説明

固形投薬形態のための機械的保護層

本発明は、少なくとも2種類の可塑剤を含んでなる、ペレットのための機械的保護層、該保護層の製造方法、および該保護層を含んでなる固形投薬形態に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は、ペレットの機械的保護層、該保護層の製造方法、および該保護層を含んでなる固形投薬形態に関する。
【0002】
背景技術
様々な機能を有する様々な層を有する医薬投薬形態が、当技術分野で用いられている。生産中に、固形投薬形態は圧縮行程を受けて層の幾つかは部分的に損傷を受けるので、追加の保護層または存在する層の改修が必要である。これは、上記の層が機能特性を有し物理的に損傷した後にそれらの特性を喪失するとき、特に上記の層が腸溶性層であって、活性物質を胃液から保護しているときには緊要である。腸溶性層が損傷すると、活性物質は胃の極めて酸性の環境によって破壊される可能性がある。
【0003】
国際特許出願WO96/01624号パンフレットは、酸に不安定なH+K+-ATPアーゼ阻害剤を含んでなる医薬複合ユニットを錠剤成形した投薬形態であって、活性物質が錠剤に圧縮成形されたそれぞれが腸溶性コーティングの層状ユニットの形態であるものに関する。活性物質の個々のユニットを被覆する(複数の)腸溶性コーティング層は可塑化されており、ユニットを圧縮して錠剤としても、個々の腸溶性コーティングの層状ユニットの耐酸性に大きな影響を与えないと認められる。
【0004】
WO99/59544号パンフレットおよびChem. Pharm. Bull, 2003, 51(10), 1121-1127には、腸溶性コーティングを施した微細顆粒を有する経口で崩壊可能な錠剤が記載されている。上記の顆粒は、水溶性の糖-アルコール、好ましくはマンニトールからなり、数層の可塑化した腸溶性コーティングによって構成されていることがある可塑化した腸溶性層をコーティングする層を有する。
【0005】
米国特許第2005266078号明細書には、徐放性顆粒であって、有機層状化工程によって作成される上記顆粒を保護する少なくとも1種類の変形可能な有機成分(例えば、ポリエチレングリコール(PEG) 6000 - 20000)を有する保護塗層が記載されている。
【0006】
WO99/26608号パンフレットには、圧縮の問題点が記載されている。この問題点を解決するため、上記明細書には、可撓性で変形可能なポリマーフィルムで被覆されたコアを含んでなる圧縮可能なスフェロイドが提供されている。このコアは、20℃の温度で糊状-半固形状のコンシステンシーを有する少なくとも1種類の熱可塑性賦形剤を含み、可塑的に変形し、従って、可能な圧縮段階において受けるストレスの幾らかを吸収することができる。コアを被覆している塗膜は、ガラス転移温度が30℃を下回るポリマー材料(例えば、PEG)を基材とする変形可能な可撓性フィルムであり、風味の保護またはマスキング、または(複数の)活性成分の制御放出を提供する。
【0007】
米国特許第4684516号明細書には、遅延性ワックスでコーティングした徐放ペレットを主として(錠剤の80-100%)含んでいる錠剤が記載されている。
【0008】
WO2005120468号パンフレットには、可塑化したエチルセルロース層と生産および投薬工程中に腐食から保護する被膜形成性物質、色素および可塑剤からなる外部コーティングとを含む徐放ペレットが記載されている。上記層は、オパドライ(Opadry)、すなわちヒドロキシルプロピルメチルセルロース、PEG 400およびPEG 6000から作製することができる。オパドライ(Opadry)は、ペレットを水分、光から保護するためのペレットの最終塗膜としてまた仕上げ塗膜としても広く用いられている。
【0009】
米国特許第2002176894号明細書には、コアおよび薬剤エマルション層を含んでなり、場合によっては、PEG 20000を含み、乳化層上にコーティングされる保護層をさらに含んでなる非腸溶性医薬組成物が記載されている。圧縮については、記載されていない。
【発明の概要】
【0010】
従って、腸溶性の固形投薬形態に対する圧縮の効果は成分の溶解挙動に影響を与える可能性があり、コーティング層(例えば、腸溶性層)の開裂および圧潰と直接関係しており、従って、酸性条件におけるその耐胃液性(gastroresistance)に関する。従って、当技術分野では、固形投薬形態の保護層を提供し、機械的攻撃、特に圧縮による劣化を防止することが現在求められている。
