説明

固形化粧料の製造装置

【課題】互いに形状の異なる複数の固形化粧料を一括して製造することができるとともに、これらの固形化粧料の密度を均一にすることができる固形化粧料の製造装置の提供
【解決手段】製造装置1は、固形化粧料の形状を規定する型部材2を備える。型部材2は、第1の充填孔6と、第1の充填孔6よりも断面積が小さい第2の充填孔7とを上面に有する。第2の充填孔7の深さは、第1の充填孔6の深さよりも深く設定されている。製造装置1は、第1の充填孔6および第2の充填孔7に充填された粉末状の化粧料にプレス処理を施して打型することによって、固形化粧料を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形化粧料の製造装置に関し、特に、粉末状の化粧料にプレス処理を施して打型することによって、固形化粧料を製造する固形化粧料の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粉末状の化粧料にプレス処理を施して打型することによって製造された複数色の固形化粧料を組み合わせて製造されるファンデーション、フェイスパウダー、アイシャドウなどの多色固形化粧料が知られている。例えば、特許文献1には、断面円形状の複数の挿入孔を有する雌型と、これらの挿入孔に挿入される円柱状の複数の棒状体を有する雄型とを用いることによって、複数の固形化粧料を製造する方法が開示されている。具体的には、雌型の挿入孔に粉末状の化粧料を充填した後、雌型の挿入孔に雄型の棒状体を嵌め合わせることによって、化粧料にプレス処理を施して打型し、円柱状の複数の固形化粧料を製造している。なお、雌型に形成された複数の挿入孔の形状や、雄型に設けられた複数の棒状体の形状は、全て同一であり、この雌雄型にて製造される円柱状の固形化粧料の形状も全て同一である。
【0003】
そして、この雌雄型にて製造された固形化粧料と、この雌雄型とは形状の異なる他の雌雄型にて製造された固形化粧料とを組み合わせて化粧皿に配置した後、これらの固形化粧料に再度のプレス処理を施すことによって、多色固形化粧料を製造している。ここで、それぞれの雌雄型によって製造される固形化粧料は、互いに異なる色を有しているので、多色固形化粧料の表面には、アイキャッチ効果の高い色模様が形成されることになる。
【0004】
ところで、特許文献1に記載された方法では、互いに形状の異なる複数の雌雄型を用いることによって、互いに形状の異なる複数の固形化粧料を製造しているので、固形化粧料の形状ごとに雌雄型を用意しなければならないという問題がある。これに対して、互いに形状の異なる複数の固形化粧料を一括して製造する場合には、例えば、互いに断面形状の異なる複数の孔を雌型に形成するとともに、この雌型と対応する雄型を用いることによって、複数の固形化粧料を製造する方法が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−75789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、互いに断面形状の異なる複数の孔に粉末状の化粧料を充填する場合には、断面積の大きい孔に対しては、化粧料は入り込み易く、充填された化粧料の密度は高くなるものの、断面積の小さい孔に対しては、化粧料は入り込み難く、充填された化粧料の密度は低くなるという問題がある。したがって、それぞれの孔の深さを同一に設定し、それぞれの孔にて製造される固形化粧料の厚さを同一に設定した場合には、固形化粧料の密度を均一にすることができないので、固形化粧料の硬さにばらつきが生じたり、多色固形化粧料の表面に形成された色模様に乱れが生じたりするという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、互いに形状の異なる複数の固形化粧料を一括して製造することができるとともに、これらの固形化粧料の密度を均一にすることができる固形化粧料の製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