説明

固定用部材

【課題】止めネジで押さえる力を極力抑えつつも挿入孔内での回転を規制できる固定用部材を提供する。
【解決手段】工作機械の刃物台に保持されるスリーブ9は、刃物台に穿たれたスリーブ挿入口に挿入される円筒状のスリーブであり、刃物台からスリーブ挿入口まで貫通する2つのネジ孔から螺入される止めネジがスリーブ9の外周面に形成された第1傾斜面を有する溝と第2傾斜面を有する溝とを押すことによって刃物台に保持される。このスリーブ9の外周面に形成された溝は、外周面に沿って溝の始部25aから終部25bに向かうに従って徐々に浅くなる第2傾斜面を有する第1溝25と、同じ第2傾斜面を有する第2溝27と、外周面に沿って溝の始部29aから終部29bに向かうに従って徐々に深くなる第1傾斜面を有する第3溝29と、同じ第1傾斜面を有する第4溝31である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、円筒状の挿入孔を有する保持手段によって保持される円筒状の固定用部材であって、特に、保持手段の所定の面から挿入孔まで貫通する複数のネジ穴から螺入される止めネジによって固定用部材を保持する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の固定用部材として、旋削や穴あけ加工を行う工作物回転方式の工作機械の刃物台に保持される切削工具用のスリーブを例に挙げて説明する。この種のスリーブは、工作機械の刃物台に保持される円筒状の軸部と、軸部に連結された円筒状の工具保持部とを有する(例えば、特許文献1参照)。軸部は、その外周面に平坦面が形成され、刃物台のスリーブ挿入孔に挿入される。この平坦面は、刃物台からスリーブ挿入孔まで貫通する複数のネジ穴から螺入される止めネジによって押される。つまり、この種の切削工具用のスリーブは、スリーブ挿入孔に挿入された軸部の平坦面を止めネジで押さえ付けることによって刃物台に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−165008号公報(第3−4頁、図1及び図8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の切削工具用のスリーブは、旋削や穴あけ加工を行う際に円筒状の軸部が円筒状のスリーブ挿入孔内で回転するのを規制するために平坦面を止めネジによって強く押さえ付けるので、平坦面の形が変形して軸部の円筒形状に歪みが生じ易い。そして、軸部の円筒形状に歪みが生じる結果、スリーブの工具保持部に保持される工具の軸心と工作機械の主軸に保持される工作物の軸心との間にズレが生じるので、工作物を切削する精度が落ちるという問題がある。
【0005】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、止めネジで押さえる力を極力抑えつつも挿入孔内での回転を規制できる固定用部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、円筒状の挿入孔を有する保持手段によって保持される円筒状の固定用部材であって、前記保持手段の所定の面から前記挿入孔まで貫通する複数のネジ穴から螺入される止めネジが前記固定用部材の外周面を押すことによって前記保持手段に保持され、前記固定用部材の外周面に沿って複数のらせん状の溝が形成され、前記らせん状の溝は前記らせん条の溝の進行方向に沿って一方から他方へ向かうに従って浅くなる溝と前記らせん条の溝の進行方向に沿って一方から他方へ向かうに従って深くなる溝とによって構成されることを特徴とする。
【0007】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、固定用部材は円筒状の挿入孔を有する保持手段によって保持される円筒状の部材であって、保持手段の所定の面から挿入孔まで貫通する複数のネジ穴から螺入される止めネジが固定用部材の外周面を押すことによって保持手段に保持される。この固定用部材の外周面に沿って複数のらせん状の溝が形成され、このらせん状の溝は、らせん条の溝の進行方向に沿って一方から他方へ向かうに従って浅くなる溝と、らせん条の溝の進行方向に沿って一方から他方へ向かうに従って深くなる溝とによって構成される。
【0008】
これにより、固定用部材を軸心周りに任意の方向(例えば時計回り方向)に回転させようとする力が働いたときは、らせん条の溝の進行方向に沿って一方から他方へ向かうに従って浅くなる溝の傾斜面が止めネジと抵触して固定用部材の一方向(例えば時計回り方向)への回転を規制する。また、固定用部材を前述の一方向とは逆方向(例えば反時計回り方向)に回転させようとする力がはたらいたときは、らせん条の溝の進行方向に沿って一方から他方へ向かうに従って深くなる溝の傾斜面が前述の止めネジとは別の止めネジと抵触して固定用部材の逆方向(例えば反時計回り方向)への回転を規制する。したがって、らせん状の溝に形成される一方から他方へ向かうに従って浅くなる溝の傾斜面及び深くなる溝の傾斜面と各止めネジとが固定用部材の正方向と逆方向の回転を規制するので、止めネジで押さえる力を極力抑えつつも挿入孔内での固定用部材の回転を規制できる。