【0011】
一つの態様によれば、本発明は、2種類以上の可塑剤を含んでなる、投薬形態(dosage form)のための機械的保護層(mechanical protective layer)に関する。
【0012】
この機械的保護層は、当技術分野で知られている製剤に関して利益を提供する。例えば、本発明の機械的保護層は、高度に濃縮した(例えば、27%固形分)水溶液を用いる噴霧乾燥工程によって組込むことができ、固形投薬形態において多量の腸溶性ペレット(錠剤中93%(重量/重量)以上)、例えば、固形投薬形態において高配合量の活性成分(例えば、錠剤重量800 mg中腸溶性ランソプラゾール, 30 mg - 93.2 mg)を可能とし、脆弱な固形投薬形態に存在する他の層を更に修飾することなく用いて、上記固形投薬形態に優れた機械的保護を付与することができる。
【0013】
また、新規な機械的保護層は、粒度に依存しない少なくとも8.5 Kpまでの高硬度を錠剤に提供し、上記の機械的特性を有する少なくとも0.8 mmまでのペレットは圧縮することができる。
【0014】
第二の態様によれば、本発明は、総ての成分を水に分散させた後、投薬形態を上記分散液でコーティングすることを含んでなる、上記機械的保護層の製造方法に関する。
【0015】
第三の態様によれば、本発明は、本発明の機械的保護層を含んでなる固形投薬形態に関する。
【0016】
第四の態様によれば、本発明は、本発明の機械的保護層を含んでなる錠剤に関する。
【発明の具体的説明】
【0017】
上述のように、本発明の投薬形態の機械的保護層は、2種類以上の可塑剤を含んでなる。
【0018】
本発明では、「機械的保護層」は、上記層の内側の内容物を保護しながら機械的攻撃(例えば、錠剤成形過程)に抵抗することができる層である。
【0019】
本発明では、「可塑剤」は、ポリマー性物質によって形成されるフィルムの機械特性を向上させるのに普通に用いられる物質である。それは、変形後にその元の形状に戻らない生成物である。ポリマー性物質に添加すると、可塑剤は、耐性および可撓性が向上した材料を提供する。本発明では、可塑剤は、室温では好ましくは固形物であり、水溶性である。
【0020】
従って、可塑剤の少なくとも1つは、好ましくはワックス、リノリン型(linoline-type)アルコール、ゼラチン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、セバシン酸ジブチル、中鎖トリグリセリド脂肪酸、樹脂酸、長鎖脂肪酸(例えば、ステアリン酸、パルミチン酸)またはそれらの混合物からなる群から選択される。
【0021】
他の好ましい可塑剤は、モノステアリン酸グリセリル、ステアリン酸、パルミンステアリン酸グリセリル(glyceryl palmine stearate)、ジベヘン酸グリセリルなどのような滑沢剤特性をも有するものである。
【0022】
好ましい実施態様によれば、本発明の機械的保護層は、可塑剤としてモノステアリン酸グリセリルを含んでなる。
【0023】
本発明の機械的保護層は、当技術分野で一般的に用いられる他の物質、例えば、膨潤および/または吸上によって作用する崩壊剤、滑沢剤、着色料、フレーバーマスキング剤(flavour masking agents)、香味料、安定剤、結合剤、充填剤、起泡剤、甘味料、細孔形成剤(pore-forming agents)、酸(例えば、クエン酸または酒石酸)、塩化ナトリウム、重炭酸塩(例えば、ナトリウムまたはカリウム塩)、糖およびアルコールからなる群から選択される少なくとも1種類の添加剤を含んでなることがある。
【0024】
前記マスキング剤の例としては、エチルセルロースのような水不溶性ポリマー、唾液に不溶性でありかつ胃液に可溶性の、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチルおよびメタクリル酸ジエチルアミノエチルのコポリマーのようなポリマーなどを挙げることができる。
【0025】
「崩壊剤」という用語は、固形製剤に添加することにより、投与後のその分解または崩壊を促進し、活性成分を速やかに溶解させるようにできる限り効率的なその放出を可能にする物質と理解される。崩壊剤の例としては、トウモロコシ澱粉およびジャガイモ澱粉のような澱粉、部分アルファー化澱粉、カルボキシメチル澱粉ナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、ポリビニルアルコール、クロスホピドン、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、結晶性セルロース、ヒドロキシプロピル澱粉などを挙げることができる。また、ヒドロキシプロピルセルロースを崩壊剤として用いることもできる。
