説明

固形分を含有する流体の流量制御装置及び流量制御方法

【課題】固形分を含有する流体の流量が設定値からズレないように流量計の測定値をオンラインで校正すること。
【解決手段】固形分を含有する流体を貯蔵するタンク1と、タンク1へ流体を送るポンプ8と、流体の貯蔵レベルがタンク1の上限/下限レベルに到達した際にポンプ8を停止/稼働するタンクレベル制御手段6と、タンク1から流体配管3を通って流出する流体の流量を測定する流量計4と、流量計4の測定値を校正する校正手段6と、流量計4の測定値に基づいて流体配管3を流れる流体の流量を調節する流量調節手段5とから構成される流量制御装置15において、前記校正手段6は、タンク1内の流体の貯蔵レベルが上限レベルから下限レベルまで低下するまでの期間内に、流体の貯蔵量の変化量を求め、当該貯蔵量の変化量に基づき前記期間の少なくとも一部の時間内の流体の平均流量を計算し、当該平均流量の計算値により流量計4の測定値を校正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C重油や精製前の粗タール等の固形分を含有する流体の流量制御装置及び方法に関するものである。特には、コークス事前処理用石炭を流動床乾燥分級機で乾燥した際に生じる微粉炭に、タールスラッジ等の粉状の固形分を含有する流体を定量的に添加して混練する際に使用する流量制御装置及び方法を含むものである。
【背景技術】
【0002】
C重油や精製前の粗タール等のダスト等の固形分を含有する流体を配管で流し、その流量を定量的に調節しようとすると、流量計や流量調節弁を含む配管内に固形物が堆積し、実際に流れている流量が設定値からズレてしまったり、流量調節弁に固形物が詰まったりする問題が発生する。以下、その一例として、鉄鋼製造プロセスにおいてコークスを製造する際のコークス事前処理用石炭を流動床乾燥分級機で乾燥した際に生じる微粉炭に、バインダーとしてタールスラッジを添加して混練する方法を取り上げて説明する。
【0003】
コークス事前処理用の石炭を乾燥すると、コークス化する際の乾留熱量を低減できるだけでなく、石炭の装入密度が増加してコークス品質や生産量を増加させることができる。しかし、石炭の乾燥度を高めていくと、石炭をコークス炉に搬送する際や装入する際に、発塵やキャリーオーバーが激しくなるという問題が発生する。これは乾燥により擬似粒子が崩壊し、微粉が増加するためである。
【0004】
そこで、石炭乾燥時に問題となる発塵性微粉を、流動床乾燥分級機等を用いて分級し分離して、分離した発塵性微粉にバインダーを定量的に添加して混練して擬似粒子化させたり、更に混練した物(以下、混練物と記す)をロール塊成機で横溝状や波板状の板状に塊成化して、分級後に残った粗粒石炭と混合してコークス炉に装入することで、発塵やキャリーオーバーを抑制できる石炭事前処理方法を本発明者等は見出している(特願2007−284557号)。
【0005】
コークス事前処理用の石炭を流動床乾燥機等で分級する場合、石炭水分や石炭粒度等で、分離する微粉の量が変動する。微粉の処理量が増減すると、微粉とバインダーの混練状態が変化し、石炭搬送ラインへの付着、発塵やキャリーオーバー等の問題が発生していた。そこで、微粉の処理量が増減しても石炭搬送ラインへの付着や、発塵やキャリーオーバーを抑制できる粉体塊成方法および粉体混練方法を本発明者等は見出している(特願2007−278008号、特願2008−137207号)。また、微粉の処理量が増減しても微粉に対するバインダー添加率は一定とすることが望ましい。バインダー添加率が増加しすぎると混練した石炭が搬送ラインで付着して操業トラブルとなるし、逆に添加率が低下しすぎると発塵やキャリーオーバーを抑制できないからである。
【0006】
また、前述の石炭事前処理方法においては、微粉を混練および塊成化するためのバインダーとして、タールスラッジを利用することが好ましい。タールスラッジとは、室炉式コークス炉から発生するガス等を精製するラインにおいて、コークス炉から発生した精製前の粗タールから静置分離および遠心分離によりタールを分離した後に残る固形分とタールの混合物である。当該タールスラッジは液体であるタールの他に、粒子径0.3mm以下の粉状であるキャリーオーバーダストを含有するため、タールのように外販はされないが、コークス炉に装入するとコークスやコークス炉ガス等の有用な物に変換することができるのに加え、石炭微粉と混合し易い性質を有するため、バインダーとして利用される。
【0007】
しかし、当該タールスラッジ等の固形分を含有する流体を使用する場合、流量を安定的に制御することが難しい。なぜなら、流量計や流量調節弁を含む配管内に固形物が堆積し、実際に流れる流量が設定値からズレてしまう問題が発生するからである。
【0008】
固形分を含有する流体を使用しても実際に流れる流量が設定値からズレないようにするためには、流量計を校正する手法が有効である。例えば、特許文献1に開示されている手法は、流体の流れを切り換える流路切換装置や、秤量タンク及び秤量計等を備えた液体用流量計校正装置を使用し、流体の流れを切り換えて実際の流量を測定することで、流量計を校正する手法である。しかし、流量計を校正する際は、流体の流れを切り換えなければならないため、生産を止めなければならないという課題を有していた。
【0009】
従って、固形分含有流体の流量を定量的に調節しようとする際、生産を止めることなく、オンラインで流量計の測定値を校正することができる流量制御装置または方法が必要であった。
【0010】