の固形化粧料の製造装置は、粉末状の化粧料にプレス処理を施して打型することによって、固形化粧料を製造する固形化粧料の製造装置であって、第1の充填孔と、第1の充填孔よりも断面積が小さく、第1の充填孔よりも深さが深い第2の充填孔とを上面に有する型部材を備え、第1の充填孔および第2の充填孔に充填された化粧料にプレス処理を施して打型することによって、固形化粧料を製造することを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、製造装置は、第1の充填孔と、第1の充填孔よりも断面積が小さい第2の充填孔とを有する型部材を備えるので、互いに形状の異なる固形化粧料を一括して製造することができる。また、第2の充填孔は、第1の充填孔よりも断面積が小さいので、化粧料が入り込み難く、充填された化粧料の密度は低くなるものの、第1の充填孔よりも深さが深いので、第2の充填孔の深さを第1の充填孔の深さと同一に設定した場合と比較して、第2の充填孔に充填される化粧料の体積を大きくすることができる。したがって、第1の充填孔および第2の充填孔に充填された化粧料にプレス処理を施して打型することによって、第1の充填孔にて製造された固形化粧料の密度と、第2の充填孔にて製造された固形化粧料の密度とを均一にすることができる。
【0010】
本発明では、型部材は、上面から下面に貫通する第1の貫通孔と、上面から下面に貫通するとともに、第1の貫通孔よりも断面積が小さい第2の貫通孔とを有する雌型と、第1の貫通孔に雌型の下面側から摺動自在に挿入されるとともに、第1の貫通孔と嵌合することによって、第1の充填孔を形成する第1の棒状部材と、第2の貫通孔に雌型の下面側から摺動自在に挿入されるとともに、第2の貫通孔と嵌合することによって、第2の充填孔を形成する第2の棒状部材とを備え、製造装置は、第1の棒状部材および第2の棒状部材を昇降させる昇降機構を備えることが好ましい。
【0011】
このような構成によれば、型部材は、第1の貫通孔および第1の棒状部材にて第1の充填孔を形成し、第2の貫通孔および第2の棒状部材にて第2の充填孔を形成しているので、第1の棒状部材における上面の位置と、第2の棒状部材における上面の位置とを調整することによって、第1の充填孔の深さと、第2の充填孔の深さとを調整することができる。また、第1の棒状部材と、第2の棒状部材とを昇降機構にて上昇させることによって、固形化粧料を雌型から押し出すことができるので、固形化粧料を容易に雌型から取り出すことができる。
【0012】
本発明では、第1の貫通孔と、第2の貫通孔とを上面側から閉塞する閉塞部材を備え、第1の貫通孔および第2の貫通孔を閉塞部材にて閉塞し、第1の棒状部材および第2の棒状部材を昇降機構にて上昇させることによって、第1の充填孔および第2の充填孔に充填された化粧料にプレス処理を施して打型することが好ましい。
【0013】
ここで、本発明において、例えば、第1の充填孔および第2の充填孔にて製造される固形化粧料の厚さを同一に設定し、型部材の上面側からプレス板などを下降させることによって、第1の充填孔および第2の充填孔に充填された化粧料にプレス処理を施して打型する場合を検討する。この場合には、第2の充填孔は、第1の充填孔よりも深さが深いので、第2の充填孔に充填された化粧料を打型するプレス板は、第1の充填孔に充填された化粧料を打型するプレス板よりも深くまで下降させなければならない。したがって、この場合には、プレス処理のための構成は複雑になる。
これに対して、前述した構成によれば、第1の貫通孔および第2の貫通孔を閉塞部材にて閉塞し、第1の棒状部材および第2の棒状部材を昇降機構にて上昇させることによって、第1の充填孔および第2の充填孔に充填された化粧料にプレス処理を施して打型するので、プレス処理のための構成を簡素にすることができる。
【0014】
