説明

固定用量組合せのためのタムスロシンペレット剤

本発明は、タムスロシン含有ペレット剤の集合体の形態のタムスロシン用量と、少なくとも1つのその他の薬学的に活性な物質の用量とを物理的に分離して含有する、組合せ投与形態の経口投与のためのタムスロシン含有ペレット剤の集合体であって、ペレット剤は、キャリアマトリックス中に均一に分散された塩酸タムスロシンを含み、(i)集合体中のペレット剤は、約1.4mm未満のサイズを有し、有利には、ペレット剤の少なくとも90%が0.30mmよりも大きいサイズを有し、(ii)ペレット剤の集合体中の塩酸タムスロシンの平均含有量は、乾燥ペレット剤に基づいて換算して、約0.15〜3.00重量パーセントの間である、集合体と、このペレット剤の集合体の製造方法と、その使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆されたタムスロシンペレット剤およびそれから作られる単位投与形態に関する。
【背景技術】
【0002】
タムスロシンは、式(I)の(R)−5−[2−[[2−(2−エトキシフェノキシ)エチル]−アミノ]プロピル]−2−メトキシベンゼンスルホンアミドの一般名である。
【0003】
【化1】

【0004】
タムスロシンは、心不全および良性前立腺肥大の治療に有用なαアドレナリン遮断活性を有する薬学的に活性な物質としてEP34432号およびUS4731478号に開示されている。
【0005】
塩酸タムスロシン医薬は、尿量および頻尿の問題等の良性前立腺肥大(BPHとしても知られる)の症状の治療用途で、米国でFLOMAX(登録商標)(ベーリンガーインゲルハイム)、日本でHARNAL(登録商標)(山之内)および欧州でOMNIC(登録商標)(山之内)を含むさまざまな商品名で販売されている。認可された薬品は、複数のペレット剤内に0.4mgの塩酸タムスロシンを含有する経口投与用カプセル剤投与形態を含む。カプセル剤は、ペレット剤からのタムスロシンの制御放出を与え、1日1回の投与形態であるが、必要な場合は2個のカプセル剤;すなわち0.8mgの最大1日単回投与を用いることもできる。US4,772,475号は、米国食品医薬品局の“Approved Drug Products with Therapeutic Equivalence Evaluations”(治療学的同等性評価を有する認可された薬品)(「オレンジブック」)に、FLOMAX(登録商標)に対応して列挙されている。
【0006】
US4,772,475号(EP194838号、EP533297号)は、タムスロシンと微結晶セルロースと放出制御剤とを含有する多数の顆粒単位を含む制御放出薬学的投与形態を開示している。該顆粒は、顆粒マトリックスから徐々にタムスロシンを放出する。該特許は、腸溶性被覆が必要ないことを示唆している。
【0007】
SynthonのWO2004/043449号は、活性成分としてタムスロシンを含有し、持続放出プロファイルを得ることに関して有利な被覆層を有する医薬ペレット剤組成物を開示している。0.1〜1.5mmの範囲内の直径を有し、タムスロシン塩と、不活性のペレット形成キャリアと、放出制御剤と、随意に水とを含有するペレット剤コアを、各ペレット剤は含む。各ペレット剤コアは、外側層コートにより囲われており、外側層コートは、乾燥ペレット剤コアに基づいて換算して、1〜25質量%範囲内の量の薬学上許容される耐酸性ポリマーを含む。複数のペレット剤は、初めの2時間の間に25%未満のタムスロシンを放出することを含む、100rpmでPh. Eur. バスケット方法を用いた擬似胃液中での溶解放出プロファイルを示す。好ましくは、ペレット剤コアは、(塩酸タムスロシンの観点で換算して)0.05〜5.0%のタムスロシン塩を含有する。外側層コートの質量は、好ましくは、乾燥ペレット剤コアに基づいて換算して、8〜12%の範囲内である。すべての百分率は質量%である。
【0008】
医学的治療において、タムスロシンを他の活性物質と共に投与することがしばしば有利であると考えられる。このような他の物質は、同一または異なる治療クラスであってよく、タムスロシンと相乗的に作用し得る。当然ながら、2つの活性物質を別々に投与することが可能であるが、固定比率のタムスロシンと別の薬とを単一投与形態で投与することがより有利であることがある。先行技術において多くのこのような提案が開示された。
