説明

固形分高含有ゼリー飲料

【課題】固形分を高い濃度で含有するゼリー飲料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ゼリー形成上有効量のゲル化成分(A)グルコマンナン、(B)ローカストビーンガム、及び(C)カラギーナン、及びゲル化促進剤によって形成されるゼリーを含有し、ゲル化成分、及びゲル化促進剤の種類、配合比、及び濃度を特定の条件にすることにより、高濃度の固形分が均一に分散された良質なゲルを形成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形分高含有ゼリー飲料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多様化する消費者の価値観を反映して、様々な種類の飲料が製造・販売されている。近年では、新規な食感を有する飲料が開発されており、ゼリー飲料はその一例である。このようなゼリー飲料の中には、パウチなどの容器に充填され、容器に備え付けられた吸い口やストローからゼリーを吸引するものや、飲用前に容器を振って内容物のゼリーを粉砕することにより、細かいゼリーの食感を楽しみながら飲用するものなどが存在する。
【0003】
特開平4−252156(特許文献1)は、清涼感のある炭酸ガス含有ゼリー飲料を工業的に有利に製造するために、冷水不溶性のκ−カラギーナン及び/又はι(アイオータ)−カラギーナンを水溶液中に均一分散させ、炭酸ガスを封入した後、容器を充填密封し、加熱殺菌後に冷却することを含む、炭酸ガス含有ゼリー飲料の製造方法を開示する。
【0004】
特開2007−236299(特許文献2)は、ゲルの主成分としてのκ−カラギーナンとローカストビーンガム、及び寒天を含まないゲル化剤を飲料原料液に混合し、これに炭酸ガスを含有させ、容器に充填、密閉した後、70〜80℃で10〜20分間加熱処理してゲル化剤を溶融し、混合均一化した後、冷却することを特徴とする、密閉容器入り炭酸ガス含有ソフトゼリー状飲料の製造方法を開示する。この製造方法によれば、従来既存の炭酸飲料製造ラインを使用でき、かつゲル化剤をキューブ状に裁断する工程を省略することができる。特開2009−183226(特許文献3)は、特許文献2の製造方法を利用した、密閉容器入り炭酸ガス含有ソフトゼリー状リキュールの製造方法を開示する。
【0005】
特開2009−112236(特許文献4)は、κ−カラギーナンの使用量が0.001%(w/v)以上0.035%(w/v)未満で、ゲル化剤の総使用量が0.3%(w/v)未満という極めて少量のゲル化剤を使用し、炭酸ガス含有飲料を容器に充填・密閉後、70〜80℃で加熱してゲル化剤を溶融させることによる、密閉容器を軽く数回振ってゼリーを破砕した後、容器から排出させて飲用するか又はストローを容器内に差し込んでゼリーを吸引して飲用するタイプの密閉容器入り炭酸ガス含有ソフトゼリー状飲料の製造に好適な配合及び製造方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許公開 平4−252156
【特許文献2】特許公開 2007−236299
【特許文献3】特許公開 2009−183226
【特許文献4】特許公開 2009−112236
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜4に開示されたゼリー入り飲料は、固形分を含まないか濃度が低く、又は炭酸ガスを含む飲料であり、スッキリとした味わいの清涼感や炭酸ガスによる爽快感を楽しむものである。また、現在市場に出回っているパウチなどの容器に充填され吸い口から吸引するタイプのゼリー飲料の多くは、スポーツドリンクや栄養補給ドリンクタイプの、無果汁か低濃度果汁でスッキリした味わいのものである。このような従来のゼリー飲料に対して、濃厚な味わいやねっとりとした食感を付与するために、ゼリー中に固形分を多く含む濃厚液を含有させることが考えられる。
【0008】
固形分がゼリー中に多く含まれるゼリー飲料を製造する場合、固形分によってゲルのネットワークが十分に構築されないで分断されてしまうため、流通過程でゼリーが壊れない程度の強度と弾力性を有するゼリーを得ることは難しい。また、ゼリー飲料として楽しむためには、飲用時にゼリーが崩れて飲料とともに容易に飲用できる必要がある。さらに、固形分が多い場合、製造工程において飲料液中で沈殿・分離してしまい、均一に容器に充填することが困難になったり、出来上がったゼリーに固形分が均一に含まれない場合がある。
【0009】
このような課題に対して、本発明は、固形分を高い濃度で含有し、流通過程で壊れない程度の保形性と弾力性を有しながら、容器を数回振ることによって容易に細かく崩すことができ、飲料とともに飲用できるゼリーを含有する、容器詰めゼリー飲料を提供する。該ゼリー中の固形分は、均一に分散されている。また、該容器詰めゼリー飲料の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の事情に鑑み、本発明者は、ゲルを形成させる際の条件に注目した。鋭意検討の結果、ゲル化成分、及びカチオンの種類、配合量、及び組成を特定の条件にすることによって、固形分を高い濃度で含有しながら、保形性、弾力性、及び均一性に優れたゲルを形成させることに成功し、本発明を完成させた。
