説明

固定油及びチモキノンリッチ画分(TQRF)の抽出

本発明は、SFEがセイヨウクロタネソウ種子油の抽出及び分画に適することを報告した。SFE抽出(600バール/40℃)及び分画(100〜200バール/40〜60℃)によって生成したTQRFは、高レベルのTQ及び抗酸化活性を有していた。SFE分画によって、いかなる有害な有機溶媒も使用することなく、セイヨウクロタネソウ種子油のTQ含量及び抗酸化活性が短時間に低コストで効率よく濃縮される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、固定油及びチモキノンリッチ画分(TQRF)の抽出に関する。
【背景技術】
【0002】
セイヨウクロタネソウ(Nigella sativa L.)は、キンポウゲ科に属し、数千年前から、食品着香料、食品保存料、並びに健康増進成分として知られている。一般に、セイヨウクロタネソウ種子は、30%を超える固定油、及び0.40%〜0.45%の揮発性油を含有する。セイヨウクロタネソウ油は、ヒトの栄養並びに疾患の予防及び治療において有利な役割を担うので、優れた機能性食用油の一つであるとみなされる。
【0003】
チモキノン(TQ)は、セイヨウクロタネソウ揮発性油中の主要な生理活性成分(18.4%〜24%)である。多くの薬理学的調査で、セイヨウクロタネソウ油及びその生理活性化合物であるTQは、抗腫瘍、抗炎症、抗菌、抗糖尿病、抗高血圧、高血糖、抗酸化、及び免疫修飾の活性を含む、健康に有益な複合的活性を有することが報告された。
【0004】
健康への複合的な利益をもたらすので、セイヨウクロタネソウ種子からのTQの抽出は、重要度が高く、したがって、近年世界的に研究者及び栄養補助食品業界から絶えず注目を浴びるようになった。しかし、セイヨウクロタネソウ種子油抽出に使用される現在の方法(溶媒抽出及び水蒸気蒸留(hydro distillation))は、時間がかかり、コスト高であり、環境に有害であるばかりでなく、エキスから有機溶媒が完全に除去されなければ、消費者の健康をも脅かす。この筋書きでは、超臨界二酸化炭素流体抽出(SFE)が、セイヨウクロタネソウ種子抽出のためのより好適な代替手段になると思われる。好都合なことに、SFEは、毒性、爆発性がなく、環境にやさしく、費用効果が高く、時間の節約となり、選択性が調節可能な溶媒(超臨界二酸化炭素流体)を抽出過程で使用するものである。さらに、SFEでは、低温及び酸素なしの条件下で油抽出を実施することも可能になる。この特徴は、酸化分解を非常に受けやすい生理活性化合物、たとえばTQの抽出において極めて重要である。一方、SFEを使用する同時分画によって、TQなどのターゲットとなる生理活性化合物の濃縮を、溶媒なしというだけでなく、時間及び費用の節約になる方法で行うことが可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、SFE抽出及び分画によって、(TQなどの)生理活性化合物が多く、抗酸化活性が高いセイヨウクロタネソウ種子油及び画分を得る抽出手順を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、セイヨウクロタネソウ種子から固定油を抽出するための超臨界流体抽出法が提供され、この方法は、300バール〜600バールの間の圧力にて31℃〜80℃の間の温度でセイヨウクロタネソウ種子粗油を抽出するステップを含む。
【0007】
セイヨウクロタネソウ種子からチモキノンリッチ画分(TQRF)を抽出するための、二酸化炭素供給量が25g/分〜30g/分の間である超臨界流体抽出法も提供されるが、この方法は、(a)300バール〜600バールの間の圧力にて31℃〜80℃の間の温度でセイヨウクロタネソウ種子粗油を抽出するステップと、(b)ステップ(a)で得たセイヨウクロタネソウ種子粗油を100〜300バールの圧力にて31〜80℃の温度で分画するステップとを含む。
【0008】
さらに、セイヨウクロタネソウ種子から固定油とチモキノンリッチ画分(TQRF)を同時に抽出するための、二酸化炭素供給量が25g/分〜30g/分の間である超臨界流体抽出法も提供されるが、この方法は、(a)セイヨウクロタネソウ種子粗油を300バール〜600バールの圧力にて31℃〜80℃の温度で抽出するステップと、(b)ステップ(a)で得たセイヨウクロタネソウ種子粗油を100〜300バールの圧力にて31〜80℃の温度で分画するステップとを含む。
【0009】
本発明は、いくつかの新規な特徴と、付随する記述及び図面において以下で十分に説明及び例示する各部分の組合せとからなるが、本発明の範囲から逸脱することも本発明の利点のいずれかを犠牲にすることもなく、細目を様々に変更してもよいことは理解される。
【0010】