【0009】
現在の医学上の経験に従うと、治療の必要に応じて体液中でタムスロシンの放出速度を改変させるポリマーマトリックスの中でタムスロシンが投与されることにより、胃中の放出速度が制限される場合、タムスロシンの治療効果が非常に顕著となる。したがって、SynthonのWO2004/043449号により提案されたような、被覆材料が胃内で放出を防ぎ、かつ、マトリックス材料が腸内で放出を改変する、被覆された単一体ペレット剤の形態のタムスロシンの製剤は、治療的観点から有利であり、組合せ投与形態としても維持されるべきである。しかしながら、一方で、同時投与されるべき第2の薬を単にペレット剤マトリックス内のタムスロシンに加えれば、得ることができない放出速度をそのような薬が示す必要がありうる。さらに、第2の薬がタムスロシンまたはマトリックス材料と反応して、不要な副生成物および不純物を生じる可能性がある。第三に、ペレット剤への製剤化を不可能にするような性質を第2の薬が有する可能性がある。このような場合、両方の薬は、共にかつ同時に投与されても、最終投与形態内で物理的に分離された製剤で投与されるべきである。
【0010】
一例においては、医学的治療、たとえば良性前立腺肥大の治療において、タムスロシンと同時投与される可能性のある活性物質は、テストステロン−5α−レダクターゼ、たとえばフィナステリドまたはデュタステリドであることが知られている。WO03/090753号は、タムスロシンとフィナステリドまたはデュタステリドとの組合せ医薬の可能性を示唆しているが、実際に治療上有効であり、かつ、両化合物の異なる物性の点を有するであろう実際の組合せ組成物の例を与えていない。WO2006/055659号は、デュタステリドが軟質ゲルに製剤化され、タムスロシンがビーズの形態に製剤化され、前述のビーズが多層組成物を含み、これらの層の1つにタムスロシンが組入れられる、デュタステリドとタムスロシンとの固定用量組成物(FDC)を示唆している。明らかに、その体液中の経路において確実なタムスロシンの放出速度を有する多層ビーズを作ることは、技術的にかなり困難であり、その投与形態の簡略化が望まれるであろう。
【0011】
この課題の可能な技術的解決策は、本出願の主題ではないが、タムスロシン中で同時投与されるべき薬が充填された内側カプセルと、内側カプセルを完全に被覆する外側カプセルとを含むであろう投与形態を作ること、およびタムスロシン含有被覆ペレット剤を内側カプセルと外側カプセルとの間の空間に配置することである。次に、投与後、タムスロシン組成物およびその他の医薬は、(両方のカプセル剤のシェルが順次溶解した後)カプセル剤から独立して解放されて、それらはそれぞれ独自の治療上有効な態様で体液と相互作用する。
【0012】
図1に技術的解決法を概略的に示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
タムスロシンペレット剤をこのような組合せ投与形態に製剤化可能に適合させるためには、いくつかの条件が同時に満たされなければならず、特に、
・ペレット剤の直径は、両方のカプセル剤の表面間の空間を効果的に埋めることが可能となるように調整される
・それぞれのペレット剤中のタムスロシンの充填量は、合計で治療上有効な用量のタムスロシン全部を含む、一定だが、かなり限定された量のペレット剤の集合体が得られるように調整される
・タムスロシンペレット剤マトリックスおよび/または被覆の定性的および定量的組成物は、カプセル剤溶解後にタムスロシンの望ましい放出速度を可能とするように調整される。
【0014】
上記の条件を満たすように、タムスロシンペレット剤のサイズおよび組成物を如何にして適合させるかについての好適な技術的解決策は、先行技術においては取扱われていないため、それを提供することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の簡単な説明
本発明は、タムスロシン含有ペレット剤の集合体の形態のタムスロシン用量と、少なくとも1つのその他の薬学的に活性な物質の用量とを物理的に分離して含有する、組合せ投与形態の経口投与のために適合されたタムスロシン含有ペレット剤の集合体であって、