【特許文献1】特開2006−105957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は前述の従来技術の問題点を解決できる固形分を含有する流体の流量制御装置および流量制御方法を提供することを目的とする。すなわち、本発明は、C重油や粗タール等の固形分を含有する流体の流量を定量的に調節しようとする際、生産を止めることなくオンラインで流量計を校正しつつ、任意の設定量に流体の流量を制御することができる固形分を含有する流体の流量制御装置および流量制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、コークス事前処理用の石炭を流動床乾燥機で分級し分離して、分離した微粉にタールスラッジを添加して混練する際、タールスラッジの流量を定量的に調節するための手段を鋭意検討し、タールスラッジ貯蔵用タンクの貯蔵量の変化量から実際に流れているタールスラッジの平均流量を計算でき、当該計算値を基に流量計の測定値をオンラインで校正できることを見出して、本発明を為すに至った。
【0013】
本発明の手段は以下のとおりである。
(1)固形分を含有する流体を貯蔵し、前記流体の貯蔵レベルが上限又は下限レベルに到達したことを検出するための上下限レベル計を備えたタンクと、前記タンクへ前記流体を送るポンプと、前記流体の貯蔵レベルが前記タンクの前記上限レベルに到達した際に前記ポンプを停止し、前記流体の貯蔵レベルが前記タンクの前記下限レベルに到達した際に前記ポンプを稼動するタンクレベル制御手段と、前記タンクから流体配管を通って流出する前記流体の流量を測定するための流量計と、前記流量計の測定値を校正するための流量測定値校正手段と、前記流量計の測定値に基づいて、前記流体配管を流れる前記流体の流量を設定値となるように調節するための流量調節手段と、から構成され、前記流量測定値校正手段は、前記タンク内の前記流体の貯蔵レベルが前記上限レベルから前記下限レベルまで低下するまでの期間において、前記タンク内の前記流体の貯蔵量の変化量を求め、当該貯蔵量の変化量に基づき前記期間の少なくとも一部の時間内の前記流体の平均流量を計算し、当該平均流量の計算値を使用して前記流量計の測定値を校正することを特徴とする、固形分を含有する流体の流量制御装置。
【0014】
(2)前記流量測定値校正手段は、前記期間において、所定の時間間隔で前記タンク内の前記流体の貯蔵量の変化量を求め、当該貯蔵量の変化量と前記所定の時間間隔とから、前記所定の時間間隔ごとの前記流体の平均流量を計算し、当該平均流量の計算値を使用して前記流量計の測定値をオンラインで校正することを特徴とする、(1)に記載の固形分を含有する流体の流量制御装置。
【0015】
(3)前記流量測定値校正手段は、前記期間において、所定の時間間隔で前記タンク内の前記流体の貯蔵量の変化量を求め、当該貯蔵量の変化量と前記所定の時間間隔とから、前記所定の時間間隔の整数倍の時間間隔ごとの前記流体の平均流量を計算し、当該平均流量の計算値を使用して前記流量計の測定値をオンラインで校正することを特徴とする、(1)に記載の固形分を含有する流体の流量制御装置。
【0016】
(4)前記流量測定値校正手段は、前記期間全体における前記タンク内の前記流体の貯蔵量の変化量を求め、当該貯蔵量の変化量から、前記期間全体における前記流体の平均流量を計算し、当該平均流量の計算値を使用して前記流量計の測定値をオンラインで校正することを特徴とする、(1)に記載の固形分を含有する流体の流量制御装置。
【0017】
(5)前記流量計が質量流量計である場合、前記流量測定値校正手段は、前記流体の貯蔵量の変化量として、前記タンクに貯蔵された前記流体の質量変化量を求めることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の固形分を含有する流体の流量制御装置。
【0018】
(6)前記タンクは、前記タンク内の前記流体の貯蔵レベルを計測するレベル計を備え、前記流量測定値校正手段は、前記レベル計の計測結果に基づいて、前記タンク内の前記流体の貯蔵レベルの高さ位置変化量を求め、当該高さ位置変化量に前記タンクの断面積及び前記流体の比重を乗じることによって、前記流体の貯蔵量の変化量として前記流体の質量変化量を求めることを特徴とする、(5)に記載の固形分を含有する流体の流量制御装置。
【0019】
(7)前記タンクは、前記流体を貯蔵した前記タンクの質量を計測する質量計を更に備え、前記流量測定値校正手段は、前記質量計の計測結果に基づいて、前記流体の貯蔵量の変化量として前記流体の質量変化量を求めることを特徴とする、(5)に記載の固形分を含有する流体の流量制御装置。
【0020】
(8)前記流量計が体積流量計である場合、前記流量測定値校正手段は、前記流体の貯蔵量の変化量として、前記タンクに貯蔵された前記流体の体積変化量を求めることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の固形分を含有する流体の流量制御装置。
【0021】
(9)前記タンクは、前記タンク内の前記流体の貯蔵レベルを計測するレベル計を備え、前記流量測定値校正手段は、前記レベル計の計測結果に基づいて、前記タンク内の前記流体の貯蔵レベルの高さ位置変化量を求め、当該高さ位置変化量に前記タンクの断面積を乗じることによって、前記流体の貯蔵量の変化量として前記流体の体積変化量を求めることを特徴とする、(8)に記載の固形分を含有する流体の流量制御装置。
【0022】
(10)前記タンクは、前記流体を貯蔵した前記タンクの質量を計測する質量計を更に備え、前記流量測定値校正手段は、前記質量計の計測結果に基づいて、前記タンクに貯蔵された前記流体の質量変化量を求め、当該質量変化量を前記流体の比重で除することによって、前記流体の貯蔵量の変化量として前記流体の体積変化量を求めることを特徴とする、(8)に記載の固形分を含有する流体の流量制御装置。
