説明

固形剤形としてのデスモプレッシン薬剤組成物及びその製造方法

本発明は、治療有効成分としてデスモプレッシンを含む固形剤形としての新規薬剤組成物及びその製造方法に関する。本発明は、治療有効成分としてのデスモプレッシン又は薬剤として許容されるその塩と、薬剤として許容される賦形剤、希釈剤若しくは担体又はそれらの混合物とを含む固形剤形としての薬剤組成物に関する。この薬剤組成物は、圧縮粒状体で構成され、前記薬剤組成物の0.05から0.50重量%未満の潤滑剤を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デスモプレッシンを治療有効成分として含む固形剤形としての新規薬剤組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
dDAVPとしても知られるデスモプレッシンは、とりわけ点鼻薬及び錠剤として市販されている医薬品Minirin(登録商標)中の治療有効成分(そのアセタート塩として)である。デスモプレッシンは、子供の一次性夜尿症、すなわちおねしょの治療に主として使用されるが、夜間多尿症及び尿崩症の治療にも承認されている。錠剤が最初に市場に導入されたのは1987年のスウェーデンであった。
【0003】
要するに、錠剤などの固形剤形は、一般に、適切な粒状体を所望の固形剤形に圧縮することによって製造される。粒状体は、固体粒子の混合物として、必要な構成要素で構成される。典型的なかかる粒子は、治療有効成分、様々な賦形剤、崩壊剤、潤滑剤及び結合剤であり、場合によっては例えば香味料、防腐剤及び/又は着色剤と一緒でもよい。市販Minirin(登録商標)錠剤はこの一般的なプロトコルに従って調製され、この錠剤は米国特許第5 047 398号に最初に開示された。その教示は参照により本明細書に組み込まれている。医薬品錠剤製造の包括的な概要については、「Pharmaceutics−The science of dosage form design、pp 647−668;Ed. M.E. Aulton、Churchill Livingstone、Edinburgh、London、Melbourne and New York、1988の「Tableting」(N.A. Armstrong著)を参照されたい。その教示全体は参照により本明細書に組み込まれている。
【0004】
現在市販されており、したがって工業規模で製造されているMinirin(登録商標)錠剤は、治療有効成分デスモプレッシンと、賦形剤としてのジャガイモデンプン及びラクトースと、それぞれ適切な量の結合剤及び潤滑剤とからなる。
【0005】
錠剤を調製するときには、消化管内での崩壊時間、薬物放出プロファイルなどの薬剤特性に対する有害な効果を回避しながら、(例えば、貯蔵及び取扱い中の摩滅を抑制するために)できるだけ硬い錠剤を得ることが一般に望まれる。さらに、錠剤は、歯に損傷を与えずには、又は過剰な努力なしには噛み砕くことができないほど硬くすべきではない。粒状体又は粉末の圧縮によって錠剤が調製される場合、機械の摩耗を最小限に抑え、同時に圧縮操作をできるだけ高速で実施するために、所望の硬度を最適化するためのさらなる注意も必要である。また、圧縮操作においては、圧縮速度の増加は、到達可能な最大硬度を減少させる傾向に本質的にあるという問題を克服しなければならない。
【0006】
典型的な錠剤成形機における圧縮操作においては、粒状体の圧縮から生成された錠剤は、その中で錠剤が穴あけ器によって調製されるダイから排出される。それによって、錠剤とダイ壁の間で生じる摩擦はかなりのものになり得る。かかる摩擦によって、錠剤破断の頻度が増加し、すなわち実質的には錠剤廃棄物が増加することがあり、錠剤成形機の摩耗も一般に増加し得る。したがって、当分野では、圧縮される粉末又は粒状体に潤滑剤を添加することによって上述の摩擦を減少させる慣行が生じた。このため、市販Minirin(登録商標)錠剤には、潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム)が錠剤の0.50重量%含まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
その制御の容易さを含めて、他の上記考慮事項と調和した所望の硬度を得る問題は、デスモプレッシンを含む固形剤形中の潤滑剤量を合目的的に低下させる発見によって、本発明において良好に対処される。本発明を実施することによって、硬度の増加と圧縮速度の増加も達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