【0026】
香味料の例としては、香料、レモン、レモンライム、オレンジ、メントール、ハッカ油、バニリン、またはデキストリンもしくはシクロデキストリンで吸収したこれらの粉末などを用いることができる。
【0027】
滑沢剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリル、タルク、ステアリン酸、コロイド状二酸化ケイ素(Aerosil 200(登録商標))などを挙げることができる。
【0028】
着色料の例としては、食品黄色5号、食品赤色3号、食品青色2号、食品レーキ染料、赤色酸化鉄などの食品染料を挙げることができる。
【0029】
安定剤または可溶化剤の例としては、アスコルビン酸およびトコフェロールのような酸化防止剤、ポリソルベート80のような界面活性剤などを、用いる生理活性成分によって挙げることができる。
【0030】
結合剤の例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、カルメロースナトリウム、アルファ澱粉、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、ゼラチン、プルーランなどを挙げることができる。
【0031】
充填剤の例としては、スクロース、グルコース、ラクトース、マンニトール、キシリトール、デキストロース、微晶質セルロース、マルトース、ソルビトール、リン酸カルシウム、硫酸カルシウムなどを挙げることができる。
【0032】
起泡剤の例としては、重炭酸ナトリウムを用いることができる。
【0033】
甘味料の例としては、サッカリンナトリウム、グリチルリレチン二カリウム、アスパルターム、ステビア、タウマチンなどを挙げることができる。
【0034】
好ましい実施態様によれば、本発明の機械的保護層は、第一のポリエチレングリコールである第一の可塑剤、更に好ましくは、第一のポリエチレングリコールとは異なる第二のポリエチレングリコールである第二の可塑剤を含んでなる。様々な物理特性を有する様々な種類のポリエチレングリコールが利用可能である。例えば、ポリエチレングリコールは、様々な平均分子量または様々な密度のものが様々な供給業者から入手可能である。
【0035】
好ましい実施態様によれば、上記第一のポリエチレングリコールの平均分子量は6,000未満であり、好ましくは3,000 - 6,000未満であり、更に好ましくは3,000 - 5,000である。
【0036】
もう一つの好ましい実施態様によれば、第一のポリエチレングリコールの平均分子量は3,000 - 5,000であり、更に好ましくは4,000であり、第二のポリエチレングリコールの平均分子量は6,000である。
【0037】
好ましい実施態様によれば、本発明の機械的保護層は、第一のポリエチレングリコールおよび第二のポリエチレングリコールとは異なる第三のポリエチレングリコールである第三の可塑剤を含んでなる。
【0038】
異なる粘度および分子量を有するPEGの混合物で、最良の結果が得られている。例えば、下記の実施例に示されるように、PEG 8000、6000および4000の混合物は、圧縮行程において優れた機械的耐性および可撓性を提供し、従って耐胃液性において一層良好な値を提供する。
【0039】
従って、好ましい実施態様によれば、本発明の機械的保護層は、平均分子量が3,000 - 5,000、更に好ましくは4,000である第一のポリエチレングリコール、平均分子量が5,000を上回りかつ7,000までであり、更に好ましくは6,000である第二のポリエチレングリコール、および平均分子量が7,000を上回りかつ9,000までであり、更に好ましくは8,000である第三のポリエチレングリコールを含んでなる。
【0040】
好ましい実施態様によれば、第一のポリエチレングリコールの平均分子量は6,000以上であり、好ましくは6,000 - 7,000である。
【0041】
特定の実施態様によれば、本発明の機械的保護層は、平均分子量が6,000 - 7,000であり、更に好ましくは6,000である第一のポリエチレングリコールおよび平均分子量が7,000を上回りかつ9,000までであり、更に好ましくは8,000である第二のポリエチレングリコールを含んでなる。