【0023】
(11)前記流量測定値校正手段は、下記(1)式で前記平均流量の計算値Q1を計算し、当該Q1と前記流量計の測定値Q2の流量比Rを下記(2)式で算出し、下記(3)式で所定の更新係数aを用いて前記流量計の補正係数Kを算出し、下記(4)式で前記流量計の測定値Q2を校正して校正値Q3を算出することを特徴とする(1)〜(10)のいずれか1項に記載の固形分を含有する流体の流量制御装置。
Q1=流体の貯蔵量の変化量/所定の時間間隔・・・(1)式
R(i)=Q1(i)/Q2(i)・・・(2)式
K(i)=R(i)*a+K(i−1)*(1−a)・・・(3)式
Q3(i)=Q2(i)*K(i)・・・(4)式
ここで(2)〜(4)式中のiは、更新する際の時間を意味し、K(i−1)は前回の補正係数を意味する。更新係数aは、0超から1未満の所定値である。
【0024】
(12)(1)〜(11)のいずれか1項に記載の固形分を含有する流体の流量制御装置を使用し、前記固形分を含有する流体として、コークス炉から発生するタールスラッジを含む流体の流量を制御することを特徴とする固形分を含有する流体の流量制御方法。
【0025】
なお、「流体の貯蔵レベル」とは、タンクに貯蔵された流体の液面の高さ位置である。「流体の貯蔵量」とは、タンクに貯蔵された流体の質量又は体積であり、「流体の貯蔵量の変化量」とは、タンクに貯蔵された流体の質量又は体積の変化量である。また、「オンラインで」とは、「上記流量制御装置を含む生産設備を使用して、生産活動をしながら」の意味であり、換言すると、「操業して、上記流量制御装置の流量計を使用しながら」を意味する。
【発明の効果】
【0026】
例えば、C重油、粗タール、タールスラッジ等の固形分を含有する流体を定量的に供給しようとする際、本発明の固形分を含有する流体の流量制御装置および流量制御方法を用いることにより、生産を止めることなくオンラインで流量計の測定値を校正しつつ、流体の流量を定量的に調節することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0028】
図1は、コークス事前処理用の石炭を流動床乾燥機等で分級し分離して、分離した微粉に、固形分を含有する流体としてタールスラッジを添加して混練する際における、本発明の第一の実施形態に係る流体の流量制御装置15および流量制御方法を用いたフローの例を示した図である。
【0029】
なお、図1において、流体タンク1は本発明のタンクの一例であり、レベル計2は本発明のレベル計及び上下限レベル計の一例であり、流体補給ポンプ8は本発明のポンプの一例であり、流体配管3は本発明の流体配管の一例であり、流量計4は本発明の流量計の一例であり、流量調節弁5又は流量調整ポンプ(図示せず。)は本発明の流量調節手段の一例であり、制御装置6は、本発明のタンクレベル制御手段及び流量測定値校正手段の一例である。
【0030】
流動床乾燥分級機や振動篩等にて微粉と粗粒に分級した後、分級された微粉の粉体は、粉体ホッパ9に供給され、粉体供給装置10で所定量の粉体を混練装置11に供給する。粉体供給装置10はロータリ・バルブが安価で一般的であるが、スクリュー・コンベアやテーブル・フィーダ等の他の供給装置を使用しても構わない。混練装置11は、回分式のものでも連続式のものでも構わないが、連続的に粉体を処理する場合には、連続式の方が望ましい。連続式の混練装置にも、ピンミキサやパドルミキサ等の様々な形式があるが、それぞれの用途や粉体性状を勘案し、混練試験等を行い、適宜選定すれば良い。
【0031】
粉体を擬似粒子化するためのバインダーとしての役割を担う固形分を含有する流体であるタールスラッジ等の流体は、バインダータンクとしての流体タンク1に供給され、流体配管3を介して、流体添加ノズル7を用いて混練装置11に供給される。流体添加ノズル7は単管でも良いが、粉体に流体をより均一に分散させるために、噴霧することが望ましい。その噴霧方法は流体を加圧して直接ノズルで噴霧しても、2流体ノズルで気体と合わせて噴霧しても構わず、流体の噴霧性等により適宜選定すれば良い。
【0032】
混練物の粒度や嵩密度等の品質には、バインダーとしての流体の添加割合が最も影響するため、粉体の供給量が増減しても、粉体の単位質量当たりの流体の添加量、つまり添加割合は一定とすることが望ましい。従って、流体の添加割合を設定し、粉体供給装置10からの粉体供給量の信号を制御装置6で受けて流体の添加量を演算し、流量調節弁5に信号を送り、流量計4で実際に流体配管3を流れている流量を測定し、流量調節弁5の開度を調節することで粉体の供給量に応じた流体の添加量を調整する。
【0033】
流量計4は、例えば、コリオリ流量計のような質量流量計、又は、電磁流量計のような体積流量計等の様々な形式があるが、それぞれの用途や流体性状を勘案し、適宜選定すれば良い。流量調節弁5にもグローブ弁やダイヤフラム弁等の様々な形式があるが、それぞれの用途や流体性状を勘案し、適宜選定すれば良い。
【0034】
また、図1のフローは流体タンク1から流量調節弁5までのヘッド圧を利用して流体配管3に流体を流し、流量調節弁5の開度により流量を調節する例であるが、かかる例以外にも、例えば、流量調節ポンプを利用して流体配管3を流れる流体の流量を調節しても構わない。その際は流量調節弁を省略し、流量が設定値になるように流量計4の測定値に応じて流量調節ポンプの回転数を調節すれば良い。但し、流量調節弁5を利用した方が一般的には安価である。
【0035】