本発明では、型部材は、雌型の下方側に設けられ、第1の棒状部材を支持する第1の支持部材と、第1の支持部材の下方側に設けられ、第2の棒状部材を支持する第2の支持部材と、雌型と、第1の支持部材との間に設けられた第1のバネ部材と、第1の支持部材と、第2の支持部材との間に設けられ、第1のバネ部材よりも弾性率が小さい第2のバネ部材とを備え、昇降機構は、第2の支持部材を昇降させることによって、第1の棒状部材および第2の棒状部材を昇降させることが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、昇降機構にて第2の支持部材を上昇させた場合には、まず、第2のバネ部材が収縮して第2の支持部材が上昇し、次に、第1のバネ部材が収縮して第2の支持部材の上昇に伴って第1の支持部材も上昇することになる。また、昇降機構にて第2の支持部材を下降させた場合には、まず、第1のバネ部材が伸長して第2の支持部材の下降に伴って第1の支持部材も下降し、次に、第2のバネ部材が伸長して第2の支持部材が更に下降することになる。したがって、昇降機構は、簡素な構成で第1の棒状部材および第2の棒状部材を昇降させることができる。
【0016】
本発明では、型部材は、第2の支持部材を昇降機構にて下降させたときの第1の支持部材と、第2の支持部材との間隔を調整可能に構成されることが好ましい。
【0017】
このような構成によれば、第2の支持部材を昇降機構にて下降させたときの第1の支持部材と、第2の支持部材との間隔を調整することができるので、第2の棒状部材の長さや、第2の支持部材を昇降機構にて下降させたときの第2の棒状部材における上面の位置を調整することなく、第2の充填孔の深さを調整することができる。
【0018】
本発明では、型部材は、第1の棒状部材および第2の棒状部材を昇降機構にて上昇させたときに、雌型の上面と、第1の棒状部材の上面と、第2の棒状部材の上面とが面一となるように構成されることが好ましい。
【0019】
このような構成によれば、第1の棒状部材と、第2の棒状部材とを昇降機構にて上昇させることによって、固形化粧料を雌型から押し出す際に、雌型の上面と、第1の棒状部材の上面と、第2の棒状部材の上面とが面一となるので、固形化粧料を更に容易に雌型から取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る固形化粧料の製造装置を示す模式図
【図2】第1の充填孔および第2の充填孔に化粧料を充填している状態を示す図
【図3】第1の貫通孔および第2の貫通孔をプレス板にて閉塞した状態を示す図
【図4】第2の支持部材を昇降機構にて上昇させた状態を示す図
【図5】第2の支持部材を昇降機構にて更に上昇させた状態を示す図
【図6】プレス板を上昇させた状態を示す図
【図7】第2の支持部材を昇降機構にて再上昇させた状態を示す図
【図8】固形化粧料を製造した後の型部材の状態を示す図
【図9】第1の棒状部材および第2の棒状部材を下降させた状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る固形化粧料の製造装置を示す模式図である。なお、図1は、製造装置を側面から見た図であり、以下の図面においても同様である。
製造装置1は、粉末状の化粧料にプレス処理を施して打型することによって、ファンデーション、フェイスパウダー、アイシャドウなどの固形化粧料を製造する装置である。この製造装置1は、図1に示すように、固形化粧料の形状を規定する型部材2と、型部材2の一部を昇降させる昇降機構3とを備える。ここで、図1は、型部材2の一部を昇降機構3にて下降させたときの状態(以下、初期状態とする)を示す図である。
【0022】
型部材2は、型部材2の上部に位置する雌型4と、型部材2の下部に位置する雄型5とを備える。
雌型4は、上面から下面に貫通する断面円形状の第1の貫通孔41と、上面から下面に貫通するとともに、第1の貫通孔41よりも断面積が小さい断面円形状の第2の貫通孔42とを有する矩形板状の部材である。
雄型5は、第1の貫通孔41に雌型4の下面側から摺動自在に挿入される第1の棒状部材51と、第2の貫通孔42に雌型4の下面側から摺動自在に挿入される第2の棒状部材52と、雌型4の下方側に設けられ、第1の棒状部材51を支持する第1の支持部材53と、第1の支持部材53の下方側に設けられ、第2の棒状部材52を支持する第2の支持部材54とを主体として構成されている。
