説明

固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液、切削加工方法

【課題】潤滑性および浸透性に優れ、発泡しにくい固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液およびこれを用いた切削加工方法を提供する。
【解決手段】ポリアミンのアルキレンオキサイド付加物(A)と、酸性リン酸エステル(b1)および/またはジカルボン酸(b2)と、水(C)と、を含有する固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液およびこれを用いた切削加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ワイヤに砥粒を固定させた固定砥粒ワイヤソーが開発され、シリコンインゴット等の脆性材料の切削加工に用いられるようになっている。固定砥粒ワイヤソーを用いて切削加工を行う際には、潤滑、冷却、洗浄等のために、加工液が用いられている。該加工液としては従来、鉱油、合成油、油脂などの潤滑性基油を含む加工油が主に用いられてきた。しかし、加工油には環境問題や安全性の問題があるために、最近は水含有率の高い水性の加工液が望まれている。
このような要望に対し、例えば特許文献1〜3では、グリコール類、カルボン酸、塩基性化合物および水を含有する水溶性加工液が開示されている。特許文献4では、有機アミンのアルキレンオキシド付加物、脂肪族カルボン酸、塩基性物質および水を含有する水溶性加工油剤が開示されている。特許文献5では、数平均分子量500以下のポリオキシアルキレン付加物および炭素数4〜10の1価〜2価の脂肪族カルボン酸またはその塩を含む水溶性切削液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−82334号公報
【特許文献2】特開2003−82335号公報
【特許文献3】特開2011−21096号公報
【特許文献4】特開2009−57423号公報
【特許文献5】特開2011−68884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1〜5に開示されるような加工液は、切削加工中に発泡したり、水分を多くした場合に潤滑性や浸透性が低下して切削性能が低下する問題がある。加工液の潤滑性が低いと、被加工材料の加工部位とワイヤとの間の摩擦が増大し、固定砥粒の剥離、ワイヤの摩耗等が生じやすい。また、浸透性が低いと、加工液がワイヤや加工部位に到達しにくく、潤滑性、冷却効率、洗浄性等が不充分となる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、潤滑性および浸透性に優れ、発泡しにくい固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液およびこれを用いた切削加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する本発明は、以下の態様を有する。
(1) ポリアミンのアルキレンオキサイド付加物(A)と、酸性リン酸エステル(b1)および/またはジカルボン酸(b2)と、水(C)と、を含有する固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液。
(2) 前記ポリアミンのアルキレンオキサイド付加物(A)が、下記一般式(I):
−[(RO)−H] (I)
(式中、mは2〜8の数を表し;nは0〜25の数を表し、m個のnは同一でも異なっていてもよいがm個のnが全て0であることはなく;Rは、ポリアミンからアミノ基またはイミノ基の活性水素をm個除いた残基を表し;ROは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、n×mが2以上である場合、n×m個のROは同一でも異なっていてもよい。)
で表される化合物である、(1)に記載の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液。
(3) 前記水(C)を75〜99.8質量%含有する、(1)または(2)に記載の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液。
(4) 前記酸性リン酸エステル(b1)が、下記一般式(II):
(RO)PO(OH)3−x (II)
(式中、xは1または2を表し;Rは炭素数4〜18のアルキル基またはアルケニル基を表し、xが2である場合、2個のRは同一でも異なっていてもよい。)
で表される化合物である、(1)〜(3)のいずれか一項に記載の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液。
(5) 前記ジカルボン酸(b2)の総炭素数が11〜18である、(1)〜(4)のいずれか一項に記載の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液。
(6) 脆性材料の切削加工に用いられるものである、(1)〜(5)のいずれか一項に記載の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液。