図面は、本明細書の一部を構成しており、様々な形で具体化することのできる本発明の例示的又は好ましい実施形態を含む。しかし、開示される好ましい実施形態は、単に本発明を例示するものにすぎないことを理解されたい。したがって、本明細書に添付する図面は、限定するものとは解釈されず、単に特許請求の範囲の基盤として、また本発明の分野の技術者に教示するためにあると解釈される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】異なるセイヨウクロタネソウ種子油画分(n=2)の収率を示すグラフである。
【図2】異なるセイヨウクロタネソウ種子油画分(n=2)のTQ濃度を示すグラフである。
【図3】異なるセイヨウクロタネソウ種子油画分(n=2)のDPPHラジカル捕捉活性を示すグラフである。
【図4】異なるセイヨウクロタネソウ種子油画分(n=2)のガルボノキシル(galvonoxyl)捕捉活性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は一般に、固定油及びチモキノンリッチ画分(TQRF)の抽出に関する。以下、本明細書では、本発明を本発明の好ましい実施形態に従って記述する。しかし、その記述を本発明の好ましい実施形態に限定するのは、単に本発明の論述を容易にするためにすぎないと理解されたく、また当業者が、付属の特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な変更形態及び等価形態を考案してもよいと考える。
【0013】
本発明は、セイヨウクロタネソウ種子の全油抽出とセイヨウクロタネソウ油画分のTQ濃縮の同時の実施を可能にするSFE抽出手順を提供する。本発明によって、有害な有機溶媒の使用を伴う任意のさらなる精製過程、並びに高価な設備を使用することなく、より短時間且つより低コストの方法で、セイヨウクロタネソウ種子の高度抗酸化TQRFを得ることができるはずである。本発明は、TQRFを生成するほかに、他の経済的価値を有すると思われる多量のセイヨウクロタネソウ種子固定油(NSO)も同時に生成する。NSOは、機能性料理用油、顔用クリームなどの、品揃えの少ないセイヨウクロタネソウ栄養補助食品及び薬用化粧品の主成分にすることができるはずである。すなわち、本発明は、セイヨウクロタネソウ種子油の廃棄量の削減及び機能性の多角化にも寄与する。
【0014】
一般に、本発明は、セイヨウクロタネソウ種子粗油を300バール〜600バールの間の圧力にて31℃〜80℃の間の温度で抽出するステップと、ステップ(a)で得たセイヨウクロタネソウ種子粗油を100〜300バールの圧力にて31〜80℃の温度で分画するステップとを含む、セイヨウクロタネソウ種子からの固定油及びTQRFの抽出を提供する。
【0015】
各抽出は独立したものでもよく、すなわち、固定油とTQRFは、別々に抽出しても、同時に抽出してもよい。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、超臨界流体は超臨界二酸化炭素であり、抽出は、汚れを除き、乾燥させ、粉砕したセイヨウクロタネソウ種子100gのサンプルサイズに準拠したものである。
【0017】
以下の実施例を参考事項として挙げるが、そうした実施例は、例示的なものであり、限定するものではない。
【実施例】
【0018】
分画のためのSFEパラメーターの選択
a. サンプル調製
セイヨウクロタネソウ種子の汚れを除き、恒量になるまで40℃のオーブンで乾燥させた。次いで、100gの種子を、電気粉砕機(Waring Blender)を1分間使用することにより粉砕して粉末にした。この手順は、SFE抽出を開始する直前に実施すべきである。
【0019】
b. SFE抽出
超臨界二酸化炭素抽出装置(Thar 1000F)を4通りの異なる抽出パラメーター(400バール/40、600/40、600/60、600/80の圧力(バール)/温度(℃))で使用することにより、セイヨウクロタネソウ種子を抽出にかけた。簡潔に述べると、100グラムの粉砕したセイヨウクロタネソウ種子を1リットル容抽出容器に入れた。抽出容器をしっかりと密閉した後、所望の抽出温度を設定した。抽出容器内の圧力を、一定の二酸化炭素流量(30g/分)を用いて強め、自動式背圧調節装置によって調節した。望ましい温度及び圧力が得られた後、SFE抽出を開始した。抽出過程は全体で3時間続き、1時間刻みで収集容器から油サンプルを集めた。この抽出の合計収油率を、区間収率を合計して算出した。
【0020】
c. セイヨウクロタネソウSFE油中のTQ含量の測定
セイヨウクロタネソウ油中のTQ含量を、C18逆相カラム(Zorbax SB−C18)を完備した分析用HPLC(Agilent 1100)を使用して測定した。移動相は、それぞれ50:45:5(v/v)の比の水、メタノール(Fisher Scientific)、及びイソプロパノール(Fisher Scientific)からなるものであった。移動相の流量は、1.5ml/分に設定した。セイヨウクロタネソウ油を最初にイソプロパノールに溶解させ、0.45μmのMilliporeフィルターで濾過してからHPLCシステムに注入(20μl)した。セイヨウクロタネソウSFE油のチモキノン含量を、チモキノン標準物質(Sigma)曲線から決定し、mg TQ/g油で示した。