ペレット剤は、キャリアマトリックス中に均一に分散された塩酸タムスロシンを含み、
(i) 集合体中のペレット剤は、1.4mm未満のサイズを有し、有利には、ペレット剤の少なくとも90%が0.30mmよりも大きいサイズを有し、
(ii) ペレット剤の集合体中の塩酸タムスロシンの平均含有量は、乾燥ペレット剤に基づいて換算して、0.15〜3.00重量パーセントの間である、
集合体を提供する。
【0016】
本発明はさらに、以下の工程:
a) 0.15〜3.00%の塩酸タムスロシンとマトリックス形成材料との混合物をペレット化し、その後に、形成したペレット剤コアを乾燥して耐酸性コートにより被覆する工程と、
b) 孔径1.4mmの篩によりペレット剤の集合体を篩い分けて、篩を通過する集合体を収集する工程と、
c) 随意に、工程b)で得られた集合体を孔径0.30mmの篩により篩い分けて、篩を通過しない集合体を収集する工程とを含む、
上記仕様のタムスロシン含有ペレット剤の製造方法も提供する。
【0017】
本発明は、固定用量組合せ形態で、タムスロシンと、少なくとも1つのその他の薬学的に活性な物質とを同時投与するための医薬を製造するための、上記に示されたタムスロシンペレット剤の使用も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
タムスロシン含有ペレット剤の集合体の形態のタムスロシン用量と、少なくとも1つのその他の薬学的に活性な物質の用量とを物理的に分離して含有する、組合せ投与形態の経口投与のために用いられてもよい、有効な改変放出性のタムスロシン含有ペレット剤集合体を製造することができることが発見された。1つの例においては、たとえば良性前立腺肥大の治療において、タムスロシンと同時投与されうる活性物質は、テストステロン−5α−レダクターゼ阻害剤である。特に、このような投与形態は、内側のより小さなカプセルが、タムスロシンと共に同時投与されるべき少なくとも1つの活性物質の用量を含む医薬製剤を含有し、かつ、内側と外側カプセルの間の空間が、必要なタムスロシンの用量を全体で含む本発明のタムスロシンペレット剤の集合体で満たされる、2つの同心円状に配置されるカプセル剤(「カプセルインカプセル」)により有利に代表されてもよい。このような投与形態は、詳細には、別の特許出願の主題となる。
【0019】
別の薬と共に固定用量組合せで有利に投与可能な、タムスロシン含有ペレット剤の好適な集合体は、
(i) 集合体中のペレット剤は、1.4mm未満のサイズを有し、随意に、その少なくとも90%が0.30mm超のサイズも有し、
(ii) ペレット剤の集合体中の塩酸タムスロシンの平均含有量は、乾燥したペレット剤の質量で換算して、0.15〜3.00重量パーセントの間であり、
キャリアマトリックス中に均一に分散された塩酸タムスロシンを含むペレット剤の集合体であることが、見出された。
【0020】
本発明のペレット剤は、塩酸タムスロシンと、ペレット形成キャリア、放出制御剤および随意に水を含むキャリアマトリックスとを含むペレット剤コアを含む。
【0021】
ペレット形成キャリアは、活性成分と他の賦形剤とを、一般的に製薬の実務においてペレット剤と呼ばれる、本質的に球状の粒状材料に結合させることができる不活性材料である。ペレット剤コアの好ましい組成物において、微結晶セルロース(他の用語では結晶セルロース)が、好適な不活性キャリアとして働く。また、αラクトース、デキストリン、マンニトール、またはキトサンも、単独または組合されてペレット形成キャリアとして用いられてもよい。ペレット形成キャリアの好ましい量は、乾燥ペレット剤コアに基づいて換算して、50〜95質量%である。
【0022】
放出制御剤は、ある環境条件の下でのみ、および/またはある放出速度によってのみ、組成物から活性物質を放出することが可能な賦形剤である。本発明の範囲内において、好ましい放出制御剤は、薬学上許容されるポリマーであり、最も好ましくは透水性ポリマーである。たとえば、さまざまな種類のアクリルポリマー、ポリビニルアセテートおよび/またはセルロース誘導体(たとえばエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび改変された類似体)を用いてもよい。組成物中の放出制御剤の好ましい量は、乾燥ペレット剤コアに基づいて換算して、2.5〜25質量%である。