【0009】
また、この発明において、前記各らせん状の溝は、第一の止めネジに嵌合する第一溝と前記第一の溝内に形成されるとともに前記第一の止めネジの直径よりも小さい直径を有する第二の止めネジに嵌合する第二溝とを備えていることが好ましい(請求項2記載の発明)。これにより、第一溝と第二溝とを備える各らせん状の溝は、第一の止めネジにも第一の止めネジの直径よりも小さい直径を有する第二の止めネジにも嵌合するので、第一の止めネジまたは第二の止めネジのどちらでも固定用部材の回転を規制するために使用できる。
【0010】
また、この発明において、前記各らせん状の溝の内壁は側面から底面にかけて曲面によって形成され、該各らせん状の溝の内壁に当接する前記第一の止めネジ及び前記第二の止めネジの端部の形状は、該各らせん状の溝の内壁の形状に応じて曲面によって形成されることが好ましい(請求項3記載の発明)。これにより、各らせん状の溝の内壁が側面から底面にかけて曲面によって形成されている場合に、この各らせん状の溝の内壁に当接する第一の止めネジ及び第二の止めネジの端部の形状も、この各らせん状の溝の内壁の形状に応じて曲面によって形成されるので、固定用部材の回転を好適に規制することができる。
【0011】
また、この発明において、前記各らせん状の溝の内壁は側面部及び底面部が平面によって形成され、該各らせん状の溝の内壁に当接する前記第一の止めネジ及び前記第二の止めネジの端部の形状は、該各らせん状の溝の内壁の形状に応じて平面によって形成されることが好ましい(請求項4記載の発明)。これにより、各らせん状の溝の内壁は側面部及び底面部が平面によって形成されている場合に、この各らせん状の溝の内壁に当接する第一の止めネジ及び第二の止めネジの端部の形状は、この各らせん状の溝の内壁の形状に応じて平面によって形成されるので、固定用部材の回転を好適に規制することができる。
【0012】
また、この発明において、前記固定用部材の外周面には前記固定用部材の軸心に沿って平坦面が形成され、前記平坦面を前記止めネジが押すことによって前記固定用部材が前記保持手段に保持されることが好ましい(請求項5記載の発明)。これにより、平坦面が形成されている箇所、すなわち、らせん状の溝が形成されていない箇所においても止めネジによって固定用部材を保持できる。
【0013】
また、この発明において、前記固定用部材の外周面には前記平坦面と対向する位置に別の平坦面が形成され、前記平坦面と前記別の平坦面とは前記固定用部材を回転させる工具によって把持される被把持面を構成することが好ましい(請求項6記載の発明)。これにより、固定用部材をスパナ等の工具で回転させる場合でも、被把持面をスパナ等で把持し易くなる。
【0014】
また、この発明において、一の前記らせん状の溝の端部は前記らせん状の溝の進行方向に沿って形成され、他の前記らせん状の溝は前記固定用部材の軸心方向に沿って形成され、一の前記らせん状の溝の端部の形状と他の前記らせん状の溝の端部の形状との違いによって、一の前記らせん状の溝と他の前記らせん状の溝とが前記浅くなる溝か前記深くなる溝かを教示することが好ましい(請求項7記載の発明)。これにより、浅くなる溝か深くなる溝かの違いが肉眼ではほとんど認識できない場合であっても、各らせん状の溝の端部の形状を見比べることで、認識することができる。
【0015】
また、この発明において、前記各らせん状の溝は前記複数のネジ孔の間隔に合うように形成され、一の前記ネジ孔から螺入される前記止めネジは前記浅くなる溝に嵌合し、他の前記ネジ孔から螺入される前記止めネジは前記深くなる溝に嵌合することが好ましい(請求項8記載の発明)。これにより、固定用部材を挿入孔に挿入する方向や挿入する深さにかかわらず、複数の止めネジを容易に浅くなる溝及び深くなる溝それぞれに嵌合させることができる。
【0016】
また、この発明において、前記固定用部材は、工作機械の刃物台に保持される切削工具用のスリーブであって、前記刃物台に穿たれた円筒状の挿入孔に挿入される円筒状のスリーブであり、前記刃物台から前記挿入孔まで貫通する複数のネジ穴から螺入される止めネジが前記スリーブの外周面を押すことによって刃物台に保持されることが好ましい(請求項9記載の発明)。これにより、浅くなる溝の傾斜面及び深くなる溝の傾斜面と止めネジとがスリーブの正方向と逆方向の回転を規制するので、止めネジで押さえる力を極力抑えつつも工作機械の刃物台に穿たれた挿入孔内でのスリーブの回転を規制できる。
【0017】
また、この発明において、前記スリーブの一端側には切削工具を保持する工具保持手段を連結する連結部が形成されることが好ましい(請求項10記載の発明)。これにより、工具保持手段に保持される切削工具の軸心と主軸等に保持される工作物の軸心とのズレを少なくすることができので、精度の高い切削加工を行える。
【0018】