【0021】
d. 結果
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
表1及び2は、それぞれ、SFEによって抽出したセイヨウクロタネソウ種子油の収率及びTQ含量を示す。結果は、等温条件下(40℃)で抽出圧が400バールから600バールに上昇すると、セイヨウクロタネソウ油の収率が有意に増加することを示している(P<0.05)。その上、結果は、600バールの一定圧力でSFE抽出温度が上昇すると、得られる収率は有意に増加するが、油中のTQ含量は減少することも示している(P<0.05)。40〜80℃の範囲の温度と組み合わせた600バールでのSFE抽出では、抽出の最初の1時間でセイヨウクロタネソウ種子から油及びTQの大部分(総抽出可能物質の>50%)が効率よく抽出された。しかし、その後の2時間の抽出では収油率及びTQ含量の下降性の減少が認められた。この実験では終始、TQ含量が多く、エネルギー(熱)要件が低いので、600バール/40℃をさらなる分画のSFEパラメーターとして選択した。
【0024】
SFE分画によるセイヨウクロタネソウ種子からの高度抗酸化TQRFの生成
a. サンプル調製
セイヨウクロタネソウ種子の汚れを除き、恒量になるまで40℃のオーブンで乾燥させた。次いで、100gの種子を、電気粉砕機(Waring Blender)を1分間使用することにより粉砕して粉末にした。この手順は、SFE抽出を開始する直前に実施すべきである。
【0025】
b. SF抽出及び分画
セイヨウクロタネソウ種子を抽出にかけ(600バール/40℃)、超臨界二酸化炭素抽出装置(Thar 1000F)を9通りの異なる分画パラメーター(300バール/40℃、300バール/60℃、200バール/40℃、200バール/60℃、100バール/40℃、100バール/60℃の圧力(バール)/温度(℃))で使用することにより分画した。簡潔に述べると、100グラムの粉砕したセイヨウクロタネソウ種子を1リットル容抽出容器に入れた。抽出容器をしっかりと密閉した後、抽出温度を40℃に設定した。抽出容器内の圧力を、一定の二酸化炭素流量(25g/分)を用いて強め、自動式背圧調節装置によって調節した。抽出容器が600バール及び40℃に達した後、SFE分画を開始した。セイヨウクロタネソウ油の分画は、容器内部の圧力及び温度を6通りの異なる計画分画パラメーター:(圧力(バール)/温度(℃):300バール/40℃、300バール/60℃、200バール/40℃、200バール/60℃、100バール/40℃、100バール/60℃)に従って調節することにより、第1の収集容器1で実施した。同時に、第1の容器での分画からのすべての抽出可能物質を集めるために、第2の収集容器の条件を大気圧(1バール)及び室温(25℃)に設定した。抽出及び分画の過程は全体で2.5時間続いた。抽出が完了した後、抽出容器及び第1の収集容器を減圧し、それぞれ第1の収集容器及び第2の収集容器から画分を集めた。第1の収集容器及び第2の収集容器中のセイヨウクロタネソウ画分の収率を最後に算出した。SFE未分画及び石油エーテル抽出(ソックスレー、AOAC法)セイヨウクロタネソウ油を、この実施例の比較対象として使用した。
【0026】
c. ソックスレー法の使用による溶媒抽出
ソックスレー法(AOAC法)の使用による溶媒抽出を実施したが、使用した溶媒は石油エーテルである。まず、10グラムの粉砕したセイヨウクロタネソウ種子を秤量し、抽出シンブルに移した。次いで、シンブルをソックスレー抽出器(Witeg、ドイツ)に移し、秤量したフラスコを取り付けた。200mlの石油エーテルをフラスコに加えた。この装置を冷却器に接続し、水道の蛇口をひねった。抽出は、電熱抽出ユニット上で8時間行った。8時間後、石油エーテルを含んでいるフラスコを取り外した。石油エーテルを減圧下で蒸発させた。次いで、フラスコを1時間真空オーブンに移して、抽出物を乾燥させた。最後に、フラスコをデシケーター中で冷却し、画分の収率を算出した。
【0027】
d. セイヨウクロタネソウSFE画分中のTQ含量の測定
セイヨウクロタネソウ画分中のTQ含量を、C18逆相カラム(Zorbax SB−C18)を完備した分析用HPLC(Agilent 1100)を使用して測定した。移動相は、それぞれ50:45:5(v/v)の比の水、メタノール(Fisher Scientific)、及びイソプロパノール(Fisher Scientific)からなるものであった。移動相の流量は、1.5ml/分に設定した。セイヨウクロタネソウ画分を最初にイソプロパノールに溶解させ、0.45μmのMilliporeフィルターで濾過してからHPLCシステムに注入(20μl)した。セイヨウクロタネソウSFE画分のチモキノン含量を、チモキノン標準物質(Sigma)曲線から決定し、mg TQ/g画分で示した。