また、制御装置6は、レベル計2の計測結果に基づいて流体タンク1内の流体の貯蔵量を管理する。例えば、制御装置6は、流体タンク1内に貯蔵された流体の貯蔵レベル(即ち、貯蔵された流体の液面の高さ位置)が下限設定値(下限レベル)以下になれば流体補給ポンプ8で流体タンク1に流体を補給し、貯蔵レベルが上限設定値(上限レベル)以上になれば流体補給ポンプ8からの補給を停止し、流体タンク1内の流体の貯蔵量を設定範囲内に確保する。レベル計2の種類はマイクロ波レベル計やフロー式レベル計等があるが、流体性状や設備費等を勘案し、適宜選定すれば良い。また、流体補給ポンプ8を運転または停止する手法は、レベル計2により計測された流体貯蔵レベルを表す信号を制御装置6で処理することで、流体補給ポンプ8を制御すれば良い。
【0036】
一方、C重油やタールスラッジ等の固形分を含有する流体を使用すると、流体配管3、流量計4、流量調節弁5の底面に固形物が堆積し、特に流量計4への固形物の堆積により、流量計4の測定値が真の値からズレてしまい、バインダー添加率が安定せず、混練物の粒度や嵩密度等の性状が安定しないという問題が発生していた。従って、C重油やタールスラッジ等の固形分を含有する流体を使用しても、流体の流量を設定値となるように調節できるよう、本発明者等は鋭意検討し、以下の手法を見出した。
【0037】
すなわち、流体補給ポンプ8停止時は、混練装置11への流体添加量は流体タンク1内の流体の減少量と等しくなることから、流体タンク1内の流体の貯蔵量の経時変化から流体の平均流量を計算し、流量計4の測定値を校正する手法である。
【0038】
流体補給ポンプ8を運転または停止する動作は、レベル計2により計測された流体貯蔵レベルの上限レベル信号または下限レベル信号が制御装置6へ送られ、その後、制御装置6から流体補給ポンプ8へ制御信号が送られて制御される。そして、流体補給ポンプ8の運転開始または停止の判断は、流体補給ポンプ8から運転又は停止の信号を制御装置6に返すことで、制御装置6にて判断することができる。
【0039】
当該流体タンク1内の流体の貯蔵量の変化量を求める手法は主に、流体タンク1内にレベル計2を設置し流体の貯蔵レベルの高さ位置を計測して、流体の比重を勘案して、流体の貯蔵量(体積)から間接的に流体の貯蔵量(質量)を計算する手法と、流体タンク1にロードセル等の質量計を設置して流体の貯蔵量(質量)を直接計測する手段の2つの手法がある。後者の手法の方が貯蔵量の推定精度を高くできるが、設備費が高くなる。特に流体の比重の変動が大きければ後者の手法が望ましいが、一般的には前者の手法で構わない。なお、流体タンク1にロードセル等の質量計を設置して貯蔵量(質量)を直接計測する場合は、流体タンク1に備わるレベル計は、流体の貯蔵レベルが上限レベル及び下限レベルに達したことを検出する機能(即ち、上下限レベル計としての機能)だけを有すればよく、上限レベルと下限レベルの間の途中の貯蔵レベルを計測する機能(レベル計としての機能)を持たなくても構わない。
【0040】
ここでは、流体の貯蔵量の変化量として、流体タンク1に貯蔵された流体の質量の変化量を用いる例について説明したが、流体タンク1に貯蔵された流体の体積の変化量を用いることもできる。流体の貯蔵量の変化量として、流体の質量変化量又は体積変化量のいずれを用いるかは、流量計4の形式に依存する。これは、流量計4として、コリオリ流量計のような「質量流量計」を用いる場合と、電磁流量計のような「体積流量計」を用いる場合とで、校正すべき流量の単位が異なるからである。
【0041】
例えば、流量計4が質量流量計である場合、流体の貯蔵量の変化量は質量変化量として求める。質量変化量の求め方としては、A)流体タンク1にロードセル等の質量計を設けて、貯蔵された流体の質量変化量を直接的に計測する方法の他に、B)流体タンク1内の流体の貯蔵レベル変化(高さ位置変化)に流体タンク1の断面積を乗じることで、流体の体積変化量を算出し、この体積変化量に流体の比重を乗じることで、流体の質量変化量を間接的に算出する方法も使用可能である。
【0042】
一方、流量計4が体積流量計である場合、流体の貯蔵量の変化量は体積変化量として求める。体積変化量の求め方としては、C)流体タンク1内の流体の貯蔵レベル変化(高さ位置変化)に流体タンク1の断面積を乗じることで、流体の体積変化量を算出する方法の他に、D)流体タンク1にロードセル等の質量計を設けて、貯蔵された流体の質量変化量を計測し、この質量変化量を流体の比重で除することで、流体の体積変化量を算出する方法も使用可能である。なお、上記B)及びD)いずれの場合も、流体の比重は予め測定してあるものとする。
【0043】
なお、流体の貯蔵レベルが上限レベルと下限レベルに到達したことを検出するための上下限レベル計と、上限レベルと下限レベルの途中の貯蔵レベルを検出するためのレベル計とは異なる。即ち、流体の貯蔵量の変化量を求める際、該貯蔵量が「質量」であるときに、ロードセル等の質量計で流体の質量変化量を直接計測する場合(上記A)の方法)や、該貯蔵量が「体積」であるときに該質量計で流体の質量変化量を計測して、間接的に体積変化量を計算する場合(上記D)の方法)には、途中のレベル計は不要である。一方、該貯蔵量が「体積」のときに、途中の貯蔵レベルを計測するレベル計で貯蔵レベル変化を計測し、これに断面積を乗じて体積変化量を算出する場合(上記C)の方法)や、該貯蔵量が「質量」のときに、該レベル計で貯蔵レベル変化を計測し、これに断面積及び流体の比重を乗じて質量変化量を間接的に算出する場合(上記B)の方法)には、レベル計は必要である。なお、途中の貯蔵レベルを計測するレベル計は、上下限レベル計を兼ねていても構わない。
【0044】