(7) 前記脆性材料がシリコンである、(6)に記載の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液。
(8) 脆性材料を固定砥粒ワイヤソーにより切削加工する方法であって、
前記切削加工を、ポリアミンのアルキレンオキサイド付加物(A)と、酸性リン酸エステル(b1)および/またはジカルボン酸(b2)と、水(C)と、を含有する固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液を用いて行うことを特徴とする切削加工方法。
(9) 脆性材料を固定砥粒ワイヤソーにより切削加工する方法であって、
前記切削加工を、ポリアミンのアルキレンオキサイド付加物(A)と、下記一般式(II):
(RO)PO(OH)3−x (II)
(式中、xは1または2を表し;Rは炭素数4〜18のアルキル基またはアルケニル基を表し、xが2である場合、2個のRは同一でも異なっていてもよい。)
で表される酸性リン酸エステル(b1’)と、水(C)と、を含有する固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液を用いて行う工程と、
前記切削加工で生じた、前記固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液と前記脆性材料の切削屑とを含む切削後加工液から、少なくとも前記切削屑を除去する工程と、
前記切削後加工液から少なくとも前記切削屑を除去して得た残液を固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液として再使用するか、または、前記残液に、前記ポリアミンのアルキレンオキサイド付加物(A)、前記酸性リン酸エステル(b1’)もしくは水(C)を添加して固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液を得て、当該固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液を脆性材料の切削加工に使用する工程とを含み、
前記切削屑を除去する工程が、
前記切削後加工液を、前記固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液を主成分とする上層と、前記切削屑の沈殿層(下層)とに分離する第1工程と、
前記第1工程で分離された前記切削後加工液から前記切削屑の沈殿層(下層)を除去する第2工程とを含む、脆性材料の切削加工方法。
(10) 前記脆性材料がシリコンである、(8)または(9)に記載の切削加工方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、潤滑性および浸透性に優れ、発泡しにくい固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液およびこれを用いた切削加工方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液(以下、単に「水溶性加工液」という。)は、固定砥粒ワイヤソーにより被加工材料を切削加工する際に用いられるものである。
「水溶性」は、本発明の水溶性加工液を水で希釈した場合に水に溶解することを意味する。
本発明の水溶性加工液は、ポリアミンのアルキレンオキサイド付加物(A)(以下、「(A)成分」という。)と、酸性リン酸エステル(b1)(以下、「(b1)成分」という。)および/またはジカルボン酸(b2)(以下、「(b2)成分」という。)と、水(C)と、を含有する。
水を含有することで安全性が向上し、環境に対する悪影響が少なくなる。
(A)成分を含有することで、水の含有量が多い場合でも、優れた浸透性が発揮され、固定砥粒ワイヤソーや被加工材料の加工部位に水溶性加工液が到達しやすい。そのため、切削加工時の冷却効率等が向上し、優れた切削性で切削加工を行うことができる。また、切削加工時に生じる切り屑の洗浄性も向上する。
(b1)成分、(b2)成分はそれぞれ潤滑性の向上に寄与する。(A)成分に加えて(b1)成分および/または(b2)成分を含有することで、水の含有量が多い場合でも、優れた潤滑性が発揮され、固定砥粒ワイヤソーの固定砥粒の剥離、ワイヤの摩耗等が抑制されるため、切削性が向上する。また、水溶性加工液が低発泡性となる。さらに、pHが低下するため、当該水溶性加工液と接触するワイヤソーや加工機器の腐食を防ぐことができる。
【0008】
(A)成分において、ポリアミンとは、1分子中にアミノ基またはイミノ基を2個以上有する化合物であり、ポリアミンのアルキレンオキサイド付加物とは、ポリアミン分子中のアミノ基またはイミノ基が有する活性水素のところにアルキレンオキサイドを、ポリアミン1分子に対して1モル以上付加した化合物である。
活性水素は、アミノ基またはイミノ基の窒素原子に結合した水素原子であり、アミノ基には2個、イミノ基には1個の活性水素が含まれる。
【0009】
ポリアミンは、炭素数が2〜12であることが好ましく、2〜6であることが特に好ましい。
ポリアミンが有するアミノ基またはイミノ基の数(アミノ基およびイミノ基を両方有する場合はそれらの合計数)は、2〜6が好ましく、2〜3が特に好ましい。
ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、メチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、メチルアミノプロピルアミン、エチルアミノプロピルアミン、N,N’−ジ−tert−ブチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、ビス(へキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどの脂肪族ポリアミン、シクロヘキサンジアミンなどの脂環式ジアミンが挙げられる。これらのなかでも、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ジエチレントリアミンが好ましく、エチレンジアミンが特に好ましい。
【0010】
ポリアミンに付加するアルキレンオキサイドとしては、炭素数2〜4のものが好ましく、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−、2,3−、1,3−および1,4−ブチレンオキサイドなどが挙げられる。これらのなかでも、エチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドが好ましい。
ポリアミンに付加するアルキレンオキサイドは1種でも2種以上でもよい。2種以上のアルキレンオキサイドを付加する場合には、その付加の形態はブロック付加、ランダム付加のいずれでもよく、付加の順序も特に問わない。
アルキレンオキサイドの付加モル数は、浸透性、潤滑性の観点から、ポリアミン1モルに対して3〜100モルが好ましく、4〜70モルであることが特に好ましい。
本発明においては、ポリアミンが有するアミノ基またはイミノ基由来の活性水素の全てに、アルキレンオキサイドが付加することが好ましい。たとえばポリアミンがエチレンジアミンである場合、エチレンジアミンの4個の活性水素にアルキレンオキサイドが付加することが好ましい。
【0011】
(A)成分としては、浸透性、潤滑性、洗浄性の向上効果に優れることから、下記一般式(I)で表される化合物が好ましい。
−[(RO)−H] (I)
式中、mは2〜8の数を表し、3〜8が好ましく、3〜6がより好ましい。
nは0〜25の数を表し、式中のm個のnは同一でも異なっていてもよい。ただしm個のnが全て0であることはない。つまりm個のnのうちの少なくとも1つは1〜25である。
は、ポリアミンからアミノ基またはイミノ基の全ての活性水素m個を除いた残基を表す。ポリアミンとしては、活性水素をm個有するものであればよく、前記で挙げたポリアミンのなかから適宜選択できる。
Oは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、オキシエチレン基またはオキシプロピレン基が好ましい。
n×mが2以上である場合、n×m個のROは同一でも異なっていてもよい。
【0012】
(A)成分は、ポリアミンにアルキレンオキサイドを付加することによって得ることができる。アルキレンオキサイドの付加は、アミン化合物にアルキレンオキサイドを付加する通常の方法により実施できる。
(A)成分としては市販品を使用することも可能で有り、例えば、エチレンジアミンのプロピレンオキサイド・エチレンオキサイドブロック付加物であるアデカプルロニック TR701、TR702などのアデカプルロニックTRシリーズ(ADEKA社製)や、エチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物であるアデカポリエーテル EDP−300、EDP−450などのアデカポリエーテルEDPシリーズ(ADEKA社製)などが挙げられる。
【0013】
水溶性加工液中の(A)成分の含有量は、水溶性加工液の総質量に対し、0.1〜20質量%が好ましく、0.15〜10質量%が特に好ましい。0.1質量%未満では浸透性が不足して加工液が切削面まで充分に到達しない懸念がある。20質量%を超えると加工液が増粘することによって冷却効率や切削性を低下させる懸念や、発泡し易くなる懸念がある。
(A)成分は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を使用してもよい。
【0014】
(b1)成分において、酸性リン酸エステルとは、リン酸(P(=O)(OH))の3つの水酸基のうちの1つまたは2つがエステル化された化合物(リン酸モノエステルまたはリン酸ジエステル)である。
(b1)成分としては、潤滑性および低発泡性の点で、炭素数4〜18のアルキル基またはアルケニル基を有する酸性リン酸エステルが好ましい。該酸性リン酸エステルは、下記一般式(II)で表すことができる。
(RO)PO(OH)3−x (II)
(式中、xは1または2を表し;Rは炭素数4〜18のアルキル基またはアルケニル基を表し、xが2である場合、2個のRは同一でも異なっていてもよい。)
【0015】
炭素数4〜18のアルキル基またはアルケニル基の具体例としては、n−ブチル基、iso−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、2一エチル−ヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数が6〜12であるn−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、2一エチル−ヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキセニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基が好ましい。