【0011】
本発明は、以下を提供する。
(1)ゼリー形成上有効量のゲル化成分(A)グルコマンナン、(B)ローカストビーンガム、及び(C)カラギーナン、及びゲル化促進剤によって形成されるゼリーを含有し、
該ゼリーが固形分を含有することを特徴とする、
容器詰めゼリー飲料。
【0012】
(2)ゲル化成分(A)、(B)、及び(C)を以下:
0.05w/v%≦(A)≦0.08w/v%;
0.06w/v%≦(A)+(B)≦0.1w/v%;及び
0.4≦((A)+(B))/(C)≦1.5;
で含有し、そして
ゲル化促進剤としてカチオンを0.1mM以上で含有する、
(1)に記載の容器詰めゼリー入り飲料。
【0013】
(3)固形分を10〜30v/w%で含有する、(1)又は(2)に記載の容器詰めゼリー入り飲料。
(4)固形分が、果実に由来するパルプ又はさのうである、(1)〜(3)のいずれか1に記載の容器詰めゼリー飲料。
【0014】
(5)pHが3.2以上、4.0以下である、(1)〜(4)のいずれか1に記載の容器詰めゼリー飲料。
(6)さらにゲル化成分(D)キサンタンガムを以下:
0.03w/v%≦(D)≦0.1w/v%
で含有する、(1)〜(5)のいずれか1に記載の容器詰めゼリー飲料。
【0015】
(7)アルコールを度数1〜20v/v%で含有する、(1)〜(6)のいずれか1に記載の容器詰めゼリー飲料。
(8)ゲル化成分が溶解しない温度で、ゼリーの形成上有効量のゲル化成分(A)グルコマンナン、(B)ローカストビーンガム、(C)カラギーナン、及び固形分を含有する懸濁液を調製する工程;
ゼリーの形成上有効量のゲル化促進剤を懸濁液に添加する工程;
ゲル化促進剤を含有する懸濁液を容器に充填し、密閉した後、ゲル化成分(A)〜(C)が溶解する温度に昇温してゲル化成分(A)〜(C)を溶解させることによって、又は
ゲル化促進剤を含有する懸濁液をゲル化成分(A)〜(C)が溶解する温度に昇温してゲル化成分(A)〜(C)を溶解させた後、容器に充填し、密閉することによって、
容器詰め飲料溶液を得る工程;及び
該容器詰め飲料溶液を、ゲル化上有効な温度に降温させてゼリーを形成させることにより、容器詰めゼリー飲料を得る工程、
を含む、容器詰めゼリー飲料の製造方法。
【0016】
(9)容器詰めゼリー飲料中のゲル化成分(A)、(B)、及び(C)の濃度が、次式;
0.05w/v%≦(A)≦0.08w/v%;
0.06w/v%≦(A)+(B)≦0.1w/v%;及び
0.4≦((A)+(B))/(C)≦1.5;
を満たすように、懸濁液を調製し;
ゲル化促進剤としてカチオンを0.1mM以上で添加する;
(8)に記載の製造方法。
【0017】
(10)容器詰め飲料溶液を得る工程より前のいずれかの工程において、ゲル化成分(D)としてキサンタンガムを、
0.03w/v%≦(D)≦0.1w/v%
で容器詰めゼリー飲料に含有されるように添加する、
(8)又は(9)に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、容器詰めゼリー飲料であって、高い濃度の固形分を均一にゼリー中に含有するゼリーが、保形性と弾力性を有しながら、容易に細かく崩れて飲料とともに飲用することができる、前記飲料を提供する。
【0019】
<容器詰めゼリー飲料>
本明細書でいう容器詰めゼリー飲料とは、容器中で固形分が均一に分散されたゼリー構造を有する飲料をいう。飲料としては、通常飲用されるものであれば特に制限されず、果汁飲料、茶飲料、コーヒー飲料、果実酒、各種酒類およびこれらの混合物があげられる。ゼリー飲料中の固形分の濃度は、下限が好ましくは10v/v%以上、上限が好ましくは30v/v%以下、より好ましくは20v/v%以下のいずれかの範囲であればよい。本発明においては、これらの固形分が飲料中のみならずゼリー中にも均一に含まれているという特徴を有する。
【0020】
容器詰めゼリー飲料の製造に使用する原料に含まれる固形分の濃度は、次のようにして測定する。重量を精秤した原料を、容量の目盛りを付されたスピッツ管に入れ、純水にて約10mlとした後よく混合する。これを20℃にて3000rpm、15分間遠心分離し、沈殿した固形分の容量を読み取る。この固形分の容量を予め測定した原料の重量で割り、その百分率を原料に含まれる固形分の濃度(v/w%)とする。例えば、3.0gの原料を前記の条件で遠心分離にかけることによって1.8mlの沈殿が得られた場合、その固形分量は1.8(ml)÷3.0(g)×100=60(v/w%)となる。固形分を含有する原料が飲料に添加された場合は、原料中の固形分の濃度と原料の添加量の積を、飲料の容量で割った値を、飲料中の固形分量(v/v%)とする。例えば、60(v/w%)の固形分を含有する原料200gを、飲料1000mlに添加した場合、飲料中での固形分量は、60(v/w%)×200(g)÷1000(ml)=12(v/v%)となる。容器詰めゼリー飲料中の固形分の濃度を測定する場合も、同様にして測定することができる。精秤したゼリーを50〜60℃に加温してゼリーを溶解させ、スピッツ管に封入して温度を50〜60℃として前述の条件で遠心分離を行い、固形分を沈澱させる。得られた固形分を純水で2〜3回洗浄し、ゲル化剤等の成分を除去してから、前記の方法で固形分の容量を測定する。これを、採取したゼリーの重量で割った百分率を、ゼリー中に含まれる固形分量とする。