より具体的には、本発明は、治療有効成分としてのデスモプレッシン又は薬剤として許容されるその塩と、薬剤として許容される賦形剤、希釈剤若しくは担体又はそれらの混合物とを含む固形剤形としての薬剤組成物に関する。この薬剤組成物は、圧縮粒状体で構成され、前記薬剤組成物の0.05から0.50重量%未満の潤滑剤を含有する。
【0009】
重量%は、結果として生じる最終薬剤組成物重量の百分率をいう。
【0010】
多くの場合において、賦形剤、希釈剤及び担体という用語は互いに区別なく使用することができ、さらには1個の同じ物質を意味することもあり、類似のかかる物質の混合物を意味することもある。これらの用語の適切な使用及び理解は自明であり、薬剤当業者の能力の範囲内に十分ある。
【0011】
好ましい実施態様においては、前記薬剤組成物は、前記薬剤組成物の0.10から0.50重量%未満の量の潤滑剤を含有する。さらにより好ましい実施態様においては、前記薬剤組成物は、前記薬剤組成物の0.15から0.45、好ましくは0.20から0.40、より好ましくは0.25から0.30重量%の量の潤滑剤を含有する。
【0012】
前記圧縮粒状体は、少なくとも100μm、好ましくは100μmから2mm、より好ましくは100から600μmの平均サイズを有することが好ましい。
【0013】
前記粒状体は、その少なくとも50体積%、好ましくは50から90体積%が少なくとも100μm、好ましくは100μmから2mm、より好ましくは100から600μmのサイズを有する粒状体粒子からなるサイズ分布を有することが特に好ましい。現在市販されている錠剤に圧縮された粒状体は、その50体積%を超える部分が、100μm未満のサイズを有する粒状体粒子からなるサイズ分布を有することに留意されたい(図2参照)。本明細書に記載のサイズ分布は、Malvern Instruments Ltd.製Mastersizer 2000を用いた従来のレーザー回折技術によって測定される。レーザー回折技術は、”Particle Size Measurement”, 5th Ed., pp 392−448,vol.1;T. Allen, Chapman & Hall, London, UK, 1997に記載されている。
【0014】
前記潤滑剤は、一般に、ステアリン酸、ステアリン酸塩又はエステル、水素化植物油、酸化マグネシウム、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム及びタルク並びにそれらの混合物からなる群から選択される。前記潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、グリセリルパルミトステアラート及びステアリルフマル酸ナトリウム並びにそれらの混合物から選択されることが好ましい。ステアリン酸マグネシウムが最も好ましい選択肢である。
【0015】
特に好ましい実施態様においては、前記賦形剤、希釈剤及び担体の少なくとも1個は、単糖、二糖、オリゴ糖及び多糖から選択される物質である。前記物質は60から1000μmの平均粒径を有することが好ましい。以下に概説するように、この実施態様は特に有利であり、上記タイプの糖類の少なくとも2種類の混合物がある場合には、そのうち少なくとも1種類はしたがって前記粒径範囲内にある。
【0016】
本発明による薬剤組成物は、崩壊剤、結合剤、香味料、防腐剤、着色剤及びそれらの混合物から選択される少なくとも1個の添加剤を場合によっては含んでもよい。適切と考えられる場合には、他の添加剤も含めることができる。崩壊剤、結合剤(例えば、Kollidon(登録商標)25、BASF)、香味料、防腐剤及び着色剤並びにそれらの適切な混合物、並びに本発明を実施する当業者によって考えられ得る他の任意の従来の添加剤の代表例は、”Handbook of Pharmaceutical Excipients”;Ed. A.H. Kibbe, 3rd Ed., American Pharmaceutical Association, USA and Pharmaceutical Press UK, 2000に記載されている。その教示は参照により本明細書に組み込まれている。やはり本発明の実施に適用可能な例として、結合剤の典型的な量は薬剤組成物の6重量%未満とすることができる。
【0017】
本明細書では、オリゴ糖という表現は、グリコシド結合によって連結された3から10単糖単位からなる任意の分岐度の鎖に関係する。したがって、本明細書では、多糖という表現は、グリコシド結合によって連結された少なくとも11単糖単位からなる任意の分岐度の鎖をいう。天然糖類の合成的に改変された誘導体及び類似体も本発明の実施に使用することができる。
【0018】