また、この発明において、前記スリーブの外周面には4本の前記らせん状の溝が形成されており、前記スリーブの一端から軸心方向に沿って、前記浅くなる溝が2本並び次に前記深くなる溝が2本並ぶように形成されていることが好ましい(請求項11記載の発明)。これにより、各止めネジを浅くなる溝と深くなる溝とにそれぞれ嵌合させる際に、各ネジ穴を配設する間隔をらせん状の溝1本置きに設けることができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明に係る固定用部材によれば、らせん状の溝に形成される一方から他方へ向かうに従って浅くなる溝の傾斜面及びらせん状の溝に形成される一方から他方へ向かうに従って深くなる溝の傾斜面と止めネジとが固定用部材の正方向と逆方向の回転を規制するので、止めネジで押さえる力を極力抑えつつも挿入孔内での固定用部材の回転を規制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例に係る切削工具用のスリーブを刃物台に備えるNC旋盤の概略図である。
【図2】(a)は実施例に係る切削工具用のスリーブの平面図であり、(b)はその正面図であり、(c)はその低面図であり、(d)はその背面図である。
【図3】(a)は実施例に係る切削工具用のスリーブの先端部の側面図であり、(b)はその基部の側面図である。
【図4】(a)は図3(a)に示す切削工具用のスリーブのA−A断面図であり、(b)はそのB−B断面図である。
【図5】(a)は実施例に係る切削工具用のスリーブが刃物台に取り付けられている状態を示す断面図であり、(b)はらせん状の溝と止めネジが嵌り合う位置を示す模式図である。
【図6】(a)は主軸が反時計回りに回転するときの図5(b)に示す切削工具用のスリーブのV−V断面図であり、(b)はそのW−W断面図である。
【図7】(a)は主軸が時計回りに回転するときの図5(b)に示す切削工具用のスリーブのV−V断面図であり、(b)はそのW−W断面図である。
【図8】(a)は実施例に係る切削工具用のスリーブの変形例であり、(b)は別の変形例である。
【図9】(a)は実施例に係る切削工具用のスリーブの図5(b)に示すX−X断面図であり、(b)はその変形例である。
【図10】(a)は実施例に係る切削工具用のスリーブの変形例に関する図5(b)に示すX−X断面図であり、(b)はその別の変形例である。
【実施例】
【0021】
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。
図1は、本実施例に係る切削工具用のスリーブをNC旋盤の刃物台に取り付けた状態を示す概略図である。
【0022】
実施例に係る切削工具用のスリーブを刃物台に備えるNC旋盤は、図1に示すように、主軸1と刃物台3等を備える。主軸1は工作物5を保持した状態で回転し、工作物5は主軸1の軸心Lを中心に回転する。主軸1は正方向にも逆方向にも回転可能に構成される。刃物台3はコレットホルダ7およびスリーブ9を介して工具11を保持する。刃物台3は図示されない駆動機構によってX方向に駆動されるX方向テーブル13と、図示されない駆動機構によってZ方向に駆動されるZ方向テーブル15とによってNC旋盤に支持されている。なお、上述した刃物台5はこの発明の保持手段に相当し、上述したスリーブ9はこの発明の固定用部材に相当する。また、上述したコレットホルダ7はこの発明の工具保持手段に相当する。
【0023】
主軸1と刃物台3とは、主軸1の軸心Lの高さと工具11の軸心Mの高さとが一致するように合わされている。刃物台3をX方向またはZ方向に駆動させることによって、工作物5に対して工具11を近づけたり遠ざけたりするように構成されている。工具11がドリルの場合、正方向に回転する工作物5に対して工具11を接触させたときに、工作物5が穴あけ加工される。また、逆方向に回転する工作物5に対して工具11を退避させたときに、穴あけ加工された工作物5から工具11が抜き出される。
【0024】
次に、NC旋盤の刃物台5に取り付けられる本実施例に係る切削工具用のスリーブについて説明する。
【0025】
図2(a)は本実施例に係る切削工具用のスリーブの平面図であり、(b)はその正面図であり、(c)はその低面図((a)の反対面)であり、(d)はその背面図((b)の反対面)であり、図3(a)はその先端部の側面図であり、(b)はその基部の側面図である。
【0026】
図2(a)ないし(d)に示すように、スリーブ9はネジ部21と軸部23とで構成されている。ネジ部21には雄ネジが形成され、図1に示すコレットホルダ7に形成される雌ネジと螺合するように構成されている。ネジ部21の直径は、軸部23の直径および図1に示す刃物台3の図示されないスリーブ挿入孔の直径よりも大きく形成されている。以下では雄ネジが形成されている側の軸部23を先端部9aと呼び、先端部9aと反対側の軸部23を基部9bと呼ぶ。なお、上述したネジ部21はこの発明の連結部に相当する。
【0027】
