説明

固定接点付きケース及びそれを備えたスライドスイッチ

【課題】安価に複数の仕様のスライドスイッチに対応すること。
【解決手段】スライド部材5に設けられた可動接点7と摺接する固定接点27が埋設された固定接点付きケース2において、スライド部材5のスライド方向に沿って設けられ、スライド部材5を操作前の状態に復帰させるためのコイルばね3を収納可能な一対の第1ばね収納部25と、スライド部材5の係合片53aと係脱してクリック感触を生起させるための板ばね4を収納可能な第2ばね収納部26とを具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定接点付きケース及びそれを備えたスライドスイッチに関し、特に、スライド部材に設けられた可動接点と摺接する固定接点が埋設された固定接点付きケース及びそれを備えたスライドスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケース本体とケースカバーとで画成された収容室内に、スライド部材の前後移動に応じて伸縮してスライド部材を中立位置に自動復帰させるコイルばねを設けると共に、スライド部材のスライド切り換え操作にクリック感触を与える凹部及び凸部からなるクリック機構における凸部をケースカバーに設ける一方、凹部をスライド部材に設けたスライドスイッチが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このスライドスイッチにおいては、単一のコイルばねをスライド部材の下方側領域でスライド方向に延出するように配置し、前後の双方向の移動に応じてスライド部材を自動復帰させると共に、スライド操作に伴ってケースカバーの凸部をスライド部材の凹部と係脱させてクリック感触を生起させている。
【特許文献1】特開2007−323942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来のスライドスイッチにおいては、単一のコイルばねにより前後の双方向の移動に応じてスライド部材を自動復帰させると共に、ケースカバーの凸部と係脱してクリック感触を生起させることを前提とする形状にスライド部材を成形している。このため、例えば、一方向のスライド操作のみの自動復帰を所望するスライドスイッチや、クリック感触を必要としないスライドスッチに対応するためには、スライド部材自体の形状を変更しなければならず、成形金型の変更を伴うこととなり、安価に複数の仕様のスライドスイッチに対応することができないという問題がある。
【0004】
本発明はかかる問題点に鑑みて為されたものであり、安価に複数の仕様のスライドスイッチに対応することができる固定接点付きケース及びそれを備えたスライドスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の固定接点付きケースは、スライド部材に設けられた可動接点と摺接する固定接点が埋設された固定接点付きケースであって、前記スライド部材のスライド方向に沿って設けられ、前記スライド部材を操作前の状態に復帰させるための復帰用ばねを収納可能な一対の第1のばね収納部と、前記スライド部材の一部と係脱してクリック感触を生起させるための板ばねを収納可能な第2のばね収納部とを具備することを特徴とする。
【0006】
上記固定接点付きケースによれば、一対の第1のばね収納部及び第2のばね収納部に対して復帰用ばねや板ばねを選択的に収納することにより、一方向又は双方向のスライド操作に応じてスライド部材を復帰させるスライドスイッチや、スライド操作に伴うクリック感触を必要又は不要とするスライドスイッチに対応することができるので、成形金型の変更を必要とすることなく、安価に複数の仕様のスライドスイッチに対応することが可能となる。
【0007】
本発明の固定接点付きケースにおいては、前記一対の第1のばね収納部及び前記第2のばね収納部を、ケース本体の内底面に立設した仕切り壁により区画して設けると共に、当該仕切り壁における前記一対の第1のばね収納部間に位置する部分に前記スライド部材と係脱する前記板ばねの一部を突出させる切欠き部を形成したことが好ましい。この場合には、一対の第1のばね収納部間に形成した切欠き部からスライド部材と係脱する板ばねの一部を突出させ、この板ばねの一部を復帰用ばねの圧縮方向の延長線上に配置することができることができるので、スライド部材のスライド方向と直交する方向のケース本体の寸法を小型化することが可能となる。
【0008】
また、本発明の固定接点付きケースにおいては、前記固定接点を前記内底面に露出して形成すると共に、当該内底面に立設された側壁部に前記スライド部材の操作部をスライド移動可能に露出させる開口部を設けることが好ましい。この場合には、ケース本体の内底面に形成された固定接点と、操作部を露出させる開口部とが対向して配置される位置関係となるのを防止できるので、操作部を露出させる開口部から異物を侵入し難くすることができ、適用されるスライドスイッチの動作の信頼性を高めることが可能となる。
【0009】
特に、本発明の固定接点付きケースにおいては、ケース本体の前記固定接点が露出する空間と前記第2のばね収納部との間に前記第1のばね収納部を配置すると共に、当該第1のばね収納部と前記固定接点が露出する空間との間に隔壁を設けることが好ましい。この場合には、固定接点が露出する空間と、第1、第2のばね収納部とが隔壁により仕切られていることから、第1のばね収納部に収納される復帰用ばねや、第2のばね収納部に収納される板ばね等に摩耗粉が発生した場合においても、これらの摩耗粉を固定接点に侵入し難くすることができ、適用されるスライドスイッチの動作の信頼性を高めることが可能となる。
【0010】
本発明のスライドスイッチは、請求項2記載の固定接点付きケースに、可動接点が設けられると共にばね駆動部を有する金属板が埋設されたスライド部材をスライド移動可能に収納する一方、前記一対の第1のばね収納部の少なくともいずれか一方に金属製のコイルばねからなる復帰用ばねを収納し、前記スライド部材のスライド移動時に、前記ばね駆動部により前記復帰用ばねを駆動させることを特徴とする。
【0011】
上記スライドスイッチによれば、金属板の一部で構成されるばね駆動部で金属性のコイルばねを駆動していることから、スライド操作に伴うスライド部材及び復帰用ばねの接触部分の摩耗を低減でき、スライドスイッチの長寿命化を実現することが可能となる。
【0012】
本発明のスライドスイッチにおいては、前記一対の第1のばね収納部の一方に前記復帰用ばねを収納する一方、前記金属板に一対の片部をスライド移動方向に沿って間隔を有して設け、前記復帰用ばねに近い一方の前記片部で前記ばね駆動部を構成すると共に、当該片部と接離する突部を設けた板ばねを当該突部が前記切欠き部から突出するように前記第2のばね収納部に収納し、前記復帰用ばねに遠い他方の前記片部を前記板ばねの突部に接触しない位置で切断することが好ましい。この場合には、金属板に設けた一対の片部のうち、復帰用ばねに遠い片部を切断するだけで、ばね駆動部として機能する片部のみで、復帰用ばねの付勢力を受ける一方、板ばねの突部との接触によりスライド部材の位置決めをすることができる。これにより、金属板に設けた一対の片部の一方の切断という簡単な加工を行うだけで、一方側(例えば、右方側)の自動復帰機能、或いは、他方側(例えば、左方側)の自動復帰機能を有するスライドスイッチを実現することが可能となる。