【0042】
本発明の機械的保護層は、固形投薬形態に含まれる他の層の構造を修飾することなく用いることができる。
【0043】
好ましい実施態様によれば、機械的保護層は、少なくとも80%(重量/重量)の可塑剤、好ましくは少なくとも90%(重量/重量)の可塑剤、更に好ましくは少なくとも95%(重量/重量)の可塑剤を含んでなる。
【0044】
本発明の好ましい実施態様では、総ての可塑剤は単一層で混合される。しかしながら、本発明の機械的保護層が2以上の副層を含んでなり、それぞれの副層が1種類以上の可塑剤を含んでなるときにも、保護効果が達成されることがある。特定の態様によれば、本発明の機械的保護層は2以上の副層を含んでなり、それぞれの副層は1種類の可塑剤を含んでなる。
【0045】
更に好ましい実施態様によれば、本発明の機械的保護層は、圧縮(錠剤成形)工程において上記層の内側の内容物を保護しながら機械的攻撃に抵抗することができる
【0046】
上記のように、本発明のもう一つの態様は、本発明の機械的保護層を含んでなる固形投薬形態、好ましくは薬学上許容可能な固形投薬形態である。
【0047】
「固形投薬形態」とは、錠剤、顆粒、カプセル、ミニ錠剤、細粒、塗被層など、好ましくは唾液、胃液、水、石鹸、ミルクなどの適当な媒質に放出される生理活性成分を含んでなる固形状態の製剤と理解される。
【0048】
「薬学上許容可能な固形投薬形態」という用語は、錠剤、顆粒、カプセル、ミニ錠剤、細粒、塗被層など、薬学活性成分を含んでなる固形状態の製剤と理解される。
【0049】
「薬学上許容可能な」も、ヒトに投与したときに生理学的に許容可能でありかつアレルギーまたは胃の不調、眩暈などの同様な不都合な反応を典型的に生じない固形投薬形態を指す。好ましくは、本明細書に用いられているように、「薬学上許容可能な」という用語は、連邦または州政府の管理機関によって承認されているか、または動物、更に詳細にはヒトでの使用について米国薬局方または他の一般に認可されている薬局方に記載されていることを意味する。
【0050】
「耐胃液性」という用語は、腸溶性コーティング製剤について米国薬局方23に準じて37℃にて0.1 N HCl中で2時間処理した後に遊離した活性成分の量であると理解される(個々のユニット値は溶解した10%の量を超過しない)。
【0051】
本発明の機械的保護層を含んでなる上記固形投薬形態は、圧縮後には優れた耐胃液性を有する。例えば、93%までの腸溶性ペレット内容物を有する錠剤は、耐胃液性値が10%より低くなるものが獲得されている。
【0052】
本発明の固形投薬形態は、好ましくは薬学活性成分、フレーバー成分および栄養成分から選択される少なくとも1種類の生理活性成分を含む。特定態様では、本発明の固形投薬形態は薬学上許容可能であり、薬学活性成分を含んでなる。もう一つの特定態様では、固形投薬形態は栄養成分を含んでなる栄養製剤である。
【0053】
薬学活性成分としては、例えば、消化機能調節薬、抗炎症薬、鎮痛薬、抗偏頭痛薬、抗ヒスタミン薬、心臓血管薬、利尿薬、抗高血圧薬、抗低脂血症薬(anti-hypolipidemis agents)、抗潰瘍薬、抗催吐薬、抗喘息薬、抗鬱薬、ビタミン、抗血栓薬、化学療法薬、ホルモン、駆虫薬、抗糖尿病薬、抗ウイルス薬およびそれらの混合物からなる群から選択される1種類以上の成分を用いることができる。
【0054】
上記消化機能調節薬の典型例としては、ブロモプリド、メトクロプラミド、シサプリドおよびドンペリドンが挙げられ、抗炎症薬としては、アセクロフェナック、ジクロフェナック、フルビプロフェン、スリンダックおよびセレコキシブが挙げられ、鎮痛薬としては、アセトアミノフェン、イブプロフェンおよびアスピリンが挙げられ、抗偏頭痛薬としては、スマトリプタンおよびエルゴタミンが挙げられ、抗ヒスタミン薬としては、ロラタジン、フェクソフェナジンおよびセチリジンが挙げられ、心臓血管薬としては、ニトログリセリンおよびイソソルビドジニトレートが挙げられ、利尿薬としては、フロセミドおよびスピロノラクトンが挙げられ、抗高血圧薬としては、プロパノロール、アムロジピン、フェロジピン、カプトプリル、ラミプリル、ロサルタン、バルサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、トソサルタン、テルミサルタンが挙げられ、抗低脂血症薬(anti-hypolipidemic