25℃)で10分間撹拌した後、濾紙を用いて反応液を取り除き、アセトニトリル、ジクロロメタン、エーテルを順次用いて残渣を洗浄しシリカゲル−Phenyl−HgOTfを調製した。次いでシリカゲル−Phenyl−HgOTfに溶媒として無水アセトニトリル(0.8mL)と1−(hept−2−ynyloxy)−3,5−dimethoxybenzene(19.8mg,80μmol)を順次加えて、室温(25℃)で90分間反応させた。その後、濾紙を用いて触媒を取り除き、濾液を濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル 7:1)で精製し環化体 4−butyl−5,7−dimethoxy−2H−chromene(19.7mg,99%)を得た。
【0050】
IR(neat) 2956, 2856, 1201, 1157, 1128, 819cm−1.
H NMR(600MHz,CDCl
δ 0.88 (3H,t,J=7.1Hz), 1.28−1.38(4H,m), 2.56(2H,dt,J=1.1,7.1Hz), 3.77(3H,s), 3.78(3H,s), 4.46(2H,dt,J=1.1,4.4Hz), 5.46(1H,tt,J=1.1,4.4Hz), 6.09(1H,d,J=2.5Hz), 6.13(1H,d,J=2.5Hz).
【0051】
13C NMR(150MHz,CDCl
δ 14.00, 22.54, 31.20, 34.53, 55.26, 55.27, 64.88, 92.80, 93.88, 107.19, 114.86, 136.19, 157.66, 157.83, 160.41.
MS(EI) m/z 248(M).
HR−MS(EI) calcd for C1520 (M) 248.1412, found 248.1418.
【0052】
実施例4
乾燥した反応フラスコにシリカゲル−Phenyl−HgCl(25.1mg,5μmol)と無水ジクロロメタン(0.3mL)を加え、撹拌しながら銀トリフルオロメタンスルホン酸塩(2.57mg,10μmol)を加えた。室温(25℃)で10分間撹拌した後、N−[2−(hex−1−ynyl)phenyl]−4−methylbenzenesulfonamide(32.7mg,100μmol)を加えた。室温(25℃)で2時間反応させ、炭酸水素ナトリウムの粉末を加え、固形物を濾紙を用いて取り除き濾液を濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル 5:1)で精製し環化体 2−butyl−1−tosyl−1H−indole(32.0mg,98%)を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固相担体にリンカーを介して水銀トリフラート触媒を固定化したことを特徴とする固定化触媒。
【請求項2】
リンカーがフェニル基である請求項1に記載の固定化触媒。
【請求項3】
固相担体にリンカーを介して、水銀トリフラートを固定化することを特徴とする水銀トリフラート固定化触媒の製造方法。
【請求項4】
アルキン化合物又はアリルアルコール化合物と水銀トリフラート固定化触媒を接触させることを特徴とする環化体化合物の製造方法。
【請求項5】
アルキン化合物が1,3−dimethoxy−5−(oct−3−ynyl)benzene、(E)−1,3−dimethoxy−5−(4−methylnon−3−en−7−ynyl)benzene、1,4−diphenylbut−3−yn−1−one、N−(2−ethynylphenyl)−4−methylbenzenesulfonamide、hex−5−ynoic acidである請求項4に記載の環化体化合物の製造方法。
【請求項6】
アリルアルコール化合物が(E)−6−(3,5−dimethoxyphenyl)hex−2−en−1−ol、1−(3,5−dimethoxyphenyl)but−3−en−2−ol、(E)−6−(1−tosyl−1H−indol−2−yl)hex−2−en−1−olである請求項4に記載の環化体化合物の製造方法。
【請求項7】
アルキン化合物と水銀トリフラート固定化触媒を接触させることを特徴とする水和化合物の製造方法。
【請求項8】
アルキン化合物がprop−2−ynylbenzeneである請求項7に記載の水和化合物の製造方法。
【請求項9】
アルキン化合物と水銀トリフラート固定化触媒を接触させることを特徴とするエノン化合物の製造方法。
【請求項10】
アルキン化合物がundec−3−yn−2−yl acetateである請求項9に記載のエノン化合物の製造方法。

【公開番号】特開2009−148720(P2009−148720A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329940(P2007−329940)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(302060306)大塚化学株式会社 (88)
【Fターム(参考)】