(b1)成分としては、潤滑性および低発泡性の点で、炭素数6〜12のアルキル基またはアルケニル基を有する酸性リン酸エステル(前記一般式(II)においてRが炭素数6〜12のアルキル基またはアルケニル基であるもの)が特に好ましい。
【0016】
水溶性加工液中の(b1)成分の含有量は、水溶性加工液の総質量に対し、0.01〜1質量%が好ましく、0.05〜0.5質量%が特に好ましい。0.01質量%未満では充分な切削性を発揮できない懸念がある。1質量%を超えると充分な切削性を保持することが難しくなる懸念や発泡し易くなる懸念がある。
(b1)成分は1種を単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
【0017】
(b2)成分のジカルボン酸は、2個のカルボキシ基を有する化合物であり、潤滑性および低発泡性の点で、総炭素数が11〜18であることが好ましい。該総炭素数は11〜14がより好ましい。
総炭素数が11〜18のジカルボン酸としては、例えば下記一般式(III)で表される化合物が挙げられる。
HOOC−R−COOH (III)
式中、Rは炭素数9〜16の2価の炭化水素基を表す。
の炭化水素基の炭素数は9〜12が好ましい。
の炭化水素基としては、直鎖状または分岐状のものが好ましく、アルキレン基が特に好ましい。
(b2)成分の具体例としては、ウンデカン二酸(1,9−ノナメチレンジカルボン酸)、ドデカン二酸(1,10−デカメチレンジカルボン酸)、テトラデカン二酸(1,12−ドデカメチレンジカルボン酸)、ヘキサデカン二酸(1,14−テトラデカメチレンジカルボン酸)、オクタデカン二酸(1,16−ヘキサデカメチレンジカルボン酸)などが挙げられる。これらの中でも、ドデカン二酸、テトラデカン二酸が好ましく、ドデカン二酸が特に好ましい。
水溶性加工液中の(b2)成分の含有量は、水溶性加工液の総質量に対し、0.05〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%が特に好ましい。0.05質量%未満では充分な切削性を発揮できない懸念があり、5質量%を超えても配合量に見合う性能の向上は少なくなる傾向にある。
(b2)成分は1種を単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
【0018】
本発明の水溶性加工液において、(b1)成分および(b2)成分は、いずれか一方を単独で使用してもよく、両者を組み合わせて使用してもよい。
(A)成分と(b1)成分、(A)成分と(b2)成分、または(A)成分と(b1)成分と(b2)成分は、水溶性加工液のpHが6〜9になるように配合することが、後でpH調整剤の添加によってpHを好ましいpH範囲に調整することも必要で無くなるので好ましい。
【0019】
(C)の水としては、特に制限はないが、精製水、特に脱イオン水が好ましい。
水溶性加工液中、水の含有量は、安全性、環境等を考慮すると、水溶性加工液の総質量に対し、75〜99.8質量%が好ましく、80〜99質量%が特に好ましい。
【0020】
本発明の水溶性加工液は、上記各成分の組み合わせにより、低発泡性、潤滑性および浸透性が従来には無い優れたものとなっている。
本発明の水溶性加工液は、(A)成分0.1〜20質量%と、(b1)成分0.01〜1質量%および/または(b2)成分0.05〜5質量%と、水(C)75〜99.8質量%と、を含有するものであることが好ましい。このような組成を有することで、潤滑性、浸透性が特に優れたものとなり、冷却性等が向上して、固定砥粒ワイヤソーによる切削加工を優れた切削性で実施できる。また、発泡の抑制効果も優れる。
特に、(A)成分0.1〜20質量%と、(b1)成分0.01〜1質量%と、水(C)との組み合わせにおいては発泡性が著しく低くなる。
また、(A)成分0.1〜20質量%と(b2)成分0.05〜5質量%と、水(C)との組み合わせにおいては、潤滑性、浸透性、低発泡性に加え、安定性にも優れたものとなる。
【0021】
本発明の水溶性加工液は、本発明の目的に反しない範囲で、防錆剤、消泡剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、pH調整剤、および殺菌剤・防腐剤など、従来より用いられている添加剤を配合することができる。例えば、防錆剤としては、アルキルベンゼンスルフォネート、ジノニルナフタレンスルフォネート、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステルなどが挙げられる。消泡剤としては、シリコーン油、フルオロシリコーン油およびフルオロアルキルエーテルなどが挙げられる。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤やアミン系酸化防止剤などが挙げられる。金属不活性化剤としては、イミダソリン、ピリジン誘導体、チアジアゾール、ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。pH調整剤としては、酢酸、ホウ酸、クエン酸、炭酸、アンモニア、重曹などが挙げられる。殺菌剤・防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステル類、安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、デヒドロ酢酸、p−トルエンスルホン酸およびそれらの塩類、フェノキシエタノールなどが挙げられる。
