説明

固定機構

【課題】板材からの取り外し作業が容易で、水や塵が存在する環境でも利用でき、しかも、2つの部材間に介装された場合に、一方の部材から他方の部材へ振動が伝わるのを抑制可能な固定機構を提供すること。
【解決手段】固定具1の固定部3は、取付孔を密閉する状態になって、板材の一方の面側にある水や塵が他方の面側へ入り込むのを防止する閉塞部15と、支柱部5等を取付孔から引き抜く際には、利用者が操作する操作部としても利用される過挿入防止部25とを備える。また、過挿入防止部25は、板材において固定具1を挿入する側に配設されている。閉塞部15は、外部から伝わる振動を減衰させる制振性エラストマーによって構成されることにより、過挿入防止部25と一方の面との間に挟み込まれた部分を介して板材および過挿入防止部25のいずれか一方から他方へ振動が伝わるのを抑制している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種部材を板材に対して固定するために利用される固定機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、本願出願人は、下記特許文献1に記載の固定脚部(本発明でいう固定機構に相当。)を備えた固定具を提案している。この固定脚部は、電気機器のシャーシが有する板状の部分やプリント配線板等(以下、これらを総称して板材と呼ぶ。)に固定具を固定するものである。
【0003】
具体的には、特許文献1に記載の固定脚部を利用すれば、固定具を板材の表側から取付孔に挿し込んだときに、2つの弾性拘止片が板材の裏側に引っかかるとともに、板材の表側に弾性逆止部が圧接する状態となり、これら弾性拘止片と弾性逆止部との間に板材を挟み込むことによって、固定具を板材に固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭59−11910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の固定脚部の場合、利用者が2つの弾性拘止片を指で挟んで互いに近づけるように弾性変形させる操作をすれば、固定具を取付孔から引き抜くことができる。
【0006】
しかし、例えば、板材の裏側に各種配線や部品類が配設されている場合、それら配線や部品類が邪魔になって、弾性拘止片を指で挟む操作を行うことが困難になることがあり、その場合、固定具を引き抜く作業に手間がかかるという問題があった。
【0007】
また、例えば、給湯器等の屋外に設置される機器において、特許文献1に記載の固定具を利用すると、雨水あるいは塵やほこりの類が、固定脚部と板材との隙間から入り込んで板材の裏側へ達するおそれがある。そのため、濡れやすい環境やほこりっぽい環境で使用される機器において、水や塵の侵入が問題となりそうな箇所には、特許文献1に記載の固定具を利用することができなかった。
【0008】
さらに、特許文献1に記載の固定具のように、2つの板材間にスペーサとして介装されると、一方の板材からの振動が固定具を介して他方の板材へと伝わることがあり、他方の板材が振動するのに伴って異音が発生する、といった問題を招くこともあった。
【0009】
本発明は、上記諸問題を解決するため開発されたものであり、その目的は、板材からの取り外し作業が容易で、水や塵が存在する環境でも利用でき、しかも、2つの部材間に介装された場合に、一方の部材から他方の部材へ振動が伝わるのを抑制可能な固定機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、本発明において、上記目的を達成するために採用した構成について説明する。