従来の製造プロセスによって得られる市販錠剤においては、成形された粒状体に混合されるラクトース粒子(DMV、オランダによって提供されるPharmatose(登録商標)150M)は、(Alpine GmbH、DEによって提供される)エアジェットシーブで測定して約50μmの平均サイズを有する。この粒径では、約170000錠/時間(h)を超える圧縮速度が可能な粒状体は提供されない。実際、本発明の最も好ましい実施態様においては、上述の粒径範囲(下記参照)も含めて、所望の錠剤品質を有し、錠剤成形機上での摩耗を低レベルに維持しながら最高約250000錠/hの圧縮速度が達成可能である。
【0019】
前記平均粒径の上限のさらなる例として、900、800、700及び600μmが挙げられる。好ましい実施態様においては、前記平均粒径は70から500μmである。別の好ましい実施態様においては、前記平均粒径は75から350μmである。さらに別の好ましい実施態様においては、前記平均粒径は100から200μmである。さらに好ましい実施態様においては、前記平均粒径は120から180μmである。本発明の最も好ましい実施態様においては、前記平均粒径は(エアジェットシーブで測定して)140μmである。オランダのDMVによって上市されPharmatose(登録商標)DCL 15として販売されているラクトース粒子は、この最も好ましい平均粒径を有する。他の個々の実施態様では、例えば、すべて上述のDMVによって提供され、それぞれ平均粒径が110、150及び165μmであるPharmatose(登録商標)DCL 11、Pharmatose(登録商標)DCL 21及びPharmatose(登録商標)DCL 40を使用することができる。他の例は、Meggle AG、DEによって提供されるTablettose(登録商標)70、80及び100シリーズである。
【0020】
販売業者によれば、Pharmatose(登録商標)DCL 15の粒径分布は、本質的にすべての粒子が500μm未満のサイズを有し、粒子の約72%は75から350μmのサイズを有するものである。
【0021】
粒径のエアジェットシーブ測定においては、空気は回転スリットからふるいを通して上方に吸い込まれ、その結果ふるいの上で材料が流動する。同時に、負圧がふるいの底部にかけられ、微粒子が回収装置に除去される。サイズ分析及び平均粒径の測定は、単一のふるいを連続的に使用してサイズ分布の細かい方の末端から粒子を除去することによって実施される。このより詳細については、”Particle Size Measurement”, 5th Ed., p 178, vol. 1;T. Allen, Chapman & Hall, London, UK, 1997も参照されたい。したがって、当業者にはサイズ測定自体は従来技術である。
【0022】
したがって、前記物質は二糖、好ましくはラクトース、より好ましくはラクトース−α一水和物であることが好ましい。
【0023】
前記多糖としては、デンプンが好ましく、利用可能な多数のデンプンのうちジャガイモデンプンが最も好ましい。ジャガイモデンプンの例としては、(KMC、DKによって提供される)Pharma M20、Pharma M14及び(Lyckeby Staerkelse AB、SEによって提供される)AmylSolVaetが挙げられる。
【0024】
好ましい実施態様においては、前記二糖と多糖の両方が薬剤組成物中に存在する。その特定の実施態様においては、前記二糖と多糖の重量比は、一般に、100:1から1:100、好ましくは10:1から1:10、より好ましくは2:1から1:2である。
【0025】
前記賦形剤、希釈剤及び担体の全混合量は、通常、薬剤組成物の5から99重量%、好ましくは50から99重量%であり、最高100%の残りは治療有効成分及び潤滑剤であり、場合によっては上述の添加剤が一緒でもよい。後者は好ましくは結合剤である。
【0026】
本発明による固形剤形としての薬剤組成物は、一般に、経口で利用可能な錠剤である。別の非限定的な実施態様として、前記錠剤は、頬及び/又は舌下投与を含めて経口用とすることができる。
【0027】
組成物は、一般に、20から600μg/固形剤形単位の酢酸デスモプレシンを含む。例として、酢酸デスモプレシン100μgを含む典型的な錠剤は、白色の凸状楕円形(6.7×9.5mm)で厚さが3から4mmであり重量が200mgである。別の例として、酢酸デスモプレシン200μgを含む錠剤は、白色円形(直径8mm)で凸状であり、厚さが3から4mmであり重量が200mgである。
【0028】