これらの添加剤の配合量は、その目的により量を決定すればよいが、通常、水溶性加工液全量に対して0.01〜5質量%程度である。
【0022】
本発明の水溶性加工液は、pHが5〜10であることが好ましく、6〜9であることが特に好ましい。pHが5未満では加工装置を錆びさせる懸念があり、pHが10を超えると被加工材料のシリコンを腐食させる懸念がある。
このpHの調製には、(A)成分と、(b1)成分および/または(b2)成分との配合比率を調整することによって可能である。また、必要に応じて、pH調整剤を添加してもよい。
なお、該pHは20℃における値である。
【0023】
本発明の水溶性加工液は、水(C)を75〜99.8質量%含有することが好ましいが、(A)成分の含有量、ならびに(b1)成分および/または(b2)成分の含有量を多くして水(C)の含有量が少ない原液を調製しておき、使用時に、各成分の含有量が好ましい含有量になるように水(C)で希釈して切削加工に用いることにも問題は無い。
【0024】
本発明の水溶性加工液は、固定砥粒ワイヤソーにより被加工材料を切削加工する際に用いられる。本発明の水溶性加工液は、潤滑性および浸透性に優れるため、固定砥粒ワイヤソーにより被加工材料を切削加工する際に優れた切削性を発揮し、高い加工精度で切削加工を行うことができる。また、低発泡性でもあるため作業効率が向上する。
固定砥粒ワイヤソーとしては、公知のものが使用できる。
切削加工は、加工液として本発明の水溶性加工液を用いる以外は、公知の方法により実施できる。
被加工材料としては、固定砥粒ワイヤソーによる切削加工が可能なものであればよく、特に限定されないが、脆性材料が好適である。すなわち、本発明の水溶性加工液は、脆性材料、特にシリコンインゴットの切削加工において優れた切削性を発揮することから、脆性材料を固定砥粒ワイヤソーにより切削加工する方法に好適に用いられる。
本発明の水溶性加工液は、シリコンインゴットをワイヤソーで切削加工する際に好適に用いられるが、シリコン以外の脆性材料である水晶、カーボン、ガラス等を切削加工する際にもそのまま用いることができる。
【0025】
さらに、本発明の水溶性加工液が、(b1)成分として、前記一般式(II)で表される酸性リン酸エステル(以下、(b1’)成分)を含有する場合、該水溶性加工液は、(A)成分と(b1’)成分を含有することで、固定砥粒ワイヤソーにより被加工材料、特に脆性材料を切削加工した際に生じる切削屑が、当該水溶性加工液中で凝集しやすくなっている。そのため切削後の加工液から、簡単な操作で分離効率よく切削屑を分離でき、再生が容易である。
かかる水溶性加工液を用いた脆性材料の切削加工方法の好適な例として、下記の脆性材料の切削加工方法(1)が挙げられる。この脆性材料の切削加工方法(1)は、本発明の水溶性加工液中の組成、成分の効果により切削後加工液中の切削屑が凝集し、水溶性加工液から分離することを利用するもので、切削後加工液の再生を簡単な操作で短時間に行うことができる。しかも、切削屑と水溶性加工液との分離効率が非常に優れているので、分離した前記切削屑を除去することによって得られる残液(上層)は、効率よく水溶性加工液として再利用できる。
【0026】
[脆性材料の切削加工方法(1)]
脆性材料を固定砥粒ワイヤソーにより切削加工する方法であって、
前記切削加工を、前記(A)成分と、前記(b1’)成分と、水(C)と、を含有する固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液(本発明の水溶性加工液)を用いて行う工程と、
前記切削加工で生じた、前記固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液と前記脆性材料の切削屑とを含む切削後加工液から、少なくとも前記切削屑を除去する工程と、
前記切削後加工液から少なくとも前記切削屑を除去して得た残液を固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液として再使用するか、または、前記残液に、前記(A)成分、前記(b1’)成分もしくは水(C)を添加して固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液を得て、当該固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液を脆性材料の切削加工に使用する工程とを含み、
前記切削屑を除去する工程が、
前記切削後加工液を、前記固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液を主成分とする上層と、前記切削屑の沈殿層(下層)とに分離する第1工程と、
前記第1工程で分離された前記切削後加工液から前記切削屑の沈殿層(下層)を除去する第2工程とを含む、脆性材料の切削加工方法。
【0027】
切削加工についての説明は上記と同様である。
切削屑を除去する工程の第1工程における分離は、例えば、切削後加工液を静置する、切削後加工液を遠心分離する等により実施できる。