ところで、流体補給ポンプ8は流量を調節する機能を有していないため流体の粘度や密度等で供給量が変動することに加え、流体補給時は流体タンク1の液面が揺動し正確に流体の貯蔵レベルの高さ位置や質量を計測できないため、流体補給ポンプ8運転時は流体の貯蔵量の経時変化から流体の平均流量を計算することは困難である。そこで、本実施形態では、流体補給ポンプ8が停止しており流体タンク1に流体が補給されていない期間であって、流体タンク1内の流体が流体配管3から流出するため、流体の貯蔵レベルが上限レベルから下限レベルまで低下する期間(以下、「レベル低下期間T」という。)内の一部又は全部の時間において、流体の貯蔵量の変化量を計測する。これにより、流体の貯蔵量の変化量を正確に計測できる。そして、当該計測した流体の貯蔵量の変化量に基づき、当該時間における流体の平均流量を求めて、流量計4による流体配管3の流量の測定値を校正する。
【0045】
ここで、貯蔵量の変動量から求めた平均流量を用いて、流量計4の測定値を校正する方法を、図2を参照して説明する。流量計4の測定値を校正する方法としては、例えば、以下の1)〜3)の3つの方法がある。
【0046】
1)レベル低下期間T全体で校正する方法
レベル低下期間T全体における流体の貯蔵量の変動量を求め、当該変動量に基づきレベル低下期間T全体の流体の平均流量を求めることで、該平均流量を用いてレベル低下期間T全体の測定値を校正する。例えば、図2に示すように、流体の貯蔵レベルが上限レベルから下限レベルまで低下するのに要する時間(レベル低下期間T)が、20分である場合、この20分における流体の貯蔵量の変動量から平均流量を算出して、レベル低下期間T全体における流量計4の測定値を校正する。
【0047】
2)レベル低下期間T内の所定の時間間隔t1ごとに校正する方法
レベル低下期間T内において、所定の時間間隔t1ごとに貯蔵量の変動量を求めて、該所定の時間間隔t1ごとの平均流量を求めることで、該所定の時間間隔t1ごとに該平均流量を用いて測定値を校正する。例えば、図2に示すように、所定の時間間隔t1が1分間であれば、1分ごとに貯蔵量の変動量及び平均流量を算出し、1分ごとに流量計4の測定値を校正する。
【0048】
3)レベル低下期間T内の所定の時間間隔t1の整数倍の時間間隔t2ごとに校正する方法
レベル低下期間T内において、所定の時間間隔t1ごとに貯蔵量の変動量を求めて、該所定の時間間隔t1を整数倍した時間間隔t2ごとの平均流量を求めることで、該時間間隔t2ごとに該平均流量を用いて測定値を校正する。例えば、図2に示すように、所定の時間間隔t1が1分間であり、整数倍が3倍であれば、1分ごとに貯蔵量の変動量を求め、3分ごと(t1の3倍ごと)ごとに平均流量を算出して、3分ごとに流量計4の測定値を校正する。
【0049】
以下に、上記2)の校正方法を中心に、更に具体的に説明する。流体タンク1内の流体の貯蔵レベルが上限レベルから下限レベルまで低下するまでのレベル低下期間T内において、所定の時間間隔t1で前記流体の貯蔵量の変化量を求め、当該貯蔵量の変化量と前記所定の時間間隔t1とから、前記所定の時間間隔t1内での前記流体の平均流量Q1を下記(1)式で計算する。所定の時間間隔t1は、上限レベルから下限レベルまで貯蔵レベルが低下するまでのレベル低下期間Tの時間を考慮して適宜設定すれば良い。例えば、レベル低下期間Tの時間が10分ということであれば、それ以下の時間で所定の時間間隔t1を設定すればよく、例えば、30秒間隔で一定の時間間隔とすることができる。
Q1=流体の貯蔵量の変化量/所定の時間間隔t1・・・(1)式
【0050】
(1)式中の流体の貯蔵量の変化量は、所定の時間間隔t1における、流体タンク1内の流体の貯蔵レベルの高さ位置の変化量(即ち、貯蔵された流体の液面の高さ位置の変化量)に、流体タンク1の断面積及び流体の比重を乗じることで算出できるし(上記B)の方法)、ロードセル等の質量計で流体タンク1の質量変化量を計測することでも算出できる(上記B)の方法)。
【0051】
前者の手法B)の場合、流体タンク1内の流体の貯蔵レベルの高さ位置は変動するため、高さ位置の測定誤差を少なくするために、レベル計2は2つ以上設置して複数のレベル計測値を平均化することが望ましい。2つ以上設置できない場合は、レベル計2の計測値を移動平均化すれば良い。当該移動平均化とは、設定時間範囲でレベル計2のその時々の計測値を時間平均化することを意味する。移動平均化する設定時間範囲は操業条件等を勘案し適宜設定すれば良いが、前記所定の時間間隔t1より短く設定した方が好ましい。
【0052】
流体比重はオフラインで定期的に測定して見直せば良いが、オンラインで連続的に測定した方が望ましい。また、所定の時間間隔t1を、流体タンク1内の流体の貯蔵レベルが上限レベルから下限レベルまで低下するまでのレベル低下期間T全体として、その期間T全体での流体の貯蔵量の変化量から、平均流量Q1を計算することも可能である(上記1)の校正方法)。また、所定の時間間隔t1ごとに貯蔵量の変動量を求め、当該所定の時間間隔t1を整数倍した時間間隔t2ごとに、当該時間間隔に含まれる貯蔵量の変動量を平均化して、平均流量Q1を求めることも可能である(上記3)の校正方法)。
【0053】
次に、流量計4の測定値を更新する手法を説明する。流量計4の測定値Q2が変動する場合は、当該測定値を移動平均化すれば良い。当該移動平均化する設定時間は前記平均流量Q1を計算した際の所定の時間間隔t1と同じにすれば良い。流体タンク1の貯蔵量の変化量から算出した平均流量Q1と流量計4の測定値の平均値Q2の比を流量比Rとし、下記(2)式で流量比Rを算出する。
R(i)=Q1(i)/Q2(i)・・・(2)式
【0054】
次に、更新係数aを設定し、流量計の補正係数Kを下記(3)式で算出する。