好ましい実施態様においては、固形剤形の各単位は、硬度が少なくとも5kp(1kp=9.81N)であり、実用的な上限として一般に7kpである。実験の部(図1参照)に示されるように、6kpを超える錠剤硬度が本発明では可能であるが、かかる硬度は従来技術の錠剤では得られなかった。Minirin(登録商標)錠剤の硬度試験は、従来の錠剤硬度試験機を用いて錠剤を粉砕して崩壊させるのに必要な力を測定することによって実施される。
【0029】
したがって、本発明の別の側面は、デスモプレッシン又は薬剤的に許容されるその塩を治療有効成分として含む固形剤形としての薬剤組成物の製造方法に関する。前記方法は、
i)デスモプレッシンと賦形剤、希釈剤若しくは担体又はそれらの混合物を、場合によっては湿潤剤の存在下で、混合する段階と、
ii)生成した混合物を、場合によっては湿潤剤の存在下で、圧縮して前記固形剤形にするのに適切な粒状体の形成に供する段階と、
iii)崩壊剤、結合剤、香味料、防腐剤、着色剤及びそれらの混合物から選択される少なくとも1個の添加剤の存在下で粒状体の前記混合及び/又は形成を場合によっては実施する段階と、
iv)前記粒状体を場合によっては乾燥させる段階と、
v)前記粒状体を圧縮して前記固形剤形にする段階とを含み、
潤滑剤は、生成した薬剤組成物が前記薬剤組成物の0.05から0.50重量%未満の潤滑剤を含有するように導入される。前記潤滑剤は、通常、段階v)の圧縮操作の前に導入され、適切な場合には、好ましくは粒状体形成直後、粒状体乾燥直後に導入される。
【0030】
したがって、本発明による方法は、具体的な成分が特定され含められた後は、従来の薬剤製造装置を用いて実施することができる。圧縮して錠剤するのに適切な粒状体は、一般に、平均粒子サイズが少なくとも約100μmである。サイズが2mmを超える分離した顆粒は、通常、後続の圧縮段階に移されない。
【0031】
非限定的な例として、以下の造粒装置が挙げられる:例えば、GEA/Collette NV、BE(UltimaPro(商標)シリーズ)、Huettlin GmbH、DE(HDGシリーズ)、Diosna Dierks & Soehne GmbH、DE(VACシリーズ)、Fluid Air Inc.、US(Magnaflo(登録商標)シリーズ)及びVector Corp.、US(GMXシリーズ)によって提供される直接加熱流動固体床;例えば、Jaygo Inc.、US(JRB及びNovamixシリーズ)、Paul O. Abbe Inc.、US(Rota−Cone、Rota−U、Rota Blade、Cylindrical Ribbon/Paddle、Plow及びSigma−ブレードシリーズ)、Forberg A/S、NO(Forberg IIシリーズ)、Gemco Inc.、US(D/3 Double Cone、V−Shape及びSlant−Coneシリーズ)、LittlefordDay Inc.、US(Double Arm、Day Nauta及びDaymaxシリーズ)、Patterson−Kelly、Harsco Corp.、US(P−K Solids Processor(登録商標)シリーズ)、Diosna as above(CCS及びVACシリーズ)、Romaco Zanchetta SpA、IT(Roto E、Roto D及びRoto Pシリーズ)及びL.B. Bohle Maschinen und Verfahren GmbH、DE(Granumator GMA及びVagumator VMAシリーズ)によって提供されるパドルシステム、回転システム及び撹拌システムを含めた間接伝導移動固体床。上述の装置は、一般に、調製された顆粒の乾燥も行う。
【0032】
本方法の好ましい実施態様においては、薬剤組成物は、0.10から0.50重量%未満の潤滑剤を含有する。さらにより好ましい実施態様においては、薬剤組成物は0.15から0.45、好ましくは0.20から0.40、より好ましくは0.25から0.30重量%の潤滑剤を含有する。
【0033】
前記生成した混合物は、少なくとも100μm、好ましくは100μmから2mm、より好ましくは100から600μmの平均サイズを有する粒状体の形成に供されることが好ましい。
【0034】
粒状体の前記形成は、前記粒状体の少なくとも50体積%、好ましくは50から90体積%が少なくとも100μm、好ましくは100μmから2mm、より好ましくは100から600μmのサイズを有する粒状体粒子からなるサイズ分布を与えることが特に好ましい。サイズ分布は上述したように測定される。
【0035】
本方法においては、前記潤滑剤は、一般に、それらの混合物を含めて上述の化合物群から選択される。ステアリン酸マグネシウムが最も好ましい潤滑剤である。
【0036】