agents)としては、シンバスタチン、アトルバスタチンおよびプラバスタチンが挙げられ、抗潰瘍薬としては、シメチジン、ラニチジン、ファモチジン、ランソプラゾール、オメプラゾール、ラベプラゾールおよびパントプラゾールが挙げられ、抗催吐薬としては、メクリジン塩酸塩、オンダンセトロン、グラニセトロン、ラモセトロンおよびトロピセトロンが挙げられ、抗喘息薬としては、アミノフィリン、テオフィリン、テルブタリン、フェノテロール、フォルモテロールおよびケトチフェンが挙げられ、抗鬱薬としては、フルオキセチンおよびセルトラリンが挙げられ、抗血栓薬としては、スルフィンピラゾン、ジピリダモールおよびチクロピジンが挙げられ、化学療法薬としては、セファクロル、バカンピシリン、スルファメトキサゾールおよびリファンピシンが挙げられ、ホルモンとしては、デキサメタゾンおよびメチルテストステロンが挙げられ、駆虫薬としては、ピエペラジン(pieperazine)、イベルメクチンおよびメベンダゾールが挙げられ、抗糖尿病薬としては、アカルボース、グリクラジドおよびグリピジドが挙げられる。
【0055】
本発明の特定の実施態様では、薬学活性成分は抗潰瘍薬またはH+/K+-ATPアーゼ阻害剤であり、好ましくはベンズイミダゾール化合物またはその鏡像異性体または塩の1つであり、更に好ましくはランソプラゾール、オメプラゾール、ラベプラゾールまたはパントプラゾールであり、更に一層好ましくはランソプラゾールである。
【0056】
もう一つの特定の実施態様では、薬学活性成分は非ステロイド性の抗炎症薬またはその塩であり、更に好ましくはアスピリンである。
【0057】
固形投薬形態に含まれる栄養成分は、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE (d-α-トコフェロール酢酸)、ビタミンB1 (ジベンゾイルチアミン、フルスルチアミン塩酸塩)、ビタミンB2 (リボフラビンテトラブチレート)、ビタミンB6 (ピリドキシン塩酸塩)、ビタミンC (アスコルビン酸、L-アスコルビン酸ナトリウム)およびビタミンB12 (ヒドロキソコバラミンアセテート)のようなビタミン、カルシウム、マグネシウムおよび鉄のようなミネラル、タンパク質、アミノ酸、オリゴ糖、不飽和脂肪酸、ハーブ、およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0058】
本発明のもう一つの利点は、正に本発明の機械的保護層を適用する(または上塗り層を本発明の機械的保護層で置換する)のにペレット構造を修飾する必要がないことである。例えば、カプセル製剤に用いられる同一の脆い腸溶性ペレットは、それを本発明の機械的保護層でコーティングし、その特性および放出プロフィールを保持する圧縮ベース(混合物)と共にそれを圧縮することによって錠剤にも用いることができる。更に、本発明の機械的保護層は、他の添加物を用いる必要なしにフレーバーマスキングおよび化学的保護をも提供することができる。
【0059】
好ましい実施態様によれば、固形投薬形態は、上記機械的保護層でコーティングされた不活性ビーズを含んでなるコアを含んでなる。
【0060】
もう一つの好ましい実施態様によれば、固形投薬形態は、修飾された放出層、好ましくは腸溶性層を含んでなる。
【0061】
好ましい実施態様によれば、投薬形態は顆粒またはペレットである。
【0062】
本発明のもう一つの実施態様は、本発明の機械的保護層を含んでなる多様な顆粒またはペレットを含んでなる錠剤である。好ましくは、上記錠剤は80%(重量/重量)を上回る顆粒またはペレット、更に好ましくは90%(重量/重量)を上回る顆粒またはペレットを含んでなる。
【0063】
もう一つの実施態様によれば、本発明は、固形投薬形態の製造のための本発明の機械的保護層の使用に関する。
【0064】
本発明の機械的保護層は、当技術分野で知られている方法に従って製造することができる。もう一つの態様によれば、本発明は、総ての成分を水に分散させた後、投薬形態を上記分散液でコーティングすることを含んでなる、本発明の機械的保護層の調製方法に関する。
【0065】
本発明の総ての錠剤硬度は、シュロニガー錠剤試験機8M装置(Schleuniger Tablet Tester 8M apparatus)を用いて測定した。
【実施例】
【0066】
実施例1:機械的保護層なしの腸溶性コーティングを施したランソプラゾールペレット
表1に示した組成を有する機械的保護層なしの腸溶性コーティングを施したランソプラゾールペレットを調製した。
【0067】
【表1】

【0068】