本発明の固定機構は、板材を一方の面から他方の面へ貫通する取付孔に前記一方の面側から挿入される本体を、前記板材に対して固定可能な固定機構であって、前記板材との接触に伴って、その接触箇所に密着する形態に変形する柔軟なエラストマーからなり、前記本体が前記板材に固定された際に前記板材に密着することにより、前記取付孔を密閉する状態になって前記一方の面側にある水や塵が前記他方の面側へ入り込むのを防止する閉塞部と、前記本体が前記板材に固定された際には、前記板材の前記他方の面に引っかかる第1の位置にあって、前記本体を前記取付孔から引き抜き不能な状態にする一方、利用者からの操作力が伝わると弾性変形して前記第1の位置から前記他方の面に引っかからない第2の位置へと変位することにより、前記本体を前記取付孔から引き抜き可能な状態にする抜止部と、前記本体が前記板材に固定される際には、前記閉塞部の一部を前記一方の面との間に挟み込んだ状態で前記一方の面に引っかかることにより、前記固定機構が前記取付孔に対する適正な位置よりも奥まで挿入されるのを防止しており、前記本体を前記取付孔から引き抜く際には、利用者が操作する操作部としても利用される過挿入防止部と、前記抜止部と前記過挿入防止部を連結しており、前記本体を前記取付孔から引き抜くため利用者が前記過挿入防止部を操作した際に、利用者からの操作力を前記過挿入防止部から前記抜止部へと伝える連結部とを備え、前記閉塞部は、外部から伝わる振動を減衰させる制振性エラストマーによって構成されることにより、前記過挿入防止部と前記一方の面との間に挟み込まれた部分を介して前記板材および前記過挿入防止部のいずれか一方から他方へ振動が伝わるのを抑制していることを特徴とする。
【0011】
このような固定機構によれば、利用者が板材の一方の面側に配設されている過挿入防止部を操作すると、利用者からの操作力が過挿入防止部から抜止部へと伝わり、抜止部が弾性変形して第1の位置から第2の位置へと変位し、本体を取付孔から引き抜き可能な状態になる。
【0012】
したがって、本発明の固定機構によれば、従来のものとは異なり、利用者は、一方の面側で操作を行うことによって本体を取付孔から引き抜くことができるので、板材の他方の面側に各種部品類が配設されていても、本体を板材から取り外す作業を容易に実施することができる。
【0013】
また、このような固定機構によれば、本体が板材に固定された際に、閉塞部が取付孔を密閉する状態になって一方の面側にある水や塵が他方の面側へ入り込むのを防止する。
したがって、水や塵の侵入を防止できない従来の固定機構とは異なり、一方の面側に水や塵が存在する環境においても、本発明の固定機構を備えた部材を利用することができる。
【0014】
また、このような固定機構によれば、閉塞部が制振性エラストマーによって構成され、その閉塞部の一部が過挿入防止部と一方の面との間に挟み込まれているので、板材および過挿入防止部のいずれか一方が振動しても、その振動が他方へ伝わりにくくなっている。
【0015】
したがって、本発明の固定機構であれば、従来のものとは異なり、板材および過挿入防止部のいずれか一方から他方へ振動が伝わるのを抑制している分、従来のものに比べ異音が発生するのを防止できる。
【0016】
また、本発明の固定機構において、前記抜止部は、前記本体が前記板材に固定された際に、前記閉塞部の一部を前記板材の前記他方の面との間に挟み込んだ状態で前記他方の面に引っかかり、前記閉塞部は、前記抜止部と前記他方の面との間に挟み込まれた部分を介して前記板材および前記抜止部のいずれか一方から他方へ振動が伝わるのを抑制しているものであってもよい。
【0017】
このような固定機構を利用すれば、板材および抜止部のいずれか一方から他方へ伝わる振動も抑制されるので、抜止部と他方の面との間に制振性エラストマーが挟み込まれていない構造のものに比べ、さらに振動が伝わるのを抑制できる。
【0018】
また、本発明の固定機構において、前記連結部は、前記本体が前記板材に固定された際に、前記閉塞部の一部を前記取付孔の内周面との間に挟み込んだ状態となり、前記閉塞部は、前記連結部と前記取付孔の内周面との間に挟み込まれた部分を介して前記板材および前記連結部のいずれか一方から他方へ振動が伝わるのを抑制しているものであってもよい。
【0019】
このような固定機構を利用すれば、板材および連結部のいずれか一方から他方へ伝わる振動も抑制されるので、連結部と取付孔の内周面との間に制振性エラストマーが挟み込まれていない構造のものに比べ、さらに振動が伝わるのを抑制できる。
【0020】
また、本発明の固定機構において、前記閉塞部は、内部に空間部が形成された中空構造にされており、しかも、前記利用者が前記過挿入防止部を操作することによって前記抜止部の位置が前記第1の位置から前記第2の位置へ変位する際に、前記空間部が潰れる構造とされているものであってもよい。