軸部23の外周面に沿って4条のらせん状の溝を構成する第1溝25と第2溝27と第3溝29と第4溝31とが形成されている。図2(a)に示すように、第1溝25は、先端部9a側の第1溝始部25aから基部9b側の第1溝終部25bまで形成され、第1溝始部25aから第1溝終部25bの間でスリーブ9の外周面を1周する。
【0028】
図2(b)に示すように、第2溝27は、先端部9a側の第2溝始部27aから基部9b側の第2溝終部27bまで形成され、第2溝始部27aから第2溝終部27bの間でスリーブ9の外周面を1周する。また、軸部23の外周面には、第2溝始部27aと第2溝終部27bとを結ぶ線上に平坦面33aが形成されている。後述するように、本実施例に係る切削工具用のスリーブは、止めネジを各溝に嵌合させてスリーブ挿入孔内に保持するが、これに限らず、この平坦面33aに止めネジを押し付けて保持しても構わない。なお、上述した平坦面33aがこの発明の平坦面に相当する。
【0029】
図2(c)に示すように、第3溝29は、先端部9a側の第3溝始部29aから基部9b側の第3溝終部29bまで形成され、第3溝始部29aから第3溝終部29bの間でスリーブ9の外周面を1周する。
【0030】
図2(d)に示すように、第4溝31は、先端部9a側の第4溝始部31aから基部9b側の第4溝終部31bまで形成され、第4溝始部29aから第4溝終部29bの間でスリーブ9の外周面を1周する。また、第4溝始部29a側には平坦面33bが形成される。平坦面33bは、この平坦面33bの反対面にあたる平坦面33aとともに、スリーブ9を刃物台3に取り付けたり取り外したりする際にスパナ等の工具で締め付ける際の被把持面として働く。なお、上述した平坦面33aは本発明の別の平坦面に相当する。
【0031】
第1溝終部25b、第2溝終部27b、第3溝終部29bおよび第4溝終部31bは、図3(a)に示すように、スリーブ9の基部9bの最端部から切り通されている。第1溝終部25bおよび第2溝終部27bは、図2(a)(b)に示すように、らせん状の溝の進行方向に沿って基部9bの最端部から切り通されている。第3溝終部29bおよび第4溝終部31bは、図2(c)(d)に示すように、途中までらせん状の溝の進行方向に沿って形成されているが、基部9bの最端部の近くでスリーブ9の軸心方向に沿った直線状に形成されており、この直線状に形成されたまま基部9bの最端部から切り通されている。この第1溝終部25bおよび第2溝終部27bの形状と第3溝終部29bおよび第4溝終部31bの形状との違いによって、第1溝25および第2溝27と第3溝29および第4溝31とが浅くなる溝か深くなる溝かを教示する。
【0032】
図3(b)に示すように、スリーブ9の内側には円柱状の空間が形成されている。この円柱状の空間は、図4(a)(b)に示すように、ネジ部21側において最端部に向けて広がるように形成され、基部9b側において中心部の直径よりも広い直径を有する円柱状の空間が形成されている。
【0033】
次に、第1溝25、第2溝27、第3溝29および第4溝31の違いについて説明する。なお、図4(a)は図3(a)に示す切削工具用のスリーブのA−A断面図であり、(b)はそのB−B断面図である。
【0034】
第1溝25および第2溝27と第3溝29および第4溝31とは、スリーブ9の各溝の始部から終部に向かうに従って種類の異なる傾斜面を有する。本実施例において、スリーブ9は長手方向の長さがおよそ90ミリメートルであり、各溝が有する長手方向の傾斜面の高低差は1ミリメートルに設定している。図示の都合上、図4においては傾斜面を表現できないが、後述する通りの傾斜面を有するものとする。なお、スリーブ9の長さや各溝の傾斜面の高低差はこの値に限定されない。
【0035】
図4(a)において、第4溝31の深さは、第4溝始部31aの深さh1が最も浅くなり、第4溝終部31bに向かうに従って徐々に深くなり、第4溝終部31bの深さh2が最も深くなるように形成されている。つまり、第4溝31は、らせん状の溝の進行方向に沿って第4溝始部31aから第4溝終部31bに向かうに従って徐々に深くなる第1傾斜面41を有する。反対に、第2溝27の深さは、第2溝始部27aの深さh3が最も深くなり、第2溝終部27bに向かうに従って徐々に浅くなり、第2溝終部27bの深さh4が最も浅くなる。つまり、第2溝27は、らせん状の溝の進行方向に沿って第2溝始部27aから第2溝終部27bに向かうに従って徐々に浅くなる第2傾斜面43を有する。
【0036】
また、図4(b)において、第3溝29の深さは、第3溝始部29aの深さh5が最も浅くなり、第3溝終部29bに向かうに従って徐々に浅くなり、第3溝終部29bの深さh6が最も深くなるように形成されている。つまり、第3溝29は、らせん状の溝の進行方向に沿って第3溝始部29aから第3溝終部31bに向かうに従って徐々に深くなる第1傾斜面41を有する。反対に、第1溝25の深さは、第1溝始部25aの深さh7が最も深くなり、第1溝終部25bに向かうに従って徐々に浅くなり、第1溝終部25bの深さh8が最も浅くなる。つまり、第1溝25は、らせん状の溝の進行方向に沿って第1溝始部25aから第1溝25bに向かうに従って徐々に浅くなる第2傾斜面43を有する。