【0021】
本明細書でいう固形分とは、ゼリー飲料中で溶解されない成分であればよく、例えば、果実、野菜、その他の植物に由来する成分が挙げられるが、具体的にはパルプやさのう等である。大きさとしては1〜2mm以下の微細なものが好ましくい。微細なものは、濃厚な味わいと滑らかな食感を持ち、ゲル化を阻害するので本発明に好適である。そのような成分として、果汁に含まれる固形分すなわちパルプが挙げられる。果汁に含まれるパルプは芳香成分を包含しており、香り高さやこく味を付与することができるため、本発明の容器詰めゼリー飲料に好適に用いることができる。本発明においてパルプは、果汁から分離しないで配合してもよいし、果実の搾汁工程の副原料として果汁から分離して得られるパルプを配合してもよい。果汁から分離して得られるパルプとしては、食品添加物の一種として、シトラスファイバーなどの製品を入手することが可能である。
【0022】
パルプを多く含む果汁の一例としては、果実ピューレが挙げられる。果実ピューレは、果実を破砕した後、網目1〜2mm程度のスクリーンを有するパルパーで裏ごしして果皮や種子が除去されたものをいう。また、果汁から分離して得られるパルプとしては、主に柑橘果実の搾汁工程において果汁に混入するじょうのう膜を、パルパーフィニッシャーを用いて果汁から分離除去して収集したものが挙げられる。本発明において好適に利用できるパルプを含む果実としては、オレンジ、ミカン、温州ミカン、夏ミカン、ハッサク、イヨカン、ポンカン、カボス、シイクワシャー、レモン、ライム、及びグレープフルーツなどの柑橘類果実;パイナップル、グアバ、バナナ、マンゴー、キウイ、アセロラ、パパイヤ、及びパッションフルーツなどの熱帯果実;ナシ(日本ナシ、西洋ナシなど)、及びリンゴなどの仁果類果実;梅、桃、スモモ、チェリー、及びアンズなどの核果類果実;ラズベリー、クランベリー、ブルーベリー、カシス、及びイチゴなどのしょう果類、ブドウ、メロン、及びカキなどが挙げられる。マンゴー、バナナ、桃、及びメロンなどに由来するパルプは、柔らかく緻密な肉質に類似した濃厚感を楽しむことができるため、特に好ましく適用することができる。一態様として、マンゴーピューレを含有するゼリー飲料の固形分の濃度は、下限が好ましくは8v/v%以上、より好ましくは10v/v%以上、上限が好ましくは30v/v%以下、より好ましくは20v/v%以下のいずれかの範囲とすることができる。別の態様として、桃ピューレを含有するゼリー飲料の固形分の濃度は、下限が好ましくは8v/v%以上、より好ましくは10v/v%以上、上限が好ましくは30v/v%以下、より好ましくは20v/v%以下のいずれかの範囲とすることができる。本明細書においては、本発明の容器詰めゼリー飲料を固形分高含有ゼリー飲料ということもある。
【0023】
本発明の容器詰めゼリー飲料は、アルコールを含有していることが好ましい。ゼリー飲料がアルコールを含有することによって、ゼリーによる濃厚な味わいと弾力のある食感に、アルコールに起因する風味が加わり、独特の香り高さや深みのある風味が生まれる。ゼリー飲料中のアルコール度数は、好ましくは1〜20v/v%、より好ましくは1〜9v/v%である。アルコール度数が20v/v%より高いとゲル化成分が固まってしまう可能性があるため好ましくない。
【0024】
本明細書でいうアルコールとは、飲用可能なアルコールをいい、例えば、醸造アルコール、スピリッツ類、(ラム、ウォッカ、ジンなど)、リキュール類、ウイスキー、ブランデー、焼酎、清酒、ワイン、果実酒、及びビールが挙げられ、これらを単独又は組み合わせて用いることができる。
【0025】
本発明においては、ゲル化成分として、(A)グルコマンナン、(B)ローカストビーンガム、及び(C)カラギーナン(それぞれ、単に(A)、(B)、(C)、又はゲル化成分(A)、(B)、(C)ということもある)のゼリー飲料中の濃度を、次の3つの条件を満足するように配合することによって、固形分を含む、目的とする品質のゼリーを作ることができる。
【0026】
0.05w/v%≦(A)≦0.08w/v%;
0.06w/v%≦(A)+(B)≦0.1w/v%;及び
0.4≦((A)+(B))/(C)≦1.5。
【0027】
まず、(A)は、下限が好ましくは0.05w/v%以上、より好ましくは0.055w/v%以上、上限が好ましくは0.08w/v%以下、より好ましくは0.075w/v%以下のいずれかの範囲でゼリー飲料に含有させることができる。0.05w/v%より低いとゼリーの形にはなるが、保形性が弱く簡単に崩れてしまうため、容器詰めの形態でゼリーの形状を維持させたまま流通させることが困難となり、0.08w/v%より高いとゲルが硬くなり過ぎてしまい、容器を振ってもゼリーを崩すことができなくなる。
【0028】
(B)の濃度は、目的とするゼリー品質に応じて、(A)との関係で設定することができる。すなわち、(A)と(B)の濃度の合計((A)+(B))は、下限が好ましくは0.06w/v%以上、より好ましくは0.07w/v%以上、上限が好ましくは0.1w/v%以下、より好ましくは0.09w/v%以下のいずれかの範囲とすることができる。0.06w/v%より低いと、同様にゼリーの保形性が弱くなり簡単に崩れてしまい、0.1w/v%より高いとゲルが硬くなり過ぎてしまう。
【0029】
