説明

固形化粧料

【課題】表面が均一な金属光沢のような光輝感を有する固形化粧料を提供すること。
【解決手段】成形後の固形化粧料の表面に、平均粒径が1.0〜10.0μm、厚みが1.0〜3.0μmの光輝性粉体を付着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形化粧料に関する。さらに詳しくは、細かい光輝性粉体を、固形化粧料の表面に付着させ、表面が均一で金属光沢のような光輝感を有する固形化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、輝きのある外観を有する化粧料が好まれ、固形化粧料にパール剤やラメ剤といった光輝性を有する紛体が化粧料中に配合されることが多い。また、従来使用されていたものより平均粒子径が大きい光輝性粉体を化粧料表面に付着することで、外観に高い装飾性を与え煌びやかな雰囲気を演出することができるとともに、使用による化粧効果を期待させ、商品価値を上げる化粧料が提案されている。(例えば、特許文献1)
【0003】
しかし、平均粒子径が大きい光輝性粉体が付着した化粧料は、光輝性粉体が固形化粧料表面に均一に付着せず点在して、固形化粧料表面に上品で均一な金属光沢を持たせることはできなかった。また、表面が均一に見えるように光輝性粉体を付着させると、使用する光輝性粉体の量が増え、皮膚に塗布するとザラザラして感触が悪くなる問題があった。
【特許文献1】特開2003−231611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、表面が均一な金属光沢のような光輝感を有する固形化粧料を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、前記課題を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、成形後の固形化粧料の表面に、細かい光輝性粉体を付着させることにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、成形後の固形化粧料の表面に、平均粒径が1.0〜10.0μm、厚みが0.1〜3.0μmの光輝性紛体が付着していることを特徴とする固形化粧料である。
【0007】
また本発明は、光輝性紛体が、ガラス末、雲母、合成金雲母、アルミナ、シリカからなる群より選ばれる基板の上に、酸化鉄、二酸化チタンなる群から選ばれる1種または2種以上の被覆物で層状、或いは島状に被覆された粉末である前記固形化粧料である。
【0008】
また本発明は、前記光輝性紛体が疎水化処理されている前記固形化粧料である。
【0009】
また本発明は、固形化粧料が油性化粧料である前記固形化粧料である。
【0010】
また本発明は、油性固形化粧料が、スティック状口紅である前記固形化粧料である。
【0011】
以下、本発明の構成について記載する。
本発明に用いる固形化粧料の調製方法は、特に限定されない。例えば、常法に従って、粉体成分や油性成分等の固形化粧料の基剤成分を混合した後、容器に充填して成形することによって、固形化粧料を得ることができる。
【0012】
形態は、スティック状でも、皿型等の容器に充填するタイプのものでも良く、また、固形化粧料の状態は、固形油状、ワックス状、ゲル状等であってもよい。また、本発明の固形化粧料の具体的形態としては、例えば、スティック状口紅、皿状口紅、リップクリーム、リップグロス、コンシーラー、アイカラー、頬紅等の油性固形化粧料、アイシャドウ、ファンデーション、白粉等の粉末固形化粧料等を挙げることができる。この中でもスティック状口紅の表面に、光輝性紛体を付着させると、視覚的な効果、使用性、使用感、経時安定性、充填成形性の点において顕著な効果が得られるので好ましい。
【0013】
次に、成形後の固形化粧料の表面に、平均粒径が1.0〜10.0μm、厚みが0.1〜3.0μmの光輝性紛体を付着させる。
付着に際して、光輝性紛体を含有する粉体組成物を溶剤や液状油剤に分散させたスラリーを用いることも、該粉体組成物をそのまま用いることもできる。スラリーを用いる場合、スラリーを固形化粧料に噴霧する方法、スラリーに固形化粧料を浸す方法等が可能であり、該粉体組成物をそのまま用いる場合、該粉体組成物に固形化粧料を接触させる方法、該粉末組成物を固形化粧料に噴霧する方法等が可能である。
【0014】
本発明に用いる光輝性紛体は、平均粒径が1.0〜10.0μm、厚みが0.1〜3.0μmであるものを選択する。この範囲の大きさの紛体であれば、固形化粧料の表面を均一に覆うことができ、均一な金属光沢が得られ、使用時のざらつきもなく使用性にも優れる。この範囲より大きい粉体では、固形化粧料表面の色味を綺麗に隠蔽することが難しく、本発明独特の均一な金属光沢のような光輝感が得られない。
【0015】
該光輝性粉体は、一般的にパール剤と呼ばれる板状粉体を用いることが好ましい。例えば、酸化チタン被覆ガラス末、酸化チタン処理合成金雲母、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄雲母チタン(プレステージ