本発明による方法の特に好ましい実施態様においては、前記賦形剤、希釈剤及び担体の少なくとも1個は、単糖、二糖、オリゴ糖及び多糖から選択される物質である。前記物質は60から1000μmの平均粒径を有することが好ましい。
【0037】
上述したように、前記平均粒径の上限のさらなる例は、900、800、700及び600μmである。前記平均粒径は70から500μmであることが好ましい。別の好ましい実施態様においては、前記平均粒径は75から350μmである。さらに別の好ましい実施態様においては、前記平均粒径は100から200μmである。さらに好ましい実施態様においては、前記平均粒径は120から180μmである。本発明の最も好ましい実施態様においては、前記平均粒径は140μmである。オランダのDMVによって上市されPharmatose(登録商標)DCL 15として販売されているラクトース粒子は、この最も好ましい平均粒径を有する。本発明の方法の他の可能な実施態様は、Pharmatose(登録商標)DCL及びTablettose(登録商標)(前記参照)の上述の変形を含むことができる。
【0038】
したがって、前記物質は二糖、好ましくはラクトース、より好ましくはラクトース−α一水和物であることが好ましい。前記単糖は、D−マンニトール、D−ソルビトール若しくはキシリトール又はそれらの混合物でもよい。
【0039】
前記多糖は、好ましくはデンプン、より好ましくはジャガイモデンプンである。好ましい特定のジャガイモデンプンは上記と同じである。
【0040】
本発明による方法においては、製造された固形剤形は、一般に、経口で利用可能な錠剤である。所望であれば、口粘膜投与用剤形及び/又は組成物とすることもできる。後者の好ましい例は、頬及び/又は舌下投与である。本発明の実施に適切な錠剤圧縮装置の例は、Elizabeth−Hata International、US(HTシリーズ)、Courtoy NV、BE(R090F、R100M、R190FT、R290FT、R292F及びR233シリーズ)、Vector Corp.、US(2000、200及びMagnaシリーズ)、Fette GmbH、DE(Hightech、Medium、Special及びWIPシリーズ)、Manesty、UK(Xpress、Diamond及びValueシリーズ)及びKilian & Co. GmbH、DE(S、T、E、RX及びKTSシリーズ)によって提供されるロータリプレスである。
【0041】
本発明の方法の好ましい実施態様においては、粒状体の前記混合及び形成段階は、かかる「ワンポット」、すなわち複合プロセス用の単一一体型装置で実施される。ワンポット(単一ポット)装置とも呼ばれるかかる一体型装置の例は、Forberg A/S、Norwayによって提供されるFTシリーズである。
【0042】
前記湿潤剤は、使用される場合には、水及び水とアルコール、好ましくはエタノールの混合物から選択されることが好ましい。多数の他の組み合わせも可能ではあるが、水/エタノール1:3混合物が一般に使用される。
【0043】
前記二糖と多糖の両方が混合段階に存在することが好ましい。その場合、前記二糖と多糖の重量比は、一般に、100:1から1:100、好ましくは10:1から1:10、より好ましくは2:1から1:2である。
【0044】
本方法は、前記賦形剤、希釈剤及び担体の全混合量が、薬剤組成物の5から99、好ましくは50から99重量%であるように好ましくは実施される。
【0045】
最も好ましい実施態様においては、酢酸デスモプレシンが使用され、最終的に酢酸デスモプレシン20から600μg/固形剤形単位となるような量の前記賦形剤、希釈剤及び/又は担体と混合される(上記及び実験の例えば錠剤の部参照)。
【0046】
各固形剤形単位を形成する粒状体は、少なくとも5kpの硬度に好ましくは圧縮される。実験の部(図1参照)によれば、6kpを超える錠剤硬度が本発明で可能である。上述したように、かかる硬度は、従来技術の粒状体の圧縮によっては得られない。
【0047】
さらに別の側面においては、本発明は、一般に、また、具体的な実施態様に概説されたように、上記の新規方法によって得られる固形剤形としての薬剤組成物にも関する。
【0048】
本発明をより詳細に実証し説明するために、以下に実施例を示す。実施例は、本発明を実施する方法を限定するものと解釈すべきではない。
【実施例1】
【0049】
dDAVP錠剤の調製