K(i)=R(i)*a+K(i−1)*(1−a)・・・(3)式
【0055】
当該更新係数aは流量の測定誤差等による補正係数Kの急激な変化を防止するために設定した係数であり、流体流量の変動を調査しながら、当該流量の変動や、応答性(図3参照)などを考慮して、0超から1以下の範囲で適宜設定すれば良い(0<a≦1)。流体タンク1の貯蔵量の変化量から算出したQ1が異常値を示すことがなければ、更新係数aは1でも良いが、前記所定の時間間隔が短く且つレベル計2による流体貯蔵量の高さ変化より貯蔵量の変化量を求めた場合には、Q1が一時的に異常値を示すことがあるため、更新係数aを0超から1未満の範囲で設定することが好ましい。aが1の場合は、感度が非常に高いため、異常値に対しても応答して過剰に校正してしまうためである。
【0056】
尚、流体補給ポンプ8運転時は、前述の理由からQ1を算出できない。従って、流体補給ポンプ8運転時は流量比Rを算出できないため、K(i)=K(i−1)とし、流体補給ポンプ8運転開始直前の補正係数Kを使用する。流体補給ポンプ8は運転・停止を繰り返すが、その運転信号を、流量測定値校正手段である制御装置6で受けて、前述の手法で補正係数Kの算出を繰り返す。
【0057】
そして、流量計4の測定値Q2に補正係数Kを積算した値を校正値Q3とし、下記(4)式で校正値Q3を算出する。
Q3(i)=Q2(i)×K(i)・・・(4)式
【0058】
なお、(2)〜(4)式中のiは、補正係数Kを更新する際の時間を意味し、K(i−1)は前回の更新係数Kを意味する。
【0059】
当該校正値Q3が粉体供給量とバインダー添加割合の設定値に応じた流体流量の設定値となるように、制御装置6で流量調節弁5の開度を調節する。流量調節弁5の代わりに、上述した流量調節ポンプを使用して流体配管3内の流体の流量を調節しても構わないが、流量調節弁5を使用する方が一般的に安価である。
【0060】
流体の流量を調節するのに流体タンク1の貯蔵量の変化量から算出した平均流量Q1を直接使用しないのは、流量測定の応答性が流量計4の測定値Q2より劣ることと、流体補給ポンプ8運転中は流体流量を算出できないからである。
【0061】
また、タイマー等を利用し、流体補給ポンプ8の運転・停止を繰り返しても良いが、前述の如く流体タンク1内の流体の貯蔵レベルに上限と下限を設定し、その設定範囲に貯蔵量を確保するよう流体補給ポンプ8の運転・停止を繰り返す方法が望ましい。操業条件が変化すると、タイマー等では流体貯蔵量を管理できなくなるからである。
【0062】
流体タンク1内の流体の貯蔵レベルの設定範囲の上限と下限の間隔は狭い方が好ましい。設定範囲を狭くする程、校正頻度を多くできるからである。但し、間隔が狭すぎると平均流量Q1の測定に誤差が生じやすいため、上限から下限に貯蔵レベルが低下する変化時間が30秒以上となるように間隔を設定することが好ましい。当該設定範囲は流体タンク1の容積や設定流量等を勘案し、適宜設定すれば良い。
【0063】
また、校正の頻度に関しては、例えば1日に1回等の任意の一定時間間隔毎でも構わないが、より好ましくは所定の時間間隔のデータ計測毎に校正することが、流体流量制御の精度向上の観点から望ましい。
【0064】
本発明の実施形態に係る固形分を含有する流体の流量制御装置15および流量制御方法を適用することで、C重油やタールスラッジ等の固形分を含有する流体を使用しても、流体の流量を設定値通りに調節することが可能となる。その結果、混練物の粒度や嵩密度等の性状を安定化させることが可能となる。
【0065】
尚、本発明の固形分を含有する流体の流量制御方法は、コークス事前処理用石炭を流動床乾燥分級機にて微粉と粗粒に分級した微粉にタールスラッジを添加する場合に有効であるものの、これに限定されることはなく、C重油や粗タール等の様々な固形分含有流体の流量を定量的に調節する場合に適用可能である。
【0066】
なお、上記の例では、制御装置6は、流体タンクレベルの制御用、流量測定値の校正用、流量調節弁開度または流量調節用ポンプ回転数の調節用を兼ねた装置を使用しているが、それぞれ個別に設けて連動させても構わない。
【0067】
また、上記の例では、固形分を含有する流体としてタールスラッジを用いた場合を説明したが、その他にも、C重油、粗タール等、固形分を含有する流体であれば適用可能であることは明らかである。
【実施例】
【0068】
(実施例1)
コークス事前処理用の石炭の微粉にバインダーとして流体を添加して混練する際の実施例を以下に示す。図1に示すフローと同様に、粉体とバインダーを混練装置で混練する際、上述した本発明の実施形態に係る固形分を含有する流体の流量制御装置15および流量制御方法を適用し、バインダー流量が設定通りになっているかを確かめる試験を実施した。
【0069】
粉体は流動床乾燥分級機で乾燥および分級して回収した微粉炭であり、微粉炭中の0.3mm以下の粒子の質量割合が70〜90%の粉体を使用した。微粉炭の水分は1.5質量%の乾燥した粉体を使用した。また、流体はタールスラッジとタールを質量比で1:1に混合した物を使用し、その比重は1.14kg/Lであり、流体の添加割合は微粉炭に対し、外数で8質量%一定とした。今回の試験に使用した流量計4はコリオリ流量計、流量調節弁5はグローブ弁、混練装置の形式は2軸の横型ニーダであり、粉体の滞留時間は2分程度である。
【0070】
また、流体タンク1内のレベル計2は、フロー式レベル計を使用し、流体タンク1内の外周部と中心部とその中間の3箇所に設置し、各レベル計の測定値を平均化し、平均流量Q1を前記(1)式を用いて算出した。尚、流体タンク1内の流体の貯蔵レベルの上限及び下限レベルは、流体補給ポンプ8が停止している時、貯蔵レベルが上限レベルから下限レベルに低下する際の変化時間が5分程度となるように調整した。また、Q1を算出する際の前記所定時間間隔は1分とした。