更に、(C)は、容器中でゼリーの形状を保持するための十分な保形性を付与しつつ、容器を数回振ったときに崩すことのできる崩れやすさをゼリー与にえることができる。(C)の濃度は、(A)+(B)との関係で設定することができる。すなわち、(A)+(B)を(C)で割った比([(A)+(B)]/(C))が、下限が好ましくは0.4以上、より好ましくは0.5以上、上限が好ましくは1.5以下、より好ましくは1.4以下のいずれかの範囲となるように設定することができる。この比が0.4より低い場合は、ゼリーが崩れにくくなり、1.5より高い場合は、崩れやすくなってしまう場合がある。
【0030】
一態様として、マンゴーピューレに由来する固形分を10〜30v/v%で含有する容器詰めゼリー飲料におけるゲル化成分(A)〜(C)の濃度は:
(A)が、下限が好ましくは0.05w/v%以上、より好ましくは0.06w/v%以上、上限が好ましくは0.08w/v%以下のいずれかの範囲;
(A)+(B)が、下限が好ましくは0.06w/v%以上、より好ましくは0.07w/v%以上、上限が好ましくは0.1w/v%以下、より好ましくは0.08w/v%以下のいずれかの範囲;そして
[(A)+(B)]/(C)が、下限が好ましくは0.4以上、より好ましくは0.5以上、上限が好ましくは1.5以下、より好ましくは1.0以下のいずれかの範囲;
とすることができる。
【0031】
別の態様として、桃ピューレに由来する固形分を10〜30v/v%で含有する容器詰めゼリー飲料におけるゲル化成分(A)〜(C)の濃度は:
(A)が、下限が好ましくは0.05w/v%以上、より好ましくは0.06w/v%以上、上限が好ましくは0.08w/v%以下のいずれかの範囲;
(A)+(B)が、下限が好ましくは0.06w/v%以上、より好ましくは0.07w/v%以上、上限が好ましくは0.1w/v%以下、より好ましくは0.08w/v%以下のいずれかの範囲;そして
[(A)+(B)]/(C)が、下限が好ましくは0.4以上、より好ましくは0.5以上、上限が好ましくは1.5以下、より好ましくは1.0以下のいずれかの範囲;
とすることができる。
【0032】
カラギーナンは、紅藻類の抽出物で、水に対する溶解性などの性質からカッパー(κ)、アイオータ(ι)、ラムダ(λ)の3種類が存在することが知られているが、本発明においては、冷水不溶性であるκ−カラギーナン及びι−カラギーナンを好ましく用いることができる。
【0033】
本発明の容器詰めゼリー飲料は、以上のようなゲル化成分に加えて、更にゲル化成分として、20℃以下の冷水にも比較的容易に溶解させることができる、キサンタンガム(単に(D)、又はゲル化成分(D)ということがある)を添加することができる。
【0034】
(D)は、下限が0.03w/v%以上、好ましくは0.05w/v%以上、上限が0.1w/v%以下のいずれかの範囲で容器詰めゼリー飲料に含有させることができる。このような濃度で(D)を添加することにより、(A)〜(C)のゲル化成分や固形分の沈澱を抑制して均一に分散させることができるため、製造工程で長時間ゼリー飲料溶液を保管しても分離が起こりにくく容器への充填が容易な上、ゲル化成分を溶解した後混合・均一化する工程が不要となり、好ましい。また、出来上がったゼリーが成分のムラのない良質なゼリーとなる点で好ましい。(D)が0.03w/v%より少ないと製造工程において(A)〜(C)、及び固形分の沈澱を十分に抑制することができず、また0.1w/v%を超える場合は、粘度が高くなることによって容器への充填が困難になるなどの製造上の支障が生じることがあるため、好ましくない。
【0035】
本発明の容器詰めゼリー飲料は、ゲル化促進剤としてゼリー形成上有効量のカチオンが必要である。カチオンとしては、カリウムイオン、及びカルシウムイオンを挙げることができ、本発明においてはカリウムイオンを使用した方がゲルの強度が高まるため好ましい。これらは、塩として添加することができ、具体的には、食品添加物として使用が認められているものであればよく、塩化カリウム、クエン酸三カリウム、リン酸カリウム、及び塩化カルシウムなどが挙げられる。本発明のゼリー飲料中のカチオン濃度は、下限として好ましくは0.1mM以上、より好ましくは0.2mM以上、上限として好ましくは2mM以下、より好ましくは1.5mM以下のいずれかの範囲とすることができる。カチオン濃度が0.2mMより低い場合はゼリーが固まらない可能性があり、2mMより高い場合はゼリーが固くなりすぎるほか、塩味が強くなって香味の設計品質を逸脱する恐れがあり、好ましくない。ゼリー飲料中のカチオン濃度は、原子吸光光度法などの周知の技術によって測定することができる。又は、財団法人 日本食品分析センターに依頼すれば、このようなカチオン濃度を知ることができる。
【0036】
本発明のゼリー飲料は、pHを下限として3.2以上に調整することが好ましい。3.2より低いpHでは、ゼリーが固まりにくくなるため好ましくない。また、上限としては4.0以下に調整することが好ましい。4.0を超えてもゼリーを形成することはできるが、中性域で増殖可能な耐熱性の強い微生物を殺菌するために90℃を超える加熱条件が必要となる場合があり、ゲルの破壊やゼリーの品質劣化を招くため好ましくない。pHは、通常の飲料の製造で用いられる有機酸類とその塩類を適宜組み合わせることによって調整することができる。
【0037】