【0013】
特に、本発明のスライドスイッチにおいては、前記板ばねの突部を前記ばね駆動部としての前記片部と係脱可能とし、前記スライド部材は、当該片部が前記コイルばねの一端と前記板ばねの突部との間に配置された第1状態を基準として、一方向へスライド移動すると前記コイルばねが圧縮される第2状態となる一方、他方向へスライド移動すると前記片部が前記板ばねの突部と係脱して第3状態となり、前記片部の側端部が前記板ばねの突部と対向して前記第3状態に保持されることが好ましい。この場合には、一方向へスライド移動させた場合にスライド部材を自動復帰させる一方、他方向へスライド移動させた場合にクリック感触を生起させながら、スライド部材をロック(ホールド)状態に保持することができるスライドスイッチを提供することが可能となる。例えば、未使用状態の場合に第3状態(ロック(ホールド)状態)に保持することにより、不所望な操作を防止することができるスライドスイッチを提供することが可能となる。より具体的には、本スライドスイッチを電源スイッチに適用する場合に、誤って電源スイッチがオン状態とされる事態を防止でき、バッテリ等の消耗を回避することが可能となる。
【0014】
また、本発明のスライドスイッチにおいては、前記一対の第1のばね収納部の両方に前記復帰用ばねを収納し、前記金属板に前記ばね駆動部を構成する一対の片部を設けることが好ましい。この場合には、ばね駆動部を構成する一対の片部をスライド部材に埋設される金属板に設け、一対の第1のばね収納部に収容された一対の復帰用ばねを駆動することから、ばね駆動部として機能する一対の片部で、一対の復帰用ばねの付勢力を受けると共にスライド部材の位置決めをすることができるので、双方向のスライド操作に対する自動復帰機能を有するスライドスイッチを実現することが可能となる。
【0015】
さらに、本発明のスライドスイッチにおいては、前記固定接点を前記内底面に露出して形成すると共に、前記固定接点が露出する空間と前記第2のばね収納部との間に前記第1のばね収納部を配置すると共に、当該第1のばね収納部と前記固定接点が露出する空間との間に隔壁を設けることが好ましい。この場合には、固定接点が露出する空間と、第1、第2のばね収納部とが隔壁により仕切られていることから、第1のばね収納部に収納される復帰用ばねや、第2のばね収納部に収納される板ばね等に摩耗粉が発生した場合においても、これらの摩耗粉を固定接点に侵入し難くすることができ、実装されるスライドスイッチの動作の信頼性を高めることが可能となる。
【0016】
さらに、本発明のスライドスイッチにおいて、前記金属板は、前記スライド部材のスライド移動方向に沿って当該スライド部材の一端から他端に亘って延設されることが好ましい。この場合には、金属板がスライド部材の一端から他端に亘って延設されているので、スライド部材が樹脂材料で形成され、小型化される場合においても、その強度を確保することが可能となる。
【0017】
さらに、本発明のスライドスイッチにおいては、前記金属板の一部を、前記収納部を蓋閉するカバー部材と前記隔壁の端面との間に配置し、当該金属板の一部で前記スライド部材がスライド移動可能に案内されることが好ましい。この場合には、スライド部材のスライド移動の案内に利用される金属板の一部で隔壁とカバー部材との隙間を小さくすることができるので、スライド部材のスライド移動に伴って発生した摩耗粉を固定接点に対する可動接点の摺接部分に侵入し難くすることができ、より信頼性を高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、一対の第1のばね収納部及び第2のばね収納部に対して復帰用ばねや板ばねを選択的に収納することにより、一方向又は双方向のスライド操作に応じてスライド部材を復帰させるスライドスイッチや、スライド操作に伴うクリック感触を必要又は不要とするスライドスイッチに対応することができるので、成形金型の変更を必要とすることなく、安価に複数の仕様のスライドスイッチに対応することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。本発明に係る固定接点付きケースは、例えば、携帯ゲーム機などの電源のオン/オフを切り替えるためのスライドスイッチやデジタルカメラなどのモードやズーム倍率を切り替えるためのスライドスイッチ等に好適に利用されるものである。特に、本発明に係る固定接点付きケースは、一方向のスライド操作に対する自動復帰や、双方向のスライド操作に対する自動復帰を所望するスライドスイッチ、或いは、クリック感触を必要とするスライドスイッチや、クリック感触を必要としないスライドスイッチなど、複数の仕様のスライドスイッチに安価に対応するものである。
【0020】
以下、本発明に係る固定接点付きケースが利用されるスライドスイッチのバリエーションについて説明する。まず、一方向のスライド操作に対する自動復帰機能を有すると共に、クリック感触を必要とするスライドスイッチについて説明し、次に、双方向のスライド操作に対する自動復帰機能を有する一方、クリック感触を必要としないスライドスイッチについて説明する。以下においては、説明の便宜上、前者を実施の形態1に係るスライドスイッチとして説明し、後者を実施の形態2に係るスライドスイッチとして説明するものとする。なお、以下に示すスライドスイッチの具体例は、一例を示すものであり、本発明に係る固定接点付きケースが利用されるスライドスイッチの仕様はこれに限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
まず、一方向のスライド操作に対する自動復帰機能を有すると共に、クリック感触を必要とするスライドスイッチ1について説明する。図1は、本発明の固定接点付きケース(以下、単に「ケース」という)2が利用される実施の形態1に係るスライドスイッチ1の分解斜視図である。図2及び図3は、実施の形態1に係るスライドスイッチ1の外観を示す斜視図である。図4は、実施の形態1に係るスライドスイッチ1が有するケース2の上面図(平面図)である。なお、図2においては、後述するスライド部材5の操作部52の反対側から見た斜視図を示し、図3においては、スライド部材5の操作部52側から見た斜視図を示している。また、以下においては、説明の便宜上、図1に示す右下方側をスライドスイッチ1の右方側と呼び、同図に示す左上方側をスライドスイッチ1の左方側と呼ぶものとする。
【0022】
図1に示すように、本実施の形態に係るスライドスイッチ1は、スイッチ本体の底面及び側面を構成するケース2と、このケース2の所定位置に収納されるコイルばね3、板ばね4及びスライド部材5と、これらの部材を収納した状態のケース2に被せられ、スイッチ本体の上面を構成するカバー部材6とを備えて構成されている。