ソフト ベージュ(エッカート社)、クロイゾネ サテン ゴールド(エンゲルハード社)など)、紺青処理雲母チタン、カルミン処理雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等の光輝性粉体、酸化鉄被覆雲母(プレステージ
ソフト シリーズ(エッカート社)、クロイゾネ サテン シリーズ(エンゲルハード社)など)、有機顔料処理雲母チタン、無水ケイ酸・ベンガラ処理アルミニウム末等を挙げることができる。特に、該光輝性粉体の基板がガラス末、雲母、合成金雲母、アルミナ、およびシリカで、被覆物が酸化鉄、二酸化チタンなる群から選ばれる1種または2種の物質が層状、或いは島状に被覆されたことを特徴とする粉末が好ましい。これらの光輝性粉体は、必要に応じて、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
該光輝性粉体の表面には、油剤処理、シリコーン化合物処理、フッ素化合物処理、金属石鹸処理、界面活性剤処理、アミノ酸系化合物処理、水溶性高分子処理等を施してあるとよい。例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン(信越化学工業社製:KF99P)、ジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体(信越化学工業社製:KF9901)、1,3,5,7-テトラヒドロテトラメチルシクロテトラシロキサン、分岐型シリコーン(信越化学工業社製:KF-9908(トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)やKF-9909(トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン)等のようなシリコーン類、オクチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシランのようなアルキルアルコキシシラン類、パーフルオロオクチルトリエトキシシラン等のようなフルオロアルキルシランカップリング剤、トリイソステアロイルイソプロピルチタネート等のようなチタネート系カップリング剤、パーフルオロアルキルリン酸ジエタノールアミン塩、パーフルオロアルキルリン酸等のようなフルオロアルキルリン酸類、ステアリン酸アルミニウム等のような金属石鹸類、N-ラウロイル-L-リジン等のようなアミノ酸類、ステアリン酸等のような脂肪酸類、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等のような四級アンモニウム塩等が挙げられるが、この限りでない。
【0017】
本発明の固形化粧料には、必要に応じ、本発明の効果を損なわない質的、量的範囲で通常の化粧品、医薬品分野で用いられるその他の成分を配合することができる。例えば、イオン交換水、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、高重合度のガム状ジメチルポリシロキサン、アミノ変性シリコ−ン、ポリエ−テル変性シリコ−ン等のシリコ−ン類、ラノリン等の動物油、ヒマシ油、オリ−ブ油等の植物油、イソプロピルミリステ−ト、グリセロ−ルトリ−2−エチルヘキサノエ−ト等の合成エステル油、カルナバロウ、キャンデリラロウ、ビ−スワックス、炭化水素系等のワックス類、グリセリン、プロピレングリコ−ル、1,3ブチレングリコ−ル等の多価アルコ−ル系保湿剤、各種界面活性剤、増粘剤、ゲル化剤、金属石鹸、水溶性高分子、油溶性高分子、薬剤、酸化防止剤、顔料、染料、パ−ル剤、有機・無機粉末等の各種粉末、香料等を配合することができる。
【0018】
前記粉末類としては、光輝性粉体及びそれ以外の各種粉体を用いることができる。例えば、板状、鱗片状、薄片状、紡錘状、針状、球状等の形状、多孔質、無孔質等の粒子構造、また、有機性、無機性、剛性、弾性等の特性を有する粉体を使用することができる。この中で、形状としては、板状、鱗片状、薄片状であることが好ましい。具体的な光輝性粉体としては、例えば、酸化チタン被覆ガラス末(メタシャインMC1080シリーズ、メタシャイン MC1120シリーズ(日本板硝子社)、リフレックス シリーズ(エンゲルハード社)など)、酸化チタン処理合成金雲母(プロミネンス シリーズ(日本工研工業社))、酸化チタン被覆雲母(プレステージ スパークリング
シリーズ(エッカート社))、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄被覆雲母チタン(プレステージ ジャズリング ゴールド(エッカート社))、紺青処理雲母チタン(クロイゾネ スパークル
