説明

固定砥粒ワイヤソー用油剤組成物

【課題】固定砥粒ワイヤソーを用いた、ガラス、サファイア、セラミックス、シリコン、ネオジウム等の脆性材料の切断加工において、従来の市販水溶性加工油剤より粘度、保湿性が高く、優れた洗浄性を有する固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工油剤の提供。
【解決手段】重量平均分子量が10,000以上の増粘剤と水を含み、40℃の動粘度が4〜40mm/secである固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工油剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定砥粒ワイヤソーを用いた、脆性材料の切断加工に用いる水溶性加工油剤組成物に関する。詳しくは、固定砥粒ワイヤソーを用いた、サファイア、ガラス、セラミックス、シリコン、ネオジウム等の脆性材料の切断加工において、従来市販品より優れた洗浄性を有する水溶性加工油剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サファイア、ガラス、セラミックス、シリコン、ネオジウム等の脆性材料の切断加工には内周刃砥石若しくは遊離砥粒を用いたバンドソー、遊離砥粒ワイヤソー等が使用されてきた。内周刃砥石を利用した切断加工は被削材の大きさに依存するため、切断加工装置の大型化への対応が難しく、作業効率の面からも満足のいくものではなかった。また、遊離砥粒を用いた切断加工においては、スラリーが被削材および工作機械に付着するため、被削材の洗浄性や作業性の低下が問題となっている。また近年において、被削材の切屑をリサイクルする事が望まれている。しかし、遊離砥粒による切断加工では砥粒と切屑の分離が困難であるという問題がある。これらの問題を解決する目的で、金属線に砥粒を電着もしくはレジン等で固定した固定砥粒ワイヤソーが開発された(特許文献1参照)。固定砥粒ワイヤソーを用いる事で被削材の洗浄性や作業性が改善されている。しかし、洗浄性については遊離砥粒ワイヤソーと比較して向上したものの、まだ不十分であった。
【0003】
このような加工においては、(A)グリコール類(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)を含有し、また(B)カルボン酸と(C)塩基性化合物から形成される塩を含有する油剤が提案されている。さらに、硫黄系化合物を含有しても良いとする固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工油剤が提案されている(例えば、特許文献2および3参照)。しかし、これらの水溶性加工油剤をサファイア、ガラス、セラミックス、シリコン、ネオジウム等の脆性材料の切断加工油剤として用いた場合、洗浄性が不十分であり、未だユーザーの満足するものは得られていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−54850号公報
【特許文献2】特開2003−82334号公報
【特許文献3】特開2003−82335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、固定砥粒ワイヤソーを用いた、サファイア、ガラス、セラミックス、シリコン、ネオジウム等の脆性材料の切断加工において、従来の市販水溶性加工油剤より優れた洗浄性を有する固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工油剤を提供することである。
本発明の他の目的は、本発明の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工油剤組成物、この固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工油剤組成物を用いた脆性材料加工品の製造方法および該製造方法により得られる脆性材料加工品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1.(A)重量平均分子量が10,000以上の増粘剤と、(B)水とを含有し、40℃の動粘度が4〜40mm2/secである固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工油剤組成物。
2.(A)増粘剤が、(A−1)第一の増粘剤及び/又は(A−2)第二の増粘剤を含有し、
(A−1)第一の増粘剤が、重量平均分子量10,000〜30,000のエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加共重合物であり、
(A−2)第二の増粘剤が、重量平均分子量50,000〜20,000,000のポリビニルアルコール、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、イソブチレン/無水マレイン酸共重合物、キサンタンガム、グアーガム、アラビアガム、ローカストビーンガム、タラガム、カラギナン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種である、
前記1項記載の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工油剤組成物。
3.(A)増粘剤が、(A−2)第二の増粘剤0.06〜3質量部を含有する前記2項記載の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工油剤組成物。
4.(A)増粘剤が、(A−1)第一の増粘剤5〜50質量部を含有する前記2又は3項記載の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工油剤組成物。
5.更に、
(C)分子量60〜500のグリコール、
(D)炭素数6〜18のカルボン酸、
(E)下記式(1)で表されるアミン、及び
123N (1)
(式中、R1、R2、R3はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルケニル基、又は炭素数1〜18のアルカノール基である)、及び
(F)分子量700〜7,000のエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加共重合物、
からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、前記1〜4のいずれか1項記載の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工油剤組成物。