【0023】
ケース2は、例えば、絶縁性の樹脂材料で成形され、概して扁平な直方体形状を有している。ケース2には、上方側に開口した収納部が設けられている。この収納部は、特に図4に示すように、ケース2の内底面にケース2の長手方向に沿って立設された隔壁21により区画された第1収納部22及び第2収納部23で構成されている。また、第2収納部23は、ケース2の内底面にケース2の長手方向に沿って立設された仕切り壁24により仕切られた第1のばね収納部(以下、「第1ばね収納部」という)25及び第2のばね収納部(以下、「第2ばね収納部」という)26で構成されている。第1収納部22には、その一部を側方側に突出した状態でスライド部材5が収納される。第2収納部23の第1ばね収納部25には、コイルばね3が収納され、第2ばね収納部26には、板ばね4が収納される。
【0024】
上述した仕切り壁24の中央には切欠き部24aが形成されており、仕切り壁24は、ケース2の長手方向に沿って2つに分割されている。なお、この切欠き部24aは、後述する板ばね4の係合突部41の一部を、第1ばね収納部25に収納されたコイルばね3の圧縮方向の延長線上の位置へ突出させるために設けられている。第1ばね収納部25は、このように分割されている仕切り壁24に対応して、スライド部材5のスライド方向(ケース2の長手方向)に沿って設けられた一対のばね収納部で構成されている。ここでは、スライドスイッチ1の右方側の第1ばね収納部25にのみコイルばね3を収納する場合について説明するが、スライドスイッチ1の仕様に応じて左方側の第1ばね収納部25にのみコイルばね3を収納するようにしても良い。
【0025】
第1収納部22の内底面には、スライド移動検出手段の一部を構成する複数の固定接点27がその一部を露出するように埋設されている(図4参照)。これらの固定接点27は、スライド部材5のスライド方向に沿って所定間隔を有して配置されており、後述するスライド部材5に設けられた可動接点7と摺接することでスライド部材5のスライド移動を検出可能に構成されている。
【0026】
ここで、ケース2に埋設される固定接点27の構成について説明する。図5は、実施の形態1に係るスライドスイッチ1が有するケース2に埋設される固定接点27の上面図である。図5に示すように、固定接点27は、同図に示す中央近傍に配置された共通固定接点27aと、この共通固定接点27aの右方側に配置される中央固定接点27bと、この中央固定接点27bの右方側に配置される右方側固定接点27cと、共通固定接点27aの左方側に配置される左方側固定接点27dとを有している。これらの固定接点27は、ケース2の内底面の内部を引き回されると共に、その一端がケース2の長辺を構成する側壁2a(図1に示す手前側の側壁)の中央近傍から導出され、スライド部材5のスライド移動状態に応じた信号を外部出力できるように構成されている。
【0027】
第1収納部22は、このように固定接点27が埋設された内底面と、隔壁21の一面と、内底面の側端部から上方側に立設された側壁2b(図1に示す奥側の側壁)の内壁面と、ケース2の短辺を構成する一対の側壁2c、2dの内壁面とで形成される空間で構成されている。なお、この第1収納部22は、固定接点27が露出する空間を構成する。側壁2bの中央近傍には、後述するスライド部材5の操作部52をスライド移動可能に露出させる開口部2eが設けられている。このように側壁2bに開口部2eを設けることにより、第1収納部22の内底面に形成された固定接点27と、操作部52を露出させる開口部2eとが対向して配置される位置関係となるのを防止できるので、この開口部2eから異物を侵入し難くすることができ、スライドスイッチ1の動作の信頼性を高めることが可能となっている。また、一対の側壁2c、2dにおける第1収納部22に対応する外壁面には、後述するカバー部材6の脚部62を収容する溝部2f、2gが設けられている。
【0028】
第2収納部23の一対の第1ばね収納部25は、隔壁21を挟んで第1収納部22の反対側の位置に設けられ、それぞれケース2の内底面と、隔壁21の一面と、側壁2c、2dの内壁面と、仕切り壁24の一面とで形成される空間で構成されている。仕切り壁24における切欠き部24a側の端部には、僅かに隔壁21側に屈曲した屈曲部24b、24cが設けられ、これらに対応する隔壁21の位置に設けられた突出片21a、21bと共にコイルばね3の内側一端を係止するように構成されている。なお、これらの屈曲部24b、24cと、突出片21a、21bとの間には、後述するスライド部材5の係合片53aが通過できる隙間24d、24eが設けられている。
【0029】
第2収納部23の第2ばね収納部26は、仕切り壁24を挟んで第1ばね収納部25の反対側の位置に設けられ、ケース2の内底面と、内底面の側端部から上方側に立設された側壁2aの内壁面と、側壁2c、2dの内壁面と、仕切り壁24の一面とで形成される空間で構成されている。側壁2aの中央には、上方側に開口し、後述するカバー部材6の突出壁64を収容する開口部2hが設けられている。また、この開口部2hの外側に配置された側壁2aの外壁面には、後述するカバー部材6の係合腕部63と係合する一対の係合片2i、2jが設けられている。これらの係合片2i、2jは、側壁2bにも設けられている(図1に不図示、図3参照)。なお、これらの係合片2i、2jの表面には、テーパが設けられており、簡単にケース2に対してカバー部材6を取り付けられるように構成されている。また、側壁2aの内壁面には、スライド部材5のスライド移動に伴って板ばね4が変形する領域を確保するために開口部2hに向かって傾斜面2kが設けられている。
【0030】
コイルばね3は、復帰用ばねとして機能するものであり、金属線材から構成され、スライドスイッチ1の右方側の第1ばね収納部25に収納される。コイルばね3は、第1ばね収納部25内において、上述のように内側の一端が屈曲部24c及び突出片21bで係止される一方、他端が側壁2dの内壁面で係止された状態となっている。詳細について後述するように、コイルばね3は、スライド部材5のスライド移動に伴って弾性変形してスライド部材5をスライド操作前の状態に自動復帰させる役割を果たす。
【0031】
板ばね4は、長尺形状を有する金属製の板状部材を折り曲げることで形成されている。板ばね4の中央には、第2ばね収納部26に収納された状態で隔壁21側に突出するように係合突部41が設けられている。この係合突部41は、後述するスライド部材5の係合片53aと係脱してクリック感触(節度感触)を生起させるクリック機構の一部として機能する。板ばね4は、その板面がケース2の内底面と交差するように第2ばね収納部26に収納されており、特に、係合突部41が仕切り壁24の切欠き部24aからコイルばね3の圧縮方向の延長線上の位置へ突出するように配置されている。このため、ケース2においては、コイルばね3と係合突部41とがオーバーラップして配設できるものとなっている。
【0032】