脆性材料の切削屑は、切削後加工液中で凝集しやすく、例えば室温(約25℃)での静置や、短時間の遠心分離(例えば1000〜4000rpmで1〜30分間程度)といった簡単な操作でも、切削後加工液中の多くの切削屑が沈殿し、水溶性加工液を主成分とする上層と、前記切削屑の沈殿層(下層)とに分離する。
前記沈殿層(下層)はほぼ切削屑で構成されるが、水溶性加工液を構成する成分による凝集作用を利用して切削屑を沈殿させているため、沈殿層(下層)に、切削屑以外に水溶性加工液を構成する成分((A)成分、(b1’)成分、水等)の一部が含まれることがある。この場合、該沈殿層(下層)を切削後加工液から除去して得た残液は、水溶性加工液を構成する成分のいずれか1種以上の濃度が、最初(切削加工前に使用する前)の水溶性加工液中の濃度よりも低くなる。残液中の(A)成分、(b1’)成分、水の濃度がいずれも最初の水溶性加工液中の濃度の90質量%以上であれば、そのまま水溶性加工液として脆性材料の切削加工に再使用することができる。(A)成分、(b1’)成分、水のうち、残液中の濃度が最初の水溶性加工液中の濃度の90質量%未満となっている成分があれば、該成分を添加することで、脆性材料の切削加工に再使用できる。
【実施例】
【0028】
以下に、本発明について実施例でもって更に詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。
以下、「部」は、特に言及しない限り、質量部を示す。
pHは、20℃における値を測定した。
後述する実施例および比較例で使用した原料をまとめて以下に示す。
A−1:エチレンジアミンのプロピレンオキサイド42モル・エチレンオキサイド6モルブロック付加体。
A−2:エチレンジアミンのプロピレンオキサイド48モル・エチレンオキサイド16モルブロック付加体。
A−3:エチレンジアミンのプロピレンオキサイド4モル付加体。
A−4:エチレンジアミンのプロピレンオキサイド6.8モル付加体。
b1−1:リン酸2−エチルヘキシルエステル(モノエステル体:ジエステル体のモル比=1:1の混合物)。
b1−2:リン酸ラウリルエステル(モノエステル体:ジエステル体のモル比=1:1の混合物)。
b2−1:ドデカン二酸。
b3−1:ラウリン酸。
D−1:ジエチレングリコール。
D−2:プロピレングリコール。
D−3:ポリアルキレングリコール(プロピレンオキサイド7モル・エチレンオキサイド4モルブロック付加体)。
D−4:ジエチレングリコールモノメチルエーテル。
D−5:ステアリルアミンのエチレンオキサイド20モル付加体。
E−1:トリエタノールアミン。
【0029】
[実施例1]
(A−1)1部を水98.99部に溶解した中に、(b1−1)0.01部を加えて均一に溶解することにより水溶性加工液を調製した。該水溶性加工液のpHは8であった。
この水溶性加工液を用いて下記往復摩擦試験、発泡性試験、表面張力試験および切断性試験を行った。結果を表1に示す。
【0030】
1.往復摩擦試験:
表面試験機(トライボステーションType32、新東科学(株)製)を用い、該表面試験機の取扱説明書に従い、下記試験条件で500往復の動摩擦試験を行い、摩擦係数(動摩擦係数)を測定した。
該動摩擦係数が小さいほど、潤滑性が高いことを示す。固定砥粒ワイヤソー用の加工液用途において、該動摩擦係数は、好ましくは0.05〜0.20、より好ましくは0.07〜0.15である。動摩擦係数が大きすぎると潤滑性が不足し、動摩擦係数が小さすぎると切削時にワイヤの滑り等が生じ、切削性が低下するおそれがある。
(試験条件)
・球:直径6mmのSUJ2
・荷重:400g
・摺動距離:10mm
・摺動速度:500mm/分
・試験板:単結晶シリコン
・測定温度:20℃
【0031】
2.発泡性試験:
1Lのメスシリンダー(内径6.3cm)に、調製した水溶性加工液を100mL入れ、先端にNo.2ボールフィルターを付けたエアポンプを用いて水溶性加工液の底部より連続的に毎分800mLの空気を5分間吹き込み、5分後の水溶性加工液の液面からの泡の高さ(cm)を測定した(測定温度:20℃)。
該高さが低いほど、発泡性が低いことを示す。該高さは、好ましくは10cm以下、より好ましくは3cm以下である。
【0032】
3.表面張力試験:
100mLのガラスビーカーに、調製した固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液を50mL入れて、SURFACE TENSIOMETER CBVP−A3(協和界面科学社製)を用いて20℃における表面張力(mN/m)を測定した。
該表面張力が小さいほど、浸透性が高いことを示す。該表面張力は、好ましくは50mN/m以下、より好ましくは40mN/m以下である。
【0033】
4.切断性試験:
切断装置(マルチウェーハメーカー PV500D、コマツNTC株式会社製)を用い、下記の試験条件でワークの切断試験を行い、ウェーハを作製した。得られたウェーハの精度(Ra、Rz、SORI)を表面粗さ測定機(サーフコーダSE500−18D、(株)小坂研究所製)により測定した。
Ra、Rz、SORIは、それぞれの値が小さいほどウェーハ精度が高いことを示す。Raは、1μm以下であることが必要であり、0.5μm以下が好ましい。Rzは、4μm以下であることが必要であり、2μm以下が好ましい。SORIは、70μm以下であることが必要であり、40μm以下が好ましい。