6.(A−1)5〜50質量部及び/又は(A−2)0.06〜3質量部と、(B)0.5〜2000質量部と、(C)20〜150質量部と、(D)0.04〜10質量部と、(E)0.04〜10質量部と、(F)2〜40質量部とを含む、前記1〜5のいずれか1項記載の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工油剤組成物。
7.更に、4〜5000質量部の水を含有する前記1〜6のいずれか1項記載の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工油剤組成物。
8.前記1〜7のいずれか1項記載の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工油剤組成物を用いて脆性材料を加工する工程を含む、脆性材料加工品の製造方法。
9.前記8項記載の製造方法により得られた脆性材料加工品。
10.脆性材料が、シリコンである前記9項記載の脆性材料加工品。
【発明の効果】
【0007】
本発明の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工油剤組成物は、ガラス、サファイア、セラミックス、シリコン、ネオジウム等の脆性材料の切断加工において、従来品と比較して優れた洗浄性を有する。本発明はまた、冷却性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
成分(A)は動粘度に寄与する。成分(A)としては、重量平均分子量が10,000以上であれば特に制限無く使用することができる。なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography:GPC)を用いて、水系カラム条件下(標準物質:ポリオキシエチレン)、測定することができる。水系カラムとしては、例えば、分子量が100,000以下の場合、OHpak SB−803 HQを、分子量が1,000,000以下の場合、OHpak SB−804 HQを、分子量が20,000,000以下の場合、OHpak SB−806 HQ(いずれも昭和電工(株)製)を使用することができる。
成分(A)としては、(A−1)第一の増粘剤及び/又は(A−2)第二の増粘剤を使用することができる。
(A−1)第一の増粘剤は、重量平均分子量10,000〜30,000のEO/PO付加共重合物であり、重量平均分子量が12,000〜25,000のEO/PO付加共重合物がより好ましい。重量平均分子量が12,000〜20,000のEO/PO付加共重合物がさらに好ましい。
(A−2)第二の増粘剤としては、重量平均分子量50,000〜20,000,000のポリビニルアルコール、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、イソブチレン/無水マレイン酸共重合物等の高分子;キサンタンガム、グアーガム、アラビアガム、ローカストビーンガム、タラガム、カラギナン等の多糖類;メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の水溶性セルロース誘導体等が挙げられる。このうち、イソブチレン/無水マレイン酸共重合物、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロースが好ましい。
第一の増粘剤および第二の増粘剤は2種以上を任意の割合で併用して使用しても良い。
本発明の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工油剤組成物における成分(A)の含有量について、第一の増粘剤は好ましくは5〜50質量部である。5質量部未満では増粘作用が不十分であり、50質量部超では冷却性が低下する。第二の増粘剤は好ましくは0.06〜3質量部、より好ましくは0.2〜2質量部である。0.06質量部未満では増粘作用が不十分であり、3質量部超では冷却性が低下する。
【0009】
成分(B)水
成分(B)の含有量は、動粘度及び冷却性に寄与する。成分(B)としては、超純水、蒸留水、イオン交換水、水道水、市水、工業用水等のいずれを用いても良い。
本発明の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工油剤組成物における水の含有量は、好ましくは0.5〜2000質量部、より好ましくは1〜1000質量部である。
本発明において、(A)増粘剤と(B)水の含有量は、動粘度及び冷却性に寄与する。
【0010】
動粘度
本発明の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工油剤組成物の40℃における動粘度は4〜40mm2/secである。4mm2/sec未満では洗浄性が低下する場合がある。40mm2/sec超では冷却性が低下する場合がある。
【0011】
本発明の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工油剤組成物は、更に(C)〜(F)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。これにより、一般的に切断性能および消泡性能が向上するのでより好適である。
【0012】
成分(C)グリコール
成分(C)は、潤滑性に寄与する。成分(C)グリコールの分子量は60〜500であり、好ましくは60〜200である。具体例としては、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングルコール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。
これらは2種以上を任意の割合で併用して使用しても良い。このうち、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールが好ましい。ジエチレングリコール、プロピレングリコールが特に好ましい。
本発明の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工油剤組成物における成分(C)グリコールの含有量は、好ましくは20〜150質量部、より好ましくは40〜60質量部である。20質量部未満では潤滑性が不足するため切断性能に劣り、さらに成分(F)EO/PO付加共重合物の溶解性が低下し、油剤の製造が困難になることがある。150質量部を超えると原材料費の面から経済性が低下する。
【0013】
(D)カルボン酸
成分(D)は、潤滑性及び消泡性に寄与する。(D)カルボン酸を構成する炭素鎖は飽和でも不飽和でもよいが、飽和が好ましい。前記炭素鎖は直鎖でも分岐鎖でもよいが、直鎖が好ましい。炭素鎖を構成する炭素数は、6〜18、好ましくは6〜14である。カルボン酸は、モノカルボン酸でもジカルボン酸でもよい。ジカルボン酸が好ましい。炭素数6〜14の飽和直鎖ジカルボン酸が特に好ましい。