【0028】
e. セイヨウクロタネソウSFE画分のDPPHラジカル捕捉活性
セイヨウクロタネソウSFE画分のDPPHラジカル捕捉活性を測定した。α−トコフェロールをこの試験の標準親油性抗酸化物質として使用した。簡潔に述べると、異なる濃度のサンプルトルエン溶液0.1mlに、0.39mlの新鮮なDPPHトルエン溶液(0.1mM)を加えた。次いで、混合物を激しく振盪し、60分間暗所に放置した。最後に、混合物の吸光度を、紫外可視分光光度計(Pharmaspec uv−1700、島津製作所)を使用して、515nmで純粋トルエン(ブランク)に対して測定した。セイヨウクロタネソウSFE画分のDPPH捕捉活性を、α−トコフェロール標準曲線から決定し、mg α−トコフェロール当量(Teq)/gサンプルで示した。
【0029】
f. セイヨウクロタネソウSFE画分のガルビノキシルラジカル捕捉活性
セイヨウクロタネソウSFE画分のガルビノキシルラジカル捕捉活性を測定した。α−トコフェロールをこの試験の標準親油性抗酸化物質として使用した。簡潔に述べると、20mgの油サンプル(200μlのトルエン中)を、200μlのガルビノキシルトルエン溶液(0.125mM)と60分間反応させた。引き続いて、ESR(日本電子株式会社)を以下の条件、すなわち中心磁場=336.374±5mT、掃引時間=1分、マイクロ波電力=4mW、変調周波数=100kHz、変調幅=0.08mT、振幅=60、及び時定数=0.1秒で使用することにより、サンプルの抗ラジカル活性を室温で測定した。セイヨウクロタネソウSFE画分のガルビノキシルラジカル捕捉活性を、α−トコフェロール標準曲線から決定し、mg α−トコフェロール当量(Teq)/gサンプルで示した。
【0030】
g. 結果
この試験の結果は、添付の図面に示す。図1は、種々のセイヨウクロタネソウ種子油画分の収率を示す。結果は、ソックスレー抽出では、すべてのSFE抽出より高いパーセンテージの油がセイヨウクロタネソウ種子から得られたことを示している(P<0.05)。その上、結果は、分画圧力が低下すれば、第2の収集容器中に得られる画分収率が減少することになった(P<0.05)が、分画温度が変化しても、ほとんどの場合その画分の収率が変化しなかった(P>0.05)ことも示している。
【0031】
図2は、種々のセイヨウクロタネソウ種子油画分のTQ濃度を示す。結果は、100バール/40℃での分画によって、セイヨウクロタネソウ油中のTQ含量が、未分画サンプル及びソックスレーサンプルの約10倍に効率よく増加したことを示している(P<0.05)。一方、100バール/40℃画分中のTQ含量(油の約6.5%w/w)は、従来技術で報告されているセイヨウクロタネソウ油中TQ含量(油の0.05%w/w)の約100倍であった。
【0032】
図3及び4は、種々のセイヨウクロタネソウ種子油画分のDPPHラジカル及びガルビノキシルラジカル捕捉活性を示す。結果は、100バール/40℃及び100バール/60℃での分画によって、DPPHラジカル及びガルビノキシルラジカルに対するセイヨウクロタネソウ油の抗ラジカル活性が、未分画サンプル及びソックスレーサンプルと比べて大幅に向上することを示している(P<0.05)。結論として、100バール/40℃での分画は、TQの含有量が多く、抗酸化活性が大幅に向上するので、高度抗酸化TQRF生成において最良のSFE分画パラメーターであることが判明した。
【0033】
各図からわかるように、圧力や温度などの様々なパラメーターを操作することで、収率の最適化が可能になる。一例では、等温条件下(40℃)で抽出圧が400バールから600バールに上昇すると、収油率が19.32%から27.919%に増加する。一方、等圧条件下(600バール)で抽出温度が40℃から80℃に上昇すると、収油率が27.919%から36.87%に増加する。等圧条件下(600バール)で抽出温度が80℃から40℃に低下すると、油中のTQ含量は0.08%から0.2%(w/w)に増加する。セイヨウクロタネソウ種子から油とTQRFを同時に生産するには、600バールの抽出圧を40℃の抽出温度と組み合わせたものが、さらなる分画を考えて選択される最適なSFEパラメーターである。
【0034】
二酸化炭素供給量は25g/分〜30g/分の間であり、抽出時間は、抽出容器が400〜600バールの抽出圧及び40〜80℃の抽出温度に達した後2.5時間〜3時間の間である。
【0035】
400〜600バールの範囲の抽出圧を40〜80℃の範囲の抽出温度と組み合わせると、19.32%〜36.87%(w/w)の範囲の収油率をもたらすSFEが、セイヨウクロタネソウ種子油抽出に適することがわかる。