【0021】
このような固定機構によれば、閉塞部の内部に空間部が形成されているので、同様の空間部が形成されていない場合に比べ、閉塞部の剛性が低くて変形しやすい構造になる。したがって、利用者が過挿入防止部を操作して、抜止部の位置を第1の位置から第2の位置へ変位させる際、利用者は、より小さな操作力で、抜止部を容易に第2の位置へ変位させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)は本発明の実施形態の固定具が2つの板材に固定された状態を示す斜視図であり、(b)は固定具の斜視図である。
【図2】(a)は固定具の硬質部材を示す図であり、(b)は固定具の閉塞部を示す図である。
【図3】固定具を示す図であり、(a)はその上面図、(b)はその正面図、(c)はその底面図、(d)はその左側面図、(e)はその右側面図、(f)はその背面図である。
【図4】図1(a)と同様の状態を示す図であり、(a)はその正面図であり、(b)はそのA−A断面図であり、(c)はその右側面図であり、(d)はそのB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施形態について、一例を挙げて説明する。
本実施形態において例示する固定具1は、図1(a)に示すように、電気機器の筐体が有するパネル50に対して、プリント配線板55を固定するために利用される部品である。
【0024】
この固定具1は、図1(b)に示すように、固定部3、支柱部5、および保持部7を備える。固定部3は、支柱部5の一端側に形成されており、この固定部3によって固定具1がパネル50に対して固定される。また、保持部7は、支柱部5の他端側に形成されており、この保持部7によってプリント配線板55が保持される。
【0025】
また、この固定具1は、図2(a)に示すような形状の硬質樹脂部材11を成型してから、この硬質樹脂部材11に対して、図2(b)に示すような形状の閉塞部15を射出成形(いわゆるアウトサート成形)で付加した構造になっている。硬質樹脂部材11は、ポリアミド等のプラスチックによって形成されている。閉塞部15は、スチレン系エラストマーをベースにして粘着付与樹脂や可塑剤等の成分を配合することにより、その損失係数tanδが少なくとも0.5以上(望ましくは1.0以上)となるように調製された制振性エラストマーによって形成されている。
【0026】
次に、固定部3および保持部7の詳細について、図3および図4を用いて説明する。
固定部3は、閉塞部15、抜止部22、過挿入防止部25、および連結部27から構成されている。
【0027】
閉塞部15は、第1延出部16、胴部17、および第2延出部18を有し、閉塞部15の内部には空間部19が形成されている。この閉塞部15は、上述のとおり、制振性エラストマーによって形成されており、パネル50との接触時には、その接触箇所に密着する形態に変形する。より詳しくは、図4(b)に示すように、支柱部5および保持部7がパネル50に固定された際に、第1延出部16は、パネル50の表面50aに密着し、胴部17は、取付孔52の内周面に密着し、第2延出部18は、パネル50の裏面50bに密着する。
【0028】
抜止部22は、図3に示すように、支柱部5から二股に分かれた形状に延設された第1抜止片22aおよび第2抜止片22bを有する。
第1抜止片22aおよび第2抜止片22bは、図4(d)に示すように、支柱部5および保持部7がパネル50に固定された際に、閉塞部15の第1延出部16の一部をパネル50の裏面50bとの間に挟み込んだ状態で裏面50bに引っかかる。このように第1抜止片22aおよび第2抜止片22bが引っかかった場合に、支柱部5および保持部7は、取付孔52から引き抜き不能な状態になる。
【0029】
また、第1抜止片22aおよび第2抜止片22bは、利用者からの操作力が伝わると、互いに近づくように弾性変形して、裏面50bに引っかからなくなる。このように第1抜止片22aおよび第2抜止片22bが引っかからなくなった場合に、支柱部5および保持部7は、取付孔52から引き抜き可能な状態になる。