それぞれのフィルムコーティング(FC)は、流動床装置で前の塗膜上に様々な水性分散液を連続的に噴霧して、更に乾燥することによって得られた。すなわち、最初にセルロースの不活性ビーズが提供された。第一のフィルムコーティング (FCl) の成分を有する分散液を調製して、不活性ビーズ上に噴霧した。次いで、FC2の分散液をFCl上に噴霧した後、FC3の分散液をFC2上に噴霧した。
【0069】
実施例2:本発明の機械的保護層の合成方法
最初に、TEWN 80およびモノステアリン酸グリセリルを60-75℃の精製水に攪拌下にて混合した。混合物を25-30℃まで冷却し、PEG 4000、PEG 6000、PEG 8000、サッカリンナトリウムおよびイチゴフレーバーを加えた。最後に、赤色着色料として、酸化第二鉄を攪拌しながら加えた。このようにして調製した分散液は、コーティングの準備ができている。
【0070】
実施例3:本発明の機械的保護層を用いる一般的コーティング方法
本発明の機械的保護層(実施例2の一般的方法に準じて調製)を、流動床装置中で実施例1の腸溶性コーティングを施したランソプラゾールペレットに噴霧し、入口空気温度: 50-55℃、入口空気流量: 7,000-8,000 m3/時、生成物空気温度: 40-42℃、微気候: 1バール、噴霧空気圧: 3.0バール、流量: 0.8-0.9 L/時の条件下で更に乾燥した。
【0071】
実施例4:本発明の機械的保護層を含んでなるペレット
実施例3の一般的方法に従って、実施例1のランソプラゾールペレットを、表2に示す組成を有する本発明の機械的保護層でコーティングした。
【0072】
【表2】

【0073】
実施例5:PEG 6000保護塗膜(比較例)
実施例1のペレットを、流動床装置での水性層形成工程(aqueous layering process)を用いたこと以外は米国特許第2005266078号明細書に記載の方法に従ってPEG 6000でコーティングした。このようにして得られたコーティングを施したペレットを、実施例4で得られた本発明のコーティングを施したペレットと比較した。流動床での噴霧工程中に、実施例4で得られた本発明のペレットは、本実施例で得られたペレットより凝集が少なかった。
【0074】
耐胃液性測定の一般的方法
本発明の新規な機械的保護層を含む保護層の品質を、実施例6-10で腸溶性コーティングを施した製剤についての米国薬局方23の要件(耐胃液性値)に準じて0.1M HClで2時間処理した後に放出されるランソプラゾールの量を測定することによって錠剤成形過程前および後に評価した。
【0075】
実施例6〜10に記載の錠剤を得るため、ペレット(26.93重量%)を圧縮ベースと表3に示される割合で混合した後、圧縮して錠剤とした。
【0076】
【表3】

【0077】
実施例6:比較例 ランソプラゾール放出
実施例4および5のペレット(26.93重量%)を、圧縮ベースと表3に示される割合で混合し、最終硬度4-6 Kpの錠剤に圧縮し、両錠剤の耐胃液性を測定した。
【0078】
実施例4のペレット(PEG 4000 + PEG 6000 + PEG 8000保護塗膜)で得られた錠剤は実施例4の未圧縮ペレットと比較して50-60%だけ耐胃液性値を増加させるだけであったが、実施例5のペレット(PEG 6000保護塗膜のみ)で得られた錠剤は実施例5の未圧縮ペレットと比較して耐胃液性値を100-140%だけ増加させた。従って、本発明の機械的保護層は、明らかに耐胃液性を向上させる。耐胃液性値が低くなることは、酸性媒質に放出される活性成分の量が少なくなり、従って、腸溶性層が一層効率的に保護されることを示している。
【0079】
実施例7:低分子量PEGの影響
本実施例では、分子量が6,000を下回るPEGの本発明の機械的保護層の可塑性に対する影響を示す。
【0080】
実施例3の方法に従って、実施例1のランソプラゾールペレットを表4に示される組成を有する本発明の機械的保護層でコーティングし、ペレット7a-7dを得た。表4に示される4種類の機械的層は、実施例2に記載したのと同じ方法に従って調製した。層の組成は、様々なPEGの相対量が異なるだけである。可塑剤(PEG +モノステアリン酸グリセリル)の総量は、総ての場合に本質的に一定のままであった。
【0081】
【表4】

【0082】
PEGequivは、組成物のPEGの「平均」分子量として計算した。例えば、PEG 6000とPEG 8000の 1:1混合物はPEGequivが7,000となる。従って、PEGequivが7,000のPEGの混合物はPEG 7000と同一ではない。