【0023】
アクリルポリマーは、ペレット剤コア中の好ましい放出制御剤である。本発明の範囲内において、「アクリルポリマー」は、商品名カルボポール(Carbopol)で販売されるようなアクリル酸の薬学上許容されるポリマー、または商品名オイドラギット(Eudragit)で販売されるようなメタクリル酸および/もしくはアクリル酸もしくはメタクリル酸エステルの共重合体を意味する。このような化合物は、たとえば、A.H. Kibbe編集“Handbook of Pharmaceutical excipients” Pharmaceutical Press London, 3rd ed. (2000)に示されている。このようなアクリルポリマーとの混和物からの活性成分の放出は、環境pHに依存しても、しなくてもよい。
【0024】
好ましくは、アクリルポリマーは、pHに依存してタムスロシンを放出する耐酸性アクリルポリマーである。このようなポリマーは、オイドラギットL製品、特にオイドラギットL30Dを含む。オイドラギットL30 D−55は、乳化剤としてポリソルベート80およびラウリル硫酸ナトリウムも含有するアクリレートポリマーの30%(m/V)水性分散液として入手可能である。
【0025】
代替的には、タムスロシンの放出の時間依存性制御およびpH依存性制御の両方を誘発するために、2つの種類の放出制御剤を組合せてもよい。外部環境pHから独立して活性物質を放出する放出制御剤の使用により、ペレット剤コア表面が体液に接した後の用量ダンピングが防がれ、一方で、pH依存的に活性物質を放出する放出制御剤により、活性成分の主要部分の放出を胃腸管の所望の部分中に集中させることができる。pHから独立して物質を放出するポリマーの一例は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0026】
典型的には、ペレット剤コアは、好ましくは水を含む造粒液の存在下で作られる。水は、ペレット形成の方法において最も好適な溶媒および/または造粒液であるが、その後ほぼ完全に除去される。しかしながら、一旦被覆が腸液中に溶解すると、時には著しく拡散速度に影響することがあるため、好ましくはコアの乾燥した組成物中に水が存在することが重要である。したがって、ペレット剤コアは、乾燥ペレット剤コアに基づいて換算して、水が乾燥したコア中に2〜10質量%の量、好ましくは2〜5質量%で残留することを要件とすることが好ましい。
【0027】
「他の」薬学上許容される賦形剤は、存在する場合には、一般的に、ペレット化手順中に組成物の適切な特性を与えるために用いられ、とりわけ、可塑剤(たとえばクエン酸トリエチル)または粘着防止剤(たとえばタルク)を含む。
【0028】
乾燥後のペレット剤コアは、典型的には、乾燥したコアの全質量で換算して、0.2〜2.5%質量の塩酸タムスロシンと、50〜95%質量の微結晶セルロースと、1〜25%、好ましくは2.5〜10%質量のアクリルポリマーと、2〜10%、好ましくは2〜5%質量の水と、0〜25%、好ましくは0.5〜25%質量の他の薬学上許容される賦形剤とを含む。本明細書において、「乾燥したコア」とは、すぐ被覆できるように実質的に乾燥されており、かつ、その生産からの残留溶媒含有量が、15%以下、より好ましくは10%以下であるコアを意味する。
【0029】
さらに、本発明のペレット剤は、薬学上許容される耐酸性ポリマー材料、好ましくは耐酸性アクリルポリマーを含む、ペレット剤コアを囲む被覆層を含む。典型的には、前述の被覆層の質量は、乾燥ペレット剤コアに基づいて換算して、乾燥したペレット剤コアの重量の2.5〜17%の範囲内であり、最も好ましくは8〜15%(w/w)の間である。
【0030】
薬学上許容される耐酸性材料は、本質的に、胃液との接触からペレット剤コアを保護することから、これにより胃中に放出される可能性のあるタムスロシンの量が最小限に抑えられる。好ましい被覆材料は、耐酸性アクリルポリマーを含む。「耐酸性アクリルポリマー」は、遊離カルボキシル基を有する上述のアクリルポリマーの特定の種類である。このようなポリマーは、酸性の水性媒体に不溶性であり、一方、中性または塩基性の水性媒体には可溶である。好ましい耐酸性アクリルポリマーは、オイドラギットL30 D−55等のオイドラギットLシリーズを含む。このアクリルポリマーは、少量の乳化剤も含む水性懸濁液として入手可能であり、好適な被覆機器での被覆に直接用いてもよい。本発明の特定の局面において、ペレット剤コアを製造するために用いられる「アクリルポリマー」は、有利にはペレット剤被覆の「耐酸性アクリルポリマー」と同一である。