成分(D)の具体例としては、カプロン酸、クエン酸、プロパントリカルボン酸、プロパン-1-エン-1,2,3-トリカルボン酸、アジピン酸、パントイン酸、エナント酸、ピメリン酸、ブタントリカルボン酸、カプリル酸、オクチル酸、スベリン酸、ペンタントリカルボン酸、ペラルゴン酸、イソノナン酸、アゼライン酸、ヘキサントリカルボン酸、カプリン酸、ネオデカン酸、セバシン酸、ヘプタントリカルボン酸、ウンデカン酸、ウンデカン二酸、オクタントリカルボン酸、ラウリン酸、ドデカン二酸、ノナントリカルボン酸、トリデカン酸、ブラシル酸、デカントリカルボン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、テトラデカン二酸、ウンデカントリカルボン酸、モノメチルデカントリカルボン酸、ペンタデカン酸、ペンタデカン二酸、ドデカントリカルボン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ヘキサデカン二酸、トリデカントリカルボン酸、マルガリン酸、ヘプタデカン二酸、テトラデカントリカルボン酸、ペンタデカントリカルボン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、オクタデカン二酸等があげられる。
このうち、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸がより好ましい。セバシン酸、ドデカン二酸が特に好ましい。
本発明の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工油剤組成物における成分(D)カルボン酸の含有量は好ましくは0.04〜10質量部、より好ましくは0.04〜5質量部、さらに好ましくは0.2〜2質量部である。0.04質量部未満では潤滑性が不足するため切断性能に劣ることがある。10質量部を超えると原材料費の面から経済性が低下する。
【0014】
成分(E) 下記式(1)で表されるアミン
123N (1)
式中、R1、R2、R3はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルケニル基、又は炭素数1〜18のアルカノール基である。
式(1)のアミンとしては、具体的には、R1、R2、R3が、水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基であるアルキルアミン;R1、R2、R3が、水素原子又は炭素数1〜18のアルケニル基であるアルケニルアミン;R1、R2、R3が、水素原子又は炭素数1〜18のアルカノール基であるアルカノールアミン;R1、R2、R3が、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルカノール基であるアミン等があげられる。
成分(E)は、成分(D)の溶解性、消泡性に寄与する。
前記アルキルアミンとしては、炭素数1〜18、好ましくは1〜9のアミンを使用できる。アミンは、一級でも二級でも三級でもよい。例えばメトキシプロピルアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、2−エチルヘキシルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン等があげられる。このうち、1,3−(アミノメチル)シクロヘキサン、2−エチルヘキシルアミンが好ましい。
前記アルケニルアミンとしては、オレイルアミン等があげられる。
前記アルカノールアミンとしては、炭素数1〜18、好ましくは1〜9のアルカノールアミンを使用できる。モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジエチルイソプロパノールアミン、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、2−アミノ−2−メチルプロパノール、モノメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、シクロヘキシルジエタノールアミン、モノブチルエタノールアミン、モノブチルジエタノールアミン等があげられる。このうち、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミンが好ましい。トリエタノールアミンが最も好ましい。
成分(E)としては、R1、R2及びR3が、水素原子又は炭素数1〜18のアルカノール基であるアルカノールアミンが好ましい。
本発明の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工油剤組成物における成分(E)の含有量は、好ましくは0.04〜10質量部、より好ましくは0.2〜8質量部である。0.04質量部未満では成分(D)カルボン酸の溶解性に劣る場合がある。10質量部を超えると組成物のpHが高くなり、泡立ち易くなる場合がある。
【0015】
成分(F)EO/PO付加共重合物
成分(F)EO/PO付加共重合物は、潤滑性に寄与する。
成分(F)EO/PO付加共重合物の重量平均分子量は、700〜7,000であり、好ましくは1,000〜5,000である。重量平均分子量が500未満では潤滑性が不足するため切断性能に劣る場合があり、7,000を超えると溶解性が劣る場合がある。
EO、POの付加形態はランダムでもブロック等でもよい。
本発明の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工油剤組成物における成分(F)の含有量は、好ましくは2〜40質量部、より好ましくは3〜35質量部である。2質量部未満では潤滑性が不足するため切断性能が劣る場合がある。40質量部を超えると泡立ち易くなる場合がある。
【0016】
希釈水
本発明の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工油剤組成物は、水で希釈せずにそのまま使用することもできるし、4〜5000質量部の希釈水を加えて使用することもできる。希釈水は、超純水、蒸留水、イオン交換水、水道水、市水、工業用水等のいずれを用いても良い。
【0017】
本発明の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工油剤組成物は、要求性能に応じて、酸化防止剤、防腐剤、消泡剤、防錆剤などの添加剤を使用することができる。この添加剤の使用量は、通常0.01〜5質量部程度である。
【実施例】
【0018】