【0083】
ペレット7a-7d (それぞれの場合に26.93重量%)を、表3に示される割合の圧縮ベースを用いて最終錠剤硬度4-6 Kpまで圧縮し、耐胃液性を測定した。結果を、図1に示す。
【0084】
図1に示されるように、分子量が6,000を下回るPEG (例えば、PEG 4000)を含むと、圧縮中の可撓性が一層大きくかつ変形性が一層大きくなり、従って、腸溶性コーティングについての保護が増加し、これは耐胃液性が一層良好であると解釈される。耐胃液性値はPEGの分子量の増加と共に増加し、従って、耐胃液性が悪くなることを示している。
【0085】
例えば、分子量が6,000を下回るPEGを可塑剤混合物含むと、より高い分子量のPEGより良好な可撓性と変形性が得られると思われる。
【0086】
実施例8:活性成分の用量決定
本発明の機械的保護層では、錠剤中のペレットの量を増加させることができ、従って錠剤重量を一定に保持して活性成分の用量を増加させることができる。表5は、実施例4の層をコーティングし、圧縮ベースと表3に示される割合で、様々なペレット割合で混合し、錠剤(硬度範囲 4-6 kp)を得る目的で圧縮した、実施例1のペレットを含む800 mg錠剤を示している。
【0087】
【表5】

【0088】
一般に、錠剤において圧縮ベースに対する腸溶性ペレットの割合が増加すると、圧縮の際にペレットは圧縮されるがそれらは圧縮ベースによってさほど効率的には吸収されないので、錠剤成形過程後には耐胃液性値が増加する。驚くべきことには、本発明の機械的保護層では、錠剤に多量の腸溶性ペレットが耐胃液性の変動性は低いままで可能となる。
【0089】
実施例9:錠剤硬度
本発明の機械的保護層では、硬度を高めた(8.5 Kpまで)錠剤を使用することができるので、耐胃液性値を一定に維持したまま高い圧縮力を加えることができる。
【0090】
表6には実施例4の保護層をコーティングし、圧縮ベースと共に表3に示される割合で様々な最終硬度で圧縮した実施例1の27%ペレットを含む800mgの錠剤の耐胃液性が示されている。
【0091】
【表6】

【0092】
実施例10:ペレットサイズ
本発明の機械的保護層を有するペレットの耐胃液性は、サイズによって変化しない。実施例1と同様に腸溶性コーティングを施したランソプラゾールペレットを、実施例4の保護層でコーティングした。0.4および0.8 mmの2つのサイズを選択して、圧縮ベースと共に表3に示される割合で4-6 kpの硬度まで圧縮して錠剤(ペレット26.93重量%)とした。両ペレットの耐胃液性値は、約5%であった。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】PEGequivの関数としての様々なペレットにおける耐胃液性(%)の変動における実施例8の結果。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種類以上の可塑剤を含んでなる、投薬形態のための機械的保護層。
【請求項2】
可塑剤の少なくとも1つが、ワックス、リノリン型アルコール、ゼラチン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリブチル、セバシン酸ジブチル、中鎖トリグリセリド脂肪酸、樹脂酸、長鎖脂肪酸またはそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の機械的保護層。
【請求項3】
第一のポリエチレングリコールである第一の可塑剤を含んでなる、請求項2に記載の機械的保護層。
【請求項4】
第一のポリエチレングリコールとは異なる第二のポリエチレングリコールである第二の可塑剤を含んでなる、請求項3に記載の機械的保護層。
【請求項5】
前記第一のポリエチレングリコールの平均分子量が6,000未満である、請求項3または4に記載の機械的保護層。
【請求項6】
平均分子量が4,000である第一のポリエチレングリコールと平均分子量が6,000である第二のポリエチレングリコールとを含んでなる、請求項5に記載の機械的保護層。
【請求項7】
第一のポリエチレングリコールおよび第二のポリエチレングリコールとは異なる第三のポリエチレングリコールである第三の可塑剤を含んでなる、請求項4〜6のいずれか一項に記載の機械的保護層。
【請求項8】
平均分子量が4,000である第一のポリエチレングリコール、平均分子量が6,000である第二のポリエチレングリコールおよび平均分子量が8,000である第三のポリエチレングリコールを含んでなる、請求項7に記載の機械的保護層。