【0023】
第1の棒状部材51は、第1の貫通孔41と嵌合することによって、滑合状態となる円柱状に形成されている。この第1の棒状部材51は、第1の貫通孔41と嵌合することによって、第1の充填孔6を形成している。
第2の棒状部材52は、第2の貫通孔42と嵌合することによって、滑合状態となる円柱状に形成されている。この第2の棒状部材52は、第2の貫通孔42と嵌合することによって、第2の充填孔7を形成している。したがって、第2の充填孔7の断面積は、第1の充填孔6の断面積よりも小さい。
【0024】
ここで、初期状態において、第2の棒状部材52の上面は、第1の棒状部材51の上面よりも低くなるように設定されている。すなわち、第2の充填孔7の深さは、第1の充填孔6の深さよりも深く設定されている。
なお、本実施形態では、第1の充填孔6および第2の充填孔7は、全体として円柱状に形成されているが、これ以外の形状に形成されていてもよい。要するに、第1の充填孔および第2の充填孔の形状は、製造すべき固形化粧料の形状に応じて形成されていればよい。また、本実施形態では、型部材2は、第1の充填孔6および第2の充填孔7の2つの充填孔を有しているが、3つ以上の充填孔を有していてもよい。
【0025】
第1の支持部材53は、第2の棒状部材52を内部に挿通させるために上面から下面に貫通して形成された孔53Aと、左右の両端部に上面から下面に貫通して形成された2つの孔53Bとを有する矩形板状の部材である。
第2の支持部材54は、矩形板状の部材である。この第2の支持部材54の下面には、昇降機構3が取り付けられている。すなわち、昇降機構3は、第2の支持部材54を昇降させる。
【0026】
また、型部材2は、雌型4と、第1の支持部材53との間に設けられた2つの第1のバネ部材21と、第1の支持部材53と、第2の支持部材54との間に設けられ、第1のバネ部材21よりも弾性率が小さい2つの第2のバネ部材22とを備える。
第2のバネ部材22は、第1の支持部材53の孔53Bに挿通されるとともに、下端を第2の支持部材54に固定されたネジ23に取り付けられている。また、ネジ23の上端には、円環状のゴム部材24が取り付けられている。そして、このゴム部材24の取り付け位置をネジ23の軸方向に沿って移動させることによって、第1の支持部材53と、第2の支持部材54との間隔を調整することができる。すなわち、型部材2は、第2の支持部材54を昇降機構3にて下降させたときの第1の支持部材53と、第2の支持部材54との間隔を調整可能に構成されている。
以下、この製造装置1を用いることによって、固形化粧料を製造する方法について説明する。
【0027】
図2は、第1の充填孔6および第2の充填孔7に化粧料を充填している状態を示す図である。
製造装置1は、図2に示すように、第1の充填孔6および第2の充填孔7に化粧料を充填するホッパー8を備え、このホッパー8から粉末状の化粧料を落下させることによって、第1の充填孔6および第2の充填孔7に化粧料を充填する。以下、第1の充填孔6に充填された化粧料をA1とし、第2の充填孔7に充填された化粧料をA2とする。
【0028】
図3は、第1の貫通孔41および第2の貫通孔42をプレス板にて閉塞した状態を示す図である。
製造装置1は、図3に示すように、第1の貫通孔41と、第2の貫通孔42とを上面側から閉塞する閉塞部材としてのプレス板9を備え、第1の充填孔6および第2の充填孔7に化粧料A1,A2を充填した後、プレス板9を下降させることによって(図3矢印)、第1の貫通孔41および第2の貫通孔42をプレス板9にて閉塞する。このプレス板9は、矩形板状の部材であり、第1の貫通孔41および第2の貫通孔42の両方を同時に閉塞する。
【0029】