さらに、本発明のゼリー飲料は、その性質を損なわない限りにおいて、本明細書で定義される成分以外に、通常の飲料に配合するような糖類、酸類、香料、ビタミン、色素類、酸化防止剤、甘味料、酸味料、乳化剤、保存料、調味料、エキス類、pH調整剤、品質安定化剤などを配合してもよい。
【0038】
<容器詰めゼリー飲料の製造方法>
本発明の固形分高含有ゼリー飲料の製造方法を以下に説明する。
ゲル化成分、及び固形分を含有する飲料溶液からなる懸濁液を調製する工程
ゲル化成分(A)グルコマンナン、(B)ローカストビーンガム、(C)カラギーナン、及び固形分を混合して飲料溶液からなる懸濁液を調製する。固形分は、果汁に含まれるパルプ又は食品添加物のパルプとして、下限が10v/v%以上、上限が18v/v%以下、好ましくは15v/v%以下のいずれかの範囲で容器詰めゼリー飲料に含有されるように添加する。
【0039】
ゲル化成分(A)〜(C)は、ゼリーの形成上有効量で添加される。ゼリーの形成上有効量とは、本発明の容器詰めゼリー飲料に所望の品質を与えるために必要な量を意味し、具体的には、ゲル化成分(A)、(B)、(C)の容器詰めゼリー飲料中の濃度が次の3つの条件を満たす場合を意味する:
0.05w/v%≦(A)≦0.08w/v%;
0.06w/v%≦(A)+(B)≦0.1w/v%;及び
0.4≦((A)+(B))/(C)≦1.5。
【0040】
さらに、懸濁液中のゲル化成分(A)、(B)、(C)、及び固形分を均一に分散させ、かつ沈澱を抑制するために有効な量で、ゲル化成分(D)としてキサンタンガムを添加してもよい。そのような量とは、下限が好ましくは0.03w/v%以上、より好ましくは0.05w/v%以上、上限が好ましくは0.1w/v%以下のいずれかの範囲で容器詰めゼリー飲料に含有される量である。
【0041】
この工程の温度は、ゲル化成分(A)、(B)、(C)が溶解しない温度、好ましくは40℃以下で行う。また、この溶液のpHは、3.5〜4.0であることが好ましい。pHが3.5より低いとゲルの形成が困難になり、pHが4.0より高いと中性域で増殖可能な耐熱性の強い微生物を殺菌するために90℃を超える加熱条件が必要となる場合があり、ゲルの破壊やゼリーの品質劣化を招くため好ましくない。ゲル化成分(D)は、ゲル化成分(A)、(B)、(C)と同時に添加してもよいし、先に添加してもよい。本工程ではゲル化成分(D)のみが飲料溶液中に溶解されることによって、ゲル化成分(A)、(B)、(C)、及び固形分が飲料溶液の懸濁液中に均一に分散され、かつそれらの沈澱が抑制されることによって、最終的に固形分が均一に分散された良質な容器詰めゼリー飲料を得ることができる。また、製造工程で長時間ゼリー飲料溶液を保管しても分離が起こりにくく容器への充填が容易な上、ゲル化成分を溶解した後混合・均一化する工程が不要となるという有利な点もある。
【0042】
容器詰め飲料溶液を得る工程
先の工程で調製されたゲル化成分(A)〜(C)、及び固形分を含有する飲料溶液からなる懸濁液を、容器に充填し、密閉する工程(充填・密閉工程)、及び昇温させてゲル化成分(A)、(B)、(C)を溶解させる工程(昇温・溶解工程)を経ることにより、ゲル化成分(A)、(B)、(C)が溶解された容器詰め飲料溶液を得ることができる。ゲル化成分(D)を前述の有効量含む場合は、ゲル化成分(A)、(B)、(C)、及び固形分が全体に均一に分散された容器詰め飲料溶液とすることができる。すなわち、容器詰め飲料溶液を混合して均一化するための工程は必要ない。
【0043】
本明細書でいう容器詰め飲料溶液とは、先の工程で得られたゲル化成分(A)〜(C)、及び固形分を含有する飲料溶液からなる懸濁液を昇温することにより得られる溶解液であって、容器に充填、密閉されたものをいう。
【0044】
充填・密閉工程で使用する容器は、瓶、缶、紙、ペットボトルなど、種々の形態、材質の容器を用いることができるが、本発明のゼリー飲料が固形分を高い濃度で含有することを考慮すれば、充填及び飲用の容易性の観点から、広口の容器が好ましい。さらに、開栓後の容器を再栓できれば、ゼリーを再度分散させる場合に便利である。このような観点から、例えば、スクリューキャップ等を備えたボトル缶が好ましい。
【0045】
昇温・溶解工程は、好ましくは70〜90℃、より好ましくは80〜90℃に昇温させて、10〜20分間処理することが好ましい。温度が70℃より低いとゲル化成分を十分に溶解させることができず、ゲルの品質を劣化させる可能性があり、90℃より高いとゲルが破壊される可能性があるため、好ましくない。処理時間が10分より短いと、ゲル化成分の溶解が不十分になる可能性があり、20分より長いとゲルが破壊される可能性があるため、好ましくない。
【0046】
上記の充填・密閉工程、及び昇温・溶解工程は、どちらを先に行ってもよいが、充填・密閉工程を先に行った方が好ましい場合がある。例えば、ゼリー飲料がアルコールを含有する場合、充填・密閉工程を先に行えばアルコールの飛散を防ぐことができる。また、昇温・溶解工程が加熱殺菌処理を兼ねている場合には、充填・密閉工程を先に行えば、加熱を繰り返す必要がなくなるため、品質の劣化を防ぎ、かつ製造工程を簡素化することができる。本発明においては、昇温・溶解工程が加熱殺菌処理を兼ねることができる。
【0047】
冷却・ゲル化工程