【0030】
過挿入防止部25は、図3に示すように、第1過挿入防止片25aおよび第2過挿入防止片25bを有する。
第1過挿入防止片25aおよび第2過挿入防止片25bは、図4(d)に示すように、支柱部5および保持部7がパネル50に固定される際に、閉塞部15の第2延出部18の一部をパネル50の裏面50bとの間に挟み込んだ状態で裏面50bに引っかかる。この第1過挿入防止片25aおよび第2過挿入防止片25bが引っかかることによって、固定部3が取付孔52に対する適正な位置よりも奥まで挿入されるのが防止される。
【0031】
また、過挿入防止部25は、支柱部5および保持部7を取付孔52から引き抜く際には、利用者が操作する操作部としても利用される部分でもある。
連結部27は、図4(d)に示すように、第1連結片27aおよび第2連結片27bを有する。第1連結片27aは、第1抜止片22aと第1過挿入防止片25aを連結し、第2連結片27bは、第2抜止片22bと第2過挿入防止片25bを連結する。
【0032】
また、連結部27は、支柱部5および保持部7を取付孔52から引き抜くため利用者が過挿入防止部25を操作した際に、利用者が過挿入防止部25に加えた操作力を過挿入防止部25から抜止部22へと伝える。
【0033】
保持部7は、係止部31、および当接部35から構成されている。
係止部31は、図3に示すように、第1係止片31aおよび第2係止片31bを有する。第1係止片31aおよび第2係止片31bは、図4(d)に示すように、プリント配線板55が取り付けられた際に、プリント配線板55の表面55aに引っかかる。このように第1係止片31aおよび第2係止片31bが引っかかることによって、プリント配線板55が保持部7から取り外し不能になる。
【0034】
また、第1係止片31aおよび第2係止片31bは、利用者に操作されると、互いに近づくように弾性変形可能に構成されている。
当接部35は、図4(d)に示すように、プリント配線板55が取り付けられた際に、プリント配線板55の裏面55bに引っかかることにより、プリント配線板55が適正な保持位置よりも固定部3に近づくように変位するのを防止する部分である。
【0035】
次に、上述の固定具1の使用方法について説明する。
この固定具1を使ってプリント配線板55をパネル50に固定する場合、まず、利用者は、固定具1をパネル50に取り付ける作業を行う。
【0036】
その手順としては、固定具1の保持部7が形成されている方の先端が、パネル50の取付孔52に嵌り込むように位置を合わせる。そして、固定部3が形成された側から押圧力を加えて、固定具1を取付孔52から押し込む。
【0037】
こうすると、第1抜止片22aおよび第2抜止片22bは、取付孔52を通過可能な程度まで、互いに近づくように弾性変形して、取付孔52を通過する。そして、取付孔52を通過すると、弾性変形していた部分の形状が復元し、その結果、第1抜止片22aおよび第2抜止片22bは、閉塞部15の第1延出部16の一部をパネル50の裏面50bとの間に挟み込んだ状態で、裏面50bに引っかかる。
【0038】
また、このとき、閉塞部15の第1延出部16が、パネル50の表面50aに密着し、表面50a側にある水や塵が裏面50b側へ入り込むのを防止する状態になる。
次に、利用者は、固定具1にプリント配線板55を取り付ける作業を行う。
【0039】
その手順としては、利用者は、パネル50に固定された固定具1の保持部7の先端に、プリント配線板55の貫通孔57が嵌るように位置を合わせて、プリント配線板55を固定具1に対して押し込む。
【0040】
こうすると、第1係止片31aおよび第2係止片31bは、貫通孔57を通過可能な程度まで、互いに近づくように弾性変形して、貫通孔57を通過する。そして、貫通孔57を通過した後、弾性変形していた部分の形状が復元し、その結果、第1係止片31aおよび第2係止片31b、プリント配線板55の表面55aに引っかかり、これにより、プリント配線板55のパネル50に対する取り付けが完了する。
【0041】
一方、固定具1およびプリント配線板55をパネル50から取り外す場合、まず、利用者は、保持部7からプリント配線板55を取り外す作業を行う。