なお、ホッパー8およびプレス板9は、雌型4の上面に沿って回転するターンテーブル(図示略)に取り付けられ、このターンテーブルを回転させることによって、第1の充填孔6および第2の充填孔7に対して位置決めされる。すなわち、このプレス板9は、前述したホッパー8と入れ替わるようにして、第1の充填孔6および第2の充填孔7の上方に配置される。また、このプレス板9は、図示しないアクチュエータによって、第1の充填孔6および第2の充填孔7に対して昇降自在に構成されている。
【0030】
図4は、第2の支持部材54を昇降機構3にて上昇させた状態を示す図である。
第1の貫通孔41および第2の貫通孔42をプレス板9にて閉塞した後、図4に示すように、第2の支持部材54を昇降機構3にて上昇させることによって(図4矢印)、第1の充填孔6および第2の充填孔7に充填された化粧料A1,A2にプレス処理を施して打型する。具体的には、第2のバネ部材22は、第1のバネ部材21よりも弾性率が小さいので、昇降機構3にて第2の支持部材54を上昇させると、まず、第2のバネ部材22が収縮し、第2の支持部材54が上昇する。これによって、第2の棒状部材52が上昇し、第2の棒状部材52の上面と、プレス板9の下面とで挟み込むようにして、化粧料A2にプレス処理を施して打型する。
【0031】
図5は、第2の支持部材54を昇降機構3にて更に上昇させた状態を示す図である。
第2の支持部材54を上昇させた後、図5に示すように、第2の支持部材54を昇降機構3にて更に上昇させることによって(図5矢印)、第1のバネ部材21が収縮し、第2の支持部材54の上昇に伴って第1の支持部材53も上昇する。これによって、第1の棒状部材51が上昇し、第1の棒状部材51の上面と、プレス板9の下面とで挟み込むようにして、化粧料A1にプレス処理を施して打型する。また、第2の棒状部材52が更に上昇し、第2の棒状部材52の上面と、プレス板9の下面とで挟み込むようにして、化粧料A2に更にプレス処理を施して打型する。
このように、第1の支持部材53および第2の支持部材54を昇降機構3にて上昇させることによって、第1の棒状部材51および第2の棒状部材52を上昇させることができる。
【0032】
図6は、プレス板9を上昇させた状態を示す図である。
化粧料A1,A2にプレス処理を施して打型した後、図6に示すように、プレス板9を上昇させることによって(図6矢印)、固形化粧料A1,A2を型部材2の上面に露出させる。
【0033】
図7は、第2の支持部材54を昇降機構3にて再上昇させた状態を示す図である。
プレス板9を上昇させた後、図7に示すように、第2の支持部材54を昇降機構3にて再上昇させることによって(図7矢印)、第1の充填孔6および第2の充填孔7にて製造された固形化粧料A1,A2を雌型4から押し出す。
ここで、型部材2は、第1の棒状部材51および第2の棒状部材52を昇降機構3にて上昇させたときに、雌型4の上面と、第1の棒状部材51の上面と、第2の棒状部材52の上面とが面一となるように構成されている。
このように、製造装置1を用いることによって、固形化粧料A1,A2を製造することができる。
【0034】
図8は、固形化粧料A1,A2を製造した後の型部材2の状態を示す図である。
製造装置1は、図8に示すように、第1の棒状部材51を押し下げるための円柱状の押下部材101と、第2の棒状部材52を押し下げるための円柱状の押下部材102とを備える。
なお、押下部材101,102は、前述したターンテーブルに取り付けられ、このターンテーブルを回転させることによって、第1の棒状部材51および第2の棒状部材52に対して位置決めされる。また、これらの押下部材101,102は、図示しないアクチュエータによって、第1の棒状部材51および第2の棒状部材52に対して昇降自在に構成されている。
【0035】
製造装置1は、固形化粧料A1,A2を製造した後、押下部材101,102と、昇降機構3とを用いて、第1の棒状部材51および第2の棒状部材52を下降させる。具体的には、昇降機構3にて第2の支持部材54を下降させると同時に(図8白抜き矢印)、押下部材101を下降させて第1の棒状部材51を押し下げ(図8網掛け左側矢印)、押下部材102を下降させて第2の棒状部材52を押し下げる(図8網掛け右側矢印)。