先の工程で得られた容器詰め飲料溶液を、ゲル化上有効な温度にまで降温させてゲル化させることにより、容器詰めゼリー飲料を得ることができる。ゲル化上有効な温度とは、容器詰め飲料溶液がゲル化する温度であり、例えば、50℃以下、好ましくは40℃以下である。降温は、容器詰め飲料溶液を冷却装置などで積極的に冷却してもよく、昇温処理を停止して自然放熱によって液温を室温に低下させてもよい。
【0048】
上記のゼリー飲料の製造方法においては、ゲル化促進剤としてカチオンを添加する必要がある。カチオンは、塩として添加することができ、具体的には、食品添加物として使用が認められているものであればよく、塩化カリウム、クエン酸カリウム、リン酸カリウム、及び塩化カルシウムなどが挙げられる。カチオンは、下限として好ましくは0.1mM以上、より好ましくは0.15mM以上、上限として好ましくは2mM以下、より好ましくは1.5mM以下のいずれかの範囲でゼリー飲料に含有されるように添加する。ゲル化促進剤は、充填・密閉工程より前であれば、いずれの工程において添加してもよい。
【0049】
その他、ゼリー飲料の性質を損なわない限りにおいて、本明細書で定義した成分以外に、通常の飲料に配合するような糖類、酸類、付香料、ビタミン、色素類、酸化防止剤、甘味料、酸味料、乳化剤、保存料、調味料、エキス類、pH調整剤、品質安定化剤などを配合してもよい。これらの成分は、充填・密閉工程より前であれば、いずれの工程において添加してもよい。
【0050】
<発明の効果>
ゲル化成分(A)、(B)、(C)、及びカチオンの配合量、及び濃度を特定の条件にすることにより、固形分を高い濃度で含有し、保形性、弾力性に優れたゲルを形成させることができる。このようにして調製されたゼリーは、容器詰めの形態で市場に流通できる程度の強度を有しながら、飲用時に容器を数回振ることによって容易に崩れるため、ゼリーを細かく砕いた状態で飲料と共に飲用することに適した、容器詰めゼリー飲料とすることができる。更に、ゲル化成分(D)を特定濃度で添加することによって、固形分が均一に含まれた良好なゼリーを得ることができ、さらに製造工程中での保管時の沈殿・分離の防止、混合・均一化工程の省略が可能である。このような容器詰めゼリー飲料は、従来技術を適用しても得ることはできない。
【実施例】
【0051】
本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
[実施例1]キサンタンガムによる固形分の沈澱抑制
1)マンゴーピューレ(固形分60v/w%)を用いた場合
キサンタンガム0、0.02、0.04、0.06、0.1、及び0.2gをそれぞれ約100mlの純水に溶解させてキサンタンガムの溶解液を得た。該溶解液をマンゴーピューレ(固形分濃度60v/w%)33.4gと混合した後、純水で全量をメスシリンダーで200mlに定容し、サンプルA〜Fを調製した。サンプルA〜Fのキサンタンガムの濃度は、それぞれ0、0.01、0.02、0.03、0.05、及び0.1w/v%であり、マンゴーピューレに由来する固形分濃度は、10v/v%である。
【0052】
次に、メスシリンダーに入ったこれらのサンプルを室温で静置し、2、14、18、24時間後における固形分の容積を目視にて測定した。サンプル中の固形分は時間の経過とともに分離していくため、メスシリンダー中で沈澱した固形分の容量をメスシリンダーの目盛りで測定することができる。結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
マンゴーピューレ由来の固形分を10v/v%で含有する溶液では、キサンタンガム0.03w/v%以上で固形分の沈澱を抑制することができ、0.05w/v%以上で更に強力に固形分の沈澱を抑制することができた。
【0055】
キサンタンガム0.1w/v%でも強力に固形分の沈澱が抑制されたが、溶液の粘度上昇が確認された。これを超える濃度では、溶液の移動や容器への充填などの製造工程において支障を来たすことが考えられた。
【0056】
2)グレープフルーツパルプ(固形分50v/w%)を用いた場合
キサンタンガム0、0.01、0.02、0.03、及び0.05gをそれぞれ約100mlの純水に溶解させてキサンタンガムの溶解液を得た。該溶解液をグレープフルーツパルプ(固形分50v/w%)20gと混合した後、純水で全量をメスシリンダーで100mlに定容し、サンプルG〜Kを調製した。サンプルG〜Kのキサンタンガム濃度は、それぞれ0、0.01、0.02、0.03、及び0.05w/v%であり、グレープフルーツパルプに由来する固形分濃度は、10v/v%である。
【0057】
次に、メスシリンダーに入ったこれらのサンプルを室温に静置し、2、3、5、10時間後における固形分の容積を目視にて測定した。サンプル中の固形分は時間の経過とともに分離していくため、メスシリンダー中で沈澱した固形分の容量をメスシリンダーの目盛りで測定することができる。結果を表2に示す。
【0058】
【表2】

【0059】
グレープフルーツパルプ由来の固形分を10v/v%で含有する溶液でも、キサンタンガム0.03w/v%以上で固形分の沈澱を抑制することができ、0.05w/v%で更に強力に固形分の沈澱を抑制することができた。
【0060】
[実施例2]グルコマンナンの効果