(試験条件)
・ワイヤー:芯線直径120μm、ダイヤ径15−20μm
・切断装置:コマツNTC株式会社製マルチウェーハメーカー PV500D
・ワーク:単結晶シリコンインゴット(125mm×125mm×190mmの直方体)
・ワイヤー線速度:900m/min
・フィード速度:1mm/min
・ワイヤー張力:25N
【0034】
[実施例2〜17、比較例1〜10]
表1〜3に示す配合比となるように、使用する原料の種類および配合量を変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2〜17、比較例1〜10の水溶性加工液を調製した。なお、実施例5、6、7については、適量のクエン酸を用いて固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液のpHを6に調整した。
得られた水溶性加工液について、上記往復摩擦試験、発泡性試験、表面張力試験および切断性試験を行った。結果を表1〜表3に示す。
【0035】
表1〜表3の結果に示すとおり、実施例1〜17の水溶性加工液は、低発泡性で、水を大量に含んでいても適度な潤滑性と良好な浸透性を有していた。したがって、これらの水溶性加工液を用いることにより、固定砥粒ワイヤソーによる切削加工を良好な切削性で行うことができ、実際、これらの水溶性加工液を用いた切断性試験では高精度なウェーハが得られた。また、洗浄性にも優れ、切り屑の除去を良好に行うことができる。また、該水溶性加工液は、水を大量に含むことから、作業環境や安全性の点でも優れた状態で切削加工を行うことができる。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
【表3】

【0039】
[実施例18]
(A−1)5部および(b1−1)0.05部を均一に混合した中に、水94.95部を加えて均一に混合溶解することにより水溶性加工液を調製した。
この水溶性加工液を用いて下記分離・回収試験を行った。
<分離・回収試験>
水溶性加工液100gにシリコンの切削屑モデル(Silicon dioxide:S5631、sigma−aldrich社製)10gを添加して攪拌、分散させることにより試験液用切削後加工液を調製し、その後、25℃で1時間放置した。1時間放置した後の試験用切削後加工液は、上層(微濁水溶性加工液層)と下層(シリコン切り屑モデルの沈殿層)の2層に分離していた。
この2層に分離した試験用切削後加工液の上層をデカンテーションによって回収し、回収した上層の質量を測定した。残った下層は濾紙を用いて濾過し、残渣(切り屑モデル)を乾燥してその質量を測定した。
これらの測定結果から、試験用切削後加工液からの切削屑の分離効率(%)、試験用切削後加工液からの上層の回収率(%)、回収した上層中の切削屑含有率(%)をそれぞれ下記の計算式により求めた。結果を表4に示す。
【0040】
切削屑の分離効率(%)=[残渣(切り屑モデル)の乾燥質量(g)/添加した切り屑モデルの乾燥質量(10g)]×100
【0041】
上層の回収率(%)=[回収した上層の質量(g)/試験に使用した水溶性加工液の質量(100g)]×100
【0042】
回収した上層中の切削屑含有率(%)=[添加した切り屑モデルの乾燥質量(10g)−残渣(切り屑モデル)の乾燥質量(g)]/上層の質量(g)×100
【0043】
[実施例19〜29、比較例11〜15]
表4〜表5に示す配合比となるように、使用する原料の種類および配合量を変更した以外は実施例18と同様にして、実施例19〜29、比較例11〜15の水溶性加工液を調製した。
得られた水溶性加工液について、上記分離・回収試験を行い、切削屑の分離効率(%)、上層の回収率(%)、回収した上層中の切削屑含有率(%)を求めた。結果を表4〜表5に示す。
なお、比較例11〜15については、25℃で1時間放置した時点で明確な2層には分離しなかったため、沈殿層と見られる部分を下層と見なして上層の回収を行った。
【0044】
表4〜表5の結果に示すとおり、実施例18〜27の水溶性加工液は、切削屑の分離効率が高く、回収した上層中の切削屑含有率が低く、水溶性加工液の回収効率に優れていた。
一方、比較例11〜15の水溶性加工液は、分離しないために沈殿層と見られる部分が少なく、上層の回収率は高かったが、切削屑の分離効率が非常に悪く、回収した上層中に切削屑が大量に残存していた。
【0045】
【表4】

【0046】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液は、固定砥粒ワイヤソーによるシリコンインゴット等の脆性材料の切削加工において良好な切削性を示し、切り屑の洗浄性にも優れる。また、本発明の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液は、水分を大量に含むことが可能で、この場合、作業環境や安全性の点でも優れた状態での切削加工を可能になる。