その手順としては、利用者は、係止部31の第1係止片31aと第2係止片31bを指で挟んで互いに近づけるように弾性変形させる。そして、第1係止片31aと第2係止片31bを、プリント配線板55の貫通孔57を通過可能な程度まで互いに近づけて、プリント配線板55を保持部7から取り外す。
【0042】
次に、利用者は、支柱部5および保持部7をパネル50から引き抜く作業を行う。
その手順としては、利用者は、第1過挿入防止片25aと第2過挿入防止片25bを指で挟んで、互いに近づけるように操作する。このとき、第1連結片27aおよび第2連結片27bは、第1過挿入防止片25aおよび第2過挿入防止片25bとともに互いに近づく方向に変位し、これにより、利用者の操作力が第1抜止片22aおよび第2抜止片22bへと伝わる。
【0043】
また、このように第1過挿入防止片25a、第2過挿入防止片25b、第1連結片27a、第2連結片27b、第1抜止片22a、および第2抜止片が変位すると、閉塞部15が変形して閉塞部15の空間部19が潰される。そのため、このような空間部が形成されていない場合に比べ、閉塞部15の剛性が低くて変形しやすいので、利用者は、より小さな操作力で、抜止部22を容易に変位させることができる。
【0044】
このような操作により、第1抜止片22aと第2抜止片22bを、パネル50の取付孔52を通過可能な程度まで互いに近づけたら、後はそのまま固定具1を手前に引っ張るだけで、支柱部5および保持部7を取付孔52から引き抜くことができる。
【0045】
以上説明したような固定部3であれば、従来のものとは異なり、利用者は、パネル50の表面50a側で過挿入防止部25の操作を行うことによって、支柱部5および保持部7を取付孔52から引き抜くことができるので、パネル50の裏面50b側に各種部品類が配設されていても、支柱部5および保持部7をパネル50から取り外す作業を容易に実施することができる。
【0046】
また、このような固定部3であれば、支柱部5および保持部7がパネル50に固定された際に、閉塞部15が取付孔52を密閉する状態になって表面50a側にある水や塵が他方の面側へ入り込むのを防止する。したがって、水や塵の侵入を防止できない従来のものとは異なり、表面50a側に水や塵が存在する環境においても、固定具1を利用することができる。
【0047】
また、このような固定部3であれば、閉塞部15が制振性エラストマーによって構成され、その閉塞部15の一部が、過挿入防止部25とパネル50の表面50aとの間、抜止部22とパネル50の裏面50bとの間、および連結部27と取付孔52の内周面との間に挟み込まれている。したがって、従来のものとは異なり、パネル50および固定部3のいずれか一方から他方へ振動が伝わるのを抑制している分、従来のものに比べ異音が発生するのを防止できる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な一実施形態に限定されず、この他にも種々の形態で実施することができる。
上記の実施形態では、固定部3は、閉塞部15の一部が、過挿入防止部25とパネル50の表面50aとの間、抜止部22とパネル50の裏面50bとの間、および連結部27と取付孔52の内周面との間の3箇所で挟み込まれていたが、挟み込まれる箇所は、これに限定されるものではない。例えば、過挿入防止部25とパネル50の表面50aとの間において閉塞部15の一部が挟み込まれていれば、これだけでも相応に防振効果を発揮するものとなる。また、これに加えて、抜止部22と裏面50bとの間、または連結部27と取付孔52の内周面との間のうち、いずれかにおいて閉塞部15の一部が挟み込まれることで、2箇所において閉塞部15の一部が挟み込まれていても、相応に防振効果を発揮するものとなる。
【0049】