酢酸デスモプレシン(100又は200g;PolyPeptide Laboratories AB、SEによって提供される)、結合剤としてポリビニルピロリドン(PVP)(1.9kg;BASF GmbH、DEによって提供されるKollidon(登録商標)25)及び造粒液体(水/エタノール1:3混合物)を容器中で混合し、透明溶液が得られるまで室温で混合する。ジャガイモデンプン(73.4kg、レーザー回折測定による平均粒径約40〜50μm;Lyckeby Starkelse AB、SEによって提供されるAmylSolVat)を計量し、2mmふるいでふるい分けする。ラクトース(123.7kg、DMV NV、NLによって提供されるDCL 15;この製品の詳細については上記参照)を計量し、単一ポット混合機(FT−350;Forberg A/S、NOによって提供される)にデンプンと一緒に充填し、その中で混合する。次いで、造粒溶液をその粉体混合物上に噴霧し、その後、湿った粒状体を温風(150℃)で乾燥させる。これらはすべて混合しながら行われる。次いで、乾燥粒状体をふるい分け(2mm)し、ダブルコーンミキサーに移送する。次いで、ステアリン酸マグネシウム(0.51kg;Peter Greven NV、NLによって提供される;最終錠剤の0.25重量%)を計量し、ふるい分け(1mm)し、ダブルコーンミキサーに移送して最後の混合を行う。次いで、生成した混合物から、従来の回転錠剤圧縮装置(Kilian S−250)を用いて錠剤を圧縮する。
【0050】
上記タイプの粒状体を用いて同様の圧縮速度において圧縮力の関数として到達可能な錠剤硬度を測定するいくつかの圧縮操作を実施し、ステアリン酸マグネシウム0.50重量%を含む粒状体と比較した。後者の粒状体は、その50体積%を超える部分が、100μm未満のサイズを有する粒状体粒子であるサイズ分布を有した。図1に示す結果によれば、本発明による粒状体は、従来技術の粒状体よりも硬い錠剤を提供できることが明らかである。
【0051】
上記粒状体のサイズ分布を図2に詳細に示す。測定は上記Mastersizerによって実施される。
【0052】
本実施例に示す粒状体の特定の実施態様においては、約250000錠/hの粒状体圧縮速度が、適切な錠剤品質及び低装置摩耗とともに達成可能である。適切な品質の錠剤はきずがなく、縁が欠けていない滑らかな表面を有し、積層(lamination)(いわゆるキャッピング)しにくい。
【0053】
このプロセスは、一般に、上述の外観、寸法及び重量を有し酢酸デスモプレシン100又は200μgを含む錠剤を提供するようになされている。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の到達可能な硬度と錠剤への圧縮速度を従来技術の粒状体のそれと比較して示すグラフである。
【図2】実施例1において調製された粒状体のサイズ分布パターンを詳細に示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効成分としてのデスモプレッシン又は薬剤として許容されるその塩と、薬剤として許容される賦形剤、希釈剤若しくは担体又はそれらの混合物とを含み、圧縮粒状体で構成され、薬剤組成物の0.05から0.50重量%未満の量の潤滑剤を含有する、固形剤形としての薬剤組成物。
【請求項2】
薬剤組成物の0.10から0.50重量%未満の量の潤滑剤を含有する、請求項1に記載の薬剤組成物。
【請求項3】
薬剤組成物の0.15から0.45、好ましくは0.20から0.40、より好ましくは0.25から0.30重量%の量の潤滑剤を含有する、請求項2に記載の薬剤組成物。
【請求項4】
少なくとも100μm、好ましくは100μmから2mm、より好ましくは100から600μmの平均サイズを有する粒状体が圧縮された、請求項1から3のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項5】
前記粒状体が、その少なくとも50体積%、好ましくは50から90体積%が少なくとも100μm、好ましくは100μmから2mm、より好ましくは100から600μmのサイズを有する粒状体粒子からなるサイズ分布を有する、請求項4に記載の薬剤組成物。
【請求項6】
前記潤滑剤が、ステアリン酸、ステアリン酸塩又はエステル、水素化植物油、酸化マグネシウム、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム及びタルク並びにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項7】
前記潤滑剤が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、グリセリルパルミトステアラート及びステアリルフマル酸ナトリウム並びにそれらの混合物から選択される、請求項6に記載の薬剤組成物。