【0031】
被覆層はまた、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の他の耐酸性ポリマーもいずれか1つまたは組合せて含んでもよい。さらに、被覆組成物は、その他の薬学上許容される賦形剤を含んでもよい。たとえば、本方法中、被覆された顆粒のべたつきを防ぐために、タルク等の粘着防止剤を被覆組成物に添加してもよい。同様に、クエン酸トリエチル等の可塑剤は、最終的な被膜コートの特性を改善することができる。
【0032】
被覆層組成物中の耐酸性ポリマー、特にアクリルポリマーの量は、乾燥被覆層に基づいて換算して、好ましくは25〜95質量%の範囲内、より好ましくは30〜75%、典型的には50〜75%である。好ましくは、アクリルポリマーが外側層コート中の唯一の耐酸性ポリマーである。被覆層の残部は、上述の薬学上許容される賦形剤および/またはその他の耐酸性ポリマーである。
【0033】
本発明のペレット剤は、複数のペレット剤として測定されたとき、25%未満のタムスロシン、好ましくは15%未満のタムスロシン、最も好ましくは10%未満のタムスロシンが、100rpmのバスケット装置による擬似胃液中で初めの2時間の間放出される、溶解放出プロファイルを示すことが好ましい。したがって、本発明の被覆されたペレット剤が一旦摂取されると、タムスロシンは、胃環境中のペレット剤の滞留時間中に放出を最小限に抑えることを特徴とする速度で、体内に放出される。より有利には、ペレット剤のコアサイズおよび組成物ならびに被覆の材料および相対量は、結果として得られるペレット剤の集合体が、100rpmでPh. Eur. バスケット方法を用いた擬似腸液(ここでpH6.8のリン酸バッファと呼ぶことがある)中で、1時間で30〜65%、好ましくは40〜60%のタムスロシンの放出速度、および/または6時間で80%超のタムスロシンの放出速度のうち少なくとも1つを示すように選択される。
【0034】
より好ましくは、ペレット剤が2つの放出速度のすべてを満たす。
標準溶液として技術分野では周知であるが、明確にするために、擬似胃液(SGF)および擬似腸液(SIF)の組成を、以下に記載する。
【0035】
SGF(ペプシンを含まないUSP擬似胃液)組成:
HCl 適量 pH1.2
NaCl 0.2%
水 適量 1000ml
SIF(パンクレアチンを含まないUSP擬似腸液)組成:
KH2PO4 6.8g
NaOH 適量 pH6.8
水 適量 1000ml
本発明のペレット剤の製造に有用である有利な技術は、押出−球形化技術である。好ましい方法において、最終的なペレット剤の全質量の0.15〜3.00重量%に該当する塩酸タムスロシンの計算量を、たとえば微結晶セルロースなどのペレット形成キャリアの計算量と混合して、そのブレンドを、たとえばアクリルポリマーなどの放出制御剤の水溶液または水性分散液と高剪断ミキサー中で混合する。結果として得られるキャリアマトリックス中のタムスロシンの湿潤顆粒は、有利には約1.0mmの対応する篩アパーチャを有する対応する機器中で、押出および球形化される。次に、形成された湿潤ペレット剤コアは、残留水含有量が所定限界範囲内、有利には2〜10質量%の間、好ましくは2〜5質量%の間となるまで、好適なドライヤ中で乾燥される。
【0036】
生産されたペレット剤コア中の残留水含有量の制御は、たとえば、重量減を測定しながらペレット剤のサンプルを取り、105℃のオーブン中でアニールすることにより行なわれる。
【0037】
典型的には耐酸性アクリルポリマーを含む被覆組成物によるペレット剤コアの被覆方法は、流動層コーターまたはコーティングパン等の任意の好適な機器で行なえばよい。被覆手順の結果は、ペレット剤のサンプルを引き出し、上述のとおりに擬似胃液中のタムスロシンの放出速度を求めることにより通常通りにチェックすればよい。しかしながら、所望量の放出が達成されない場合には、残存する被覆されたペレット剤の被覆方法を所望の結果が得られるまで繰返してもよい。実際には、異なる放出速度を有する被覆されたペレット剤のさまざまなサブロットを混合して、所望の速度を示す最終ロットを得ることも可能である。1つのサブロットが所望のペレット剤のサイズ分布を生じない場合、好ましくない効果を他のサブロットにより補うことができる。