【0037】
次に、この第1傾斜面41を有する第3溝29および第4溝31と第2傾斜面43を有す第1溝25および第2溝27とが形成されたスリーブ9が刃物台3に取り付けられている状態を説明する。なお、図5(a)は、スリーブ9が刃物台3に取り付けられている状態を示す模式図であり、(b)は、このスリーブ9と止めネジ55a,55bとの関係を示す模式図である。
【0038】
図5(a)に示すように、刃物台3には、スリーブ9が挿入されるスリーブ挿入孔51が穿たれている。また、刃物台3には、刃物台3の一つの面からスリーブ挿入口51まで貫通する2つのネジ孔が53a,53bが形成されている。ネジ孔53a,53bには止めネジ55a,55bが螺入する。このネジ孔53a,53bに螺入された止めネジ55a,55bは、スリーブ9の前後動及び軸心M周りの回転を規制する。止めネジ55a,55bは、ネジ孔53a,53bの長さよりも長くなるように構成されている。
【0039】
止めネジ55a,55bの端部の形状は、この止めネジ55a,55bの端部が当接する第1溝25、第2溝27、第3溝29又は第4溝31の内壁の形状に応じて形成されてる。例えば、第1溝25、第2溝27、第3溝29又は第4溝31の内壁の形状が後述する図9(a)に示すように側面から底面にかけて曲面によって形成されている場合、これらの溝の内壁に当接する止めネジ55a,55bの端部の形状も曲面で形成される。これにより、止めネジ55a,55bの端部とこれらの溝の内壁とがぴったりと当接する。
【0040】
このとき、ネジ孔53aとネジ孔53bとの間隔は、スリーブ9の外周面に形成される各らせん状の溝の間隔に合うように形成されている。すなわち、ネジ孔53aとネジ孔53bとに螺入される止めネジ55aおよび55bがスリーブ挿入孔51に挿入されるスリーブ9の外周面に形成された溝に嵌り合うとき、止めネジ55aおよび55bはそれぞれ異なる種類の溝と嵌り合うように構成されている。とくに、本実施例に係るスリーブ9において、後述する図5(b)に示すように、止めネジ55aは、第1傾斜面41を有する第3溝29および第4溝31のいずれかに嵌り合うと、止めネジ55bは、止めネジ55aが嵌り合っている溝とは異なる傾斜面を有する溝、すなわち第2傾斜面43を有する第1溝25および第2溝27のうちいずれかに嵌り合うように構成されている。
【0041】
これを図5(b)について見ると、止めネジ55aが第3溝29に嵌り合う場合、止めネジ55bは第1溝29に嵌り合う。つまり、止めネジ55aが第1傾斜面41を有する第3溝29の位置P1で嵌り合うとき、止めネジ55bは第2傾斜面43を有する第1溝25の位置P2で嵌り合う。また、図5(a)に示す状態から止めネジ55a,55bを緩めてスリーブ9を溝1本分だけ奥(スリーブ9の基部9bの方向)に挿入すると、止めネジ55aは第1傾斜面41を有する第4溝31の位置P3で嵌り合い、止めネジ55bは第2傾斜面43を有する第2溝27の位置P4で嵌り合う。なお、図5(a)に示す方向とは反対方向からスリーブ9をスリーブ挿入孔51に挿入するときは、止めネジ55aは第2傾斜面43を有する第1溝25または第2溝27のいずれかに嵌り合い、止めネジ55bは第1傾斜面を有する第3溝29または第4溝31のいずれかに嵌り合う。
【0042】
次に、図6および図7を参照して、スリーブ9を刃物台3に取り付けた状態で切削加工する際における第1傾斜面41および第2傾斜面43の作用について説明する。なお、図6(a)は主軸1を反時計回り方向(α方向)に回転させた状態における第1傾斜面41および第2傾斜面43を図5(b)に示すV−V断面から見たV−V断面図であり、(b)はそのW−W断面から見たW−W断面図である。図7(a)は主軸1を時計回り方向(β方向)に回転させた状態における第1傾斜面41および第2傾斜面43を図5(b)に示すV−V断面から見たV−V断面図であり、(b)はそのW−W断面から見たW−W断面図である。
【0043】
工作物5を保持する主軸1を反時計回りに回転させ、ドリルなどの工具11によって穴あけ加工すると、スリーブ9には主軸1と同じ方向(α方向)に回転させようとする力が働く。このとき、図6(b)に示すように、第2傾斜面43の傾斜はα方向と同じ向きに下がっているので、傾斜面43はスリーブ9をα方向に回転させようとする力を十分に規制できない。しかし、図6(a)に示すように、第1傾斜面41の傾斜はα方向とは反対の向きに上っているので、第1傾斜面41と止めネジ55aとが干渉し、第1傾斜面41はスリーブ9のα方向の回転を十分に規制できる。
【0044】
他方、工作物回転方式において穴あけ加工を終える際に工作物5から工具11を抜くとき等に、主軸1を時計回りに回転させると、スリーブ9には主軸1と同じ方向(β方向)に回転させようとする力が働く。このとき、図7(a)に示すように、第1傾斜面41の傾斜はβ方向と同じ向きに下がっているので、傾斜面41はスリーブ9をβ方向に回転させようとする力を十分に規制できない。しかし、図7(b)に示すように、第2傾斜面の傾斜はβ方向とは反対の向きに上っているので、第2傾斜面43と止めネジ55bとが干渉し、第2傾斜面43はスリーブ9のβ方向の回転を十分に規制できる。