【0036】
ここで、第2のバネ部材22は、第1のバネ部材21よりも弾性率が小さいので、昇降機構3にて第2の支持部材54を下降させると、まず、第1のバネ部材21が伸長し、第2の支持部材54の下降に伴って第1の支持部材53も下降する。第1の支持部材53および第2の支持部材54が下降した後、第2の支持部材54を昇降機構3にて更に下降させることによって、第2のバネ部材22が伸長し、第2の支持部材54が更に下降する。この際、押下部材101,102は、第1の棒状部材51および第2の棒状部材52を押し下げることによって、第1の支持部材53および第2の支持部材54の下降を補助している。
【0037】
図9は、第1の棒状部材51および第2の棒状部材52を下降させた状態を示す図である。
製造装置1は、押下部材101,102と、昇降機構3とを用いて、第1の棒状部材51および第2の棒状部材52を下降させることによって、図9に示すように、型部材2を初期状態とすることができる。
そして、製造装置1は、押下部材101,102を上昇させた後、ターンテーブルを回転させることによって、押下部材101,102と入れ替わるようにして、第1の充填孔6および第2の充填孔7の上方にホッパー8を配置することで新たに固形化粧料を製造することができる。
【0038】
このような本実施形態によれば、以下の作用・効果を奏することができる。
(1)製造装置1は、第1の充填孔6と、第1の充填孔6よりも断面積が小さい第2の充填孔7とを有する型部材2を備えるので、互いに形状の異なる固形化粧料A1,A2を一括して製造することができる。
(2)第2の充填孔7は、第1の充填孔6よりも断面積が小さいので、化粧料が入り込み難く、充填された化粧料の密度は低くなるものの、第1の充填孔6よりも深さが深いので、第2の充填孔7の深さを第1の充填孔6の深さと同一に設定した場合と比較して、第2の充填孔7に充填される化粧料の体積を大きくすることができる。したがって、第1の充填孔6および第2の充填孔7に充填された化粧料にプレス処理を施して打型することによって、第1の充填孔6にて製造された固形化粧料A1の密度と、第2の充填孔7にて製造された固形化粧料A2の密度とを均一にすることができる。
【0039】
(3)型部材2は、第1の貫通孔41および第1の棒状部材51にて第1の充填孔6を形成し、第2の貫通孔42および第2の棒状部材52にて第2の充填孔7を形成しているので、第1の棒状部材51における上面の位置と、第2の棒状部材52における上面の位置とを調整することによって、第1の充填孔6の深さと、第2の充填孔7の深さとを調整することができる。
(4)第1の棒状部材51と、第2の棒状部材52とを昇降機構3にて上昇させることによって、固形化粧料A1,A2を雌型4から押し出すことができるので、固形化粧料A1,A2を容易に雌型4から取り出すことができる。
【0040】
(5)第1の貫通孔41および第2の貫通孔42をプレス板9にて閉塞し、第1の棒状部材51および第2の棒状部材52を昇降機構3にて上昇させることによって、第1の充填孔6および第2の充填孔7に充填された化粧料A1,A2にプレス処理を施して打型するので、プレス処理のための構成を簡素にすることができる。
(6)型部材2は、第1の支持部材53と、第2の支持部材54と、第1のバネ部材21と、第2のバネ部材22とを備え、第2のバネ部材22は、第1のバネ部材21よりも弾性率が小さいので、昇降機構3は、簡素な構成で第1の棒状部材51および第2の棒状部材52を昇降させることができる。
【0041】
(7)第2の支持部材54を昇降機構3にて下降させたときの第1の支持部材53と、第2の支持部材54との間隔を調整することができるので、第2の棒状部材52の長さや、第2の支持部材54を昇降機構3にて下降させたときの第2の棒状部材52における上面の位置を調整することなく、第2の充填孔7の深さを調整することができる。