スライド部材5は、例えば、絶縁性の樹脂材料で成形され、ケース2の長手方向に延在する本体部51と、この本体部51の中央部からスライド部材5のスライド方向と直交する方向に突出する操作部52とを有している。本体部51の上面には、金属製の板状部材53が埋め込まれている。この板状部材53には、その中央よりも僅かに右方側の位置に、板ばね4の係合突部41と係合する片部として機能する係合片53aが設けられている。係合片53aは、スライド部材5が第1収納部22に収納された状態において、コイルばね3側に突出すると共に、その先端部を下方側に折り曲げて構成されている。この係合片53aは、スライド部材5のスライド移動に伴ってコイルばね3を圧縮するばね駆動部として機能する一方、板ばね4の係合突部41と係脱してクリック感触(節度感触)を生起させるクリック機構の一部として機能する。このように金属製の板状部材53の一部で構成される係合片53aで金属製のコイルばね3を駆動していることから、スライド操作に伴うスライド部材5及びコイルばね3の接触部分の摩耗を低減でき、スライドスイッチ1の長寿命化を実現することが可能となる。
【0033】
また、スライド部材5の本体部51の下面には、導電性を有する板状の金属材料で形成された可動接点7が取り付けられる。したがって、可動接点7は、本体部51を介して板状部材53と対向配置されるものとなる。可動接点7は、スライド移動検出手段の一部を構成するものであり、スライド部材5に固定される固定部71と、この固定部71からスライド部材5のスライド方向に延出する一対の腕部72a、72bとを有している。これらの腕部72a、72bは、弾性を有する摺動子を構成し、その先端部が僅かに下方側に延出するように設けられている。可動接点7は、固定部71でスライド部材5に固定され、スライド部材5と一体的にスライド移動可能に構成されている。そして、スライド部材5がスライド移動すると、腕部72a、72bの先端がケース2の固定接点27に摺接するように構成されている。
【0034】
ここで、スライド部材5の構成について説明する。図6及び図7は、実施の形態1に係るスライドスイッチ1が有するスライド部材5の構成を説明するための斜視図である。図6においては、スライド部材5を上方側から見た斜視図を示し、説明の便宜上、板状部材53が埋め込まれる前の状態について示している。図7においては、スライド部材5を下方側から見た斜視図を示し、説明の便宜上、可動接点7を取り付ける前の状態について示している。
【0035】
図6に示すように、スライド部材5に埋め込まれる板状部材53は、スライド部材5の本体部51の一端から他端に亘って延在する固定部53bと、この固定部53bから操作部52側に突出する突出部53cとから構成されている。固定部53b及び突出部53cの所定位置には、スライド部材5への確実な埋設を確保するための複数の固定片53dが下方側に延出して設けられている。板状部材53は、その上面と操作部52の上面とが同一平面上に配置されるように、スライド部材5の成形時に本体部51の上面に重ねるようにして埋め込まれる。
【0036】
このように本実施の形態に係るスライドスイッチ1においては、板状部材53をスライド部材5のスライド移動方向に沿ってその一端から他端に亘って延設することにより、樹脂材料で構成されるスライド部材5の強度を確保している。特に、このように板状部材53を埋め込むことにより、スライド部材5が小型化される場合においても、その強度を確保でき、その動作の信頼性を高めることが可能となっている。
【0037】
スライド部材5の本体部51に埋め込まれた状態において、固定部53bは、図7に示すように、スライド部材5の本体部51よりも僅かに操作部52の反対側に延出する延出部53eを有している。この延出部53eの下面には、スライドスイッチ1が組み立てられた状態において、隔壁21の上端面が当接可能に対向するものとなっている。また、板状部材53の固定部53bの端部近傍、すなわち、延出部53eの上面には、一対の突出片53fが設けられている。これらの突出片53fは、スライドスイッチ1が組み立てられた状態において、隔壁21の上端面の上方に位置して配設されると共に、カバー部材6の下面と当接可能に対向するものとなっている。
【0038】
また、スライド部材5の下面には、可動接点7が収容される凹部54がスライド部材5のスライド方向に沿って設けられている。この凹部54の中央には、可動接点7の固定部71が固定される円柱形状の突起からなる突出片54aが設けられている。そして、固定部71に形成された孔に突出片54aが挿通された状態で、この突出片54aの先端をかしめることにより、可動接点7がスライド部材5に取り付けられる。凹部54を構成する一方の側壁54b(操作部52側の側壁)は、突出片54aよりも下方側まで延出し、スライド部材5が第1収納部22に収納された状態において、その内底面に当接可能に対向するように構成されている。
【0039】
本実施の形態に係るスライドスイッチ1が組み立てられた状態において、スライド部材5は、側壁54bの下端部で第1収納部22の内底面に接触すると共に、板状部材53の延出部53eの下面で隔壁21の上端部と接触し、板状部材53の一対の突出片53fでカバー部材6の下面に接触するように構成されている。スライド操作が行われると、スライド部材5は、これらの3つの接触点で案内されながらスライド移動するように構成されている。
【0040】
特に、本実施の形態に係るスライドスイッチ1においては、隔壁21の上端部と、カバー部材6の下面との間に板状部材53の延出部53eが配置されるように構成されている。これにより、延出部53eで隔壁21とカバー部材6との間に形成される案内部としての隙間を小さくすることができるので、スライド部材5のスライド移動に伴って発生した摩耗粉を第1収納部22に侵入し難くすることができ、信頼性に優れたスライドスイッチ1の動作を実現している。また、延出部53eが隔壁21の上端面と当接可能になっていることで、可動接点7の腕部72a、72bが過度に変形するのを防止して、適切な接点荷重が得られるようになっている。なお、スライド部材5の側壁54bも同様の機能を果たすものとなっている。
【0041】
ところで、上述したようなスライド部材5は、一対の係合片53aを有する板状部材53を埋め込んでおき、スライドスイッチ1の仕様に応じて一方の係合片53aを切断することで製造される。図8は、一方の係合片53aを切断する前の板状部材53が埋め込まれたスライド部材5の斜視図である。図8に示すように、一方の係合片53aが切断される前においては、スライド方向に沿って所定の間隔を空けて、板状部材53の固定部53bに一対の係合片53aが設けられている。本実施の形態に係るスライドスイッチ1においては、右方側の第1ばね収納部25にコイルばね3を収納し、右方側へスライド移動させたスライド部材5を操作前の状態に自動復帰させる構成を採るため、図8に示す左方側の係合片53aが切断されている。仮に、左方側の第1ばね収納部25にコイルばね3を収納し、左方側へスライド移動させたスライド部材5を操作前の状態に自動復帰させる構成を採る場合には、右方側の係合片53aを切断することでこのようなスライドスイッチ1に対応することができるものとなっている。