【0045】
実施例記載の発明によれば、工作機械の刃物台3に保持される切削工具用のスリーブ9は、刃物台3に穿たれたスリーブ挿入口51に挿入される円筒状のスリーブであり、刃物台3からスリーブ挿入口51まで貫通する2つのネジ孔53a,53bから螺入される止めネジ55a,55bがスリーブの外周面に形成された溝を押すことによって刃物台3に保持される。このスリーブ9には、らせん条の溝の進行方向に沿って第1溝始部25aから第1溝終部25bに向かうに従って徐々に浅くなる第2傾斜面43を有する第1溝25と、同じ第2傾斜面43を有する第2溝27と、らせん条の溝の進行方向に沿って第3溝始部29aから第3溝終部29bに向かうに従って徐々に深くなる第1傾斜面41を有する第3溝29と、同じ第1傾斜面41を有する第4溝31とが形成されている。よって、スリーブ9に対して反時計回り(α方向)に回転させる力が働いたとき、第1傾斜面41と止めネジ55aとが干渉するので、スリーブ9のα方向の回転は規制される。また、スリーブ9を時計回り(β方向)に回転させる力が働いたとき、第2傾斜面43と止めネジ55bとが干渉するので、スリーブ9のβ方向の回転は規制される。したがって、第1傾斜面41および第2傾斜面43はスリーブ9のα方向およびβ方向の回転を規制するので、止めネジ55a,55bで押さえる力を極力抑えつつもスリーブ挿入孔51内でのスリーブ9の回転を規制できる。
【0046】
実施例記載の発明によれば、第1溝25、第2溝27、第3溝29又は第4溝31の内壁は側面から底面にかけて曲面によって形成され、これらの溝の内壁に当接する止めネジ55a,55bの端部の形状は、これらの溝の内壁の形状に応じて曲面によって形成される。したがって、止めネジ55a,55bの端部とこれらの溝の内壁とがぴったりと当接するので、止めネジ55a,55bで押さえる力を極力抑えつつもスリーブ挿入孔51内でのスリーブ9の回転を確実に規制できる。
【0047】
実施例記載の発明によれば、第1溝25および第2溝27の端部はらせん状の溝の進行方向に沿って形成され、第3溝29および第4溝31の端部はスリーブ9の軸心方向に沿って形成され、第1溝25および第2溝27の端部の形状と第3溝29および第4溝31の端部の形状との違いによって、浅くなる溝(第2傾斜面43を有する第1溝25又は第2溝27)か、深くなる溝(第1傾斜面41を有する第3溝29又は第4溝31)かを教示する。これにより、浅くなる溝か深くなる溝かの違いが肉眼ではほとんど認識できない場合であっても、各らせん状の溝の端部の形状を見比べることで、認識することができる。
【0048】
実施例記載の発明によれば、スリーブ9の外周面に沿って形成される第1溝25、第2溝27、第3溝29および第4溝31の間隔は、ネジ孔53aとネジ孔53bの間隔に合うように形成され、ネジ孔53aから螺入される止めネジ55aが第1傾斜面41を有する第3溝29に嵌合するとき、ネジ孔53bから螺入される止めネジ55bは第2傾斜面43を有する第1溝25に嵌合する。これにより、スリーブ9をスリーブ挿入孔51に挿入する方向や挿入する深さにかかわらず、止めネジ55a,55bを容易に浅くなる溝及び深くなる溝それぞれに嵌合させることができる。
【0049】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0050】
(1)上述した実施例では、スリーブ9の軸部23の一端側にのみネジ部21が設けられる構成であったが、これに限定されず、図8(a)に示すように、軸部23の一端側にネジ部61aが設けられ、軸部23の他端側にもネジ部61bが設けられる構成にしても構わない。この場合、ネジ部61a,61bに図示しない2つのコレットホルダを介して図示しない2本の工具を取り付けることができる。これにより、スリーブ9の両側で工作物の切削加工する場合でも本発明を実施できる。なお、ネジ部61a,61bの直径は、図1に示すスリーブ挿入孔51に挿入可能にするため軸部23の直径よりも小さく構成するとよい。
【0051】
(2)上述した実施例では、スリーブ9を構成するネジ部21にコレットホルダ7を介して工具11を取り付ける構成であったが、ネジ部21を介在させずにスリーブ9の軸部23に工具を直接取り付ける構成としても構わない。例えば、図8(b)のように、軸部23の一端にバイト63を差し込んだバイトホルダ65を直接取り付ける構成であってもよい。
【0052】