上記の実施形態では、固定具1は、パネルに固定されるとともにプリント配線板を保持する、という態様に利用されていたが、固定される部材および保持する部材は、これに限定されるものではない。例えば、2つのプリント配線板を固定する用途に利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1・・・固定具、3・・・固定部、5・・・支柱部、7・・・保持部、11・・・硬質樹脂部材、15・・・閉塞部、16・・・第1延出部、17・・・胴部、18・・・第2延出部、19・・・空間部、22・・・抜止部、22a・・・第1抜止片、22b・・・第2抜止片、25・・・過挿入防止部、25a・・・第1過挿入防止片、25b・・・第2過挿入防止片、27・・・連結部、27a・・・第1連結片、27b・・・第2連結片、31・・・係止部、31a・・・第1係止片、31b・・・第2係止片、35・・・当接部、50・・・パネル、52・・・取付孔、55・・・プリント配線板、57・・・貫通孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板材を一方の面から他方の面へ貫通する取付孔に前記一方の面側から挿入される本体を、前記板材に対して固定可能な固定機構であって、
前記板材との接触に伴って、その接触箇所に密着する形態に変形する柔軟なエラストマーからなり、前記本体が前記板材に固定された際に前記板材に密着することにより、前記取付孔を密閉する状態になって前記一方の面側にある水や塵が前記他方の面側へ入り込むのを防止する閉塞部と、
前記本体が前記板材に固定された際には、前記板材の前記他方の面に引っかかる第1の位置にあって、前記本体を前記取付孔から引き抜き不能な状態にする一方、利用者からの操作力が伝わると弾性変形して前記第1の位置から前記他方の面に引っかからない第2の位置へと変位することにより、前記本体を前記取付孔から引き抜き可能な状態にする抜止部と、
前記本体が前記板材に固定される際には、前記閉塞部の一部を前記一方の面との間に挟み込んだ状態で前記一方の面に引っかかることにより、前記固定機構が前記取付孔に対する適正な位置よりも奥まで挿入されるのを防止しており、前記本体を前記取付孔から引き抜く際には、利用者が操作する操作部としても利用される過挿入防止部と、
前記抜止部と前記過挿入防止部を連結しており、前記本体を前記取付孔から引き抜くため利用者が前記過挿入防止部を操作した際に、利用者からの操作力を前記過挿入防止部から前記抜止部へと伝える連結部と
を備え、
前記閉塞部は、外部から伝わる振動を減衰させる制振性エラストマーによって構成されることにより、前記過挿入防止部と前記一方の面との間に挟み込まれた部分を介して前記板材および前記過挿入防止部のいずれか一方から他方へ振動が伝わるのを抑制している
ことを特徴とする固定機構。
【請求項2】
前記抜止部は、前記本体が前記板材に固定された際に、前記閉塞部の一部を前記板材の前記他方の面との間に挟み込んだ状態で前記他方の面に引っかかり、
前記閉塞部は、前記抜止部と前記他方の面との間に挟み込まれた部分を介して前記板材および前記抜止部のいずれか一方から他方へ振動が伝わるのを抑制している
ことを特徴とする請求項1に記載の固定機構。
【請求項3】
前記連結部は、前記本体が前記板材に固定された際に、前記閉塞部の一部を前記取付孔の内周面との間に挟み込んだ状態となり、
前記閉塞部は、前記連結部と前記取付孔の内周面との間に挟み込まれた部分を介して前記板材および前記連結部のいずれか一方から他方へ振動が伝わるのを抑制している
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の固定機構。
【請求項4】
前記閉塞部は、内部に空間部が形成された中空構造にされており、しかも、前記利用者が前記過挿入防止部を操作することによって前記抜止部の位置が前記第1の位置から前記第2の位置へ変位する際に、前記空間部が潰れる構造とされている
ことを特徴とする請求項1および請求項3のいずれかに記載の固定機構。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−266011(P2010−266011A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118757(P2009−118757)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000242231)北川工業株式会社 (268)
【Fターム(参考)】