【0042】
カバー部材6は、金属製の板状部材に打ち抜き加工及び折り曲げ加工を施すことで形成され、概して長方形状を有している。カバー部材6は、平板形状を有する上面部61と、カバー部材6の短辺を構成する上面部61の側面から下方側に垂下して設けられた一対の脚部62と、カバー部材6の長辺を構成する上面部61の側面から下方側に垂下して設けられた二対の係合腕部63とを有している。脚部62は、ケース2の溝部2f、2gに収容される位置に設けられており、その下端部近傍で外側に折り曲げられている。係合腕部63は、下端部近傍でそれぞれ内側に屈曲し、概してL字形状(逆L字形状)を有している。また、カバー部材6の一方の長辺を構成する上面部61の側面には、その中央部近傍から下方側に垂下する突出壁64が設けられている。この突出壁64は、ケース2の側壁2aに設けられた開口部2hに収容され、側壁2aから埃などが侵入するのを防止する役割を果たす。
【0043】
このような構成を有するスライドスイッチ1を組み立てると、図2及び図3に示すように、操作部52を外部に突出させた状態でスライド部材5がケース2内に収納され、その上方側からカバー部材6がケース2に取り付けられる。この場合において、カバー部材6は、図2及び図3に示すように、脚部62がケース2の溝部2f、2gに収容されると共に、突出壁64がケース2の開口部2hに収容された状態で、係合腕部63がケース2の係合片2i、2jの下方側に入り込むことでケース2に固定される。なお、ケース2の側壁2a、2bに設けられた係合片2i、2jの表面にはテーパが設けられているので、上方側からカバー部材6を押し込むだけで簡単に係合腕部63を係合片2i、2jの下方側に入り込ませることができるものとなっている。脚部62の下端部は、ケース2の側面から外側に突出した状態となっており、スライドスイッチ1が取り付けられる対象装置に半田付け等が可能となっている。
【0044】
ここで、このように組み立てられたスライドスイッチ1の内部の構成について説明する。図9及び図10は、実施の形態1に係るスライドスイッチ1の斜視図及び上面図である。なお、図9及び図10においては、説明の便宜上、スライドスイッチ1からカバー部材6を取り外した状態について示している。また、図9及び図10においては、スライド部材5の初期状態、すなわち、スライド操作が行われていない状態について示している。
【0045】
図9及び図10に示すように、スライド部材5は、ケース2の側壁2bに設けられた開口部2eから操作部52を突出させた状態で本体部51がケース2の第1収納部22に収納されている。この場合、板状部材53の延出部53eが隔壁21の上端部に載置されて状態となっており、係合片53aが第2収納部23側に突出した状態となっている。コイルばね3は、第2収納部23の右方側の第1ばね収納部25に収納され、板ばね4は、第2収納部23の第2ばね収納部26に収納されている。この場合、板ばね4は、係合突部41を仕切り壁24の切欠き部24aを介して隔壁21側に突出した状態で収納されており、係合突部41の一部がコイルばね3の圧縮方向の延長線上の位置に配置されている。
【0046】
このように本実施の形態に係るスライドスイッチ1においては、ケース2の第2収納部23の第2ばね収納部26に、コイルばね3の圧縮方向における延長線上に板ばね4の係合突部41の一部を突出させるように板ばね4を配置している。このため、コイルばね3と板ばね4の係合突部41とをオーバーラップするように配置されることから、スライド部材5のスライド方向と直交する方向のケース2の寸法を低減することができるので、当該方向の寸法を小型化したスライドスイッチ1を提供することが可能となる。
【0047】
図9及び図10に示すスライド部材5の初期状態においては、係合片53aは、係合突部41及びコイルばね3によって挟持され、仕切り壁24の屈曲部24cと隔壁21の突出片21bとの間の隙間24eに配置された状態となっている。このように係合片53aを係合突部41及びコイルばね3によって挟持していることから、初期状態においてスライド部材5がガタつくことが防止されている。なお、初期状態において、スライド部材5に固定された可動接点7の腕部72a、72bは、それぞれ共通固定接点27a、中央固定接点27bに接触した状態となっている。
【0048】
このように本実施の形態に係るスライドスイッチ1においては、第1収納部22にスライド移動検出手段を構成する固定接点27及び可動接点7を収納する一方、第2収納部23にコイルばね3及び板ばね4を収納している。これにより、スライド移動検出手段とコイルばね3及び板ばね4とが、それぞれ隔壁21により仕切られた第1収納部22と第2収納部23とに収納されることから、スライド部材5のスライド移動に伴ってスライド部材5の係合片53a又は板ばね4の係合突部41等から摩耗粉が発生した場合においても、当該摩耗粉がスライド移動検出手段側に侵入する事態を防止できるので、信頼性に優れたスライドスイッチ1を実現することが可能となっている。
【0049】
このように組み立てられた状態において、スライド部材5は、初期状態への自動復帰を可能としつつ、スライドスイッチ1の右方側にスライド移動可能に構成されている。また、スライド部材5は、クリック感触(節度感触)を付与しながらスライドスイッチ1の左方側にスライド移動可能に構成されると共に、左方側にスライド移動させた状態で保持可能に構成されている。このため、例えば、初期状態を基準として、スライド部材5をスライドスイッチ1の右方側にスライド移動させた状態で電源のオン/オフを切り替えると共に、スライドスイッチ1の左方側にスライド移動させた状態で電源状態の切り替えをロック(ホールド)状態とするような電源スイッチに好適に利用することができる。
【0050】
以下、本実施の形態に係るスライドスイッチ1の動作について説明する。図11及び図12は、実施の形態1に係るスライドスイッチ1が有するスライド部材5を初期状態から右方側にスライド操作した場合の斜視図及び上面図である。また、図13及び図14は、実施の形態1に係るスライドスイッチ1が有するスライド部材5を初期状態から左方側にスライド操作した場合の斜視図及び上面図である。なお、図11〜図14においては、説明の便宜上、スライドスイッチ1からカバー部材6を取り外した状態について示している。
【0051】
図9及び図10に示す初期状態から右方側にスライド部材5がスライド操作されると、スライド部材5の係合片53aは、コイルばね3の付勢力に抗してコイルばね3を圧縮しながら右方側に移動する。そして、スライド部材5をスライド移動可能な限界位置までスライド移動させると、スライド部材5が図11及び図12に示すように、スライド部材5が第1収納部22の最右方側の位置まで移動し、操作部52が開口部2eの右方側端部近傍の側壁2bに当接した状態となる。この場合、スライド部材5に固定された可動接点7の腕部72a、72bは、それぞれ共通固定接点27a、右方側固定接点27cに接触した状態となっている。すなわち、初期状態から可動接点7の腕部72a、72bが接触する固定接点27が切り替わるので、スライド部材5の右方側への移動を検出できるものとなっている。