また、本発明の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液が(b1’)を含有する場合、該水溶性加工液は再生が容易で、脆性材料を切削した後、切削屑を含む切削後加工液から簡単に効率良く切削屑を分離除去し、水溶性加工液を回収することができる。そのため該水溶性加工液を用いることにより、脆性材料の切削加工において生産性の向上とコスト削減が可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミンのアルキレンオキサイド付加物(A)と、酸性リン酸エステル(b1)および/またはジカルボン酸(b2)と、水(C)と、を含有する固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液。
【請求項2】
前記ポリアミンのアルキレンオキサイド付加物(A)が、下記一般式(I):
−[(RO)−H] (I)
(式中、mは2〜8の数を表し;nは0〜25の数を表し、m個のnは同一でも異なっていてもよいがm個のnが全て0であることはなく;Rは、ポリアミンからアミノ基またはイミノ基の活性水素をm個除いた残基を表し;ROは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、n×mが2以上である場合、n×m個のROは同一でも異なっていてもよい。)
で表される化合物である、請求項1に記載の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液。
【請求項3】
前記水(C)を75〜99.8質量%含有する、請求項1または2に記載の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液。
【請求項4】
前記酸性リン酸エステル(b1)が、下記一般式(II):
(RO)PO(OH)3−x (II)
(式中、xは1または2を表し;Rは炭素数4〜18のアルキル基またはアルケニル基を表し、xが2である場合、2個のRは同一でも異なっていてもよい。)
で表される化合物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液。
【請求項5】
前記ジカルボン酸(b2)の総炭素数が11〜18である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液。
【請求項6】
脆性材料の切削加工に用いられるものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液。
【請求項7】
前記脆性材料がシリコンである、請求項6に記載の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液。
【請求項8】
脆性材料を固定砥粒ワイヤソーにより切削加工する方法であって、
前記切削加工を、ポリアミンのアルキレンオキサイド付加物(A)と、酸性リン酸エステル(b1)および/またはジカルボン酸(b2)と、水(C)と、を含有する固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液を用いて行うことを特徴とする切削加工方法。
【請求項9】
脆性材料を固定砥粒ワイヤソーにより切削加工する方法であって、
前記切削加工を、ポリアミンのアルキレンオキサイド付加物(A)と、下記一般式(II):
(RO)PO(OH)3−x (II)
(式中、xは1または2を表し;Rは炭素数4〜18のアルキル基またはアルケニル基を表し、xが2である場合、2個のRは同一でも異なっていてもよい。)
で表される酸性リン酸エステル(b1’)と、水(C)と、を含有する固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液を用いて行う工程と、
前記切削加工で生じた、前記固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液と前記脆性材料の切削屑とを含む切削後加工液から、少なくとも前記切削屑を除去する工程と、
前記切削後加工液から少なくとも前記切削屑を除去して得た残液を固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液として再使用するか、または、前記残液に、前記ポリアミンのアルキレンオキサイド付加物(A)、前記酸性リン酸エステル(b1’)もしくは水(C)を添加して固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液を得て、当該固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液を脆性材料の切削加工に使用する工程とを含み、
前記切削屑を除去する工程が、
前記切削後加工液を、前記固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液を主成分とする上層と、前記切削屑の沈殿層(下層)とに分離する第1工程と、
前記第1工程で分離された前記切削後加工液から前記切削屑の沈殿層(下層)を除去する第2工程とを含む、脆性材料の切削加工方法。
【請求項10】
前記脆性材料がシリコンである、請求項8または9に記載の切削加工方法。

【公開番号】特開2013−100446(P2013−100446A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−87463(P2012−87463)
【出願日】平成24年4月6日(2012.4.6)
【出願人】(000226161)日華化学株式会社 (208)
【出願人】(000152675)コマツNTC株式会社 (218)
【Fターム(参考)】