下記表3の配合表に従って、ゼリー中にマンゴーピューレ(固形分60v/w%)由来の不溶性固形分を10v/v%、(A)グルコマンナン濃度を0、0.04、0.06、0.09w/v%含む、容器詰めゼリー飲料を調製した。この容器詰めゼリー飲料を、金属ボトル缶に充填して80℃・20分間の加熱殺菌を施し、速やかに流水中で冷却して容器詰めゼリー飲料(サンプル1〜4)を得た。
【0061】
【表3】

【0062】
調製された容器詰めゼリーの性状を、ゼリーの固まり具合(保形性)、ゼリーの弾力、振ったときの崩れやすさ、喉ごしの良さの観点から評価を行った。
ゼリーの固まり具合(保形性)は、容器を開栓したときのゼリーの固さで評価した。容器を振らずに開栓し、反転させた時に、ゼリーが十分に固まっていて容器から出てこない場合は○、ゼリーの固まり方が不十分で、一部液状の溶解液が出てくる場合は△、ゼリーが全く固まっておらず、溶解液がそのまま出てくる場合は×とした。
【0063】
ゼリーの弾力は、軽く指で触れた場合の弾力性を評価した。軽く触れたときに指がゼリー表面に少し沈み、崩れない場合は○、指がゼリー表面に食い込まないか、ゼリー中に突き刺さる場合は△、固くて弾力が全く感じられないか、簡単に崩れてしまう場合は×とした。
【0064】
ゼリーを強く振ったときの崩れやすさは、容器を閉栓した状態で強く5回振った後開栓してゼリーを出し、ゼリーの崩れた状態の程度を目視で評価した。十分にゼリーが細かく砕けている場合は○、ゼリーが十分に砕けず、数センチ程度の大きさのゼリーの塊が少量混ざっている場合は△、ゼリーが砕けない場合は×とした。
【0065】
喉ごしの良さは、崩れたゼリーと飲料を同時に飲用し、訓練された専門パネル2名にて官能評価した。飲料とともにスムーズにゼリーを飲用できる場合は○、ゼリーの塊が少量混ざり、飲用時につかえる場合は△、ゼリーの塊が喉につかえて飲用に不都合な場合は×とした。
その結果を、表4に示す。
【0066】
【表4】

【0067】
グルコマンナンが含まれないサンプル1は、他のゲル化成分の効果によって保形性を有するが、わずかな衝撃で崩れてしまい、容器詰めゼリー飲料としての用途に全く適さない。グルコマンナンの濃度が0.04w/v%であるサンプル2は、やはりゼリーが十分に固まらないため崩れやすく、容器詰めゼリー飲料としての用途に適さない。グルコマンナンの濃度が0.09w/v%であるサンプル4は、ゼリーが固くなりすぎて、振っても崩れず、飲料とともに飲み込むことのできるゼリーとはならない。グルコマンナンの濃度が0.06w/v%であるサンプル3のみがゼリーの固まり具合、弾力、振ったときの崩れやすさをバランスよく実現された、喉ごしのよいゼリー飲料であることが示された。
【0068】
このことから、良好なゼリーを形成させるにはグルコマンナンを特定の濃度で使用することが必要であることが示された。
[実施例3]ゼリーの形成におけるカチオンの効果
下記表5の配合表に従って、ゼリー中にマンゴーピューレ(固形分60v/w%)由来の不溶性固形分を10v/v%含む、容器詰めゼリー飲料を調製した。
【0069】
【表5】

【0070】
調製された容器詰めゼリー飲料の性状を、ゼリーの固まり具合(保形性)、ゼリーの弾力、振ったときの崩れやすさ、喉ごしの良さの観点から評価を行った。その結果を、表6に示す。
【0071】
【表6】

【0072】
固形分の量、ゲル化成分の配合比など、クエン酸三カリウムに由来するカリウムイオン濃度以外は全く同じサンプル5と6を比較すると、カリウムイオンを含まないサンプル6は、ゼリーが十分固まらず、容易に崩れてしまい、容器詰めゼリー飲料とすることができないことが明らかとなった。このことから、カチオンはゼリーの形成に必要であることがわかった。
【0073】
[実施例4]固形分の量
下記表7の配合表に従って、ゼリー中にマンゴーピューレ(固形分60v/w%)由来の不溶性固形分を12〜18v/v%含む、容器詰めゼリー飲料を調製した。
【0074】
【表7】

【0075】
調製された容器詰めゼリー飲料の性状を、ゼリーの固まり具合(保形性)、ゼリーの弾力、振ったときの崩れやすさ、喉ごしの良さの観点から評価を行った。その結果を、表8に示す。
【0076】
【表8】

【0077】
固形分を12〜18v/v%含む場合でも、問題なく良好なゼリーを作ることができ、本発明の効果を有する容器詰めゼリー飲料とすることができた。
[実施例5]ゲル化剤の配合比の効果
下記表9の配合表に従って、ゼリー中に桃ピューレ(固形分50v/w%)を含む、容器詰めゼリー飲料を調製した。このとき、(A)グルコマンナン濃度、(B)ローカストビーンガム濃度、(C)κ−カラギーナン濃度を、表10のように調整した。(A)+(B)は全て0.06w/v%以上・0.1w/v%以下としたが、((A)+(B))/(C)は0.4未満のものや、1.5以上のものも調製した。このような配合を有する懸濁液を透明ガラス瓶に充填して80℃・20分間の加熱殺菌を施し、速やかに流水中で冷却することによって容器詰めゼリー飲料(サンプル10〜24)を得た。
このとき、不溶性固形分は15v/v%、アルコール度数は5v/v%、カリウムイオン濃度は20mM、pHは3.6であった。
【0078】
【表9】

【0079】
【表10】

【0080】
調製された容器詰めゼリーの性状を、ゼリーの固まり具合(保形性)、ゼリーの弾力、ゼリーを強く5回振ったときの崩れやすさ、喉ごしの良さの観点から評価を行った。各項目の評価は、実施例1に記載の方法に従って行った。結果を表11に示す。