【0036】
600バールの抽出圧を80℃の抽出温度と組み合わせると、収油率が最高になる(36.87%)。同時に、600バールの抽出圧を40℃の抽出温度と組み合わせると、油中のTQ含量が最高になる(0.2%)。
【0037】
40〜80℃の範囲の抽出温度での等圧(600バール)SFE抽出では、抽出の最初の1時間でセイヨウクロタネソウ種子から油及びTQの大部分(総抽出可能物質の>50%)が効率よく抽出された。
【0038】
この方法では、3.84〜36.01%の範囲の収油率及びTQが5.7〜64.5mg/g油の範囲のTQ含量が提供される。抽出の2時間目及び3時間目に収油率及びTQ含量の下降性の低下が認められたことがわかる。
【0039】
図1〜4に示したソックスレーセイヨウクロタネソウ種子油は、AOAC標準法に従う石油エーテルの使用によるソックスレー抽出から得る。ソックスレー抽出が、すべてのSFE抽出及び分画より収率が高いことがわかる。ソックスレー抽出では、TQ含量は、すべてのSFE抽出及び分画より少なくなる。セイヨウクロタネソウ種子油の分画によって、TQ含量は、ソックスレーセイヨウクロタネソウ種子油(4.3〜58.8mg TQ/g油多い)及び未分画セイヨウクロタネソウ種子油(2.4〜56.9mg TQ/g油多い)より多くなる。
【0040】
未分画及びソックスレーのセイヨウクロタネソウ種子油は、比較目的で生成している。セイヨウクロタネソウ種子油を、超臨界流体抽出を使用して、100〜300バールの圧力にて40〜60℃の温度で分画すると、得られる総収油率は未分画油と比べて3.8%〜6.1%の範囲で減少する。
【0041】
等圧条件下(それぞれ100、200、及び300バール)で分画温度が40℃から60℃に上昇すると、それに対応して、第1の収集容器では収油率が増加するが、第2の収集容器では収油率が減少する。一方、等温条件下(それぞれ40℃及び60℃)で分画温度が100バールから300バールに上昇すると、それに対応して、第1の収集容器では収油率が減少するが、第2の収集容器では収油率が増加する。
【0042】
各グラム数のセイヨウクロタネソウ種子油又は画分が、DPPHラジカル捕捉活性試験によって、40.96〜73.68mgのα−トコフェロールと同様の抗酸化活性をもたらすことがわかる。同様に、各グラム数のセイヨウクロタネソウ油又は画分が、ガルビノキシルラジカル捕捉活性試験によって、12.26〜73.44mgのα−トコフェロールと同様の抗酸化活性ももたらす。
【0043】
600バールの抽出圧及び40℃の抽出温度の後、100〜200バールの分画圧力及び40〜60℃の分画温度で生成したセイヨウクロタネソウ種子画分は、DPPH及びガルビノキシルラジカル捕捉活性試験によって、ソックスレー油及び未分画油より良好な抗酸化活性を示す(2.4〜56.9mg TQ/g油高い)。
【0044】
セイヨウクロタネソウ種子油の抽出から得られたTQRFが、SFE−未分画セイヨウクロタネソウ種子油及び従来の溶媒(石油エーテル)で抽出した油より高いTQ含量及び抗酸化活性を有することがわかる。これは、α−トコフェロール、トコトリエノール、植物ステロールなどの他の抗酸化化合物が、TQRFの抗酸化活性にも寄与し得るからである。
【0045】
上述のような方法が、他の揮発性生理活性化合物の濃縮に使用できることも評価されるに相違ない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セイヨウクロタネソウ種子粗油を300バール〜600バールの間の圧力にて31℃〜80℃の間の温度で抽出するステップを含む、セイヨウクロタネソウ種子から固定油を抽出するための超臨界流体抽出法。
【請求項2】
二酸化炭素供給量が25g/分〜30g/分の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
2時間〜3時間の間の期間実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
超臨界流体が超臨界二酸化炭素である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
汚れを除き、乾燥させ、粉砕したセイヨウクロタネソウ種子100gのサンプルサイズで実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
1時間の抽出後にTQの全量抽出(exhaustive extraction)を行う、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
セイヨウクロタネソウ種子からチモキノンリッチ画分(TQRF)を抽出するための、二酸化炭素供給量が25g/分〜30g/分の間である超臨界流体抽出法であって、