(8)第1の棒状部材51と、第2の棒状部材52とを昇降機構3にて上昇させることによって、固形化粧料A1,A2を雌型4から押し出す際に、雌型4の上面と、第1の棒状部材51の上面と、第2の棒状部材52の上面とが面一となるので、固形化粧料A1,A2を更に容易に雌型4から取り出すことができる。
【0042】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、型部材2は、雌型4と、雄型5とを備え、第1の貫通孔41および第1の棒状部材51にて第1の充填孔6を形成し、第2の貫通孔42および第2の棒状部材52にて第2の充填孔7を形成していた。これに対して、型部材は、1つの部材であってもよく、この場合には、製造装置は、昇降機構を備えていなくてもよい。要するに、型部材は、第1の充填孔と、第2の充填孔とを上面に有していればよい。
【0043】
前記実施形態では、型部材2は、第1の支持部材53と、第2の支持部材54と、第1のバネ部材21と、第2のバネ部材22とを備え、昇降機構3は、第2の支持部材54を昇降させることによって、第1の棒状部材51および第2の棒状部材52を昇降させていた。これに対して、昇降機構は、第1の棒状部材および第2の棒状部材のそれぞれを単独で昇降させる機構であってもよい。要するに、昇降機構は、第1の棒状部材および第2の棒状部材を昇降させる機構であればよい。
【0044】
前記実施形態では、製造装置1は、第1の貫通孔41および第2の貫通孔42をプレス板9にて閉塞し、第1の棒状部材51および第2の棒状部材52を昇降機構3にて上昇させることによって、第1の充填孔6および第2の充填孔7に充填された化粧料A1,A2にプレス処理を施して打型していた。これに対して、例えば、製造装置は、型部材の上面側からプレス板などを下降させることによって、第1の充填孔および第2の充填孔に充填された化粧料にプレス処理を施して打型してもよい。要するに、製造装置は、第1の充填孔および第2の充填孔に充填された化粧料にプレス処理を施して打型することによって、固形化粧料を製造すればよい。
【0045】
前記実施形態では、閉塞部材としてのプレス板9は、矩形板状の部材であり、第1の貫通孔41および第2の貫通孔42の両方を同時に閉塞していた。これに対して、閉塞部材は、第1の貫通孔と、第2の貫通孔とを別々の部材によって閉塞してもよい。また、閉塞部材は、矩形板状の部材に限らず、どのような形状の部材であってもよい。要するに、閉塞部材は、第1の貫通孔と、第2の貫通孔とを上面側から閉塞することができる部材であればよい。
【0046】
前記実施形態では、型部材2は、ネジ23と、ゴム部材24とによって、第2の支持部材54を昇降機構3にて下降させたときの第1の支持部材53と、第2の支持部材54との間隔を調整可能に構成されていたが、これ以外の構造によって、第1の支持部材53と、第2の支持部材54との間隔を調整可能に構成されていてもよい。例えば、第1の支持部材にネジ穴を形成し、このネジ穴にネジを螺合することによって、第1の支持部材と、第2の支持部材との間隔を調整可能に構成してもよい。なお、第1の支持部材53と、第2の支持部材54との間隔は、調整可能に構成されていなくてもよい。
【0047】
前記実施形態では、型部材2は、第1の棒状部材51および第2の棒状部材52を昇降機構3にて上昇させたときに、雌型4の上面と、第1の棒状部材51の上面と、第2の棒状部材52の上面とが面一となるように構成されていたが、面一となるように構成されていなくてもよい。
前記実施形態では、型部材2は、第1のバネ部材21と、第1のバネ部材21よりも弾性率が小さい第2のバネ部材22とを備えていたが、第2のバネ部材22の弾性率は、第1のバネ部材21の弾性率と同一であってもよく、第1のバネ部材21の弾性率よりも大きくてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 製造装置
2 型部材
3 昇降機構
4 雌型
5 雄型
6 第1の充填孔
7 第2の充填孔
8 ホッパー
9 プレス板
21 第1のバネ部材
22 第2のバネ部材
23 ネジ
24 ゴム部材