【0081】
【表11】

【0082】
0.4≦((A)+(B))/(C)≦1.5を満たすサンプル(No.11〜13、No.16〜18及びNo.21〜23)は、官能評価の全項目で良好な品質を示した。
特に、0.5≦((A)+(B))/(C)≦1.0を満たすサンプル(No.12、17及び22)は、しっかりした保形性と弾力を有しながら振ったときに細かく均一に崩れ、飲用したときに喉ごしの良いゼリー飲料となった。
一方、((A)+(B))/(C)<0.4となるサンプル(No.14、19及び24)は、ゼリーが固くなり過ぎる傾向があり、振っても十分に崩れなかったり(No.19及び24)、崩れても大きなゼリーの塊が出来て喉ごしが悪くなったり(No.14)して、本発明の効果を十分発揮しているとはいえなかった。また、1.5<((A)+(B))/(C)となるサンプル(No.10、15及び20)は、保形性と弾力に問題があってゼリーを形成できなかったり(No.10及び15)、ゼリーを形成してもかなり柔らかく、弾力のない粗悪な品質となったり(No.20)して、やはり本発明の効果を十分発揮しているとはいえなかった。
【0083】
以上の結果から、本発明の効果を発揮できる良好なゼリー飲料とするには、(A)グルコマンナン、(B)ローカストビーンガム、及び(C)κ−カラギーナンの各ゲル化剤の濃度を0.4≦((A)+(B))/(C)≦1.5、より好ましくは0.5≦((A)+(B))/(C)≦1.0を満たすよう調整することが必要であることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼリー形成上有効量のゲル化成分(A)グルコマンナン、(B)ローカストビーンガム、及び(C)カラギーナン、及びゲル化促進剤によって形成されるゼリーを含有し、
該ゼリーが固形分を含有することを特徴とする、
容器詰めゼリー飲料。
【請求項2】
ゲル化成分(A)、(B)、及び(C)を以下:
0.05w/v%≦(A)≦0.08w/v%;
0.06w/v%≦(A)+(B)≦0.1w/v%;及び
0.4≦((A)+(B))/(C)≦1.5;
で含有し、そして
ゲル化促進剤としてカチオンを0.1mM以上で含有する、
請求項1に記載の容器詰めゼリー入り飲料。
【請求項3】
固形分を10〜30v/w%で含有する、請求項1又は2に記載の容器詰めゼリー入り飲料。
【請求項4】
固形分が、果実に由来するパルプ又はさのうである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の容器詰めゼリー飲料。
【請求項5】
pHが3.2以上、4.0以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の容器詰めゼリー飲料。
【請求項6】
さらにゲル化成分(D)キサンタンガムを以下:
0.03w/v%≦(D)≦0.1w/v%
で含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の容器詰めゼリー飲料。
【請求項7】
アルコールを度数1〜20v/v%で含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の容器詰めゼリー飲料。
【請求項8】
ゲル化成分が溶解しない温度で、ゼリーの形成上有効量のゲル化成分(A)グルコマンナン、(B)ローカストビーンガム、(C)カラギーナン、及び固形分を含有する懸濁液を調製する工程;
ゼリー形成上有効量のゲル化促進剤を懸濁液に添加する工程;
ゲル化促進剤を含有する懸濁液を容器に充填し、密閉した後、ゲル化成分(A)〜(C)が溶解する温度に昇温してゲル化成分(A)〜(C)を溶解させることによって、又は
ゲル化促進剤を含有する懸濁液をゲル化成分(A)〜(C)が溶解する温度に昇温してゲル化成分(A)〜(C)を溶解させた後、容器に充填し、密閉することによって、
容器詰め飲料溶液を得る工程;及び
該容器詰め飲料溶液を、ゲル化上有効な温度に降温させてゼリーを形成させることにより、容器詰めゼリー飲料を得る工程、
を含む、容器詰めゼリー飲料の製造方法。
【請求項9】
容器詰めゼリー飲料中のゲル化成分(A)、(B)、及び(C)の濃度が、次式;
0.05w/v%≦(A)≦0.08w/v%;
0.06w/v%≦(A)+(B)≦0.1w/v%;及び
0.4≦((A)+(B))/(C)≦1.5;
を満たすように、懸濁液を調製し;
ゲル化促進剤としてカチオンを0.1mM以上で添加する;
請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
容器詰め飲料溶液を得る工程より前のいずれかの工程において、ゲル化成分(D)としてキサンタンガムを、
0.03w/v%≦(D)≦0.1w/v%
で容器詰めゼリー飲料に含有されるように添加する、
請求項8又は9に記載の製造方法。

【公開番号】特開2012−24081(P2012−24081A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137831(P2011−137831)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(309007911)サントリーホールディングス株式会社 (307)
【Fターム(参考)】