【0038】
被覆されたペレット剤が一旦生産されると、1.4mmの孔径を有する篩を通して篩い分ける。篩孔を通過する画分を収集し、通過しない画分は廃棄する。そうすると、篩い分けられたペレット剤の集合体全体は、1.4mm未満のサイズを有する。随意に、この集合体をさらに0.3mmの孔径の篩を通して篩い分けてもよく、篩を通過し、0.3mm未満のサイズを有するペレット剤である画分は廃棄する。そうすると、最終集合体中のペレット剤は1.4mm未満のサイズを有し、その少なくとも90%が0.3mm超のサイズも有する。
【0039】
ペレット剤の最終集合体は、最終投与形態を製造する際に用いられる適切な容器中に保存される。
【0040】
以上教示されるように、生産されたペレット剤は、固定用量組合せ範囲内でタムスロシンと他の治療上活性な物質とを同時投与するための投与単位に製剤化してもよい。好適な投与単位は、たとえば、タムスロシンと同時投与されるべき薬を含む組成物が充填される内側カプセルが配置される外側カプセルであり、全タムスロシン用量を含む、複数の上記に示すタムスロシン含有被覆ペレット剤が、その内側カプセルとその外側カプセルとの間の空間に満たされる。したがって、単位投与形態は、単位当り0.1〜1mgの塩酸タムスロシン、より一層好ましくは、単位当り0.1、0.2、0.4または0.8mgの塩酸タムスロシンのタムスロシン用量を含む複数のペレット剤を含有してもよい。第2の薬もまた治療上有効な用量で含有される。
【0041】
好適なサイズのカプセル剤は、硬質ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースから製造してもよい。内側カプセルのサイズは、両方のカプセル剤の表面間の空間が少なくとも幅1.5mmとなるように選択されることが好ましい。
【0042】
このような単位用量は、通常1日1回〜3回、好ましくは1日1回服用される。実際には医師が、個別の患者にとって最も好適となる実際の用量および投与計画を決定する。
【0043】
単位投与量のタムスロシンを含有する本発明の被覆されたペレット剤を有するカプセル剤は、有利には5〜100個のカプセル剤を含む好適なパッケージで直ちに使用するために届けられてもよい。このパッケージは、有利には10、14、20、28または30個のカプセル剤を含むブリスターパック、または同量のカプセル剤を含有するプラスチックもしくはガラス製容器/ボトルを含んでもよい。任意の好適な薬学上許容されるパッケージ材料をパッケージ単位の生産に用いてもよい。
【0044】
本発明に従うタムスロシンの経口投与のための被覆されたペレット剤は、たとえば、症候性の良性前立腺過形成または前立腺肥大(BPH)またはタムスロシンにより治療可能な他の疾患(以下「疾患」と言う)の機能的治療の管理に用いられてもよい。耐胃液被覆およびペレット剤コアからのタムスロシンの持続放出により、タムスロシンの血中治療濃度が、胃中での初期ダンピングなしに、十分に長時間維持されることが確実になる。
【0045】
したがって、本発明はさらに、上記に特定されるような被覆されたペレット剤に製剤化されたタムスロシンの有効量および/または予防量を、それを必要とする病人に経口投与することを含む、任意の1以上の疾患を治療および/または予防するための方法を提供する。好ましくは、発明のペレット剤は1日に1回投与され、より好ましくは食後に投与される。食物摂取後の投与は、環境中でペレット剤がよりよく分散され、かつ、胃腸管の組織の損傷が最小限に抑えられることから有利である。
【0046】
本発明はまた、任意の1以上の「疾患」を治療および/または予防するための固定用量組合せ医薬を製造するための、上記に特定される被覆されたタムスロシン含有ペレット剤の使用と、タムスロシンペレット剤組成物自体の上記製造方法の使用とを提供する。
【0047】