【0052】
なお、図11及び図12に示す状態から、操作者がスライド操作を行う手を解放すると、コイルばね3の付勢力に応じて係合片53aが左方側に押し戻され、スライド部材5が左方側にスライド移動する。そして、係合片53aの左方側端部が板ばね4の係合突部41に到達すると、係合突部41とコイルばね3との間で挟持された状態とされ、初期状態(図9及び図10に示す状態)に復帰(自動復帰)することとなる。
【0053】
一方、図9及び図10に示す初期状態から左方側にスライド部材5がスライド操作されると、スライド部材5の係合片53aは、板ばね4の係合突部41に当接し、板ばね4の付勢力に抗して係合突部41を側壁2a側に退避させながら左方側に移動する。そして、係合片53aが係合突部41の頂部を乗り越えると、板ばね4の付勢力に応じて係合突部41が初期状態の位置まで復帰してスライド部材5が図13及び図14に示す状態となる。スライドスイッチ1においては、スライド部材5の左方側へのスライド動作に伴う板ばね4の復帰動作の際にクリック感触(節度感触)が生起されるものとなっている。この場合、スライド部材5は、開口部2eの左方側端部近傍の側壁2bにより左方側への移動が規制された状態となっている。すなわち、スライド部材5は、板ばね4の付勢力により開口部2eの左方側端部近傍の側壁2bに押し付けられた状態において位置決めされている。より具体的には、係合片53aの側端部が板ばね4の係合突部41に弾接状態で当接することにより、スライド部材5が第1収納部22の左方側に保持されるものとする。このとき、スライド部材5に固定された可動接点7の腕部72a、72bは、それぞれ左方側固定接点27d、共通固定接点27aに接触した状態となっている。すなわち、初期状態から可動接点7の腕部72a、72bが接触する固定接点27が切り替わるので、スライド部材5の左方側への移動及び保持状態を検出できるものとなっている。
【0054】
同様に、図13及び図14に示す状態から右方側にスライド部材5がスライド操作される場合には、スライド部材5の係合片53aは、板ばね4の付勢力に抗して係合突部41を側壁2a側に退避させながら右方側に移動する。そして、係合片53aが係合突部41の頂部を乗り越えると、板ばね4の付勢力に応じて係合突部41が初期状態の位置まで復帰してスライド部材5が図9及び図10に示す初期状態となる。この板ばね4の初期状態の位置への復帰動作の際にも、クリック感触(節度感触)が生起されるものとなっている。この場合、スライド部材5の係合片53aは、係合突部41とコイルばね3との間で挟持された状態とされ、スライド部材5が初期状態に復帰することとなる。このとき、スライド部材5に固定された可動接点7の腕部72a、72bは、それぞれ共通固定接点27a、中央固定接点27bに接触した状態となっている。すなわち、左方側に移動した状態から可動接点7の腕部72a、72bが接触する固定接点27が切り替わるので、スライド部材5の初期状態への復帰を検出できるものとなっている。
【0055】
このように本実施の形態に係るスライドスイッチ1によれば、スライド部材5に埋設される板状部材53に設けた一対の係合片53aのうち、コイルばね3に遠い係合片53aを切断するだけで、ばね駆動部として機能する係合片53aのみで、コイルばね3の付勢力を受ける一方、板ばね4の係合突部41との接触によりスライド部材5の位置決めをすることができる。これにより、板状部材53に設けた一対の係合片53aの一方の切断という簡単な加工を行うだけで、一方側(例えば、右方側)の自動復帰機能、或いは、他方側(例えば、左方側)の自動復帰機能を有するスライドスイッチ1を実現することが可能となる。
【0056】
特に、本実施の形態に係るスライドスイッチ1においては、右方側へスライド移動させた場合にスライド部材5を自動復帰させる一方、左方側へスライド移動させた場合にクリック感触を生起させながら、スライド部材をロック(ホールド)状態に保持するようにしていることから、例えば、未使用状態の場合にスライド部材5を左方側にスライド移動させて保持状態に移行させることにより、不所望な操作を防止することができるスライドスイッチ1を提供することが可能となる。より具体的には、スライドスイッチ1を電源スイッチに適用する場合に、誤って電源スイッチがオン状態とされる事態を防止でき、バッテリ等の消耗を回避することが可能となる。
【0057】
(実施の形態2)
次に、双方向のスライド操作に対する自動復帰機能を有する一方、クリック感触を必要としないスライドスイッチ10について説明する。図15は、本発明のケース2が利用される実施の形態2に係るスライドスイッチ10の分解斜視図である。なお、以下において、実施の形態1に係るスライドスイッチ1と共通する構成要素については同一の符号を付与し、その説明を省略する。また、以下においては、説明の便宜上、図15に示す右下方側をスライドスイッチ10の右方側と呼び、同図に示す左上方側をスライドスイッチ10の左方側と呼ぶものとする。
【0058】
図16及び図17は、実施の形態2に係るスライドスイッチ10の斜視図及び上面図である。なお、図16及び図17においては、説明の便宜上、スライドスイッチ10からカバー部材6を取り外した状態について示している。また、図16及び図17においては、スライド部材5の初期状態、すなわち、スライド操作が行われていない状態について示している。なお、実施の形態2に係るスライドスイッチ10の外観については、図2及び図3と共通するため、その説明を省略する。
【0059】
図15に示すように、実施の形態2に係るスライドスイッチ10においては、スライド部材5の本体部51に埋め込まれる板状部材53に一対の係合片53aが設けられている点、第2収納部23の一対の第1ばね収納部25の双方にコイルばね3が収納される点、並びに、第2収納部23の第2ばね収納部26に板ばね4が収納されていない点で実施の形態1に係るスライドスイッチ1と相違する。
【0060】
なお、実施の形態2に係るスライドスイッチ10が有するスライド部材5は、実施の形態1に係るスライドスイッチ1が有するスライド部材5を製造する前の形態、つまり、一方の係合片53aを切断する前の形態を有している。すなわち、実施の形態1に係るスライドスイッチ1と、実施の形態2に係るスライドスイッチ10においては、係合片53aを切断するだけで共通するスライド部材5を利用することができるものとなっている。
【0061】