(3)上述した実施例では、各溝例えば第2溝27は、図5(b)のX−X断面において、一種類の止めネジ55a又は55bにのみ対応していたが、これに限定されず、複数種類の止めネジに対応するように構成しても構わない。例えば、図9(a)に示すように、スリーブ9の外周面には止めネジ71に嵌合する第2溝27を備え、さらに図9(b)に示すように、この止めネジ71の直径よりも小さい直径を有する止めネジ72に嵌合する小径溝73がこの第2溝27の内部に形成される。この場合、工作機械や刃物台の種類によって止めネジ71及び72のような異なる直径の止めネジが使用される場合であっても、止めネジ71は第2溝27に嵌り合い、止めネジ72は小径溝73に嵌り合うので、2種類の止めネジに対して1つのスリーブ9を使用できるというメリットがある。なお、上述した止めネジ71はこの発明の第一の止めネジに相当し、止めネジ73はこの発明の第二の止めネジに相当する。また、上述した第2溝27はこの発明の第一溝に相当し、小径溝73はこの発明の第二溝に相当する。
【0053】
(4)上述した実施例では、図5(b)のX−X断面において、図9(a)に示すように、各溝例えば第2溝27の内壁は側面から底面にかけて曲面によって形成していたが、これに限定されず、図10(a)に示すように、側面部及び底面部が平面によって形成されていても構わない。また、平面によって形成される溝においても、図10(b)に示すように、止めネジ71に嵌り合う第2溝27の内部には、上述した止めネジ72にも嵌り合う小径溝73が形成されていても構わない。
【0054】
(5)上述した実施例では、スリーブ9は、X方向とZ方向の2種類にしか動かない刃物台3に取り付けられていたが、これに限定されず、さらに複数の方向に移動可能な刃物台3に取り付けられても構わない。
【0055】
(6)上述した実施例では、切削工具用のスリーブ9のコレットホルダ7に取り付ける工具11としてドリルを例示していたが、これに限定されず、旋削用のバイトでも工具回転式の切削用のエンドミルなどでも構わない。
【0056】
(7)上述した実施例では、スリーブ9を刃物台3に単独で取り付けていたが、これに限定されず、刃物台3に複数のスリーブ9が並列に取り付けられるくし刃式の刃物台であっても構わない。また、タレットと呼ばれる回転式の刃物台に工具11が取り付けられても構わない。
【0057】
(8)上述した実施例では、第1溝25および第2溝27に始部から終部に向かうに従って徐々に浅くなる第2傾斜面43を形成し、第3溝29および第4溝31に始部から終部に向かうに従って徐々に深くなる第1傾斜面41を形成していたが、これに限定されず、第1溝25および第2溝27に第1傾斜面41を形成し、第3溝29および第4溝41に第2傾斜面43を形成しても構わない。
【0058】
(9)上述した実施例では、スリーブ9の外周面には4本の溝が形成されていたが、これに限定されず、第1傾斜面41および第2傾斜面43を有する2本以上の溝が形成されていれば構わない。
【0059】
(10)上述した実施例では、NC旋盤などの工作物回転方式の刃物台3に取り付けられるスリーブ9に付いて説明してきたが、これに限定されず、工具を回転させて切削加工を行うマシニングセンタに備えられる刃物台に取り付けられるものであっても構わない。また、旋削加工、穴あけ加工及び工具を回転させて行う切削加工を複合して行ういわゆる複合機に備えられる刃物台に取り付けられるものであっても構わない。
【0060】
(11)上述した実施例では、この発明に係る部材固定用スリーブの例として切削工具用のスリーブを例に挙げて説明してきたが、これに限定されず、2つの部材を繋ぐためのスリーブであって、正方向と逆方向の回転を規制する必要があるスリーブであれば、切削工具用に限定されない。例えば、建物建築において鉄骨をX字に交差させてボルトとナットなどで固定することがあるが、このように鉄骨をX字に固定する固定具にこの発明に係る部材固定用スリーブと止めネジとを用いれば、固定具にかかる正方向と逆方向の回転を規制するので、固定具が緩みにくくなる。
【0061】
また、重量物を乗せる複数段の棚板を有する棚は、重量物の重力に耐えられる構成になっているが、フックで棚板を支える構成となっているので、下から上に働く力に対しては抗しきれない場合がある。そのため、重量物を取り出す際にこの重量物が一段上の棚板に接触して、この一段上の棚板がバランスを崩し重量物が落ちるという危険性がある。そこで、この発明に係る部材固定用スリーブを棚板を固定する固定具として使用すれば、重量物の重力に対しても不慮の接触による下から上に働く力に対しても、正方向と逆方向の回転を規制することによって支えることができる。
【0062】
さらに、この発明に係る部材固定用スリーブを利用できる範囲は、鉄骨をX字に固定する固定具や重量物を支える棚板の固定具などの比較的大きなものに限定されず、より小さいものでも構わない。例えば、パイプいすにおいて2本のフレームを開閉可能に支持する支持具は、パイプいすの使用年数に従って緩んでしまうことがよくある。そこで、この支持具としてこの発明に係る部材固定用スリーブと止めネジとを使用すれば、いすに座る人の体重によって指示具にかかる正方向と逆方向の回転を規制することができる。
【符号の説明】
【0063】
9 … スリーブ
9a … 先端部
9b … 基部
21 … ネジ部
23 … 軸部
25 … 第1溝
25a … 第1溝始部
25b … 第1溝終部
27 … 第2溝
27a … 第2溝始部
27b … 第2溝終部