発明はさらに下記の実施例により例示されるが、これらに限定されるものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0048】
実施例1 塩酸タムスロシンの平均含有量が0.224%である塩酸タムスロシン腸溶性耐性(enteric-resistant)ペレット剤
【0049】
【表1】

【0050】
製造方法:
・塩酸タムスロシンをタルクおよび微結晶セルロースと高剪断ミキサー中で混合し、均質な粉末ブレンドを形成した。
・オイドラギット、クエン酸トリエチルおよび水の懸濁液を別の容器中で調製した。
・懸濁液を粉末ブレンドに添加し、その混合物を95rpmで造粒した。
・生成した顆粒物を下記の設定で押出および球形化した。
【0051】
供給機スピード: 20rpm
攪拌翼スピード: 20rpm
篩アパーチャ: 1.0mm
シャトルボックスファイル時間: 約184秒
球形化機スピード: 500rpm
球形化時間: 3分
・形成されたペレット剤を、乾燥減量(LOD)値が2〜4%の間になるまで流動層ドライヤ中で乾燥させた。
・被覆懸濁液を、クエン酸トリエチル、水、オイドラギットL30 D−55およびタルクを混合することにより調製した。
・ペレット剤を流動層コーター中に配置し、コアペレット剤の質量の50%に該当する被覆懸濁液の量が消費されるまで(被覆の10%質量に該当)、1.8mmのスプレーノズルにより60℃で被覆した。
・被覆されたペレット剤を1.4mmの網目を通して篩い分けた。
【0052】
ペレット剤被覆結果:
105℃で湿度計により測定した残留水の含有量は、2〜4%の間である。
【0053】
1180、850、500および300マイクロメートルの網目を用いて篩い分けることにより測定した粒径分布は、粒径の98%が300〜1180マイクロメートルの間である。
【0054】
擬似胃液中の溶解プロファイルは、2時間で10%未満である。
pH6.8バッファ(SIF)中の溶解プロファイルは、1時間で40〜60%、6時間で≧80%である。
【0055】
発明を説明したが、ここに記載した概念および実施形態を実際に実施する際に、以下の請求項により定義される発明の精神および範囲から逸脱することなしに、さらなる変更および変形例を容易に行なうことができるか、または発明の実践により習得されてもよいことが、当業者には容易に明らかであろう。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タムスロシン含有ペレット剤の集合体の形態のタムスロシン用量と、少なくとも1つのその他の薬学的に活性な物質の用量とを物理的に分離して含有する、組合せ投与形態の経口投与のためのタムスロシン含有ペレット剤の集合体であって、
前記ペレット剤は、キャリアマトリックス中に均一に分散された塩酸タムスロシンを含み、
(i) 集合体中の前記ペレット剤は、約1.4mm未満のサイズを有し、有利には、ペレット剤の少なくとも90%が0.30mmよりも大きいサイズを有し、
(ii) ペレット剤の集合体中の塩酸タムスロシンの平均含有量は、乾燥ペレット剤に基づいて換算して、約0.15〜3.00重量パーセントの間である、
集合体。
【請求項2】
前記ペレット剤は、キャリアコアマトリックス中に均一に分散された塩酸タムスロシンを含むコアと、耐酸性アクリルポリマーを含み、タムスロシンを含まない被覆層とを含む、請求項1に記載の集合体。
【請求項3】
キャリアマトリックスは、
好ましくは微結晶セルロースであり、および/または好ましくはペレット形成キャリアの量が、乾燥ペレット剤コアに基づいて換算して、50〜95質量%である、ペレット形成キャリアと、
好ましくは透水性アクリルポリマー、好ましくはメタクリル酸および/またはアクリルもしくはメタクリル酸エステルの共重合体を含み、好ましくは、放出制御剤の量が、乾燥ペレット剤コアに基づいて換算して2.5〜25質量%である、放出制御剤と、
好ましくは、水の含有量が、乾燥ペレット剤コアに基づいて換算して、2〜10%、好ましくは2〜5%である、水とを含む、
請求項1〜2に記載のペレット剤の集合体。
【請求項4】
前記ペレット剤コアは、乾燥ペレット剤コアに基づいて換算して、0.2〜0.5%質量の塩酸タムスロシンと、50〜95%質量の微結晶セルロースと、1〜25%質量のアクリルポリマーと、2〜10%質量の水と、0〜25%質量のその他の薬学上許容される賦形剤とを含む、請求項2または3に記載の集合体。