【請求項9】
第一のポリエチレングリコールの平均分子量が6,000以上である、請求項3または4に記載の機械的保護層。
【請求項10】
平均分子量が6,000である第一のポリエチレングリコールと平均分子量が8,000である第二のポリエチレングリコールとを含んでなる、請求項9に記載の機械的保護層。
【請求項11】
少なくとも80%(重量/重量)の可塑剤を含んでなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の機械的保護層。
【請求項12】
少なくとも90%(重量/重量)の可塑剤を含んでなる、請求項11に記載の機械的保護層。
【請求項13】
少なくとも95%(重量/重量)の可塑剤を含んでなる、請求項12に記載の機械的保護層。
【請求項14】
総ての可塑剤が単一層で混合されている、請求項1〜13のいずれか一項に記載の機械的保護層。
【請求項15】
2以上の副層を含んでなり、それぞれの副層が1種類以上の可塑剤を含んでなる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の機械的保護層。
【請求項16】
2以上の副層を含んでなり、それぞれの副層が1種類の可塑剤を含んでなる、請求項15に記載の機械的保護層。
【請求項17】
モノステアリン酸グリセリル、ステアリン酸、パルミンステアリン酸グリセリル、およびジベヘン酸グリセリルからなる群から選択される可塑剤を含んでなる、請求項1〜16のいずれか一項に記載の機械的保護層。
【請求項18】
モノステアリン酸グリセリルを可塑剤として含んでなる、請求項17に記載の機械的保護層。
【請求項19】
膨潤および/または吸上によって作用する崩壊剤、滑沢剤、着色料、フレーバーマスキング剤、香味料、安定剤、結合剤、充填剤、起泡剤、甘味料、細孔形成剤、酸、塩化ナトリウム、重炭酸塩、糖およびアルコールからなる群から選択される少なくとも1種類の添加剤を含んでなる、請求項1〜18のいずれか一項に記載の機械的保護層。
【請求項20】
前記保護層が、錠剤成形過程において該保護層の内側の内容物を保護しながら機械的攻撃に抵抗することができる、請求項1〜19のいずれか一項に記載の機械的保護層。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか一項に記載の機械的保護層を含んでなる、固形投薬形態。
【請求項22】
前記機械的保護層で被覆されたコアを含んでなる、請求項21に記載の固形投薬形態。
【請求項23】
修飾された放出層を含んでなる、請求項21または22に記載の固形投薬形態。
【請求項24】
修飾された前記放出層が腸溶性層である、請求項23に記載の固形投薬形態。
【請求項25】
顆粒またはペレットである、請求項21〜24のいずれか一項に記載の固形投薬形態。
【請求項26】
活性成分を含んでなる、請求項21〜25のいずれか一項に記載の薬学上許容可能な固形投薬形態。
【請求項27】
請求項25または26に記載の可変数の顆粒またはペレットを含んでなる、錠剤。
【請求項28】
80%(重量/重量)を上回る顆粒またはペレットを含んでなる、請求項27に記載の錠剤。
【請求項29】
90%(重量/重量)を上回る顆粒またはペレットを含んでなる、請求項28に記載の錠剤。
【請求項30】
固形投薬形態の製造のための、2種類以上の可塑剤を含んでなる機械的保護層の使用。
【請求項31】
総ての成分を水に分散させた後、投薬形態を上記分散液でコーティングすることを含んでなる、請求項1〜20のいずれか一項に記載の機械的保護層の製造方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−540596(P2010−540596A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527463(P2010−527463)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【国際出願番号】PCT/EP2008/063279
【国際公開番号】WO2009/043929
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(500031124)ラボラトリオス・デル・ドクトル・エステベ・ソシエダッド・アノニマ (55)
【Fターム(参考)】