このような構成を有する実施の形態2に係るスライドスイッチ10を組み立てると、その内部の構成は図16及び図17に示すようになる。スライド部材5は、図16及び図17に示すように、ケース2の側壁2bに設けられた開口部2eから操作部52を突出させた状態で本体部51がケース2の第1収納部22に収納されている。この場合、板状部材53の延出部53eが隔壁21の上端部に載置された状態となっており、一対の係合片53aが第2収納部23側に突出した状態となっている。ここで、隔壁21の上端部とカバー部材6の上面部61の下面との間には、実施の形態1と同様に、延出部53eを構成する金属板を通すだけの僅かな隙間が形成されている。そして、この隙間に板状部材53の延出部53eが案内されることで、スライド部材5がスライド移動可能となっている。なお、スライド部材5のスライド移動をより円滑にするために、延出部53eには、隔壁21の上端部に対応する位置に複数の突出片53fが形成されている。一対のコイルばね3は、第2収納部23の双方の第1ばね収納部25に収納されている。なお、板ばね4は、第2収納部23の第2ばね収納部26に収納されていない。
【0062】
スライド部材5が有する一対の係合片53aは、これらの外側からコイルばね3により挟持された状態となっている。図16及び図17に示すスライド部材5の初期状態においては、左方側の係合片53aが仕切り壁24の屈曲部24bと隔壁21の突出片21aとの間の隙間24dに配置され、右方側の係合片53aが仕切り壁24の屈曲部24cと隔壁21の突出片21bとの間の隙間24eに配置された状態となっている。このように一対の係合片53aを一対のコイルばね3によって挟持していることから、初期状態においてスライド部材5がガタつくことが防止されている。なお、初期状態において、スライド部材5に固定された可動接点7の腕部72a、72bは、それぞれ共通固定接点27a、中央固定接点27bに接触した状態となっている。
【0063】
このように組み立てられた状態において、スライド部材5は、初期状態への自動復帰を可能としつつ、スライドスイッチ10の左右方向の双方にスライド移動可能に構成されている。このため、例えば、初期状態を基準として、スライド部材5をスライドスイッチ10の右方側にスライド移動させた状態で第1のモードに切り替える一方、スライドスイッチ10の左方側にスライド移動させた状態で第2のモードに切り替えるようなモード切替スイッチに好適に利用することができる。
【0064】
以下、本実施の形態に係るスライドスイッチ10の動作について説明する。図18及び図19は、実施の形態2に係るスライドスイッチ10が有するスライド部材5を初期状態から左方側にスライド操作した場合の斜視図及び上面図である。また、図20及び図21は、実施の形態2に係るスライドスイッチ10が有するスライド部材5を初期状態から右方側にスライド操作した場合の斜視図及び上面図である。なお、図18〜図21においては、説明の便宜上、スライドスイッチ10からカバー部材6を取り外した状態について示している。
【0065】
図16及び図17に示す初期状態から左方側にスライド部材5がスライド操作されると、スライド部材5の左方側の係合片53aは、左方側のコイルばね3の付勢力に抗してこのコイルばね3を圧縮しながら左方側に移動する。そして、スライド部材5をスライド移動可能な限界位置までスライド移動させると、図18及び図19に示すように、スライド部材5が第1収納部22の最左方側の位置まで移動し、操作部52が開口部2eの左方側端部近傍の側壁2bに当接した状態となる。この場合、スライド部材5に固定された可動接点7の腕部72a、72bは、それぞれ左方側固定接点27d、共通固定接点27aに接触した状態となっている。すなわち、初期状態から可動接点7の腕部72a、72bが接触する固定接点27が切り替わるので、スライド部材5の左方側への移動を検出できるものとなっている。
【0066】
なお、図18及び図19に示す状態から、操作者がスライド操作を行う手を解放すると、左方側のコイルばね3の付勢力に応じて左方側の係合片53aが右方側に押し戻され、スライド部材5が右方側にスライド移動する。そして、右方側の係合片53aの右方側端部が右方側のコイルばね3に到達すると、再び左右のコイルばね3で一対の係合片53aが挟持された状態とされ、初期状態(図16及び図17に示す状態)に復帰(自動復帰)することとなる。
【0067】
一方、図16及び図17に示す初期状態から右方側にスライド部材5がスライド操作されると、スライド部材5の右方側の係合片53aは、右方側のコイルばね3の付勢力に抗してこのコイルばね3を圧縮しながら右方側に移動する。そして、スライド部材5をスライド移動可能な限界位置までスライド移動させると、図20及び図21に示すように、スライド部材5が第1収納部22の最右方側の位置まで移動し、操作部52が開口部2eの右方側端部近傍の側壁2bに当接した状態となる。この場合、スライド部材5に固定された可動接点7の腕部72a、72bは、それぞれ共通固定接点27a、右方側固定接点27cに接触した状態となっている。すなわち、初期状態から可動接点7の腕部72a、72bが接触する固定接点27が切り替わるので、スライド部材5の右方側への移動を検出できるものとなっている。
【0068】
なお、図20及び図21に示す状態から、操作者がスライド操作を行う手を解放すると、右方側のコイルばね3の付勢力に応じて右方側の係合片53aが左方側に押し戻され、スライド部材5が左方側にスライド移動する。そして、左方側の係合片53aの左方側端部が左方側のコイルばね3に到達すると、再び左右のコイルばね3で一対の係合片53aが挟持された状態とされ、初期状態(図16及び図17に示す状態)に復帰(自動復帰)することとなる。
【0069】
このように本実施の形態に係るスライドスイッチ10においては、ばね駆動部を構成する一対の係合片53aをスライド部材5に埋設される板状部材53に設け、一対の第1ばね収納部25に収容された一対のコイルばね3を駆動することから、一対の係合片53aにより一対のコイルばね3の付勢力を受けると共にスライド部材5の位置決めをすることができるので、双方向のスライド操作に対する自動復帰機能を有するスライドスイッチ1を実現することが可能となる。
【0070】
以上説明したように、実施の形態1、2に係るスライドスイッチ1、10に適用されるケース2においては、スライド部材5のスライド方向に沿って設けられ、スライド部材5を操作前の状態に復帰させるためのコイルばね3を収納可能な一対の第1ばね収納部25と、スライド部材5の係合片53aと係脱してクリック感触を生起させるための板ばね4を収納可能な第2ばね収納部26とを備えることから、一対の第1ばね収納部25及び第2ばね収納部26に対してコイルばね3や板ばね4を選択的に収納することにより、一方向又は双方向のスライド操作に応じてスライド部材を自動復帰させるスライドスイッチや、スライド操作に伴うクリック感触を必要又は不要とするスライドスイッチに対応することができるので、成形金型の変更を必要とすることなく、安価に複数の仕様のスライドスイッチに対応することが可能となる。
【0071】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明のケースが利用される実施の形態1に係るスライドスイッチの分解斜視図である。
【図2】実施の形態1に係るスライドスイッチの外観を示す斜視図である。
【図3】実施の形態1に係るスライドスイッチの外観を示す斜視図である。
【図4】実施の形態1に係るスライドスイッチが有するケースの上面図である。