【請求項5】
耐酸性ポリマーは、耐酸性アクリルポリマー、好ましくはオイドラギットLポリマーを含む、請求項2〜4に記載の集合体。
【請求項6】
前記被覆層の組成は、乾燥量に基づいて換算して、25〜95質量%の前記耐酸性アクリルポリマーを含む、請求項2〜5に記載の集合体。
【請求項7】
前記被覆層の前記質量は、乾燥ペレット剤コアに基づいて換算して、乾燥したペレット剤コアの重量の2.5〜17質量%、好ましくは8〜15質量%の範囲内である、請求項2〜6に記載の集合体。
【請求項8】
複数のペレット剤として測定したときの溶解放出プロファイルは、100rpmでPh. Eur. バスケット方法を用いて、擬似胃液中に、初めの2時間の間に25%未満のタムスロシンが放出されることを特徴とする、請求項1〜7に記載の集合体。
【請求項9】
被覆された前記医薬ペレット剤は、
1時間で30〜65%、好ましくは40〜60%のタムスロシン、および/または
6時間で80%超のタムスロシンを放出することを含む、
100rpmでPh. Eur. バスケット方法を用いたpH6.8のリン酸バッファ中の溶解放出プロファイルを示す、請求項1〜8に記載の集合体。
【請求項10】
タムスロシン投与形態中に含有されるタムスロシンの全量は、塩酸タムスロシンとして換算して、0.1〜1mgの範囲内であり、好ましくは、前記タムスロシンの全量は0.1、0.2、0.4、または0.8mgである、請求項1〜9に記載の集合体。
【請求項11】
組合せ投与形態は、カプセル剤である、請求項1〜10に記載の集合体。
【請求項12】
その他の薬学的に活性な物質の用量は、カプセル剤の形態に製剤化される、請求項1〜11に記載の集合体。
【請求項13】
以下の工程:
a) 0.15〜3.00%の塩酸タムスロシンとマトリックス形成材料との混合物をペレット化し、その後に、形成したペレット剤コアを乾燥して耐酸性コートにより被覆する工程と、
b) 孔径1.4mmの篩によりペレット剤の集合体を篩い分けて、篩を通過する集合体を収集する工程と、
c) 随意に、工程b)で得られた集合体を孔径0.30mmの篩により篩い分けて、篩を通過しない集合体を収集する工程とを含む、
請求項1〜12のいずれか1項に記載のタムスロシン投与形態のためのペレット剤の集合体の製造方法。
【請求項14】
ペレット化は、好ましくは約1.0mmの篩アパーチャを通して、押出−球形化により行なわれる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記被覆工程は、流動層コーター中で行なわれる、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
ペレット剤の集合体を含むタムスロシン投与形態と、薬学的に活性な物質を含む少なくとも1つのその他の投与形態とを含む組合せ投与形態を製造するための、請求項1〜12に記載の、および/または請求項13〜15の方法により得られる、ペレット剤の集合体の使用。
【請求項17】
良性前立腺肥大の症状を治療するための経口投与可能な医薬の製造における、請求項1〜12に記載の、および/または請求項13〜15の方法により得られる、ペレット剤の使用。
【請求項18】
医薬、好ましくは良性の前立腺肥大の症状の医薬において、少なくとも1つのその他の薬学的に活性な物質との固定用量組合せ治療において使用するための、請求項1〜12に記載の、および/または請求項13〜15の方法により得られる、タムスロシン含有ペレット剤の集合体。

【公表番号】特表2012−511039(P2012−511039A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539899(P2011−539899)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【国際出願番号】PCT/EP2008/010446
【国際公開番号】WO2010/066268
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(500415715)シントン・ベスローテン・フェンノートシャップ (10)
【Fターム(参考)】