【0071】
当該Q1と、前記所定時間(Q1算出時間)におけるコリオリ流量計の測定値の平均値Q2より、前記(2)式を用いて流量比Rを算出した。また、前記(3)式を用いて補正係数Kを算出し、前記(4)式を用いることで、生産を止めることなくオンラインで流量計4の測定値を校正した。そして、流量調節弁5の開度を調節し、当該校正値が粉体流量と流体添加率の設定値(8%)から決まる流体の設定値となるように流量を調節した。尚、流体タンク1内の流体の貯蔵レベル、流量計4の流量計測値、粉体供給装置10の粉体供給量、等の各データは1秒毎に計測した。
【0072】
また、更新係数aの選定に際しては、前述の条件で流量比Rが急に1から2に変化した場合を例に計算を行った。その結果を図3に示す。更新係数aが1に近い程、応答性は良いが、誤検知やバラツキの影響が懸念されるため、更新係数aは小さい方が補正係数Kの変動を低減できる。但し、更新係数aが小さすぎると応答性が悪くなることもあるため、後段で固形分を含有する流体を使用する機器(混練機等)の滞留時間や応答性に応じて更新係数aを適宜設定すれば良い。混練機内の粉体の滞留時間は2分程度のため、半分の1分以内に補正係数が2となることが望ましいと考え、今回は補正係数aを0.3とした。
【0073】
次に、実際の流体流量を確かめるために、図1に示すように、切り替えバルブ12で流体配管3をバイパス配管13側に1分間切り替え、採取缶14で流体を採取して、採取した流体の質量を秤量し、実際の流体流量を実測した。
【0074】
10日間連続してコークス事前処理用の石炭の微粉にバインダーとして流体を添加して混練した際、1日に1回、前記手法で流体流量を実測し、設定値との比を比較した結果を図4に示す。本発明の実施形態に係る固形分を含有する流体の流量制御装置15および流量制御方法を適用することで、タールスラッジ等の固形分を含有する流体を添加する場合でも、常時、流体流量を設定値通りに調節できることを確認できた。
【0075】
(実施例2)
実施例1と同じ原料を使用し、試験装置に関しては流体タンク1内のレベル計2を外周部と中心部の中間の1箇所のみに設置し、15秒間の移動平均値を使用して、平均流量Q1を前記(1)式を用いて算出した。その他の条件は実施例1と同様にして試験を行った。
【0076】
図5に流体流量の実測値と設定値との比を1日に1回、10日間比較した結果を示す。本発明の実施形態に係る固形分含有流体の流量制御装置15および方法を適用することで、タールスラッジ等の固形分を含有する流体を添加する場合でも、常時、流体流量を設定値通りに調節できることを確認できた。
【0077】
(比較例1)
実施例1と同じ原料及び試験装置を使用し、流体タンク1内の流体の貯蔵量の変化量から計算する平均流量Q1を使用せずに、その他の条件は実施例1と同様にして試験を行った。
【0078】
図6に流体流量の実測値と設定値との比を1日に1回、10日間比較した結果を示す。本発明の実施形態に係る固形分含有流体の流量制御方法を適用しなければ、タールスラッジ等の固形分を含有する流体を添加する場合、実際の流体流量が徐々に低下し、流体流量を設定値通りに調節できないことを確認した。
【0079】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の一実施形態に係る流体流量制御方法を用いた混練物の製造方法のフローの1例を示した図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る流体貯蔵量の変動量により求めた平均流量により測定値を校正する方法を説明するための模式図である。
【図3】本発明の第一の実施例に係る、流量比Rが1から2に急激に変化した際の更新係数aの補正係数Kへの影響を計算した図である。
【図4】本発明の第一の実施例に係るバインダー流量の実測値と設定値の比の経時変化を示した図である。
【図5】本発明の第二の実施例に係るバインダー流量の実測値と設定値の比の経時変化を示した図である。
【図6】比較例1に係るバインダー流量の実測値と設定値の比の経時変化を示した図である。
【符号の説明】
【0081】
1 流体タンク
2 レベル計
3 流体配管
4 流量計
5 流量調節弁
6 制御装置(流体タンクレベルの制御用、流量測定値の校正用、流量調節弁開度、及び流量調節用ポンプ回転数の調節用)
7 流体添加ノズル
8 流体補給ポンプ
9 粉体ホッパ
10 粉体供給装置(ロータリー・バルブ)
11 混練装置
12 切り替えバルブ
13 バイパス配管
14 採取缶
15 固形分を含有する流体の流量制御装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分を含有する流体を貯蔵し、前記流体の貯蔵レベルが上限又は下限レベルに到達したことを検出するための上下限レベル計を備えたタンクと、
前記タンクへ前記流体を送るポンプと、
前記流体の貯蔵レベルが前記タンクの前記上限レベルに到達した際に前記ポンプを停止し、前記流体の貯蔵レベルが前記タンクの前記下限レベルに到達した際に前記ポンプを稼動するタンクレベル制御手段と、
前記タンクから流体配管を通って流出する前記流体の流量を測定するための流量計と、
前記流量計の測定値を校正するための流量測定値校正手段と、
前記流量計の測定値に基づいて、前記流体配管を流れる前記流体の流量を設定値となるように調節するための流量調節手段と、
から構成され、
前記流量測定値校正手段は、