【図5】実施の形態1に係るスライドスイッチが有するケースに埋設される固定接点の上面図である。
【図6】実施の形態1に係るスライドスイッチが有するスライド部材の構成を説明するための斜視図である。
【図7】実施の形態1に係るスライドスイッチが有するスライド部材の構成を説明するための斜視図である。
【図8】実施の形態1に係るスライドスイッチが有する、係合片を切断する前の板状部材が埋め込まれたスライド部材の斜視図である。
【図9】実施の形態1に係るスライドスイッチの斜視図である。
【図10】実施の形態1に係るスライドスイッチの上面図である。
【図11】実施の形態1に係るスライドスイッチが有するスライド部材を初期状態から右方側にスライド操作した場合の斜視図である。
【図12】実施の形態1に係るスライドスイッチが有するスライド部材を初期状態から右方側にスライド操作した場合の上面図である。
【図13】実施の形態1に係るスライドスイッチが有するスライド部材を初期状態から左方側にスライド操作した場合の斜視図である。
【図14】実施の形態1に係るスライドスイッチが有するスライド部材を初期状態から左方側にスライド操作した場合の上面図である。
【図15】本発明のケースが利用される実施の形態2に係るスライドスイッチの分解斜視図である。
【図16】実施の形態2に係るスライドスイッチの斜視図である。
【図17】実施の形態2に係るスライドスイッチの上面図である。
【図18】実施の形態2に係るスライドスイッチが有するスライド部材を初期状態から左方側にスライド操作した場合の斜視図である。
【図19】実施の形態2に係るスライドスイッチが有するスライド部材を初期状態から左方側にスライド操作した場合の上面図である。
【図20】実施の形態2に係るスライドスイッチが有するスライド部材を初期状態から右方側にスライド操作した場合の斜視図である。
【図21】実施の形態2に係るスライドスイッチが有するスライド部材を初期状態から右方側にスライド操作した場合の上面図である。
【符号の説明】
【0073】
1、10 スライドスイッチ
2 ケース
2a〜2d 側壁
2e 開口部
2f、2g 溝部
2h 開口部
2i、2j 係合片
2k 傾斜面
21 隔壁
22 第1収納部
23 第2収納部
24 仕切り壁
24a 切欠き部
24b、24c 屈曲部
24d、24e 隙間
25 第1ばね収納部(第1のばね収納部)
26 第2ばね収納部(第2のばね収納部)
27 固定接点
27a 共通固定接点
27b 中央固定接点
27c 右方側固定接点
27d 左方側固定接点
3 コイルばね
4 板ばね
41 係合突部
5 スライド部材
51 本体部
52 操作部
53 板状部材
53a 係合片
53b 固定部
53c 突出部
53d 固定片
53e 延出部
54 凹部
54a 突出片
6 カバー部材
61 上面部
62 脚部
63 係合腕部
7 可動接点
71 固定部
72a、72b 腕部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライド部材に設けられた可動接点と摺接する固定接点が埋設された固定接点付きケースであって、
前記スライド部材のスライド方向に沿って設けられ、前記スライド部材を操作前の状態に復帰させるための復帰用ばねを収納可能な一対の第1のばね収納部と、前記スライド部材の一部と係脱してクリック感触を生起させるための板ばねを収納可能な第2のばね収納部とを具備することを特徴とする固定接点付きケース。
【請求項2】
前記一対の第1のばね収納部及び前記第2のばね収納部を、ケース本体の内底面に立設した仕切り壁により区画して設けると共に、当該仕切り壁における前記一対の第1のばね収納部間に位置する部分に前記スライド部材と係脱する前記板ばねの一部を突出させる切欠き部を形成したことを特徴とする請求項1記載の固定接点付きケース。
【請求項3】
前記固定接点を前記内底面に露出して形成すると共に、当該内底面に立設された側壁部に前記スライド部材の操作部をスライド移動可能に露出させる開口部を設けたことを特徴とする請求項2記載の固定接点付きケース。
【請求項4】
ケース本体の前記固定接点が露出する空間と前記第2のばね収納部との間に前記第1のばね収納部を配置すると共に、当該第1のばね収納部と前記固定接点が露出する空間との間に隔壁を設けたことを特徴とする請求項3記載の固定接点付きケース。
【請求項5】
請求項2記載の固定接点付きケースに、可動接点が設けられると共にばね駆動部を有する金属板が埋設されたスライド部材をスライド移動可能に収納する一方、前記一対の第1のばね収納部の少なくともいずれか一方に金属製のコイルばねからなる復帰用ばねを収納し、前記スライド部材のスライド移動時に、前記ばね駆動部により前記復帰用ばねを駆動させることを特徴とするスライドスイッチ。
【請求項6】
前記一対の第1のばね収納部の一方に前記復帰用ばねを収納する一方、前記金属板に一対の片部をスライド移動方向に沿って間隔を有して設け、前記復帰用ばねに近い一方の前記片部で前記ばね駆動部を構成すると共に、当該片部と接離する突部を設けた板ばねを当該突部が前記切欠き部から突出するように前記第2のばね収納部に収納し、前記復帰用ばねに遠い他方の前記片部を前記板ばねの突部に接触しない位置で切断したことを特徴とする請求項5記載のスライドスイッチ。
【請求項7】
前記板ばねの突部を前記ばね駆動部としての前記片部と係脱可能とし、前記スライド部材は、当該片部が前記コイルばねの一端と前記板ばねの突部との間に配置された第1状態を基準として、一方向へスライド移動すると前記コイルばねが圧縮される第2状態となる一方、他方向へスライド移動すると前記片部が前記板ばねの突部と係脱して第3状態となり、前記片部の側端部が前記板ばねの突部と対向して前記第3状態に保持されることを特徴とする請求項6記載のスライドスイッチ。
【請求項8】
前記一対の第1のばね収納部の両方に前記復帰用ばねを収納し、前記金属板に前記ばね駆動部を構成する一対の片部を設けたことを特徴とする請求項5記載のスライドスイッチ。
【請求項9】
前記固定接点を前記内底面に露出して形成すると共に、前記固定接点が露出する空間と前記第2のばね収納部との間に前記第1のばね収納部を配置すると共に、当該第1のばね収納部と前記固定接点が露出する空間との間に隔壁を設けたことを特徴とする請求項5から請求項8のいずれかに記載のスライドスイッチ。
【請求項10】
前記金属板は、前記スライド部材のスライド移動方向に沿って当該スライド部材の一端から他端に亘って延設されることを特徴とする請求項5から請求項9のいずれかに記載のスライドスイッチ。
【請求項11】
前記金属板の一部を、前記収納部を蓋閉するカバー部材と前記隔壁の端面との間に配置し、当該金属板の一部で前記スライド部材がスライド移動可能に案内されることを特徴とする請求項9記載のスライドスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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