【請求項8】
前記賦形剤、希釈剤及び担体の少なくとも1個が単糖、二糖、オリゴ糖及び多糖から選択される物質である、請求項1から7のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項9】
前記物質が60から1000μmの平均粒径を有する、請求項8に記載の薬剤組成物。
【請求項10】
前記平均粒径が、70から500μm、好ましくは75から350μm、より好ましくは100から200μm、さらにより好ましくは120から180μmの範囲にある、請求項9に記載の薬剤組成物。
【請求項11】
前記物質が二糖、好ましくはラクトース、より好ましくはラクトース−α一水和物である、請求項8から10のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項12】
前記多糖がデンプン、好ましくはジャガイモデンプンである、請求項8から10のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項13】
前記二糖と多糖の両方が存在する、請求項8から12のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項14】
前記二糖と多糖の重量比が100:1から1:100、好ましくは10:1から1:10、より好ましくは2:1から1:2である、請求項13に記載の薬剤組成物。
【請求項15】
前記賦形剤、希釈剤及び担体の全混合量が薬剤組成物の5から99、好ましくは50から99重量%である、請求項1から14のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項16】
前記固形剤形が、場合によっては口粘膜投与に対して、好ましくは頬及び/又は舌下投与に対して適合されている、経口で利用可能な錠剤である、請求項1から15のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項17】
酢酸デスモプレシンを20から600μg/固形剤形単位の量で含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項18】
各固形剤形単位が少なくとも5kpの硬度を有する、請求項1から17のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項19】
デスモプレッシン又は薬剤として許容されるその塩を治療有効成分として含む固形剤形としての薬剤組成物の製造方法であって、
i)デスモプレッシンと賦形剤、希釈剤若しくは担体又はそれらの混合物を、場合によっては湿潤剤の存在下で、混合する;
ii)生成した混合物を、場合によっては湿潤剤の存在下で、圧縮して前記固形剤形にするのに適切な粒状体の形成に供する;
iii)前記混合及び/又は粒状体の形成を場合によっては、崩壊剤、結合剤、香味料、防腐剤、着色剤及びそれらの混合物から選択される少なくとも1個の添加剤の存在下で実施する;
iv)前記粒状体を場合によっては乾燥させる;
v)前記粒状体を圧縮して前記固形剤形にする
段階とを含み、生成した薬剤組成物が前記薬剤組成物の0.05から0.50重量%未満の量で潤滑剤を含有するように、潤滑剤が導入される前記製造方法。
【請求項20】
薬剤組成物が、前記薬剤組成物の0.10から0.50重量%未満の量で潤滑剤を含有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
薬剤組成物が、前記薬剤組成物の0.15から0.45、好ましくは0.20から0.40、より好ましくは0.25から0.30重量%の量で潤滑剤を含有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記生成した混合物が、少なくとも100μm、好ましくは100μmから2mm、より好ましくは100から600μmの平均サイズを有する粒状体の形成に供される、請求項19から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