(a)300バール〜600バールの間の圧力にて31℃〜80℃の間の温度でセイヨウクロタネソウ種子粗油を抽出するステップと、
(b)ステップ(a)で得たセイヨウクロタネソウ種子粗油を100〜300バールの圧力にて31〜80℃の温度で分画するステップと
を含む超臨界流体抽出法。
【請求項8】
二酸化炭素供給量が25g/分〜30g/分の間である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
2時間〜3時間の間の期間実施される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
超臨界流体が超臨界二酸化炭素である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
汚れを除き、乾燥させ、粉砕したセイヨウクロタネソウ種子100gのサンプルサイズで実施される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
温度80℃及び圧力600バールでのTQ含量が0.08%である、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
温度40℃及び圧力600バールでのTQ含量が0.2%である、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
TQ含量が、油1グラムあたりTQ5.7〜64.5mgの範囲である、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
TQRFが抗酸化活性を示す、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
α−トコフェロール、トコトリエノール、及び植物ステロールによってTQRFの抗酸化活性が強化される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
セイヨウクロタネソウ種子から固定油及びチモキノンリッチ画分(TQRF)を同時に抽出するための、二酸化炭素供給量が25g/分〜30g/分の間である超臨界流体抽出法であって、
(a)300バール〜600バールの間の圧力にて31℃〜80℃の間の温度でセイヨウクロタネソウ種子粗油を抽出するステップと、
(b)ステップ(a)で得たセイヨウクロタネソウ種子粗油を100〜300バールの圧力にて31〜80℃の温度で分画するステップと
を含む超臨界流体抽出法。
【請求項18】
二酸化炭素供給量が25g/分〜30g/分の間である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
2時間〜3時間の間の期間実施される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
超臨界流体が超臨界二酸化炭素である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
汚れを除き、乾燥させ、粉砕したセイヨウクロタネソウ種子100gのサンプルサイズで実施される、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
分画温度40〜80℃及び分画圧力100〜300バールでのTQ含量が、TQRF中では固定油中の2〜65倍の範囲になる、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
それぞれ1グラムの固定油又はTQRFが、12〜75mgのα−トコフェロールと同等の抗酸化活性を示す、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
TQRFの抗酸化活性が固定油の7倍である、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
α−トコフェロール、トコトリエノール、及び植物ステロールによってTQRFの抗酸化活性が強化される、請求項23に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−506757(P2011−506757A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541410(P2010−541410)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【国際出願番号】PCT/MY2009/000115
【国際公開番号】WO2010/064891
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(509142209)ユニヴェルシティ プトラ マレーシア (4)
【Fターム(参考)】