ブルー(エンゲルハード))、カルミン処理雲母チタン(クロイゾネ スパークル レッド(エンゲルハード))、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等の光輝性粉体、酸化鉄被覆雲母(コロロナグリッターシリーズ(メルク社))、酸化鉄被覆ガラス末(メタシャインMC1080Tシリーズ(日本板硝子社)、リフレックスシリーズ(エンゲルハード社)など)、酸化鉄・酸化チタン被覆ガラス末(メタシャインMC1080TY(日本板硝子社)、リフレックス ギルデッドゴールド(エンゲルハード社)など)、有機顔料処理雲母チタン、アルミニウムパウダー、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末(ホログラムパウダーシリーズ(ダイヤ工業社))アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム末(ホログラムパウダーSシリーズ(ダイヤ工業社)、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末(オーロラフレークシリーズ(エンゲルハード社))等を挙げることができる。これらの光輝性粉体は、必要に応じて、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、該光輝性粉体の表面には、シリコーン化合物処理、フッ素化合物処理、金属石鹸処理等の、疎水化処理された粉末を用いると、粉体が安定化され好ましい。
【発明の効果】
【0019】
表面が均一な金属光沢のような光輝感を有する固形化粧料が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
光輝性粉体を付着させる固形化粧料として、表1・2に記載する処方の油性スティック状口紅を調整した。粉体を付着させる方法としては、粉末を直接噴霧した。また、官能評価を化粧品専門パネル(N=10)で行った。
【0021】
<外観評価>
◎:均一な光沢感がある
○:やや均一な光沢感がある
△:やや均一な光沢感がない
×:均一な光沢感がない
<塗布時のキラキラ感>
◎:塗布時キラキラとした点在感がある
○:塗布時ややキラキラとした点在感がある
△:塗布時ややキラキラとした点在感がない
×:塗布時キラキラとした点在感がない
<経時安定性>
◎:変化なし
○:やや光沢感が低下
△:光沢感が低下
×:光沢感がなくなる
【実施例】
【0022】
表1に実施例1〜8、表2に比較例1〜5を示す。なお、注釈の原料(*4及び*5は基板原料)は、下記のものを用いた。
(*1)プレステージソフトブロンズ:エッカート社(平均粒径:7μm)
(*2)クロイゾネサテンブロンズ:エンゲルハード社(平均粒径:12μm)
(*3)ジェムトーンターンオパール:エンゲルハード社(平均粒径:22μm)
(*4)プレステージソフトブロンズ:エッカート社(平均粒径:7μm)
(*5)クロイゾネサテンブロンズ:エンゲルハード社(平均粒径:12μm)
(*6)プレステージソフトブロンズ:エッカート社(平均粒径:7μm)
(*7)クロイゾネサテンブロンズ:エンゲルハード社(平均粒径:12μm)
(*8)ジェムトーンターンオパール:エンゲルハード社(平均粒径:22μm)
(*9)ロナパール45:メルク社(平均粒径:45μm)
(*10)メタシャイン MC1080RY:日本板硝子社(平均粒径:80μm)
厚さ:(*1)〜(*9)0.1〜1μm (*10)1.5μm
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
本発明で得られる油性固形口紅は、外観は均一な金属光沢を有し、塗布時にはパール剤特有のキラキラ感が感じられることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によれば、表面が均一な金属光沢のような光輝感を有する固形化粧料を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形後の固形化粧料の表面に、平均粒径が1.0〜10.0μm、厚みが0.1〜3.0μmの光輝性紛体が付着していることを特徴とする固形化粧料。
【請求項2】
光輝性紛体が、ガラス末、雲母、合成金雲母、アルミナ、シリカからなる群より選ばれる基板の上に、酸化鉄、二酸化チタンからなる群から選ばれる1種または2種以上の被覆物で層状、或いは島状に被覆された粉末である請求項1記載の固形化粧料。
【請求項3】
前記光輝性紛体が疎水化処理されている請求項1又は2記載の固形化粧料。
【請求項4】
固形化粧料が油性化粧料である請求項1乃至3のいずれかに記載の固形化粧料。
【請求項5】
油性固形化粧料が、スティック状口紅である請求項1乃至4のいずれかに記載の固形化粧料。

【公開番号】特開2008−74707(P2008−74707A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−252052(P2006−252052)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】