粒状体の前記形成が、前記粒状体の少なくとも50体積%、好ましくは50から90体積%が少なくとも100μm、好ましくは100μmから2mm、より好ましくは100から600μmのサイズを有する粒状体粒子からなるサイズ分布を与える、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記潤滑剤が、ステアリン酸、ステアリン酸塩又はエステル、水素化植物油、酸化マグネシウム、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム及びタルク並びにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項19から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記潤滑剤が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、グリセリルパルミトステアラート、ステアリルフマル酸ナトリウム及びステアリン酸亜鉛並びにそれらの混合物から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記賦形剤、希釈剤及び担体の少なくとも1個が単糖、二糖、オリゴ糖及び多糖から選択される物質である、請求項19から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記物質が60から1000μmの平均粒径を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記平均粒径が、70から500μm、好ましくは75から350μm、より好ましくは100から200μm、さらにより好ましくは120から180μmの範囲にある、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記物質が二糖、好ましくはラクトース、より好ましくはラクトース−α一水和物である、請求項26から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記多糖がデンプン、好ましくはジャガイモデンプンである、請求項26から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記固形剤形が、場合によっては口粘膜投与に対して、好ましくは頬及び/又は舌下投与に対して適合されている、経口で利用可能な錠剤である、請求項19から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記混合及び粒状体の形成の段階が、かかる複合プロセス用の単一の一体型装置で実施される、請求項19から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記湿潤剤が水及び水とアルコール、好ましくはエタノール、の混合物から選択される、請求項19から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記二糖と多糖の両方が混合段階において存在する、請求項19から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記二糖と多糖の重量比が100:1から1:100、好ましくは10:1から1:10、より好ましくは2:1から1:2である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記賦形剤、希釈剤及び担体の全混合量が薬剤組成物の5から99、好ましくは50から99重量%である、請求項19から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
酢酸デスモプレシンが使用され、酢酸デスモプレシン20から600μg/固形剤形単位となる量の、賦形剤、希釈剤又は担体と混合される、請求項19から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
各固形剤形単位が少なくとも5kpの硬度に圧縮される、請求項19から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
請求項19から38のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる、固形剤形としての薬剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−517762(P2007−517762A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520833(P2006−520833)
【出願日】平成16年7月19日(2004.7.19)
【国際出願番号】PCT/EP2004/051538
【国際公開番号】WO2005/011640
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(500297535)フェリング ベスローテン フェンノートシャップ (36)
【Fターム(参考)】