29 … 第3溝
29a … 第3溝始部
29b … 第3溝終部
31 … 第4溝
31a … 第4溝始部
31b … 第4溝終部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の挿入孔を有する保持手段によって保持される円筒状の固定用部材であって、
前記保持手段の所定の面から前記挿入孔まで貫通する複数のネジ穴から螺入される止めネジが前記固定用部材の外周面を押すことによって前記保持手段に保持され、
前記固定用部材の外周面に沿って複数のらせん状の溝が形成され、
前記らせん状の溝は前記らせん条の溝の進行方向に沿って一方から他方へ向かうに従って浅くなる溝と前記らせん条の溝の進行方向に沿って一方から他方へ向かうに従って深くなる溝とによって構成される
ことを特徴とする固定用部材。
【請求項2】
請求項1記載の固定用部材において、
前記各らせん状の溝は、
第一の止めネジに嵌合する第一溝と前記第一溝内に形成されるとともに前記第一の止めネジの直径よりも小さい直径を有する第二の止めネジに嵌合する第二溝とを備えていることを特徴とする固定用部材。
【請求項3】
請求項1又は2記載の固定用部材において、
前記各らせん状の溝の内壁は側面から底面にかけて曲面によって形成され、
該各らせん状の溝の内壁に当接する前記第一の止めネジ及び前記第二の止めネジの端部の形状は、該各らせん状の溝の内壁の形状に応じて曲面によって形成される
ことを特徴とする固定用部材。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の固定用部材において、
前記各らせん状の溝の内壁は側面部及び底面部が平面によって形成され、
該各らせん状の溝の内壁に当接する前記第一の止めネジ及び前記第二の止めネジの端部の形状は、該各らせん状の溝の内壁の形状に応じて平面によって形成される
ことを特徴とする固定用部材。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の固定用部材において、
前記固定用部材の外周面には前記固定用部材の軸心に沿って平坦面が形成され、
前記平坦面を前記止めネジが押すことによって前記固定用部材が前記保持手段に保持されることを特徴とする固定用部材。
【請求項6】
請求項5に記載に記載の固定用部材において、
前記固定用部材の外周面には前記平坦面と対向する位置に別の平坦面が形成され、
前記平坦面と前記別の平坦面とは前記固定用部材を回転させる工具によって把持される被把持面を構成することを特徴とする固定用部材。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の固定用部材において、
一の前記らせん状の溝の端部は前記らせん状の溝の進行方向に沿って形成され、
他の前記らせん状の溝は前記固定用部材の軸心方向に沿って形成され、
一の前記らせん状の溝の端部の形状と他の前記らせん状の溝の端部の形状との違いによって、一の前記らせん状の溝と他の前記らせん状の溝とが前記浅くなる溝か前記深くなる溝かを教示することを特徴とする固定用部材。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の固定用部材において、
前記各らせん状の溝は前記複数のネジ孔の間隔に合うように形成され、
一の前記ネジ孔から螺入される前記止めネジは前記浅くなる溝に嵌合し、
他の前記ネジ孔から螺入される前記止めネジは前記深くなる溝に嵌合することを特徴とする固定用部材。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の固定用部材において、
前記固定用部材は、
工作機械の刃物台に保持される切削工具用のスリーブであって、
前記刃物台に穿たれた円筒状の挿入孔に挿入される円筒状のスリーブであり、
前記刃物台から前記挿入孔まで貫通する複数のネジ穴から螺入される止めネジが前記スリーブの外周面を押すことによって刃物台に保持されることを特徴とする固定用部材。
【請求項10】
請求項9記載の固定用部材において、
前記スリーブの一端側には切削工具を保持する工具保持手段を連結する連結部が形成されることを特徴とする固定用部材。
【請求項11】
前記請求項9または10記載の固定用部材において、
前記スリーブの外周面には4本の前記らせん状の溝が形成されており、
前記スリーブの一端から軸心方向に沿って前記浅くなる溝が2本並び、次に前記深くなる溝が2本並ぶように形成されていることを特徴とする固定用部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−71397(P2012−71397A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219089(P2010−219089)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(510089317)有限会社平沼工作所 (1)
【Fターム(参考)】