41 第1の貫通孔
42 第2の貫通孔
51 第1の棒状部材
52 第2の棒状部材
53 第1の支持部材
53A 孔
53B 孔
54 第2の支持部材
101,102 押下部材
A1,A2 化粧料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状の化粧料にプレス処理を施して打型することによって、固形化粧料を製造する固形化粧料の製造装置であって、
第1の充填孔と、前記第1の充填孔よりも断面積が小さく、前記第1の充填孔よりも深さが深い第2の充填孔とを上面に有する型部材を備え、
前記第1の充填孔および前記第2の充填孔に充填された前記化粧料にプレス処理を施して打型することによって、前記固形化粧料を製造することを特徴とする固形化粧料の製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載された固形化粧料の製造装置において、
前記型部材は、
上面から下面に貫通する第1の貫通孔と、上面から下面に貫通するとともに、前記第1の貫通孔よりも断面積が小さい第2の貫通孔とを有する雌型と、
前記第1の貫通孔に前記雌型の下面側から摺動自在に挿入されるとともに、前記第1の貫通孔と嵌合することによって、前記第1の充填孔を形成する第1の棒状部材と、
前記第2の貫通孔に前記雌型の下面側から摺動自在に挿入されるとともに、前記第2の貫通孔と嵌合することによって、前記第2の充填孔を形成する第2の棒状部材とを備え、
前記製造装置は、
前記第1の棒状部材および前記第2の棒状部材を昇降させる昇降機構を備えることを特徴とする固形化粧料の製造装置。
【請求項3】
請求項2に記載された固形化粧料の製造装置において、
前記第1の貫通孔と、前記第2の貫通孔とを上面側から閉塞する閉塞部材を備え、
前記第1の貫通孔および前記第2の貫通孔を前記閉塞部材にて閉塞し、前記第1の棒状部材および前記第2の棒状部材を前記昇降機構にて上昇させることによって、前記第1の充填孔および前記第2の充填孔に充填された前記化粧料にプレス処理を施して打型することを特徴とする固形化粧料の製造装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載された固形化粧料の製造装置において、
前記型部材は、
前記雌型の下方側に設けられ、前記第1の棒状部材を支持する第1の支持部材と、
前記第1の支持部材の下方側に設けられ、前記第2の棒状部材を支持する第2の支持部材と、
前記雌型と、前記第1の支持部材との間に設けられた第1のバネ部材と、
前記第1の支持部材と、前記第2の支持部材との間に設けられ、前記第1のバネ部材よりも弾性率が小さい第2のバネ部材とを備え、
前記昇降機構は、
前記第2の支持部材を昇降させることによって、前記第1の棒状部材および前記第2の棒状部材を昇降させることを特徴とする固形化粧料の製造装置。
【請求項5】
請求項4に記載された固形化粧料の製造装置において、
前記型部材は、
前記第2の支持部材を前記昇降機構にて下降させたときの前記第1の支持部材と、前記第2の支持部材との間隔を調整可能に構成されることを特徴とする固形化粧料の製造装置。
【請求項6】
請求項2から請求項5のいずれかに記載された固形化粧料の製造装置において、
前記型部材は、
前記第1の棒状部材および前記第2の棒状部材を前記昇降機構にて上昇させたときに、前記雌型の上面と、前記第1の棒状部材の上面と、前記第2の棒状部材の上面とが面一となるように構成されることを特徴とする固形化粧料の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−91605(P2013−91605A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232781(P2011−232781)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000158781)紀伊産業株式会社 (327)
【Fターム(参考)】