表1、表2および表3に示す(A)〜(F)を混合し、固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工油剤組成物を調製した。必要により、これに希釈水(質量部)を配合した。
固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工油剤組成物の動粘度測定は、JIS K 2283に基づいて、ウベローデ動粘度計を用いて40℃における動粘度を測定した。
得られた実施例および比較例の組成物の洗浄性試験および冷却性試験の試験方法・判定基準を以下に示す。
【0019】
〔洗浄性試験〕
試験条件
攪拌装置:ホモジナイザー
試験温度:25℃
試験試料:100mL
切屑添加量:シリコン切屑 10g
洗浄水量:300mL
試験片:シリコンウェーハ(φ3inch×厚さ0.8mm)
試験方法
試験試料とシリコン切屑をホモジナイザーに移し、回転数10,000rpmで2分間撹拌した。撹拌終了後、シリコンウェーハの下50mmまで試験試料に15秒間含浸させ、1時間垂直状態で静置した。静置後、ジョウロを用いてシャワリング洗浄し、乾燥させて、シリコンウェーハ表面の汚れ状態を評価する。
判定基準
洗浄後のシリコンウェーハ表面の汚れ状態
◎:汚れがない
○:汚れが微量残る
□:汚れが1割以下残る
△:汚れが1超〜5割未満残る
×:汚れが5割以上残る
◎、○および□を合格、△および×を不合格とした。
【0020】
〔冷却性試験〕
試験条件
試験装置:ivfSmartQuench
試験時間:20秒間
試験温度:200℃
試験試料:1000mL
試験方法
熱電対入りプロープを電気炉で200℃まで加熱する。試験試料1000mLをビーカーに入れ、加熱したプローブを試験試料内に入れる。20秒間静置し、最大冷却効率を測定する。
判定基準
最大冷却効率
○:31超 −℃/sec
□:31以下〜27以上 −℃/sec
△:27未満〜23以上 −℃/sec
×:23未満 −℃/sec
○および□を合格、△および×を不合格とした。
結果を表1、表2および表3に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
【表3】

【0024】
比較例1は増粘剤を含まず、動粘度が本発明で規定する範囲未満であり、洗浄性に劣る。比較例2及び3は動粘度が本発明で規定する範囲を超え、冷却性に劣る。比較例4および5は、動粘度が本発明で規定する範囲未満であり、洗浄性が満足いくものではない。比較例6は、本願所定の増粘剤を用いずに増粘させたため、冷却性に劣る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重量平均分子量が10,000以上の増粘剤と、(B)水とを含有し、40℃の動粘度が4〜40mm2/secである固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工油剤組成物。
【請求項2】
(A)増粘剤が、(A−1)第一の増粘剤及び/又は(A−2)第二の増粘剤を含有し、
(A−1)第一の増粘剤が、重量平均分子量10,000〜30,000のエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加共重合物であり、
(A−2)第二の増粘剤が、重量平均分子量50,000〜20,000,000のポリビニルアルコール、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、イソブチレン/無水マレイン酸共重合物、キサンタンガム、グアーガム、アラビアガム、ローカストビーンガム、タラガム、カラギナン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種である、
請求項1記載の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工油剤組成物。
【請求項3】
(A)増粘剤が、(A−2)第二の増粘剤0.06〜3質量部を含有する請求項2記載の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工油剤組成物。
【請求項4】
(A)増粘剤が、(A−1)第一の増粘剤5〜50質量部を含有する請求項2又は3記載の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工油剤組成物。
【請求項5】
更に、
(C)分子量60〜500のグリコール、
(D)炭素数6〜18のカルボン酸、
(E)下記式(1)で表されるアミン、及び
123N (1)
(式中、R1、R2、R3はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルケニル基、又は炭素数1〜18のアルカノール基である)、
(F)分子量700〜7,000のエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加共重合物、
からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工油剤組成物。
【請求項6】
(A−1)5〜50質量部及び/又は(A−2)0.06〜3質量部と、(B)0.5〜2000質量部と、(C)20〜150質量部と、(D)0.04〜10質量部と、(E)0.04〜10質量部と、(F)2〜40質量部とを含む、請求項1〜5のいずれか1項記載の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工油剤組成物。
【請求項7】
更に、4〜5000質量部の水を含有する請求項1〜6のいずれか1項記載の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工油剤組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載の固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工油剤組成物を用いて脆性材料を加工する工程を含む、脆性材料加工品の製造方法。
【請求項9】
請求項8記載の製造方法により得られた脆性材料加工品。
【請求項10】
脆性材料が、シリコンである請求項9記載の脆性材料加工品。

【公開番号】特開2012−126812(P2012−126812A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278935(P2010−278935)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000162423)協同油脂株式会社 (165)
【出願人】(000004293)株式会社ノリタケカンパニーリミテド (449)
【Fターム(参考)】