前記タンク内の前記流体の貯蔵レベルが前記上限レベルから前記下限レベルまで低下するまでの期間内において、前記タンク内の前記流体の貯蔵量の変化量を求め、当該貯蔵量の変化量に基づき前記期間の少なくとも一部の時間内の前記流体の平均流量を計算し、当該平均流量の計算値を使用して前記流量計の測定値を校正することを特徴とする、固形分を含有する流体の流量制御装置。
【請求項2】
前記流量測定値校正手段は、
前記期間内において、所定の時間間隔で前記タンク内の前記流体の貯蔵量の変化量を求め、当該貯蔵量の変化量と前記所定の時間間隔とから、前記所定の時間間隔ごとの前記流体の平均流量を計算し、当該平均流量の計算値を使用して前記流量計の測定値をオンラインで校正することを特徴とする、請求項1に記載の固形分を含有する流体の流量制御装置。
【請求項3】
前記流量測定値校正手段は、
前記期間内において、所定の時間間隔で前記タンク内の前記流体の貯蔵量の変化量を求め、当該貯蔵量の変化量と前記所定の時間間隔とから、前記所定の時間間隔の整数倍の時間間隔ごとの前記流体の平均流量を計算し、当該平均流量の計算値を使用して前記流量計の測定値をオンラインで校正することを特徴とする、請求項1に記載の固形分を含有する流体の流量制御装置。
【請求項4】
前記流量測定値校正手段は、
前記期間全体における前記タンク内の前記流体の貯蔵量の変化量を求め、当該貯蔵量の変化量から、前記期間全体における前記流体の平均流量を計算し、当該平均流量の計算値を使用して前記流量計の測定値をオンラインで校正することを特徴とする、請求項1に記載の固形分を含有する流体の流量制御装置。
【請求項5】
前記流量計が質量流量計である場合、前記流量測定値校正手段は、前記流体の貯蔵量の変化量として、前記タンクに貯蔵された前記流体の質量変化量を求めることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の固形分を含有する流体の流量制御装置。
【請求項6】
前記タンクは、前記タンク内の前記流体の貯蔵レベルを計測するレベル計を備え、
前記流量測定値校正手段は、前記レベル計の計測結果に基づいて、前記タンク内の前記流体の貯蔵レベルの高さ位置変化量を求め、当該高さ位置変化量に前記タンクの断面積及び前記流体の比重を乗じることによって、前記流体の貯蔵量の変化量として前記流体の質量変化量を求めることを特徴とする、請求項5に記載の固形分を含有する流体の流量制御装置。
【請求項7】
前記タンクは、前記流体を貯蔵した前記タンクの質量を計測する質量計を更に備え、
前記流量測定値校正手段は、前記質量計の計測結果に基づいて、前記流体の貯蔵量の変化量として前記流体の質量変化量を求めることを特徴とする、請求項5に記載の固形分を含有する流体の流量制御装置。
【請求項8】
前記流量計が体積流量計である場合、前記流量測定値校正手段は、前記流体の貯蔵量の変化量として、前記タンクに貯蔵された前記流体の体積変化量を求めることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の固形分を含有する流体の流量制御装置。
【請求項9】
前記タンクは、前記タンク内の前記流体の貯蔵レベルを計測するレベル計を備え、
前記流量測定値校正手段は、前記レベル計の計測結果に基づいて、前記タンク内の前記流体の貯蔵レベルの高さ位置変化量を求め、当該高さ位置変化量に前記タンクの断面積を乗じることによって、前記流体の貯蔵量の変化量として前記流体の体積変化量を求めることを特徴とする、請求項8に記載の固形分を含有する流体の流量制御装置。
【請求項10】
前記タンクは、前記流体を貯蔵した前記タンクの質量を計測する質量計を更に備え、
前記流量測定値校正手段は、前記質量計の計測結果に基づいて、前記タンクに貯蔵された前記流体の質量変化量を求め、当該質量変化量を前記流体の比重で除することによって、前記流体の貯蔵量の変化量として前記流体の体積変化量を求めることを特徴とする、請求項8に記載の固形分を含有する流体の流量制御装置。
【請求項11】
前記流量測定値校正手段は、下記(1)式で前記平均流量の計算値Q1を計算し、当該Q1と前記流量計の測定値Q2の流量比Rを下記(2)式で算出し、下記(3)式で所定の更新係数aを用いて前記流量計の補正係数Kを算出し、下記(4)式で前記流量計の測定値Q2を校正して校正値Q3を算出することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の固形分を含有する流体の流量制御装置。
Q1=流体の貯蔵量の変化量/所定の時間間隔・・・(1)式
R(i)=Q1(i)/Q2(i)・・・(2)式
K(i)=R(i)*a+K(i−1)*(1−a)・・・(3)式
Q3(i)=Q2(i)*K(i)・・・(4)式
ここで(2)〜(4)式中のiは、更新する際の時間を意味し、K(i−1)は前回の補正係数を意味する。更新係数aは、0超から1未満の所定値である。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の固形分を含有する流体の流量制御装置を使用し、前記固形分を含有する流体として、コークス炉から発生するタールスラッジを含む流体の流量を制御することを特徴とする、固形分を含有する流体の流量制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−121938(P2010−121938A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292971(P2008−292971)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】